(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142029
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】親和層を有する周面発光型導光棒
(51)【国際特許分類】
F21V 8/00 20060101AFI20241003BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20241003BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20241003BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241003BHJP
G09F 13/00 20060101ALI20241003BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F21V8/00 282
G02B6/00 326
G02B6/036
G02B6/02 391
G09F13/00 Z
B32B1/08
B32B27/30 A
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053985
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】笛吹 祐登
【テーマコード(参考)】
2H038
2H250
4F100
5C096
【Fターム(参考)】
2H038BA42
2H250AB32
2H250AB33
2H250AB37
2H250AB43
2H250AB50
2H250AD15
2H250AD17
2H250AH37
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK17
4F100AK17C
4F100AK18
4F100AK18C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK46
4F100AK46B
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100GB07
4F100HB00
4F100JN01
4F100JN18
4F100JN18A
4F100JN18C
5C096AA01
5C096BA02
(57)【要約】
【課題】光源から離れた箇所でも高い輝度で周面発光可能であるとともに、切創が生じた場合や過酷な環境温度において、屈曲させて用いたとしても、外周面の高い輝度を維持することができる、親和層を有する周面発光型導光棒を提供すること。
【解決手段】アクリル系樹脂を主材とするコア層1とフッ素系樹脂を主材とするクラッド層3とを備え、端面から入射した光を長手方向に導光するとともに外周面から光を出射する周面発光型導光棒において、前記コア層1と前記クラッド層3との間に親和層2を備え、
前記親和層2はアクリル系樹脂との接着性を有する非フッ素系樹脂を主材とするものとし、前記クラッド層3は前記親和層2との接着性を有する樹脂を主材とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂を主材とするコア層とフッ素系樹脂を主材とするクラッド層とを備え、端面から入射した光を長手方向に導光するとともに外周面から光を出射する周面発光型導光棒であって、
前記コア層と前記クラッド層との間に親和層を備え、
前記親和層はアクリル系樹脂との接着性を有する非フッ素系樹脂を主材とするものであり、
前記クラッド層は前記親和層との接着性を有する樹脂を主材とするものであることを特徴とする、親和層を有する周面発光型導光棒。
【請求項2】
前記親和層はポリアミド樹脂を主材とするものであり、
前記フッ素系樹脂はポリアミド樹脂に対する接着性官能基を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の親和層を有する周面発光型導光棒。
【請求項3】
前記親和層の屈折率は前記コア層よりも低く前記クラッド層よりも高いものであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の親和層を有する周面発光型導光棒。
【請求項4】
前記クラッド層はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を主材とすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の親和層を有する周面発光型導光棒。
【請求項5】
前記クラッド層は少なくとも内層と外層とを備える多層構造であり、
前記内層はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を主材とするものであり、
前記外層はテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体を主材とするものに光散乱材を添加させたものであることを特徴とする、請求項4に記載の親和層を有する周面発光型導光棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面から入射した光を長手方向に導光するとともに導光した光を外周面から出射することができる周面発光型導光棒に関するものである。特に、切創や環境温度の変化があったとしても輝度を維持するために、所定の親和層を有する周面発光型導光棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
