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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142056
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】チルト装置およびアクセス装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20241003BHJP
   G21F 7/06 20060101ALI20241003BHJP
   G21C 19/26 20060101ALI20241003BHJP
   G21C 19/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G21F9/28 A
G21F7/06
G21C19/26
G21C19/02 080
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054024
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 英司
(57)【要約】
【課題】チルト装置およびアクセス装置において、装置の簡素化および小型化を図ることで高い信頼性を確保する。
【解決手段】支持アームと、支持アームの先端部に水平方向に沿う連結軸により基端部が回動自在に連結されるチルトアームと、支持アームからチルトアームに向けて配置されて先端部がチルトアームに連結される索条と、支持アームに設けられて基端部が連結される索条を長手方向に移動可能な索状駆動装置と、支持アームの先端部に水平方向に沿う支持軸により回転自在に支持されて索条を水平方向から鉛直方向の下方へ案内する第1シーブと、チルトアームの基端部に配置されて索条を鉛直方向から水平方向へ案内するガイド部材と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持アームと、
前記支持アームの先端部に水平方向に沿う連結軸により基端部が回動自在に連結されるチルトアームと、
前記支持アームから前記チルトアームに向けて配置されて先端部が前記チルトアームに連結される索条と、
前記支持アームに設けられて基端部が連結される前記索条を長手方向に移動可能な索状駆動装置と、
前記支持アームの先端部に水平方向に沿う支持軸により回転自在に支持されて前記索条を水平方向から鉛直方向の下方へ案内する第1シーブと、
前記チルトアームの基端部に配置されて前記索条を鉛直方向から水平方向へ案内するガイド部材と、
を備えるチルト装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記チルトアームの基端部に水平方向に沿う支持軸により回転自在に支持される第2シーブを有する、
請求項1に記載のチルト装置。
【請求項3】
前記索条の先端部を前記チルトアームに対して移動自在に支持すると共に前記索条の先端部の弛み量を吸収する索条弛み量吸収装置を有する、
請求項1または請求項2に記載のチルト装置。
【請求項4】
前記索条弛み量吸収装置は、前記索条の先端部を前記チルトアームの先端部側に向けて付勢する付勢部材と、前記索条の先端部が前記付勢部材に抗して前記支持アーム側に移動するときの位置を規定するストッパとを有する、
請求項3に記載のチルト装置。
【請求項5】
前記チルトアームは、鉛直方向の上方側が開口するU字断面形状をなし、内部に前記支持アームが配置される、
請求項1に記載のチルト装置。
【請求項6】
前記支持アームおよび前記チルトアームは、原子炉格納容器のペネトレーションを通過可能である、
請求項1に記載のチルト装置。
【請求項7】
前記支持アームは、前記ペネトレーションの内面に対して移動自在に支持される、
請求項6に記載のチルト装置。
【請求項8】
前記チルトアームは、前記原子炉格納容器の要部に押圧させて振動を抑制する押圧部が設けられる、
請求項6に記載のチルト装置。
【請求項9】
原子炉格納容器の外部からペネトレーションを通して内部の被処理物にアクセスするアクセス装置であって、
原子炉格納容器の外部で水平方向に沿って移動可能なアライメント装置と、
前記アライメント装置に支持されると共に複数のアームが長手方向に沿って互いに移動自在に連結されるテレスコピック装置と、
前記テレスコピック装置の先端部に連結される請求項1に記載のチルト装置と、
を備えるアクセス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性物質などの被処理物を処理するための作業機器を処理エリアまで移動するチルト装置、チルト装置を備えるアクセス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電プラントにて、原子炉格納容器内の炉心燃料が周囲の構造物と一緒に溶融して固化すると、放射性廃棄物としての燃料デブリが発生する。そのため、燃料デブリなどの放射性廃棄物を原子炉格納容器から外部に取り出して処理する必要がある。
【0003】
放射性廃棄物を回収する技術として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されたチルト装置は、支持アームとチルトアームとを回動自在に連結し、中間部が支持アームに支持された索状の先端部をチルトアームに連結し、索条の基端部を長手方向に移動することでチルトアームの角度を変更可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-012912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
