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特開2024-142048液状の硬化性組成物、硬化性組成物の層、硬化性組成物の層の形成方法、および、半導体素子の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142048
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液状の硬化性組成物、硬化性組成物の層、硬化性組成物の層の形成方法、および、半導体素子の固定方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20241003BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241003BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241003BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L83/04
B05D7/00 K
B05D7/24 301R
B05D3/02 Z
B05D7/24 302Y
C09J183/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054013
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜章
(72)【発明者】
【氏名】三浦 迪
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 学
【テーマコード(参考)】
4D075
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4D075BB05Z
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075BB38Z
4D075CA07
4D075CA12
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC21
4D075DC22
4D075DC24
4D075EA05
4D075EB43
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC03
4D075EC30
4D075EC45
4D075EC51
4J002CP031
4J002CP032
4J002DJ017
4J002EX036
4J002EX076
4J002FB097
4J002FD017
4J002GF00
4J002GH01
4J002GJ01
4J002HA01
4J040EK031
4J040EK052
4J040HA306
4J040HD32
4J040JA01
4J040JB02
4J040KA23
4J040LA01
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】 硬化性組成物の層に半導体素子を適切に貼り付けることができ、硬化物層に半導体素子を適切な姿勢で固定することができる、液状の硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する液状の硬化性組成物であって、前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する層が1000mN以上のタック力を有し、前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる層の150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である、液状の硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する液状の硬化性組成物であって、
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する層が1000mN以上のタック力を有し、
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる層の150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である、液状の硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物が、ポリシルセスキオキサン化合物である、請求項1に記載の液状の硬化性組成物。
【請求項3】
前記液状の硬化性組成物の粘度が、5Pa・s以上である、請求項1に記載の液状の硬化性組成物。
【請求項4】
23℃で液状のシリコーンオリゴマーをさらに含有する、請求項1に記載の液状の硬化性組成物。
【請求項5】
沸点が70℃以上200℃未満の溶媒をさらに含有する、請求項1に記載の液状の硬化性組成物。
【請求項6】
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する前記層が10,000mN以下のタック力を有する、請求項1に記載の液状の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の液状の硬化性組成物を剥離シートに塗布することと、
前記液状の硬化性組成物を加熱乾燥することと、
を含む、硬化性組成物の層の形成方法。
【請求項8】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する硬化性組成物の層であって、
1000mN以上のタック力を有し、
150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である、硬化性組成物の層。
【請求項9】
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物が、ポリシルセスキオキサン化合物である、請求項8に記載の硬化性組成物の層。
【請求項10】
前記硬化性組成物の層が10,000mN以下のタック力を有する、請求項8に記載の硬化性組成物の層。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化性組成物の層に半導体素子を配置することと、
前記硬化性組成物の層を熱硬化させることと、
を含む、半導体素子の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の硬化性組成物、硬化性組成物の層、硬化性組成物の層の形成方法、および、半導体素子の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状の硬化性組成物は、用途に応じて様々な改良がなされ、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として広く利用されている。特許文献1は、液状の硬化性組成物を有する接着シートを開示している。このような、液状の硬化性組成物を有する接着シートは、半導体素子を固定するために利用されることがある。
【0003】
半導体素子には、レーザ、発光ダイオード(LED)等の発光素子や太陽電池等の受光素子等の光半導体素子、トランジスタ、温度センサや圧力センサ等のセンサ、集積回路等がある。半導体素子は、剥離シートに液状の硬化性組成物(以下、「塗液」ということがある)を塗布し、塗布された塗液を乾燥して形成された硬化性組成物の層(以下、「塗布層」ということがある)にマウントされ、その後、塗布層が硬化されて、半導体素子は硬化物層に固定される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-039836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体素子が塗布層にマウントされた後、半導体素子が剥がれてしまうことがあった。また、半導体素子が硬化物層に傾いて固定されることがあった。
【0006】
本発明の目的は、硬化性組成物の層に半導体素子を適切に貼り付けることができ、硬化物層に半導体素子を適切な姿勢で固定することができる、液状の硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する液状の硬化性組成物であって、
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する層が1000mN以上のタック力を有し、
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる層の150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である、液状の硬化性組成物、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化性組成物の層に半導体素子を適切に貼り付けることができ、硬化物層に半導体素子を適切な姿勢で固定することができる、液状の硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。
【0010】
<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>
本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有するものである。また、液状の硬化性組成物は、その液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する層が1000mN以上のタック力(具体的にはプローブタック値)を有するものである。このように本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、それにより得られる硬化性組成物の層が優れた瞬間的な面接触に対する粘着性を有するため、硬化性組成物の層に半導体素子を適切または十分に貼り付けること(すなわちマウントすること)ができるものである。
【0011】
さらに、本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、その液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる層の150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下であるものである。このように本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、それにより得られる硬化性組成物の層が硬化されたときに質量の減少が少ないものであるため、質量減少時に発生する気泡(ボイド)が少なく、硬化物層内に残存する気泡が減少またはなくなる。そのため、半導体素子が硬化物層に適切な姿勢で固定されることができ、半導体素子と硬化物層との接着性も向上し、さらに外観も良好となる。また、LEDチップ等の発光素子が硬化物層によって固定された場合、発光素子が傾いて固定されないことで所望の明るさの発光装置が得られる。
【0012】
「液状の硬化性組成物」とは、「室温において、粘稠な液体であって、流動性を有する状態のもの」をいう。ここで、室温は23℃をいう。液状の硬化性組成物は、この状態の性質を有しているため、塗布工程における作業性に優れる。ここで、「塗布工程における作業性に優れる」とは、ハジキ(広がっていた液体が集まること)および塗工面荒れがない、またはハジキおよび塗工面荒れが少ないことをいう。
【0013】
(タック力)
本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、その液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する層が1000mN以上のタック力を有するものである。
【0014】
タック力は、一実施形態において、1000mN以上、別の実施形態において、2000mN以上、さらに別の実施形態において、4000mN以上、さらに別の実施形態において、6000mN以上とすることができる。これにより、液状の硬化性組成物により得られる硬化性組成物の層に半導体素子を適切または十分に貼り付けることができる。
【0015】
一方、タック力の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、15000mN以下、別の実施形態において、12000mN以下、さらに別の実施形態において、10000mN以下、さらに別の実施形態において、8000mN以下とすることができる。これにより、液状の硬化性組成物により得られる硬化性組成物の層が剥離シートから剥がされた際に、線状の跡(ジッピングの跡)の発生が抑制される。タック力の範囲は、一実施形態において、1000mN以上15000mN以下、別の実施形態において、2000mN以上12000mN以下、さらに別の実施形態において、4000mN以上10000mN以下、さらに別の実施形態において、6000mN以上8000mN以下とすることができる。これにより、液状の硬化性組成物により得られる硬化性組成物の層に半導体素子を適切または十分に貼り付けることができ、その硬化性組成物の層が剥離シートから剥がされた際に、線状の跡の発生が抑制される。
【0016】
液状の硬化性組成物を加熱乾燥して得られる層のタック力は、例えば、次のようにして確認することができる。液状の硬化性組成物を、剥離シートの剥離面に乾燥後の厚みが50μm±7μmとなるよう塗布し、100℃にて20分間加熱して層を作製する。作製した層を、プローブタック法で試験する試験機に設置し、23℃において層にプローブを一定の時間接触させた後に引き剥がす際の力(プローブタック値)を測定することで、層のタック力が得られる。より具体的なタック力の測定方法については、実施例において説明する。
【0017】
(質量減少率)
本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、その液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる(加熱乾燥後)層の150℃にて4時間加熱後(硬化後)の質量減少率(液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率)が13%以下であるものである。
【0018】
液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率は、一実施形態において13%以下、別の実施形態において、12%以下、さらに別の実施形態において、10%以下、さらに別の実施形態において、8%以下とすることができる。これにより、硬化物層内に残存する気泡(ボイド)が減少またはなくなり、半導体素子が硬化物層に適切な姿勢で固定されることができる。さらに、半導体素子と硬化物層との接着性も向上する。
【0019】
一方、液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率の下限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、0.1%以上、別の実施形態において、0.5%以上、さらに別の実施形態において、1%以上、さらに別の実施形態において、2%以上とすることができる。液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率の範囲は、一実施形態において、13%以下0.1%以上、別の実施形態において、12%以下0.5%以上、さらに別の実施形態において、10%以下1%以上、さらに別の実施形態において、8%以下2%以上とすることができる。これにより、硬化物層内に残存する気泡(ボイド)が減少またはなくなり、半導体素子が硬化物層に適切な姿勢で固定されることができ、半導体素子と硬化物層との接着性が改善される。
