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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014206
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】バラ物掻取用バケット
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/60 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B65G67/60 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116866
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】永山 佳誠
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
(72)【発明者】
【氏名】石野 泰造
【テーマコード(参考)】
3F077
【Fターム(参考)】
3F077AA04
3F077BA03
3F077BA06
3F077BB01
3F077BB06
3F077CA01
3F077DA03
3F077DB04
3F077GA10
(57)【要約】
【課題】錆の発生を防止してバラ物の付着を抑制し且つ軽量化をも図り得るバラ物掻取用バケットを提供する。
【解決手段】 掻取方向に沿った縦断面が後方へ凸となる円弧状の湾曲板部28Aと、湾曲板部28Aの掻取方向前端上部から前方へ張り出す天板部28Bと、湾曲板部28Aの掻取方向前端下部から前方へ張り出す底板部28Cと、湾曲板部28Aと天板部28Bと底板部28Cの左右両端を覆う側板部28Dとを備え、湾曲板部28Aと天板部28Bと底板部28Cと側板部28Dとが耐腐食性材料で形成され且つ掻き取られて流動するバラ物7により研磨される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ物を掻き取って移送するバラ物掻取用バケットにおいて、
掻取方向に沿った縦断面が後方へ凸となる円弧状の湾曲板部と、
該湾曲板部の掻取方向前端上部から前方へ張り出す天板部と、
前記湾曲板部の掻取方向前端下部から前方へ張り出す底板部と、
前記湾曲板部と天板部と底板部の左右両端を覆う側板部とを備え、
前記湾曲板部と天板部と底板部と側板部とが耐腐食性材料で形成され且つ掻き取られて流動するバラ物により研磨されるバラ物掻取用バケット。
【請求項2】
前記耐腐食性材料はステンレス鋼である請求項1記載のバラ物掻取用バケット。
【請求項3】
前記バラ物は石炭である請求項1又は2記載のバラ物掻取用バケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラ物掻取用バケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、港湾において船倉から石炭や鉄鉱石等のバラ物を陸揚げする際に用いられる連続式アンローダ、貯炭施設に山積みされたバラ物を払い出すリクレーマ、並びに貯炭施設にバラ物を積み付けるスタッカと前記リクレーマの両方の機能を併せ持つスタッカリクレーマには、バラ物を掻き取って運搬するバケットが設けられている。
【0003】
前記連続式アンローダは、例えば、図4に示す如き構成を有している。ここに示した連続式アンローダ100は、岸壁1に敷設されたレール2上を走行自在な走行フレーム3上に、傾動自在なブーム4を備えた旋回フレーム5を設け、ブーム4先端に、船倉6の内部のバラ物7を掻き取って船倉6の外部に搬出するバケットエレベータ8を吊り下げてなる構成を有している。ブーム4の内部には、バケットエレベータ8で掻き取ったバラ物7をブーム4の基端側へ搬送するブームコンベヤ9が配設されている。又、走行フレーム3には、ブームコンベヤ9からシュート11を介して送給されるバラ物7を走行フレーム3の外部に搬出する搬出コンベヤ10が配設されている。
【0004】
