IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特開-測量システム及び測定方法 図1
  • 特開-測量システム及び測定方法 図2
  • 特開-測量システム及び測定方法 図3
  • 特開-測量システム及び測定方法 図4
  • 特開-測量システム及び測定方法 図5
  • 特開-測量システム及び測定方法 図6
  • 特開-測量システム及び測定方法 図7
  • 特開-測量システム及び測定方法 図8
  • 特開-測量システム及び測定方法 図9
  • 特開-測量システム及び測定方法 図10
  • 特開-測量システム及び測定方法 図11
  • 特開-測量システム及び測定方法 図12
  • 特開-測量システム及び測定方法 図13
  • 特開-測量システム及び測定方法 図14
  • 特開-測量システム及び測定方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142078
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】測量システム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241003BHJP
   G01C 7/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01C15/00 102A
G01C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054063
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】桐生 徳康
(72)【発明者】
【氏名】高本 悠介
(57)【要約】      (修正有)
【課題】容易に測定対象面の設定高さに対する偏差、或は不陸状態を測定可能であり、又不陸状態の測定と並行して測定した不陸情報を測定対象面に投影可能とした測量システム及び測定方法を提供する。
【解決手段】基準レベル測定装置3,21とポール装置2とを具備する測量システムであって、前記基準レベル測定装置は前記ポール装置の高さ測定の基準となる基準レベルを測定し、前記ポール装置は、施工面迄の距離を測定する測距センサ16と、高低情報を投影する投影装置17と、演算制御部19とを具備し、該演算制御部は投影パターンが格納された記憶部を有し、前記基準レベルと、前記測距センサが測定した距離情報と、前記投影パターンに基づき施工面に投影する前記高低情報を演算する様構成され、前記投影装置は前記高低情報を前記施工面に投影する様構成された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準レベル測定装置とポール装置とを具備する測量システムであって、前記基準レベル測定装置は前記ポール装置の高さ測定の基準となる基準レベルを測定し、前記ポール装置は、施工面迄の距離を測定する測距センサと、高低情報を投影する投影装置と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は投影パターンが格納された記憶部を有し、前記基準レベルと、前記測距センサが測定した距離情報と、前記投影パターンに基づき施工面に投影する前記高低情報を演算する様構成され、前記投影装置は前記高低情報を前記施工面に投影する様構成された測量システム。
【請求項2】
前記基準レベル測定装置は、既知の高さの水平基準面を形成するレーザレベルプレーナと、前記ポール装置に設けられ前記水平基準面を検出する受光器とを含み、前記演算制御部は前記受光器の検出結果に基づき前記基準レベルを演算し、該基準レベルに対する前記測距センサの測定基準位置の高さを演算し、前記測距センサの測定結果に基づき施工面の高低情報を演算する様構成された請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記基準レベル測定装置は、既知の高さに設けられた測量機と、前記ポール装置に設けられたプリズムとを含み、前記測量機は、測定結果を送信可能なTS通信部及び追尾機能を有し、前記ポール装置は、前記TS通信部からの測定結果を受信可能な端末通信部を有し、前記演算制御部は前記端末通信部を介して前記測量機で測定された前記プリズムの高さ情報を前記基準レベルとして取得し、前記プリズムの高さ情報に基づき、前記測距センサの測定基準位置の高さを演算し、前記測距センサの測定結果に基づき施工面の高低情報を演算する様構成された請求項1に記載の測量システム。
【請求項4】
前記ポール装置は、傾斜センサを更に具備し、前記演算制御部は、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記高低情報を補正する様構成された請求項1~請求項3のうちいずれか1項に記載の測量システム。
【請求項5】
前記投影パターンは、距離情報を所定の閾値に基づき区分して色付けし、距離情報の大きさに対応させ、色調、濃淡の階調を段階的に変化させるパターンであり、前記演算制御部は、前記投影パターンと前記測距センサが測定した距離情報に基づき前記施工面に投影する不陸マップを演算する様構成された請求項1に記載の測量システム。
【請求項6】
前記投影パターンは、測定された距離情報が設計値に対して合格範囲である部分を周囲の色と区別する様色相又は明度の異なる色とするパターンである請求項5に記載の測量システム。
【請求項7】
前記投影パターンは、前記合格範囲である部分を黒とするパターンである請求項6に記載の測量システム。
【請求項8】
前記投影パターンは、前記合格範囲より高い場合、暖色、寒色いずれかの一色とし、合格範囲より低い場合、暖色、寒色いずれか他方の一色とするパターンである請求項6に記載の測量システム。
【請求項9】
前記投影パターンは、施工面に投影される不陸マップを画像をぼやけさせるパターンである請求項5~請求項8のうちいずれか1項に記載の測量システム。
【請求項10】
前記投影パターンは、投影範囲をグリッド化し、1グリッドの範囲で不陸を平均化し、平均化した不陸の大きさに対応した色付けをして投影するパターンである請求項5に記載の測量システム。
【請求項11】
前記投影パターンは、測定範囲を囲む枠を投影するパターンである請求項5~請求項8及び請求項10のうちいずれか1項に記載の測量システム。
【請求項12】
