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特開2024-142006嗜好飲料の評価方法及び嗜好飲料の評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142006
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】嗜好飲料の評価方法及び嗜好飲料の評価システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/14 20060101AFI20241003BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N33/14
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053940
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】細井 瑳耶佳
(72)【発明者】
【氏名】嶋 レイ
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤茂
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正行
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB08
4B027FB13
4B027FK04
4B027FK15
4B027FK18
4B027FP85
4B027FR06
(57)【要約】
【課題】
本発明は、嗜好飲料が感情に与える影響を評価するための技法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、嗜好飲料の評価方法であって、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、を含み、前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含む前記評価方法を提供する。また、本発明は、嗜好飲料の評価システムも提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嗜好飲料の評価方法であって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を含み、
前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含む、
前記評価方法。
【請求項2】
嗜好飲料の評価方法であって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を含み、
前記感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含む、
前記評価方法。
【請求項3】
前記感情用語群は、
嗜好飲料の飲用時に感じる感情を表す用語群を収集する用語収集プロセス、及び、
前記用語収集プロセスにおいて収集された用語群のうちから、前記評価方法において用いる感情用語を特定する用語特定プロセス
を実行することにより特定された感情用語群を含む、
請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記用語特定プロセスにおいて、複数種の嗜好飲料が用いられ、
前記複数種の嗜好飲料のそれぞれについて感情用語が特定される、
請求項3に記載の評価方法。
【請求項5】
前記用語特定プロセスにおいて、CATA法の実行により感情用語が特定される、
請求項3に記載の評価方法。
【請求項6】
前記複数種の嗜好飲料は、1以上の乳不含有嗜好飲料若しくは1以上の乳含有嗜好飲料又はこれらの両方を含む、請求項4に記載の評価方法。
【請求項7】
前記複数種の嗜好飲料は、1以上の甘味料不含有嗜好飲料若しくは1以上の甘味料含有嗜好飲料又はこれらの両方を含む、請求項4に記載の評価方法。
【請求項8】
前記複数種の嗜好飲料は、果実由来材料を含有する1以上の嗜好飲料若しくは果実由来材料を含有しない1以上の嗜好飲料又はこれらの両方を含む、請求項4に記載の評価方法。
【請求項9】
前記複数種の嗜好飲料は、1以上の温かい嗜好飲料若しくは1以上の冷たい嗜好飲料又はこれらの両方を含む、請求項4に記載の評価方法。
【請求項10】
前記提示工程において、嗜好飲料の嗜好性評価又は官能評価のための評価票も提示される、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項11】
前記評価結果生成工程において、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に加え、前記評価票中の嗜好性評価又は官能評価に関する評価結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果が生成される、請求項10に記載の評価方法。
【請求項12】
前記評価結果生成工程において、嗜好飲料の感情用語に関する評価結果及び嗜好性評価又は官能評価の評価結果に基づき、プリファレンスマップが生成される、請求項10に記載の評価方法。
【請求項13】
嗜好飲料の評価システムであって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を実行するように構成されており、
前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含む、
前記評価システム。
【請求項14】
嗜好飲料の評価システムであって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を実行するように構成されており、
前記感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含む、
前記評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗜好飲料の評価方法及び嗜好飲料の評価システムに関し、特には特定の用語群を用いる嗜好飲料の評価方法及び前記評価方法を実行する評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料品又は食品を喫食した場合に気分が変わることがある。すなわち、飲料品又は食品の摂取は、摂取したヒトの感情に影響を及ぼすことがある。飲料品又は食品が感情に及ぼす影響についての科学的知見はあまりないが、緑茶に関しては、例えば下記非特許文献1に記載されるように、緑茶を飲んだ時に消費者がどのような気持ちになるかに関する感情プロファイルを作成することが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】佐藤晃平及び衣笠仁、「消費者が感じる緑茶の“違い”を理解するための感情評価の役割」、日本官能評価学会2018年大会ポスター発表資料
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
嗜好飲料は、様々な場面において様々な目的で摂取される。例えば気分転換のために嗜好飲料を摂取することや、気持ちを落ち着かせるために嗜好飲料を摂取することがある。嗜好飲料が感情に及ぼす影響を評価することができれば、特定の場面又は特定の目的に適した嗜好飲料を選択するために役立つと考えられる。また、そのような評価は、例えば嗜好飲料の開発においても有用であると考えられる。そこで、本発明は、嗜好飲料が感情に与える影響を評価するための技法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の評価方法によって嗜好飲料を適切に評価することができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]嗜好飲料の評価方法であって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を含み、
前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含む、
前記評価方法。
[2]嗜好飲料の評価方法であって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を含み、
前記感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含む、
前記評価方法。
[3]前記感情用語群は、
嗜好飲料の飲用時に感じる感情を表す用語群を収集する用語収集プロセス、及び、
前記用語収集プロセスにおいて収集された用語群のうちから、前記評価方法において用いる感情用語を特定する用語特定プロセス
を実行することにより特定された感情用語群を含む、
[1]又は[2]に記載の評価方法。
[4]前記用語特定プロセスにおいて、複数種の嗜好飲料が用いられ、
前記複数種の嗜好飲料のそれぞれについて感情用語が特定される、
[3]に記載の評価方法。