前記バケットエレベータ8は、図4及び図5に示す如く、ブーム4先端に上下方向へ延びる本体フレーム12を枢着して構成されている。該本体フレーム12の下端部には、端面を開放した外枠フレーム13に対し入れ子状となるよう内枠フレーム14を伸縮自在に配設してなる掻取部フレーム15が、昇降フレーム23を介し略水平に取り付けられている。掻取部フレーム15の外枠フレーム13の基端と内枠フレーム14の先端にはスプロケット16,17が設けられ、該スプロケット16,17と本体フレーム12上部に設けられたスプロケット18には、多数のバラ物7掻き取り用のバケット19を取り付けた無端状のチェーン20が掛け回されている。
【0005】
前記外枠フレーム13に対する内枠フレーム14の伸縮は、シリンダ21の伸縮作動によって行われるようになっている。又、内枠フレーム14の伸縮に伴いチェーン20の張力変化が生じることをなくすために、外枠フレーム13は、本体フレーム12に対しシリンダ22の伸縮作動により昇降自在な昇降フレーム23に連結されている。図5中、実線で示すようにシリンダ21が伸張して内枠フレーム14が外枠フレーム13に対して伸びるときには、シリンダ21の作動と連動してシリンダ22が伸張し昇降フレーム23を介して外枠フレーム13が本体フレーム12側に引き寄せられる形で上昇するようになっている。一方、図5中、仮想線で示すようにシリンダ21が収縮して内枠フレーム14が外枠フレーム13に対して縮むときには、シリンダ21の作動と連動してシリンダ22が収縮し昇降フレーム23を介して外枠フレーム13が本体フレーム12側から離される形で下降し、これによりチェーン20の張力が常に一定に保持されるようになっている。
【0006】
尚、図4中、24は旋回フレーム5の頂部に俯仰自在に設けられたバランシングレバーであり、該バランシングレバー24の先端部にバケットエレベータ8の本体フレーム12がトップフレーム25を介して取り付けられ、ブーム4とバランシングレバー24と旋回フレーム5とトップフレーム25とによって平行四辺形リンク機構が形成されている。トップフレーム25には、回転フィーダ27が内蔵されている。又、バランシングレバー24の後端部にはカウンタウェイト26が取り付けられている。
【0007】
そして、チェーン20が回転することにより、船倉6の内部のバラ物7は、バケットエレベータ8のバケット19によって掻き取られて上方へ移送され、そこで回転フィーダ27に落下してブームコンベヤ9上に移され、ブームコンベヤ9によってブーム4の先端側から基端側へ搬送され、シュート11を介して搬出コンベヤ10上に落下し、該搬出コンベヤ10により走行フレーム3の外部へ搬出されるようになっている。
【0008】
こうした連続式アンローダ100では、運転に伴い、バケット19内外の表面にバラ物7が付着し、堆積してしまう問題があり、前記バケット19におけるバラ物7の堆積量が多くなると、その重量のためにブーム4先端の荷重が大きくなり過ぎて荷役の続行が不可能になってしまう虞があった。又、前記バケット19の内側にバラ物7が堆積した場合には、その分だけバケット19の実効的な容積が目減りし、荷役の効率が下がってしまうという問題があった。
【0009】
このため、連続式アンローダ100を用いて荷役作業を行う際には、バケット19へのバラ物7の堆積量が大きくなる前に、定期的に洗浄作業を行う必要があるが、洗浄を行うにあたっては荷役作業を一旦中断しなくてはならず、港湾の使用料等の費用がその分だけ無駄に掛かってしまうと共に、作業員の人件費等、洗浄自体にも費用が必要となっていた。しかも、バラ物7の滓が混じった洗浄排水の処理の問題もあり、全体としてバケット19の洗浄には大きなコストが掛かっていた。
【0010】
一方、前記バケット19の洗浄は高圧水により行うが、堆積したバラ物7がバケット19に強く固着していると、高圧水の噴射だけでは洗い落とし切れないことがあり、これを作業員が直接手で剥がし落とす作業は大変な重労働となっていた。特に、前記バケット19の内側に付着するバラ物7は、荷役作業中の掻き取りの動作により圧力が加わり、押し固められつつ堆積していくため固着しやすくなっていた。
【0011】
又、近年では、火力発電等において、石炭のうちでも低品位炭である褐炭や亜瀝青炭を燃料として使用することが増えてきているが、こうした低品位炭は含水量が多く、粉状のバラ物7が泥状となってバケット19に付着しやすくなっていた。このため、低品位炭の陸揚げにあたっては、上記したブーム4先端の荷重の問題や、バケット19の容積の目減りといった問題がとりわけ発生しやすく、洗浄作業もその分、頻繁に行わなくてはならなかった。
【0012】
