IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-142034回転電機用ハウジング及びその製造方法
<>
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図1
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図2
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図3
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図4
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図5
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図6
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図7
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図8
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図9
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図10
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図11
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図12
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図13
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図14
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図15
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図16
  • 特開-回転電機用ハウジング及びその製造方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142034
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回転電機用ハウジング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20241003BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20241003BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20241003BHJP
   H02K 9/197 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K15/14 Z
H02K7/18 Z
H02K9/197
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053991
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 宏純
(72)【発明者】
【氏名】木村 安成
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H609
5H615
【Fターム(参考)】
5H605BB07
5H605BB10
5H605BB17
5H605CC01
5H605DD13
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607FF07
5H607FF30
5H609BB03
5H609BB12
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP11
5H609QQ02
5H609QQ05
5H609QQ07
5H609RR37
5H609RR44
5H609RR52
5H609RR55
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP28
(57)【要約】
【課題】気体及びオイルが供給される回転電機を収容可能であり、熱交換部の熱交換効率を向上させた回転電機用ハウジング及びその製造方法を提供する。
【解決手段】回転電機10を収容可能な回転電機用ハウジング20は、本体部21と、回転電機10に供給される圧縮エアが流れる気体流路30と、回転電機10に供給されるオイルが流れるオイル流路40と、本体部21に設けられ、内部に冷媒が流れる冷媒流路50と、を備える。冷媒流路50は、回転電機熱交換部51と、気体熱交換部52と、オイル熱交換部56と、を有し、回転電機熱交換部51は、冷媒の流れ方向において、気体熱交換部52及びオイル熱交換部56よりも下流側に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を収容可能な回転電機用ハウジングであって、
前記回転電機が収容される収容空間を有する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記回転電機に供給される気体が流れる気体流路と、
前記本体部に設けられ、前記回転電機に供給されるオイルが流れるオイル流路と、
前記本体部に設けられ、内部に冷媒が流れる冷媒流路と、を備え、
前記冷媒流路は、
前記冷媒が前記回転電機と熱交換を行う回転電機熱交換部と、
前記冷媒が前記気体流路を流れる前記気体と熱交換を行う気体熱交換部と、
前記冷媒が前記オイル流路を流れる前記オイルと熱交換を行うオイル熱交換部と、を有し、
前記回転電機熱交換部は、前記冷媒の流れ方向において、前記気体熱交換部及び前記オイル熱交換部よりも下流側に設けられている、
回転電機用ハウジング。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記気体熱交換部、前記オイル熱交換部、及び前記回転電機熱交換部は、前記冷媒の流れ方向に沿って直列に設けられている、