[5]前記用語特定プロセスにおいて、CATA法の実行により感情用語が特定される、
[3]又は[4]に記載の評価方法。
[6]前記複数種の嗜好飲料は、1以上の乳不含有嗜好飲料若しくは1以上の乳含有嗜好飲料又はこれらの両方を含む、[4]又は[5]に記載の評価方法。
[7]前記複数種の嗜好飲料は、1以上の甘味料不含有嗜好飲料若しくは1以上の甘味料含有嗜好飲料又はこれらの両方を含む、[4]~[6]のいずれか一つに記載の評価方法。
[8]前記複数種の嗜好飲料は、果実由来材料を含有する1以上の嗜好飲料若しくは果実由来材料を含有しない1以上の嗜好飲料又はこれらの両方を含む、[4]~[7]のいずれか一つに記載の評価方法。
[9]前記複数種の嗜好飲料は、1以上の温かい嗜好飲料若しくは1以上の冷たい嗜好飲料又はこれらの両方を含む、[4]~[8]のいずれか一つに記載の評価方法。
[10]前記提示工程において、嗜好飲料の嗜好性評価又は官能評価のための評価票も提示される、[1]~[9]のいずれか一つに記載の評価方法。
[11]前記評価結果生成工程において、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に加え、前記評価票中の嗜好性評価又は官能評価に関する評価結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果が生成される、[10]に記載の評価方法。
[12]前記評価結果生成工程において、嗜好飲料の感情用語に関する評価結果及び嗜好性評価又は官能評価の評価結果に基づき、プリファレンスマップが生成される、[9]又は[10]又は[11]に記載の評価方法。
[13]嗜好飲料の評価システムであって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を実行するように構成されており、
前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含む、
前記評価システム。
[14]嗜好飲料の評価システムであって、
嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、
嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、
を実行するように構成されており、
前記感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含む、
前記評価システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、嗜好飲料が感情に与える影響を適切に評価することができる。本発明の評価方法によって、例えば感情を切り替えたいときに適した嗜好飲料及び感情をリラックスさせたいときに適した嗜好飲料などを選択することができる。また、本発明の評価方法は、このような特定の目的に適した嗜好飲料を開発するためにも役立つ。すなわち、本発明は、感情に対して特定の影響を及ぼすことを目的とする製品の開発に資する。
なお、本発明の効果は、この段落に記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の評価方法のフロー図の一例を示す。
図2】本発明の評価方法において用いられる評価シートの構成例を示す図である。
図3】本発明の評価方法において用いられる評価シートの構成例を示す図である。
図4】本発明の評価システムの構成例の模式的なブロック図である。
図5】情報処理装置の構成例を示す模式的なブロック図である。
図6】感情用語群の例を示す図である。
図7A】実施例に記載の評価シートの一部を示す図である。
図7B】実施例に記載の評価シートの一部を示す図である。
図8】実施例に記載の嗜好飲料評価において生成されたプリファレンスマップである。
図9】分類された感情用語群の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができる。
【0010】
1.嗜好飲料の評価方法
【0011】
本発明の評価方法は、例えば図1に示されるとおり、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程S1、及び、嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する紅茶飲料の評価の結果に基づき、前記紅茶飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程S2を含んでよい。本発明の方法は、生成された評価結果を出力する出力工程S3をさらに含んでよい。以下で、これらの工程についてそれぞれ説明する。
【0012】
1-1.提示工程S1
【0013】
提示工程S1において、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートが評価者に提示される。前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含んでよい。また、前記感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含んでもよい。これらの感情用語を含む評価シートを用いて評価者に嗜好飲料を評価させることで、特には、これらの感情用語に関する該当性に関する評価を促す評価軸を有する評価シートを用いて嗜好飲料を評価することで、当該嗜好飲料が感情に与える影響を評価することができる。
【0014】
一実施態様において、前記評価シートは、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む。前記嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語は、嗜好飲料をヒトが飲用した場合に当該ヒトが感じる感情を表す用語を意味してよい。前記評価シートは、当該感情用語を複数有するものであってよい。
前記評価シートは、評価対象の飲料を飲んだ場合の感情が各感情用語へ該当するか(感情用語への該当性ともいう)に関する評価を促す評価軸を有してよい。当該評価軸は、当該該当性を評価するための複数の評価段階を有してよい。
【0015】
提示工程S1について、以下でより詳細に説明する。
【0016】
(1)嗜好飲料
前記嗜好飲料は、例えば茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ジュース、果汁入り飲料、及びスポーツドリンク、並びに、その他の清涼飲料を包含する。前記茶飲料は、より具体的には、紅茶飲料、緑茶飲料、及び半発酵茶(例えば烏龍茶など)を包含する。本発明の評価方法が評価対象とする嗜好飲料は、これら列挙された飲料のうちのいずれかであってよい。また、本発明の評価方法が評価対象とする嗜好飲料は、アルコール不含有飲料であってよいが、アルコール含有飲料であってもよい。
【0017】
前記嗜好飲料は、乳不含有嗜好飲料及び乳含有嗜好飲料を包含する。本発明の評価方法は、乳不含有嗜好飲料若しくは乳含有嗜好飲料に対して実行されてよく、又は、これらの両方に対して実行されてもよい。前記乳は、例えば牛、ヤギ、ヒツジ、水牛、又はラクダの乳又はそれら乳由来の乳製品であってよく、又は、植物由来乳代替製品(例えば豆乳又はアーモンドミルク)であってよく、又は、植物油脂クリーミング食品(例えばコーヒーフレッシュなど)であってもよい。
【0018】
前記嗜好飲料は、甘味料不含有嗜好飲料及び甘味料含有嗜好飲料を包含する。本発明の評価方法は、甘味料不含有嗜好飲料若しくは甘味料含有嗜好飲料に対して実行されてよく、又は、これらの両方に対して実行されてもよい。前記甘味料は、糖質系甘味料(例えばグラニュー糖又は砂糖及び果糖ブドウ糖液糖など)であってよく、又は、非糖質系甘味料(例えば高甘味度甘味料、特にはスクラロース又はアセスルファムKなど)であってもよい。
【0019】
前記嗜好飲料は、果実由来材料を含有する嗜好飲料及び果実由来材料を含有しない嗜好飲料を包含する。本発明の評価方法は、果実由来材料を含有する嗜好飲料若しくは果実由来材料を含有しない嗜好飲料に実行されてよく、又は、これらの両方に対して実行されてもよい。前記果実由来材料は、例えば果汁、果肉、果皮、若しくは種子であってよく、又はこれらのうちの2以上の組合せが前記嗜好飲料に含まれてもよい。前記果実は、柑橘類果実、仁果類果実、核果類果実、ベリー類果実、ウリ類果実、及びトロピカルフルーツ類果実のうちのいずれかであってよい。例えば、前記柑橘系果実は、例えばレモン、オレンジ、ベルガモット、又はみかんであってよい。前記仁果類果実は、例えばリンゴ又はナシであってよい。前記核果類果実は、例えばモモ、アプリコット、又はサクランボであってよい。前記ベリー類果実は、例えばストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、又はぶどうであってよい。前記ウリ類果実は、例えばメロン又はスイカであってよい。前記トロピカルフルーツ類果実は、例えばバナナ、キウイフルーツ、パイナップル、又はマンゴーであってよい。
【0020】