【0020】
液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率は、例えば、次のようにして確認することができる。液状の硬化性組成物を、測定用サンプルパンに塗布し、示差熱・熱重量同時測定装置に投入する。温度が100℃になった後、20分間維持し、加熱乾燥後層の質量を測定する。続いて、加熱乾燥後層を加熱して、温度が150℃になった後、4時間維持し、硬化物層の質量を測定する。液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率[%]は、加熱乾燥後層の質量、および硬化物層の質量から、下記式により算出される。
質量減少率[%]={{(加熱乾燥後層の質量)―(硬化物層の質量)}/(加熱乾燥後層の質量)}×100
【0021】
(粘度)
一実施形態に係る液状の硬化性組成物は、23℃で粘度が5Pa・s以上有するものである。液状の硬化性組成物の粘度は、一実施形態において、5Pa・s以上、別の実施形態において、10Pa・s以上、さらに別の実施形態において、20Pa・s以上、さらに別の実施形態において、30Pa・s以上とすることができる。これにより、ハジキが抑制され、液状の硬化性組成物を塗布面に均一に形成することができる。
【0022】
一方、液状の硬化性組成物の粘度の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、65Pa・s未満、別の実施形態において、60Pa・s未満、さらに別の実施形態において、55Pa・s未満、さらに別の実施形態において、50Pa・s未満とすることができる。これにより、硬化性組成物の層の形成における作業性が向上する。液状の硬化性組成物の粘度の範囲は、一実施形態において、5Pa・s以上65Pa・s未満、別の実施形態において、10Pa・s以上60Pa・s未満、さらに別の実施形態において、20Pa・s以上55Pa・s未満、さらに別の実施形態において、30Pa・s以上50Pa・s未満とすることができる。これにより、ハジキが抑制され、液状の硬化性組成物を塗布面に均一に形成することができ、硬化性組成物の層の形成における作業性が向上する。
【0023】
液状の硬化性組成物の粘度は、例えば、次のようにして確認することができる。レオメーターにて、半径50mm、コーン角度0.5°のコーンプレートを用い、23℃でせん断速度が2s-1時で、粘度が測定される。
【0024】
(硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A))
本実施形態に係る液状の硬化性組成物は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)(以下、「(A)成分」ということがある。)を含有する。液状の硬化性組成物は、(A)成分を含有することにより、前記タック力をより上述の範囲とし易くなり、また、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0025】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、分子内に、炭素-ケイ素結合とシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物である。(A)成分は、熱硬化性の化合物であるため、加熱により、縮合反応が可能な官能基、および加水分解を経て縮合反応が可能な官能基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することができる。このような官能基は、水酸基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種とすることができ、例えば、水酸基、炭素数1から10のアルコキシ基とすることができる。
【0026】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。例えば、直鎖状の主鎖構造としては下記式(a-1)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(a-2)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては下記式(a-3)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
【0029】
【化3】
【0030】
式(a-1)から(a-3)中、Rx、Ry、およびRzは、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、有機基としては、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換もしくは置換基を有するアルケニル基、無置換もしくは置換基を有するアリール基、またはアルキルシリル基とすることができる。式(a-1)の複数のRx、式(a-2)の複数のRy、および式(a-3)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a-1)のRxが2つとも水素原子であることはない。
【0031】
前記無置換もしくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の炭素数1から10のアルキル基が挙げられる。
【0032】
無置換もしくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3から10のシクロアルキル基が挙げられる。
【0033】
無置換もしくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の炭素数2から10のアルケニル基が挙げられる。
【0034】
前記アルキル基、シクロアルキル基およびアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換もしくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0035】
無置換または置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6から10のアリール基が挙げられる。
【0036】
Rx、Ry、およびRz(有機基)中のアリール基の個数割合の下限値は、一実施形態において、20%以上、別の実施形態において、50%以上、さらに別の実施形態において、70%以上、さらに別の実施形態において、90%以上とすることができる。これにより、接着性が優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなり、また屈折率が高い硬化物が得られ易くなり、屈折率が高いことが要望される装置に用いられ易くなる。また、有機基中のアリール基の個数割合の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、100%以下とすることができる。アリール基の個数割合の範囲は、一実施形態において、20%以上100%以下、別の実施形態において、50%以上100%以下、さらに別の実施形態において、70%以上100%以下、さらに別の実施形態において、90%以上100%以下とすることができる。
【0037】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1から6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換もしくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0038】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、Rx、Ry、およびRzは、水素原子、無置換もしくは置換基を有する炭素数1から6のアルキル基、またはフェニル基とすることができ、無置換もしくは置換基を有する炭素数1から6のアルキル基が例示される。
【0040】
また、Rx、Ry、およびRzは、フッ素原子を有する置換基であるフルオロ基とすることができる。フルオロ基としては、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基、フルオロアルケニル基、およびフルオロアリール基が例示される。フルオロ基は、水素原子が存在する基であっても、存在しない基であってもよい。
【0041】
Rx、Ry、およびRz(有機基)中のフルオロ基の個数割合の下限値は、一実施形態において、10%以上、別の実施形態において、20%以上、さらに別の実施形態において、30%以上、さらに別の実施形態において、40%以上とすることができる。これにより、接着性が優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなり、また屈折率が低い硬化物が得られ易くなり、屈折率が低いことが要望される装置に用いられ易くなる。また、有機基中のフルオロ基の個数割合の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、90%以下、別の実施形態において、80%以下、さらに別の実施形態において、70%以下、さらに別の実施形態において、60%以下とすることができる。これにより、より安定して硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を作製し易く、安定した性能の液状の硬化性組成物を作製しやすい。フルオロ基の個数割合の範囲は、一実施形態において、10%以上90%以下、別の実施形態において、20%以上80%以下、さらに別の実施形態において、30%以上70%以下、さらに別の実施形態において、40%以上60%以下とすることができる。フルオロ基の個数割合の範囲が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、接着性が優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0042】
一実施形態において、有機基はフルオロ基とメチル基とすることができる。一実施形態において、個数割合で、フルオロ基を10%以上、メチル基を90%以下、別の実施形態において、フルオロ基を20%以上、メチル基を80%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を30%以上、メチル基を70%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を40%以上、メチル基を60%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を50%、メチル基を50%とすることができる。
【0043】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、例えば、加水分解性官能基(アルコキシ基、ハロゲン原子等)を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
【0044】
用いるシラン化合物は、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の構造に応じて適宜選択すればよい。例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラs-ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物;等が挙げられる。
【0045】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)は、一実施形態において、800以上、別の実施形態において、1,000以上、さらに別の実施形態において、1,200以上、さらに別の実施形態において、3,000以上とすることができ、一実施形態において、30,000以下、別の実施形態において、20,000以下、さらに別の実施形態において、15,000以下、さらに別の実施形態において、10,000以下とすることができる。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)の範囲は、一実施形態において、800以上30,000以下、別の実施形態において、1,000以上20,000以下、さらに別の実施形態において、1,200以上15,000以下、さらに別の実施形態において、3,000以上10,000以下とすることができる。質量平均分子量(Mw)が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、前記タック力をより上述の範囲とし易くなり、また、接着性が優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0046】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、一実施形態において、1.0以上、別の実施形態において、1.1以上とすることができ、一実施形態において、10.0以下、別の実施形態において、6.0以下とすることができる。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の分子量分布(Mw/Mn)の範囲は、一実施形態において、1.0以上10.0以下、別の実施形態において、1.1以上6.0以下とすることができる。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0047】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0048】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の含有量は特に限定されないが、その量は、液状の硬化性組成物の固形分(すなわち、有効成分)100質量部に対して、一実施形態において、40質量部以上、別の実施形態において、60質量部以上、さらに別の実施形態において、70質量部以上とすることができ、一実施形態において、98質量部未満、別の実施形態において、94質量部未満、さらに別の実施形態において、90質量部未満とすることができる。(A)成分の量の範囲は、液状の硬化性組成物の固形分100質量部に対して、一実施形態において、40質量部以上98質量部未満、別の実施形態において、60質量部以上94質量部未満、さらに別の実施形態において、70質量部以上90質量部未満とすることができる。(A)成分を上記範囲で用いることにより、(A)成分を加える効果をより発現させることができる。
【0049】
ポリシルセスキオキサン化合物
一実施形態において、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、3官能オルガノシラン化合物を重縮合して得られる、ポリシルセスキオキサン化合物とすることができる。液状の硬化性組成物が、(A)成分として、ポリシルセスキオキサン化合物を含有することにより、前記タック力および前記質量減少率を、より上述の範囲とし易くなり、また、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0050】
