(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142075
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回転電機、回転電機の製造方法、回転電機用ステータ及び回転電機用ステータに用いるボビン
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054059
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】株式会社デンソートリム
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 貴信
(72)【発明者】
【氏名】服部 伸宏
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604CC01
5H604CC05
5H604DA19
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】コイルを巻装する導線がボビンの周方向端面から極力離れないようにする。
【解決手段】ティース部の径方向の断面形状は、周方向に対して軸方向が長い長方形形状をしている。ボビンは、ティース部の軸方向端面の全面と周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備え、端面カバー部の形状を、カバー部角度の角度値はフォーマ角度の角度値に対応し、フォーマ角度の角度値が40度である位置におけるカバー部角度が40度であり、フォーマ角度の角度値はフォーマ接線角度の角度値に対応し、フォーマ接線角度が40度である位置におけるフォーマ角度が40度である形状とし、カバー部軸方向平面とカバー部周方向平面との間に、カバー部曲面介在させ、カバー部接点で屈曲させ、且つ、カバー部接点がカバー部角度40度内としているので、導線はカバー部曲に沿って巻かれることとなる。これにより、導線は、カバー部周方向平面にも沿いやすくなる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
円環状の基盤部とこの基盤部から径方向の外方に延びる複数のティース部とを有するステータコアと、このステータコアの前記ティース部に配置される絶縁材製のボビンと、このボビンの外周に巻装されたコイルとを有するステータとを備え、
前記コイルは、前記ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線を前記ボビンに巻装してなる回転電機であって、
前記メインフォーマの前記導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状であり、
前記テンション面は、前記テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、前記テンション面の接線であるテンション接線が前記周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、前記フォーマ軸線から離れるにつれて前記フォーマ接線角度が漸増する曲面であり、
前記テンション面は、前記テンション接線に直交するフォーマ直交線と前記フォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、前記フォーマ角度が前記フォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、前記フォーマ角度の角度値は前記フォーマ接線角度の角度値に対応させており、前記フォーマ接線角度が40度である位置における前記フォーマ角度が40度であり、
前記ティース部の径方向の断面形状は、周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしており、
前記ボビンは、前記ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備え、且つ、この端面カバー部には、前記ティース部の前記軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、前記ティース部の前記周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、前記カバー部軸方向平面と前記カバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成され、
前記端面カバー部の前記カバー部軸方向平面と前記ティース部の前記軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、前記端面カバー部の前記カバー部周方向平面と前記ティース部の前記周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、
前記カバー部曲面は、前記ティース部の前記軸方向端面と前記周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成され、
前記カバー部曲面は、中心点が前記ティース部の前記軸方向端面と同一面乃至前記軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、前記軸方向所定距離は前記カバー部軸方向厚さの6割未満であり、
前記カバー部曲面は、前記カバー部周方向平面と正接し、
前記カバー部曲面は、前記カバー部曲面と前記カバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲し、
前記カバー部曲面は、前記中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、前記中心面と前記カバー部中心軸との交点を中心にして、前記カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、前記カバー部角度の角度値は前記フォーマ角度の角度値に対応し、前記フォーマ角度の角度値が40度である位置における前記カバー部角度が40度であると、
前記カバー部接点は、前記カバー部角度の角度値が40度内の位置にあり、
前記カバー部軸方向平面の周方向の長さは、前記導線の径の1.5倍以上である
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ボビンは、前記ティース部の軸方向の一面側に配置される第1ボビンと、前記ティース部の軸方向の他面側に配置される第2ボビンとからなり、
前記第1ボビンと前記第2ボビンの少なくとも前記端面カバー部は同一形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
円環状の基盤部とこの基盤部から径方向の外方に延びる複数のティース部とを有するステータコアと、このステータコアの前記ティース部に配置される絶縁材製のボビンと、このボビンの外周に導線が巻装されたコイルとを有するステータとを備える回転電機の製造方法であって、
前記コイルは、前記ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線を前記ボビンに巻装し、
前記メインフォーマの前記導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状であり、
前記テンション面は、前記テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、前記テンション面の接線であるテンション接線が前記周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、前記フォーマ軸線から離れるにつれて前記フォーマ接線角度が漸増する曲面であり、
前記テンション面は、前記テンション接線に直交するテンション直交線と前記フォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、前記フォーマ角度が前記フォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、前記フォーマ接線角度の角度値は前記フォーマ接線角度の角度値に対応させており、前記フォーマ接線角度が40度である位置における前記フォーマ角度が40度であり、
前記ティース部の径方向の断面形状は、周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしており、
前記ボビンは、前記ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備え、且つ、この端面カバー部には、前記ティース部の前記軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、前記ティース部の前記周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、前記カバー部軸方向平面と前記カバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成され、
前記端面カバー部の前記カバー部軸方向平面と前記ティース部の前記軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、前記端面カバー部の前記カバー部周方向平面と前記ティース部の前記周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、