索状は、基端部がチルト駆動装置に連結され、中間部が支持アームの先端部に設けられたシーブに案内された後に先端部がチルトアームに連結される。この場合、チルトアームおよびチルトアーム先端部に設置するマニピュレータなどの自重が、索状を介してシーブに作用することから、索状およびシーブの強度・剛性向上によりチルト装置の信頼性を向上させたいという要望がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、信頼性の向上を図るチルト装置およびアクセス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示のチルト装置は、支持アームと、前記支持アームの先端部に水平方向に沿う連結軸により基端部が回動自在に連結されるチルトアームと、前記支持アームから前記チルトアームに向けて配置されて先端部が前記チルトアームに連結される索条と、前記支持アームに設けられて基端部が連結される前記索条を長手方向に移動可能な索状駆動装置と、前記支持アームの先端部に水平方向に沿う支持軸により回転自在に支持されて前記索条を水平方向から鉛直方向の下方へ案内する第1シーブと、前記チルトアームの基端部に配置されて前記索条を鉛直方向から水平方向へ案内するガイド部材と、を備える。
【0008】
本開示のアクセス装置は、原子炉格納容器の外部からペネトレーションを通して内部の被処理物にアクセスするアクセス装置であって、原子炉格納容器の外部で水平方向に沿って移動可能なアライメント装置と、前記アライメント装置に支持されると共に複数のアームが長手方向に沿って互いに移動自在に連結されるテレスコ(登録商標)ピック装置と、前記テレスコピック装置の先端部に連結されるチルト装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のチルト装置およびアクセス装置によれば、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のアクセス装置を表す概略図である。
図2図2は、アクセス装置における伸長状態を表す側面図である。
図3図3は、アクセス装置における伸長状態を表す平面図である。
図4図4は、アライメント装置を表す側面図である。
図5図5は、アライメント装置を表す平面図である。
図6図6は、アライメント装置を表す正面図である。
図7図7は、テレスコピック装置の基端部側を表す側面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII断面図である。
図9図9は、図7のIX-IX断面図である。
図10図10は、テレスコピック装置の先端部側およびチルト装置を表す側面図である。
図11図11は、テレスコピック装置の先端部側およびチルト装置を表す平面図である。
図12図12は、図10のXII-XII断面図である。
図13図13は、図10のXIII-XIII断面図である。
図14図14は、図10のXIV-XIV断面図である。
図15図15は、索条弛み量吸収装置を表す概略図である。
図16図16は、チルト駆動装置の作動を表す概略図である。
図17図17は、放射性廃棄物の回収作業を表すアクセス装置の概略図である。
図18図18は、沸騰水型原子炉を表す概略図である。
図19図19は、沸騰水型原子炉を表す水平概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<沸騰水型原子炉>
本実施形態で適用する原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、軽水を炉心で沸騰させて蒸気を発生させる沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)である。図18は、沸騰水型原子炉を表す概略図、図19は、沸騰水型原子炉を表す水平概略図である。
【0013】
図18および図19に示すように、沸騰水型原子炉100は、原子炉格納容器101内に原子炉102が格納されて構成される。原子炉格納容器101は、原子炉建屋103内に設置され、上端部に上蓋104が取付けられることで密封される。原子炉格納容器101は、内部に形成されたドライウェル105と、冷却水が充填された圧力抑制プールが内部に形成される複数の圧力抑制室106とを有する。ドライウェル105は、ベント通路107を介して圧力抑制室106に連結され、ベント通路107の先端部が圧力抑制プールの冷却水中に浸漬される。
【0014】
原子炉建屋103は、原子炉格納容器101を支持し、上蓋104の上方に複数に分割されて放射線遮へい体として機能する複数のシールドプラグ108が配置され、複数のシールドプラグ108により原子炉格納容器101が密閉保持される。
【0015】
原子炉102は、上蓋109が取付けられて構成される原子炉容器110、核燃料物質を含む複数の燃料集合体が装荷された炉心111、気水分離器112、蒸気乾燥器113などにより構成される。この場合、炉心111、気水分離器112、蒸気乾燥器113は、原子炉容器110内に配置される。原子炉容器110は、内部に炉心シュラウド114が配置され、炉心111を取り囲んでいる。炉心111は、内部に複数の燃料集合体が装荷され、この各燃料集合体は、下端部が炉心支持板115により支持され、上端部が上部格子板116によって保持される。気水分離器112は、上部格子板116よりも上方に配置され、蒸気乾燥器113が気水分離器112の上方に配置される。
【0016】
複数の制御棒117は、下方から炉心111に挿入されるように配置される。複数の制御棒117は、制御棒案内管(図示略)内に配置され、上下方向に移動自在となり、炉心111の内部に配置されている燃料集合体間に対して出し入れされて原子炉出力が制御される。制御棒駆動機構118は、原子炉容器110の下鏡に取付けられており、各制御棒案内管内の制御棒117に連結されている。
【0017】
原子炉容器110は、炉心構造物として、前述した炉心111だけでなく、気水分離器112、蒸気乾燥器113、炉心シュラウド114、炉心支持板115、上部格子板116、制御棒117などが内部に配置される。
【0018】
また、原子炉容器110は、原子炉格納容器101内の底部に設けられたコンクリートマット119上に設けられた筒状のペデスタル120上に据付けられる。そして、筒状のγ線遮蔽体121が、ペデスタル120の上端に設置され、原子炉容器110の外側を取り囲んでいる。
【0019】
ところで、原子力発電プラントにて、原子炉容器110の内部の炉心111などが溶融すると、溶融した燃料など溶融物が原子炉容器110の底部に堆積したり、原子炉容器110も溶融してコンクリートマット119に落下したりする。この場合、原子炉格納容器101は、内部に冷却水が供給されることで冷却され、ペデスタル120内に冷却水が貯留されることで溶融物が冷却されて固化する。固化した溶融物は、放射性廃棄物Mとして調査や回収の対象となる。
【0020】