回転電機用ハウジング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記気体流路及び前記冷媒流路の前記気体熱交換部は、前記回転電機の軸方向に延在し、
前記気体熱交換部を流れる前記冷媒の流れ方向は、前記気体流路を流れる前記気体の流れ方向と逆である、
回転電機用ハウジング。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記オイル流路及び前記冷媒流路の前記オイル熱交換部は、前記回転電機の軸方向に延在し、
前記オイル熱交換部を流れる前記冷媒の流れ方向は、前記オイル流路を流れる前記オイルの流れ方向と逆である、
回転電機用ハウジング。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記回転電機熱交換部は円筒形状を有し、
前記気体熱交換部及び前記オイル熱交換部は、前記回転電機熱交換部よりも径方向外側に配置されている、
回転電機用ハウジング。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記本体部は円筒形状の外側壁を有し、
前記外側壁は、
前記回転電機と外部機器との間で電力を授受するための電気端子が設けられた端子配置部と、
前記気体流路及び前記気体熱交換部が設けられた気体流路配置部と、
前記オイル流路及び前記オイル熱交換部が設けられたオイル流路配置部と、を有し、
前記端子配置部、前記気体流路配置部、及び前記オイル流路配置部は、前記本体部の周方向において略120度間隔で配置されている、
回転電機用ハウジング。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の回転電機用ハウジングを積層造形により製造する製造方法であって、
前記本体部、前記気体流路、前記オイル流路、及び前記冷媒流路を一体に形成する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機を収容可能な回転電機用ハウジング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する軽量化に関する研究開発が行われている。例えば、電動機や発電機といった回転電機を含むシステムの軽量化に関する研究開発が行われている。
【0003】
回転電機には、ガスタービンエンジンのような内燃機関が連結されることがある。例えば、特許文献1~4には、ガスタービンエンジンに連結された回転電機が記載されている。このような回転電機は、バッテリからの電力により回転してガスタービンエンジンを始動させたり、ガスタービンエンジンにより駆動されて発電を行ったりする。回転電機は回転時に発熱するので、回転電機を冷却する機構が設けられる。例えば、回転電機を収容するハウジングには、冷媒が流れる冷媒ジャケットが設けられる(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、ガスタービンエンジンが連結された回転電機においては、ガスタービンエンジンから抽気した高温の圧縮エアを、熱交換器により冷却した後に回転電機に供給するものがある(例えば、特許文献1~3)。回転電機に供給された圧縮エアは、回転電機の冷却等を行う。
【0005】
また、回転電機には、例えばステータの冷却やベアリングの潤滑及び冷却のためにオイルが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-157785号公報
【特許文献2】特表2017-527728号公報
【特許文献3】特開2007-159277号公報
【特許文献4】特開2002-147249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスタービンエンジンから抽気した圧縮エアは高温であるので、回転電機に供給する前に圧縮エアを冷却する必要がある。また、回転電機の部品の冷却に用いられたオイルを循環させて再び回転電機に供給するとき、回転電機への供給前にオイルを冷却する必要がある。圧縮エアを冷却する熱交換器とオイルを冷却する熱交換器とをそれぞれ別体で設けると、回転電機及び各熱交換器を含むシステム全体が大型化する。
【0008】
そこで、ハウジングに設けられた冷媒ジャケットにより圧縮エア及びオイルを冷却することが想起される。冷媒ジャケットが回転電機との熱交換部に加えて圧縮エアとの熱交換部及びオイルとの熱交換部を備える場合、冷媒は回転電機のみならず圧縮エア及びオイルとも熱交換を行うので、熱交換性能を高く維持できる冷媒ジャケットの具現化には検討の余地があった。
【0009】
本発明は、気体及びオイルが供給される回転電機を収容可能であり、熱交換部の熱交換効率を向上させた回転電機用ハウジング及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
回転電機を収容可能な回転電機用ハウジングであって、
前記回転電機が収容される収容空間を有する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記回転電機に供給される気体が流れる気体流路と、
前記本体部に設けられ、前記回転電機に供給されるオイルが流れるオイル流路と、
前記本体部に設けられ、内部に冷媒が流れる冷媒流路と、を備え、
前記冷媒流路は、
前記冷媒が前記回転電機と熱交換を行う回転電機熱交換部と、
前記冷媒が前記気体流路を流れる前記気体と熱交換を行う気体熱交換部と、
前記冷媒が前記オイル流路を流れる前記オイルと熱交換を行うオイル熱交換部と、を有し、
前記回転電機熱交換部は、前記冷媒の流れ方向において、前記気体熱交換部及び前記オイル熱交換部よりも下流側に設けられている。
【0011】
また、本発明は、
上記回転電機用ハウジングを積層造形により製造する製造方法であって、
前記本体部、前記気体流路、前記オイル流路、及び前記冷媒流路を一体に形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱交換部の熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】回転電機システム2の概略側面断面図である。
図2】回転電機システム2に連結されたガスタービンエンジン9の概略側面断面図である。