店舗や建築物の看板や広告には種々のものがあるが、夜間でも文字や図形を表示できるものとして、ネオンライトが用いられてきた。しかし、ガラス管からなるネオンライトは可撓性を有しないため、予め決まった形状で製造された後に、別の形状に変形させることはできない。そのため、所望の形状に合わせて個別に製造しなければならず、納期面や経済面で不便を強いている。
また、自動車の外部装飾部品等に用いる場合には、割れやすいガラス管からなるネオンライトは強度や耐久性に乏しく適さない。
【0003】
そこで、可撓性と光透過性を有する樹脂を棒状に加工した導光棒がネオンラインに代替して用いられている。導光棒は、その端部から光を入射させると、導光棒内部で全反射を繰り替えして光を長手方向に導光させることができる。一方、全反射すべき光を一部散乱させることで、外周面から出射させることができる。
このように、長手方向に導光するとともに外周面を発光させる周面発光型の導光棒は、可撓性を有し、ある程度湾曲させても全反射して導光させることができるため、種々の形状に変形して用いることができる。
【0004】
導光棒は、効率よく全反射させるため、光を導光するコア層と、反射面を構成するためのクラッド層とを、屈折率の異なる素材で構成する必要がある。このとき、コア層とクラッド層との間に空気層が含まないようにしなければならない。一部に空気層を含むと、屈折率の差異によりその箇所では光の散乱性が一様ではなくなり一部で輝度が低下する等の問題が生じ得る。
【0005】
しかし、周面発光型導光棒を屋外で使用すると、異物の衝突等によりクラッド層の表面に切創が生じることがある。特に切創の深さがコア層にまで達するものである場合、その後の環境温度の変化や屈曲させる等の外力により、コア層とクラッド層が切創の箇所から剥離してしまうことがある。
剥離が生じると、長手方向に連続的に剥離が進展し、前述の全反射の阻害や外周面の発光輝度の低下が生じることとなる。
【0006】
従来、本願の出願人においては、クラッド層のさらに外側に光反射層を設けた周面発光型導光棒に関する特許出願を行っている(特許文献1参照)。この技術では、フッ素系樹脂のクラッド層に対して接着性を有する樹脂を光反射層に用いることで、クラッド層と最外層である反射層の層間剥離を防止することができる。
【0007】
また、特許文献2には、クラッド層を2層構造とし、それぞれの層に用いるフッ素系樹脂を、親和性の良い特定の樹脂の組み合わせとした光ファイバーケーブルに関する技術が開示されている。親和性の良いフッ素系樹脂の組み合わせとすることにより、2層のクラッド層の密着性が良くなるため、光ファイバーケーブルの耐捻回性と機械的耐久性に優れたものとすることができるとされている。
【0008】
さらに、特許文献3には、アクリル系樹脂を用いたコア層と、所定のショアD硬度を備えるフッ素系樹脂を用いたクラッド層からなるプラスチック光ファイバーケーブルに関する技術が開示されている。クラッド層にショアD硬度が所定の範囲であるフッ素系樹脂を用いることで、適度な粘着性と柔らかさを有するため、コア層から容易に剥離することがなく、強固に接合することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-69808号公報
【特許文献2】特開2021-156984号公報
【特許文献3】特開2014-215579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1の技術では、クラッド層とその外側に設けられた光反射層との層間剥離を防止することはできるものの、コア層とクラッド層の密着強度については言及していない。これは、特許文献2においても同様であり、特許文献2では多層構造のクラッド層における各層の剥離強度を向上させることはできるものの、コア層とクラッド層との密着強度には言及されていない。
【0011】
一方、特許文献3は、クラッド層とその外層である被覆層の密着強度のみならず、コア層とクラッド層の密着強度についても向上させることができるとされている。しかし、特許文献3の技術では、クラッド層に用いる樹脂の硬度を限定するものであるため、柔軟性に制限があるという問題がある。また、屈曲に対する追従性により剥離を防止することはできるが、切創が生じた場合や、環境温度の変化が生じた場合による剥離防止に対しては有効であるとは言い難い。
【0012】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光源から離れた箇所でも高い輝度で周面発光可能であるとともに、切創が生じた場合や過酷な環境温度において、屈曲させて用いたとしても、外周面の高い輝度を維持することができる、親和層を有する周面発光型導光棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の親和層を有する周面発光型導光棒(以下、「導光棒」という)は、アクリル系樹脂を主材とするコア層とフッ素系樹脂を主材とするクラッド層とを備え、端面から入射した光を長手方向に導光するとともに外周面から光を出射するように構成されている。その特徴は、前記コア層と前記クラッド層との間に親和層を備え、前記親和層はアクリル系樹脂との接着性を有する非フッ素系樹脂を主材としており、前記クラッド層は前記親和層との接着性を有する樹脂を主材としている点にある。
