(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142025
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】磁気センサ及びこれを備える磁気計測装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241003BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20241003BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01R33/02 X
G01R33/02 Q
G01R33/12 Z
G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053976
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 朝彦
(72)【発明者】
【氏名】竹村 泰司
(72)【発明者】
【氏名】スコ バグース トリスナント
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC07
2G017AD02
2G017AD53
2G017AD55
2G017BA03
2G017BA05
2G017BA10
2G053AA02
2G053AB21
2G053BA04
2G053BA08
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053CA04
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB07
2G053DA10
2G053DB02
(57)【要約】
【課題】微弱な磁界を検出可能な磁気センサを提供する。
【解決手段】磁気センサ100は、感磁素子101と、磁性体Pを含む計測対象物に印加される交流励磁磁界の感磁素子101上における成分を打ち消すキャンセルコイル112と、磁性体Pから生じる1次磁界を受ける受信コイル120と、受信コイル120に接続され、受信コイル120から供給される検出電流i3に基づいて感磁素子101に2次磁界を印加する送信コイル113とを備える。これにより、磁性体Pが発生する1次磁界が感磁素子101に直接印加されるだけでなく、送信コイル113が発生する2次磁界についても感磁素子101に印加されるとともに、感磁素子101に印加される交流励磁磁界がキャンセルコイル112によって打ち消されることから、高いS/N比を得ることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感磁素子と、
磁性体を含む計測対象物に印加される交流励磁磁界の前記感磁素子上における成分を打ち消すキャンセルコイルと、
前記磁性体から生じる1次磁界を受ける受信コイルと、
前記受信コイルに接続され、前記受信コイルから供給される検出電流に基づいて前記感磁素子に2次磁界を印加する送信コイルと、を備える磁気センサ。
【請求項2】
前記感磁素子に磁界を集める集磁体をさらに備え、
前記キャンセルコイル及び前記送信コイルは、前記集磁体に巻回されている、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記感磁素子に印加される磁界を打ち消す補償コイルをさらに備える、請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記補償コイルは、前記集磁体に巻回されている、請求項3に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記キャンセルコイル及び前記送信コイルは、前記補償コイルの外側に巻回されている、請求項4に記載の磁気センサ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気センサと、
前記磁性体に前記交流励磁磁界を印加する励磁コイルと、を備える磁気計測装置。
【請求項7】
前記磁気センサがアレイ状に複数設けられている、請求項6に記載の磁気計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は磁気センサ及びこれを備える磁気計測装置に関し、特に、微弱な磁界を検出可能な磁気センサ及びこれを備える磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微弱な磁界を検出可能な磁気センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された磁気センサは、計測対象物からの距離が離れると、検出感度の低下によって十分なS/N比を確保することが困難であった。
【0005】
本開示においては、微弱な磁界を検出可能な改良された磁気センサ及びこれを備える磁気計測装置が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面による磁気センサは、感磁素子と、磁性体を含む計測対象物に印加される交流励磁磁界の感磁素子上における成分を打ち消すキャンセルコイルと、磁性体から生じる1次磁界を受ける受信コイルと、受信コイルに接続され、受信コイルから供給される検出電流に基づいて感磁素子に2次磁界を印加する送信コイルとを備える。