放射性廃棄物の処理装置130は、原子炉格納容器101の内部にある放射性廃棄物(デブリ)Mの調査や回収などを行うものである。原子炉建屋103は、中央部に原子炉102(原子炉容器110)を支持する原子炉格納容器101が配置され、原子炉格納容器101の外側に部屋131が設けられる。部屋131は、原子炉102の正常運転時には、作業者が被ばくすることなく安全に立ち入ることができる空間である。部屋131は、コンクリート製の壁部132により区画される。部屋131は、コンクリート構造壁を貫通して原子炉格納容器101内に連通する作業孔134が設けられる。
【0021】
放射性廃棄物の処理装置130は、原子炉建屋103における部屋131に設置される。放射性廃棄物の処理装置130は、エンクロージャ20を有する。エンクロージャ20は、原子炉格納容器101の作業孔(ペネトレーション)134に連通管135を介して連結される。
【0022】
<アクセス装置の構成>
本実施形態のアクセス装置10は、原子炉格納容器101の外部からペネトレーションとしての作業孔134を通して内部の被処理物としての放射性廃棄物Mにアクセスするものである。アクセス装置10は、放射性廃棄物の処理装置130を構成する一部である。
【0023】
図1は、本実施形態のアクセス装置を表す概略図である。
【0024】
アクセス装置10は、アライメント装置11と、テレスコピック装置12と、チルト装置13とを備える。チルト装置13は、先端部に多軸マニピュレータ14を介して工具15を装着可能である。ここで、作業機器は、多軸マニピュレータ14と工具15である。
【0025】
アクセス装置10は、エンクロージャ20の内部に配置される。エンクロージャ20は、原子炉格納容器101の外側の部屋131の床面Gに設置される。エンクロージャ20は、外部空間である部屋131と隔離された密閉空間を形成するものである。作業者は、エンクロージャ20の外部から遠隔操作、または、マニピュレータを用いて内部に配置された各種の機器を操作して作業を行うことができる。エンクロージャ20は、連通管135を介して作業孔134に連通する。この場合、エンクロージャ20と連通管135との間、または、連通管135に開閉扉を設けることが好ましい。
【0026】
アライメント装置11は、エンクロージャ20の内部で水平方向に沿って移動可能である。アライメント装置11は、レール部21と、牽引部22と、調整機構23とを有する。
【0027】
レール部21は、エンクロージャ20の内部の床面Gに敷設される。レール部21は、連通管135および作業孔134に平行で、且つ、平面視で連通管135および作業孔134と一直線状をなすように配置される。牽引部22は、レール部21に移動自在に支持される。牽引部22は、テレスコピック装置12の基端部が連結される。牽引部22は、レール部21上を移動することで、テレスコピック装置12を連通管135に接近する方向と連通管135から離間する方向に移動することができる。調整機構23は、牽引部22に対してテレスコピック装置12の基端部を鉛直方向および牽引部22の移動方向に直交する水平方向(幅方向)に位置調整可能である。
【0028】
テレスコピック装置12は、アライメント装置11に支持される。テレスコピック装置12は、アライメント装置11によりレール部21の長手方向に移動可能である。テレスコピック装置12は、複数(本実施形態では、3本)のアーム24,25,26が長手方向に沿って互いに移動自在に連結される。但し、のアームの本数は、3本に限らず、複数本であればよい。基端アーム24は、基端部がアライメント装置11に連結される。中間アーム25は、基端アーム24に移動自在に支持される。先端アーム26は、中間アーム25に移動自在に支持される。アーム24,25,26は、鉛直方向の上方側または下方側が開口するU字断面形状をなし、互いに板厚方向に重なり合って配置される。
【0029】
チルト装置13は、テレスコピック装置12の先端部に連結される。チルト装置13は、チルトアーム27を有する。チルトアーム27は、基端部が先端アーム26の先端部に上下に回動自在に連結される。チルトアーム27は、先端アーム26の水平方向に対する鉛直方向の角度を変更可能である。すなわち、チルトアーム27は、基端部が先端アーム26に回動自在に支持されており、先端部が自重により下降することで、角度を変更可能である。
【0030】
チルト装置13は、先端部に多軸マニピュレータ14が連結される。多軸マニピュレータ14は、例えば、7軸駆動であるが、この構成に限定されない。多軸マニピュレータ14は、先端部に工具15を装着可能である。工具15は、例えば、切削工具、研削工具、切断工具などであるが、この構成に限定されない。
【0031】
<アクセス装置の作動>
図2は、アクセス装置における伸長状態を表す側面図、図3は、アクセス装置における伸長状態を表す平面図である。
【0032】
図1から図3に示すように、アクセス装置10は、アライメント装置11を作動することで、テレスコピック装置12およびチルト装置13を介して多軸マニピュレータ14および工具15を、連通管135および作業孔134を通して原子炉格納容器101の内部に移動することができる。
【0033】
まず、屈曲状態にある多軸マニピュレータ14を作動させることで、多軸マニピュレータ14および工具15を連通管135および作業孔134に挿入する。次に、牽引部22をレール部21に沿って移動することで、テレスコピック装置12およびチルト装置13を連通管135および作業孔134に挿入する。
【0034】
続いて、テレスコピック装置12にて、基端アーム24に対して中間アーム25を移動すると共に、中間アーム25に対して先端アーム26を移動することで、チルト装置13を介して多軸マニピュレータ14および工具15を原子炉格納容器101の内部に移動する。そして、チルト装置13にて、先端アーム26に対してチルトアーム27をチルトさせることで、多軸マニピュレータ14および工具15を下降する。その後、多軸マニピュレータ14を作動して工具15を所定の位置に移動し、工具15による各種の加工を実施する。
【0035】
<アライメント装置>
図4は、アライメント装置を表す側面図、図5は、アライメント装置を表す平面図、図6は、アライメント装置を表す正面図である。
【0036】
図4から図6に示すように、アライメント装置11は、前述したように、レール部21と、牽引部22と、調整機構23とを有する。
【0037】