前記施工面は均し材打設面であり、前記演算制御部は前記枠内の距離情報を積分し、前記施工面を均した場合の均し高さを演算し、該均し高さと設計高さとを比較し、前記枠内の均し材の量の過不足を演算する様構成された請求項11に記載の測量システム。
【請求項13】
前記演算制御部は、前記枠内の均し材の量の過不足に対応し、前記枠の色を変化させる請求項12に記載の測量システム。
【請求項14】
前記演算制御部は、前記枠内の均し材の量が適量となった場合、前記枠の色を変化、又は該枠を点滅させる請求項12に記載の測量システム。
【請求項15】
前記傾斜センサはIMUセンサであり、前記演算制御部は、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記ポール装置の動きを検出し、前記ポール装置の動きが少ない場合は、時間方向に平均化した前記高低情報を投影する様構成された請求項4に記載の測量システム。
【請求項16】
前記演算制御部は、前記枠を前記測距センサによる測定精度が保証される範囲で投影する様構成された請求項11に記載の測量システム。
【請求項17】
基準レベル測定装置、及び、施工面迄の距離を測定する測距センサと、高低情報を投影する投影装置と、投影パターンを有する演算制御部と含むポール装置と、を具備する測量システムに於いて、前記基準レベル測定装置により、前記ポール装置の高さ測定の基準となる基準レベルを測定する工程と、前記測距センサにより前記基準レベルを基準とした施工面迄の距離情報を測定する工程と、前記投影パターンと前記距離情報に基づき演算された前記高低情報を施工面に投影する工程とを含む測定方法。
【請求項18】
前記投影パターンは、距離情報の合格範囲を黒とする請求項17に記載の測定方法。
【請求項19】
前記投影パターンは、前記測距センサにより測定された範囲を囲む枠を投影する請求項17に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定対象面の不陸状態を測定し、又測定した不陸情報を測定対象面に投影可能とした測量システム及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの打設作業、或は整地作業に於いて、打設面或は整地面の不陸状態(凹凸状態)を解消し、設定した高さに施工することが望まれる。
【0003】
従来、例えば、コンクリートの打設作業に於いては、打設済部分に測定棒をコンクリートに当て、打設済部分のコンクリートの高さを所定間隔で実測していた。
【0004】
高さ実測後、不陸状態を生じていた場合、凹部分にはコンクリートを継足し、或は凸部分にはコンクリートを削除する等の修正作業をしていた。
【0005】
従来の方法では、個々の高さ測定が人手作業となり不陸測定の作業性が悪いという問題があり、又、コンクリートの打設作業、高さ測定作業、修正作業が別工程となることから作業能率が悪いという問題が有った。
【0006】
又、整地作業に於いても、整地後所定高さに糸を張る等して、整地高さ(不陸状態)の測定を行い、設定高さに対する偏差、不陸を生じている場合は、土盛り、除去の修正を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-49228号公報
【特許文献2】特許第6130078号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0235053号明細書
【特許文献4】特開2005-140523号公報
【特許文献5】特開2006-84346号公報
【特許文献6】特開平9-210687号公報
【特許文献7】特開2004-45159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、容易に測定対象面の設定高さに対する偏差、或は不陸状態を測定可能であり、又不陸状態の測定と並行して測定した不陸情報を測定対象面に投影可能とした測量システム及び測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基準レベル測定装置とポール装置とを具備する測量システムであって、前記基準レベル測定装置は前記ポール装置の高さ測定の基準となる基準レベルを測定し、前記ポール装置は、施工面迄の距離を測定する測距センサと、高低情報を投影する投影装置と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は投影パターンが格納された記憶部を有し、前記基準レベルと、前記測距センサが測定した距離情報と、前記投影パターンに基づき施工面に投影する前記高低情報を演算する様構成され、前記投影装置は前記高低情報を前記施工面に投影する様構成された測量システムに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記基準レベル測定装置は、既知の高さの水平基準面を形成するレーザレベルプレーナと、前記ポール装置に設けられ前記水平基準面を検出する受光器とを含み、前記演算制御部は前記受光器の検出結果に基づき前記基準レベルを演算し、該基準レベルに対する前記測距センサの測定基準位置の高さを演算し、前記測距センサの測定結果に基づき施工面の高低情報を演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記基準レベル測定装置は、既知の高さに設けられた測量機と、前記ポール装置に設けられたプリズムとを含み、前記測量機は、測定結果を送信可能なTS通信部及び追尾機能を有し、前記ポール装置は、前記TS通信部からの測定結果を受信可能な端末通信部を有し、前記演算制御部は前記端末通信部を介して前記測量機で測定された前記プリズムの高さ情報を前記基準レベルとして取得し、前記プリズムの高さ情報に基づき、前記測距センサの測定基準位置の高さを演算し、前記測距センサの測定結果に基づき施工面の高低情報を演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記ポール装置は、傾斜センサを更に具備し、前記演算制御部は、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記高低情報を補正する様構成された測量システムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記投影パターンは、距離情報を所定の閾値に基づき区分して色付けし、距離情報の大きさに対応させ、色調、濃淡の階調を段階的に変化させるパターンであり、前記演算制御部は、前記投影パターンと前記測距センサが測定した距離情報に基づき前記施工面に投影する不陸マップを演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0014】