図3】回転電機10を収容する回転電機用ハウジング20の斜視図である。
図4図3のA-A線で切った回転電機用ハウジング20の断面の斜視図である。
図5】気体熱交換部52内の冷媒の流れ及び気体流路30内の圧縮エアの流れを示す図である。
図6】オイル熱交換部56内の冷媒の流れ及びオイル流路40内のオイルの流れを示す図である。
図7】オイル熱交換部56から回転電機熱交換部51へと流れる冷媒の流れを示す図である。
図8】回転電機熱交換部51から冷媒排出口50bまで流れる冷媒の流れを示す図である。
図9】気体熱交換部52、オイル熱交換部56、及び回転電機熱交換部51が直列に設けられた本実施形態の冷媒流路50を示す図である。
図10】気体熱交換部52、オイル熱交換部56、及び回転電機熱交換部51が並列に設けられた比較例1の冷媒流路50を示す図である。
図11】気体熱交換部52、オイル熱交換部56、及び回転電機熱交換部51が並列に設けられた比較例2の冷媒流路50を示す図である。
図12図6のB-B線断面図であり、気体流路30及び冷媒流路50の気体熱交換部52の詳細を示す図である。
図13図12の部分Cの拡大図である。
図14図12の部分Dの拡大図である。
図15】気体流路30の直線部33及び気体熱交換部52の直線部53の断面を示す図である。
図16図6のE-E線断面図であり、オイル流路40及び冷媒流路50のオイル熱交換部56の詳細を示す図である。
図17】オイル流路40の直線部41及びオイル熱交換部56の直線部57の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の回転電機用ハウジングの一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0015】
(複合動力システム)
先ず、複合動力システム1について説明する。複合動力システム1は、回転電機システム2とガスタービンエンジン9とを備える。図1は、回転電機システム2の概略側面断面図であり、図2は、回転電機システム2に連結された内燃機関であるガスタービンエンジン9の概略側面図である。なお、図1では、気体流路30、オイル流路40、及び冷媒流路50を概念的に図示しており、これらの詳細な形状については図3図8、及び図12図17を参照して説明する。また、以下では、回転電機システム2の説明において、回転電機システム2の軸方向におけるガスタービンエンジン9側を第1端側とも称し、軸方向における第1端側とは反対側を第2端側とも称する。
【0016】
回転電機システム2とガスタービンエンジン9とは、同一軸線上に配置される。複合動力システム1は、例えば、ドローンのような飛翔体や船舶、自動車等における推進用の動力源、又は、航空機や船舶、建物等における補助電源の動力源として利用することができる。複合動力システム1は、マルチコプタ等の飛翔体に搭載されたときには、例えば、プロップやダクテッドファン等の揚力発生装置を構成するモータを回転付勢する動力駆動源として機能する。複合動力システム1は、船舶に搭載されたときにはスクリューの回転力発生装置として機能する。複合動力システム1は、自動車に搭載されたときにはモータを回転付勢する動力駆動源として機能する。この他、複合動力システム1をガスタービン発電設備に適用することも可能である。なお、本実施形態において、ガスタービンエンジン9は、後述する圧縮エアを回転電機システム2に供給する気体供給源を兼ねる。
【0017】
図1に示すように、回転電機システム2は、回転電機10と、回転電機10を収容可能な回転電機用ハウジング20(以下、単にハウジング20とも称する)とを備える。回転電機10は、ハウジング20の内側空間である収容空間S1に収容される。ハウジング20の詳細については後述する。
【0018】
回転電機10は、例えばモータジェネレータであり、不図示のバッテリからの電力により回転してガスタービンエンジン9を始動させたり、ガスタービンエンジン9により駆動されて発電を行ったりする。回転電機10は、ロータ11と、ステータ14とを備える。
【0019】
ロータ11は、ロータシャフト12と、複数の永久磁石13とを有する。ロータシャフト12の軸方向の第1端側の端部12a及び第2端側の端部12bは、それぞれ一対のベアリング18、19を介してハウジング20に支持されている。また、ロータシャフト12の端部12aには、ガスタービンエンジン9の出力軸94が連結されている。複数の永久磁石13は、ロータシャフト12に保持されている。
【0020】
ステータ14は、ロータ11の径方向外側に配置されている。ステータ14は、電磁コイル15と、複数の絶縁基材16とを有する。電磁コイル15は、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルを有する三相コイルである。絶縁基材16は、円環形状に配列されており、電磁コイル15は、絶縁基材16に巻回されている。
【0021】
ロータ11とステータ14との間には、円筒形状の隔壁62が設けられている。隔壁62は、ハウジング20の第1端側の端部から第2端側の端部まで延在し、収容空間S1を、ロータ11が収容される空間とステータ14が収容される空間とに分割する。隔壁62は、ロータ11の外周面から径方向に若干離隔して配置されており、隔壁62とロータ11との間にエアギャップ17が形成されている。
【0022】
回転電機10には外部からオイルが供給される。本実施形態では、一対のベアリング18、19及びステータ14に対してオイルが供給される。具体的に説明すると、一対のベアリング18、19に対して、不図示のオイル供給口から例えばジェット流状でオイルが供給され、ベアリング18、19は潤滑及び冷却される。また、ステータ14に対して、ハウジング20の第1端側に設けられたオイル供給口46からオイルが供給される。ステータ14に供給されたオイルは、ステータ14を冷却し、ハウジング20の第1端側に設けられたオイル排出口47から排出される。
【0023】
図2に示すように、ガスタービンエンジン9は、コンプレッサ91と、燃焼器92と、タービン93と、前述した出力軸94とを備える。
【0024】
コンプレッサ91は、外部から吸引したエアを圧縮して、圧縮エアを生成する。図2では、エア及び圧縮エアの流れを一点鎖線で示す。コンプレッサ91は、出力軸94に連結しており、回転電機10のロータシャフト12の回転又はタービン93の回転により回転する。