ポリシルセスキオキサン化合物は、下記式(a-4)で示される繰り返し単位を有する化合物とすることができる。液状の硬化性組成物が、(A)成分として、下記式(a-4)で示される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物を含有することにより、前記タック力および前記質量減少率を、より上述の範囲とし易くなり、また、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0051】
【化4】
【0052】
式(a-4)中、Rは有機基を表す。有機基は、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、無置換のシクロアルキル基、置換基を有するシクロアルキル基、無置換のアルケニル基、置換基を有するアルケニル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、および、アルキルシリル基からなる群から選ばれることができ、例えば、無置換の炭素数1から10のアルキル基、置換基を有する炭素数1から10のアルキル基、無置換の炭素数6から12のアリール基、および、置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれることができる。
【0053】
「無置換の炭素数1から10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。Rで表される「無置換の炭素数1から10のアルキル基」の炭素数は、一実施形態において1から6、別に実施形態において1から3とすることができる。
【0054】
で表される「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の炭素数は、一実施形態において1から6、別に実施形態において1から3とすることができる。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アルキル基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、Rが「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」である場合、Rの炭素数は10を超える場合もあり得る。「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」のアルキル基としては、「無置換の炭素数1から10のアルキル基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0055】
「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;式:OGで表される基;等が挙げられる。「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、一実施形態において1から30、別実施形態において1から20とすることができる。ここで、Gは水酸基の保護基を表す。水酸基の保護基としては、特に制約はなく、水酸基の保護基として知られている公知の保護基が挙げられる。例えば、アシル系;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のシリル系;メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1-エトキシエチル基、テトラヒドロピラン-2-イル基、テトラヒドロフラン-2-イル基等のアセタール系;t-ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル系;メチル基、エチル基、t-ブチル基、オクチル基、アリル基、トリフェニルメチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、フルオレニル基、トリチル基、ベンズヒドリル基等のエーテル系;等が挙げられる。
【0056】
「無置換の炭素数6から12のアリール基」としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。Rで表される「無置換の炭素数6から12のアリール基」の炭素数は6とすることができる。
【0057】
で表される「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の炭素数は6とすることができる。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アリール基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、Rが「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」である場合、Rの炭素数は12を超える場合もあり得る。「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」のアリール基としては、「無置換の炭素数6から12のアリール基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0058】
「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、一実施形態において1から30、別の実施形態において1から20とすることができる。
【0059】
これらの中でも、Rは、構造の安定したポリシルセスキオキサン化合物が得られ易く、液状の硬化性組成物としての性能がより安定する観点から、無置換の炭素数1から10のアルキル基、フッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基、および無置換の炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種とすることができる。Rが、無置換の炭素数1から10のアルキル基であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、接着性に優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0060】
また、これらの中でも、Rは、屈折率が高い硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が効率よく得られ易くなり、屈折率が高いことが要望される装置に用いられ易くなることから、無置換の炭素数6から12のアリール基、および置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種とすることができる。例えば、Rは、フェニル基とすることができる。
【0061】
が、フッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基(フルオロ基)であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、接着性が向上し、屈折率が低い硬化性組成物の層の硬化物が得られ易くなり、屈折率が低いことが要望される装置に用いられ易くなる。フッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基としては、組成式:C(2m-n+1)で表される基(mは1から10の整数、nは1以上、(2m+1)以下の整数である。)が挙げられる。これらの中では、3,3,3-トリフルオロプロピル基が例示される。
【0062】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、一種のRを有するもの(単独重合体)であってもよく、二種以上のRを有するもの(共重合体)であってもよい。
【0063】
(有機基)がフッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基(フルオロ基)を有する場合、R中のフルオロ基の個数割合の下限値は、一実施形態において、10%以上、別の実施形態において、20%以上、さらに別の実施形態において、30%以上、さらに別の実施形態において、40%以上とすることができる。これにより、接着性が向上し、屈折率が低い硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。また、R中のフルオロ基の個数割合の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、90%以下、別の実施形態において、80%以下、さらに別の実施形態において、70%以下、さらに別の実施形態において、60%以下とすることができる。これにより、より安定してポリシルセスキオキサン化合物を作製し易く、安定した性能の液状の硬化性組成物を作製しやすい。フルオロ基の個数割合の範囲は、一実施形態において、10%以上90%以下、別の実施形態において、20%以上80%以下、さらに別の実施形態において、30%以上70%以下、さらに別の実施形態において、40%以上60%以下とすることができる。フルオロ基の個数割合の範囲が上記範囲内にあるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、長時間静置安定性が優れる液状の硬化性組成物が得られ易くなり、接着性が向上し、屈折率が低い硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0064】
一実施形態において、Rはフルオロ基とメチル基とすることができる。一実施形態において、個数割合で、フルオロ基を10%以上、メチル基を90%以下、別の実施形態において、フルオロ基を20%以上、メチル基を80%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を30%以上、メチル基を70%以下とすることができる。
【0065】
ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合は、全繰り返し単位に対して、一実施形態において50mol%以上、別の実施形態において70mol%以上、さらに別の実施形態において90mol%以上とすることができる。また、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合の範囲は、全繰り返し単位に対して、一実施形態において、50から100mol%、別の実施形態において、70から100mol%、さらに別の実施形態において、90から100mol%とすることができる。一例として、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合は100mol%とすることができる。前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の含有割合が、上記割合であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることで、耐光性が優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の含有割合は、例えば、NMRピークの帰属および面積の積分が可能である場合には、29Si-NMRおよびH-NMRを測定することにより求めることができる。
【0066】
ポリシルセスキオキサン化合物は、アセトン等のケトン系溶媒;ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒;及びこれらの二種以上からなる混合溶媒;等の各種有機溶媒に可溶である。そのため、これらの溶媒を用いて、ポリシルセスキオキサン化合物の溶液状態での29Si-NMRおよびH-NMRを測定することができる。
【0067】
前記式(a-4)で示される繰り返し単位は、下記式(a-5)で示されるものとすることができる。
【0068】
【化5】
【0069】
式(a-5)で示されるように、ポリシルセスキオキサン化合物は、一般にTサイトと総称される、ケイ素原子に酸素原子が3つ結合し、それ以外の基(R)が1つ結合してなる部分構造を有する。
【0070】
式(a-5)中、Rは、前記式(a-4)におけるRと同じ意味を表す。*は、Si原子、水素原子、または炭素数1から10のアルキル基を表し、3つの*のうち少なくとも1つはSi原子である。*の炭素数1から10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。複数の*同士は、すべて同一であっても相異なっていてもよい。
【0071】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、熱硬化性の化合物であり、加熱により、縮合反応および/または加水分解を経て縮合反応が可能な化合物である。そのため、ポリシルセスキオキサン化合物が有する複数の繰り返し単位(Tサイト)の前記式(a-5)中の*のうち、少なくとも1つは、水素原子または炭素数1から10のアルキル基とすることができ、一例として水素原子とすることができる。
【0072】
なお、ポリシルセスキオキサン化合物が測定用の溶媒に可溶である場合には、29Si-NMRを測定することにより、前記式(a-5)中の*における水素原子または炭素数1から10のアルキル基の存在や、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位であるかを確認することができる。さらに、29Si-NMRのピークの帰属および面積の積分が可能である場合には、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数を概算することができる。このポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数は、安定した生産性および安定した性能の硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる観点から、一実施形態において30mol%以上、別の実施形態において40mol%以上とすることができ、一実施形態において95mol%以下、別の実施形態において90mol%以下とすることができる。ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数の範囲は、一実施形態において30から95mol%、別の実施形態において40から90mol%とすることができる。
【0073】
ポリシルセスキオキサン化合物が共重合体である場合、ポリシルセスキオキサン化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれであってもよいが、製造容易性等の観点から、ランダム共重合体とすることができる。また、ポリシルセスキオキサン化合物の構造は、ラダー型構造、ダブルデッカー型構造、籠型構造、部分開裂籠型構造、環状型構造、ランダム型構造のいずれの構造であってもよい。
【0074】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、室温で固体であってもよいが、液状のものとすることができる。液状とは、流動性を有する状態を指し、例えば室温で粘度が10000Pa・s以下である状態をいい、室温とは23℃をいう。液状のポリシルセスキオキサン化合物は、液状の硬化性組成物中の溶媒の量を低減させることができ、液状の硬化性組成物中のポリシルセスキオキサン化合物の濃度を高くすることできる。
【0075】
ポリシルセスキオキサン化合物は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
ポリシルセスキオキサン化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、下記式(a-6)
【0077】
【化6】
【0078】
