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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142009
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電鋳型の製造方法及び電鋳型
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/10 20060101AFI20241003BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241003BHJP
   C25D 1/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C25D1/10
G03F7/20 501
C25D1/00 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053944
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽介
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA15
2H197AB13
2H197CA03
2H197HA06
2H197JA12
(57)【要約】
【課題】フォトマスクの形状が正確に再現された電鋳型を高精度に製造することができる。
【解決手段】第1レジスト20を形成する工程と、第1レジスト20を第1のフォトマスク30を用いて露光して第1露光領域21と第1未露光領域22を形成する工程と、第1レジスト20の上に第2レジスト120を形成する工程と、第2レジスト120を第2のフォトマスク130を用いて露光して第2露光領域121と第2未露光領域122を形成する工程と、第1未露光領域22と第2露光工程で形成された第2未露光領域122を除去する工程と、第1未露光領域22又は第2未露光領域122の少なくともいずれか一方の上面のうち次に露光される領域に重なる範囲に、光の透過を防止する機能を有する透過防止層である庇部40を配置する工程を有し、第2レジスト120を形成する工程と第2レジスト120を露光する工程を繰り返す。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板に近い第1電鋳部分と、前記導電性基板から遠い1以上の電鋳層を有する第2電鋳部分とが積層した状態で一体に形成された電鋳品を製造するために使用される電鋳型の製造方法であって、
前記導電性基板上に前記第1電鋳部分に対応する第1レジストを形成する第1レジスト形成工程と、
前記第1レジストを第1のフォトマスクを用いて露光して第1露光領域と第1未露光領域を形成する第1露光工程と、
前記第1レジストの上に前記第2電鋳部分に対応する第2レジストを形成する第2レジスト形成工程と、
前記第2レジストを第2のフォトマスクを用いて露光して第2露光領域と第2未露光領域を形成する第2露光工程と、
前記第1未露光領域と前記第2未露光領域を除去する除去工程と、を有し、
前記第1露光工程と前記除去工程との間に、更に前記第1未露光領域又は前記第2未露光領域の少なくともいずれか一方の上面のうち次に露光される領域に重なる範囲に、光の透過を防止する機能を有する透過防止層である庇部を配置する庇部配置工程を有し、
前記第2レジスト形成工程と前記第2露光工程を少なくとも1回以上繰り返す電鋳型の製造方法。
【請求項2】
前記庇部は、前記第1レジストに近い側に配置された前記透過防止層と、前記透過防止層の上に配置された、光反射を防止する機能を有する反射防止層との2層構造を有する請求項1に記載の電鋳型の製造方法。
【請求項3】
前記庇部は、前記1電鋳部分及び前記第2電鋳部分のいずれとも異なる金属材料で形成されている請求項1又は2に記載の電鋳型の製造方法。
【請求項4】
前記第2露光工程では、前記第1未露光領域及び前記第2レジストを前記第2のフォトマスクを用いて露光して積層方向で連続した第3露光領域を形成する請求項1又は2に記載の電鋳型の製造方法。
【請求項5】
導電性基板に近い第1電鋳部分と、前記導電性基板から遠い1以上の電鋳層を有する第2電鋳部分とが積層した状態で一体に形成された電鋳品を製造するために使用される電鋳型であって、
前記導電性基板と、
前記第1電鋳部分に対応する第1レジストのうち紫外線により硬化した第1の硬化部分と、
前記第2電鋳部分に対応する第2レジストのうち紫外線により硬化した、前記第1の硬化部分より積層方向と直交する幅方向に突出する突出部を有する少なくとも1以上の第2の硬化部分と、