前記カバー部曲面は、前記ティース部の前記軸方向端面と前記周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成され、
前記カバー部曲面は、中心点が前記ティース部の前記軸方向端面と同一面乃至前記軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、前記軸方向所定距離は前記カバー部軸方向厚さの6割未満であり、
前記カバー部曲面は、前記カバー部周方向平面と正接し、
前記カバー部曲面は、前記カバー部曲面と前記カバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲し、
前記カバー部曲面は、前記中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、前記中心面と前記カバー部中心軸との交点を中心にして、前記カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、前記カバー部角度の角度値は前記フォーマ角度の角度値に対応し、前記フォーマ角度の角度値が40度である位置における前記カバー部角度が40度であると、
前記カバー部接点は、前記カバー部角度の角度値が40度内の位置にあり、
前記カバー部軸方向平面の周方向の長さは、前記導線の径の1.5倍以上であって、
前記導線は、前記フライヤーより所定の張力を受けつつ供給されて、前記メインフォーマの前記テンション面で擦れ、
前記導線が前記カバー部接点にある位置では前記導線に加わる張力は周方向の成分の方が軸方向の成分より多く、
前記導線は、前記カバー部接点を支点として屈曲後、前記カバー部曲面に沿うように巻装される
ことを特徴とする回転電機の製造方法。
【請求項4】
円環状の基盤部と、この基盤部から径方向の外方に延びる複数のティース部とを有するステータコアと、
このステータコアの前記ティース部に配置される絶縁材製のボビンと、
このボビンの外周に巻装されたコイルとを備え、
前記コイルは、前記ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線を前記ボビンに巻装してなる回転電機用ステータであって、
前記メインフォーマの前記導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状であり、
前記テンション面は、前記テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、前記テンション面の接線であるテンション接線が前記周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、前記フォーマ軸線から離れるにつれて前記フォーマ接線角度が漸増する曲面であり、
前記テンション面は、前記テンション接線に直交するテンション直交線と前記フォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、前記フォーマ角度が前記フォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、前記フォーマ角度の角度値は前記フォーマ接線角度の角度値に対応させており、前記フォーマ接線角度が40度である位置における前記フォーマ角度が40度であり、
前記ティース部の径方向の断面形状は、周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしており、
前記ボビンは、前記ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備え、且つ、この端面カバー部には、前記ティース部の前記軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、前記ティース部の前記周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、前記カバー部軸方向平面と前記カバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成され、
前記端面カバー部の前記カバー部軸方向平面と前記ティース部の前記軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、前記端面カバー部の前記カバー部周方向平面と前記ティース部の前記周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、
前記カバー部曲面は、前記ティース部の前記軸方向端面と前記周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成され、
前記カバー部曲面は、中心点が前記ティース部の前記軸方向端面と同一面乃至前記軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、前記軸方向所定距離は前記カバー部軸方向厚さの6割未満であり、
前記カバー部曲面は、前記ティース部の前記周方向端面と正接し、
前記カバー部曲面は、前記カバー部曲面と前記カバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲し、
前記カバー部曲面は、前記中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、前記中心面と前記カバー部中心軸との交点を中心にして、前記カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、前記カバー部角度の角度値は前記フォーマ角度の角度値に対応し、前記フォーマ角度の角度値が40度である位置における前記カバー部角度が40度であると、
前記カバー部接点は、前記カバー部角度の角度値が40度内の位置にあり、 前記カバー部軸方向平面の周方向の長さは、前記導線の径の1.5倍以上である
ことを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項5】
円環状の基盤部と、この基盤部から径方向の外方に延び径方向の断面形状が周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしている複数のティース部とを有するステータコアと、
このステータコアの前記ティース部に巻装されたコイルと、を備える回転電機用ステータに用いるボビンであって、
前記ボビンは、前記ティース部に配置されて、前記ティース部と前記コイルとの間の電気絶縁を行い、
前記ボビンは、前記ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線を前記ボビンに巻装して前記コイルを形成し、
前記メインフォーマの前記導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状であり、
前記テンション面は、前記テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、前記テンション面の接線であるテンション接線が前記周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、前記フォーマ軸線から離れるにつれて前記フォーマ接線角度が漸増する曲面であり、
前記テンション面は、前記テンション接線に直交するテンション直交線と前記フォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、前記フォーマ角度が前記フォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、前記フォーマ角度の角度値は前記フォーマ接線角度の角度値に対応させており、前記フォーマ接線角度が40度である位置における前記フォーマ角度が40度であり、
前記ティース部の径方向の断面形状は、周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしており、 前記ボビンは、前記ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備え、且つ、この端面カバー部には、前記ティース部の前記軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、前記ティース部の前記周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、前記カバー部軸方向平面と前記カバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成され、
前記端面カバー部の前記カバー部軸方向平面と前記ティース部の前記軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、前記端面カバー部の前記カバー部周方向平面と前記ティース部の前記周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、
前記カバー部曲面は、前記ティース部の前記軸方向端面と前記周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成され、