【0025】
燃焼器92には、コンプレッサ91により生成された圧縮エアと、燃料供給源95から噴射された燃料とが供給される。燃料は圧縮エアとともに燃焼し、高温の燃焼ガスとなる。燃焼ガスは、燃焼器92よりも下流側に配置されたノズル96を通って外部に排出される。
【0026】
タービン93は、出力軸94に連結されている。タービン93はノズル96内に設けられており、燃焼器92で生成された燃焼ガスの排気流により回転する。タービン93が回転することにより、出力軸94に連結されたロータシャフト12も回転する。これにより、回転電機10は発電を行う。コンプレッサ91及びタービン93は、回転電機10が不図示のバッテリからの電力により回転することで回転を開始するが、出力軸94が高速回転状態となった後はバッテリから回転電機10への電力供給は停止される。
【0027】
ガスタービンエンジン9は、コンプレッサ91の径方向外側に設けられ、ハウジング20と連結する脚部97を備える。脚部97は、周方向に沿って所定の間隔を空けて複数(例えば6つ)設けられており、隣り合う脚部97の隙間からエアがコンプレッサ91へ流入する。
【0028】
ガスタービンエンジン9は、抽気流路98をさらに備える。抽気流路98は、脚部97に設けられている。コンプレッサ91には抽気口91aが設けられており、抽気流路98は、抽気口91aと、ハウジング20に設けられた気体入口部28とを連通する。これにより、圧縮エアの一部は、抽気口91aから抽気流路98に流れ、抽気流路98及び気体入口部28を経て、ハウジング20の気体流路30に流入する。気体流路30の詳細は後述する。
【0029】
圧縮エアは、気体流路30を流れた後、図1に示すように、気体流路30の第2端側に設けられた気体供給部30aから収容空間S1に供給される。より詳細には、圧縮エアは、収容空間S1のうち隔壁62の径方向内側のロータ11が収容される空間に供給される。図1では圧縮エアの流れを一点鎖線で示す。収容空間S1に供給された圧縮エアは、ベアリング19、ロータ11とステータ14との間のエアギャップ17、及びベアリング18に流れる。ベアリング18、19に流れた圧縮エアは、ベアリング18、19に供給されたオイルがロータ11に飛散しないようエアカーテンとして機能する。エアギャップ17に進入した圧縮エアは、ロータ11の回転によりエアギャップ17で熱が発生することを抑制する。圧縮エアは、ベアリング18、19を通過して、不図示の排出口から回転電機システム2の外部に排出される。
【0030】
(回転電機用ハウジング)
続いて、ハウジング20について説明する。図3は、ハウジング20の斜視図である。図4は、図3のA-A線で切った断面の斜視図である。
【0031】
ハウジング20は、本体部21と、気体流路30と、オイル流路40と、冷媒流路50とを備える。
【0032】
本体部21は、回転電機10が収容される収容空間S1を有する部材である。本体部21は円筒形状の外側壁22を有する。外側壁22は、端子配置部23と、気体流路配置部24と、オイル流路配置部25とを有する。端子配置部23には、回転電機10と外部機器(不図示)との間で電力を授受するための電気端子が設けられる。具体的には、端子配置部23には、電磁コイル15のU相端子、V相端子、及びW相端子(不図示)が配置される。気体流路配置部24には、圧縮エアが流れる気体流路30と冷媒が流れる気体熱交換部52(後述)とが設けられる。気体流路配置部24は、回転電機10の軸方向に沿って延在する。オイル流路配置部25には、オイルが流れるオイル流路40と冷媒が流れるオイル熱交換部56(後述)とが設けられる。オイル流路配置部25は、回転電機10の軸方向に沿って延在する。
【0033】
端子配置部23、気体流路配置部24、及びオイル流路配置部25は、外側壁22の周方向において、略120度間隔で配置されている。このような等間隔の配置関係により、ハウジング20の重心位置の偏りを抑制できる。
【0034】
外側壁22は、回転電機10の軸方向に延在する複数のリブ29を有する。複数のリブ29は、外側壁22の周方向全体に渡って等間隔に設けられる。複数のリブ29により、ハウジング20の剛性を向上させることができる。
【0035】
本体部21は、前述した外側壁22と、外側壁22の内周面から径方向に隙間を隔てて設けられる内側壁26とを有し、すなわち二重円筒形状を有する。内側壁26の径方向内側の空間が、前述した収容空間S1に相当する。
【0036】
本体部21は、外側壁22の第1端側に設けられた底壁27をさらに有する。底壁27は、略円板形状を有し、不図示のボルトによりガスタービンエンジン9の脚部97に取り付けられる。底壁27は、内側壁26とともに収容空間S1を区画形成する。底壁27には、ロータシャフト12が挿通される貫通孔68が設けられており、ベアリング18を介してロータシャフト12の端部12aを支持する。
【0037】
底壁27には、ガスタービンエンジン9の抽気流路98と気体流路30とに連通した気体入口部28が設けられている。気体入口部28は、ガスタービンエンジン9から抽気した圧縮エアを気体流路30へ案内する流路である。
【0038】
また、図3では図示を省略するが、図1に示すように、本体部21には、外側壁22の第2端側の端部に設けられるロータ支持部64をさらに有する。ロータ支持部64にはロータシャフト12が挿通される貫通孔69が設けられており、ベアリング19を介してロータシャフト12の端部12bを支持する。ロータ支持部64は、内側壁26及び底壁27とともに収容空間S1を区画形成する。また、ロータ支持部64には、回転パラメータを検出するレゾルバ65と、レゾルバ65を保持するレゾルバホルダ66とが設けられている。
【0039】
気体流路30は、本体部21に設けられ、回転電機10に供給される気体が流れる流路である。気体流路30は、本体部21の気体流路配置部24に設けられており、回転電機10の軸方向に延在している。詳しく説明すると、気体流路30は、軸方向における第1端側が気体入口部28を介してガスタービンエンジン9の抽気流路98に連通しており、気体流路30には高温の圧縮エアが流れる。気体流路30の第2端側は、収容空間S1に連通しており、圧縮エアを収容空間S1に供給する気体供給部30aを有する。高温の圧縮エアは、気体流路30を流れる間に気体熱交換部52により冷却され、気体供給部30aから収容空間S1に供給される。