又本発明は、前記投影パターンは、測定された距離情報が設計値に対して合格範囲である部分を周囲の色と区別する様色相又は明度の異なる色とするパターンである測量システムに係るものである。
【0015】
又本発明は、前記投影パターンは、前記合格範囲である部分を黒とするパターンである測量システムに係るものである。
【0016】
又本発明は、前記投影パターンは、前記合格範囲より高い場合、暖色、寒色いずれかの一色とし、合格範囲より低い場合、暖色、寒色いずれか他方の一色とするパターンである測量システムに係るものである。
【0017】
又本発明は、前記投影パターンは、施工面に投影される不陸マップを画像をぼやけさせるパターンである測量システムに係るものである。
【0018】
又本発明は、前記投影パターンは、投影範囲をグリッド化し、1グリッドの範囲で不陸を平均化し、平均化した不陸の大きさに対応した色付けをして投影するパターンである測量システムに係るものである。
【0019】
又本発明は、前記投影パターンは、測定範囲を囲む枠を投影するパターンである測量システムに係るものである。
【0020】
又本発明は、前記施工面は均し材打設面であり、前記演算制御部は前記枠内の距離情報を積分し、前記施工面を均した場合の均し高さを演算し、該均し高さと設計高さとを比較し、前記枠内の均し材の量の過不足を演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0021】
又本発明は、前記演算制御部は、前記枠内の均し材の量の過不足に対応し、前記枠の色を変化させる測量システムに係るものである。
【0022】
又本発明は、前記演算制御部は、前記枠内の均し材の量が適量となった場合、前記枠の色を変化、又は該枠を点滅させる測量システムに係るものである。
【0023】
又本発明は、前記傾斜センサはIMUセンサであり、前記演算制御部は、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記ポール装置の動きを検出し、前記ポール装置の動きが少ない場合は、時間方向に平均化した前記高低情報を投影する様構成された測量システムに係るものである。
【0024】
又本発明は、前記演算制御部は、前記枠を前記測距センサによる測定精度が保証される範囲で投影する様構成された測量システムに係るものである。
【0025】
又本発明は、基準レベル測定装置、及び、施工面迄の距離を測定する測距センサと、高低情報を投影する投影装置と、投影パターンを有する演算制御部と含むポール装置と、を具備する測量システムに於いて、前記基準レベル測定装置により、前記ポール装置の高さ測定の基準となる基準レベルを測定する工程と、前記測距センサにより前記基準レベルを基準とした施工面迄の距離情報を測定する工程と、前記投影パターンと前記距離情報に基づき演算された前記高低情報を施工面に投影する工程とを含む測定方法に係るものである。
【0026】
又本発明は、前記投影パターンは、距離情報の合格範囲を黒とする測定方法に係るものである。
【0027】
更に又本発明は、前記投影パターンは、前記測距センサにより測定された範囲を囲む枠を投影する測定方法に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基準レベル測定装置とポール装置とを具備する測量システムであって、前記基準レベル測定装置は前記ポール装置の高さ測定の基準となる基準レベルを測定し、前記ポール装置は、施工面迄の距離を測定する測距センサと、高低情報を投影する投影装置と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は投影パターンが格納された記憶部を有し、前記基準レベルと、前記測距センサが測定した距離情報と、前記投影パターンに基づき施工面に投影する前記高低情報を演算する様構成され、前記投影装置は前記高低情報を前記施工面に投影する様構成されたので、その場の測定情報、高低情報が直接投影される為、容易に測定対象面の不陸状態を視認でき、不陸状態の測定と並行して打設作業或は整地作業等の施工作業が可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施例に係る測量システムの概略図である。
図2】レーザレベルプレーナの概略構成図である。
図3】ポール装置の概略構成図である。
図4】不陸状態の測定についての説明図である。
図5】不陸測定作業のフローチャートである。
図6】第1の実施例の変更例を示す概略図である。
図7】第2の実施例に係る測量システムの概略図である。
図8】(A)は視差により距離測定を行う場合のパターンの一例を示す図、(B)はパターンに不陸画像を重畳させた状態の投影画像の図である。
図9】第3の実施例に係る測量システムの概略図である。
図10】第3の実施例に於けるトータルステーションの概略構成図である。
図11】第3の実施例に於けるポール装置の概略構成図である。
図12】第3の実施例に於ける不陸状態の測定についての説明図である。
図13】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)は、投影パターンの相違による不陸マップの変化を示す説明図である。
図14】(A)、(B)は測定範囲を示す枠を投影した場合を示す説明図であり、(A)は測定範囲と投影範囲が一致した状態、(B)は測定範囲が投影範囲よりも小さい状態を示している。
図15】投影される枠の投影角度の誤差と測定高さの誤差との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0031】
図1は第1の実施例に係る測量システムの概略を示しており、測量システムは主に高さ測定装置1、ポール装置2によって構成されている。尚、図1中、4は不陸マップ(後述)を示している。
【0032】
第1の実施例に於いて、前記高さ測定装置1としてレーザレベルプレーナ3が用いられている。尚、レーザレベルプレーナ3としては、例えば、特許文献4~特許文献7に示されるものがある。
【0033】