前記カバー部曲面は、中心点が前記ティース部の前記軸方向端面と同一面乃至前記軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、前記軸方向所定距離は前記カバー部軸方向厚さの6割未満であり、
前記カバー部曲面は、前記ティース部の前記周方向端面と正接し、
前記カバー部曲面は、前記カバー部曲面と前記カバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲し、
前記カバー部曲面は、前記中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、前記中心面と前記カバー部中心軸との交点を中心にして、前記カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、前記カバー部角度の角度値は前記フォーマ角度の角度値に対応し、前記フォーマ角度の角度値が40度である位置における前記カバー部角度が40度であると、
前記カバー部接点は、前記カバー部角度の角度値が40度内の位置にあり、 前記カバー部軸方向平面の周方向の長さは、前記導線の径の1.5倍以上である
ことを特徴とする回転電機用ステータに用いるボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の記載は回転電機、回転電機の製造方法、回転電機用ステータ及び回転電機用ステータに用いるボビンに関し、回転電機は例えば二輪車の発電機やスタータとして用いられて有用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、回転電機用ステータコアに、ティース部を覆うようにボビンを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ボビンの内、ステータコアのティース部の軸方向端面と対向する部位の形状を、直線状とする例と、曲線状とする例が開示されている。直線状とする例では、コイルを巻装する導線が直角に屈曲されることとなり、折れ曲がり部に応力が集中して望ましくない。
【0005】
一方、なだらかな曲線状とした場合には、ボビンの軸方向端面には導線を沿わすことができるが、導線はボビンの周方向の端面でボビンから浮いてしまう(周方向端面から離れる)という問題が生じる。
【0006】
本件の開示は、コイルを巻装する導線がボビンの周方向端面から極力離れないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1は、周方向に永久磁石を複数配置しシャフトと共に回転するロータと、円環状の基盤部とこの基盤部から径方向の外方に延びるティース部とを有するステータコアと、このステータコアのティース部に配置される絶縁材製のボビンと、このボビンの外周に巻装されたコイルとを有するステータとを備える回転電機である。
【0008】
本開示の第1の回転電機は、ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線をボビンに巻装してコイルを形成している。そして、メインフォーマの導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状である。また、テンション面は、テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、テンション面の接線であるテンション接線が周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、フォーマ軸線から離れるにつれてフォーマ接線角度が漸増する曲面である。また、テンション面は、テンション接線に直交するテンション直交線とフォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、フォーマ角度がフォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、フォーマ角度の角度値はフォーマ接線角度の角度値に対応させており、フォーマ接線角度が40度である位置におけるフォーマ角度が40度となっている。
【0009】
本開示の第1の回転電機では、ティース部の径方向の断面形状は、周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしている。また、ボビンは、ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備え、且つ、この端面カバー部には、ティース部の軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、ティース部の周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、カバー部軸方向平面とカバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成されている。そして、端面カバー部のカバー部軸方向平面とティース部の軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、端面カバー部のカバー部周方向平面とティース部の周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、カバー部曲面は、ティース部の軸方向端面と周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成されている。
【0010】
また、カバー部曲面は、中心点がティース部の軸方向端面と同一面乃至軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、軸方向所定距離はカバー部軸方向厚さの6割未満である。そして、カバー部曲面は、カバー部周方向平面と正接し、カバー部曲面は、カバー部曲面とカバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲している。かつ、カバー部曲面は、中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、中心面とカバー部中心軸との交点を中心にして、カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、カバー部角度の角度値はフォーマ角度の角度値に対応し、フォーマ角度の角度値が40度である位置におけるカバー部角度が40度である。そして、カバー部接点は、カバー部角度の角度値が40度内の位置にある。そして、カバー部軸方向平面の周方向の長さは、導線の径の1.5倍以上である。
【0011】
なお、本開示で軸方向とは円環状の基盤部の中心軸に沿う方向であり、シャフトの軸方向とも一致する。径方向は、ティース部が基盤部より伸びる方向であり、シャフトの径方向とも一致する。また、周方向は、複数のティース部が円環状の基盤部の周りに配置される方向であり、シャフトの周方向とも一致する。
【0012】
本開示では、ボビンの端面カバー部の形状を、カバー部角度の角度値はフォーマ角度の角度値に対応し、フォーマ角度の角度値が40度である位置におけるカバー部角度が40度であり、フォーマ角度の角度値はフォーマ接線角度の角度値に対応し、フォーマ接線角度が40度である位置におけるフォーマ角度が40度である形状とすることで、ボビンの上にコイルを巻装する導線が、カバー部軸方向平面から、カバー部曲面を経て、カバー部周方向平面に向かうこととなる。カバー部軸方向平面とカバー部周方向平面との間に、カバー部曲面介在させ、カバー部接点で屈曲させ、且つ、カバー部接点がカバー部角度内にあって、カバー部角度を40度としているので、導線はカバー部曲面に沿って巻かれることとなる。これにより、導線は、カバー部周方向平面にも沿いやすくなり、ボビンの周方向端面から極力離れないようになる。
【0013】
本開示の第2は、ボビンは、ティース部の軸方向の一面側に配置される第1ボビンと、ティース部の軸方向の他面側に配置される第2ボビンとからなり、第1ボビンと第2ボビンは少なくとも端面カバー部が同一形状である。
【0014】
本開示の第3は、回転電機の製造方法である。第3の製造方法は、コイルは、ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線をボビンに巻装している。そして、メインフォーマの導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状である。また、テンション面は、テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、テンション面の接線であるテンション接線が周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、フォーマ中心軸から離れるにつれてフォーマ接線角度が漸増する曲面である。かつ、テンション面は、テンション接線に直交するテンション直交線とフォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、フォーマ角度がフォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状である。
【0015】