前記第1の硬化部分と前記第2の硬化部分との間、又は前記第2の硬化部分同士の間の少なくともいずれかに配置され、光の透過を防止する機能を有する透過防止層である庇部と、を備え、
前記庇部は、前記積層方向において前記第1の硬化部分と前記第2の硬化部分とが重なる部分及び前記突出部の下方側、又は前記第2の硬化部分同士が重なる部分及び前記突出部の下方側の少なくともいずれか一方に配置され、
前記第2の硬化部分は、前記積層方向において1以上の層を有している電鋳型。
【請求項6】
前記庇部は、前記第1レジストに近い側に配置された前記透過防止層と、前記透過防止層の上に配置された、光反射を防止する機能を有する反射防止層との2層構造を有する請求項5に記載の電鋳型。
【請求項7】
前記第1の硬化部分と積層方向において重なる位置の前記第2の硬化部分は、少なくとも一部が一体的に形成されている請求項5又は6に記載の電鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳型の製造方法及び電鋳型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、時計の部品等微小な形状の構造物を、電気鋳造(電気めっき法による金属製品の製造・補修又は複製方法;以下、電鋳という。)により製造することが行われている。そのような背景において近年、基板にレジストを形成し、そのレジストに、可溶部と不溶部のパターンを形成することで、電鋳型を製造し、微細で高精度な電鋳品を製造するLIGA(Lithographie,Galvanoformung,Abformung)工法の応用が広がっている。
【0003】
また、下側のレジストと上側のレジストを互いに異なるパターンを有するフォトマスクで露光することにより、上下において異なる形状の硬化部を有する電鋳型を形成することが行われている。このような電鋳型を用いることにより、複雑な形状の電鋳品を製造することができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-21136号公報
【特許文献2】特開2017-207479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、下側のレジストの露光が終了した後に、上側のレジストを下側のレジストと異なるパターンで露光する場合には、上側のレジストを通して下側のレジストの未露光領域に対して紫外線を照射してしまい、本来未硬化の状態であるべき部分まで硬化されてしまう可能性がある。そのため、下側のフォトレジストに対する露光が終了した後に、上側のレジストを通った光によって下側の未硬化部を硬化させない状態に保つ必要がある。
【0006】
例えば、特許文献1の技術によれば、2層の樹脂層のうち下側の感光性樹脂の一部を先に溶解させて開放孔(凹部)を形成する。更に、この開放孔を覆うようにフィルム状の感光性樹脂を配置することにより開放孔を保護することになる。しかしながら、開放孔の開口面積が広い場合には、開放孔を覆う感光性樹脂が自重で撓んでしまい、上側の感光性樹脂の成型型に形状不良が生じる可能性があった。
【0007】
また、第1の孔が形成された下方側の層に金属を充填して第1の電鋳部分を形成した後、更に上方側の樹脂に第2の孔を形成し、この第2の孔に金属を充填して第2の電鋳部分を形成するということも考えられる。しかしながら、このような方法では、第1の電鋳部分と第2の電鋳部分が連続して一体形成されていないため、第1の電鋳部分と第2の電鋳部分との境界において完成品としての強度が不十分であった。また、充填した金属を除去してから電鋳をおこなえば、強度の欠点は補えるが、除去に多くの時間を要し生産的ではない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、フォトマスクの形状が正確に再現された電鋳型を高精度に製造することができる電鋳型の製造方法及び電鋳型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、導電性基板に近い第1電鋳部分と、前記導電性基板から遠い1以上の電鋳層を有する第2電鋳部分とが積層した状態で一体に形成された電鋳品を製造するために使用される電鋳型の製造方法であって、前記導電性基板上に前記第1電鋳部分に対応する第1レジストを形成する第1レジスト形成工程と、前記第1レジストを第1のフォトマスクを用いて露光して第1露光領域と第1未露光領域を形成する第1露光工程と、前記第1レジストの上に前記第2電鋳部分に対応する第2レジストを形成する第2レジスト形成工程と、前記第2レジストを第2のフォトマスクを用いて露光して第2露光領域と第2未露光領域を形成する第2露光工程と、前記第1未露光領域と前記第2未露光領域を除去する除去工程と、を有し、前記第1露光工程と前記除去工程との間に、更に前記第1未露光領域又は前記第2未露光領域の少なくともいずれか一方の上面のうち次に露光される領域に重なる範囲に、光の透過を防止する機能を有する透過防止層である庇部を配置する庇部配置工程を有し、前記第2レジスト形成工程と前記第2露光工程を少なくとも1回以上繰り返す電鋳型の製造方法である。