(式中、Rは、前記式(a-4)におけるRと同じ意味を表す。Rは炭素数1から10のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0から3の整数を表す。複数のR、および複数のXは、それぞれ、互いに同一であっても、相異なっていてもよい。)で示されるシラン化合物(1)の少なくとも一種を重縮合させることにより、ポリシルセスキオキサン化合物を製造することができる。Rの炭素数1から10のアルキル基としては、前記式(a-5)中の*の炭素数1から10のアルキル基として示したものと同様のものが挙げられる。Xのハロゲン原子としては、塩素原子、および臭素原子等が挙げられる。
【0079】
シラン化合物(1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;メチルクロロジメトキシシラン、メチルクロロジエトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルブロモジメトキシシラン、エチルクロロジメトキシシラン、エチルクロロジエトキシシラン、エチルジクロロメトキシシラン、エチルブロモジメトキシシラン等のアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン等のアルキルトリハロゲノシラン化合物類;3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン等の置換アルキルトリアルコキシシラン化合物類;3,3,3-トリフルオロプロピルクロロジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルクロロジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルジクロロメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルジクロロエトキシシラン、2-シアノエチルクロロジメトキシシラン、2-シアノエチルクロロジエトキシシラン、2-シアノエチルジクロロメトキシシラン、2-シアノエチルジクロロエトキシシラン等の置換アルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシラン、2-シアノエチルトリクロロシラン等の置換アルキルトリハロゲノシラン化合物類;フェニルトリメトキシシラン、4-メトキシフェニルトリメトキシシラン等の、置換基を有する、または置換基を有さないフェニルトリアルコキシシラン化合物類;フェニルクロロジメトキシシラン、フェニルジクロロメトキシシラン、4-メトキシフェニルクロロジメトキシシラン、4-メトキシフェニルジクロロメトキシシラン等の、置換基を有する、または置換基を有さないフェニルハロゲノアルコキシシラン化合物類;フェニルトリクロロシラン、4-メトキシフェニルトリクロロシラン等の、置換基を有する、または置換基を有さないフェニルトリハロゲノシラン化合物類;等が挙げられる。これらのシラン化合物(1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
前記シラン化合物(1)を重縮合させる方法は特に限定されない。例えば、溶媒中、または無溶媒で、シラン化合物(1)に、所定量の重縮合触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法が挙げられる。具体的には、(a)シラン化合物(1)に、所定量の酸触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法、(b)シラン化合物(1)に、所定量の塩基触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法、(c)シラン化合物(1)に、所定量の酸触媒を添加し、所定温度で撹拌した後、過剰量の塩基触媒を添加して、反応系を塩基性とし、所定温度で撹拌する方法等が挙げられる。これらの中でも、効率よく目的とするポリシルセスキオキサン化合物を得ることができることから、(a)または(c)の方法で重縮合させることができる。
【0081】
用いる重縮合触媒は、酸触媒および塩基触媒のいずれであってもよい。また、2以上の重縮合触媒を組み合わせて用いてもよく、少なくとも酸触媒を用いることができる。酸触媒としては、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、硝酸等の無機酸;クエン酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等が挙げられる。これらの中でも、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、クエン酸、酢酸、およびメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも一種が用いられ得る。
【0082】
塩基触媒としては、アンモニア水;トリメチルアミン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、アニリン、ピコリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール等の有機塩基;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0083】
重縮合触媒の使用量は、シラン化合物(1)の総mol量に対して、一実施形態において0.05mol%以上、別の実施形態において0.1mol%以上とすることができ、一実施形態において10mol%以下、別の実施形態において5mol%以下とすることができる。重縮合触媒の使用量の範囲は、シラン化合物(1)の総mol量に対して、一実施形態において0.05から10mol%、別の実施形態において0.1から5mol%とすることができる。
【0084】
重縮合時に溶媒を用いる場合、用いる溶媒は、シラン化合物(1)の種類等に応じて、適宜選択することができる。例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記(c)の方法を採用する場合、酸触媒の存在下、水系で重縮合反応を行った後、反応液に、有機溶媒と塩基触媒(アンモニア水等)を添加し、中性条件または塩基性条件下で、更に重縮合反応を行うようにしてもよい。
【0085】
溶媒の使用量は、シラン化合物(1)の総mol量1mol当たり、一実施形態において0.001リットル以上、別の実施形態において0.01リットル以上とすることができ、一実施形態において10リットル以下、別の実施形態において0.9リットル以下とすることができる。溶媒の使用量の範囲は、シラン化合物(1)の総mol量1mol当たり、一実施形態において0.001リットル以上10リットル以下、別の実施形態において0.01リットル以上0.9リットル以下とすることができる。
【0086】
シラン化合物(1)を重縮合させるときの温度は、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、一実施形態において20℃以上、別の実施形態において30℃以上とすることができ、一実施形態において100℃以下、別の実施形態において95℃以下とすることができる。シラン化合物(1)を重縮合させるときの温度の範囲は、一実施形態において20℃以上100℃以下、別の実施形態において30℃以上95℃以下とすることができる。この反応温度の下限以上とすることで重縮合反応の進行が十分となる。一方、この反応温度の上限以下とすることでゲル化が抑制される。また、反応は、30分から30時間で完結する。
【0087】
なお、用いるモノマーの種類によっては、高分子量化が困難な場合がある。例えば、Rがフッ素原子を有するアルキル基であるモノマーは、Rが通常のアルキル基であるモノマーよりも反応性に劣る傾向がある。このような場合、触媒量を減らし、かつ、穏やかな条件で長時間反応を行うことにより、目的の分子量のポリシルセスキオキサン化合物が得られ易くなる。
【0088】
反応終了後は、酸触媒を用いた場合は、反応溶液に炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより、塩基触媒を用いた場合は、反応溶液に塩酸等の酸を添加することにより中和を行い、その際に生じる塩をろ別または水洗等により除去し、目的とするポリシルセスキオキサン化合物を得ることができる。
【0089】
上記方法により、ポリシルセスキオキサン化合物を製造する際、シラン化合物(1)のORまたはXのうち、加水分解およびその後の縮合反応等が起こらなかった部分は、ポリシルセスキオキサン化合物中に残存する。
【0090】
(A)成分が、例えば、シラン化合物(1)の重縮合反応により得られたポリシルセスキオキサン化合物である場合、後述のシランカップリング剤との反応を含め、硬化は縮合反応で進行するため、本実施形態の液状の硬化性組成物は、白金触媒等の貴金属触媒の存在下で付加反応が進行して硬化する一般的な加熱硬化型シリコーン接着剤とは異なるものである。したがって、ポリシルセスキオキサン化合物を含有する液状の硬化性組成物は、貴金属触媒を実質的に含有しない、または貴金属触媒の含有量が少ないものである。ここで、「貴金属触媒を実質的に含有しない」とは、「貴金属触媒と解釈され得る成分が意図的に添加されていないことのほか、液状の硬化性組成物中の有効成分の量に対して、貴金属触媒の含有量が触媒金属元素の質量換算で、例えば、1質量ppm未満であること」を意味する。なお、ここで、「有効成分」とは、「液状の硬化性組成物中に含まれる溶媒(S)(後述)を除いた成分」をいう。液状の硬化性組成物は、調合ばらつき等を考慮した安定的な製造の観点、長時間静置安定性の観点、貴金属触媒が高価なものである観点等から、貴金属触媒を実質的に含有しない、または貴金属触媒の含有量が少ないものとすることができる。
【0091】
本実施形態の液状の硬化性組成物は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を含有するものであるが、以下に示す成分を含有してもよい。
【0092】
(シランカップリング剤(B))
本実施形態の液状の硬化性組成物は、シランカップリング剤(B)(以下、「(B)成分」ということがある。)を含有していてもよい。シランカップリング剤(B)を含有させることにより、液状の硬化性組成物の粘度を上述の範囲とし易く、塗布工程における作業性に優れ、かつ、加熱時に、(A)成分と共に縮合反応することによる硬化性に優れ、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。シランカップリング剤(B)としては、例えば、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤(B1)(以下、「(B1)成分」ということがある。)や分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤(B2)(以下、「(B2)成分」ということがある。)が挙げられる。液状の硬化性組成物は、シランカップリング剤(B1)、または、シランカップリング剤(B2)、または、シランカップリング剤(B1)とシランカップリング剤(B2)の双方を含有することができる。
【0093】
シランカップリング剤(B1)
シランカップリング剤(B1)を含有させることにより、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0094】
シランカップリング剤(B1)としては、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤であれば特に制限はない。例えば、下記式(b-1)で表されるトリアルコキシシラン化合物、式(b-2)で表されるジアルコキシアルキルシラン化合物またはジアルコキシアリールシラン化合物等が挙げられる。
【0095】
【化7】
【0096】
上記式中、Rは、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等の炭素数1から6のアルコキシ基を表す。複数のR同士は同一であっても相異なっていてもよい。Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1から6のアルキル基;または、フェニル基、4-クロロフェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基等の、置換基を有する、または置換基を有さないアリール基;を表す。
【0097】
は、窒素原子を有する、炭素数1から10の有機基を表す。また、Rは、さらに他のケイ素原子を含む基と結合していてもよい。Rの炭素数1から10の有機基の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、3-ウレイドプロピル基、N-フェニル-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0098】
上記式(b-1)または(b-2)で表される化合物のうち、Rが、他のケイ素原子を含む基と結合した有機基である場合の化合物としては、イソシアヌレート骨格を介して他のケイ素原子と結合してイソシアヌレート系シランカップリング剤を構成するものや、ウレア骨格を介して他のケイ素原子と結合してウレア系シランカップリング剤を構成するものが挙げられる。
【0099】
これらの中で、シランカップリング剤(B1)は、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易いことから、イソシアヌレート系シランカップリング剤、およびウレア系シランカップリング剤とすることができ、さらに、分子内に、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するものとすることができる。ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するとは、同一のケイ素原子に結合したアルコキシ基と、異なるケイ素原子に結合したアルコキシ基との総合計数が4以上という意味である。
【0100】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するイソシアヌレート系シランカップリング剤としては、下記式(b-3)で表される化合物が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するウレア系シランカップリング剤としては、下記式(b-4)で表される化合物が挙げられる。
【0101】
【化8】
【0102】
式中、Rは、前記式(b-1)および(b-2)におけるRと同じ意味を表す。t1からt5はそれぞれ独立して、1から10の整数を表し、1から6の整数とすることができ、例えば、3が例示される。
【0103】
式(b-3)で表される化合物の具体例としては、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリi-プロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリブトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5-N-トリス〔(トリ(炭素数1から6)アルコキシ)シリル(炭素数1から10)アルキル〕イソシアヌレート;1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5-N-トリス〔(ジ(炭素数1から6)アルコキシ)シリル(炭素数1から10)アルキル〕イソシアヌレート;等が挙げられる。
【0104】