そして、フォーマ接線角度の角度値はフォーマ接線角度の角度値に対応しており、テンション面は、フォーマ接線角度が40度である位置におけるフォーマ角度が40度である。フォーマ接線角度が40度より小さい部位では、導線に加わる張力の周方向成分を大きくすることができる。その為、本開示の第3の回転電機の製造方法においては、導線は、フライヤーより所定の張力を受けつつ供給されてメインフォーマのテンション面で擦れ、導線がカバー部接点にある位置で導線に加わる張力は周方向の成分の方が軸方向の成分より多く、導線は、カバー部接点を支点として屈曲後、のカバー部曲面に沿うように巻装されるので、導線を屈曲させてカバー部周方向平面に沿って巻かれやすくなる。
【0016】
本開示の第4は、円環状の基盤部とこの基盤部から径方向の外方に延びるティース部とを有するステータコアと、このステータコアのティース部に配置される絶縁材製のボビンと、このボビンの外周に巻装されたコイルとを備える回転電機用ステータである。
【0017】
本開示の第4の回転電機用ステータでは、ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線をボビンに巻装してコイルを形成している。そして、メインフォーマの導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状である。また、テンション面は、テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、テンション面の接線であるテンション接線が周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、フォーマ軸線から離れるにつれてフォーマ接線角度が漸増する曲面である。また、テンション面は、テンション接線に直交するテンション直交線とフォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、フォーマ角度がフォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、フォーマ角度の角度値はフォーマ接線角度の角度値に対応させており、フォーマ接線角度が40度である位置におけるフォーマ角度が40度となっている。
【0018】
本開示の第4の回転電機用ステータでは、ティース部の径方向の断面形状は、周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしている。そして、ボビンは、ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備えている。且つ、この端面カバー部には、ティース部の軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、ティース部の周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、カバー部軸方向平面とカバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成されている。そして、端面カバー部のカバー部軸方向平面とティース部の軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、端面カバー部のカバー部周方向平面とティース部の周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、カバー部曲面は、ティース部の軸方向端面と周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成されている。
【0019】
また、カバー部曲面は、中心点がティース部の軸方向端面と同一面乃至軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、軸方向所定距離はカバー部軸方向厚さの6割未満である。そして、カバー部曲面は、カバー部周方向平面と正接し、カバー部曲面は、カバー部曲面とカバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲している。かつ、カバー部曲面は、中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、中心面とカバー部中心軸との交点を中心にして、カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、カバー部角度の角度値はフォーマ角度の角度値に対応し、フォーマ角度の角度値が40度である位置におけるカバー部角度が40度であり、カバー部接点がこのカバー部角度40度内にある。そして、カバー部軸方向平面の周方向の長さは、導線の径の1.5倍以上である。
【0020】
本開示の第4の回転電機用ステータでも、本開示の第1と同様、導線は、ボビンの周方向端面から極力離れないようになる。
【0021】
本開示の第5は、円環状の基盤部と、この基盤部から径方向の外方に延び径方向の断面形状が周方向の幅に対して軸方向の長さが長い長方形形状をしているティース部とを有するステータコアと、このステータコアのティース部に巻装されたコイルとを備える回転電機用ステータに用いるボビンである。
【0022】
そして、本開示の第5のボビンは、ティース部に配置されて、ティース部とコイルとの間の電気絶縁を行う。本開示の第5のボビンでは、ティース部に対応する位置にメインフォーマを配置して、フライヤーによって導線をボビンに巻装してコイルを形成している。そして、メインフォーマの導線に張力を加える面であるテンション面は、周方向の中心であるフォーマ軸線に対して線対称形状である。また、テンション面は、テンション面の軸方向の端部での周方向の面を周方向面とし、テンション面の接線であるテンション接線が周方向面となす角度をフォーマ接線角度とした際、フォーマ軸線から離れるにつれてフォーマ接線角度が漸増する曲面である。また、テンション面は、テンション接線に直交するテンション直交線とフォーマ軸線との角度をフォーマ角度とした際、フォーマ角度がフォーマ接線角度の増加に応じて増加する形状であって、フォーマ角度の角度値はフォーマ接線角度の角度値に対応させており、フォーマ接線角度が40度である位置におけるフォーマ角度が40度となっている。
【0023】
そして、本開示の第5のボビンは、ティース部の軸方向端面の全面とこの軸方向端面に接続する周方向端面の少なくとも一部を覆う端面カバー部を備えている。且つ、この端面カバー部には、ティース部の軸方向端面と平行となるカバー部軸方向平面と、ティース部の周方向端面と平行となるカバー部周方向平面と、カバー部軸方向平面とカバー部周方向平面との間に配置されるカバー部曲面が形成されている。そして、端面カバー部のカバー部軸方向平面とティース部の軸方向端面との距離であるカバー部軸方向厚さは、端面カバー部のカバー部周方向平面とティース部の周方向端面との距離であるカバー部周方向厚さより厚く、カバー部曲面は、ティース部の軸方向端面と周方向端面との境界部に対応する部位に4カ所形成されている。
【0024】
また、カバー部曲面は、中心点がティース部の軸方向端面と同一面乃至軸方向端面より軸方向所定距離軸方向内側に位置する面である中心面にある円形であって、軸方向所定距離はカバー部軸方向厚さの6割未満である。そして、カバー部曲面は、カバー部周方向平面と正接し、カバー部曲面は、カバー部曲面とカバー部軸方向平面との接点であるカバー部接点で屈曲している。かつ、カバー部曲面は、中心面の周方向の中心であるカバー部中心軸に対して、中心面とカバー部中心軸との交点を中心にして、カバー部中心軸と交わる角度をカバー部角度とすると、カバー部角度の角度値はフォーマ角度の角度値に対応し、フォーマ角度の角度値が40度である位置におけるカバー部角度が40度であり、カバー部接点がこのカバー部角度40度内にある。そして、カバー部軸方向平面の周方向の長さは、導線の径の1.5倍以上である。
【0025】
本開示の第5のボビンでも、本開示の第1と同様、導線は、ボビンの周方向端面から極力離れないようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、クランクシャフト及びシリンダブロックに組み合わされた状態の回転電機の断面図である。
【
図2】
図2は、回転電機のロータ、コイル及びセンサケースを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、回転電機のコイルとセンサケースを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ステータコアを構成する鋼板を組み合わせた状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、ステータコアを構成する鋼板を組み合わせた状態の斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示のボビンの径方向の断面図で、Lで示す上下方向が軸方向でWで示す左右方向が周方向である。
【
図9】
図9は、ステータコアにボビンを組付けコイルの一部を巻いた状態の断面図である。
【
図10】
図10は、巻線機によるコイルの巻線を示す説明図である。
【
図11】
図11は、コイルを巻装する導線の軌跡を示す説明図である。
【
図13】