【0010】
本発明の第2は、導電性基板に近い第1電鋳部分と、前記導電性基板から遠い1以上の電鋳層を有する第2電鋳部分とが積層した状態で一体に形成された電鋳品を製造するために使用される電鋳型であって、前記導電性基板と、前記第1電鋳部分に対応する第1レジストのうち紫外線により硬化した第1の硬化部分と、前記第2電鋳部分に対応する第2レジストのうち紫外線により硬化した、前記第1の硬化部分より積層方向と直交する幅方向に突出する突出部を有する少なくとも1以上の第2の硬化部分と、前記第1の硬化部分と前記第2の硬化部分との間、又は前記第2の硬化部分同士の間の少なくともいずれかに配置され、光の透過を防止する機能を有する透過防止層である庇部と、を備え、前記庇部は、前記積層方向において前記第1の硬化部分と前記第2の硬化部分とが重なる部分及び前記突出部の下方側、又は前記第2の硬化部分同士が重なる部分及び前記突出部の下方側の少なくともいずれか一方に配置され、前記第2の硬化部分は、前記積層方向において1以上の層を有している電鋳型である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フォトマスクの形状が正確に再現された電鋳型を高精度に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その1)である。
図2】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その2)である。
図3】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その3)である。
図4】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その4)である。
図5】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その5)である。
図6】庇部周辺の部分拡大断面図である。
図7】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その6)である。
図8】実施形態の電鋳型の製造方法の流れを模式的に示す断面図(その7)である。
図9】実施形態の電鋳型を用いて形成された電鋳品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電鋳型の製造方法及び電鋳型の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
図1図8は本発明の一実施形態である電鋳型200の製造方法の流れを模式的に示す断面図であり、図9は電鋳型200を用いて形成された電鋳品Eの側面図である。電鋳型200の製造方法は、導電性基板10(以下、単に、基板10という。)に近い第1電鋳部分E1と、基板10から遠い第2電鋳部分E2とが積層した状態で一体に形成された電鋳品Eを製造するために用いられる電鋳型200の製造方法である。
【0015】
<第1塗布工程(第1レジスト形成工程)>
先ず、図1に示すように、導電性の基板10上に、第1の型層となる1層目の第1レジスト20を塗布する。その後、加熱して第1レジスト20内の溶媒を除去する。なお、第1の型層とは、第1電鋳部分E1に対応する部分である。
【0016】
基板10は、導電性の金属で形成されてもよいし、又は、半導体であるシリコン等の基板本体や非導電性の樹脂などの基板本体にそれぞれ導電性の膜を形成して導電性を発揮するものでもよい。なお、導電性の基板10は、複数種類の金属を積層して形成したものでもよい。第1レジスト20は、例えば、化学増幅型のエポキシ系ネガ型フォトレジストで形成されているが、ネガ型に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート系ポジ型フォトレジスト等であってもよい。
【0017】
<第1露光工程>
