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  • 特開-埋戻し砂の締固め方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142067
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】埋戻し砂の締固め方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/00 20060101AFI20241003BHJP
   E02D 3/046 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02D3/00
E02D3/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054044
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿蘇品 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 雷安
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA20
2D043CB03
2D043EA01
2D043EB02
(57)【要約】
【課題】埋戻し砂の所定の締固め度を十分に確保できる埋戻し砂の締固め方法を提供する。
【解決手段】路盤の掘削部に埋戻し砂を投入し、前記埋戻し砂の層に棒状のバイブレーターを差し込んで注水しながら前記埋戻し砂の層に振動を加え、かつ、前記バイブレーターを前記埋戻し砂の層の深さ方向に上下動させて締め固めを行う、埋戻し砂の締固め方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路盤の掘削部に埋戻し砂を投入し、
前記埋戻し砂の層に棒状のバイブレーターを差し込んで注水しながら前記埋戻し砂の層に振動を加え、かつ、前記バイブレーターを前記埋戻し砂の層の深さ方向に上下動させて締め固めを行う、
埋戻し砂の締固め方法。
【請求項2】
前記バイブレーターに棒状部材を付設し、前記バイブレーターの上下動と共に前記棒状部材で前記埋戻し砂の層を突いて締め固める、
請求項1記載の埋戻し砂の締固め方法。
【請求項3】
前記バイブレーターを前記埋戻し砂の層の深さ方向の略全域にわたって上下動させる、
請求項1又は2記載の埋戻し砂の締固め方法。
【請求項4】
前記バイブレーターの振動時間と、前記バイブレーターを中心とした所定半径の前記埋戻し砂の層の面積との、前記埋戻し砂の層の締固め度に関する相関を求め、
前記相関に基づく前記面積毎に、前記バイブレーターを前記埋戻し砂に差し込んで所定時間振動させ、前記埋戻し砂に振動を加えて締め固めを行う、
請求項1記載の埋戻し砂の締固め方法。
【請求項5】
前記埋戻し砂を前記路盤の掘削部に複数回に分けて投入し、投入した前記埋戻し砂の層毎に締め固めを行う、
請求項1記載の埋戻し砂の締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋戻し砂の締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路下には例えば電線、通信ケーブル等を収納する電線共同溝などが埋設されている。この電線共同溝の工事では、深さ2mほどを掘削して行われ、工事後には掘削した溝内に埋戻し砂が投入され、埋戻し砂を転圧して締め固めた後に、アスファルト舗装が行われている。この工事は道路交通を規制して施工するため、規制時間内にアスファルト舗装を完了させ、交通開放することが要求されている。埋戻し砂の転圧は、転圧ローラなどの重機やランマーなどを使用して行うのが一般的であるが、電線共同溝の工事など掘削部が狭小な場合には、転圧ローラなどの重機やランマーの使用ができない。
【0003】
特許文献1は、棒状バイブレーターを埋戻し砂中に差し込み、埋戻し砂に注水しながら、振動を加えて締固める埋戻し砂の締固め方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-62641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、埋戻し砂の締固め作業後に、埋戻し砂の所定の締固め度を確保できない場合があり、締固め作業のやり直しが必要になる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、埋戻し砂の所定の締固め度を十分に確保できる埋戻し砂の締固め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、路盤の掘削部に埋戻し砂を投入し、前記埋戻し砂の層に棒状のバイブレーターを差し込んで注水しながら前記埋戻し砂の層に振動を加え、かつ、前記バイブレーターを前記埋戻し砂の層の深さ方向に上下動させて締め固めを行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、埋戻し砂の締固め作業後に、所定の締固め度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る埋戻し砂の締固め作業の様子を表す概要図である。