式(b-4)で表される化合物の具体例としては、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリブトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ウレア等のN,N’-ビス〔(トリ(炭素数1から6)アルコキシシリル)(炭素数1から10)アルキル〕ウレア;N,N’-ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア等のN,N’-ビス〔(ジ(炭素数1から6)アルコキシ(炭素数1から6)アルキルシリル(炭素数1から10)アルキル)ウレア;N,N’-ビス(3-ジメトキシフェニルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジエトキシフェニルシリルプロピル)ウレア等のN,N’-ビス〔(ジ(炭素数1から6)アルコキシ(炭素数6から20)アリールシリル(炭素数1から10)アルキル)ウレア;等が挙げられる。シランカップリング剤(B1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
これらの中で、シランカップリング剤(B1)は、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(以下、前記2つを「イソシアヌレート化合物」という。)、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア(以下、前記2つを「ウレア化合物」という。)、および、上記イソシアヌレート化合物とウレア化合物との組み合わせを用いることができる。
【0106】
液状の硬化性組成物がシランカップリング剤(B1)〔(B1)成分〕を含有する場合、(B1)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、液状の硬化性組成物の固形分100質量部に対して、一実施形態において2質量部以上、別の実施形態において4質量部以上、さらに別の実施形態において7質量部以上とすることができ、さらに別の実施形態において10質量部以上とすることができ、一実施形態において40質量部未満、別の実施形態において30質量部未満、さらに別の実施形態において25質量部未満とすることができ、さらに別の実施形態において20質量部未満とすることができる。シランカップリング剤(B1)の量の範囲は、液状の硬化性組成物の固形分(すなわち、有効成分)100質量部に対して、一実施形態において2質量部以上40質量部未満、別の実施形態において4質量部以上30質量部未満、さらに別の実施形態において7質量部以上25質量部未満とすることができ、さらに別の実施形態において10質量部以上20質量部未満とすることができる。
【0107】
(B1)成分を上記範囲で用いることにより、(B1)成分を加える効果をより発現させることができるため、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0108】
シランカップリング剤(B2)
シランカップリング剤(B2)を含有させることにより、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0109】
シランカップリング剤(B2)としては、2-(トリメトキシシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリエトキシシリル)エチル無水コハク酸、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸、3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸等の、トリ(炭素数1から6)アルコキシシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(ジメトキシメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジ(炭素数1から6)アルコキシメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(メトキシジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、(炭素数1から6)アルコキシジメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(トリクロロシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリブロモシリル)エチル無水コハク酸等の、トリハロゲノシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(ジクロロメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジハロゲノメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(クロロジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ハロゲノジメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;等が挙げられる。シランカップリング剤(B2)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
これらの中で、シランカップリング剤(B2)は、トリ(炭素数1から6)アルコキシシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸とすることができ、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸または3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸が例示される。
【0111】
液状の硬化性組成物がシランカップリング剤(B2)〔(B2)成分〕を含有する場合、(B2)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、液状の硬化性組成物の固形分100質量部に対して、一実施形態において0.1質量部以上、別の実施形態において0.5質量部以上、さらに別の実施形態において1.5質量部以上とすることができ、一実施形態において10質量部未満、別の実施形態において6質量部未満、さらに別の実施形態において4質量部未満とすることができる。シランカップリング剤(B2)の量の範囲は、液状の硬化性組成物の固形分100質量部に対して、一実施形態において0.1質量部以上10質量部未満、別の実施形態において0.5質量部以上6質量部未満、さらに別の実施形態において1.5質量部以上4質量部未満とすることができる。
【0112】
(B2)成分を上記範囲で用いることにより、(B2)成分を加える効果をより発現させることができ、かつ、酸無水物構造を有することによる(A)成分、および(B)成分の加水分解反応およびその後の縮合反応が促進されるため、接着性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。
【0113】
液状の硬化性組成物が(B)成分を含有する場合、(B)成分の合計含有量は特に限定されないが、その量は、液状の硬化性組成物の固形分中に、一実施形態において、2質量%以上、別の実施形態において、3質量%以上、さらに別の実施形態において、4質量%以上、さらに別の実施形態において、15質量%以上とすることができ、一実施形態において、45質%未満、別の実施形態において、35質量%未満、さらに別の実施形態において、30質量%未満、さらに別の実施形態において、25質量%未満とすることができる。(B)成分の合計含有量の範囲は、液状の硬化性組成物の固形分中に、一実施形態において、2質量%以上45質量%未満、別の実施形態において、3質量%以上35質量%未満、さらに別の実施形態において、4質量%以上30質量%未満、さらに別の実施形態において、15質量%以上25質量%未満とすることができる。(B)成分をこの範囲で用いることにより、接着強度が向上し、また屈折率が低い硬化性組成物の層の硬化物が得られ易くなり、屈折率が低いことが要望される装置に用いられ易くなる。
【0114】
(シリコーンオリゴマー(C))
本実施形態の液状の硬化性組成物は、(A)成分および(B)成分とは別の追加材料として、室温23℃で液状のシリコーンオリゴマー(C)(以下、「(C)成分」ということがある。)を含有してもよい。シリコーンオリゴマー(C)は、分子内に、炭素-ケイ素結合とシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有するとともに側鎖に有機基を有するオリゴマーである。シリコーンオリゴマー(C)は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)と混合し易く、液状の硬化性組成物の固形分濃度を下げなくとも、タック力を向上させることができる。
【0115】
シリコーンオリゴマー(C)の構造に制限はなく、下記式(c-1)、(c-2)、および(c-3)で示される繰り返し単位を有する化合物とすることができる。
【0116】
【化9】
【0117】
【化10】
【0118】
【化11】
【0119】
式(c-1)から(c-3)中、Rは、それぞれ独立して有機基を表し、有機基としては、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するフェニル基、無置換もしくは置換基を有するシクロアルキル基、またはビニル基とすることができる。式(c-1)から(c-3)中、Rは、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アミノオキシ基、アミド基、ヒドロキシ基、およびエポキシ基とすることができる。式(c-1)から(c-3)中、nは、2から50の整数とすることができる。シリコーンオリゴマー(C)は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、シリコーンオリゴマー(C)中のアルコキシ基の個数割合は、一実施形態において、2から50%とすることができる。
【0120】
シリコーンオリゴマー(C)の23℃における粘度は、一実施形態において、100000mPa・s以下、別の実施形態において、10000mPa・s以下、さらに別の実施形態において、1000mPa・s以下、さらに別の実施形態において、500mPa・s以下、5mPa・s以上とすることができる。
【0121】
シリコーンオリゴマー(C)の分子量は、一実施形態において、1200以下、別の実施形態において、1000以下、さらに別の実施形態において、800以下、さらに別の実施形態において、750以下100以上とすることができ、また、シリコーンオリゴマー(C)は、繰り返し単位を構成するモノマーの、二量体や三量体とすることができる。
【0122】
シリコーンオリゴマー(C)の含有量は特に限定されないが、その量は、液状の硬化性組成物の固形分(すなわち、有効成分)100質量部に対して、一実施形態において、2質量部以上、別の実施形態において、5質量部以上、さらに別の実施形態において、10質量部以上とすることができ、一実施形態において、25質量部未満、別の実施形態において、20質量部未満、さらに別の実施形態において、15質量部未満とすることができる。(C)成分の量の範囲は、液状の硬化性組成物の固形分100質量部に対して、一実施形態において、2質量部以上25質量部未満、別の実施形態において、5質量部以上20質量部未満、さらに別の実施形態において、10質量部以上15質量部未満とすることができる。(A)成分を上記範囲で用いることにより、(C)成分を加える効果をより発現させることができる。
【0123】
(溶媒(S))
本実施形態の液状の硬化性組成物は、溶媒(S)を含有していてもよい。溶媒(S)は、液状の硬化性組成物の成分を溶解または分散し得るものであれば特に限定されない。溶媒(S)は、254℃以上の沸点を有する有機溶媒(以下、「有機溶媒(SH)」と記載することがある。)を含むものとすることができる。ここで、「沸点」は、「1013hPaにおける沸点」をいう。有機溶媒(SH)の沸点は、254℃以上とすることでき、254℃以上300℃以下とすることができる。
【0124】
有機溶媒(SH)としては、具体的には、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点274℃)、1,6-へキサンジオールジアクリレート(沸点260℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点256℃)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点261℃)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点264から294℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点290から310℃)等が挙げられる。これらの中で、有機溶媒(SH)は、有効成分を良好に混合し易い観点から、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとすることができる。有機溶媒(SH)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
液状の硬化性組成物は、有機溶媒(SH)以外の溶媒を含有してもよい。有機溶媒(SH)以外の溶媒は、沸点が70℃以上254℃未満の溶媒(以下、「有機溶媒(SL)」と記載することがある。)とすることができる。有機溶媒(SL)としては、沸点が70℃以上254℃未満であり、かつ、液状の硬化性組成物の成分を溶解または分散し得るものであれば特に制限されない。一実施形態において、有機溶媒(SL)としては、沸点が70℃以上200℃未満とすることができ、別の実施形態において、沸点が70℃以上170℃未満とすることができ、これにより、硬化物層内の気泡(ボイド)の発生がより抑制され、半導体素子が硬化物層により適切な姿勢で固定されることができる。
【0126】
有機溶媒(SL)の具体例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点229℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点209℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点212℃)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点212℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点215℃ )、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点230℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点245℃)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点242℃)、プロピレングリコールフェニルエーテル(沸点243℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点249℃)、ベンジルアルコール(沸点204.9℃)、フェネチルアルコール(沸点219から221℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点192℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点134.8℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124.5℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、シクロペンタノン(沸点130℃)、シクロヘキサノン(沸点157℃)、シクロヘプタノン(沸点180℃)、シクロオクタノン(沸点195から197℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、シクロヘキサジエノン(沸点104から104.5℃)、メチルエチルケトン(沸点80℃)等が挙げられる。これらの中で、有機溶媒(SL)は、有効成分を良好に混合し易い観点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンとすることができる。