前記嗜好飲料は、香料を含有する嗜好飲料及び香料を含有しない嗜好飲料を包含する。本発明の評価方法は、香料を含有する嗜好飲料若しくは香料を含有しない嗜好飲料に実行されてよく、又は、これらの両方に対して実行されてもよい。前記香料は、フルーツ系香料、ナッツ系香料、嗜好飲料系香料、甘味系香料、乳製品系香料、及びバニラ系香料のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせであってよいが、これら以外の香料であってもよい。
前記フルーツ系香料は、例えば、柑橘類香料、仁果類香料、核果類香料、ベリー類香料、ウリ類香料、及びトロピカルフルーツ類香料のうちの1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでよい。前記柑橘系香料は、例えばレモン香料、オレンジ香料、ベルガモット香料、及びみかん香料のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。前記仁果類香料は、例えばリンゴ香料又はナシ香料であってよい。前記核果類香料は、例えばモモ香料、アプリコット香料、又はサクランボ香料であってよい。前記ベリー類香料は、例えばストロベリー香料、ラズベリー香料、ブルーベリー香料、又はぶどう香料であってよい。前記ウリ類香料は、例えばメロン香料又はスイカ香料であってよい。前記トロピカルフルーツ類香料は、例えばバナナ香料、キウイフルーツ香料、パイナップル香料、又はマンゴー香料であってよい。
前記ナッツ系香料は、アーモンド香料、マロン香料、及びヘーゼルナッツ香料であってよい。
前記嗜好飲料系香料は、例えばコーヒー香料(例えばカフェオレ香料など)、紅茶香料、ココア香料、チョコレート香料、茶香料(例えば抹茶香料又は緑茶香料など)であってよい。
前記甘味系香料は、例えばメープル香料、蜂蜜香料、又はシュガー香料であってよい。
前記乳製品系香料は、例えばミルク香料、バター香料、ヨーグルト香料、又はキャラメル香料であってよい。
【0021】
前記嗜好飲料は、温かい嗜好飲料及び冷たい嗜好飲料を包含する。本発明の評価方法は、温かい嗜好飲料若しくは冷たい嗜好飲料に実行されてよく、又は、これらの両方に対して実行されてもよい。前記温かい嗜好飲料は、例えば40℃以上、45℃以上、又は50℃以上の嗜好飲料であってよい。前記冷たい嗜好飲料は、例えば15℃以下又は10℃以下の嗜好飲料であってよい。
また、前記嗜好飲料は、常温の嗜好飲料を包含する。本発明の評価方法は、常温の嗜好飲料に対して実行されてもよい。前記常温の嗜好飲料は、例えば前記温かい嗜好飲料について挙げられた温度下限値未満であり且つ前記冷たい嗜好飲料について挙げられた温度上限値超の温度を有する飲料であってよい。
【0022】
好ましい実施態様において、本発明の評価方法が評価対象とする嗜好飲料は、茶飲料である。本明細書内において、「茶飲料」は、茶を含有する飲料であり、例えば「茶含有飲料」と呼ばれてもよい。例えば原材料として茶(例えば紅茶、緑茶、又は半発酵茶など)を含む飲料が、本明細書内における「茶飲料」に包含される。本明細書内において、「茶飲料」には、茶を含むが、表示に関する規制に従い乳飲料、果実飲料、又は清涼飲料などのように表示される飲料も包含される。例えばミルクティーは、乳飲料という名称で販売されることもあるが、ミルクティーは本明細書内における「茶飲料」に包含される。
当該茶飲料は、乳不含有茶飲料又は乳含有茶飲料であってよい。また、当該茶飲料は、甘味料不含有茶飲料又は甘味料含有茶飲料であってよい。また、当該茶飲料は、果実由来材料を含有する茶飲料又は果実由来材料を含有しない茶飲料であってよい。また、当該茶飲料は、香料を含有する茶飲料又は香料を含有しない茶飲料であってよい。
特に好ましい実施態様において、本発明の評価方法が評価対象とする嗜好飲料は、紅茶飲料である。本明細書内において、「紅茶飲料」は、紅茶を含有する飲料であり、例えば「紅茶含有飲料」と呼ばれてもよい。例えば原材料として紅茶を含む飲料が、本明細書内における「紅茶飲料」に包含される。上記で用語「茶飲料」に関して述べたように、本明細書内において、「紅茶飲料」には、紅茶を含むが、表示に関する規制に従い乳飲料、果実飲料、又は清涼飲料などのように表示される飲料も包含される。例えばミルクティーは、上記のとおり乳飲料という名称で販売されることもあるが、ミルクティーは本明細書内における「紅茶飲料」に包含される。
当該紅茶飲料は、乳不含有紅茶飲料又は乳含有紅茶飲料であってよい。また、当該紅茶飲料は、甘味料不含有紅茶飲料又は甘味料含有紅茶飲料であってよい。また、当該紅茶飲料は、果実由来材料を含有する紅茶飲料又は果実由来材料を含有しない紅茶飲料であってよい。また、当該紅茶飲料は、香料を含有する茶飲料又は香料を含有しない茶飲料であってよい。
前記乳、前記甘味料、前記果実由来材料、及び前記香料は、上記で説明したとおりである。
本発明の評価方法において用いられる感情用語、特には以下で説明される感情用語は、茶飲料の評価、特には紅茶飲料の評価のために特に適している。
【0023】
(2)感情用語
前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含むものであってよい。これらの用語について以下で説明する。
【0024】
(動的な感情用語)
本明細書内において、動的な感情用語は、感情が動くことを表す感情用語を意味してよい。本明細書内において、前記動的な感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの活性化、活発化、高まり、興奮、更新、転換、冷却、又は集中を表す感情用語であってよい。
【0025】
前記動的な感情用語の例として、「気分転換できる」、「幸せな」、「満足する」、「元気になる」、「華やかな」、「たまにはいいな」、「明るくなる」、「トロピカル気分」、「ワクワクする」、「リフレッシュできる」、「さっぱりする」、「さわやかな」、「涼やかな」、「クールダウン」、「清々しい」、「シャキっとする」、「気が引き締まる」、「新しい」、及び「集中できる」を挙げることができる。これらの例のうち、「気分転換できる」及び「リフレッシュできる」は、嗜好飲料(特には茶飲料)を飲用した場合の感情を表す用語として適しており、これらの用語は、他の用語と比べて、評価においてより多くの飲用者によって選択されうる。すなわち、本発明において用いられる感情用語群は、好ましくは、「気分転換できる」及び/又は「リフレッシュできる」を少なくとも含んでよい。
本発明において、上記で挙げられた各感情用語の代わりに、当該感情用語と同様の意味を有する感情用語(又は等価又はほぼ等価な意味を有する感情用語)が用いられてもよい。例えば、「気分転換できる」に関しては、「気分転換」、「気分転換に適している」、「気分が変わる」、及び「気分転換のために良い」などが、前記同様の意味を有する感情用語として挙げられる。すなわち、「気分転換できる」の代わりに、「気分転換」、「気分転換に適している」、「気分が変わる」、又は「気分転換のために良い」などの用語が用いられてよい。また、「リフレッシュできる」に関しては、「リフレッシュ」、「リフレッシュに適している」、「リフレッシュさせる」、及び「リフレッシュのために良い」などが、前記同様の感情用語として挙げられる。すなわち、「リフレッシュできる」の代わりに、「リフレッシュ」、「リフレッシュに適している」、「リフレッシュさせる」、又は「リフレッシュのために良い」などの用語が用いられてもよい。このように、或る感情用語に関して、当該感情用語の主要な意味(特には語幹)を維持したまま当該感情用語の一部を変化又は省略させた感情用語は、等価又はほぼ等価な感情用語として扱われてよい。
【0026】
前記感情用語群に含まれる前記1以上の動的な感情用語は、動的であり且つ温かさを表す感情用語、及び/又は、動的であり且つ冷たさを表す感情用語、を含んでよい。
前記動的であり且つ温かさを表す感情用語は、温かな状態へ感情が動くことを表す感情用語であってよい。
本明細書内において、前記動的であり且つ温かさを表す感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの活性化、活発化、高まり、興奮、更新、又は転換を表す感情用語であってよい。例えば、上記で挙げた用語例のうち、「気分転換できる」、「幸せな」、「満足する」、「元気になる」、「華やかな」、「たまにはいいな」、「明るくなる」、「トロピカル気分」、「新しい」、及び「ワクワクする」が、前記動的であり且つ温かさを表す感情用語として利用されてよい。
本明細書内において、前記動的であり且つ冷たさを表す感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの冷却又は集中を表す感情用語であってよい。例えば、上記で挙げた用語例のうち、「リフレッシュできる」、「さっぱりする」、「さわやかな」、「涼やかな」、「クールダウン」、「清々しい」、「シャキっとする」、「気が引き締まる」、「新しい」、及び「集中できる」が、前記動的であり且つ冷たさを表す感情用語として利用されてよい。
【0027】
(静的な感情用語)