図2】振動時間と締固め度の関係を示すグラフである。
図3】締固めの範囲を示す図である。
図4】実施の形態2に係る埋戻し砂13の締固め作業の様子を表す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は、埋戻し砂13の締固め作業の様子を表す概要図である。
図1に示す対象の路盤Gには、例えば電線、通信ケーブル等を収納する電線共同溝などが埋設されている。電線共同溝などの工事では、対象の路盤Gに例えば深さ2mほどを掘削した狭小な掘削部1が形成される。掘削部1には工事後に埋戻し砂13が投入され、これを締め固めた後に、アスファルト舗装が行われる。埋戻し砂13の締固めは、転圧ローラなどの重機やランマーなどを使用して転圧するのが一般的であるが、掘削部1が狭小な場合、転圧ローラなどの重機やランマーの使用ができない。実施の形態1では、以下に示す締固め方法により埋戻し砂13の締固めが行われる。
【0010】
符号11Aは、棒状のバイブレーターを示している。バイブレーター11Aは、電線コード11を介して、発電機7に接続されている。
作業者Pは、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の中に差し込み、注水しながら埋戻し砂13の層に振動を加えることで埋戻し砂13を締め固める。
【0011】
埋戻し砂13は路盤Gの掘削部1に、複数回に分けて投入される。図1を参照して、仮想線で示した埋戻し砂13A、埋戻し砂13Bのように層を分けて投入し、順に締固める。最終的には、掘削部1の高さ方向について略全域に亘って埋戻し砂13を投入し締め固める。締固め作業時に、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の層の奥まで差し込んだ後、埋戻し砂13の層の略全域にわたって振動が加わるように、バイブレーター11Aを上下動させる。
【0012】
本発明者らは、埋戻し砂13の締固め作業時に、バイブレーター11Aを差し込み、注水しながら埋戻し砂13の層に振動を加えるだけでなく、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の層の深さ方向に上下動させることが、埋戻し砂13の層の締固め度を強固にできることの知見を得た。
【0013】
図2は、注水しながら埋戻し砂13の層に振動を加えるだけでなく、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の層の深さ方向に上下動させることを前提とした場合の、振動時間と締固め度の関係を示すグラフである。振動時間は、バイブレーター11Aが埋戻し砂13に振動を加えた時間である。
【0014】
図2のうち、丸形のプロットはバイブレーター11Aを差し込んだ位置における締固め度を示す。三角形のプロットは、バイブレーター11Aを差し込んだ位置から15cm離れた位置における締固め度を示す。四角形のプロットは、バイブレーター11Aを差し込んだ位置から30cm離れた位置における締固め度を示す。
【0015】
図2から理解されるように、例えば、振動時間が5秒であるときには、バイブレーター11Aを差し込んだ位置の直上、およびバイブレーター11Aを差し込んだ位置から15cm離れた位置において、締固め度が90%を確保できている。しかしながら、バイブレーター11Aを差し込んだ位置から30cm離れた位置では、締固め度が90%を確保できていない。
これに対し、振動時間が10秒であるとき、バイブレーター11Aを差し込んだ位置の直上、当該位置から15cm離れた位置、30cm離れた位置のすべてにおいて、締固め度が90%以上を確保できている。
また、振動時間を15秒とした場合には、振動時間が10秒のときと比較して、締固め度の顕著な向上が見られない。
【0016】
以上のことから、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の層の深さ方向に上下動させた場合、バイブレーター11Aの振動時間を10秒以上とすれば、バイブレーター11Aを差し込んだ位置から30cm離れた位置において、締固め度が90%を確保できることが判明した。この場合、バイブレーター11Aは、埋戻し砂13の層の深さ方向の略全域にわたって上下動させることが望ましい。