【0014】
親和層に用いられている非フッ素系樹脂は、アクリル系樹脂との接着性を有する樹脂を主材としていることから、アクリル系樹脂との良好な密着が得られる。
アクリル系樹脂との接着性とは、例えば成形時にコア層と親和層の境界面が相互に溶融して固化する機械的結合の性質や、前記境界面において両者の主鎖または側鎖が化学反応を起こして一体化する化学的相互作用による結合の性質、前記境界面で近接する分子同士の分子間力により引き合う物理的相互作用による結合の性質をいい、所定の用途において容易に剥離しない程度の結合力を有するものをいう。この性質は、樹脂それ自体が有しているものに限定されず、表面改質等により付加されることで備わるものも含まれる。
【0015】
一方、クラッド層に用いられているフッ素系樹脂は、前記親和層における非フッ素系樹脂との接着性を有する樹脂を主材としていることから、親和層における非フッ素系樹脂との良好な密着が得られる。
親和層における非フッ素系樹脂との接着性とは、前述の親和層におけるアクリル系樹脂との接着性と同義であり、機械的結合、化学的相互作用、物理的相互作用による結合の性質をいう。この性質は、樹脂それ自体が有しているものに限定されず、表面改質等により付加されることで備わるものも含まれる。
【0016】
本発明の導光棒は、上述のようなコア層との接着性を有する親和層を備えることで、親和層とクラッド層とを強固に結合することができる。また、親和層との接着性を有するクラッド層を備えることで、クラッド層を親和層とクラッド層とを強固に結合することができる。
このように、親和層が、コア層とクラッド層両方に対して良好な接着性を有することで、クラッド層に対して切創が生じた場合であって屈曲等の曲げモーメントが加わった場合であっても、各層の境界面が剥離することなく、密着状態を維持することができる。また、環境温度が変化して、各層の線膨張係数の相違により互いにせん断するように膨縮したとしても、各層の境界面が剥離することなく、密着状態を維持することができる。
【0017】
前述の課題を解決するために本発明が採用した手段としては、上記手段に加え、前記親和層をポリアミド樹脂が主材であるものとし、前記フッ素系樹脂をポリアミド樹脂に対する接着性官能基が備わったものとすることも可能である。
【0018】
アクリル系樹脂とポリアミド樹脂とは、極性が類似しており、分子鎖の混ざり合いが界面近傍で発生するため、密着性が良い樹脂である。そのため、親和層にポリアミド樹脂を主材として用いることで、コア層と親和層をより強度に密着させることができる。
また、クラッド層のフッ素系樹脂にポリアミド樹脂に対する接着性官能基が備わったものを主材として用いることで、両者の官能基による界面近傍での反応により、親和層に対しても良好な密着性を発揮することができる。
【0019】
前述の課題を解決するために本発明が採用した他の手段としては、前記親和層の屈折率は前記コア層よりも低く前記クラッド層よりも高いものとすることも可能である。
特に、前記コア層と前記親和層との屈折率の差は0.05以上0.09以下とし、前記親和層と前記クラッド層との屈折率の差は0.01以上0.05以下とするのが好ましい。
【0020】
前記親和層の屈折率は前記コア層よりも低く前記クラッド層よりも高いものとすることにより、コア層と親和層との間で全反射を生じさせることができる。また、一部の光が親和層内に進入したとしても、親和層とクラッド層との間で全反射を生じさせることができる。これにより、導光効率を向上させることができる。
また、各層の屈折率の差を上記の値とすることで、導光棒全体で全反射される光の量を向上させることができるため、導光効率をより向上させることができる。
【0021】
本発明の他の手段としては、前記クラッド層をテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)を主材とすることも可能である。
【0022】
フッ素系樹脂には種々のものがあり、例えば従来では、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)をクラッド層に用いた例がある。しかし、ETFEはアクリル系樹脂、殊にポリメタクリル酸メチル(PMMA)とは接着性があまり良好でないことが知られている。
そこで、親和層としてポリアミド樹脂を用い、親和層のポリアミド樹脂と接着性の良いCPT樹脂を用いることで、親和層とクラッド層とをより強固に結合させることができる。
【0023】
上記のCPTを用いる構成においては、前記クラッド層を少なくとも内層と外層とを備える多層構造とし、前記内層にテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)を主材とするものを用い、前記外層にテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を主材とするものに光散乱材を添加させたものを用いる構成とすることも可能である。