本明細書内において、静的な感情用語は、感情の静まりを表す感情用語を意味してよい。本明細書内において、前記静的な感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの鎮静化、落ち着き、又は不満足を表す感情用語であってよい。
【0028】
前記静的な感情用語の例として、「休息する」、「リラックスできる」、「安らぐ」、癒される」、「なごむ」、「落ち着く」、「上品な」、「のんびりする」、「優雅な」、「ゆったりする」、「ホッとする」、及び「物足りない」を挙げることができる。これらの例のうち、「休息する」及び「リラックスできる」は、嗜好飲料(特には茶飲料)を飲用した場合の感情を表す用語として適しており、これらの用語は、他の用語と比べて、評価においてより多くの飲用者によって選択されうる。すなわち、前記感情用語は、好ましくは、「休息する」及び/又は「リラックスできる」を少なくとも含む。
上記で動的な感情用語について説明したように、本発明において、ここで挙げられた各感情用語の代わりに、当該感情用語と同様の意味を有する感情用語(又は、等価若しくはほぼ等価な意味を有する感情用語)が用いられてもよい。例えば、「休息する」に関しては、「休息」、「休息に適している」、「休まる」、及び「休息のために良い」などが同様の意味を有する感情用語の例として挙げられる。すなわち、「休息する」の代わりに、「休息」、「休息に適している」、「休まる」、又は「休息のために良い」などの用語が用いられてもよい。また、「リラックスできる」に関しては、「リラックス」、「リラックスさせる」、「リラックスに適している」、又は「リラックスのために良い」などが、代わりに用いられてもよい。このように、或る感情用語に関して、当該感情用語の主要な意味(特には語幹)を維持したまま当該感情用語の一部を変化又は省略させた感情用語は、等価又はほぼ等価な感情用語として扱われてよい。
【0029】
前記感情用語群に含まれる前記1以上の静的な感情用語は、静的であり且つ温かさを表す感情用語、及び/又は、静的であり且つ冷たさを表す感情用語、を含んでよい。
前記静的であり且つ温かさを表す感情用語は、温かな状態へ感情が静まることを表す感情用語を意味してよい。
本明細書内において、前記静的であり且つ温かさを表す感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの鎮静化又は落ち着きを表す感情用語であってよい。例えば、上記で挙げた用語例のうち、「休息する」、「リラックスできる」、「安らぐ」、「癒される」、「なごむ」、「落ち着く」、「上品な」、「のんびりする」、「優雅な」、「ゆったりする」、及び「ホッとする」が、前記静的であり且つ温かさを表す感情用語として利用されてよい。
本明細書内において、前記静的であり且つ冷たさを表す感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの不満足を表す感情用語であってよい。例えば、上記で挙げた用語例のうち、「物足りない」が、前記静的であり且つ冷たさを表す感情用語として利用されてよい。
【0030】
また、本発明の評価方法において用いられる感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含んでもよい。これらの用語について、以下に説明する。
【0031】
(温かさを表す感情用語)
本明細書内において、温かさを表す感情用語は、感情の温かみを示す又は感情が温かくなることを示す感情用語を意味してよい。本明細書内において、前記温かさを表す感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちの温まり、なごみ、又は安らぎを表す感情用語であってよい。
【0032】
前記温かさを表す感情用語の例として、「気分転換できる」、「幸せな」、「満足する」、「元気になる」、「華やかな」、「たまにはいいな」、「明るくなる」、「トロピカル気分」、「ワクワクする」、「休息する」、「リラックスできる」、「安らぐ」、「癒される」、「なごむ」、「落ち着く」、「上品な」、「のんびりする」、「優雅な」、「ゆったりする」、「新しい」、及び「ホッとする」を挙げることができる。
これらの用語についても、上記で動的な感情用語に関して述べたように、挙げられた各感情用語の代わりに、当該感情用語と同様の意味を有する感情用語(又は、等価若しくはほぼ等価な意味を有する感情用語)が用いられてもよい。
【0033】
(冷たさを表す感情用語)
本明細書内において、冷たさを表す感情用語は、感情の冷たさを示す又は感情が冷たさなることを示す感情用語を意味してよい。本明細書内において、前記冷たさを表す感情用語は、例えば嗜好飲料を飲用した場合における気持ちのクールさ又は静まりを表す感情用語であってよい。
【0034】
前記冷たさを表す感情用語の例として、「リフレッシュできる」、「さっぱりする」、「さわやかな」、「涼やかな」、「クールダウン」、「清々しい」、「シャキっとする」、「集中できる」、「気が引き締まる」、「新しい」、及び「物足りない」を挙げることができる。
これらの用語についても、上記で動的な感情用語に関して述べたように、挙げられた各感情用語の代わりに、当該感情用語と同様の意味を有する感情用語(又は、等価若しくはほぼ等価な意味を有する感情用語)が用いられてもよい。
【0035】
一実施態様において、本発明に従う嗜好飲料評価方法は、例えば、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、及び、嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、を含んでよく、ここで、前記感情用語群は、1以上の温かさを表す感情用語及び/又は1以上の冷たさを表す感情用語を含んでよい。本発明の評価方法は、このように構成されてもよい。
【0036】
(感情用語の数)
本発明の評価方法において用いられる感情用語の数(特には前記評価シート中の前記感情用語群を構成する感情用語の数、より特には動的感情用語及び静的感情用語の合計数)は、例えば100以下であってよく、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、さらにより好ましくは50以下、45以下、又は40以下である。
本発明の評価方法において用いられる感情用語の数が上記の上限値以下であることによって、評価者が評価しやすくなり、より効率的な又はより適切な評価が可能となる。
本発明の評価方法において用いられる感情用語の数は、例えば2以上であってよく、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。前記感情用語の数が上記下限値以上であることによって、嗜好飲料飲用時の感情をより適切に表現することができる。
【0037】
(3)評価シート
前記評価シートは、前記感情用語群に含まれる各感情用語を評価軸として含むものであってよい。前記評価軸は、各感情用語への該当性を表す複数の評価段階を有してよく、そして、前記評価シートは、各感情用語の評価軸においてどの評価段階に該当するかを評価者に選択させるように構成されてよい。
前記評価シートが有する評価軸の数は、当該評価シートが有する感情用語の数に対応するものであってよい。当該数は、例えば100以下であってよく、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、さらにより好ましくは50以下、45以下、又は40以下である。また、当該数は、例えば2以上であってよく、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
【0038】
前記評価軸は、例えば、或る感情用語へ該当することを示す1以上の評価段階(「該当性を示す1以上の評価段階」ともいう)と、感情用語へ該当しないことを示す1以上の評価段階「非該当性を示す1以上の評価段階」ともいう)と、を有してよい。さらに、前記評価軸は、感情用語へ該当するともしないとも言えないことを示す評価段階(「中間の評価段階」ともいう)を有してよい。
前記評価軸の例は、例えば或る用語に関して、「非常にそう思う」、「そう思う」、「ややそう思う」、「どちらともいえない」、「あまりそう思わない」、「そう思わない」、及び「全くそう思わない」という7つの評価段階を有する評価軸であってよい。この評価軸において、「非常にそう思う」、「そう思う」、及び「ややそう思う」の3つが、或る感情用語へ該当することを示す1以上の評価段階に相当し、より前の用語ほど該当性が高い。この評価軸において、「あまりそう思わない」、「そう思わない」、及び「全くそう思わない」の3つが、或る感情用語へ該当しないことを示す1以上の評価段階に相当し、より後の用語ほど該当性が低い。また、この評価軸において、「どちらともいえない」は、感情用語へ該当するともしないとも言えないことを示す評価段階に相当する。
前記評価軸の他の例は、或る用語に関して、「そう思う」、「ややそう思う」、「どちらでもない」、「あまりそう思わない」、及び「そう思わない」の5つの評価段階を有する評価軸であってよい。また、前記評価軸のさらに他の例は、或る用語に関して、「そう思う」、「どちらでもない」、及び「そう思わない」の3つの評価段階を有する評価軸であってよい。