【0040】
オイル流路40は、本体部21に設けられ、回転電機10に供給されるオイルが流れる流路である。オイル流路40は、本体部21のオイル流路配置部25に設けられており、回転電機10の軸方向に延在している。オイル流路40は、第2端側に設けられたオイル流入口40aと、第1端側に設けられたオイル流出口40bとを有する。
【0041】
オイルの流れについて詳しく説明すると、前述のとおり、ハウジング20に設けられたオイル供給口46(図1参照)から収容空間S1に供給されたオイルは、ステータ14を冷却した後、オイル排出口47から収容空間S1の外部に排出される。オイル排出口47は、不図示の接続管(例えばホース)を介してオイル流路40のオイル流入口40aに連通している。ステータ14から熱を受け取って高温となったオイルは、オイル排出口47からオイル流入口40aまで案内される。その後、オイルは、オイル流路40を流れてオイル熱交換部56により冷却される。オイル熱交換部56により冷却されたオイルは、オイル流出口40bから不図示の接続管及びオイルポンプを介して再びオイル供給口46から収容空間S1に供給される。このように、オイルは循環して回転電機10に供給される。
【0042】
図5図8は、冷媒流路50内の冷媒の流れを示す。冷媒流路50は、本体部21に設けられ、内部に冷媒(例えば冷却水)が流れる流路であり、いわゆるウォータジャケットである。冷媒流路50は、冷媒が外部から流入する冷媒供給口50aと、冷媒が外部へ流出する冷媒排出口50bとを有する。
【0043】
図3図8に示すように、冷媒流路50は、回転電機熱交換部51と、気体熱交換部52と、オイル熱交換部56とを有する。詳細は後述するが、冷媒は、冷媒供給口50aから冷媒流路50に流入し、気体熱交換部52、オイル熱交換部56、回転電機熱交換部51の順に流れ、冷媒排出口50bから冷媒流路50の外部に排出される。
【0044】
回転電機熱交換部51は、冷媒が回転電機10と熱交換を行うことにより、回転電機10の各部品(特にステータ14)を冷却する。回転電機熱交換部51は、円筒形状を有し、本体部21の外側壁22と内側壁26との間の空間に流れる冷媒の流路である。
【0045】
気体熱交換部52は、冷媒が気体流路30を流れる圧縮エアと熱交換を行うことにより、圧縮エアを冷却する。気体熱交換部52は、本体部21の気体流路配置部24に設けられており、回転電機10の軸方向に延在する。
【0046】
オイル熱交換部56は、冷媒がオイル流路40を流れるオイルと熱交換を行うことにより、オイルを冷却する。オイル熱交換部56は、本体部21のオイル流路配置部25に設けられており、回転電機10の軸方向に延在する。
【0047】
気体熱交換部52及びオイル熱交換部56は、回転電機熱交換部51よりも径方向外側に配置されている。このような構成により、ハウジング20が軸方向に大きくなることを抑制できる。
【0048】
冷媒流路50は、回転電機熱交換部51に加えて、気体熱交換部52及びオイル熱交換部56を有するので、回転電機10に供給される圧縮エア及びオイルの冷却は、冷媒流路50により行われる。換言すると、回転電機10を冷却する機能、圧縮エアを冷却する機能、及びオイルを冷却する機能が冷媒流路50に集約されているので、圧縮エア及びオイルを冷却する熱交換器を冷媒流路50とは別に設ける必要がない。したがって、本実施形態のハウジング20は、回転電機10、圧縮エア、及びオイルを冷却する熱交換機構をコンパクトにすることができる。
【0049】
ところで、回転電機10は高速回転により放熱量が大きい。よって、回転電機10の放熱量は、気体流路30及びオイル流路40を流れる圧縮エア及びオイルの放熱量よりも大きくなる。
【0050】
そこで、回転電機10、気体流路30、及びオイル流路40の放熱量を考慮して、回転電機熱交換部51は、冷媒の流れ方向において、気体熱交換部52及びオイル熱交換部56よりも下流側に設けられる。回転電機熱交換部51を下流側に配置することで、冷媒は、回転電機10と熱交換を行って温度が高くなる前に圧縮エア及びオイルと熱交換を行うので、圧縮エア及びオイルを十分に冷却することができる。さらには、圧縮エア及びオイルの放熱量は回転電機10の放熱量と比べると小さいので、冷媒の温度は圧縮エア及びオイルと熱交換を行った後でも大きくは上昇しない。よって、回転電機熱交換部51における冷媒と回転電機10との熱交換効率は、冷媒が圧縮エア及びオイルと熱交換を行った後でも依然として高い。
【0051】
続いて、図5図8を参照して冷媒の流れを詳しく説明する。図5に示すように、冷媒供給口50aから流入した冷媒は先ず気体熱交換部52を流れ、気体流路30を流れる圧縮エアと熱交換する。気体熱交換部52では、冷媒は第2端側から第1端側に向かって流れる。次に、冷媒は、気体熱交換部52とオイル熱交換部56とを連結する中継流路60を流れる。中継流路60は、外側壁22の周方向に沿って設けられた流路である。次に、図6に示すように、冷媒はオイル熱交換部56を流れ、オイル流路40を流れるオイルと熱交換する。オイル熱交換部56では、冷媒は第1端側から第2端側に向かって流れる。図7に示すように、オイル熱交換部56と回転電機熱交換部51とは第2端側において接続しており、冷媒は回転電機熱交換部51に流入する。冷媒は、回転電機熱交換部51を流れ、回転電機10、特にステータ14と熱交換する。ここで、冷媒がオイル熱交換部56から回転電機熱交換部51に流入するとき、冷媒は時計回りで流れる経路と反時計回りで流れる経路とで分岐する。これにより、円筒形状の回転電機熱交換部51に流れる冷媒の流量分布に偏りが生じることを抑制できる。図8に示すように、回転電機熱交換部51では、冷媒は第2端側から第1端側に向かって流れ、第1端側に設けられた冷媒排出口50bから冷媒流路50の外部に排出される。
【0052】
図9は、冷媒が循環して流れる循環流路8を示す。冷媒流路50は、循環流路8の一部を構成する。循環流路8にはポンプ81及び冷媒熱交換器82が設けられている。ポンプ81及び冷媒熱交換器82は、回転電機システム2の外部に設けられている。冷媒流路50の冷媒排出口50bから排出された冷媒は、冷媒熱交換器82により冷却された後、再び冷媒流路50に供給される。
【0053】