【0024】
テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)とテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)とは、極性が類似しており、分子鎖の混ざり合いが界面近傍で発生するため、密着性が良い樹脂である。そのため、内層にCPT樹脂を主材として用い、外層にFEP樹脂を主材として用いることで、内層と外層とをより強度に密着させることができる。
また、クラッド層を多層構造とし、最外周の層である外層に光散乱材を添加させることで、外周面から光を均一に出射することができる。外層に用いるFEP樹脂は、内層に用いるCPT樹脂と接着性が良いため、剥離が生じにくくなる。そのうえ、CPT樹脂よりも屈折率が小さいため、内層で散乱する一部の光を内層と外層の境界面で全反射させて内層や親和層、コア層に戻して導光の効率を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0025】
前述のとおり、本発明の導光棒は、コア層とクラッド層との間に、コア層との接着性を有する親和層を備えるとともに、クラッド層に親和層との接着性を備えた樹脂を主材として用いた構成としている。
上記構成であることにより、コア層と親和層、及び親和層とクラッド層がそれぞれ強固に結合させることができる。そのため、切創が生じた場合や過酷な環境温度において、屈曲させて用いたとしても、外周面の高い輝度を維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の導光棒を表す斜視図及び断面図である。
【
図2】本発明の変形例1の導光棒を表す断面図である。
【
図3】本発明の導光棒の輝度測定結果を表すグラフである。
【
図4】本発明の導光棒の色度測定結果を表すグラフである。
【
図5】輝度測定における切創の位置と大きさを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、
図1に基づいて以下に説明する。
なお、各図は説明のために模式的に記載されており、寸法や形状は一部強調または簡略化して示されている。
【0028】
本発明の親和層を有する周面発光型導光棒(以下、単に「導光棒」という)100は、
図1に示すように、アクリル系樹脂を主材とするコア層1と非フッ素系樹脂を主材とする親和層2と、フッ素系樹脂を主材とするクラッド層3とを備えている。親和層2は、コア層1とクラッド層3との間に介在している。
【0029】
コア層1の形状は、
図1に示すような円形状の断面形状を採用することができるが、円形状以外にも、矩形状や楕円形状、半円形状、多角形状等を採用することもできる。
【0030】
コア層1の材質は、アクリル系樹脂を主材とする熱可塑性樹脂を採用することができる。
アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸イソブチルまたはポリメタクリル酸t-ブチル等の硬質アクリル系樹脂の1種または複数種を使用することができる。
また、メタクリル酸メチルーアクリル酸n-ブチルーアクリル酸ベンジルのブロック共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体(MMA‐BAブロック共重合体)、またはアクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体、またはメタクリル酸メチル(アクリル酸メチル)とアクリル酸エステルとアクリル酸芳香族エステルから成るアクリル系ブロック共重合体等のアクリル系エラストマーの1種または複数種を使用することもできる。
さらに、上記の硬質系アクリル樹脂とアクリル系エラストマー樹脂を混合して用いることも可能である。
【0031】
コア層1には、ブルーイング剤(青色顔料や紫色顔料)を添加することによって導光棒100の発光色の黄変を抑制することもできる。ブルーイング剤の添加量については、コア層1の樹脂材料に対し重量比で0.1ppm~10ppmの割合で添加することが好ましい。また、ブルーイング剤は、コア層1だけでなく、親和層2やクラッド層3に対して添加することもできる。
【0032】
親和層2は、アクリル系樹脂との接着性を有する非フッ素系樹脂を主材としている。
親和層2の形状は、コア層1と相似形の均等な肉厚で形成することもできるが、一部の肉厚が異なるようにコア層1と非相似形とすることもできる。
【0033】
親和層2の材質は、非フッ素系樹脂を主材とする熱可塑性樹脂を採用することができる。
非フッ素系樹脂としては、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)等の1種または複数種を使用することができ、特に、アクリル樹脂との接着性や、フッ素系樹脂の接着性官能基との結合のしやすさから、PA6やPA66等のポリアミド樹脂が好適である。
【0034】
クラッド層3は、親和層2である非フッ素系樹脂との接着性を有するフッ素系樹脂を主材としている。
クラッド層3の形状は、親和層2と相似形の均等な肉厚で形成することもできるが、一部の肉厚が異なるようにコア層1と非相似形とすることもできる。