レール部21は、一対の軌道21aを有する。牽引部22は、下部に一対の支持部22aが固定され、一対の支持部22aがレール部21における一対の軌道21aに嵌合し、移動自在に支持される。牽引部22は、幅方向の一方側に駆動部31が設けられる。駆動部31は、出力軸に駆動歯車32が固定される。駆動部31は、鉛直方向に沿う回転軸心を中心に駆動歯車32を駆動回転可能である。レール部21は、幅方向の一方側にレール部21の長手方向に沿ってラック33が固定される。ラック33は、レール部21の長手方向のほぼ全域に設けられる。駆動部31は、駆動歯車32がレール部21のラック33に噛み合う。
【0038】
そのため、駆動部31を駆動し、駆動歯車32が正回転すると、駆動歯車32がラック33に噛み合った状態で回転し、駆動部31および駆動歯車32が搭載された牽引部22がレール部21に沿って前進する。一方、駆動部31を駆動し、駆動歯車32が逆回転すると、駆動歯車32がラック33に噛み合った状態で回転し、駆動部31および駆動歯車32が搭載された牽引部22がレール部21に沿って後退する。
【0039】
調整機構23は、第1調整部23aと、第2調整部23bとを有する。第1調整部23aは、テレスコピック装置12の基端部の位置を鉛直方向に沿って調整可能である。第2調整部23bは、テレスコピック装置12の基端部の位置を水平方向(幅方向)に沿って調整可能である。
【0040】
牽引部22は、前部にブラケット34が固定され、ブラケット34に一対の鉛直レール34aが鉛直方向に沿って固定される。鉛直移動部35は、ブラケット34の一対の鉛直レール34aに移動自在に支持される。また、鉛直移動部35は、前部に一対の水平レール35aが水平方向(幅方向)に沿って固定される。水平移動部36は、一対の支持部36aが固定され、一対の支持部36aが鉛直移動部35における一対の水平レール35aに嵌合し、移動自在に支持される。牽引部22は、上部に駆動部37が固定される。駆動部37は、鉛直方向に沿う回転軸心を中心にねじ軸38を駆動回転可能である。ねじ軸38は、鉛直移動部35に螺合する。牽引部22は、水平移動部36に連結部39が固定される。テレスコピック装置12は、基端アーム24の基端部が幅方向に沿う連結軸40により回動自在に連結される。
【0041】
そのため、駆動部37を駆動し、ねじ軸38が正回転すると、ねじ軸38が螺合する鉛直移動部35が上昇し、水平移動部36を介して基端アーム24の基端部が上昇する。一方、駆動部37を駆動し、ねじ軸38が逆回転すると、ねじ軸38が螺合する鉛直移動部35が下降し、水平移動部36を介して基端アーム24の基端部が下降する。このとき、水平移動部36は、基端アーム24の基端部に追従するように水平方向に移動する。
【0042】
また、レール部21は、先端部にサポート部材41が設けられる。レール部21は、先端部の上部にブラケット42が固定され、ブラケット42の上部に一対の水平レール42aが水平方向(幅方向)に沿って固定される。水平移動部43は、一対の支持部43aが固定され、一対の支持部43aがブラケット42における一対の水平レール42aに嵌合し、移動自在に支持される。水平移動部43は、上部に幅方向に沿うナット44が固定される。駆動部45は、水平方向(幅方向)に沿う回転軸心を中心にねじ軸46を駆動回転可能である。駆動部45は、ねじ軸46がナット44に螺合する。
【0043】
そのため、駆動部31を駆動することで、牽引部22がレール部21に沿って前進または後退するとき、テレスコピック装置12の基端アーム24は、下面がサポート部材41に支持される。このとき、駆動部45が駆動し、ねじ軸46を回転することで、ナット44を介して水平移動部43を幅方向に移動し、基端アーム24に対する幅方向の支持位置を調整する。
【0044】
<テレスコピック装置>
図7は、テレスコピック装置の基端部側を表す側面図、図8は、図7のVIII-VIII断面図、図9は、図7のIX-IX断面図、図10は、テレスコピック装置の先端部側およびチルト装置を表す側面図、図11は、テレスコピック装置の先端部側およびチルト装置を表す平面図、図12は、図10のXII-XII断面図、図13は、図10のXIII-XIII断面図、図14は、図10のXIV-XIV断面図である。なお、図8は、テレスコピック装置12が作業孔134で収縮した状態の断面を表し、図9は、テレスコピック装置12が原子炉格納容器101で伸長した状態の断面を表す。
【0045】
図7から図12に示すように、テレスコピック装置12は、基端アーム24と、中間アーム25と、先端アーム26とを有する。基端アーム24は、基端部がアライメント装置11に連結され、先端アーム26は、先端部にチルト装置13のチルトアーム27の基端部が連結される。
【0046】
図8に示すように、作業孔134は、円形孔であり、下部の内壁面に半円形状をなす支持板51が固定される。支持板51は、左右に支持台51aが固定される。基端アーム24は、所定の長さを有し、矩形の中空断面形状をなす。基端アーム24は、左右の下部に支持台24aがそれぞれ固定され、左右の支持台24aは、支持ローラ24bが回転自在に装着される。基端アーム24は、左右の支持台24aに装着された左右の支持ローラ24bが作業孔134における支持板51の内壁面に接触して転動自在である。すなわち、基端アーム24は、左右の支持ローラ24bにより作業孔134の内部で移動自在に支持される。
【0047】
そのため、牽引部22がレール部21に沿って前進または後退し、基端アーム24を移動させるとき、基端アーム24は、先端部が作業孔134の内壁面により支持されることで、常時安定して移動することができる。
【0048】
図7から図9に示すように、基端アーム24は、上部に一対の軌道24cが固定される。中間アーム25は、所定の長さを有し、鉛直方向の上方が開口したU字断面形状をなす。中間アーム25は、基端アーム24の上部の内側に配置される。中間アーム25は、下部に一対の支持部25aが固定され、一対の支持部25aが基端アーム24の軌道24cに嵌合し、移動自在に支持される。基端アーム24は、長手方向の先端部側に駆動部52が設けられる。駆動部52は、基端アーム24に固定されるモータ52aを有する。モータ52aは、駆動傘歯車52bを基端アーム24の長手方向に沿う回転軸心を中心に駆動回転可能である。従動傘歯車52cと駆動歯車52dは、基端アーム24の幅方向に沿う回転軸52eにより基端アーム24に回転自在に支持される。駆動傘歯車52bは、従動傘歯車52cに噛み合う。中間アーム25は、下部に中間アーム25の長手方向に沿ってラック25bが固定される。ラック25bは、中間アーム25の長手方向のほぼ全域に設けられる。駆動歯車52dは、基端アーム24に支持された中間歯車52fを介して中間アーム25のラック25bに噛み合う。