該レーザレベルプレーナ3は、レーザ光線により所定高さの水平基準面を形成するものである。水平基準面としては、レーザ光線を水平面に回転照射し、形成されるものであっても、或は、扇状のレーザ光線を水平に照射し、形成されるものであってもよい。以下の説明では、レーザ光線を水平面に回転照射して、水平基準面Oを形成した場合を説明する。
【0034】
図2を参照して、前記レーザレベルプレーナ3の概略を説明する。
【0035】
該レーザレベルプレーナ3は、三脚等の支持装置を介して所要の位置に設置される。該レーザレベルプレーナ3は、主に制御部5、第1傾斜センサ(チルトセンサ)6、レーザ光線照射部7、整準部8、水平回転駆動部9、操作部11、表示部12を含んでいる。
【0036】
前記第1傾斜センサ6は前記レーザレベルプレーナ3の水平に対する傾斜、即ち照射するレーザ光線の水平に対する傾斜を検出する。前記第1傾斜センサ6の検出結果は、前記制御部5に入力される。
【0037】
前記制御部5は前記第1傾斜センサ6の検出結果に基づき前記整準部8を駆動し、前記レーザレベルプレーナ3を水平に調整する。前記制御部5は、前記レーザ光線照射部7にレーザ光線を照射させ、前記水平回転駆動部9により前記レーザ光線照射部7を回転させ、水平基準面Oが形成される様にレーザ光線を回転照射する。
【0038】
前記レーザレベルプレーナ3は、水平基準面Oが既知の高さとなる様に設置される。例えば、基準となる床面からの前記水平基準面Oの高さは、実測、或は前記レーザレベルプレーナ3の仕様等から既知とされる。既知の水平基準面Oが形成されることで、測定対象物の該水平基準面Oを基準とした高さを測定することができる。
【0039】
前記操作部11から前記レーザレベルプレーナ3の動作のON/OFF指令、作動条件の設定等が入力され、前記表示部12には作動状態等が表示される。
【0040】
図3を参照して、前記ポール装置2を説明する。
【0041】
前記ポール装置2は、主にポール14と、該ポール14の所要高さに設けられた測定対象物としての受光器15、前記ポール14の上端に設けられた測距センサ16、プロジェクタ17、第2傾斜センサ18、演算制御部19、操作部23及び表示部24を具備している。前記受光器15と前記測距センサ16とは既知の位置関係に設けられている。
【0042】
前記受光器15は上下方向に延び、所定の長さを有する受光センサ21を有し、該受光センサ21は前記レーザ光線を検知し、検知信号を発する。前記受光センサ21は受光基準位置(例えば、前記受光センサ21の上下方向の中心、或は前記受光センサ21の下端等)を有する。
【0043】
前記検知信号は受光信号と共に検知位置情報を含んでいる。検知位置情報としては、前記受光基準位置に対する偏差等が含まれる。従って、前記検知信号に基づき、前記水平基準面Oに対する前記受光基準位置の高さを測定することができる。前記検知信号は、前記演算制御部19に入力される。
【0044】
前記水平基準面Oを形成する前記レーザレベルプレーナ3及び前記水平基準面Oの位置を検出する前記受光センサ21は、不陸測定の基準となるレベルを測定するものであり、基準レベル測定装置として機能する。
【0045】
前記測距センサ16は下方に向けられ、地表迄の距離を測定するものであり、前記測距センサ16としては、種々のものが採用可能である。一例として、測距カメラ22が用いられる。該測距カメラ22は、多数のピクセルからなる測距素子を有し、各ピクセル毎に測距光を発し、反射光を受光し、TOF(Time Of Flight)により測距を行うものであり、画像の様に面的に測距データを取得する。各ピクセルが出力する測距データは、前記測距素子上での位置情報(例えば、直交座標系の座標情報)を含んでいる。尚、前記測距センサ16としては、例えばレーザスキャナの様に測距光を高速に2次元に走査して面的に測定するのであってもよい。距離データは前記演算制御部19に入力される。
【0046】
前記測距カメラ22は測定基準位置を有し、該測距カメラ22が測定する距離は前記測定基準位置からの距離となっている。該測定基準位置と前記ポール14の下端迄の距離も既知となっている。又、前記測距カメラ22の前記測定基準位置と前記受光センサ21の受光基準位置との関係は既知となっており、前記測定基準位置と前記受光基準位置間の鉛直距離も既知となっている。
【0047】
従って、前記受光センサ21によって前記水平基準面Oの高さ(後述する不陸測定をする場合の基準レベル)を測定することで、前記水平基準面Oに対する前記測定基準位置の高さを取得できる。
【0048】
前記測定基準位置と前記プロジェクタ17の投影光学系の基準点との関係は既知となっており、更に、前記測距カメラ22の光軸と前記プロジェクタ17の光軸とは平行又は略平行であり、且つ両光軸間の距離も既知となっている。尚、前記プロジェクタ17又は前記測距カメラ22の光学系を両者の光軸が合致する様に構成しても良い。
【0049】
前記第2傾斜センサ18は、前記測距カメラ22の水平に対する傾斜、或は前記測距カメラ22の光軸の鉛直に対する傾斜を検出する。或は、前記ポール14の鉛直に対する傾斜を検出する。前記第2傾斜センサ18の傾斜検出結果は、前記演算制御部19に入力される。
【0050】
前記測距カメラ22の光軸は、前記ポール14と所要の角度で傾斜している。前記第2傾斜センサ18が、前記ポール14の鉛直に対する前記測距カメラ22の光軸の傾斜を検出する様構成された場合は、前記測距カメラ22の光軸は前記ポール14に対して既知の角度で傾斜している。
【0051】
前記第2傾斜センサ18は、前記演算制御部19に内蔵されてもよい。又、前記第2傾斜センサ18としては、加速度センサ、ジャイロセンサ等、種々のIMUセンサの使用が可能である。
【0052】
前記操作部23は、測定開始・終了の指令の入力、前記プロジェクタ17の投影モードの設定等を行う。
【0053】
前記表示部24は、測定開始・終了の指令等の指令入力画面、投影モードの選択メニュー画面、測定された不陸情報、前記プロジェクタ17によって投影される投影画像等を表示する。
【0054】
前記演算制御部19は、演算処理部25、記憶部26及び投影画像演算部27を含む。前記演算処理部25は、本実施例に特化されたCPU、或は汎用性CPU、埋込みCPU、マイクロプロセッサ等が用いられる。前記投影画像演算部27は、本実施例に特化されたCPU、或は汎用性CPU、埋込みCPU、マイクロプロセッサ等が用いられてもよい。或は、前記演算処理部25の機能の一部が前記投影画像演算部27として割当てられてもよい。