図13は、比較例のボビンに対する導線の巻線状態を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示のボビンに対する導線の巻線状態を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示のボビンと比較例のボビンとで、導線の浮き量の差を説明するグラフである。
【
図17】
図17は、2分割されたステータの組付け状態を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、メインフォーマのテンション面を説明する図である。
【
図22】
図22は、端面カバー部の他の形状を説明する図である。
【
図24】
図24は、比較例の端面カバー部の形状を説明する図である。
【
図25】
図25は、本開示のボビンと比較例のボビンとで、導線の浮き量の差を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一例を図に基づいて説明する。まず、本開示の対象となる回転電機の一例を説明する。
図1は、回転電機1がクランクシャフト100に組み合わされた状態の断面図である。101はシリンダブロックであり、シリンダブロック101内では図示しないピストンが図示しないシリンダ内を往復動する。そして、ピストンの動きは、図示しないコンロッドを介して、クランクシャフト100を回転させる。クランクシャフト100は、直径20ミリメートル程度の鉄材からなり、シリンダブロック101に軸受102で回転支持されている。
【0028】
クランクシャフト100には、回転電機1のロータ300が、基部301で固定されている。従って、ロータ300はクランクシャフト100と一体に回転する。ロータ300は、鉄材料製で、クランクシャフト100と係合する基部301より径方向外方に延びる円盤部302と、この円盤部302の径方向外方部に形成される円筒部303を備えている。
図2に示すように、円筒部303の内方には、永久磁石304が12個、周方向に並んで配置されている。永久磁石304の厚みは、4~6ミリメートル程度である。なお、永久磁石304の数は、12個に限らず、10個や24個等要求性能に応じた極数や磁束を提供するよう適宜設定できる。
【0029】
ロータ300の内部には、
図1や
図2に示すように、ステータ400が配置されている。従って、本実施例ではロータ300がステータ400の外周に配置される所謂アウターロータタイプとなっている。なお、所謂インナーロータタイプの回転電機1に適用する場合は、ロータ300は外周ではなくステータ400の内周に配置される。
図2は、ステータ400をシリンダブロック101側から見た斜視図である。ステータ400は、複数の磁性鋼板430(
図4図示)を積層してなるステータコア450(
図5図示)を有している。ステータコア450は、シリンダブロック101に取り付けられる円環状の基盤部401と、この基盤部401より径方向外方に延びる複数のティース部402(
図1図示)を一体に形成している。ステータ400の外径は、90~130ミリメートル程度となっており、従って、ロータ300の内径は、ステータ400の外径と永久磁石304との間に1ミリメートル以下の微小間隙が形成される大きさとなっている。
【0030】
基盤部401には、シリンダブロック101にステータ400を固定するためのステータボルト通し穴403が3カ所形成されている。また、基盤部401には、センサケース440をステータ400に固定するためのセンサケース固定穴406も形成されている。
【0031】
ティース部402はポリアミド等の絶縁樹脂からなるボビン410で電気絶縁され、ボビン410の上に銅線若しくはアルミニウム線からなるコイル404が巻装されている。従って、ステータ400は、ステータコア450と、このステータコア450を絶縁するボビン410と、このボビン410の回りに巻装されたコイル404とを備えている。
図3は、
図2からロータ300を外して、ステータ400とセンサケース440を示す斜視図である。
【0032】
図3に示すように、隣接するコイル404の間には隙間405が形成され、その隙間405は径方向外側に向けて広くなっている。そして、この隙間405にセンサケース440が配置されている。センサケース440は、上述のボビン410と同様ポリアミド等の樹脂でモールド成形されている。そして、センサケース440内には、第1磁気検知センサ441、第2磁気検知センサ442、第3磁気検知センサ443及び第4磁気検知センサ444のセンサが配置されている。
【0033】
回転電機1は、以上の要素で構成される。回転電機1を発電機として用いるときは、内燃機関のクランクシャフト100の回転に同期してロータ300が回転する。このロータ300の回転に伴い、永久磁石304の磁束を受けてステータ400のコイル404に起電力が発生する。その起電力を三相交流とし、この三相交流を直流に整流して図示しないバッテリに充電する。逆に、回転電機1を内燃機関のスタータとして用いるときは、図示しないバッテリからの電圧を三相交流に変換してコイル404に磁力を発生させる。この際のコイル404に発生する磁力と永久磁石304の磁力との吸引反発により、ロータ300を回転させる。このロータ300の回転によりクランクシャフト100も回転させ、内燃機関を始動させる。そして、発電時や始動時の回転制御に、第2乃至第4磁気検知センサ442、443、444が用いられる。なお、第1磁気検知センサ441は内燃機関の基準位置の検知に用いられる。
【0034】
次に、ステータ400の組付け工程を説明する。まず、
図4に示すような基盤部401とティース部402を備える磁性鋼板430打ち抜き形成する。本例では、ステータコア450を2分割している。その為、
図4に示した磁性鋼板430を複数積層し、更にティース部402に対応するティース磁性鋼板431も複数積層して、
図5に示すようなステータコア450を製造する。なお、磁性鋼板430の基盤部401には、積層時に隣接する磁性鋼板430が嵌り合う係合部432が突出形成されている。即ち、係合部432は一方側が突出し、他方側が凹んでいる。これにより、突出した係合部432が隣接する磁性鋼板430の凹んだ係合部432に嵌り合う。磁性鋼板430には、ティース部402にもティース係合部433が形成されている。
【0035】
ティース磁性鋼板431にも同じ位置にティース係合部433が突出形成されている。上述の係合部432と同様に、ティース係合部433も一方側が突出し、他方側が凹んでいる。これにより、磁性鋼板430のティース部402に形成されたティース係合部とティース磁性鋼板431に形成されたティース係合部433との間、及び隣接するティース磁性鋼板431の間が機械的に固定される。ただ、機械的な固定に加えて、若しくは機械的な固定に代えて磁性鋼板430とティース磁性鋼板431とを接着剤で固定しても良い。
【0036】
次いで、このステータコア450にボビン410を組付けるボビン組付け工程を行う。
図6及び
図7に示すように、ボビン410は、端面カバー部413と、内周フランジ部412と、外周フランジ部411とを一体に形成している。端面カバー部413は、ティース部402に対応して径方向に延びている。内周フランジ部412は、基盤部401に対応してリング状に形成されている。内周フランジ部412は、端面カバー部413を径方向の内側で周方向に保持している。その為、端面カバー部413は、内周フランジ部412の周囲に等間隔離れて配置されることとなる。外周フランジ部411は、端面カバー部413の径方向の外側に位置し、各端面カバー部413に夫々形成されている。また、ボビン410は、ティース部402の軸方向の一面側に配置される第1ボビン4100(
図6図示)と、ティース部402の軸方向の他面側に配置される第2ボビン4101(
図7図示)とに分かれている。
【0037】
図8に示すように、第1ボビン4100と第2ボビン4101とで、ティース部402を両側から挟持する。なお、
図8は、磁性鋼板430のティース部402とティース磁性鋼板431とを積層したステータコア450の上に第1ボビン4100と第2ボビン4101を配置した状態を示している。
図8は、ティース部402の径方向の断面図であり、
図8のLで示す上下方向が軸方向に対応し、上側が一面側、下側が他面側となる。また、
図8のWで示す左右方向は周方向となる。
図8のボビン410に導線421を巻装するとコイル404が形成される。
【0038】
本例では、第1ボビン4100と第2ボビン4101とは、端面カバー部413で同一形状をしている。ただ、図示しないターミナル等の保持で第1ボビン4100と第2ボビン4101とは相違しており、同一の部品ではない。
図8で、Lで示す方向が軸方向で、Wで示す方向が周方向である。端面カバー部413は、ティース部402の軸方向端面4020の全面を覆っている。そして、この端面カバー部413は、ティース部402の軸方向端面4020の全面のみでなく、ティース部402の周方向端面4021の大半の面も覆っている。これにより、端面カバー部413はティース部402の電気絶縁を達成している。
【0039】
図8に示すように、端面カバー部413には、ティース部402の軸方向端面4020と平行となるカバー部軸方向平面4130が形成されている。端面カバー部413の周方向の幅(長さ)は、5.2ミリメートル程度であり、カバー部軸方向平面4130の周方向の幅は、3ミリメートル程度である。また、端面カバー部413には、ティース部402の周方向端面4021と平行となるカバー部周方向平面4131が形成されている。
【0040】
