(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142047
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 39/00 20060101AFI20241003BHJP
C09D 165/00 20060101ALI20241003BHJP
C09D 181/06 20060101ALI20241003BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241003BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L39/00
C09D165/00
C09D181/06
C09D7/61
C08K3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054012
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】直野晋也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BJ001
4J002DE027
4J002DE186
4J002FD186
4J002FD207
4J002GH01
4J002GK02
4J038DC001
4J038DK011
4J038HA226
(57)【要約】
【課題】スラリー下または塗料若しくはコーティング材料下においてモリブデン酸銀の沈降を抑制することが可能な組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】モリブデン酸銀と、一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含む組成物。
(式中、Aは水素またはメチル基を表し、QはCH
2またはCH
2-SO
2を表し、nは3~10000の整数である)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン酸銀と、一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含む組成物。
(式中、Aは水素またはメチル基を表し、QはCH
2またはCH
2-SO
2を表し、nは3~10000の整数である)
【請求項2】
一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物が、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体からなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに水を含む請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン酸銀を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデン酸銀は、抗菌剤や抗ウイルス剤として使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
モリブデン酸銀の用途としては、例えば、塗料やコーティング材料が挙げられ、モリブデン酸銀が配合された塗料またはコーティング材料が手すり、フィルム等の対象物に塗布されることにより、当該対象物にも抗菌性や抗ウイルス性が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の塗料やコーティング材料にモリブデン酸銀を配合するに際しては、塗料やコーティング材料に対し直接モリブデン酸を配合する場合や、予めモリブデン酸銀と水とを混合したスラリーを配合する場合がある。
【0006】
モリブデン酸銀は比重が大きいために、スラリー下、塗料またはコーティング材料下などにおいてモリブデン酸銀が沈降することがあった。モリブデン酸銀が沈降すると対象物に抗菌性や抗ウイルス性を十分に付与できなくなることから、その取り扱いに注意が必要であった。
【0007】
本発明は、スラリー下、塗料またはコーティング材料下などにおいてモリブデン酸銀の沈降を抑制することが可能な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、
〔1〕モリブデン酸銀と、一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含む組成物。
(式中、Aは水素またはメチル基を表し、QはCH
2またはCH
2-SO
2を表し、nは3~10000の整数である)
〔2〕一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物が、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体からなる群より選ばれる1種以上の化合物である上記の組成物。
〔3〕さらに水を含む上記の組成物。
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スラリー下、塗料またはコーティング材料下などにおいてモリブデン酸銀の沈降を抑制することが可能な組成物を提供することができ、対象物に十分な抗菌性や抗ウイルス性を付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第一実施形態に係るモリブデン酸銀と一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物とを含む組成物について例示する。当該組成物の用途としては、例えば、水系塗料、水系コーティング材料が挙げられる。
【0011】
本実施形態において使用されるモリブデン酸銀は、例えば、硝酸銀、酢酸銀または硫酸銀等の銀塩と、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウムまたはモリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸塩とを反応溶媒としての水中で反応することによって得ることができる。当該反応によって得られたモリブデン酸銀は、その後、減圧濾過や遠心分離等の方法により水と分離し、乾燥機等を用いて乾燥する。
【0012】
また本実施形態においては、一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩またはその塩酸塩が使用される。
(式中、Aは水素またはメチル基を表し、QはCH
2またはCH
2-SO
2を表し、nは3~10000の整数である)
これらは単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。このうち、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体からなる群から選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましく、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体を用いることが特に好ましい。また、nは3~10000の整数であり、好ましくは5~5000の範囲の整数であり、より好ましくは10~1000の範囲の整数である。
【0013】