【0055】
前記記憶部26としては、RAM、ROM、FlashROM、DRAM等の半導体メモリ、HDD等の磁気記録メモリが用いられる。
【0056】
前記記憶部26には、本実施例を実行する為の種々のプログラムが格納されている。プログラムとしては、例えば、前記測距カメラ22、前記プロジェクタ17の同期等の統合制御する為の制御プログラム、前記プロジェクタ17に不陸マップ等の画像を投影させ、更に投影を制御する為のプログラム、前記測距カメラ22に測距を実行させる為の測距プログラム、測距データに基づき測定対象面の3次元データを演算する為の演算プログラム、該3次元データに基づき前記水平基準面Oに対する測定対象面の不陸(凹凸)データを演算する為の演算プログラム、該不陸データ及び投影パターン(後述)に基づき不陸マップを演算する為のプログラム、不陸マップに基づき映像信号を演算する為のプログラム等が含まれる。
【0057】
又、前記記憶部26には、高低状態を判断する為の閾値が格納され、或は測定データ、不陸データ、画像データ、不陸マップ等が格納される。以下、高低状態とは、測定対象面の設定高さに対する偏差の状態、設定面に対する凹凸(不陸)の状態、水平面に対する傾斜の状態を含むものとする。又、高低情報とは測定対象面の設定高さに対する偏差の情報、設定面に対する不陸の情報、水平面に対する傾斜の情報を含むものとする。
【0058】
更に、前記記憶部26には、状況に合わせて適切な不陸マップを作成する為の投影パターンが複数種類、複数グループ格納されている。
【0059】
例えば、グループA、グループB、グループC、グループDの投影パターンが格納される。
【0060】
更に、前記グループA(基本パターン)は、不陸(凹凸)が合格範囲(施工仕上高さ(設計値高さ)に対して所定の許容値内)の場合は、合格範囲である部分を周囲の色と区別する様色相又は明度の異なる色とする投影パターンであり、例えば、合格範囲を緑で示す投影パターン、合格範囲を白で示す投影パターン、合格範囲を黒で示す投影パターン、凹凸が合格範囲、不合格範囲を2色(例えば、暖色又は寒色の2色)で表す投影パターンが含まれ(尚、色は、緑、白に限定されるものではない)、
又、前記グループBには、画像をぼやけさせる投影パターンが含まれ、
又、前記グループCには、例えば、投影範囲をグリッド化して投影する投影パターンが含まれ、
又、前記グループDには、例えば、測定範囲を表す枠を投影する投影パターンが含まれる。
【0061】
前記演算処理部25は、前記記憶部26に格納された各種プログラムを展開して所要の処理、作動を実行し、前記受光器15、前記プロジェクタ17、前記測距カメラ22、前記記憶部26を所要のタイミングで、所要の動作をさせる様制御する。
【0062】
前記投影画像演算部27は、選択された投影パターンと、不陸測定データとに基づき前記プロジェクタ17が投影する不陸マップを演算する。
【0063】
図4を参照して不陸を測定する場合について説明する。
【0064】
図4中、30は基準となる床面を示し、前記レーザレベルプレーナ3は前記床面30に対して既知の高さに設置され、前記床面30に対して既知の高さの水平基準面Oを形成する。
【0065】
前記床面30から所定量下がった施工床面31に均し材を打設するとし、施工仕上り面を31aとする。尚、均し材としては、コンクリート、砂、砂利、ビーズ玉等が挙げられる。以下の説明では、均し材をコンクリートとしている。
【0066】
測定者は、例えば前記ポール14を前記施工床面31に設置し、前記ポール装置2を鉛直又は略鉛直に支持する。ポール装置2の垂直状態については、前記第2傾斜センサ18によって検出される。
【0067】
以下は、前記ポール装置2が鉛直に支持されたとして説明する。
【0068】
図4中、O1は前記測距カメラ22の測定基準位置を通過する水平線を示し、O2は前記受光センサ21の受光基準位置を通過する水平線を示している。前記施工仕上り面31aは、所定の打設高さになる様、水平基準面Oに対して高さの差Dに設定されている。
【0069】
前述した様に、測定基準位置と受光基準位置とは既知の関係にあり、水平線O1と水平線O2との間の距離は既知の値dとなっている。又、前記受光センサ21のレーザ光線受光位置と受光基準位置との偏差Δ(即ち、水平基準面Oと受光基準位置との偏差Δ)とし、前記測距カメラ22による施工面(コンクリート打設表面)31bの測距値(即ち、前記測距カメラ22の測定基準位置と施工面31b迄の距離)をSとする。
【0070】
前記施工仕上り面31aを基準とした、前記施工面31bの不陸ΔFは以下の式で求められる。
【0071】
ΔF=D+(d-Δ)-S…(1式)
【0072】
ここで、ΔFは受光基準位置より上方で+、下方で-を示す。又、ΔFは、+で施工仕上り面31aより凸の状態、マイナスで凹の状態を示している。
【0073】
前記高さの差D、測定基準位置と受光基準位置との距離dは、予め前記演算制御部19に設定され、前記測距カメラ22の測距結果、及び前記受光センサ21の検知信号はそれぞれ前記演算制御部19に入力され、該演算制御部19は前記高さの差D、距離d、前記測距結果、検知信号に基づき前記不陸ΔFを演算する。
【0074】
又、前記測距カメラ22は、測距素子のピクセル単位で測距が可能であり、前記演算制御部19がピクセル単位で前記不陸ΔFを演算することで、前記測距カメラ22の画角全体の不陸ΔF及び該不陸ΔFに基づく不陸分布をリアルタイムで取得することができる。
【0075】
ここで、不陸ΔFをデータ化したものを不陸データと称す。
【0076】
更に、前記演算制御部19は、不陸ΔFを前記記憶部26に設定されている閾値により段階的に区分することで、不陸マップ4(図1参照)を作成することができる。
【0077】
前記不陸マップ4は、前記不陸ΔFの値に応じて着色されたヒートマップとして可視化することができる。例えば、不陸ΔFが前記施工仕上り面31aに対して+の場合は暖色系とし、例えば3mmの増加毎に濃度或は色調を濃くする。更に、不陸ΔFが前記施工仕上り面31aに対して-の場合は寒色系とし、例えば3mmの減少毎に濃度或は色調を濃くする等である。
【0078】
尚、区分する閾値について、3mmに限らず、5mm、1cmとする等、適宜設定することができる。又、区分分けについては、一色で濃淡のみで表示してもよい。
【0079】