前記評価軸のさらに、他の例は、或る用語に関して、「当てはまる」、及び、「当てはまらない」、という2つの評価段階を有する評価軸や、「強く感じる」、「感じる」、「感じない」、及び「全く感じない」の4つの評価段階を有する評価軸であってもよい。このように、中間の評価段階を有さないものであってもよい。また、このように、該当性を示す用語は、「思う」という該当性を表す動詞を利用するものに限られず、他の該当性を表す動詞(例えば上記のとおり「当てはまる」や「感じる」など)を利用するものであってもよい。
評価段階の数は、上記のように3段階以上であってよく、好ましくは3段階~10段階であってよく、より好ましくは5段階~10段階であり、さらにより好ましくは7段階であってよい。評価段階の数が7段階であることは、適切に飲料評価を実施するために特に好ましい。
【0039】
評価シートの構成例が図2に示されている。同図に示される評価シートには、31の感情用語が表示されている。さらに、各感情用語の評価軸も表示されている。当該評価軸は、「非常にそう思う」、「そう思う」、「ややそう思う」、「どちらともいえない」、「あまりそう思わない」、「そう思わない」、及び「全くそう思わない」という7つの評価段階を有している。
当該評価シートは、評価者に対して、各感情用語について、該当性を評価するよう促す表示として「問.飲料Aをお召し上がりになって、あなたの気持ちに最も近いものをそれぞれ1つお選びください。」を有している。すなわち、当該評価シートは、上記7つの評価段階のうち、いずれの評価段階に該当するかを促している。
【0040】
評価シートの変形例が図3に示されている。同図においては、各感情用語の評価軸について、「+3」、「+2」、「+1」、「0」、「-1」、「-2」、及び「-3」と示されており、さらに左向き矢印と「そう思う」との組み合わせ、及び、右向き矢印と「そう思わない」との組み合わせ、が示されている。本発明の評価において用いられる評価シートは、このように数値によって評価軸が表現されてもよく、又は、他の記号(例えば星の数など)によって評価軸が表現されてもよい。
【0041】
当該評価シートを提示された評価者は、各感情用語について、いずれの評価段階に該当するかを選択する。選択結果は、当該評価シートへ入力され、例えば情報処理装置によって記憶される。
【0042】
(4)感情用語群の特定方法
本発明の評価方法において用いられる感情用語群は、例えば、嗜好飲料の飲用時に感じる感情を表す用語群を収集する用語収集プロセス、及び、前記用語収集プロセスにおいて収集された用語群のうちから、前記評価方法において用いる感情用語を特定する用語特定プロセスを実行することを含む、評価用感情用語の特定方法によって特定されてよい。
すなわち、本発明の評価方法において用いられる感情用語群は、当該特定方法を実行することによって特定された感情用語を含んでよい。
【0043】
前記用語収集プロセスにおいて、本発明の評価対象となる嗜好飲料と同種の嗜好飲料を飲用した場合の感情を表す感情用語が収集される。
当該収集のために、ヒトに前記嗜好飲料を飲用した場合を想像させて(すなわち嗜好飲料を飲用せずに)、当該想像したときに当該ヒトが感じた感情を表す用語を、当該ヒトに所定の用紙に記入させ又は所定の端末へ入力させてよい。
また、当該収集のために、ヒトに前記嗜好飲料を飲用させて、当該引用したときに当該ヒトが感じた感情を表す用語を、当該ヒトに所定の用紙に記入させ又は所定の端末へ入力させてよい。
【0044】
このようにして記入又は入力された用語群のうち、同様の意味を有する複数の用語は、1つの用語へと統一されてよい。例えば、平仮名、カタカナ、及び漢字で同じ意味を指す用語は統一されてよい。また、例えば「すっきりする」及び「すっきりした」などの、同一又は類似の語幹を有する用語は統一されてよい。また、「香りで前向きな気持ちが高まった」などの文章的な用語は、その文章的な用語のうちの特徴的用語部分が、感情用語として抽出されてよい。また、対義語及び同義語も集約されてよい。これらの用語の統一又は集約は、当業者により適宜実行されてよい。
【0045】
次に、前記用語特定プロセスにおいて、前記用語収集プロセスにおいて収集された用語群(特には前記統一又は集約後の用語群)のうちから、前記評価方法において用いる感情用語が特定される。例えば、当該用語特定プロセスにおいて、複数種の嗜好飲料が用いられてよく、前記複数種の嗜好飲料のそれぞれについて感情用語が特定されてよい。
【0046】
当該特定のために、例えばCATA法が実行されてよい。当該CATA法を実行するために、評価者に対して複数種の嗜好飲料(本発明の評価方法の対象となる嗜好飲料と同系統の嗜好飲料)を飲用させる。例えば、本発明の評価方法の対象となる嗜好飲料が紅茶飲料である場合、当該特定プロセスにおいて飲用される嗜好飲料は複数種の紅茶飲料であってよい。
前記複数種の嗜好飲料は、例えば1以上の乳不含有嗜好飲料若しくは1以上の乳含有嗜好飲料又はこれらの両方を含んでよい。また、前記複数種の嗜好飲料は、1以上の甘味料不含有嗜好飲料若しくは1以上の甘味料含有嗜好飲料又はこれらの両方を含んでよい。また、前記複数種の嗜好飲料は、果実由来材料を含有する1以上の嗜好飲料及び果実由来材料を含有しない1以上の嗜好飲料又はこれらの両方を含んでよい。また、前記複数種の嗜好飲料は、1以上の温かい嗜好飲料若しくは1以上の冷たい嗜好飲料又はこれらの両方を含んでよい。上記(1)における説明が、感情用語群の特定方法において用いられる嗜好飲料についてもあてはまる。このような組成の異なる2以上の飲料が用いられることは、より適切な感情用語を特定するために有用である。
【0047】
前記CATA法を実行するために、前記用語収集プロセスにおいて収集された用語群のチェックリストが用意される。当該チェックリストは、表示装置に表示されてよく、又は、媒体(例えば印刷媒体)に表示されてもよい。
前記CATA法において、例えば複数の評価者のそれぞれに嗜好飲料を飲用した場合を想像させる。そして、各評価者に、飲用した場合に感じたことがある感情を表す用語について、前記チェックリストにおいてチェックさせる。各評価者は、複数種の嗜好飲料のそれぞれについて、同様のチェックを実行する。このようにして得られたチェック結果が集計され、チェックされた回数がより多い用語が、前記評価方法において用いる感情用語として特定される。
特定される用語の数は、例えば100以下であってよく、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、さらにより好ましくは50以下、45以下、又は40以下である。また、特定される用語の数は、例えば2以上であってよく、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
例えば、前記用語収集プロセスにおいて収集された用語群に対して、前記CATA法を実行して、当該用語群のうちから、チェックされた回数がより多い10~50の用語、より特には20~40の用語が特定されてよい。
【0048】
当該CATA法の実行によって特定された用語群について、さらに統一又は集約処理が実行されてよい。当該統一又は集約処理において、例えばコレスポンデンス分析が実行されてよい。当該コレスポンデンス分析によって、類似の用語が統一又は集約されてよい。
また、当該CATA法の実行によって特定された用語群に含まれる用語のそれぞれについて、寄与度が算出されてもよい。当該寄与度は、(前記CATA法においてチェックされた回数)/(評価者の数)、である。当該寄与度を参照して、用語の削除又は追加が行われてもよい。
【0049】
(5)他の評価
前記提示工程において、嗜好飲料の嗜好性評価又は官能評価のための評価票も提示されてよい。当該評価票は前記評価シートに含まれてよく、例えば当該嗜好性評価又は当該官能評価のための評価軸として含まれていてもよい。すなわち、いくつかの実施態様において、前記評価シートは、前記感情用語に関する評価を行うための評価軸に加えて、他の評価を行うための評価軸を有してもよい。
前記嗜好性評価に関する評価票(評価軸)は、評価対象の飲料に対する評価者の嗜好(例えば、おいしいと感じたか、又は、どの程度おいしいと感じたか)に関する評価を促す評価軸を有してよい。当該評価軸は、当該嗜好に関する評価のための複数の評価段階を有してよい。
前記官能評価に関する評価票(評価軸)は、評価対象の飲料から評価者が受けた官能的な感覚に関する評価を促す評価軸を有してよい。当該評価軸は、当該官能的な感覚に関する評価のための複数の評価段階を有してよい。
【0050】
前記他の評価は、例えば嗜好性評価であってよい。前記嗜好性評価は、例えば、評価者の紅茶飲料に対する嗜好性に関する評価である。前記嗜好性評価を行うための評価票は、例えば嗜好性に関する評価軸を有する。当該評価軸は、例えば「おいしさ」又は「好みの程度」などの嗜好性評価項目に関する評価軸であってよい。例えば、評価項目「おいしさ」に関する評価軸は、例えば「非常においしい」、「とてもおいしい」、「ややおいしい」、「わずかにおいしい」、「どちらともいえない」、「わずかにおいしくない」、「あまりおいしくない」、「とてもおいしくない」、及び「全くおいしくない」という9つの評価段階を含んでよい。なお、評価段階の数は、9つに限られない。評価段階の数は複数であってよく、例えば2~10のうちのいずれかであってよい。