こうした従来のバケット19の不具合を解消すべく、内側表面にバラ物7が付着しにくいバケット28(図6参照)は本出願人によって既に出願されており、該バケット28は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2017-81705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなバケット28は、その内側でバラ物7を流動化させるという点では非常に優れているものの、耐腐食性ではない鋼板(耐摩耗鋼板、SM材)で形成され、塗装した状態で使用されていたため、長期間の使用により塗装が剥がれて錆が発生した場合、錆の発生箇所に石炭等のバラ物7が付着してしまうことが本発明者等の研究によって明らかになった。
【0015】
又、前記バケット28には、錆の発生を見越して腐食代を設ける必要があり、その分だけ重量増加につながることが避けられず、改善の余地が残されていた。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、錆の発生を防止してバラ物の付着を抑制し且つ軽量化をも図り得るバラ物掻取用バケットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、バラ物を掻き取って移送するバラ物掻取用バケットにおいて、
掻取方向に沿った縦断面が後方へ凸となる円弧状の湾曲板部と、
該湾曲板部の掻取方向前端上部から前方へ張り出す天板部と、
前記湾曲板部の掻取方向前端下部から前方へ張り出す底板部と、
前記湾曲板部と天板部と底板部の左右両端を覆う側板部とを備え、
前記湾曲板部と天板部と底板部と側板部とが耐腐食性材料で形成され且つ掻き取られて流動するバラ物により研磨されるバラ物掻取用バケットに係るものである。
【0018】
前記バラ物掻取用バケットにおいて、前記耐腐食性材料はステンレス鋼とすることができる。
【0019】
又、前記バラ物掻取用バケットにおいて、前記バラ物は石炭とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバラ物掻取用バケットによれば、錆の発生を防止してバラ物の付着を抑制し且つ軽量化をも図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のバラ物掻取用バケットの実施例を示す分解斜視図であって、バケットが掻取方向へ移動する状態を示す図である。
図2】本発明のバラ物掻取用バケットの実施例を示す斜視図であって、バケットが上方へ移動する状態を示す図である。
図3】本発明のバラ物掻取用バケットの実施例を示す斜視図であって、バケットが反掻取方向へ移動する状態を示す図である。
図4】従来のバラ物掻取用バケットを備えた連続式アンローダを示す概要構成図である。
図5図4の一部を拡大して示す詳細図である。
図6】本発明者等が発明し既に出願しているバケットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1図3は本発明のバラ物掻取用バケットの実施例であって、図中、図4図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
本実施例の石炭等のバラ物7を掻き取って移送するバケット28は、湾曲板部28Aと、天板部28Bと、底板部28Cと、側板部28Dとを備えている。
前記湾曲板部28Aは、掻取方向に沿った縦断面が後方へ凸となる円弧状の部分である。
【0025】
前記天板部28Bは、前記湾曲板部28Aの掻取方向前端上部から前方へ張り出す部分である。
【0026】
前記底板部28Cは、前記湾曲板部28Aの掻取方向前端下部から前方へ張り出す部分である。
【0027】
前記側板部28Dは、前記湾曲板部28Aと天板部28Bと底板部28Cの左右両端を覆う部分である。
【0028】
前記湾曲板部28Aと天板部28Bと底板部28Cと側板部28Dは、ステンレス鋼等の耐腐食性材料で形成されており、掻き取られて流動するバラ物7により研磨されるようになっている。
【0029】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0030】
バケット28は、図1に示す如く、掻取方向へ移動しつつバラ物7を掻き取るが、掻取方向に沿った縦断面が後方へ凸となる円弧状の湾曲板部28Aを備えたことにより、バケット28の内部で石炭等のバラ物7の流動が促進され、バラ物7が研磨剤のように作用し、主に底板部28C内面と、該底板部28C寄りの湾曲板部28A内面と、前記底板部28C寄りの側板部28D内面とが研磨され、鏡面化される。