カバー部周方向平面4131とカバー部軸方向平面4130との間には、カバー部曲面4132が形成されている。カバー部曲面4132は軸方向の両側で、且つ、周方向の両側に、計4カ所形成されている。カバー部曲面4132は、ボビン410のカバー部周方向平面4131と正接する円弧形状である。ただ、カバー部曲面4132の形状は、後述するメインフォーマの形状にも関係するので、具体的形状は後述する。
【0041】
ボビン410を組付けた後、エナメル等の絶縁被膜で被覆された銅製の導線421を用意して、ボビン410の端面カバー部413の周りに導線421を巻いてコイル404を形成する。上述のように、コイル404を巻装する素材としては、銅の他アルミニウムもあるが、本例では銅を用いる態様を説明する。そして、本例では、
図9に示すように、1つのティース部402に対して、端面カバー部413の外周に多数回連続して導線421を螺旋状に巻き付けてコイル404を形成する集中巻を採用している。本例のコイル404は、ボビン410の径方向の内側(内周フランジ部412側)から巻き始め、ボビン410に沿って径方向の外側に向けて巻かれる。導線421がボビン410の外周フランジ部411まで巻かれると、次いで、径方向の外側から内側に向けて第2層を巻装する。そして、第2層が内周フランジ部412に達すると、再度径方向の内側から外側に向けて第3層を巻装する。コイル404は、所謂整列多層巻きにより巻装される。
【0042】
図10を用いてコイル404の巻装の概要を説明する。巻線機500は、導線421を保持するフライヤー501を備えており、フライヤー501はティース部402(ボビン410)の周囲を毎分450~600程度の回転数で回転する。より具体的には、フライヤー501はフォーマ中心軸505を中心に、
図10にRで示す円運動を行っている。回転時に、フライヤー501は、導線421に所定の張力を与えつつ、導線421を供給している。所定の張力としては、例えば、40~80ニュートン(N)程度の大きさを用いている。なお、フォーマ中心軸505は、ティース部402の周方向の中心とも一致する。
【0043】
フライヤー501が回転するのに合わせて、メインフォーマ502がティース部402(ボビン410)の径方向に往復移動する。上述の例では、導線421の巻始時には、メインフォーマ502は内周フランジ部412側に位置しており、導線421がボビン410上に巻かれるのに合わせて、導線421の径の分ずつ径方向の外側に移動する。外周フランジ部411まで巻かれると、メインフォーマ502は逆に径方向の内側に移動する。
【0044】
図18及び
図19に示すように、メインフォーマ502は導線421が擦れて導線421に張力を加える面であるテンション面506を形成している。メインフォーマ502は、導線421がテンション面506に擦るようにしており、これにより、導線421をボビン410に沿わせて巻装する。なお、導線421がボビン410に沿うように屈曲するメカニズムに付いては後述する。テンション面506はなだらかに傾斜する曲面で形成されている。
図18及び
図19において、テンション面506に線が記載されているが、これはテンション面506を形成する曲面の曲率が変わる位置を示しているのであって、線の位置でテンション面506が折れ曲がっている訳ではない。 軸方向の一面側のテンション面506と他面側のテンション面506との間にはサイド面507が形成され、テンション面506とサイド面507とでティース部402を覆っている。ただ、導線421の屈曲はテンション面506のみでされ、サイド面507は導線421の屈曲に関与しない。
【0045】
導線421をティース部402に整列に巻くために、導線421には引張力のテンションが加わった状態にする必要がある。そのため、巻線機500にはバックテンショナーが設けられていて、導線421に所定の張力を与えている。導線421は巻線機500のフライヤー501を出てから、ティース部402の直前の位置で、メインフォーマ502のテンション面506の上を擦りながらティース部402に向かって滑り進んでいく。よって、テンション面506を通った導線421は、ティース部402に巻かれる状態で所定のテンションが加わっている。
【0046】
次に、テンション面506の形状を、
図20を用いて説明する。テンション面506は、フォーマ中心軸505を通る長径方向のフォーマ軸線5050に対して左右対称の形状となっている。ここで、テンション面506の軸方向の端部での周方向の面を周方向面508とし、テンション面506の接線であるテンション接線509が周方向面508となす角度をフォーマ接線角度FAとする。テンション面506の形状は、フォーマ軸線5050から離れるにつれてフォーマ接線角度FAが漸増する曲面である。また、テンション接線509に直交するテンション直交線5090とフォーマ軸線5050との角度をフォーマ角度FBとすると、フォーマ角度FBはフォーマ接線角度FAの増加に応じて増加する。なお、
図20ではフォーマ角度FBが40度のフォーマ軸線5050における中心位置FOと、フォーマ角度FBが45度のフォーマ軸線5050における中心位置FOとが一致しているが、これは、フォーマ角度40から45度にかけて同一の円弧形状であるためである。上述の通り、テンション面506は、フォーマ軸線5050から離れるにつれてフォーマ接線角度FAが漸増する曲面であればよく、円弧形状である必要は無い。その為、フォーマ角度FBのフォーマ軸線5050における中心位置は、
図20において上下に移動することがある。
【0047】
図20では、フォーマ角度FB及びフォーマ接線角度FAが40度から45の部分で、テンション面506が円弧となっているため、フォーマ接線角度FAの角度値が40度や45度の位置で、フォーマ角度FBの角度値も物理的に40度及び45度となっている。しかし、上述の通り、テンション面506は曲面であればよく、円弧である必要は無い。その為、フォーマ接線角度FAの角度値が40度や45度の位置で、フォーマ角度FBの角度値の実測値が40度及び45度とならない場合もある。ただ、本開示において、フォーマ角度FBは常にフォーマ接線角度FAと対応させている。換言すれば、フォーマ接線角度FAが40度や45度である位置におけるフォーマ角度FBを、実測値に拘わらずフォーマ角度FBが40度や45度としている。より具体的には、フォーマ接線角度FAが40度及び45度である位置におけるフォーマ角度FBは、実測値が例えば39度や46度であったとしても、フォーマ角度FB40度、フォーマ角度FB45度としている。
【0048】
テンション面506のフォーマ接線角度FAが40度である位置と、45度である位置は、テンション面506の形状を決める上で重要である。何故なら、上述の通り、導線421は所定のテンションが加わった状態でテンション面506において擦られているからである。その為、フォーマ接線角度FAが45度では、導線421に加わる張力の軸方向分力と周方向分力とが釣り合ってしまうこととなる。フォーマ接線角度FAが45度より大きくなると、導線421をメインフォーマ502のテンション面506に擦らせるように押し付ける方向である周方向の成分より、導線421がメインフォーマ502のテンション面506から抜ける方向である軸方向の成分が多くなって、ボビン410に対して必要な張力を加えることができなくなる。テンション面506で導線421を屈曲させるテンションを得るためには、導線421に加わる張力の周方向成分を軸方向成分より多くする必要がある。換言すれば、導線421に必要な張力を加えるためには、フォーマ接線角度FAを45度より小さくする必要がある。その中で、導線421に充分なテンションを得るためには、フォーマ接線角度FAを40度以下とするのが望ましい。
【0049】
上述の通り、テンション面506は、フォーマ接線角度FAが45度の場合のフォーマ角度FBは45度で、フォーマ接線角度FAが40度の場合のフォーマ角度FBは40度としている。その為、フォーマ接線角度FAを40度以下とすると、フォーマ角度FBも40度以下となる。なお、
図20においては、導線421はRで示す時計回りの円運動でフライヤーの回転を受けている。
【0050】
次に、端面カバー部413の形状を、
図21を用いて説明する。本例では、端面カバー部413のカバー部軸方向平面4130とティース部402の軸方向端面4020との距離であるカバー部軸方向厚さL1は、1.4ミリメートル程度である。また、端面カバー部413のカバー部周方向平面4131とティース部402の周方向端面4021との距離であるカバー部周方向厚さW1は0.5ミリメートル程度である。従って、カバー部軸方向厚さL1の方が、カバー部周方向厚さW1より厚くなっている。これは、上述の通り、導線421の屈曲がティース部402の軸方向端面4020側でなされるためである。換言すれば、ティース部402の周方向端面4021では大きな応力を受けることは無いので、カバー部周方向厚さW1は欠損等の問題がない限り薄くすることができる。
【0051】
上述の通り、カバー部曲面4132は、ティース部402の周方向端面4021と正接する円弧形状である。また、カバー部曲面4132は、中心点O1が中心面4134にある円形でもある。中心面4134は、ティース部402の軸方向端面4020と同一面であってもよく、軸方向端面4020より軸方向所定距離L2軸方向内側に位置する面であっても良い。なお、軸方向所定距離L2は、本例では0.8ミリメートル程度である。この軸方向所定距離L2を大きくすると、ティース部402の軸方向端面4020と周方向端面4021との接点であるティース接点4022の位置で、端面カバー部413の肉厚が薄くなってしまう。その為、軸方向所定距離L2をあまり大きくすることはできず、軸方向所定距離L2はカバー部軸方向厚さL1の6割未満にしている。