例えば、色調、濃淡の階調を段階的に変化させる場合の閾値をaとして不陸マップを作成する為の投影パターンを基本投影パターンとし、又基本投影パターンにより作成される不陸マップを基本不陸マップとする。
【0080】
不陸マップは前述した投影パターンを選択することで、前記投影画像演算部27が種々の不陸マップを作成することができる。
【0081】
図1に示す不陸マップ4は、投影範囲をグリッド化する投影パターンに基づき作成された場合を示している。
【0082】
該不陸マップ4では、投影範囲(前記測距カメラ22による測定範囲)をグリッド化し、1グリッド(1枡)毎に不陸データを平均化し、各グリッドの平均値と閾値を基に色付けしたものである。尚、図示では、不陸状態(凹凸状態)を濃淡で示している。
【0083】
前記演算制御部19は、作成された不陸マップ4を、映像信号として前記プロジェクタ17に入力し、前記測距カメラ22による不陸測定と同期して前記不陸マップ4を前記プロジェクタ17によって前記施工面31bに投影する。投影される不陸マップ4の位置、範囲は、前記測距カメラ22で測定した位置及び測距範囲と合致しており、前記施工面31bの不陸情報が不陸マップ4により、リアルタイムで正確に表示される。又、作業者は、投影された不陸マップ4から視覚により前記施工面31bの不陸状態を確認することができる。
【0084】
前記不陸マップ4の投影は、連続的であってもよいし、点滅させてもよい。或は作業者の指示により点灯、消灯させてもよい。消灯させることで、実際の施工面の仕上り状態を確認することができる。
【0085】
又、前記第2傾斜センサ18により、前記ポール装置2の動きを検知し、動きの少ない時には時間方向に平均化した前記不陸マップ4を投影する。時間方向に平均化することで、バラツキ、ちらつきが減少する。尚、平均化の時間については、予め設定した時間間隔でもよく、或は前記第2傾斜センサ18で検知した前記ポール装置2の動きの大きさ、頻度に応じて前記演算処理部25で適宜設定する様にしても良い。例えば本体の傾斜角速度が20°/秒以内程度の時に、動きが小さいとみなし不陸のデータを時間方向に平均化する。又、平均時間は、施工作業者の映り込みによって作業性が損なわれない1秒程度とする。
【0086】
前記不陸マップ4がコンクリート打設状態の前記施工面31bに投影される場合は、作業者はコンクリート打設時の不陸状態をリアルタイムで確認することができ、不陸状態をリアルタイムで修正することができる。従って、コンクリート打設作業を不陸状態を修正しつつ実行することができる。
【0087】
又、不陸マップがコンクリート打設済の前記施工面31bに投影される場合は、該施工面31bの仕上り状態、仕上り精度を確認することができる。
【0088】
上記説明では、前記ポール装置2が鉛直に支持されたとして説明したが、実際には前記ポール装置2が傾斜、或は揺動することが考えられる。該ポール装置2は第2傾斜センサ18を具備しており、前記ポール装置2(前記ポール14或は測距カメラ22の光軸)の傾斜をリアルタイムで検出し、傾斜検出結果は、前記演算制御部19にリアルタイムで入力されている。
【0089】
該演算制御部19は、前記施工仕上り面31aから前記測定基準位置迄の距離、及び傾斜検出結果に基づき前記測距カメラ22の測定結果(測定距離、測定位置)をリアルタイムで補正する。従って、前記ポール装置2が傾斜、或は揺動した場合でも、補正された不陸マップが投影され、測定者は正確な高低情報を確認することができる。
【0090】
次に、図5を参照して不陸測定作業について説明する。
【0091】
STEP:01 高さ測定装置1(本実施例ではレーザレベルプレーナ3)を所定の位置に設置し、整準後、射出されるレーザ光線の基準位置からの高さ(本実施例では前記床面30の位置)を実測する等し、既知化する。
【0092】
STEP:02 レーザ光線を回転照射し、水平基準面Oを形成する。
【0093】
STEP:03 受光器15により水平基準面Oを検出する。前記受光センサ21の受光位置から前記水平基準面Oに対する前記測距センサ16(本実施例では測距カメラ22)の測定基準位置の高さを求める。
【0094】
STEP:04 前記測距センサ16により、施工面を測定する。
【0095】
STEP:05 前記第2傾斜センサ18により前記測距センサ16の光軸の傾斜を検出する。
【0096】
STEP:06 傾斜検出結果に基づき前記測距センサ16の測定結果を補正する。
【0097】
STEP:07 補正された測定結果(以下、補正測定結果)と、前記水平基準面Oに対する測定基準位置の高さに基づき前記水平基準面Oに対する施工面31bとの高さを求める。
【0098】
STEP:08 予め設定してある施工仕上り面31aと前記施工面31bとの高さの差を演算し、高低情報(不陸データ)を取得する。
【0099】
STEP:09 投影パターンを選択し、選択した投影パターンと高低情報と予め設定した閾値に基づき不陸マップ4を作成する。
【0100】
STEP:10 前記測距センサ16と前記プロジェクタ17との位置関係、及び前記補正測距結果に基づき、前記プロジェクタ17と投影面(施工面31b)迄の距離を演算し、不陸マップを投影する。
【0101】
測定位置を変更して、測定を継続する場合は、STEP:02~STEP:10を繰返して実行する。
【0102】
図6は第1の実施例の変更例を示している。(尚、図6図7に於ける説明では、不陸マップが投影範囲をグリッド化する投影パターンに基づき作成された場合を示している。)
【0103】
図6中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0104】
ポール14の所要位置に、距離キャリブレーション用のターゲット板32を設ける。該ターゲット板32と測距カメラ22の基準位置との距離を実測し、或は製図から既知とし、既知化した距離を実測値とする。
【0105】
前記測距カメラ22により床面(施工仕上り面31a、施工面31b)を測定する際に、前記ターゲット板32を事前又は事後に、或は同時に測定し、前記測距カメラ22による前記ターゲット板32の測距結果と前記実測値とを比較し、前記測距カメラ22のキャリブレーションを行う。キャリブレーションにより、前記測距カメラ22の有する誤差が補正され、測定精度が向上する。
【0106】
図7は、第2の実施例に係る測量システムの概略を示しており、測量システムは主に高さ測定装置1、ポール装置2によって構成されている。尚、図1中、4は投影された不陸マップを示す。