【0127】
液状の硬化性組成物は、固形分(すなわち、有効成分)濃度が、一実施形態において、80質量%以上、別の実施形態において、85質量%以上になる量の溶媒(S)を含有することができ、一実施形態において、95質量%未満、別の実施形態において、90質量%未満になる量の溶媒(S)を含有することができる。液状の硬化性組成物は、固形分濃度の範囲が、一実施形態において、80質量%以上95質量%未満、別の実施形態において、85質量%以上90質量%未満になる量の溶媒(S)を含有することができる。これにより、液状の硬化性組成物の粘度の調整がしやすく、また、硬化物層内の気泡(ボイド)の発生がより抑制され、半導体素子が硬化物層により適切な姿勢で固定されることができる。
【0128】
固形分濃度がこの範囲内であることで、有効成分を良好に混合し易く、また、塗布工程における作業性により優れる。さらに、液状の硬化性組成物は、一斗缶、ペール缶、ドラム缶等の容器に入れて保管され得るが、固形分濃度がこの範囲内であることで、液状の硬化性組成物が容器へ充填され易い。
【0129】
(微粒子(D))
本実施形態の液状の硬化性組成物は、微粒子(D)を含有してもよい。微粒子(D)としては、平均一次粒子径が0.005μm以上7μm以下の微粒子(D)が挙げられる。
【0130】
微粒子(D)を含有させることにより、接着性および耐熱性により優れる硬化物を与える硬化性組成物の層が得られ易くなる。この効果がより得られ易いことから、微粒子(D)の平均一次粒子径は、一実施形態において、0.005μm以上、別の実施形態において、0.006μm以上、さらに別の実施形態において、0.007μm以上とすることができ、また一実施形態において、7μm以下、別の実施形態において、2μm以下、さらに別の実施形態において、0.1μm以下、さらに別の実施形態において、0.05μm以下とすることができる。微粒子(D)の平均一次粒子径の範囲は、一実施形態において、0.005μm以上7μm以下、別の実施形態において、0.006μm以上2μm以下、さらに別の実施形態において、0.007μm以上0.1μm以下、さらに別の実施形態において、0.007μm以上0.05μm以下とすることができる。微粒子(D)の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて微粒子の形状を観察することにより求めることができる。
【0131】
微粒子(D)の比表面積は、一実施形態において、0.1m/g以上、別の実施形態において、0.5m/g以上、さらに別の実施形態において、1m/g以上、さらに別の実施形態において、50m/g以上とすることができ、一実施形態において、500m/g以下、別の実施形態において、400m/g以下、さらに別の実施形態において、300m/g以下、さらに別の実施形態において、220m/g以下とすることができる。微粒子(D)の比表面積の範囲は、一実施形態において、0.1m/g以上500m/g以下、別の実施形態において、0.5m/g以上400m/g以下、さらに別の実施形態において、1m/g以上300m/g以下、さらに別の実施形態において、50m/g以上220m/g以下とすることができる。比表面積が上記範囲内であることで、塗布工程における作業性により優れる液状の硬化性組成物が得られ易くなる。
【0132】
微粒子(D)の形状は、球状、鎖状、針状、板状、片状、棒状、繊維状等のいずれであってもよく、球状とすることができる。ここで、「球状」とは、「真球状の他、回転楕円体、卵形、金平糖状、まゆ状等球体に近似できる多面体形状を含む略球状」を意味する。
【0133】
微粒子(D)の構成成分としては、特に制限はなく、金属;金属酸化物;鉱物;金属炭酸塩;金属硫酸塩;金属水酸化物;金属珪酸塩;無機成分;有機成分;シリコーン;等が挙げられる。また、用いる微粒子(D)は表面が修飾されたものであってもよい。
【0134】
金属とは、周期表における、1族(Hを除く)、2から11族、12族(Hgを除く)、13族(Bを除く)、14族(CおよびSiを除く)、15族(N、P、AsおよびSbを除く)、または16族(O、S、Se、TeおよびPoを除く)に属する元素をいう。
【0135】
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、およびこれらの複合酸化物等が挙げられる。金属酸化物の微粒子には、これらの金属酸化物からなるゾル粒子も含まれる。
【0136】
鉱物としては、スメクタイト、ベントナイト等が挙げられる。スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等が挙げられる。
【0137】
金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が、金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム等が、金属珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等が挙げられる。また、無機成分としては、シリカ等が挙げられる。シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、表面修飾シリカ(表面が修飾されたシリカ)等が挙げられる。有機成分としては、アクリル系重合体等が挙げられる。
【0138】
シリコーンとは、シロキサン結合による主骨格を持つ、人工高分子化合物を意味する。例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0139】
微粒子(D)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、微粒子(D)は、透明性に優れる液状の硬化性組成物が得られ易いことから、シリカ、金属酸化物、鉱物とすることができ、シリカが例示される。
【0140】
シリカは、液状の硬化性組成物として混合が比較的容易である観点、および塗布工程における作業性により優れる液状の硬化性組成物が得られ易いことから、表面修飾シリカとすることができ、疎水性の表面修飾シリカとすることができる。疎水性の表面修飾シリカとしては、表面に、トリメチルシリル基等のトリ炭素数1から20のトリアルキルシリル基;ジメチルシリル基等のジ炭素数1から20のアルキルシリル基;オクチルシリル基等の炭素数1から20のアルキルシリル基;を結合させたシリカ;シリコーンオイルで表面を処理したシリカ;等が挙げられる。疎水性の表面修飾シリカは、例えば、シリカ粒子に、トリ炭素数1から20のトリアルキルシリル基、ジ炭素数1から20のアルキルシリル基、炭素数1から20のアルキルシリル基等を有するシランカップリング剤を用いて表面修飾することにより、あるいは、シリカ粒子をシリコーンオイルで処理することにより得ることができる。
【0141】
液状の硬化性組成物が微粒子(D)〔(D)成分〕を含有する場合、(D)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、液状の硬化性組成物の中に、一実施形態において、0.5質量%以上、別の実施形態において、1質量%以上、さらに別の実施形態において、2質量%以上とすることができ、一実施形態において、30質量%未満、別の実施形態において、20質量%未満、さらに別の実施形態において、10質量%未満とすることができる。微粒子(D)の量の範囲は、液状の硬化性組成物中に、一実施形態において、0.5質量%以上30質量%未満、別の実施形態において、1質量%以上10質量%未満、さらに別の実施形態において、2質量%以上10質量%未満とすることができる。(D)成分を上記範囲で用いることにより、(D)成分を加える効果をより発現させることができる。
【0142】
(その他の成分(E))
本実施形態の液状の硬化性組成物は、その他の成分(E)を含有してもよい。(E)成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。酸化防止剤は、加熱時の酸化劣化を防止する目的で添加される。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0143】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0144】
これらの酸化防止剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の使用量は、(A)成分に対して、10質量%以下とすることができる。
【0145】
紫外線吸収剤は、得られる液状の硬化性組成物の耐光性を向上させる目的で添加される。紫外線吸収剤としては、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分に対して、10質量%以下とすることができる。
【0146】
光安定剤は、得られる液状の硬化性組成物の耐光性を向上させる目的で添加される。光安定剤としては、例えば、ポリ[{6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類等が挙げられる。これらの光安定剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。(E)成分の総使用量は、(A)成分に対して、20質量%以下とすることができる。
【0147】
<本実施形態に係る硬化性組成物の層>
本実施形態に係る硬化性組成物の層は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有するものである。また、硬化性組成物の層は、1000mN以上のタック力を有する硬化性組成物の層である。本実施形態に係る硬化性組成物の層は優れた粘着性を有するため、硬化性組成物の層に半導体素子を適切または十分に貼り付けること(すなわちマウントすること)ができるものである。
【0148】
さらに、本実施形態に係る硬化性組成物の層は、150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である硬化性組成物の層である。このように本実施形態に係る硬化性組成物の層は、硬化したときの硬化物層の質量の減少が少ないものであるため、質量減少時に発生する気泡(ボイド)が少なく、硬化物層内に残存する気泡が減少またはなくなる。そのため、半導体素子が硬化物層に適切な姿勢で固定されることができ、半導体素子と硬化物層との接着性も向上し、さらに外観も良好となる。また、LEDチップ等の発光素子が硬化物層によって固定された場合、発光素子が傾いて固定されないことで所望の明るさの発光装置が得られる。
【0149】
また、「硬化性組成物の層」とは、液状の硬化性組成物が完全に硬化される前の層であり、液状の硬化性組成物が加熱乾燥されたものである。また、「硬化性組成物の層」は、室温において、保形性を有する状態のものである。ここで、室温は23℃をいう。また、「硬化性組成物の層」は、半導体素子が配置されることができれば、自立した層であっても、剥離シート上に配置された層であってもよい。
【0150】
(タック力)
本実施形態に係る硬化性組成物の層は、1000mN以上のタック力を有する硬化性組成物の層である。タック力の範囲、およびタック力の確認方法等は、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>の項で例示したものと同様の範囲および確認方法とすることができる。
【0151】
(質量減少率)
本実施形態に係る硬化性組成物の層は、150℃にて4時間加熱後(硬化後)の質量減少率が13%以下である硬化性組成物の層である。液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率の範囲、およびその質量減少率の確認方法等は、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>の項で例示したものと同様の範囲および確認方法とすることができる。
【0152】
(硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A))
本実施形態に係る硬化性組成物の層は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を含有するものである。一実施形態において、硬化性オルガノポリシロキサン化合物は、ポリシルセスキオキサン化合物である。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の構造、および官能基等は、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>の項で例示したものと同様の構造および官能基とすることができる。
【0153】
(成分(B)から(E)、および(S))
本実施形態に係る硬化性組成物の層は、シランカップリング剤(B)、シリコーンオリゴマー(C)、微粒子(D)、およびその他の成分(E)を含有するものである。シランカップリング剤(B)、シリコーンオリゴマー(C)、微粒子(D)、およびその他の成分(E)の構造、官能基、含有量、物性等は、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>の項で例示したものと同様の構造、官能基、含有量、物性等とすることができる。
【0154】
(成分(S))
本実施形態に係る硬化性組成物の層は、溶媒(S)を含有していてもよい。溶媒(S)の化合物等は、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>の項で例示したものと同様の化合物等とすることができる。しかし、硬化性組成物の層は、液状の硬化性組成物が加熱乾燥されたものであるため、液状の硬化性組成物に含有されていた溶媒(S)の一部は揮発しており、硬化性組成物の層に含有する溶媒(S)の量は、液状の硬化性組成物に含有する溶媒(S)の量より少ない。
【0155】
硬化性組成物の層は、固形分(すなわち、有効成分)濃度が、一実施形態において、90質量%以上、別の実施形態において、93質量%以上、さらに別の実施形態において、95質量%以上になる量の溶媒(S)を含有することができ、一実施形態において、100質量%未満、別の実施形態において、99.5質量%未満、さらに別の実施形態において、99質量%未満になる量の溶媒(S)を含有することができる。硬化性組成物の層は、固形分濃度の範囲が、一実施形態において、90質量%以上100質量%未満、別の実施形態において、93質量%以上99.5質量%未満、さらに別の実施形態において、95質量%以上99質量%未満になる量の溶媒(S)を含有することができる。これにより、硬化物層内の気泡(ボイド)の発生が抑制され、半導体素子が硬化物層に適切な姿勢で固定されることができる。