例えば、前記評価票は、「おいしい」、「どちらともいえない」、及び「おいしくない」という3つの評価段階を有してもよく、又は、「おいしい」及び「おいしくない」という2つの評価段階を有してもよい。
また、これらの評価段階のそれぞれについて、例えば「+4」、「+3」、「+2」、「+1」、「0」、「-1」、「-2」、「-3」、「-4」、のスコアが割り当てられてもよい。当該スコアが割り当てられていることで、評価結果を数値化することができる。なお、割り当てられるスコアの値や段階の数は、当業者により適宜選択されてよい。例えば5つの評価段階について、「5」、「4」、「3」、「2」、及び「1」などの5段階のスコアが割り当てられてもよい。
このように前記他の評価が、スコアを利用する評価であることによって、前記感情用語を用いた評価と組み合わせた場合における利用性が高まる。例えば、本発明の評価方法において、前記感情用語を用いた評価の評価結果と前記他の評価の評価結果とを用いた分析が実行されてもよい。当該分析は、例えばこれらの評価結果を用いてプリファレンスマップを生成することを含んでよい。また、当該分析は、これらの評価結果を用いてペナルティ分析を実行することを含んでもよい。
【0051】
前記他の評価は、飲用感評価であってもよい。前記飲用感評価は、例えば、評価者が嗜好飲料を飲用した場合に当該嗜好飲料に対して有した飲用感に関する評価である。前記飲用感評価を行うための評価票は、例えば飲用感に関する評価軸を有する。当該評価軸は、例えば「本格感」、「手作り感」、「出来たて感」、及び「新鮮感」などの飲用感の評価項目に関する評価軸であってよい。例えば、評価項目「本格感」に関する評価軸は、「非常に本格的である」、「本格的である」、「やや本格的である」、「どちらともいえない」、「あまり本格的でない」、「本格的でない」、及び「全く本格的でない」という、評価軸に関する7つの評価段階を含む。なお、評価段階は、7つに限られない。評価段階の数は複数であってよく、例えば2~10のうちのいずれかであってよい。
これらの評価段階のそれぞれについて、例えば「+3」、「+2」、「+1」、「0」、「-1」、「-2」、及び「-3」のスコアが割り当てられる。当該スコアが割り当てられていることで、評価結果を数値化することができる。なお、割り当てられるスコアの値や評価段階の数は、当業者により適宜選択されてよい。例えば5つの評価段階について、「5」、「4」、「3」、「2」、及び「1」などの5段階のスコアが割り当てられてもよい。
【0052】
(6)評価対象となる嗜好飲料の状態
前記嗜好飲料は、当該嗜好飲料の想定飲用温度へと温度調節された状態で、前記評価者に飲用される。いずれの評価者も、同じ温度の嗜好飲料が提供される。
嗜好飲料を冷たい状態で購入者が飲用することが想定される場合は、当該嗜好飲料の温度は、例えば15℃以下、特には12℃以下、より特には10℃以下に調節された状態で評価者に飲用される。また、当該温度は、例えば1℃以上、特には2℃以上、より特には4℃以上であってよい。
嗜好飲料を温かい状態で購入者が飲用することが想定される場合は、当該嗜好飲料の温度は、例えば40℃以上、特には45℃以上、より特には50℃以上に調節された状態で評価者に飲用される。また、当該温度は、例えば95℃以下、特には90℃以下、より特には85℃以下であってよい。
なお、嗜好飲料は、常温で評価者に飲用されてもよく、例えば15℃~40℃で評価者に飲用されてもよい。
【0053】
(容器)
前記嗜好飲料は、容器に入った状態で、前記評価者により飲用される。前記容器は、例えばカップであり、特にはプラスチックカップである。当該カップは、蓋がされていてよい。当該カップは、嗜好飲料が例えば20ml~200ml、特には30ml~150ml入るように構成されていてよい。
当該カップの開口部のサイズ(開口が円形の場合は直径、開口が矩形の場合は長辺の長さ)は、例えば40mm~100mm、特には50mm~80mmである。当該カップの底部(底部が円形の場合は直径、開口が矩形の場合は長辺の長さ)は、例えば20mm~80mm、特には30mm~60mmである。また、当該カップの高さは、例えば30mm~100mm、特には30mm~70mmである。
【0054】
(ストロー)
前記嗜好飲料は、例えばストローで飲用されてよい。例えば嗜好飲料が入った蓋つきカップが用意され、前記蓋にストローを刺し、そして、当該ストローを介して前記嗜好飲料が飲用されてよい。
当該ストローの長さは、例えば9.5cm~30cm、特には12cm~25cmであってよい。当該ストローの直径は、例えば3mm~15mm、特には3mm~10mmであってよい。
【0055】
(温度調節設備)
嗜好飲料は、好ましくは、温度を調節する温度調節設備において温度調節されていることが好ましい。当該設備は、例えば加熱設備、恒温設備、又は冷蔵設備であってよい。当該嗜好飲料は、所定の温度で評価者に飲用されてよい。代替的には、当該嗜好飲料は、前記設備から出した後に、例えば室温で所定時間経過した後に、評価者に飲用されてもよい。これら温度及び時間は、適宜選択されうる。
【0056】
(7)提示工程を行う実体
提示工程において、情報処理装置が、当該装置内に記憶されている前記評価シートを前記表示装置に提示させてよい。当該情報処理装置の構成例は、以下の2.において説明する。
また、前記評価シートが表示された媒体が、前記用語リストの評価者への提示を行ってもよい。前記媒体は、前記評価シートが記載された紙、紙状シート、又はプラスチックシートなどの印刷媒体であってよい。
【0057】
(8)評価の実行
前記評価シートを提示された評価者は、評価対象となる嗜好飲料を飲用し、そして、その評価結果を評価シートに入力する。例えば感情用語に関する評価に関して、評価結果は、前記評価軸上のいずれの評価段階に該当するかを示す評価結果であってよい。また、嗜好性評価又は官能評価に関しても、評価結果は、前記評価軸上のいずれの評価段階に該当するかを示す評価結果であってよい。
【0058】
これらの評価結果に関するデータは、当該評価シートを提示した情報処理装置によって受信されてよい。これらの評価結果に関するデータは、後述の評価結果生成工程を実行する情報処理装置によって受信されてもよい。
【0059】
これらの評価結果に関するデータは、数値化されてもよい。
例えば、前記感情用語に関する評価に関して、評価軸上の複数の評価段階のそれぞれにあらかじめスコアが割り当てられてよい。そして、当該データは、各感情用語と各感情用語に関する評価結果を示すスコアとが、互いに関連付けられたデータを有してよい。
また、前記嗜好性評価又は官能評価に関しても、評価軸上の複数の評価段階のそれぞれにあらかじめスコアが割り当てられてよい。そして、当該データは、嗜好性又は官能性と当該嗜好性又は当該官能性の評価結果を示すスコアとが、互いに関連付けられたデータを有してよい。
【0060】
1-2.評価結果生成工程S2
【0061】
評価結果生成工程S2において、前記評価シート中の各感情用語の評価軸のうちから前記評価者が前記嗜好飲料について選択した評価段階に基づき、前記嗜好飲料の評価結果が生成される。例えば、評価結果生成工程S2において、情報処理装置が、上記で述べた評価結果に関するデータに基づき、嗜好飲料の評価結果を生成してよい。
【0062】
評価結果生成工程S2において、各嗜好飲料について、前記評価シート中の各感情用語に関する評価結果が集計される。前記評価結果生成工程において、前記集計された評価結果に基づき、例えばコレスポンデンス分析が実行される。当該コレスポンデンス分析によって、プロットデータが生成され、特には二軸の散布図プロットデータが生成される。当該プロットデータ中において、各嗜好飲料の位置が特定される。これにより、各嗜好飲料が感情に与える影響を評価することができる。また、2以上の嗜好飲料間における、感情に与える影響が類似であるかを評価することもできる。このように得られたプロットデータは、例えば嗜好飲料の開発において有用である。
このように、前記評価結果生成工程において生成される評価結果は、例えば感情用語に関する評価結果に基づき生成されたプロットデータ(例えば散布図プロットデータなど)を含んでよい。また、当該プロットデータ中には、評価対象とされた嗜好飲料の位置が特定されていてもよい。
【0063】
また、評価結果生成工程S2において、上記1-1.において述べた他の評価において前記評価者が前記嗜好飲料について選択した評価段階が参照されてもよい。当該他の評価は、上記のとおり、例えば嗜好性評価又は飲用感評価であってよく、特には嗜好性評価である。
このように、前記評価結果生成工程において、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に加え、前記評価票中の嗜好性評価又は官能評価に関する評価結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果が生成されてよい。