【0049】
そのため、モータ52aを駆動し、駆動傘歯車52bが回転すると、回転力が従動傘歯車52cから回転軸52eを介して駆動歯車52dに伝達され、さらに、中間歯車52fに伝達される。このとき、基端アーム24に設けられた中間歯車52fは、ラック25bに噛み合った状態で回転し、ラック25bを介して中間アーム25を長手方向に沿って押し出して移動する。
【0050】
図10および図12に示すように、中間アーム25は、底部に一対の軌道25cが固定される。先端アーム26は、所定の長さを有し、鉛直方向の下方が開口したU字断面形状をなす。先端アーム26は、中間アーム25の内側に配置される。先端アーム26は、長手方向における所定の位置に下端部同士を連結する連結部材53が固定される。先端アーム26は、連結部材53の下部に一対の支持部26aが固定され、一対の支持部26aが中間アーム25の軌道25cに嵌合し、移動自在に支持される。先端アーム26は、長手方向の基端部に駆動部54が設けられる。駆動部54は、駆動部52とほぼ同様の構成をなす。駆動部54は、先端アーム26に固定されるモータ54aを有する。モータ54aは、駆動傘歯車54bを先端アーム26の長手方向に沿う回転軸心を中心に駆動回転可能である。従動傘歯車54cと駆動歯車54dは、先端アーム26の幅方向に沿う回転軸54eにより先端アーム26に回転自在に支持される。駆動傘歯車54bは、従動傘歯車54cに噛み合う。中間アーム25は、上部に中間アーム25の長手方向に沿ってラック25dが固定される。ラック25dは、中間アーム25の長手方向のほぼ全域に設けられる。駆動歯車54dは、先端アーム26に支持された中間歯車54fを介して中間アーム25のラック25dに噛み合う。
【0051】
そのため、モータ54aを駆動し、駆動傘歯車54bが回転すると、回転力が従動傘歯車54cから回転軸54eを介して駆動歯車54dに伝達され、さらに、中間歯車54fに伝達される。このとき、先端アーム26に設けられた中間歯車54fは、ラック25dに噛み合った状態で回転することで、中間アーム25に対して先端アーム26を長手方向に沿って押し出して移動する。
【0052】
<チルト装置>
図10および図11に示すように、チルト装置13は、テレスコピック装置12の先端部に連結される。チルト装置13は、チルトアーム27を有する。チルトアーム27は、基端部が先端アーム26の先端部に回動自在に連結される。チルト装置13は、テレスコピック装置12の先端アーム26に対して、チルトアーム27を傾倒可能である。
【0053】
チルト装置13は、先端アーム(支持アーム)26と、チルトアーム27と、連結軸61と、ワイヤロープ(索条)62と、チルト駆動装置(索状駆動装置)63とを備える。
【0054】
図10および図11図13および図14に示すように、チルトアーム27は、所定の長さを有し、鉛直方向の上方が開口したU字断面形状をなす。先端アーム26の外側に配置される。チルトアーム27は、基端部の内側に一対の連結片27aが連結される。先端アーム26とチルトアーム27とは、長手方向の領域で重なるように配置される。先端アーム26は、先端部の両側部がチルトアーム27の両側部と一対の連結片27aとの間に位置する。連結軸61は、先端アーム26およびチルトアーム27の幅方向に沿い、先端アーム26のブッシュ26bとチルトアーム27の連結片27aを貫通する。そのため、チルトアーム27は、基端部が先端アーム26の先端部側に回動自在に支持される。この場合、連結軸61を軸方向に2分割し、先端アーム26の先端部に2つの連結軸61によりチルトアーム27の基端部を回動自在に支持してもよい。
【0055】
先端アーム26は、先端部の上部に第1シーブ64が設けられる。第1シーブ64は、支持軸71より先端アーム26の先端部側に配置される。第1シーブ64は、左右の第1シーブ64A,64Bを有する。左右の第1シーブ64A,64Bは、先端アーム26の幅方向に並んで配置され、先端アーム26の幅方向に沿う支持軸71により先端アーム26に回転自在に支持される。第1シーブ64は、ワイヤロープ62を案内する。なお、索条は、ワイヤロープ62に限定されるものではない。索条を、例えば、チェーンにより構成し、第1シーブ64に代えてスプロケットを設けてもよい。
【0056】
チルト駆動装置63は、先端アーム26に設けられ、ワイヤロープ62を長手方向に移動することで、チルトアーム27の角度を変更可能である。チルト駆動装置63は、左右のジャッキ63A,63Bを有する。左右のジャッキ63A,63Bは、同様の構成であり、先端アーム26の幅方向に並んで配置される。左右のジャッキ63A,63Bは、先端部が先端アーム26の両側にブラケット72により支持される。左右のジャッキ63A,63Bは、駆動ロッド73A,73Bを軸方向(左右のジャッキ63A,63Bの長手方向)に沿って移動可能である。ワイヤロープ62は、左右のワイヤロープ62A,62Bを有する。左右のワイヤロープ62A,62Bは、長手方向の中間部が左右の第1シーブ64A,64Bにより移動自在に支持されると共に、先端アーム26の幅方向の移動が阻止される。左右のワイヤロープ62A,62Bは、基端部が駆動ロッド73A,73Bに連結され、先端部がチルトアーム27側に延出される。
【0057】
なお、チルト駆動装置63は、図示しないが、モータと、ねじ軸と、移動体とを有する。モータは、出力軸がねじ軸に連結され、ねじ軸に移動体が螺合し、移動体に駆動ロッド73A(73B)が連結される。モータが駆動すると、ねじ軸が回転し、ねじ軸に螺合する移動体が軸方向に移動することで、移動体に連結された駆動ロッド73A(73B)を移動し、ワイヤロープ62A(62B)が軸方向に移動する。
【0058】