【0007】
本開示の一側面による磁気計測装置は、上記の磁気センサと、磁性体に交流励磁磁界を印加する励磁コイルとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、計測対象物と感磁素子との距離が離れている場合であっても、高いS/N比を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による磁気計測装置10の構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、計測領域Aが受信コイル120の内径領域の外部に位置する例を示す模式図である。
【
図3】磁気センサ100の変形例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、各コイルの接続関係を説明するための回路図である。
【
図5】
図5は、複数の磁気センサ100をアレイ状に配列した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による磁気計測装置10の構成を説明するための模式図である。
【0012】
本実施形態による磁気計測装置10は、計測対象物内の計測領域Aに位置する磁性体Pを検出する装置であり、
図1に示すように、励磁コイル20及び磁気センサ100を備えている。励磁コイル20は、磁性体Pを含む計測対象物に交流励磁磁界を印加することにより、磁性体Pを所定の周波数で磁気的若しくは物理的に振動させる役割を果たす。磁性体Pの振動は、磁性体Pから生じる磁界の変化となって現れる。磁気センサ100は、かかる磁界の変化を検出する。磁性体Pは、ナノサイズである磁性ナノ粒子であっても構わない。磁性体Pとして磁性ナノ粒子を用いれば、計測対象物を人体とすることが可能である。また、本実施形態による磁気計測装置10は、計測領域Aに位置する金属部材を検出することも可能である。計測領域Aに金属部材が存在する場合、励磁コイル20からの磁界によって、金属部材に渦電流が生じる。この渦電流は新たな磁界を発生させ、これが磁気センサ100によって検出される。
【0013】
磁気センサ100は、感磁素子101と、感磁素子101に磁界を集める集磁体102と、集磁体102に巻回された補償コイル111、キャンセルコイル112及び送信コイル113と、受信コイル120とを含んでいる。
【0014】
感磁素子101としては、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子やGMR(巨大磁気抵抗効果)素子、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果素子や、ホール素子、MI(磁気インピーダンス)素子などを用いることができる。感磁素子101の感度方向はX方向であり、集磁体102はX方向の磁界を集める役割を果たす。本発明において集磁体102を用いる点は必須でないが、感磁素子101に印加される磁束密度を高めるためには、集磁体102を用いることが好ましい。
【0015】
補償コイル111、キャンセルコイル112及び送信コイル113は、集磁体102の周囲に巻回されている。集磁体102に巻回された補償コイル111、キャンセルコイル112及び送信コイル113のコイル軸方向はX方向であり、これにより、補償コイル111、キャンセルコイル112及び送信コイル113に流れる電流によって生じるX方向の磁界は、集磁体102を介して感磁素子101に印加される。
【0016】
受信コイル120は、感磁素子101よりも計測領域Aに近い位置に配置される。受信コイル120のコイル軸もX方向であり、これにより、磁性体Pから生じる1次磁界が受信コイル120によって電流に変換される。
図1に示す例では、計測領域Aが受信コイル120の内径領域に位置しているが、この点は必須でなく、
図2に示す例のように、計測領域Aが受信コイル120の内径領域の外部に位置していても構わない。この場合であっても、受信コイル120と計測領域AのX方向における距離は、感磁素子101と計測領域AのX方向における距離よりも近いことが好ましい。
【0017】
また、
図1に示す例では、感磁素子101に近い順から、送信コイル113、補償コイル111及びキャンセルコイル112の順に配置されているが、これらのコイル111~113の配置については特に限定されない。また、
図3に示す例のように、補償コイル111を集磁体102に巻回するとともに、キャンセルコイル112及び送信コイル113を補償コイル111の外側に巻回しても構わない。これによれば、感磁素子101、集磁体102及び補償コイル111からなるアセンブリを用意した後、キャンセルコイル112及び送信コイル113を別途巻回することによって磁気センサ100を作製できることから、磁気計測装置10の特性に応じて、キャンセルコイル112及び送信コイル113のターン数や巻回位置を事後的に調整することが可能となる。また、磁気センサ100のX方向におけるサイズも小型化される。
【0018】
図4は、各コイルの接続関係を説明するための回路図である。
【0019】