次いで、図2に示すように開口部31と遮蔽部32とが形成された第1のフォトマスク30を介して、図中矢印で示すように第1レジスト20にUV光(紫外線)Lを照射(露光)する。第1レジスト20には、開口部31を通じてUV光Lが照射された領域(第1露光領域)21と、遮蔽部32によりUV光Lが照射されなかった領域(第1未露光領域)22とが形成される。
【0018】
なお、第1のフォトマスク30に複数の開口部31が形成されている場合には、開口部31の下方側に複数の第1露光領域21が形成される。第1未露光領域22は、後の現像処理により空洞となり、基板10に近い第1電鋳部分E1を形成する型(第1の型)となる。
【0019】
<庇部配置工程>
次いで、図3に示すように、第1未露光領域22の上面22aに庇部40を配置する。具体的には、庇部40は、第1未露光領域22の上面22aのうち、後述する第2露光領域121が重なる範囲に少なくとも配置されていれば良い。ただし、第2露光領域121を通過した紫外線が、庇部40の近くを通過して第1未露光領域22に進むのを防止するため、第1未露光領域22に隣接する第1露光領域21まで庇部40を延長するのが好ましい。そこで、庇部40の一端40aが第1露光領域21の上面21aに位置し、庇部40の他端40bが第1露光領域21に隣接する第1未露光領域22の上面22aに位置するように、第1露光領域21と第1未露光領域22に亘って庇部40を配置する。
【0020】
庇部40を配置するのは、以下の理由による。例えば基板10上に第1未露光領域22が形成されている状態で、第1未露光領域22の間に位置する第1露光領域21上に、第1露光領域21から幅方向、即ち水平方向(紫外線の照射方向と直交する方向)に突出する部分を有する領域(後述する第2露光領域121)を形成しようとして上層側のレジストを紫外線により照射した場合、第2露光領域121を通過した紫外線が下層側(第1レジスト層)まで達してしまう可能性がある。その結果、下層側の第1未露光領域22の一部が意図せずに感光(硬化)してしまい、第1のフォトマスク30の形状が正確に反映されない電鋳型200が形成されてしまう。そこで、このような不都合を回避するために、下側の第1未露光領域22と上側の第2電鋳部分E2が形成される予定の領域とが上下方向(積層方向)において重なる位置に、紫外線の透過を防止する機能を有する庇部40を配置する。
【0021】
紫外線の透過を防止する庇部40は、例えばスパッタリングにより銅(Cu)等の金属で形成されていることが望ましい。また、庇部40は、後に電鋳品を電鋳型から分離する際に溶解される部分であり、電鋳品を構成する金属材料とは異なる金属材料で形成されていることが望ましい。このような条件を満たすのであれば、庇部40はいかなる素材により形成されていてもよい。
【0022】
庇部40は、第1未露光領域22の上面22a及び隣接する第1露光領域21の上面21aに亘って面状に広がって配置されている。庇部40は、平板状の部材であってもよいし、膜状の部材であってもよい。庇部40は、上面21a及び上面22aに対し、次のレジスト120が露光されるまでに剥がれないように保つ必要がある。必要に応じプライマーなどで付着力を補強してもよい。庇部40の厚みは、例えば500~1000Å(オングストローム)程度であることが望ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。このような庇部40を第1未露光領域22の上側に配置することにより、庇部40の上側から紫外線が照射された場合でも、庇部40に位置する第1未露光領域22を未露光(未硬化)の状態で維持することができる。
【0023】
ところで、第1未露光領域22(下側の第1レジスト)側に配置された庇部40は、第2露光時の第1レジスト20における感光防止のために設けられたものであるが、第2露光工程においてこの庇部40自体が第2レジスト120の第2露光領域121を通過した紫外線を反射することにより、未硬化とすべき部分(第2レジスト120の未硬化領域)に意図しない感光が生じてしまう可能性がある。そこで、望ましくは、庇部40に透過防止機能と併せて上層から照射された紫外線の反射を防止する機能も持たせることとした。反射防止機能は、例えば微細な凹凸の表面処理や、反射防止コーティングなどにより庇部40を表面加工することにより得られるが、これに限定されるものではない。反射防止機能は、透過防止機能よりも上層側に配置される。
【0024】
なお、庇部40は、透過防止機能を有する透過防止層41と、反射防止機能を有する反射防止層42の2層構造を有していてもよい。庇部40が2層により構成されている場合には、例えば透過防止層41の上に反射防止層42を有する構造を有していればよい。反射防止層42は、例えば有機系ARC(Anti-Reflection Coating)材や無機系ARC材、微小突配置(モスアイ構造)シートにより形成されていればよい。反射防止層42は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、スピンコーティング法等により形成することができる。