チルトアーム27は、基端部の下部に第2シーブ(ガイド部材)65が設けられる。第2シーブ65は、支持軸66よりチルトアーム27の基端部側に配置される。第2シーブ65は、左右の第2シーブ65A,65Bを有する。左右の第2シーブ65A,65Bは、チルトアーム27の幅方向に並んで配置され、チルトアーム27の幅方向に沿う支持軸66によりチルトアーム27に回転自在に支持される。第2シーブ65は、ワイヤロープ62を案内する。なお、第2シーブ65は、ワイヤロープ62を案内することができるものであればよく、回転自在なシーブに限定されるものではない。例えば、ワイヤロープ62を案内する湾曲するガイド部を有する回転しないガイド部材であってもよい。
【0059】
ワイヤロープ62A,62Bは、チルト駆動装置63からチルトアーム27側に水平方向に延出され、第1シーブ64A,64Bに掛け回され、水平方向から鉛直方向の下方へ案内される。鉛直方向の下方へ案内されたワイヤロープ62A,62Bは、第2シーブ65A,65Bに掛け回され、鉛直方向の下方から水平方向の前方へ案内される。この場合、第1シーブ64A,64Bから第2シーブ65A,65Bに向かうワイヤロープ62A,62Bは、鉛直方向に沿って配置されることが好ましいが、鉛直方向に限定されるものではない。但し、第1シーブ64A,64Bと第2シーブ65A,65Bとの間で、ワイヤロープ62A,62Bを鉛直方向に近い方向に沿って配置することで、第1シーブ64A,64Bに作用する荷重を低減することができる。
【0060】
本実施形態では、ワイヤロープ62A,62Bを第1シーブ64A,64Bから第2シーブ65A,65Bを介してチルトアーム27の先端部側に延出する。すると、第1シーブ64A,64Bの下方側にチルトアーム27に対してワイヤロープ62A,62Bを固定する係止部を設ける必要がなくなる。すると、ここにスペースを確保することができ、第1シーブ64A,64Bの外径を大きくすることができ、案内するワイヤロープ62A,62Bの曲率を大きくすることができる。そして、ワイヤロープ62A,62Bの曲率を大きくすることで、ワイヤロープ62A,62Bの外径も大きくすることができる。
【0061】
図15は、索条弛み量吸収装置を表す概略図である。
【0062】
チルトアーム27は、索条弛み量吸収装置80が設けられる。索条弛み量吸収装置80は、ワイヤロープ62の先端部をチルトアーム27に対して移動自在に支持すると共に、ワイヤロープ62の先端部の弛み量を吸収する。なお、索条弛み量吸収装置80は、左右のワイヤロープ62A,62Bに対応してそれぞれ設けられており、同様の構成をなすことから一方の索条弛み量吸収装置80についてのみ説明する。
【0063】
索条弛み量吸収装置80は、ガイドプレート(ストッパ)81と、スライド部材82と、定荷重ばね(付勢部材)83とを有する。
【0064】
ガイドプレート81は、チルトアーム27の内部に幅方向に間隔を空けて2枚設けられる。ガイドプレート81は、チルトフレーム27長手方向に沿うスリット81aが形成される。スライド部材82は、先端部に水平方向に沿うガイドピン82aが回動自在に連結される。スライド部材82は、2枚のガイドプレート81の間に配置され、ガイドピン82aが両側のガイドプレート81のスリット81aに移動自在に嵌合する。スライド部材82は、基端部にワイヤロープ62(62A,62B)の先端部が連結される。すなわち、ワイヤロープ62(62A,62B)は、第1シーブ64A,64Bおよび第2シーブ65A,65Bに案内された後にスライド部材82に連結される。
【0065】
定荷重ばね83は、チルトアーム27の内部でガイドプレート81の先端部に装着される。定荷重ばね83は、2枚のガイドプレート81の間に配置され、リール部83aが支持軸84により回転自在に支持される。定荷重ばね83は、リール部83aから板ばね部83bがチルトアーム27の基端部側に引き出され。スライド部材82のガイドピン82aに連結される。また、ガイドプレート81は、ガイドローラ85が回転自在に設けられ、定荷重ばね83のリール部83aとスライド部材82のガイドピン82aとの間で、板ばね部83bの上面に接触して支持する。
【0066】
定荷重ばね83は、板ばね部83bがリール部83aに巻き取れられ側に付勢力が作用する。すなわち、定荷重ばね83は、スライド部材82を介してワイヤロープ62(62A,62B)をチルトアーム27の先端部側に移動させる方向に付勢する。チルト駆動装置63(63A,63B)は、定荷重ばね83の付勢力よりも大きい荷重でワイヤロープ62(62A,62B)を牽引していることから、スライド部材82は、ガイドピン82aがガイドプレート81のスリット81aにおける第2シーブ65(65A,65B)側に当接した位置に位置決めされる。
【0067】
そのため、図10に示すように、チルト駆動装置63としての左右のジャッキ63A,63Bを同期して駆動し、駆動ロッド73A,73Bを送り出すと、ワイヤロープ62A,62Bが送り出され、ワイヤロープ62A,62Bの先端部に連結されたチルトアーム27が連結軸61を中心に下方に回動する。このとき、ワイヤロープ62A,62Bは、第1シーブ64A,64Bおよび第2シーブ65A,65Bが回転することで案内される。また、チルトアーム27の荷重が定荷重ばね83の付勢力よりも大きいため、スライド部材82は、ガイドピン82aがガイドプレート81のスリット81aにおける第2シーブ65(65A,65B)側に当接した位置に維持される。
【0068】
一方、チルト駆動装置63としての左右のジャッキ63A,63Bを同期して駆動し、駆動ロッド73A,73Bを引き込むと、ワイヤロープ62A,62Bが牽引され、ワイヤロープ62A,62Bの先端部に連結されたチルトアーム27が連結軸61を中心に上方に回動する。
【0069】
このとき、左右のジャッキ63A,63Bのいずれか一方に作動不良が発生すると、例えば、故障したジャッキ63Aが駆動ロッド73Aを引き込むことができず、ワイヤロープ62Aを牽引することが困難となる。しかし、故障していないジャッキ63Bが駆動ロッド73Bを引き込むため、チルトアーム27が連結軸61を中心に上方に回動させることができる。ここで、故障したジャッキ63Aは、ワイヤロープ62A,62Bを牽引することができないことから、特に、第2シーブ65Aより先端部側のワイヤロープ62Aに弛みが生じる。しかし、ここで、索条弛み量吸収装置80が作動し、弛んだワイヤロープ62Aの先端部の弛み量が吸収される。
【0070】