【0064】
例えば、評価結果生成工程S2において、各嗜好飲料について、嗜好性評価又は官能評価の評価段階の平均値が算出され、当該平均値に基づくデータが、前記プロットデータ中に含まれてよい。例えば、評価結果生成工程S2において、各嗜好飲料の嗜好性評価又は官能評価の評価段階に基づき、プリファレンスマップが生成されてよい。当該プリファレンスマップには、嗜好性評価又は官能評価の平均値データが表示されてよい。
また、予め生成されたプリファレンスマップ上に、評価対象の嗜好飲料の評価結果(例えば感情評価の結果、特には感情評価の結果に加え他の評価の結果)がプロットされてもよい。
評価結果生成工程S2は、提示工程S1を実行する情報処理装置により実行されてよいが、別の情報処理装置により実行されてもよい。
【0065】
以上のように、本発明は、嗜好飲料の評価方法であって、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、を含む前記評価方法を提供する。
【0066】
1-3.出力工程S3
【0067】
本技術に従う評価方法は、評価結果生成工程S2において生成された評価結果を出力する出力工程S3を含んでもよい。出力工程S3において、当該評価結果が、紙又はプラスチックシートなどの印刷媒体に出力されてよく、又は、表示装置などの表示媒体に出力されてもよい。例えば、評価結果生成工程S2を実行した情報処理装置が、出力工程S3を実行してよい。
【0068】
2.評価システム
【0069】
本発明は、嗜好飲料の評価システムも提供する。当該評価システムは、上記1.において述べた工程S1~S3のうちの1つ、2つ、又は3つを実行するように構成されていてよい。特には、当該評価システムは、上記1.において述べた工程S1及び/又はS2を実行するように構成されてよく、又は、上記1.において述べた工程S1及び/又はS2に加え、工程S3を実行するように構成されてもよい。
例えば、前記評価システムは、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、及び、嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程を実行するように構成されてよく、ここで、前記感情用語群は、1以上の動的な感情用語及び/又は1以上の静的な感情用語を含んでよい。
また、前記評価システムは、嗜好飲料飲用時の感情に関する感情用語群を含む評価シートを評価者に提示する提示工程、及び、嗜好飲料を飲用した前記評価者による、前記評価シート中の各感情用語に関する嗜好飲料の評価の結果に基づき、前記嗜好飲料の評価結果を生成する評価結果生成工程、を実行するように構成されてよく、ここで、前記感情用語群は、温かさに関する1以上の感情用語及び/又は冷たさに関する1以上の感情用語を含んでよい。
【0070】
本発明の評価システムの構成例を図4に示す。同図に示されるように、本発明の評価システム1は、工程S1を実行する1以上の情報処理装置10-A1、10-A2、10-A3、・・・、10-An(以下「第一情報処理装置」ともいう)と、工程S2を実行する1以上の情報処理装置10-B(以下「第二情報処理装置」ともいう)と、を含んでよい。このように、本発明の評価システムは、複数の情報処理装置の組み合わせとして構成されてよい。
工程S1を実行して評価者による評価結果を取得した1以上の(特には複数の)第一情報処理装置が、当該評価結果を、工程S2を実行する1つの第二情報処理装置に送信する。そして、前記第二情報処理装置が、工程S2を実行する。必要に応じて、前記第二情報処理装置は工程S3を実行する。これにより、複数の評価者が同時に嗜好飲料を評価することができ、効率的な評価が可能となる。
また、本発明の評価システムは、例えば上記1.において述べた評価シートと情報処理装置との組み合わせとして構成されてもよい。例えば前記評価シートが工程S1を行い、そして、前記評価シートへ入力された評価結果に基づき、当該情報処理装置が工程S2を実行してよい。この場合において、1以上の(特には複数の)評価シートのそれぞれに、各評価者が評価結果を入力してよい。
このように、本発明の評価システムは、工程S1を実行する1以上の情報処理装置及び/又は工程S1において提示される評価シートと、工程S2を実行する情報処理装置と、を含む評価システムとして構成されてもよい。
また、本発明の評価システムは、上記1.の(6)において述べた構成要素(容器、ストロー、及び温度調節設備)のいずれかを含むものとして構成されてもよい。
【0071】
本明細書内で言及される情報処理装置の構成例を図5に示す。同図に示される情報処理装置10は、処理部101、記憶部102、入力部103、出力部104、及び通信部105を備えている。情報処理装置10は、例えば汎用のコンピュータにより構成されてよい。
【0072】
処理部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びRAMを含みうる。CPU及びRAMは、例えばバスを介して相互に接続されていてよい。バスには、さらに入出力インタフェースが接続されていてよい。バスには、当該入出力インタフェースを介して、入力部103、出力部104、及び通信部105が接続されていてよい。
【0073】
処理部101は、さらに、記憶部102からデータを取得し及び/又は記憶部102にデータを記録できるように構成されていてよい。記憶部102は、各種データを記憶する。記憶部102は、例えば、以下のデータのうちのいずれか1つ又は複数を記憶できるように構成されていてよい:
提示工程S1において提示される評価シート、
提示工程S1において、評価シートに入力された評価結果データ、及び
評価結果生成工程S2において生成された評価結果データ、
などを記憶できるように構成されていてよい。
【0074】
また、記憶部102には、オペレーティング・システム(例えば、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、又はLINUX(登録商標)など)、本発明に従う評価方法(特には当該方法に含まれる少なくとも一つの工程)を情報処理装置10(特には処理部)に実行させるためのプログラム、及び他の種々のプログラムが格納されうる。なお、これらのプログラムは、記憶部102に限らず、記録媒体に記録されていてもよい。
【0075】
入力部103は、各種データの入力を受け付けることができるように構成されているインタフェースを含みうる。入力部103は、そのような操作を受けつける装置として、例えばマウス、キーボード、及びタッチパネルなどを含みうる。入力部103は、前記評価シートを用いた評価における評価者による評価結果の入力を受け付ける。また、入力部103は、前記他の評価の評価結果の入力を受け付けてよい。
【0076】
出力部104は、各種データの出力を行うことができるように構成されているインタフェースを含みうる。例えば、出力部104は、評価シートを出力する。また、出力部104は、前記出力工程において、嗜好飲料の評価結果を出力してもよい。出力部104は、当該出力を行う装置として例えば表示装置及び/又は印刷装置などを含んでよい。
【0077】
通信部105は、情報処理装置10をネットワークに有線又は無線で接続するように構成されうる。通信部105によって、情報処理装置10は、ネットワークを介して各種データを取得することができる。取得したデータは、例えば記憶部102に格納されうる。通信部105の構成は当業者により適宜選択されてよい。
【0078】
情報処理装置10は、例えばドライブ(図示されていない)などを備えていてもよい。ドライブは、記録媒体に記録されているデータ(例えば上記で挙げた各種データ)又はプログラムを読み出して、RAMに出力することができる。記録媒体は、例えば、microSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリであるが、これらに限定されない。
【0079】
また、本発明は、本発明の評価方法を実行する情報処理装置も提供する。本発明に従う情報処理装置は、上記で述べた情報処理装置10であってよく、例えば工程S1及び/又はS2を実行するように構成されてよい。当該情報処理装置は、工程S1及び/又はS2に加え、工程S3をさらに実行してもよい。
【0080】
3.嗜好飲料評価用感情用語群の特定方法
【0081】
本発明は、嗜好飲料評価用感情用語群の特定方法も提供する。当該特定方法は、例えば、嗜好飲料を飲用したヒトに当該飲用時に感じた感情を表す感情用語を特定させる用語特定プロセスを含んでよい。前記特定プロセスにおいて、1以上の乳不含有紅茶飲料若しくは1以上の乳含有紅茶飲料又はこれらの両方含む複数種の紅茶飲料が用いられ、前記複数種の紅茶飲料のそれぞれについて感情用語が特定されてよい。前記特定方法は、上記1.の(4)において説明したとおりに実行されてよく、その説明が本発明の特定方法にもあてはまる。
【0082】
以下で実施例を参照して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
4.実施例
【0084】