【0031】
続いて、図1に示す状態から図2に示す如く、前記バケット28が上方へ開口するように向きを変える際、湾曲板部28A内面に沿ってバラ物7が滑り落ちるように流動し、主に湾曲板部28A内面と、該湾曲板部28A寄りの側板部28D内面とが研磨され、鏡面化される。
【0032】
更に、図2に示す状態から図3に示す如く、前記バケット28が図1に示す状態に対し上下反転する形で向きを変える際、湾曲板部28A内面に沿ってバラ物7が天板部28B内面側へ滑り落ちるように流動し、主に天板部28B内面と、該天板部28B寄りの湾曲板部28A内面と、前記天板部28B寄りの側板部28D内面とが研磨され、鏡面化される。
【0033】
本実施例の場合、バケット28の内側でバラ物7を流動化させつつ耐腐食性材料の研磨剤として機能させることが可能となり、長期間使用しても塗装が剥がれて錆が発生するようなことがなく、錆の発生箇所に石炭等のバラ物7が付着してしまうことが避けられる。
【0034】
又、本実施例のバケット28は、ステンレス鋼等の耐腐食性材料で形成され錆が発生しないため、腐食代を設ける必要がなく、軽量化することが可能となる。因みに、従来のバケット28が204kgであったのに対し、本実施例のバケット28は185kgとなり、約一割の重量を削減することができた。
【0035】
更に又、本実施例の場合、バケット28を耐腐食性材料で形成したことにより初期導入コストはアップするが、寿命が延びるため、総合的に見ると、コストダウンにつながる。又、前記バケット28に石炭等のバラ物7が付着しても剥がしやすくなるため、メンテナンスがしやすく、清掃に掛かるコストダウンも可能となる。
【0036】
しかも、本実施例のバケット28における湾曲板部28Aと天板部28Bと側板部28Dとが接合される隅部、並びに湾曲板部28Aと底板部28Cと側板部28Dとが接合される隅部はそれぞれ、三次元的に丸みを帯びた形状に曲げ加工する必要はなく、製造コストを抑える上でも有効となる。
【0037】
尚、本発明者等は、図4及び図5に示されるような実際に運用されている連続アンローダに設けられている六十個のバケット19のうち二個を本実施例のバケット28と交換し、実機試験を行った。
【0038】
実機試験においては、運転時間を22500分(375時間)に設定し、バラ物7の付着状況の目視確認並びに付着したバラ物7の回収・計量を行なった。
【0039】
目視確認において、従来のバケット19にはバラ物7の付着が顕著になっていたのに対し、本実施例のバケット28には従来のバケット19と比較してかなり少ない量のバラ物7しか付着していなかった。
【0040】
又、それぞれ一個のバケット19、28に付着したバラ物7の回収・計量結果は、[表1]のようになった。
【表1】
【0041】
即ち、従来のバケット19に比べ一個のバケット28で10kg程度のバラ物7が付着しにくくなることが実証され、六十個のバケット28ではおよそ600kgものバラ物7の付着を抑えられることになる。
【0042】
こうして、錆の発生を防止してバラ物7の付着を抑制し且つ軽量化をも図り得る。
【0043】
尚、本発明のバラ物掻取用バケットは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、例えば前記バケットは連続式アンローダに限らず、リクレーマやスタッカリクレーマに適用し得ること等、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 岸壁
2 レール
3 走行フレーム
4 ブーム
5 旋回フレーム
6 船倉
7 バラ物
8 バケットエレベータ
9 ブームコンベヤ
10 搬出コンベヤ
11 シュート
12 本体フレーム
13 外枠フレーム
14 内枠フレーム
15 掻取部フレーム
16 スプロケット
17 スプロケット
18 スプロケット
19 バケット
20 チェーン
21 シリンダ
22 シリンダ
23 昇降フレーム
24 バランシングレバー
25 トップフレーム
26 カウンタウェイト
27 回転フィーダ
28 バケット
28A 湾曲板部
28B 天板部
28C 底板部
28D 側板部
100 連続式アンローダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6