すなわち、故障していないジャッキ63Bは、ワイヤロープ62Bを牽引し、チルトアーム27を上方に回動するため、故障して作動しないジャッキ63B側のワイヤロープ62Aにたるみが生じる。すると、故障したジャッキ63B側のスライド部材82は、ジャッキ63Bからの牽引力がなくなり、定荷重ばね83の付勢力によりチルトアーム27の先端部側に移動する。すると、第2シーブ65Aとスライド部材82との距離が長くなり、この間で弛んでいたワイヤロープ62Aに張力が作用し、弛みが吸収される。
【0071】
本実施形態のアクセス装置10は、エンクロージャ20からテレスコピック装置12、チルト装置13、多軸マニピュレータ14まで、電力ケーブルや制御ケーブルなどが延出される。この場合、エンクロージャ20からテレスコピック装置12を介してチルト装置13のチルト駆動装置63までは、先端アーム26の内側の空間部に電力ケーブルや制御ケーブルなどを配置すればよい。また、エンクロージャ20からテレスコピック装置12およびチルト装置13を介して多軸マニピュレータ14までは、中間アーム25と先端アーム26との間の空間部に電力ケーブルや制御ケーブルなどを配置すればよい。この場合、チルト駆動装置63が上述した構成であることから、小型化が可能となり、電力ケーブルや制御ケーブルなどの配置スペースを確保できる。
【0072】
<放射性廃棄物の回収作業>
図17は、放射性廃棄物の回収作業を表すアクセス装置の概略図である。
【0073】
図17に示すように、原子炉格納容器101は、壁部に作業孔134が設けられ、作業孔134は、連通管135を介してエンクロージャ20(図1参照)に連結される。ペデスタル120は、壁部に作業孔141が形成される。原子炉格納容器101の作業孔134(連通管135)とペデスタル120の作業孔141との間にスロープ142が設置される。但し、本実施形態の放射性廃棄物の処理装置130を適用した場合、スロープ142がなくてもよい。また、原子炉102におけるドライウェル105のコンクリートマット119上に放射性廃棄物Mが存在する。このような状態にて、アクセス装置10を用いて多軸マニピュレータ14および工具15を連通管135、作業孔134,141からドライウェル105に延出し、放射性廃棄物Mの回収作業を行う。
【0074】
図1に示すように、アクセス装置10は、エンクロージャ20の内部に配置され、作業者は、エンクロージャ20の外部から遠隔でアクセス装置10を操作する。まず、屈曲状態にある多軸マニピュレータ14を作動させ、多軸マニピュレータ14および工具15を連通管135および作業孔134に挿入する。次に、牽引部22をレール部21に沿って移動することで、テレスコピック装置12およびチルト装置13を連通管135および作業孔134に挿入する。
【0075】
図2に示すように、続いて、テレスコピック装置12にて、基端アーム24に対して中間アーム25を前進させると共に、中間アーム25に対して先端アーム26を前進させ、チルト装置13を介して多軸マニピュレータ14および工具15を原子炉格納容器101の内部に移動する。図16に示すように、アクセス装置10は、テレスコピック装置12、チルト装置13、多軸マニピュレータ14に照明やカメラが装着されており、作業者は、カメラが撮影した映像を見ながら、チルト装置13や多軸マニピュレータ14を操作する。
【0076】
多軸マニピュレータ14および工具15が原子炉格納容器101の内部に移動すると、チルト装置13にて、先端アーム26に対してチルトアーム27を傾倒して多軸マニピュレータ14および工具15を下降させる。そして、テレスコピック装置12やチルト装置13を作動させることで、多軸マニピュレータ14および工具15を作業孔141を通過させる。その後、多軸マニピュレータ14を作動して工具15を所定の位置に移動し、工具15による放射性廃棄物Mに対する各種の加工を実施する。
【0077】
このとき、図17に示すように、アクセス装置10を用いて多軸マニピュレータ14および工具15をドライウェル105に延出し、放射性廃棄物Mの回収作業を行う場合、チルト装置13が工具15からの加工反力を受けて振動するおそれがある。そこで、チルトアーム27は、ペデスタル120の作業孔141(原子炉格納容器101の要部)に押圧させて振動を抑制する押圧部91が設けられる。ここで、押圧部91は、弾性力を有する部材であるゴムパッドや樹脂部材であることが好ましいが、これらに限定されない。なお、押圧部91は、作業孔141に接触させる構成に限定されるものではない。例えば、チルトアーム27の先端や多軸マニピュレータ14などに設け、ペデスタル120の内部のプラットフォーム(図示略)に接触させるように構成してもよい。
【0078】
アクセス装置10を用いて工具15により放射性廃棄物Mの回収作業を行う場合、チルトアーム27の押圧部91をペデスタル120の作業孔141の内面などに押し付ける。すると、チルト装置13は、工具15からの加工反力が押圧部91を介してペデスタル120で受け止めることができ、振動が抑制される。
【0079】
[実施形態の作用効果]
第1の態様に係るチルト装置は、先端アーム(支持アーム)26と、先端アーム26の先端部に水平方向に沿う連結軸61により基端部が回動自在に連結されるチルトアーム27と、先端アーム26からチルトアーム27に向けて配置されて先端部がチルトアーム27に連結されるワイヤロープ(索条)62と、先端アーム26に設けられて基端部が連結されるワイヤロープ62を長手方向に移動可能なチルト駆動装置(索状駆動装置)63と、先端アーム26の先端部に水平方向に沿う支持軸71により回転自在に支持されてワイヤロープ62を水平方向から鉛直方向の下方へ案内する第1シーブ64と、チルトアーム27の基端部に配置されてワイヤロープ62を鉛直方向から水平方向へ案内する第2シーブ(ガイド部材)65とを備える。
【0080】
第1の態様に係るチルト装置によれば、一端部がチルト駆動装置63に連結されたワイヤロープ62の他端部を先端アーム26から第1シーブ64および第2シーブ65を介してチルトアーム27の基端部に延出する。そのため、第1シーブ64の下方側にワイヤロープ62の端部を固定する係止部を設ける必要がなくなり、この位置にスペースを確保することができる。すると、第1シーブ64の外径を大きくすることができ、案内するワイヤロープ62の曲率を大きくしたり、ワイヤロープ62の外径を大きくしたりすることができる。その結果、ワイヤロープ62や第1シーブ64の強度を向上することで装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0081】