【0025】
<第2塗布工程(第2レジスト形成工程)>
次いで、図4に示すように、1層目のレジスト(第1レジスト)20の上に、第2の型層となる2層目のレジスト(第2レジスト)120を形成する。この第2レジスト120は、基板10に近い第1電鋳部分E1に比べて、基板10から遠い側である第2電鋳部分E2に対応している。第2レジスト120は、庇部40も含めて1層目のレジスト20の上の全面を覆うように塗布されている。
【0026】
第2レジスト120は、少なくとも第1レジスト20と同じ型(第1レジスト20がネガ型であるときは第1レジスト20もネガ型、第1レジスト20がポジ型であるときは第1レジスト20もポジ型)のものを使用する必要があり、同じ材料であることが好ましい。
【0027】
<第2露光工程>
次いで、図5に示すように開口部131と遮蔽部132とが形成された第2のフォトマスク130を介して、第2レジスト120にUV光(紫外線)Lを照射(露光)する。第2レジスト120には、開口部131を通じてUV光Lが照射された領域(第2露光領域)121と、遮蔽部132によりUV光Lが照射されなかった領域(第2未露光領域)122とが形成される。第2露光領域121は、第1露光領域21よりも幅方向に突出する突出領域121aを有している。
【0028】
なお、第2のフォトマスク130に複数の開口部131が形成されている場合には、開口部131の下方側に複数の第2露光領域121が形成される。第2未露光領域122は、後の現像処理により空洞となり、基板10に遠い第2電鋳部分E2を形成する型(第2の型)となる。またこの時、レジスト20の未露光領域22も同時に露光することもできる。即ち、第2露光工程では、第1未露光領域22(下側の第1レジスト20)及び第2レジスト120を第2のフォトマスク130を用いて露光して、積層方向で連続した第3露光領域123を形成することができる。そうすれば、第3露光領域123を一体的に形成することができ、位置合わせにより生じる微小な段差による継ぎ目がないスムースな側壁を形成することができる。なお、積層方向において重なる位置の第1レジスト20と第2レジスト120をそれぞれ異なるタイミングで露光してもよい。
【0029】
第2露光工程において、第1露光領域21よりも幅方向に突出する突出領域121aを有する第2露光領域121を形成する場合、第1露光領域21に隣接する第1未露光領域22の上部に位置する第2レジスト120も照射する必要がある。この際、第1のフォトマスク30とは異なる位置に開口を有する第2のフォトマスク130により露光を行う。遮蔽部132に覆われていない部分から照射される紫外線により下層側の第1未露光領域22の部分的な感光を防止するために、庇部40を配置する。
【0030】
図6は、庇部40周辺の部分拡大断面図である。図6に示すように、第1未露光領域22への紫外線の照射を防止すべき箇所に庇部40を配置する。庇部40のうち一端40a側の部分は、第1露光領域21の上面21aに配置される。庇部40の他端40bは、上下方向において遮蔽部132の端部132aと一致した状態で配置されている。このように庇部40を配置することにより、第1未露光領域22への紫外線の照射が防止される(図中矢印参照)。
【0031】
なお、遮蔽部132と上下方向において重なる位置に配置されるように庇部40を広げてもよいが、庇部40の面積が大きくなればそれだけ不要な紫外線の反射が発生する可能性が大きくなる。そのため、上下方向において遮蔽部132と重ならない範囲を狭くすることが望ましく、庇部40の他端40bと遮蔽部132の端部132aが上下方向において10um程度重なるのが望ましい。同様の趣旨で、第1露光領域21の上面21aに配置される庇部40の範囲も狭いことが望ましい。
【0032】
このように、第2のフォトマスク130の開口部131と第1未露光領域22が上下方向において一部重なる範囲を紫外線で照射する場合でも、透過防止機能を有する庇部40によりこの重なる範囲を覆う。これにより、第1未露光領域22に不要な紫外線が入射されることを防止し、意図しない感光の発生を抑制することができる。
【0033】
なお、3層以上の電鋳部分を形成するために、庇部配置工程後であって現像工程の前に第2塗布工程及び第2露光工程を2回以上繰り返してもよい。例えば、図5に、上下2層構造の露光領域(第1露光領域21、第2露光領域121)及び未露光領域(第1未露光領域22、第2未露光領域122)を示すが、1層目の塗布工程及び露光工程以降の工程として、第2塗布工程及び第2露光工程を複数回繰り返すことにより、露光領域及び未露光領域が上下に3層以上形成されてもよい。