本実施形態において、モリブデン酸銀と一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物との配合比は、通常、重量比で0.001:1~1:1とする。
【0014】
本実施形態の組成物は、通常、水系塗料または水系コーティング材料の製造の際に配合する。例えば、樹脂成分が水媒体に分散したエマルションに対し消泡剤、粘性調整剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、有機または無機充填剤、難燃剤、帯電防止剤、防錆剤などを配合する際に、本実施形態の組成物も配合することにより、抗菌性または抗ウイルス性を有する水系塗料または水系コーティング材料に加工される。
【0015】
以下、本発明の第二実施形態に係るモリブデン酸銀、一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物および水を含む組成物について例示する。当該組成物の用途としては、例えば、水系塗料、水系コーティング材料、繊維製品が挙げられる。
【0016】
本実施形態の組成物に使用されるモリブデン酸銀および一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩およびその塩酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物については、前述のとおりである。
【0017】
本実施形態の組成物に使用される水は、例えば、イオン交換水、蒸留水または工業用水などが挙げられる。また、銀塩とモリブデン酸塩とを反応の際に使用した溶媒としての水を使用してもよい。
【0018】
本実施形態の組成物は、通常、組成物全体量に対しモリブデン酸銀を10~70重量、一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩またはその塩酸塩からなる群より選択される1種以上の化合物を0.1~10重量%および水を20~89.9重量%とする。
【0019】
本実施形態の組成物は、通常、各種原料を前記の割合となるよう計量した後、水に対しモリブデン酸銀および一般式(I)で示されるジアリルアミン重合体、その酢酸塩またはその塩酸塩からなる群より選択される1種以上の化合物を投入し、混合機を用いて混合することにより製造できる。前記のモリブデン酸銀については、例えば、前記の銀塩とモリブデン酸塩とを反応した際の反応溶媒としての水を含むモリブデン酸銀を使用しても良く、当該反応後の反応液を静置して上澄み液を除去減圧濾過や遠心分離等の方法により水と分離したモリブデン酸銀を使用しても良く、その後乾燥機等を用いて乾燥したモリブデン酸銀を使用しても良い。混合の際に使用される混合機としては、例えば、撹拌羽根を備えた撹拌機、ヘンシェルミキサー、ビーズミル、ボールミルなどが挙げられる。
【0020】
本実施形態の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度調整剤(セルロース等の多糖類)、変色抑制剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、界面活性剤等を配合される。
【0021】
本実施形態の組成物は、塗料またはコーティング材料の製造の際に配合することで、抗菌性または抗ウイルス性を有する塗料またはコーティング材料へと加工される。また、本実施形態の組成物に繊維製品を浸漬し乾燥することで、抗菌性または抗ウイルス性を有する繊維製品へと加工される。
【0022】
本発明の第一実施形態または第二実施形態の組成物を含む塗料またはコーティング材料が塗布対象とする対象物としては、例えば、手すり、床材、壁紙等の建材、便座等の電化製品、スマートフォンやタブレット等の携帯用電子機器を構成する筐体、コピー機等のOA機器を構成する筐体や操作ボタン、タブレット等の画像表示部に貼付するフィルム、各種製品の包装フィルムなどが挙げられる。
【0023】
前記の対象物に抗菌性または抗ウイルス性を付与するには、対象物の表面積に対してモリブデン酸銀が0.01~5g/m2となるように調整されることが好ましい。
【実施例0024】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0025】
(モリブデン酸銀の調製)
モリブデン酸ナトリウム二水和物(関東化学(株)) 6.5gをイオン交換水100mlに溶解した溶液に対し、硝酸銀(関東化学(株))9.1gをイオン交換水100mlに溶解した溶液を撹拌しながら30分かけて滴下した。滴下後1時間撹拌し、濾過、イオン交換水による洗浄後、100℃で24時間乾燥することでモリブデン酸銀を得た。
【0026】
〔実施例1〕
容量200mL、内径5cmの容器に前記のモリブデン酸銀40g、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体の20%水溶液(ニットーボーメディカル社製、PAS-92A)4g、水56gを投入し本発明の組成物を得た。
【0027】
〔実施例2〕
容量200mL、内径5cmの容器に前記のモリブデン酸銀40g、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体の20%水溶液(ニットーボーメディカル社製、PAS-92)4g、水56gを投入し本発明の組成物を得た。
【0028】
〔実施例3〕
容量200mL、内径5cmの容器に前記のモリブデン酸銀40g、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体の20%水溶液(ニットーボーメディカル社製、PAS-M-1A)4g、水56gを投入し本発明の組成物を得た。
【0029】
〔実施例4〕
容量200mL、内径5cmの容器に前記のモリブデン酸銀40g、ジアリルアミン重合体の15%水溶液(ニットーボーメディカル社製、PAS-21)4g、水56gを投入し本発明の組成物を得た。
【0030】
〔参考例1〕
容量200mL、内径5cmの容器に前記のモリブデン酸銀40g、水60gを投入し組成物を得た。
【0031】
〔参考例2〕
容量200mL、内径5cmの容器に銀粉末(株式会社ニラコ製, AG-404055)40g、水60gを投入し組成物を得た。
【0032】
〔参考例3〕
容量200mL、内径5cmの容器に銀粉末(株式会社ニラコ製, AG-404055)40g、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体の20%水溶液(ニットーボーメディカル社製、PAS-92A)4g、水56gを投入し組成物を得た。
【0033】
前記の各種組成物を含む容器のそれぞれにジルコニアボール YTZ-0.3(ニッカトー社製)を160g投入し、Φ3cmのディスパを用いて回転数1000rpmで8時間の撹拌を行った後、ジルコニアボールを回収した。撹拌後の実施例1~4及び参考例1~3の組成物の沈降性について、LUMiSizer6112-88 12channels(MSサイエンティフィック社製)を用いて評価した。評価は各種組成物について、蒸留水にて25倍に希釈した希釈液0.4mLを試料セル(LUM 2mm、PA、Rect,Synthetic Cell 110-134XY)に入れ、光源強度1、光波長870nm、20℃、500rpm、測定間隔10秒の条件で回転軸の中心から107mm~128mmの領域の透過度が70%を超えるまでの時間を測定し、◎:3000秒~、〇:1000~3000秒、△:500~1000秒、×:0~500秒とした。結果を次表に示す。
【0034】