第2の態様に係るチルト装置は、第1の態様に係るチルト装置であって、さらに、第2シーブ65をチルトアーム27の基端部に水平方向に沿う支持軸66により回転自在に支持している。これにより、第2シーブ65によるワイヤロープ62の作動性の向上を図ることができる。
【0082】
第3の態様に係るチルト装置は、第1の態様または第2の態様に係るチルト装置であって、さらに、ワイヤロープ62の先端部をチルトアーム27に対して移動自在に支持すると共にワイヤロープ62の先端部の弛み量を吸収する索条弛み量吸収装置80を有する。これにより、ワイヤロープ62の先端部で弛みが発生した場合、索条弛み量吸収装置80によりワイヤロープ62の先端部の弛み量を吸収することができる。特に、ワイヤロープ62が複数設けられていたとき、正常に作動しないワイヤロープ62の先端部の弛み量が吸収されることで、弛んだワイヤロープ62が周辺機器に絡まることが抑制され、適切な作動を確保することができる。
【0083】
第4の態様に係るチルト装置は、第3の態様に係るチルト装置であって、さらに、索条弛み量吸収装置80は、ワイヤロープ62の先端部をチルトアーム27の先端部側に向けて付勢する定荷重ばね(付勢部材)83と、ワイヤロープ62の先端部が定荷重ばね83に抗して先端アーム26側に移動するときの位置を規定するガイドプレート(ストッパ)81とを有する。これにより、索条弛み量吸収装置80は、必要な時だけ作動することとなり、構造の複雑化を抑制することができると共に、作動性の向上を図ることができる。
【0084】
第5の態様に係るチルト装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係るチルト装置であって、さらに、チルトアーム27は、鉛直方向の上方側が開口するU字断面形状をなし、内部に先端アーム26が配置される。これにより、先端アーム26に対してチルトアーム27が外側に配置されることとなり、チルトアーム27の構造の簡素化を図ることができる。
【0085】
第6の態様に係るチルト装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係るチルト装置であって、さらに、先端アーム26およびチルトアーム27を原子炉格納容器101の作業孔(ペネトレーション)134を通過可能とする。これにより、例えば、放射性廃棄物Mの回収装置に適用することができる。
【0086】
第7の態様に係るチルト装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係るチルト装置であって、さらに、基端アーム24は、原子炉格納容器101の作業孔(ペネトレーション)134の内面に対して移動自在に支持される。これにより、別途軌道を設けることなく、基端アーム24を容易に移動することができる。
【0087】
第8の態様に係るチルト装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係るチルト装置であって、さらに、チルトアーム27は、原子炉格納容器101の要部に押圧させて振動を抑制する押圧部91が設けられる。これにより、作業中におけるチルトアーム27の振動を効果的に抑制することができる。
【0088】
第9の態様に係るアクセス装置は、原子炉格納容器101の外部から作業孔(ペネトレーション)134を通して内部の放射性廃棄物(被処理物)Mにアクセスするアクセス装置10であって、原子炉格納容器101の外部で水平方向に沿って移動可能なアライメント装置11と、アライメント装置11に支持されると共に複数のアーム24,25,26が長手方向に沿って互いに移動自在に連結されるテレスコピック装置12と、テレスコピック装置12の先端部に連結される第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係るチルト装置13とを備える。
【0089】
第9の態様に係るアクセス装置によれば、アライメント装置11によりテレスコピック装置12およびチルト装置13を作業孔134から原子炉格納容器101に移動することができ、テレスコピック装置12によりチルト装置13を原子炉格納容器101の所望の位置に移動することができ、チルト装置13により多軸マニピュレータ14および工具15を下降することができ、作業性を向上することができる。また、チルト装置13にて、ワイヤロープ62や第1シーブ64の強度を向上することで装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0090】
なお、上述した実施形態では、チルト装置13を放射性廃棄物Mに対してアクセスするアクセス装置10に適用して説明したが、この構成に限定されるものではない。放射性廃棄物M以外の被処理物を処理する処理装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0091】
10 アクセス装置
11 アライメント装置
12 テレスコピック装置
13 チルト装置
14 多軸マニピュレータ
15 工具
20 エンクロージャ
21 レール部
22 牽引部
23 調整機構
23a 第1調整部
23b 第2調整部
24 基端アーム(支持アーム)
25 中間アーム(支持アーム)
26 先端アーム(支持アーム)
27 チルトアーム
31 駆動部
32 駆動歯車
33 ラック
34 ブラケット
35 鉛直移動部
36 水平移動部
37 駆動部
38 ねじ軸
39 連結部
40 連結軸
41 サポート部材
42 ブラケット
43 水平移動部
44 ナット
45 駆動部
46 ねじ軸
51 支持板
52 駆動部
53 連結部材
54 駆動部
61 連結軸
62,62A,62B ワイヤロープ(索条)
63 チルト駆動装置(索状駆動装置)
63A,63B ジャッキ
64,64A,64B 第1シーブ
65,65A,65B 第2シーブ
66 支持軸
71 支持軸
72 ブラケット
73A,73B 駆動ロッド
80 索条弛み量吸収装置
81 ガイドプレート(ストッパ)
82 スライド部材
83 定荷重ばね(付勢部材)
91 押圧部
100 沸騰水型原子炉
101 原子炉格納容器
102 原子炉
103 原子炉建屋
134 作業孔(ペネトレーション)
135 連通管
M 放射性廃棄物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19