以下のとおりにして、嗜好飲料の評価において用いられる感情用語を特定し、評価した。
【0085】
(1)用語の収集
20~50代男女の調査対象者60名(森永乳業社員)に、2段階に分けて調査を実施した。
1段階目において、各調査対象者は、紅茶を試飲せずに、紅茶(ホット、アイス、ストレートティー、フレーバーティーを含む)を飲んだシーンを想像し、その時に感じた気持ちや感情を表す感情用語を調査票に自由に記入した。各調査対象者が記入した感情用語が収集された。
2段階目において、各調査対象者は、市販の紅茶サンプルを一人当たり2品試飲し、サンプルを飲んだ際に感じた気持ちや感情を表す感情用語を調査票に自由に記入した。各調査対象者が記入した感情用語が収集された。サンプルは市販の紅茶飲料6品(甘味料含有レモンティー1種、甘味料不含有レモンティー1種、甘味料含有紅茶飲料1種、甘味料不含有紅茶飲料1種、甘味料含有フルーツティー1種、フレーバーティー1種)であった。これらのうち、ランダムに一人当たり2品を選定し飲用した。
【0086】
(2)定性的スクリーニング
調査対象者が調査票へ記入した後に、調査票に記入された表現用語が集められた。調査評価から収集された感情の表現用語は、合計で226語であった。これら226語に対して定性的スクリーニングが行われて、85語が選択された。
当該定性的スクリーニングは、飲料開発に携わる専門家8名により行われた。当該定性的スクリーニングでは、平仮名、カタカナ、漢字で同じ意味を指す用語の統一が行われた。例えば「すっきりする」及び「すっきりした」のように、同じ意味を持つ用語は統一された。また、例えば「前向きな気持ちが高まった」などの文章で得られた感情用語については、その文章のうちの主要な感情用語である「前向きな」を採用した。対義語及び同義語も集約された。
【0087】
(3)CATA(Check-All-That-Apply)法による調査
上記4-2.において得られた85語の用語に対して、CATA法による評価を行った。当該評価において、20~60代調査対象者200名に対して、用語を提示してアイスミルクティー、アイスフルーツティー、及びアイスストレートティーのそれぞれを飲んだ際に「感じたことがある」感情について、試飲をせずに各調査対象者の経験に基づいてチェックを行ってもらった。
【0088】
(4)定量的スクリーニング
前記CATA法による評価結果は、表計算ソフト(Excel(登録商標)、Microsoft社製)を用いて、定量的スクリーニングを実施した。アイスストレートティー、アイスミルクティー、アイスフルーツティーで実施された各品種の85語の感情用語の選択された数を全て集計し(全員が選択した場合は、最大200名×3品種=600チェック)、選択された数の多い順に並び替えを実施し、上位30語を選定した。
【0089】
(5)定性的スクリーニング(統計解析)
定性的スクリーニングでは、SAS Institute Japan株式会社のJMP(登録商標)(バージョン14.0)を使用して対応分析(コレスポンデンス分析)を実施した。この結果から「スッキリする」と「さっぱりする」は、類似しているため「さっぱりする」に集約された。「気分が晴れる」は「リフレッシュする」と類似するため集約された。「ここちよい」は「なごむ」「くつろぐ」と類似しているため削除された。「くつろぐ」は状態をしめし、「やすらぐ」と類似しているため「やすらぐ」に集約された。「潤う」は感情ではなく状態を示す用語であるため削除された。
【0090】
ここまでで得られた用語は25語であった。これらの用語について各アイスストレートティー、アイスミルクティー、アイスフルーツティーで用語の寄与度を調査した。当該調査は表計算ソフト(エクセル)を使用して行われた。「感じたことがある」と回答された数を回答者数200名全数で割り、「感じたことがある人の割合」を計算した。さらに、ストレート、ミルク、フルーツの3つのカテゴリの内、その割合が高かったカテゴリを選択した。
このようにして得られた25語のうち、「リフレッシュできる」、「気分転換できる」、「休息する」、及び「リラックスできる」は、CATA法において調査対象者のうちの50%以上のヒトにおいて選択された。そのため、これらの用語は、飲料を飲んだ場合の感情を評価するために特に適していると考えられる。
【0091】
前記の計算から、得られた25語は各飲料カテゴリに当てはめると、アイスストレートティー6語、アイスミルクティー13語、アイスフルーツティー6語になった。
【0092】
(6)用語の追加
各カテゴリについてバランスよく評価するために、アイスストレートティーとアイスフルーツティーにおいて、総評では30位以降であった用語について「感じたことがある人の割合」が多い順に3語ずつを追加し、合計31語の用語を得た。これらの用語が、図6に示されている。
【0093】
(7)飲料サンプルの作成
(7-1)アイスティーの抽出
Lipton YELLOW LABEL(ユニリーバ・ジャパン株式会社)を用いて、以下の条件で抽出した。
・抽出温度:100℃
・湯量:100ml
抽出された紅茶は以下表1の通り、水、グラニュー糖、果汁を入れ調整し、10℃以下に冷却した。
【0094】
【表1】
【0095】
(7-2)アイスティーサンプルの調製
上記表1中のグラニュー糖(北海道糖業株式会社)は逆浸透膜水に溶解して用いられた。成分無調整牛乳(無脂乳固形分:8.3%以上、乳脂肪分:3.5%以上)は、市販のもの(森永乳業株式会社)であり、プレート式殺菌機を用いて130℃で2秒間殺菌されたものであった。また、レモン果汁はポッカレモン(登録商標)(ポッカサッポロ&フードビバレッジ株式会社)を使用し、りんごジュースはTropicana100%アップル(キリンビバレッジ株式会社)を使用した。各紅茶抽出液、グラニュー糖、果汁、牛乳及び逆浸透膜水を混合して紅茶サンプルを得た。紅茶サンプルは、使用するまで5℃以下の暗所で保存された。
【0096】
(8)感情用語の妥当性評価
20~50代の評価者60名に、白いプラスチックカップに入った上記飲料を飲用させた。これらの評価者はいずれも、飲食品の評価に関する訓練を受けていない消費者であった。また、カップには識別できるように大文字アルファベットを記載し、調査票には試飲サンプルが無糖ストレートティー、加糖ストレートティー、無糖ミルクティー、加糖ミルクティー、アップルティー、レモンティーのどれであるかを提示して、飲用してもらった。
【0097】
当該評価において用いられた評価シートが図7A及び図7Bに示されている。同図には、加糖ミルクティーについての評価を促す評価シートが示されている。同図に示されるとおり、当該評価シートは、嗜好性評価の評価項目(問1)及び感情評価の評価項目(問2)を有している。
他の紅茶飲料についても表示「[T]加糖ミルクティー」の部分が他の飲料の名称へ変更されたこと以外は、同じ内容の評価項目を有する評価シートを用いて評価が行われた。なお、当該表示における「T」は、上記で述べたとおり、飲料の識別のために、評価対象となる加糖ミルクティーが含まれるカップに付された大文字アルファベットである。
【0098】
上記60名による評価結果を集計し、集計された評価結果に基づき、プリファレンスマップを生成した。生成されたプリファレンスマップが、図8に示されている。
【0099】
同図に示されるとおり、横軸の正方向は温かさを表す感情用語との相関が高く且つ横軸の負方向は冷たさを表す感情用語との相関が高いという傾向がみられた。
また、同図に示されるとおり、縦軸の正方向には、動的な感情用語との相関が高く且つ縦軸の負方向は静的な感情用語との相関が高いという傾向がみられた。
【0100】
これらの結果より、評価対象となった各飲料は、飲用した場合に想起させる感情が異なることが分かる。
また、このプリファレンスマップにおいて、嗜好性評価との関係性も確認することができる。
また、このプリファレンスマップにおいて、横軸の負方向側に位置される飲料は、冷たさに関する感情を想起させる傾向を有すると考えられる。また、横軸の正方向側に位置される飲料は、温かさに関する感情を想起させる傾向を有すると考えられる。
また、このプリファレンスマップにおいて、縦軸の負方向側に位置される飲料は、静的な感情を想起させる傾向を有すると考えられる。また、縦軸の正方向側に位置される飲料は、動的な感情を想起させる傾向を有すると考えられる。
【0101】
これらの結果より、上記で特定された31の感情用語は、嗜好飲料、特には紅茶飲料が感情に与える影響を評価するために有用であることが分かる。これらの31の感情用語は、上記のプリファレンスマップ上の位置などに基づき、動的な感情用語及び静的な感情用語に分類することができる。また、これら31の感情用語は、温かさに関する感情用語及び冷たさを表す感情用語に分類することができる。これらの分類の結果が、図9に示されている。このように、動的な感情用語及び静的な感情用語は、嗜好飲料、特には紅茶飲料が感情に与える影響を評価するために有用であることが分かる。また、温かさに関する感情用語及び冷たさを表す感情用語は、嗜好飲料、特には紅茶飲料が感情に与える影響を評価するために有用であることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9