【0156】
(硬化性組成物の層の厚さ)
本実施形態に係る硬化性組成物の層の厚さは、特に限定されるものでなく、接着する半導体素子および半導体素子の用途等に応じて決めることができ、半導体素子を配置することができればよい。硬化性組成物の層の厚さは、一実施形態において、1μm以上、別の実施形態において、5μm以上、さらに別の実施形態において、10μm以上、さらに別の実施形態において、30μm以上、さらに別の実施形態において、40μm以上とすることができ、一実施形態において、100μm以下、別の実施形態において、80μm以下、さらに別の実施形態において、60μm以下とすることができる。また硬化性組成物の層の厚さの範囲は、一実施形態において、50μm±7μmとすることができる。また、硬化性組成物の層の厚さは、硬化性組成物の層が硬化した後の厚さから決定することもできる。
【0157】
<本実施形態に係る液状の硬化性組成物の製造方法>
本実施形態の液状の硬化性組成物は、例えば、下記工程(AI)および工程(AII)を有する製造方法により製造することができる。
【0158】
(工程(AI))
工程(AI)は、上記式(a-6)で示される化合物の少なくとも一種を、重縮合触媒の存在下に重縮合させて、ポリシルセスキオキサン化合物を得る工程である。
【0159】
(工程(AII))
工程(AII)は、工程(AI)で得られたポリシルセスキオキサン化合物を用いて、液状の硬化性組成物を得る工程である。
【0160】
工程(AI)の上記式(a-6)で示される化合物の少なくとも一種を、重縮合触媒の存在下に重縮合させて、ポリシルセスキオキサン化合物を得る方法としては、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物>の項で例示したものと同様の方法が挙げられる。
【0161】
工程(AII)において、ポリシルセスキオキサン化合物を用いて、液状の硬化性組成物を得る方法としては、例えば、ポリシルセスキオキサン化合物、所望により前記(B)成分、前記(C)成分、および前記(D)成分を、溶媒(S)と混合、脱泡し、溶解する方法が挙げられる。混合方法、脱泡方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。混合する順番は特に限定されない。上記工程(AI)および工程(AII)を有する製造方法によれば、本実施形態の液状の硬化性組成物を、効率よく簡便に製造することができる。
【0162】
<本実施形態に係る硬化性組成物の層の形成方法>
本実施形態の硬化性組成物の層は、例えば、下記工程(BI)および工程(BII)を有する方法により形成することができる。
(工程(BI))
工程(BI)は、<本実施形態に係る液状の硬化性組成物の製造方法>で得た本実施形態の液状の硬化性組成物を、剥離シートに塗布する工程である。
【0163】
(工程(BII))
工程(BII)は、工程(BI)で得られた液状の硬化性組成物の塗膜を加熱乾燥して、硬化性組成物の層を得る工程である。
【0164】
工程(BI)において、工程(AII)で得た液状の硬化性組成物を剥離シートに塗布する。液状の硬化性組成物が塗布される剥離シートは、特に限定されるものでなく、例えば、フィルム上に剥離剤が形成されものとすることができる。フィルムは、特に限定されるものでなく、有機材料、または無機材料で構成される。有機材料としては、樹脂を使用することができ、無機材料としては、セラミック、ガラス、金属等を使用することができる。一実施形態において、フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙等の紙およびこれらを積層したものが例示される。
【0165】
剥離シートの厚さは、特に限定されるものでなく、一実施形態において、20μm以上、別の実施形態において、25μm以上とすることができ、一実施形態において、200μm未満、別の実施形態において、100μm未満とすることができる。
【0166】
剥離剤は、特に限定されるものでなく、樹脂で構成される。一実施形態において、剥離剤は、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ジメチルポリシロキサンを基本骨格として有するシリコーン等のシリコーン樹脂等が例示される。
【0167】
剥離剤の厚さは、特に限定されるものでなく、一実施形態において、30nm以上、別の実施形態において、50nm以上とすることができ、一実施形態において、300nm未満、別の実施形態において、200nm未満とすることができる。
【0168】
液状の硬化性組成物を剥離シート上に塗布する方法としては、特に限定されるものでなく、例えば、ナイフコート、ブレードコート、ロールコート等が例示される。液状の硬化性組成物は、一斗缶、ペール缶、ドラム缶等の容器に入れて保管されており、コート装置に液状の硬化性組成物を供給して使用される。
【0169】
塗布された液状の硬化性組成物を加熱乾燥させて、例えば溶媒(S)の一部を揮発させることにより、硬化性組成物の層を得ることができる。加熱温度は、一実施形態において、80℃以上、別の実施形態において、90℃以上とすることができ、一実施形態において、120℃以下、別の実施形態において、110℃以下とすることができる。加熱温度の範囲は、一実施形態において、80から120℃、別の実施形態において、90から110℃とすることができる。また、加熱時間の範囲は、一実施形態において、10分から1時間、別の実施形態において、20分から30分とすることができる。一例として、液状の硬化性組成物の塗膜を100℃で20分加熱して硬化性組成物の層を形成することが例示される。
【0170】
<本実施形態に係る半導体素子の固定方法>
本実施形態の半導体素子の固定方法は、例えば、下記工程(CI)および工程(CII)を有する方法により固定することができる。
(工程(CI))
工程(CI)は、工程(BII)で得た本実施形態の硬化性組成物の層に半導体素子を配置する工程である。
【0171】
(工程(CII))
工程(CII)は、工程(CI)で得られた半導体素子を含む硬化性組成物の層を熱硬化させる工程である。
【0172】
工程(CI)において、工程(BII)で得た硬化性組成物の層に半導体素子を貼り付けて配置(マウント)する。半導体素子は、特に限定されるものでなく、レーザ、発光ダイオード(LED)等の発光素子や太陽電池等の受光素子等の光半導体素子、トランジスタ、温度センサや圧力センサ等のセンサ、集積回路等が挙げられる。これらの中で、本実施形態に係る液状の硬化性組成物および硬化性組成物の層を用いることによる効果が発揮され易い観点から、半導体素子は、光半導体素子とすることができる。半導体素子を硬化性組成物の層に配置する方法は、特に限定されるものでなく、例えば、硬化性組成物の層の粘着表面の一部に、半導体素子を対向させて半導体素子を押圧することで、半導体素子は硬化性組成物の層に配置されることができる。その後、剥離シートを剥がして、剥き出しになった硬化性組成物の層を、別の被着体(例えば、ガラス製基板等の基板)に貼付してもよい。
【0173】
また、例えば、工程(BII)で得た硬化性組成物の層を、先に別の被着体(例えば、ガラス製基板等の基板)に貼付しておき、その後、剥離シートを剥がして、剥き出しになった硬化性組成物の層の粘着表面の一部に、半導体素子を対向させて半導体素子を押圧することで、半導体素子は硬化性組成物の層に配置されることもできる。
【0174】
工程(CII)において、工程(CI)で得られた半導体素子を含む硬化性組成物の層を熱硬化させる。硬化性組成物の層を加熱して溶媒(S)を揮発させ、硬化させることにより、半導体素子を硬化物層に固定することができる。硬化させるときの加熱温度は、一実施形態において、100℃以上、別の実施形態において、120℃以上とすることができ、一実施形態において、180℃以下、別の実施形態において、160℃以下とすることができる。硬化させるときの加熱温度の範囲は、一実施形態において、100から180℃、別の実施形態において、120から160℃とすることができる。また、硬化させるときの加熱時間の範囲は、一実施形態において、30分から10時間、別の実施形態において、1時間から7時間、さらに別の実施形態において、3時間から5時間とすることができる。一例として、半導体素子を含む硬化性組成物の層を150℃で4時間加熱して半導体素子を硬化物層に固定することが例示される。これにより、半導体素子が硬化物層に適切な姿勢で固定されることができ、LEDチップ等の発光素子が硬化物層に固定された場合、発光素子が傾いて固定されないことで所望の明るさの発光装置が得られる。
【0175】
硬化物層の厚さは、特に限定されず、硬化させることにより、半導体素子を強固に固定することができるものであればよい。硬化物層の厚さは、一実施形態において、1μm以上、別の実施形態において、5μm以上、さらに別の実施形態において、10μm以上、さらに別の実施形態において、30μm以上、さらに別の実施形態において、40μm以上とすることができ、一実施形態において、100μm以下、別の実施形態において、80μm以下、さらに別の実施形態において、60μm以下とすることができる。硬化物層の厚さの範囲は、一実施形態において、1μm以上100μm以下、別の実施形態において、5μm以上80μm以下、さらに別の実施形態において、10μm以上80μm以下、さらに別の実施形態において、30μm以上60μm以下、さらに別の実施形態において、40μm以上60μm以下とすることができる。
【0176】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、以下の液状の硬化性組成物、硬化性組成物の層、硬化性組成物の層の形成方法、および、半導体素子の固定方法を含む。
【0177】
(項目1)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する液状の硬化性組成物であって、
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する層が1000mN以上のタック力を有し、
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる層の150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である、液状の硬化性組成物。
【0178】
(項目2)
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物が、ポリシルセスキオキサン化合物である、項目1に記載の液状の硬化性組成物。
【0179】
(項目3)
前記液状の硬化性組成物の粘度が、5Pa・s以上である、項目1または項目2に記載の液状の硬化性組成物。
【0180】
(項目4)
23℃で液状のシリコーンオリゴマーをさらに含有する、項目1から項目3のいずれか1項目に記載の液状の硬化性組成物。
【0181】
(項目5)
沸点が70℃以上200℃未満の溶媒をさらに含有する、項目1から項目4のいずれか1項目に記載の液状の硬化性組成物。
【0182】
(項目6)
前記液状の硬化性組成物を100℃にて20分間加熱して得られる50μm±7μmの厚さを有する前記層が10,000mN以下のタック力を有する、項目1から項目5のいずれか1項目に記載の液状の硬化性組成物。
【0183】
(項目7)
項目1から項目6のいずれか1項目に記載の液状の硬化性組成物を剥離シートに塗布することと、
前記液状の硬化性組成物を加熱乾燥することと、
を含む、硬化性組成物の層の形成方法。
【0184】
(項目8)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する硬化性組成物の層であって、
1000mN以上のタック力を有し、
150℃にて4時間加熱後の質量減少率が13%以下である、硬化性組成物の層。
【0185】
(項目9)
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物が、ポリシルセスキオキサン化合物である、項目8に記載の硬化性組成物の層。
【0186】
(項目10)
前記硬化性組成物の層が10,000mN以下のタック力を有する、項目8または項目9に記載の硬化性組成物の層。
【0187】
(項目11)
項目8から項目10のいずれか1項目に記載の硬化性組成物の層に半導体素子を配置することと、
前記硬化性組成物の層を熱硬化させることと、
を含む、半導体素子の固定方法。
【実施例0188】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。各例中の部および%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0189】
(平均分子量測定)
製造例で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値とし、以下の装置および条件にて測定した。
装置名:HLC-8220GPC、東ソー株式会社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXL、および、TSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:20μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
【0190】
(IRスペクトルの測定)
製造例で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)のIRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、Spectrum100)を使用して測定した。
【0191】
(製造例1)
300mlのナス型フラスコに、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)28.91g(145.8mmol)を仕込んだ後、蒸留水7.874mlに35%塩酸0.0376g(シラン化合物の合計量に対して0.25mol%)を溶解した水溶液を撹拌しながら加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して5時間撹拌した。その後、反応液を室温(23℃)まで戻し、酢酸プロピル50gおよび水100gを加えて分液処理を行い、反応生成物を含む有機層を得た。この有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥処理を行った。硫酸マグネシウムを濾別除去した後、有機層をエバポレーターで濃縮し、濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)を17.0g得た。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)の質量平均分子量(Mw)は1,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-C:698cm-1,Si-O:1132cm-1
【0192】
(製造例2)