【0107】
図7中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。尚、図7に於いて、レーザレベルプレーナ3の図示を省略している。
【0108】
第2の実施例では、測距センサ16がプロジェクタ17及びカメラ33によって構成されている。
【0109】
前記プロジェクタ17の光軸と前記カメラ33の光軸は平行であり、両光軸は所定の距離離間しており、離間距離は既知であり、又床面を測定するに充分な視差が得られる距離pとなっている。従って、前記プロジェクタ17と前記カメラ33は視差により距離測定を行う測距センサ16となっている。
【0110】
床面の距離測定時、前記プロジェクタ17は、測距の為の測定用パターン34が入った画像を投影する(図8(A))。尚、図8(A)では格子状のパターンを示しているが、視差による変位が確認できるパターンであればよく、例えば、縦横、所定間隔で分布させた点状のパターンであってもよい。
【0111】
床面に投影された前記測定用パターン34を前記カメラ33によって撮像する。
【0112】
前記カメラ33で取得された画像では、前記測定用パターン34の交点(黒○)が白○の位置に変位している。この変位量は、不陸の大きさに対応しているので、前記測定用パターン34全体で各交点の変位量を求めれば変位量に基づき不陸状態を測定できる。
【0113】
この不陸状態の測定結果に基づき、上記実施例と同様、不陸マップ4を作成することができる。この不陸マップ4は前記測定用パターン34に重畳させて投影してもよいし(図8(B)参照)、或は不陸マップ4のみを投影してもよい。
【0114】
又、第2の実施例の変形例として、前記測距センサ16が所定の視差を有する2つのカメラ(視差カメラ)で構成されてもよい。
【0115】
図9図12を参照して第3の実施例を説明する。尚、図9に於ける説明では、不陸マップが投影範囲をグリッド化する投影パターンに基づき作成された場合を示している。
【0116】
図9図12は第3の実施例に係る測量システムの概略を示しており、第1の実施例と同様、測量システムは主に高さ測定装置1、ポール装置2′によって構成されている。
【0117】
第3の実施例では、高さ測定装置1として追尾機能を有する光波距離装置、例えば、トータルステーション37が用いられている。尚、追尾機能を有する測定装置としては、イメージセンサを用いた画像による追尾やレーザスキャナによる形状追尾等が挙げられる。
【0118】
尚、図9中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0119】
前記トータルステーション37は、所要の位置に水平に整準されて設置される。前記トータルステーション37は既知の高さに設置される。即ち、前記トータルステーション37は測量基準点を有し、該測量基準点の3次元座標、少なくとも高さの座標(高さ位置)が既知とされる様設置される。例えば、図12を参照して、床面30に前記トータルステーション37が設置されるものとして、床面30を測量基準高さとすると、該床面30から前記測量基準点迄の高さDが既知とされる。
【0120】
ポール装置2′は、高さを測定する為の測定対象物として再帰反射特性を有するプリズム35を有する。該プリズム35の光学中心と測距カメラ22の測定基準位置とは既知の関係となっている。尚、測定対象物として反射シートが用いられてもよい。
【0121】
前記トータルステーション37は、測定対象物としての前記プリズム35を視準する望遠鏡部(図示せず)を有している。前記トータルステーション37は、該望遠鏡部を介して追尾光を射出し、前記プリズム35を追尾し、又望遠鏡部を介して測距光を射出し、前記プリズム35からの反射光を受光し、前記プリズム35について光波距離測定を行う。
【0122】
図10を参照して、トータルステーション37の概略の構成を説明する。
【0123】
該トータルステーション37は、主に演算制御部38、TS通信部42、記憶部43、測距部44、追尾部45、水平角検出器47、鉛直角検出器48、水平回転駆動部49、鉛直回転駆動部50、表示部51、操作部52を有している。
【0124】
前記演算制御部38は、前記TS通信部42、前記測距部44、前記追尾部45、前記水平回転駆動部49、前記鉛直回転駆動部50、前記表示部51の駆動制御、同期制御等、個々の制御と共に統合制御を行う。
【0125】
前記TS通信部42は前記ポール装置2′との間で、データ通信を行い、前記追尾部45は追尾光を射出し、前記プリズム35からの反射光を受光して追尾を行う。又、前記追尾部45による追尾と並行して、前記測距部44は測距光を射出し、前記プリズム35からの反射光を受光し、該プリズム35を測定対象として測距を行う。
【0126】
又、前記水平角検出器47は、基準点を有し、この基準点に対する望遠鏡の光軸の水平角を検出する様になっている。又、前記鉛直角検出器48は水平に対する高低角を検出する様になっている。
【0127】
前記水平回転駆動部49、前記鉛直回転駆動部50は、前記プリズム35を追尾する様、望遠鏡を鉛直回転及び水平回転する。前記水平角検出器47、前記鉛直角検出器48は、測距時の水平角、鉛直角を検出する。従って、前記トータルステーション37は、測定対象を測距すると共に測定対象の3次元座標を測定する。
【0128】
前記TS通信部42は測定された3次元座標をリアルタイムで、前記ポール装置2′に送信する。
【0129】
前記操作部52から前記トータルステーション37の動作のON/OFF、作動条件の設定等が入力され、前記表示部12にはトータルステーション37の作動状態等が表示される。
【0130】
図11は、第3実施例のポール装置2′の概略を示している。第3実施例に於けるポール装置2′と第1実施例に於けるポール装置2とは略同様な構成を有しており、前記ポール装置2′は、前記受光器15の代りに前記プリズム35を有し、前記トータルステーション37とのデータ通信の為の端末通信部53を備えている。
【0131】
尚、図11中、測距センサ16として測距カメラ22を示しているが、第2実施例で示した様に、測距センサ16がプロジェクタ17及びカメラ33或は視差カメラによって構成されてもよい。尚、図11中、図3中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0132】