【0052】
ここで、中心面4134の周方向の中心をカバー部中心軸4135とする。カバー部中心軸4135はティース部402の中心軸とも一致する。また、カバー部中心軸4135は、フォーマ軸線5050とも一致する。中心面4134とカバー部中心軸4135との交点O2を中心にして、カバー部中心軸4135と交わる角度をカバー部角度KBとする。このカバー部角度KBはフォーマ角度FBに対応する角度である。フォーマ角度FBが40度の場合、カバー部角度KBも40度となる。但し、角度値はフォーマ接線角度FAの角度である。フォーマ接線角度FAが40度の位置のフォーマ角度FBが40度であり、フォーマ角度FBの40度に対応する位置のカバー部角度KBがカバー部角度KB40度となる。そして、カバー部曲面4132とカバー部軸方向平面4130との接点であるカバー部接点4136は、カバー部角度KBが40度の範囲内に位置している。
【0053】
端面カバー部413は、カバー部接点4136で屈曲している。カバー部接点4136の屈曲角度は、カバー部軸方向平面4130と同一面のカバー部端面線4137とカバー部曲面4132の接線であるカバー部接線4138とが交差することで形成される屈曲角度KCである。換言すれば、カバー部曲面4132は、カバー部軸方向平面に正接しない円弧である。
図21の例では、屈曲角度KCは17度程度である。そして、端面カバー部413のカバー部接点4136(屈曲部)は、カバー部角度KBが40度の範囲内に位置している。カバー部角度KBが40度の範囲内にあるので、導線421に加わる張力の周方向成分が充分に確保できる。より具体的には、カバー部軸方向平面4130に巻かれた導線421は、カバー部端面線4137の方向に延びており、カバー部接点4136を支点として、カバー部接線4138まで屈曲角度KC分折れ曲がることとなる。
【0054】
従って、導線421は屈曲部(カバー部接点4136)で確実に折れ曲がることとなる。換言すれば、屈曲部(カバー部接点4136)を、カバー部角度KBが40度となる範囲を外れた部位に位置したのでは、導線421を端面カバー部413に沿って屈曲させることはできなくなる。上述の通り、カバー部角度KBはフォーマ角度FBと対応しており、カバー部角度KB(フォーマ角度FB、フォーマ接線角度FA)が45度以上ではメインフォーマ502のテンション面506から抜ける方向の成分(軸方向の成分)が多くなるからである。その為、端面カバー部413でも屈曲部(カバー部接点4136)で充分なテンションが掛からず、導線421を充分に曲げるのが困難となるからである。
【0055】
図24は、屈曲部(カバー部接点4136)をカバー部角度KBが40度の範囲外の部位に位置させた比較例である。この比較例では、屈曲部(カバー部接点4136)で導線421を充分屈曲させることができず、導線421は、周方向の端面ではカバー部周方向平面4131から浮きやすく(離れやすく)なる。比較例の浮き量に関しては後述する。
【0056】
なお、カバー部曲面4132の中心点O1は、カバー部曲面4132の半径に応じて、中心面4134を移動する。端面カバー部413の周方向Wの幅が5.2ミリメートルの場合、カバー部曲面4132の半径が2.3ミリメートルであれば、
図21に示すように、中心点O1はカバー部中心軸4135より図の右側のカバー部周方向平面4131に近い位置となる。カバー部曲面4132の半径が2.6ミリメートルの時は、中心点O1がカバー部中心軸4135の交点O2と一致する。そして、カバー部曲面4132の半径が3.6ミリメートルの場合には、
図22に示すように、カバー部周方向平面4131に対して、カバー部中心軸4135より図の左側に離れた部位に、中心点O1が位置することとなる。なお、
図22に示す例の屈曲角度KCは52度程度である。
【0057】
図23は、カバー角度KBで屈曲部(カバー部接点4136)の位置を表している。屈曲部(カバー部接点4136)におけるカバー角度KBを屈曲部角度KB1とすると、
図23の屈曲部角度KB1は24度程度で40度の範囲内である。上述の
図24では、屈曲部角度KB1は46度程度で40度の範囲外である。
【0058】
本開示では、カバー部接点4136が屈曲部となることが必要である。屈曲部とすることで、フライヤー501の回転及び張力を受けた導線421をカバー部接点4136で折り曲げ、それによって導線421をカバー部曲面4132に沿って巻装しやすくしている。上述の通り、導線421に対して屈曲部(カバー部接点4136)が支点として作用し、屈曲部(カバー部接点4136)で応力を集中させることで導線421を曲げやすくしている。導線421を曲げる結果、導線421をカバー部曲面4132に沿わせることが出来、導線421がカバー部周方向平面4131から浮くのを抑制することができる。カバー部接点4136での屈曲の程度(屈曲部角度KB1)を大きくするためには、屈曲部角度KB1は40度に近い方が良い。一方で、屈曲部角度KB1が40度に近づくほど張力の周方向成分は少なくなって、メインフォーマ502のテンション面506から抜ける方向の軸方向成分が多くなる。屈曲部角度KB1はこれらの事項を考慮して設定する。
【0059】
屈曲部角度KB1に代えて、カバー部軸方向平面4130の幅で説明すると、カバー部軸方向平面4130の長さが所定距離無ければ導線421を屈曲させにくくなる。カバー部軸方向平面4130が形成されていない例では、屈曲部ができなくなり、導線421はカバー部周方向平面4131で浮きやすくなる。この屈曲部が無い例に付いては後述する。カバー部接点4136での屈曲を大きくするためには、カバー部軸方向平面4130の長さは長い方が望ましい。カバー部軸方向平面4130は最小限でも導線421の直径の1.5倍は必要である。何故なら、カバー部軸方向平面4130の幅が導線421の径の1.5倍なければ、導線421の屈曲する内径側で加工硬化が生じて、導線421が屈曲しにくくなるからである。なお、本例では導線421の径は1ミリメートル程度であり、
図21の例ではカバー部軸方向平面4130の距離は1.9ミリメートル程度である。従って、
図21の例でもカバー部軸方向平面4130の周方向の長さは、導線421の径の1.5倍以上となっている。その為、カバー部軸方向平面4130の周方向の長さを導線421の径の1.5倍以上とすることは、屈曲部角度KB1を所定以上の角度として、屈曲部(カバー部接点4136)を支点として導線421を曲げやすくすることでもある。
【0060】
図10に戻って、巻線の概要を説明する。導線421をティース部402(ボビン410)に巻く際に、隣接するティース部402と干渉することが無いように、両隣りのティース部402はサイドフォーマ503によって覆われている。フライヤー501より供給される導線421は、サイドフォーマ503によってガイドされてティース部402(ボビン410)に巻装されることとなる。その為、サイドフォーマ503は導線421に過大な応力を生じさせることが無いよう、滑らかな曲面に形成されている。
【0061】
図11は、フライヤー501の回転に起因する導線421の軌跡の位置を模式的に示している。フライヤー501に保持された位置における導線421の軌跡であるフライヤー軌跡510は円形である。フライヤー軌跡510の中心は上述のフォーマ中心軸505である。従って、
図11は
図10のフォーマ中心軸505から見た図となる。このフライヤー軌跡510の直径Dは巻線機500の動作範囲で、例えば170ミリメートル程度である。サイドフォーマ503によってガイドされる位置における導線421の軌跡であるサイドフォーマ軌跡511は、サイドフォーマ503の形状に応じた長円形となっている。長径Dは、上述のフライヤー軌跡510の直径Dと同じである。短径D1は、両隣りのティース部402と干渉しない長さで、例えば、50ミリメートル程度である。
【0062】
メインフォーマ軌跡512は、上述したテンション面506によって規制される導線421の軌跡である。メインフォーマ軌跡512により、ボビン410のカバー部周方向平面4131からの浮きを抑えている。なお、メインフォーマ軌跡512が長円形をしていることから分かるように、導線421をカバー部周方向平面4131に沿わせて巻装する際には、導線421の浮きを抑える方向のテンションは導線421に加わっていない。メインフォーマ軌跡512の長径D2はボビン410の軸方向の長さに応じ、短径D3はボビン410の周方向の幅より大きくなっている。
【0063】
ボビン410に巻装される状態の導線421の軌跡であるボビン軌跡513は、長円形から端面カバー部413の形状に沿った形状となる。ボビン軌跡513の長径D5はメインフォーマ軌跡512の長径D2より小さく、ボビン410の軸方向の長さに応じている。また、ボビン軌跡513の短径D4はボビン410の周方向の幅に対応している。ここで、着目するのは、ティース部402(ボビン410)が長方形形状であるのに対し、導線421のメインフォーマ軌跡512は長円形形状である点である。巻線機500はフライヤー501を円形に旋回させるため、メインフォーマ軌跡512にも必然的に円形成分が含まれる。
【0064】
なお、ボビン軌跡513の長径D5がメインフォーマ軌跡512の長径D2より小さいのは、ボビン410に形成された外周フランジ部411をメインフォーマ502の内部に収納して衝突を避けるためである。ただ、メインフォーマ502は必ずしも