【0035】
クラッド層3の材質は、フッ素系樹脂であるエチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(EFEP)、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)、またはテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の1種または複数種を使用することができ、特に、ポリアミド樹脂との結合のしやすさから、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)が好適である。
【0036】
また、クラッド層3のフッ素系樹脂は、一般的に、炭素原子の鎖にフッ素原子が結合した高分子であるため、フッ素原子の影響で他の素材と結合しにくい。そこで、主鎖または側鎖の一部のフッ素原子を、ヒドロキシル基やカルボキシル基、カルボニル基等の接着性官能基に置き換えたものを用いるのが好ましく、特に、プラズマ処理やコロナ処理等の表面改質によることなく接着性官能基を備えている特殊なフッ素系樹脂を用いるのがより好ましい。
【0037】
また、クラッド層3には、光散乱剤を添加して外周面から光を出射させやすくすることもできる。このとき、紫外線吸収作用を有する光散乱剤であれば、耐候性を高めることもできる。具体的には、粉末状の酸化チタンを光散乱剤として、クラッド層3の主材100重量部に対し、0.01~5重量部添加することができる。光散乱剤としては、酸化チタン以外の硫酸バリウム等を使用することもできる。また、光散乱剤は、クラッド層3だけでなくコア層1や親和層2に添加させることもできる。
【0038】
図1の形態において、コア層1にPMMAを用い、親和層2にd線における屈折率が1.42のPA樹脂を用いる場合、コア層1よりも親和層2の屈折率の方が小さい。それ故、コア層1と親和層2との境界面において全反射が生じる。また、クラッド層3にCPT樹脂を用いた場合、親和層2よりクラッド層3の屈折率の方が小さくなる。そのため、親和層2内に入射した光をクラッド層3でさらに全反射させることができる。これにより、より広い入射角の光を全反射させることができる。
【0039】
このように、コア層1と親和層2の屈折率を近似させるとともに、クラッド層3の屈折率をコア層1よりも低いものとすることで、親和層2においても導波路として利用することができる。したがって、開口率を大きくすることができるため、入射効率を向上させることができる。
【0040】
親和層2の屈折率については、コア層1よりも大きいものであってもよいが、小さいものの方が好ましく、-5%未満とすることがより好ましく、親和層2の屈折率はコア層1とクラッド層3の中間の屈折率であるのがさらに好ましい。一例として、屈折率1.50のPMMA樹脂をコア層1に用い、親和層2に屈折率1.42のPA樹脂を用いることができる。
+5%よりも大きくなると、コア層1から親和層2に進入した光における、クラッド層3への入射角が小さくなり過ぎてしまい、クラッド層3との境界面で全反射が生じる割合が減少してしまう。
一方、-5%よりも小さくなると、コア層1と親和層2との境界面で全反射が生じる割合が増加し、親和層2がクラッド層3の一部とみなせる状態になってしまう。この場合、親和層2を導波路として利用することができなくなるため、開口率を大きくすることができず、入射効率を向上させることができない。
【0041】
『変形例1』
本発明においては上記の形態に限定されず、他の形態を採用することもできる。例えば、
図2に示すように、導光棒101のクラッド層3を、内層31と外層32とを備える多層構造とすることもできる。また、さらに複数の層を備える構成としたり、クラッド層3の外側に保護層を設け、表示が必要な箇所だけクラッド層3を露出させたりすることもできる(図示せず)。
【0042】
導光棒101のように、内層31と外層32の2層構造とする場合には、内層31にテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)を主材とするものを用い、外層32にテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を主材とするものを用いるのが好ましい。
【0043】
接着性官能基を有するCPT樹脂は、親和層3に用いる樹脂のうち、ポリアミド樹脂に対して特に接着性が良好であり、親和層2とクラッド層3とをより強固に結合させることができる。また、CPT樹脂のd線における屈折率は約1.39と低いため、より広い入射角範囲の光を全反射させることができる。
また、外層32に屈折率1.40のFEP樹脂を用いることで、CPT樹脂を用いる内層31と強固に結合させることができる。
【実施例0044】
『輝度減衰特性の評価試験』
次に、本発明の導光棒の具体的な実施例1~3のサンプルと、従来技術の導光棒である比較例1のサンプルとの輝度を、光源からの距離毎に比較した。
各サンプルは、寸法を長さ1.0m、直径3.5mmとして、光源からの距離が100mm~900mmの部位の発光輝度を測定した。特に、実施例2及び実施例3に関しては、200mm~340mmの範囲を細かな間隔で測定し、極端に輝度が上昇するホットスポットの程度を測定した。