300mLのナス型フラスコに、メチルトリエトキシシラン71.37g(400mmol)を仕込んだ後、蒸留水21.6mlに35%塩酸0.10g(シラン化合物の合計量に対して0.25mol%)を溶解した水溶液を撹拌しながら加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して5時間撹拌した。その後、酢酸プロピルを140g入れ撹拌した。ここに、28%アンモニア水0.12g(シラン化合物の合計量に対して0.5mol%)を撹拌しながら加え、全容を70℃に昇温して3時間さらに撹拌した。反応液に精製水を加え、分液し、水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。有機層をエバポレーターで濃縮し、濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2)を55.7g得た。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2)の質量平均分子量(Mw)は7,800、分子量分布(Mw/Mn)は4.52であった。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-CH:1272cm-1,1409cm-1,Si-O:1132cm-1
【0193】
(製造例3)
300mLのナス型フラスコに、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)17.0g(77.7mmol)、および、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)32.33g(181.3mmol)を仕込んだ後、蒸留水14.0mlに35%塩酸0.0675g(HClの量が0.65mmol,シラン化合物の合計量に対して0.25mol%)を溶解した水溶液を撹拌しながら加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して20時間撹拌した。内容物の撹拌を継続しながら、そこに、28%アンモニア水0.0394g(NHの量が0.65mmol)と酢酸プロピル46.1gの混合溶液を加えて反応液のpHを6.9にし、そのまま70℃で40分間撹拌した。反応液を室温(23℃)まで放冷した後、そこに、酢酸プロピル50gおよび水100gを加えて分液処理を行い、反応生成物を含む有機層を得た。この有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥処理を行った。硫酸マグネシウムを濾別除去した後、有機層をエバポレーターで濃縮し、濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3)を22.3g得た。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3)の質量平均分子量(Mw)は5,500、分子量分布(Mw/Mn)は3.40であった。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-CH:1272cm-1,1409cm-1,Si-O:1132cm-1,C-F:1213cm-1
【0194】
実施例および比較例で用いた化合物を以下に示す。
((A)成分)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1):製造例1で得られたオルガノポリシロキサン化合物(23℃において固体)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2):製造例2で得られたオルガノポリシロキサン化合物(23℃において固体)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3):製造例3で得られたオルガノポリシロキサン化合物(23℃において固体)
【0195】
((B)成分)
シランカップリング剤(B1):1,3,5-N-トリス〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート(信越化学工業社製、製品名「KBM-9659」)
シランカップリング剤(B2):3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製、製品名「X-12-967C」)
【0196】
((C)成分)
シリコーンオリゴマー(C):アルコキシ基含有シリコーンオリゴマー(信越化学工業社製、製品名「KR-9218」、23℃における粘度は50mPa・s(測定方法:後述の液状の硬化性組成物の粘度評価と同様))
【0197】
((D)成分)
微粒子(D1):トリメチルシリル基で表面処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、製品名「AEROSIL RX300」、平均一次粒子径:7nm、比表面積:210m/g)
微粒子(D2):シリコーン系微粒子(日興リカ株式会社製、製品名「MSP-SN08」、平均一次粒子径:0.8μm、形状:球状)
【0198】
(溶媒(S))
溶媒(S1):メチルエチルケトン(SL)(沸点:80℃)
溶媒(S2):シクロヘキサノン(SL)(沸点:157℃)
溶媒(S3):トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(TPnB)(SH)(ダウ・ケミカル社製、沸点:274℃)
溶媒(S4):ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)(SL)(東京化成工業社製、沸点:247℃)
【0199】
(液状の硬化性組成物の作製)
実施例1
固形分(有効成分)質量比で、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)100質量部に、シランカップリング剤(B1)2質量部、シランカップリング剤(B2)5質量部、シリコーンオリゴマー(C)10質量部、微粒子(D1)5質量部を加え、さらに溶媒(S1)を加えて固形分濃度90%とし、全容を十分に混合、脱泡することにより、液状の硬化性組成物を得た。
【0200】
実施例2から6、および比較例1から5
化合物((A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分)の種類、および配合割合(固形分(有効成分)質量比)を、下記表1に示すものに変更し、各組成物が含有する溶媒合計100質量部に対する各溶媒(S1、S2、S3、S4)の質量比を下記表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2から6、および比較例1から5の液状の硬化性組成物を得た。なお、比較例1は、液状の硬化性組成物の固形分濃度を85%となるように調製され、比較例2は、液状の硬化性組成物の固形分濃度を80%となるように調製された。
【0201】
(粘度評価)
実施例1で得た液状の硬化性組成物について、レオメーター(Anton Paar社製、製品名「MCR301」)にて、半径50mm、コーン角度0.5°のコーンプレートを用い、23℃でせん断速度が2s-1時で、粘度が測定された。実施例2から6、および比較例1から5で得た液状の硬化性組成物においても、上記実施例1と同様に、粘度を測定した。
【0202】
【表1】
【0203】
(硬化性組成物の層の作製)
実施例1で得た液状の硬化性組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理された剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」,厚さ:38μm)の剥離処理面に加熱乾燥後の厚みが50μm±7μmとなるよう、アプリケーターを用いて塗布した。塗布された層を100℃にて20分間加熱処理して硬化性組成物の層を得た。実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5で得た液状の硬化性組成物から、実施例2から6、および比較例1から5の硬化性組成物の層を得た(より具体的には、剥離シート付き硬化性組成物の層を得た)。
【0204】
(塗工性評価)
硬化性組成物の層の作製における、実施例1の硬化性組成物の層における、長さ100mm×幅20mmのサイズの表面を目視で観察し、以下の基準で塗工性を評価した。
○:ハジキ(広がっていた液体が集まること)および塗工面荒れがない
△:ハジキおよび塗工面荒れの少なくともいずれか一方がある
実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5の硬化性組成物の層の塗工性を評価した。
【0205】
(タック力)
硬化性組成物の層の作製における、実施例1の硬化性組成物の層を、プローブタックテスター(テスター産業社製、ステンレス製プローブ)に設置し、23℃において層にプローブを一定の時間接触させた後に引き剥がす際の力(プローブタック値)を測定することで、硬化性組成物の層のタック力を測定した。また、プローブは測定前に酢酸エチルで拭き取り洗浄した。この測定を硬化性組成物の層においてプローブの接触位置を変えて7回行い、7つの測定値のうち、1番目と2番目に小さい値を省き、残りの5つの測定値の平均値をプローブタック値(mN)とした。以下の条件にて、タック力を測定した。
接触荷重:600gf
接触速度(Contactspeed):10mm/秒
プローブエリア(ProbeArea):5mmΦ
接触時間(Contacttime):1秒
引き剥がし速度(Peelingspeed):10mm/秒
実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5の硬化性組成物の層のタック力を測定した。
【0206】
(質量減少率)
液状の硬化性組成物の作製における、実施例1の液状の硬化性組成物20mg±1mgを、測定用サンプルパンに塗布し、示差熱・熱重量同時測定装置(島津製作所社製、製品名「DTG-60」)に投入した。炉内温度を昇温速度10℃/分にて昇温させ、温度が40℃になった時点の質量を開始質量として測定し、続いて、炉内温度を昇温速度10℃/分にて昇温させ、温度が100℃になった後、20分間維持し、加熱乾燥後層の質量を測定した。液状の硬化性組成物の加熱後の質量減少率[%]は、開始質量、および加熱乾燥後層の質量から、下記式により算出される。
液状の硬化性組成物の加熱後の質量減少率[%]={{(開始質量)―(加熱乾燥後層の質量)}/(開始質量)}×100
【0207】
加熱乾燥後層の質量の測定に続いて、炉内温度を昇温速度10℃/分にて昇温させ、温度が150℃になった後、4時間維持して得られた硬化物層の質量を測定した。液状の硬化性組成物の加熱乾燥後層に対する硬化後の硬化物層の質量減少率[%]は、加熱乾燥後層の質量、および硬化物層の質量から、下記式により算出される。
硬化性組成物の層の加熱後の質量減少率[%]={{(加熱乾燥後層の質量)―(硬化物層の質量)}/(加熱乾燥後層の質量)}×100
【0208】
実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5の液状の硬化性組成物においても、液状の硬化性組成物の加熱後の質量減少率、および硬化性組成物の層の加熱後の質量減少率を求めた。
【0209】
(ジッピング(剥離シートの剥がし痕)評価)
硬化性組成物の層の作製における、実施例1の硬化性組成物の層(より具体的には、剥離シート付き硬化性組成物の層における硬化性組成物の層)を、23℃にて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにハンドローラーにてラミネートして、剥離シート/硬化性組成物の層/ポリエチレンテレフタレートフィルムの順に積層された積層体を得た。積層体から剥離シートを、23℃にて、剥離速度10m/分、剥離角度180°で剥離した。硬化性組成物の層の剥離面の表面状態を目視で観察し、以下の基準でジッピングを評価した。
○:剥離シートと接していた硬化性組成物の層の表面に変形がなく、表面状態は平滑であった
△:剥離シートと接していた硬化性組成物の層の表面に変形が起こり、目視にてスジ等が確認された
実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5の硬化性組成物の層のジッピングを評価した。
【0210】
(マウント性評価)
硬化性組成物の層の作製における、実施例1の硬化性組成物の層(より具体的には、剥離シート付き硬化性組成物の層における硬化性組成物の層)を上向きにして、剥き出しの硬化性組成物の層に長さ1mm×幅1mm×厚さ0.35mmのシリコンチップ1個を0.49Nの負荷でマウントした。マウント後3秒以内に得られたシリコンチップ付の硬化性組成物の層を上下反転させ(塗布層を鉛直方向下向きにして)、以下の基準でマウント性を評価した。同様の評価を、マウント位置を変えて5回(すなわち5チップ)行った。
○:全てのチップが落下しなかった
×:1個以上のチップが落下した
実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5の硬化性組成物の層のマウント性を評価した。
【0211】
(硬化物層のボイド評価)
硬化性組成物の層の作製における、実施例1の硬化性組成物の層(より具体的には、剥離シート付き硬化性組成物の層における硬化性組成物の層)を無色透明ガラス(長さ50mm×幅50mm×厚さ1mm)の被着体に貼付し、剥離シートを剥がして、硬化性組成物の層/無色透明ガラスの順に積層された積層体を得た。積層体の剥き出しの硬化性組成物の層に対し、長さ10mm×幅10mm×厚さ0.35mmのガラスチップ5個を0.49Nの負荷でマウントし、加熱処理前の気泡の有無を観察して記録した。その後、150℃で4時間加熱処理をして、無色透明ガラスに固定されたガラスチップ付き硬化物層を得た。無色透明ガラスに固定されたガラスチップ付き硬化物層について、目視にて硬化物層とガラスチップとの界面におけるボイドの発生(すなわち加熱処理前と比較して加熱処理後に増加した気泡)の有無を観察し、以下の基準で硬化物層のボイドを評価した。
◎:実装したチップ5個の全てにおいて、全くボイドが観察されなかった
○:実装したチップ5個のうち直径1mm未満のボイドが発生したチップが存在したが、直径1mm以上のボイドが発生したチップは無かった
×:実装したチップ5個のうち直径1mm以上のボイドが発生したチップが存在した
実施例1と同様にして、実施例2から6、および比較例1から5の硬化性組成物の層のボイドを評価した。
【0212】
表2に、実施例1から6、および比較例1から5のタック力、質量減少率、塗工性評価、ジッピング評価、マウント性評価、およびボイド評価の結果を示す。
【0213】
【表2】
【0214】
実施例1から6の液状の硬化性組成物は、それを100℃にて20分加熱して得られた硬化性組成物の層(加熱乾燥後層)が1000mN以上のタック力を有するものであった。また、実施例1から6の液状の硬化性組成物は、それを100℃にて20分間加熱して得られた加熱乾燥後層の質量に対する、その加熱乾燥後層をさらに150℃にて4時間加熱後の硬化物層の質量の減少率が13%以下であった。これより、実施例1から6の液状の硬化性組成物は、それから得られる硬化性組成物の層に半導体素子を適切に貼り付けることができ、硬化物層に半導体素子を適切な姿勢で固定することができるものであった。
【0215】
一方、比較例3および5の液状の硬化性組成物は、それを100℃にて20分加熱して得られた硬化性組成物の層(加熱乾燥後層)が1000mN未満のタック力を有するものであった。また、比較例1、2、および4の液状の硬化性組成物は、それを100℃にて20分間加熱して得られた加熱乾燥後層の質量に対する、その加熱乾燥後層をさらに150℃にて4時間加熱後の硬化物層の質量の減少率が13%超であった。これより、比較例1から5の液状の硬化性組成物は、それから得られる硬化性組成物の層に半導体素子を適切に貼り付けることができ、且つ硬化物層に半導体素子を適切な姿勢で固定することができるものでなかった。
【0216】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。