以上説明したように、気体熱交換部52、オイル熱交換部56、及び回転電機熱交換部51は、冷媒の流れ方向に沿って直列に設けられている。このような構成によると、各熱交換部52、56、51に必要な冷媒の流量(すなわち、回転電機10、圧縮エア、及びオイルを十分に冷却するために必要な冷媒の流量)がそれぞれQであるときは、図9に示すように、流量Qで冷媒を冷媒流路50に送り出すことのできるポンプ81を1つ設ければよい。
【0054】
図10は、回転電機熱交換部51、気体熱交換部52、及びオイル熱交換部56が並列に設けられた比較例1を示す。この場合、各熱交換部52、56、51に必要な冷媒の流量がそれぞれQであるときは、本実施形態と比較して3倍の流量(すなわち流量3Q)で冷媒を冷媒流路50に送り出す大容量ポンプ81Aが必要となる。一方で、本実施形態では、流量Qで冷媒を冷媒流路50に送り出すことのできるポンプ81を1つ設けるだけでよいので、ポンプの小型化を図ることができる。
【0055】
図11は、回転電機熱交換部51、気体熱交換部52、及びオイル熱交換部56が並列に設けられた比較例2を示す。比較例2では、比較例1とは異なり、大容量ポンプ81Aではなく、本実施形態と同様のポンプ81を用いている。この場合、各熱交換部52、56、51に必要な冷媒の流量がそれぞれQであるときは、各熱交換部51、52、56に流量Qを送り出すことのできるポンプ81が3つ必要となる。一方で、本実施形態では、ポンプ81は1つ設けるだけでよいので、ポンプの数を削減できる。
【0056】
本実施形態では、気体熱交換部52、オイル熱交換部56、及び回転電機熱交換部51が冷媒の流れ方向に沿って直列に設けられているので、冷媒流路50を流れる冷媒の全体の流量が大きくなることを抑制できる。また、熱交換部51、52、56が並列に設けられている場合と異なり、流路の分岐がないので、分岐による圧力損失を低減できる。
【0057】
このように、熱交換部52、56、51を直列に設けて、且つ、回転電機熱交換部51を気体熱交換部52及びオイル熱交換部56よりも下流側に設けることで、冷媒の全体の流量が大きくなることを抑制しつつ、且つ高い熱交換効率を実現できる。
【0058】
続いて、気体流路30及び気体熱交換部52の構造について、その詳細を説明する。図12は、図6中のB-B線断面図である。図13及び図14は、それぞれ図12中のC部分及びD部分の拡大図である。図15は、気体流路30及び気体熱交換部52の流路断面を図示した斜視図である。
【0059】
図12に示すように、気体流路30及び気体熱交換部52は、回転電機10の軸方向に延在する複数の直線部33、53をそれぞれ有する。図15に示すように、気体流路30の複数の直線部33は、千鳥状に配置されており、各直線部33は、気体熱交換部52の複数の直線部53に壁部を挟んで囲まれて配置されている。このような配置により、圧縮エアと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。なお、本実施形態では、気体流路30の各直線部33の断面は六芒星形状を有し、気体熱交換部52の各直線部53の断面は円形状を有するが、これらの形状は任意である。
【0060】
図12図14に示すように、気体流路30の直線部33を流れる圧縮エアの流れ方向と、気体熱交換部52の直線部53を流れる冷媒の流れ方向とは、逆である。 すなわち、圧縮エアと冷媒とは対向流を形成する。具体的に説明すると、気体流路30内の圧縮エアは、軸方向における第1端側から第2端側に向かって流れ、気体熱交換部52内の冷媒は、第2端側から第1端側に向かって流れる。
【0061】
図13に示すように、気体流路30には、各直線部33の流入口33aに連通し、直線部33に導入される圧縮エアが流入する入口側気体室34が設けられている。さらに、図14に示すように、気体熱交換部52には、各直線部53の流入口53aに連通し、直線部53に導入される冷媒が流入する入口側冷媒室54が設けられている。入口側気体室34及び入口側冷媒室54には、一時的にそれぞれ圧縮ガス及び冷媒が貯留する。気体流路30の各直線部33の流入口33aが入口側気体室34に連通しており、且つ、気体熱交換部52の各直線部53の流入口53aが入口側冷媒室54に連通しているので、前述したような、圧縮エアと冷媒との対向流を形成することができる。対向流により、気体熱交換部52を大型化することなくハウジング20の限られたスペース内で、圧縮エアと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0062】
また、図14に示すように、気体流路30には、各直線部33の流出口33bに連通し、直線部33から流出した圧縮エアを集約する出口側気体室35が設けられている。さらに、図13に示すように、気体熱交換部52には、各直線部53の流出口53bに連通し、直線部53から流出した冷媒を集約する出口側冷媒室55が設けられている。出口側気体室35及び出口側冷媒室55には、一時的にそれぞれ圧縮ガス及び冷媒が貯留する。出口側気体室35及び出口側冷媒室55により、気体流路30の各直線部33の流出口33bから流れた圧縮エアを集約でき、且つ、気体熱交換部52の各直線部53の流出口53bから流れた冷媒を集約できる。
【0063】
本体部21の外側壁22には、出口側気体室35と気体供給部30aとに連通する中継流路36が設けられている。出口側気体室35に集約された圧縮エアは、中継流路36を介して、気体供給部30aから収容空間S1に導入される。また、出口側冷媒室55は中継流路60と連通しており、出口側冷媒室55に集約された冷媒は、中継流路60へと流れる。
【0064】
図12図14に示すように、気体流路30の入口側気体室34は、気体熱交換部52の出口側冷媒室55の内側に設けられており、気体流路30の出口側気体室35は、気体熱交換部52の入口側冷媒室54の内側に設けられている。圧縮エアが冷媒に囲まれる構成であるので、圧縮エアと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0065】
続いて、オイル流路40及びオイル熱交換部56の構造について、その詳細を説明する。図16は、図6中のE-E線断面図であり、オイル流路40及びオイル熱交換部56の詳細を示す。図17は、オイル流路40及びオイル熱交換部56の流路断面図である。
【0066】