測定は、サンプルの被測定部位から垂直方向に600mm離れた位置に分光放射輝度計(コニカミノルタ製CS-2000)を配置して行った。また、光源には、駆動電流300mA、光量28lmのLED光源を使用した。また本明細書中の「輝度減衰特性」とは、下記表の試験条件において計測された発光輝度に基づくものとする。
【表1】
【0045】
「実施例1」
実施例1は、全体の直径が3.5mmであり、断面円形のコア層を用い、その周囲に均等肉厚の親和層を設け、親和層の周囲に均等肉厚のクラッド層を設けた構成とした。クラッド層は内層と外層との2層構造とした。
コア層には距離による減衰が穏やかとなるように改良された(以下、バランス型という)透明のポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂を用い、親和層には透明のポリアミド(PA)樹脂を用いた。クラッド層の内層にはPA樹脂に対する接着性官能基を備えるテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(CPT)樹脂を用い、クラッド層の外層には光散乱剤である酸化チタンを添加して乳白色としたテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂を用いた。
【0046】
「実施例2」
実施例2は、実施例1と同様の構成としたが、外層に添加する光散乱剤の量を多くして白色とした点が異なる。
【0047】
「比較例1」
比較例1は、実施例1~2と同様、全体の直径が3.5mmであり、断面円形のコア層を用い、その周囲に均等肉厚のクラッド層を設けた構成とした。クラッド層は内層と外層との2層構造とした。
コア層には高輝度となるように改良された(以下、高輝度型という)透明のポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂を用いた。クラッド層の内層にはテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)樹脂を用い、クラッド層の外層には光散乱剤である酸化チタンを添加して乳白色としたテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)樹脂を用いた。
【0048】
「試験結果」
上記実施例1~2及び比較例1の試験結果を
図3(a)(b)に示す。
図3(a)に示すように、バランス型のコア層を用い、乳白色の外層とした実施例1は、高輝度型のコア層を用いた比較例1に対して、光源からの距離が近いところでは輝度は僅かに低いものの、光源から離れた位置における輝度は同程度であり、距離に対する減衰の割合が小さい結果となった。
同様にバランス型のコア層を用い、白色の外層とした実施例2は、高輝度型のコア層を用いた比較例1に対して、光源からの距離が近いところでは輝度は僅かに高く、光源から離れた位置における輝度も僅かに高い結果となった。
【0049】
一方、
図3(b)に示すように、光源からの距離が200mm~340mmの範囲においては、実施例1及び実施例2の何れも、260mm~270mm付近に輝度が極端に上昇するホットスポットが生じた。このホットスポットは光源の配向特性やコア層の直径等により生じるものであると考えられるが、外層を白色とした実施例2に対して、外層を乳白色とした実施例1は、ホットスポットの程度が小さい結果となった。また、外層が白色であっても、比較例1のホットスポットは、実施例2と同程度の輝度であった。
【0050】
『色度特性の評価試験』
輝度減衰特性の評価試験と同時に、色度についても評価した。試験に用いたサンプル及び評価設備は上記の輝度減衰特性の評価試験と同じものを用いた。
【0051】
「試験結果」
上記実施例1~2及び比較例1の試験結果を
図4に示す。
図4に示すように、バランス型のコア層を有する実施例1の色度変化は、高輝度型のコア層を有する比較例1とあまり変わらなかった。外層を白色とした実施例2は、実施例1よりは黄色方向に遷移したものの、実使用上問題となるほどの極端な色度変化はなかった。
【0052】
『切創による輝度変化の評価試験』
次に、
図5に示すように、導光棒に切創が加わったときの輝度の変化をN=2で評価した。サンプルは実施例2と比較例1を用い、長さ500mmの導光棒の光源から300mmの位置に、長さ50mm程度の切創を設けた。切創は、クラッド層の内層と外層を貫通し、コア層にぎりぎり達しない程度の深さであり、切創を設けた後、導光棒に4~5回程度の折り曲げ操作を加えた。
輝度の測定は、上記の輝度減衰特性の評価試験と同様の設備を用い、切創を加えたサンプルと加えなかったサンプルの輝度を比較した。切創を加えたサンプルの測定箇所は、切創の反対面側の輝度を測定した。
【0053】
「試験結果」
上記実施例2及び比較例1の試験結果を下表に示す。
【表2】
親和層の無い比較例1は、折り曲げ操作の際に、切創の位置でコア層とクラッド層とが剥離した。そのため、切創のあるものとないものとで、輝度が25%以上減衰した。
一方、親和層を有する実施例2は、折り曲げ操作をしてもコア層とクラッド層とが剥離することがなかった。そのため、切創のあるものとないものとで、輝度の大きな変化は見受けられなかった。