図18や
図19に示した一体型には限られない。メインフォーマ502を、それぞれがテンション面506を持つように2分割しても良い。メインフォーマ502を2分割とした場合には、ボビン軌跡513の長径D5はメインフォーマ軌跡512の長径D2と略同じとすることもできる。尤も、2分割した場合でもボビン410の形状に応じてボビン軌跡513の長径D5をメインフォーマ軌跡512の長径D2より小さくすることもある。
【0065】
比較例として、カバー部軸方向平面4130を形成しないボビン410を
図12に示す。この比較例では、カバー部周方向平面4131は、
図8で示した本開示の実施例と同じである。また、カバー部曲面4132も
図8で示した本開示の実施例と同様、4カ所に形成している。かつ、カバー部曲面4132は、カバー部周方向平面4131に正接している。ただ、
図8の実施例ではカバー部接点4136を設けてカバー部接点4136で屈曲させていたのに対し、比較例では、カバー部軸方向平面4130の代わりにカバー部軸方向曲面4133を形成している。そして、カバー部軸方向曲面4133は、カバー部軸方向曲面4133の半径がカバー部曲面4132の半径の2倍程度のなだらかな曲面にしている。即ち、比較例は端面カバー部413の軸方向端部はなだらかな曲面が連続し、屈曲点が生じていない。
【0066】
この比較例では、屈曲点が無いので導線421に対して折り曲げのベクトルは加わらない。それに対して、
図8に示す実施例では、カバー部軸方向平面4130を設けているので、上述のように、カバー部接点4136を屈曲点とすることができる。屈曲点を持つことで、カバー部接点4136が支点として作用して、導線421をカバー部周方向平面4131に沿って径方向に向かわせるベクトルを増加させることができている。上述のように、メインフォーマ軌跡512に円形成分が含まれるので、導線421をカバー部周方向平面4131に沿う方向に向かわせるベクトルを多くすることは重要である。換言すれば、フライヤー501の円運動の内、導線421に屈曲の為のテンションを加えるのは、メインフォーマ502のテンション面506のみであり、テンション面506による導線421の屈曲テンションがボビン410に加わるのは、端面カバー部413のカバー部曲面4132である。本開示の実施例ではカバー部接点4136で屈曲点を形成することにより、導線421をカバー部曲面4132の円弧に確実に添わせることができる。且つ、屈曲点をカバー部角度40度内の位置としているので、テンション面506での屈曲テンションを効果的に利用できる。換言すれば、テンション面506から離れようとするベクトルを低減できる。それによって、カバー部曲面4132に正接するカバー部周方向平面4131からの浮きを抑えることができる。
【0067】
導線421の屈曲のイメージを
図13と
図14に示す。
図13及び
図14は、共に導線421をボビン410に対して時計方向に巻装している。
図13に示す比較例では、端面カバー部413にカバー部軸方向曲面4133を形成しているので、導線421は軸方向の端面ではカバー部軸方向曲面4133に沿っている。ただ、軸方向の端面でカバー部軸方向曲面4133に沿った結果、カバー部曲面4132では導線421をカバー部曲面4132に沿って曲げる方向のテンションが掛からず、導線421は、周方向の端面ではカバー部周方向平面4131から浮きやすく(離れやすく)なっている。逆に、本開示の実施例である
図14では、カバー部軸方向平面4130を設けているので、軸方向の端面では、導線421は端面カバー部413から浮いている。しかし、カバー部接点4136を屈曲点として導線421を屈曲させているので、周方向の端面では、カバー部周方向平面4131に近づいた位置に導線421を巻装することができている。
【0068】
図15に、本開示の実施例(
図8図示)と比較例(
図12図示)とで浮き量にどの程度の差が生じるのかを示す。なお、浮き量とは導線421の内、最もカバー部周方向平面4131に近いものとカバー部周方向平面4131との間の距離である。
図15では、横軸に浮き量を取り、縦軸には張力を取っている。張力は、フライヤー501が導線421に与える張力である。
図15にXでプロットしたのが本開示の実施例であり、Yでプロットしたのが比較例である。導線421に加える張力を変化させても、いずれの場合でも本開示の実施例の方が浮き量は少なくなっている。
【0069】
このように、カバー部接点4136を設けることで浮き量は少なくなる。次に、カバー部接点4136を形成する位置による浮き量の差を説明する。
図25に、カバー部接点4136の位置が、カバー部角度KBに入っているものと、入っていないものとの浮き量の相違を示す。
図25の縦軸は浮き量であり、横軸はカバー部角度KBである。
図25で、記号A1で示すのは、
図24の比較例で、屈曲部角度KB1がカバー部角度KBの40度より大きくなっている。記号A2で示すのは、屈曲部角度KB1がカバー部角度KBの40度の範囲内に入っている例である。このように、カバー部接点4136の屈曲部角度KB1がカバー部角度KBの40度の範囲内に入っていると、浮き量を小さくすることができる。即ち、単にカバー部接点4136を設けることのみではなく、カバー部接点4136の設けられる部位が屈曲部角度KBの40度の範囲内であることも、浮き量を小さくするうえで重要である。なお、記号A3で示すのは、カバー部軸方向平面4130の周方向の長さが導線421の径の1.5倍未満の例である。
【0070】
浮き量を少なくすることは、コイル404の占積率を高めることとなる。特に、コイル404の配置される空間は限られているので、僅かの量であっても浮き量を減らすことは重要である。且つ、浮き量はボビン410の周方向の両側で生じ、しかも、各ボビン410で生じるものである。ボビン410(コイル404)が18個である場合、浮き量の影響は36倍となる。その為、浮き量を減らすことは、ステータ400全体としてみれば、占積率の向上に少なからず貢献する。浮き量を0.05~0.1ミリメートル減らすことによっても、コイル404の巻数の増加を達成することができる。
【0071】
上述の通り、本例では、ステータコア450は2分割されており、分割された夫々のステータコア450でコイル404は三相に巻かれている。一つのティース部402でコイル404を巻装した後、
図16に示すように、導線421は対応する次の同相のティース部402まで、渡線422で引き回される。そして、次のティース部402で同様に整列多層巻を行い、コイル404を巻装する。更に、渡線422で次の同相となるティース部402まで引き回され、そのティース部402でコイル404を巻装する。次いで、
図17に示すように、2つのステータコア450は、一方のステータコア450のティース部402の間に他方のステータコア450のティース部402が嵌り合うように組付けられる。組み合わさった状態では、隣接するティース部402間の隙間405(
図3、
図17図示)は小さくなっている。
【0072】
2つのステータコア450を組み合わせることで、コイル404の組付け工程を終了する。ステータ400の製造工程としては、余分となった導線421を切断して削除する。次いで、コイル404の端部となる導線421の絶縁被膜を剥離する。その後、コイル404の端部となる導線421とターミナル(図示せず)とを接合する。
【0073】
導線421として銅線を用いた場合は、接合はハンダ付けを行う。導線421としてアルミニウム線を用いた場合は、接合は溶接とし、次いで、保護ケース(図示せず)を用意して、保護ケースがターミナルと導線421との接合部を覆うようにする。そして、保護ケース内にポッティング材を充填する。ポッティング材の硬化を待って、ステータ400の組付け工程は完成する。
【0074】
なお、上述した例では、ボビン410の第1ボビン4100と第2ボビン4101とを同一形状としていた。しかし、必要に応じて第1ボビン4100と第2ボビン4101の形状を異ならせることは可能である。その場合には、カバー部軸方向平面4130、カバー部周方向平面4131、及びカバー部曲面4132も、第1ボビン4100と第2ボビン4101とで異なることがある。
【0075】
また、上述の例では、ステータコア450を2分割していたが、ステータコア450を3分割とすることも可能である。逆に、ステータコア450を分割せずに形成することも可能である。また、上述した例では、コイル404の巻線を整列多層巻としていた、一般に採用されている巻き方であり、製造工程でも採用しやすい巻線である。ただ、本開示はこの整列多層巻に限られることは無い。斜行巻きとすることも可能である。斜行巻きにすることで、コイル404の小型化を図ることができる。
【0076】
更に、上述したのは本開示の望ましい例であるが、本開示は種々に変更可能である。例えば、コイル404の数を18としたのは一例であり、コイル404の数は他に変更できる。また、上述の例で説明した大きさも一例であり、回転電機1に求められる性能に応じて、素材や大きさは適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 回転電機
300 ロータ
400 ステータ
404 コイル
410 ボビン
413 端面カバー部
4130 カバー部軸方向平面
4131 カバー部周方向平面
4132 カバー部曲面
421 導線
450 ステータコア