図16に示すように、オイル流路40及びオイル熱交換部56は、回転電機10の軸方向に延在する複数の直線部41、57をそれぞれ有する。図17に示すように、オイル流路40の各直線部41は、オイル熱交換部56の複数の直線部57に壁部を挟んで囲まれて配置されている。このような配置により、オイルと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0067】
オイル流路40の直線部41を流れるオイルの流れ方向と、オイル熱交換部56の直線部57を流れる冷媒の流れ方向とは、逆である。 すなわち、オイルと冷媒とは対向流を形成する。具体的に説明すると、オイル流路40内のオイルは、軸方向における第2端側から第1端側に向かって流れ、オイル熱交換部56内の冷媒は、第1端側から第2端側に向かって流れる。
【0068】
オイル流路40には、各直線部41の流入口41aに連通し、直線部41に導入されるオイルが流入する入口側オイル室42が設けられている。入口側オイル室42は、オイル流入口40aに連通している。さらに、オイル熱交換部56には、各直線部57の流入口57aに連通し、直線部57に導入される冷媒が流入する入口側冷媒室58が設けられている。入口側冷媒室58は、中継流路60に連通している(図6参照)。入口側オイル室42及び入口側冷媒室58には、一時的にそれぞれオイル及び冷媒が貯留する。オイル流路40の各直線部41の流入口41aが入口側オイル室42に連通しており、且つ、オイル熱交換部56の各直線部57の流入口57aが入口側冷媒室58に連通しているので、前述したような、オイルと冷媒との対向流を形成することができる。対向流により、オイル熱交換部56を大型化することなくハウジング20の限られたスペース内で、オイルと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0069】
また、オイル流路40には、各直線部41の流出口41bに連通し、直線部41から流出したオイルを集約する出口側オイル室43が設けられている。さらに、オイル熱交換部56には、各直線部57の流出口57bに連通し、直線部57から流出した冷媒を集約する出口側冷媒室59が設けられている。出口側オイル室43及び出口側冷媒室59には、一時的にそれぞれオイル及び冷媒が貯留する。このような構成により、オイル流路40の各直線部41の流出口41bから流出したオイルを集約でき、且つ、オイル熱交換部56の各直線部57の流出口57bから流出した冷媒を集約できる。
【0070】
出口側オイル室43はオイル流出口40bに連通しており、出口側オイル室43に集約されたオイルは、オイル流出口40bから不図示の接続管を経由して、オイル供給口46から収容空間S1に供給される。また、出口側冷媒室59は回転電機熱交換部51と連通しており、出口側冷媒室59に集約された冷媒は、回転電機熱交換部51へと流れる(図7参照)。
【0071】
オイル流路40の入口側オイル室42は、オイル熱交換部56の出口側冷媒室59の内側に設けられており、オイル流路40の出口側オイル室43は、オイル熱交換部56の入口側冷媒室58の内側に設けられている。オイルが冷媒に囲まれる構成であるので、オイルと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0072】
続いて、図3及び図4に戻り、気体流路30、気体熱交換部52、オイル流路40、及びオイル熱交換部56の配置に関して説明する。
【0073】
気体流路30及び気体熱交換部52は、隣り合うリブ29の間に設けられている。また、オイル流路40及びオイル熱交換部56は、気体流路30及び気体熱交換部52とは異なる位置において、隣り合うリブ29の間に設けられている。回転電機10が高速回転するとき、遠心力によりハウジング20には大きな荷重が加わる。しかしながら、気体流路30、気体熱交換部52、オイル流路40、及びオイル熱交換部56は隣り合うリブ29の間に設けられるので、気体流路30、気体熱交換部52、オイル流路40、及びオイル熱交換部56に掛かる荷重を遮断し、これらの耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0074】
さらに、気体流路30及び気体熱交換部52は、隣り合うリブ29と連続して設けられている。同様に、オイル流路40及びオイル熱交換部56は、隣り合うリブ29と連続して設けられている。リブ29と連続して(すなわち一体に)設けることにより、気体流路30、気体熱交換部52、オイル流路40、及びオイル熱交換部56に掛かる荷重を遮断することができる。
【0075】
気体流路30及び気体熱交換部52は複数(本実施形態ではそれぞれ3つ)設けられており、各気体流路30及び各気体熱交換部52は隣り合うリブ29の間に設けられている。気体流路30及び気体熱交換部52を複数設けることでこれらの流路断面積が大きくなるので、収容空間S1に供給する圧縮エアの流量を大きくしたり、圧縮エアを十分に冷却できるよう冷媒の流量を大きくしたりすることができる。
【0076】
同様に、オイル流路40及びオイル熱交換部56は複数(本実施形態ではそれぞれ3つ)設けられており、各オイル流路40及び各オイル熱交換部56は隣り合うリブ29の間に設けられている。オイル流路40及びオイル熱交換部56を複数設けることでこれらの流路断面積が大きくなるので、収容空間S1に供給するオイルの流量を大きくしたり、オイルを十分に冷却できるよう冷媒の流量を大きくしたりすることができる。
【0077】
(回転電機用ハウジングの製造方法)
本実施形態のハウジング20は、例えば、金属粉末材料を一層ずつ積層凝固させて三次元の複雑な形状の部品を製造することができる付加製造技術(Additive Manufacturing技術、以下AM技術とも称する)で一体に形成される。AM技術により、従来の機械加工や鋳造のような製造方法では製造が困難であった微細で複雑な三次元形状の部品を製造することができる。
【0078】
本実施形態では、AM技術により、本体部21、気体流路30、オイル流路40、及び冷媒流路50を一体に形成する。 本実施形態の気体流路30、オイル流路40、及び冷媒流路50は、微細で且つ複雑な形状を有するが、例えば底壁27から第2端側に向かって金属粉末材料を一層ずつ積層凝固させることで、一体に形成することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0080】