【0034】
また、露光領域及び未露光領域が上下に3層以上形成されている場合、即ち、第1露光領域21の上に第2露光領域121が複数積層されている場合には、第2露光工程と現像工程との間に庇部配置工程を少なくとも1回以上繰り返すことにより、第2未露光領域122の上面にも庇部40を配置してもよい。このように、未露光領域を3層以上積層することにより、電鋳型200を3層以上の構造とすることができる。
【0035】
<現像工程>
次いで、図7に示すように、現像処理により、1層目の第1レジスト20の第1未露光領域22と2層目の第2レジスト120の第2未露光領域122が除去される。なお、図8に示すように庇部40の下方側の透過防止層41のうち突出領域121aと上下方向において重なる部分(第1未露光領域22に対応した範囲)を別途除去してもよい。透過防止層41のうち第1露光領域21と重なる部分のみ残る。この現像処理により、基板10上に異なる形状を有する領域(第1露光領域21及び第2露光領域121)が上下に積層された電鋳型200が得られる。
【0036】
以上、一連の工程により、図7に示すように基板10と、基板10上に配置された第1露光領域21と、第1露光領域21上に配置された第2露光領域121とを有する電鋳型200が形成される。第1露光領域21は、第1電鋳部分E1に対応する第1レジスト20のうち紫外線により硬化した第1の硬化部分であり、第2露光領域121は、第2電鋳部分E2に対応する第2レジスト120のうち紫外線により硬化した第2の硬化部分である。第2露光領域121は、第1露光領域21よりも大きい(幅広の)サイズを有しており、第1露光領域21よりも幅方向に突出する突出領域121aを有している。第1の硬化部分と第2の硬化部分との間には庇部40が配置されている。庇部40は、上下方向において第1の硬化部と第2の硬化部分とが重なる部分、及び第2の硬化部分のうち突出領域121aに位置する突出部の下方側に配置されている。庇部40の下方側には、第1未露光領域22に相当する空洞が形成されている。
【0037】
第1露光領域21と第2露光領域121とは、上下方向(積層方向)において互いに重ならない部分を有している。即ち、第1露光領域21は、上下方向において第2露光領域121と重ならない部分を有するとともに、第2露光領域121は、上下方向において第1露光領域21と重ならない部分を有している。このような電鋳型200を使用することにより、上下で異なる形状の電鋳品Eを一体的に成型することができる。従って、複数層からなる電鋳品Eを高精度に製造することができ、2層に限定されるものではない。特に、第1露光領域21の上に第1露光領域21より大きいサイズの第2露光領域121を有する電鋳型200において、その効果が発揮される。
【0038】
なお、第2塗布工程及び第2露光工程を2回以上繰り返す場合には、第1露光領域21の上に第2露光領域121が2層以上積層される。この場合、第1の硬化部分(第1露光領域21)と第2の硬化部分(第2露光領域121)との間のみならず、第2の硬化部分同士の間にも庇部40が配置されてもよい。庇部40は、第2の硬化部分のうち第1の硬化部分よりも幅方向に突出する部分の下方側、又は上側の第2の硬化部分のうち下側の第2の硬化部分よりも幅方向に突出する部分の下方側の少なくともいずれか一方に配置される。
【0039】
<導電膜形成工程>
なお、第1露光工程と第2レジスト形成工程との間におけるいずれかの時点で、第2未露光領域122となる部分と重なる第1露光領域21の上面を導電膜50により覆う導電膜形成工程を有してもよい。基板10上に第1露光領域21に対して幅狭の第2露光領域121が形成されている場合には、図4に示すように、一部の第1露光領域21の上面に導電膜50が配置されていることが望ましい。
【0040】
導電膜50は、例えばITО膜、金や銀、銅等の金属材料により構成されている。導電膜50は、例えばスパッタリングや蒸着、無電解めっき等の方法により形成することができる。第1露光領域21の上面21aに導電膜50を配置することにより、第1露光領域21の上側にNiを容易に析出させることができ、電鋳型に即した電鋳品を形成することができる。
【0041】
<メッキ工程>