図4に示すように、感磁素子101から出力される検出信号Vaは、アンプ121によって増幅された後、補償コイル111に供給される。補償コイル111は、感磁素子101の検出信号Vaがゼロになるよう、感磁素子101に印加される磁界を打ち消す役割を果たす。つまり、補償コイル111は、感磁素子101に印加される磁界とは逆相の磁界を発生させることにより、クローズドループ制御を実現するために用いられる。補償コイル111に流れる補償電流i1は、抵抗122によって出力信号Voutに変換され、外部に出力される。
【0020】
また、キャンセルコイル112は、励磁コイル20に対して直列に接続されている。励磁コイル20には、励磁回路30によって励磁電流i2が供給される。励磁電流i2は、所定の周波数を有する交流信号であり、これにより励磁コイル20は所定の周波数を有する交流励磁磁界を発生させる。励磁コイル20によって生じる交流励磁磁界は、磁性体Pを所定の周波数で振動させる役割を果たし、これにより磁性体Pは所定の周波数で変化する1次磁界を発生させる。しかしながら、励磁コイル20からの交流励磁磁界自体は、感磁素子101に対してはノイズとなる。キャンセルコイル112は、このようなノイズをキャンセルするものであり、交流励磁磁界の感磁素子101上における成分を打ち消す役割を果たす。これを実現すべく、キャンセルコイル112と励磁コイル20の巻回方向は互いに逆向きに設定される。
【0021】
送信コイル113は、受信コイル120に対して直列に接続されている。受信コイル120と送信コイル113は、閉ループ回路を構成しており、外部回路や外部電源には接続されていない。受信コイル120と送信コイル113からなる閉ループ回路は、位相調整用のコンデンサを含んでいても構わない。受信コイル120は、磁性体Pが発生する1次磁界を検出電流i3に変換し、これを送信コイル113に供給する。送信コイル113は、受信コイル120から供給される検出電流i3に基づいて、感磁素子101に2次磁界を印加する。これにより、感磁素子101には、磁性体Pが発生する1次磁界が直接印加されるだけでなく、送信コイル113が発生する2次磁界についても印加される。感磁素子101に印加される交流励磁磁界については、上述の通り、キャンセルコイル112によって打ち消される。
【0022】
そして、受信コイル120は、感磁素子101よりも計測領域Aに近い位置に配置されることから、感磁素子101に印加される1次磁界が微弱であっても、送信コイル113から印加される2次磁界によって高い検出感度を得ることが可能となる。これによりS/N比が高められることから、微弱な磁界の検出を行うことが可能となる。
【0023】
また、
図5に示すように、複数の磁気センサ100をアレイ状に配列すれば、計測領域Aに含まれる磁性体Pの2次元的な分布を計測することが可能となる。この場合、励磁コイル20を複数設ける必要はなく、1つの励磁コイル20に対して複数の磁気センサ100を割り当てても構わない。
【0024】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0025】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本開示の一側面による磁気センサは、感磁素子と、磁性体を含む計測対象物に印加される交流励磁磁界の感磁素子上における成分を打ち消すキャンセルコイルと、磁性体から生じる1次磁界を受ける受信コイルと、受信コイルに接続され、受信コイルから供給される検出電流に基づいて感磁素子に2次磁界を印加する送信コイルとを備える。これによれば、磁性体が発生する1次磁界が感磁素子に直接印加されるだけでなく、送信コイルが発生する2次磁界についても感磁素子に印加されるとともに、感磁素子に印加される交流励磁磁界がキャンセルコイルによって打ち消されることから、高いS/N比を得ることが可能となる。
【0027】
上記の磁気センサは、感磁素子に磁界を集める集磁体をさらに備え、キャンセルコイル及び送信コイルは集磁体に巻回されていても構わない。これによれば、感磁素子に印加される磁束密度を高めることが可能となる。
【0028】
上記の磁気センサは、感磁素子に印加される磁界を打ち消す補償コイルをさらに備えていても構わない。これによれば、クローズドループ制御が可能となる。
【0029】
上記の磁気センサにおいて、補償コイルは集磁体に巻回されていても構わない。これによれば、補償磁界を効率よく感磁素子に印加することが可能となる。
【0030】
上記の磁気センサにおいて、キャンセルコイル及び送信コイルは、補償コイルの外側に巻回されていても構わない。これによれば、キャンセルコイル及び送信コイルのターン数などを事後的に調整することが可能となる。
【0031】
本開示の一側面による磁気計測装置は、上記の磁気センサと、磁性体に交流励磁磁界を印加する励磁コイルとを備える。これによれば、S/N比の高い磁気計測装置を提供することが可能となる。
【0032】
上記の磁気計測装置において、磁気センサがアレイ状に複数設けられていても構わない。これによれば、磁性体の2次元的な分布を計測することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
10 磁気計測装置
20 励磁コイル
30 励磁回路
100 磁気センサ
101 感磁素子
102 集磁体
111 補償コイル
112 キャンセルコイル
113 送信コイル
120 受信コイル
121 アンプ
122 抵抗
A 計測領域
P 磁性体
Va 検出信号
Vout 出力信号
i1 補償電流
i2 励磁電流
i3 検出電流