例えば、前述した実施形態では、冷媒流路50のオイル熱交換部56を気体熱交換部52よりも下流側に設けたが、オイル熱交換部56を気体熱交換部52よりも上流側に設けてもよい。また、気体熱交換部52とオイル熱交換部56とを並列に設けてもよい。
【0081】
また、前述した実施形態では、気体流路30及び気体熱交換部52を3つ設け、オイル流路40及びオイル熱交換部56を3つ設けたが、これらの数は任意である。例えば、気体流路30及び気体熱交換部52を1つだけ設けてもよいし、オイル流路40及びオイル熱交換部56を1つだけ設けてもよい。
【0082】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0083】
(1) 回転電機(回転電機10)を収容可能な回転電機用ハウジング(回転電機用ハウジング20)であって、
前記回転電機が収容される収容空間(収容空間S1)を有する本体部(本体部21)と、
前記本体部に設けられ、前記回転電機に供給される気体(圧縮エア)が流れる気体流路(気体流路30)と、
前記本体部に設けられ、前記回転電機に供給されるオイルが流れるオイル流路(オイル流路40)と、
前記本体部に設けられ、内部に冷媒が流れる冷媒流路(冷媒流路50)と、を備え、
前記冷媒流路は、
前記冷媒が前記回転電機と熱交換を行う回転電機熱交換部(回転電機熱交換部51)と、
前記冷媒が前記気体流路を流れる前記気体と熱交換を行う気体熱交換部(気体熱交換部52)と、
前記冷媒が前記オイル流路を流れる前記オイルと熱交換を行うオイル熱交換部(オイル熱交換部56)と、を有し、
前記回転電機熱交換部は、前記冷媒の流れ方向において、前記気体熱交換部及び前記オイル熱交換部よりも下流側に設けられている、
回転電機用ハウジング。
【0084】
(1)によれば、冷媒流路において、放熱量の大きい回転電機と熱交換を行う回転電機熱交換部が下流側に設けられているので、冷媒は温度が高くなる前に気体及びオイルと熱交換を行う。よって、気体及びオイルを十分に冷却でき、熱交換効率を向上させることができる。
【0085】
(2) (1)に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記気体熱交換部、前記オイル熱交換部、及び前記回転電機熱交換部は、前記冷媒の流れ方向に沿って直列に設けられている、
回転電機用ハウジング。
【0086】
回転電機熱交換部、気体熱交換部、及びオイル熱交換部が並列に設けられている場合、これらに必要な流量を流すためには、冷媒の全体の流量を大きくする必要がある。(2)によれば、気体熱交換部、オイル熱交換部、及び回転電機熱交換部が冷媒の流れに沿って直列に設けられているので、冷媒の全体の流量が大きくなることを抑制できる。
【0087】
(3) (1)又は(2)に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記気体流路及び前記冷媒流路の前記気体熱交換部は、前記回転電機の軸方向に延在し、
前記気体熱交換部を流れる前記冷媒の流れ方向は、前記気体流路を流れる前記気体の流れ方向と逆である、
回転電機用ハウジング。
【0088】
(3)によれば、気体と冷媒とで対向流を形成するので、気体と冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0089】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の回転電機用ハウジングであって、
前記オイル流路及び前記冷媒流路の前記オイル熱交換部は、前記回転電機の軸方向に延在し、
前記オイル熱交換部を流れる前記冷媒の流れ方向は、前記オイル流路を流れる前記オイルの流れ方向と逆である、
回転電機用ハウジング。
【0090】
(4)によれば、オイルと冷媒とで対向流を形成するので、オイルと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0091】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の回転電機用ハウジングであって、
前記回転電機熱交換部は円筒形状を有し、
前記気体熱交換部及び前記オイル熱交換部は、前記回転電機熱交換部よりも径方向外側に配置されている、
回転電機用ハウジング。
【0092】
(5)によれば、回転電機用ハウジングが軸方向に大きくなることを抑制できる。
【0093】
(6) (5)に記載の回転電機用ハウジングであって、
前記本体部は円筒形状の外側壁(外側壁22)を有し、
前記外側壁は、
前記回転電機と外部機器との間で電力を授受するための電気端子が設けられた端子配置部(端子配置部23)と、
前記気体流路及び前記気体熱交換部が設けられた気体流路配置部(気体流路配置部24)と、
前記オイル流路及び前記オイル熱交換部が設けられたオイル流路配置部(オイル流路配置部25)と、を有し、
前記端子配置部、前記気体流路配置部、及び前記オイル流路配置部は、前記本体部の周方向において略120度間隔で配置されている、
回転電機用ハウジング。
【0094】
(6)によれば、回転電機用ハウジングの重心位置の偏りを抑制できる。
【0095】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の回転電機用ハウジングを積層造形により製造する製造方法であって、
前記本体部、前記気体流路、前記オイル流路、及び前記冷媒流路を一体に形成する、
製造方法。
【0096】
(7)によれば、積層造形により、本体部、気体流路、オイル流路、及び冷媒流路を一体に形成することができる。これにより、気体と冷媒との熱交換やオイルと冷媒との熱交換とを効率的に行うことができるような、複雑な形状を有する気体流路、オイル流路、及び冷媒流路を作り出すことができる。
【符号の説明】
【0097】
10 回転電機
20 回転電機用ハウジング
21 本体部
22 外側壁
23 端子配置部
24 気体流路配置部
25 オイル流路配置部
30 気体流路
40 オイル流路
50 冷媒流路
51 回転電機熱交換部
52 気体熱交換部
56 オイル熱交換部
S1 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17