次いで、図8に示すように、基板10との間で、ニッケル(Ni)を用いた電気めっきにより、まず、1層目の第1レジスト20の第1未露光領域22に対応した空洞を型として第1電鋳部分E1が形成され、連続して2層目のレジスト120の第2未露光領域122に対応した空洞を型として第2電鋳部分E2が形成される。なお、電鋳材料はニッケルに限定されるものではなく、金(Au)、銅(Cu)、錫(Sn)、コバルト(Co)など電鋳可能な材料の全てを適用可能である。1層目のメッキと2層目のメッキを連続することで、境界部での強度の低下を防止する。
【0042】
<電鋳品抽出工程>
第2電鋳部分E2が所望の厚さまで成長した後に、第2レジスト120の上面及び第2電鋳部分E2の上面を平坦に研削及び研磨した上で、レジスト20,120を除去し、基板10も除去することにより、図9に示すように、第1電鋳部分E1と第2電鋳部分E2とが一体に形成された電鋳品Eが抽出される。なお、第1電鋳部分E1は、電鋳品Eのうち下層側に位置する基礎となる部分である。第2電鋳部分E2は、電鋳品Eのうち第1電鋳部分E1よりも上層側に位置する部分であり、複数の電鋳層を有してもよい。即ち、電鋳品Eは、積層方向において3層以上の電鋳部分(電鋳層)を有してもよい。
【0043】
以上、上記実施形態に係る電鋳型の製造方法は、導電性基板10上に第1電鋳部分E1に対応する第1レジスト20を形成する第1レジスト形成工程と、第1レジスト20を第1のフォトマスク30を用いて露光して第1露光領域21と第1未露光領域22を形成する第1露光工程と、第1露光工程で形成された第1未露光領域22の上面に光の透過を防止する機能を有する透過防止層である庇部40を配置する庇部配置工程と、第1レジスト20の上に第2電鋳部分E2に対応する第2レジスト120を形成する第2レジスト形成工程と、第2レジスト120を第2のフォトマスク130を用いて露光して第2露光領域121と第2未露光領域122を形成する第2露光工程と、第1未露光領域22と第2未露光領域122を除去する除去工程と、を有し、庇部配置工程では、第1未露光領域22の上面22aのうち第2露光領域121に重なる範囲に庇部40を配置し、庇部配置工程と除去工程との間において第2レジスト形成工程と第2露光工程とを1回以上繰り返す。
【0044】
これにより、第1レジスト20の上側に配置された第2レジスト120に紫外線を照射する際に、第2のフォトマスク130の開口部131と積層方向において重なる位置にある第1未露光領域22が透過防止機能を有する庇部40により覆われるため、第1レジスト20に意図しない感光が生じることを防止することができる。従って、フォトマスクの形状が正確に再現された電鋳型を高精度に製造することが可能となり、複数の層からなる電鋳品を高精度に製造することができる。
【0045】
また、庇部40は、第1レジスト20に近い側に配置された透過防止層41と、透過防止層41の上に配置された、光反射を防止する機能を有する反射防止層42との2層構造を有する。透過防止層41により下方側の第1レジスト20への紫外線の照射を抑制するとともに、反射防止層42により上方側の第2レジスト120への紫外線の反射を抑制することができる。従って、意図しない紫外線の照射及び反射によりフォトレジストの感光を抑制することにより、フォトマスクの形状を正確に再現することができる。
【0046】
また、庇部40は、第1電鋳部分E1及び前記第2電鋳部分E2のいずれとも異なる金属材料で形成されている。これにより、電鋳品抽出工程においてニッケルを溶かすことなく、庇部40(の一部)を除去することができる。
【0047】
また、第2露光工程では、第1未露光領域22及び第2レジスト120を第2のフォトマスク130を用いて露光して積層方向で連続した第3露光領域123を形成する。即ち、第1レジスト20と第2レジスト120が同時に露光され、上下の層間に境界に継ぎ目となる境界線が形成されていない第3露光領域123が形成される。これにより、第3露光領域123を一体的に形成することができ、位置合わせによる生じる微小な段差による継ぎ目がないスムースな側壁を形成することができる。特に、第3露光領域123が電鋳型200における外周部分に位置する場合に有効である。
【0048】
以上、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10 :導電性基板
20 :第1レジスト
21 :第1露光領域
22 :第1未露光領域
30 :第1のフォトマスク
40 :庇部
41 :透過防止層
42 :反射防止層
120 :第2レジスト
121 :第2露光領域
122 :第2未露光領域
123 :第3露光領域
130 :第2のフォトマスク
200 :電鋳型
E :電鋳品
E1 :第1電鋳部分
E2 :第2電鋳部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9