【0017】
図3は締固めの範囲を示す図である。図3では、正方形の範囲21と、円形の範囲23A、23B、23C、23D、23E、23Fを示す。以下では、円形の範囲は総称して円形の範囲23と言う場合もある。
【0018】
正方形の範囲21を締め固めるとした場合、図2が示すグラフよれば、バイブレーター11Aは、10秒の振動時間で、半径30cmの埋戻し砂13を締固め度90%以上で締め固めればよい。
【0019】
正方形の範囲21の埋戻し砂13であれば、バイブレーター11Aを円形の範囲23A、23B、23C、23D、23E、23Fの各中心に6回差し込むことで、埋戻し砂13を締固め度90%以上で締め固めることができる。
【0020】
本実施の形態においては、図2に示すように、バイブレーターの振動時間(S)と、バイブレーターを中心とした所定半径の埋戻し砂13の層の面積との、締固め度(%)に関する相関を求める。
そして、締固め度(%)に関する相関に基づく、バイブレーターを中心とした所定半径毎に、バイブレーター11Aを埋戻し砂13に差し込んで所定時間振動させ、埋戻し砂13に振動を加えて締め固めを行う。
【0021】
なお、円形の範囲23は、埋戻し砂13の所定の締固め度が確保できるバイブレーター11Aを中心とした所定半径の埋戻し砂13の層の面積の一例である。また、振動時間10秒は、所定時間の一例である。
【0022】
以下、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態において、埋戻し砂13の締固め方法は、路盤Gの掘削部1に埋戻し砂13を投入し、埋戻し砂13の層に棒状のバイブレーター11Aを差し込んで注水しながら埋戻し砂13の層に振動を加え、かつ、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の層の深さ方向に上下動させて締め固めを行う。
これによれば、埋戻し砂13の締固め作業後に、所定の締固め度を維持できる。
【0023】
また、バイブレーター11Aを埋戻し砂13の層の深さ方向の略全域にわたって上下動させてもよい。
これによれば、埋戻し砂13の略全域に亘って、所定の締固め度を維持できる。
【0024】
また、バイブレーター11Aの振動時間(S)と、バイブレーター11Aを中心とした所定半径の埋戻し砂13の層の面積との、埋戻し砂13の層の締固め度に関する相関を求め、相関に基づく面積毎に、バイブレーター11Aを埋戻し砂13に差し込んで所定時間振動させ、埋戻し砂13に振動を加えて締め固めを行ってもよい。
これによれば、所定の締固め度を維持しつつ、作業時間を短縮できる。
【0025】
また、埋戻し砂13を路盤Gの掘削部1に複数回に分けて投入し、投入した埋戻し砂13の層毎に振動を加えて締め固めを行ってもよい。
これによれば、堀削部1が深い場合であっても、所定の締固め度を維持できる。
【0026】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る埋戻し砂13の締固め作業の様子を表す概要図である。
実施の形態2では、実施の形態1と同様の構成であって、さらにバイブレーター11Aに棒状部材30を付設したものである。
棒状部材30は、バイブレーター11Aの外周に結束具32によって緊縛固定されている。棒状部材30の直径は、バイブレーター11Aの直径よりもやや小さい。また、棒状部材30はバイブレーター11Aの先端からはみ出るように配置されている。
【0027】
本発明者らは、バイブレーター11Aを上下動させるとき、棒状部材30で埋戻し砂13を突くことで、締固め度を向上できることに知見を得た。とくに、棒状部材30がバイブレーター11Aの径よりも細い場合、棒状部材30が埋戻し砂13の層に入り込みやすく、作業性が向上することが判明した。
【0028】
実施の形態2によれば、埋戻し砂13の締固め方法は、バイブレーター11Aに棒状部材30を付設し、バイブレーター11Aの上下動と共に棒状部材30で埋戻し砂13の層を突いて締め固める。
これによれば、棒状部材30による埋戻し砂13の締固めもでき、締固め度の向上に寄与できる。
【0029】
棒状部材30は、強度の面から金属製が好ましい。さらに、棒状部材30は、入手し易さの観点から鉄筋がより好ましい。
【0030】
(他の実施の形態)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
図示は省略したが、水タンクと発電機を備える作業車両を用いて、注水しながらバイブレーターを振動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 掘削部
7 発電機
11 電線コード
11A バイブレーター
13 埋戻し砂
30 棒状部材
32 結束具
G 路盤
P 作業者
図1
図2
図3
図4