第3の実施例に於ける不陸測定について、図12を参照して説明する。尚、図12中、図4中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
前記トータルステーション37により前記プリズム35を測定し、測定データとして前記プリズム35の3次元座標を前記TS通信部42から前記ポール装置2′の前記端末通信部53に送信する。該端末通信部53は受信した3次元データを演算制御部19に入力する。
【0134】
3次元データは更に演算処理部25に入力され、該演算処理部25は、3次元データから前記プリズム35の高さ、即ちトータルステーション37の測距光の照射位置の高さを取得する。
【0135】
取得した測距光の照射位置の高さは、前記床面30(図4参照)を基準とした前記プリズム35の高さ(プリズム35の光学中心の高さ)となっている。
【0136】
更に、前記演算処理部25は、前記プリズム35の光学中心と前記測距カメラ22の測定基準位置との既知の関係と前記プリズム35の高さから、前記床面30を基準とした前記測距カメラ22の高さを取得することができる。
【0137】
而して、前記ポール装置2′は、前記測距カメラ22の測定結果から施工面31bの不陸状態を測定することができる。
【0138】
第3の実施例では、前記トータルステーション37によって測定される前記プリズム35の高さが、不陸測定の基準となるものであり、前記トータルステーション37及び前記プリズム35は、不陸測定の基準となるレベルを測定する基準レベル測定装置として機能する。
【0139】
不陸マップ4の作成、不陸マップの前記施工面31bへの投影については、第1の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0140】
第3の実施例では、高さ測定装置1としてトータルステーション37を用い、ポール装置2′を追尾測定する様にしたが、この場合、前記ポール装置2′を施工床面31に設置するのではなく、ハンディタイプとすることができる。
【0141】
前記ポール装置2′の高さ(即ち、プリズム35の高さ)は、トータルステーション37によってリアルタイムで測定され、更に前記ポール装置2′の傾斜(測距センサ16の傾斜)は第2傾斜センサ18によりリアルタイムで検出されるので、前記ポール装置2′の測定高さを検出された傾斜で補正することで、前記測距センサ16の正確な高さが求められる。従って、前記測距センサ16の測定値から正確な不陸量が測定される。
【0142】
尚、投影される不陸マップについても、リアルタイムで補正されたものが投影されることは言う迄もない。
【0143】
又、ポール装置は、移動用のキャスターを有したり、移動体に登載して、リモートコントロールやプログラムによる移動をしながらの照射も可能である。上記説明では、測定対象面或は施工面の不陸を測定する場合について説明したが、測定対象面或は施工面の設定高さ(施工仕上り面)に対する偏差、或は施工面を複数箇所測定することによって、水平に対する傾斜を測定し得ることは言う迄もない。
【0144】
上記説明では、投影パターンとしてグリッド化する投影パターンの場合を説明したが、上記グループA、グループB、グループC、グループDのいずれかの投影パターンを選択することで、或は複数の投影パターンを組合わせることで、種々の形態の不陸マップを作成することができる。
【0145】
尚、基本となる投影パターンは、不陸の大きさを閾値a(aは作業環境等の要因によって適宜設定される)で段階的に区分し、区分毎に色調、濃淡の階調を段階的に変化させるパターンとする。尚、閾値については基準高さの近傍については狭く(小さく)、基準高さからの差が大きくなる程広く(大きく)する不等間隔パターンとしてもよい。又、基本投影パターンにより作成される不陸マップを基本不陸マップとする。
【0146】
図13を参照して投影パターンについて説明する。
【0147】
前記グループAに含まれる投影パターンa,b,c,dは、前記基本投影パターンをベースにするものである。
【0148】
コンクリートの打設作業、或は整地作業が進行するに従い、施工面31bが施工仕上り面31aの高さ(設計高さに対して所定の許容値、例えば±3mmの範囲)に仕上げられていくが、作業者が施工面31bが施工仕上り面31aの高さ(以下、合格範囲とする)となったことを容易に判別できることが好ましい。
【0149】
図13(A)は、投影パターンaにより作成された不陸マップを施工面に投影した状態を示している。不陸マップ中、合格範囲を周囲の色に対し、識別し易い色相、或は、明度とした色、例えば緑色(図中、緑の文字を記入)で示し、合格範囲より高い部分は暖色(図中、濃いめのハーフトーンで示される部分)、合格範囲より低い部分は寒色(図中、薄めのハーフトーンで示される部分)で示されている。合格範囲を認識し易い様に色付することで、作業の無駄が無くなり、作業性が向上する。
【0150】
又、図13(B)は、投影パターンbにより作成された不陸マップを施工面に投影した状態を示している。不陸マップ中、合格範囲を白色(図中、白の文字を記入)で示す様になっている。合格範囲を白色とすることで、合格範囲を認識し易くなると共に、合格範囲の境界が明確になる。
【0151】
又、図13(C)は、投影パターンcにより作成された不陸マップを施工面に投影した状態を示しており、合格範囲を黒(図示では、黒で示されるがどの色の光も照射されていない状態、即ち透明な状態)としている。合格範囲を黒とすることで、合格範囲には画像が投影されず、仕上り面を目視で確認することができる。
【0152】
又、図13(D)は、投影パターンdにより作成された不陸マップを施工面に投影した状態を示しており、投影パターンdでは合格範囲を上記した緑、白、黒等の色付けをし、合格範囲より高い部分は1色の暖色(図中、濃いめのハーフトーンで示される部分)、合格範囲より低い部分は1色の寒色(図中、薄めのハーフトーンで示される部分)とし、中間色をなくすことで合格部分、不合格部分の認識をより容易としたものである。
【0153】
図13(E)は、前記グループBの投影パターンeにより作成された不陸マップを施工面に投影した状態を示している。投影パターンeは、画像をぼやけさせる投影パターンであり不陸マップがぼやけることで、境界が不明瞭になり合格部分、不合格部分の概略の認識が容易になる。尚、投影パターンeの色付けに於いては、前記投影パターンa~投影パターンdのいずれかと組合わせることができる。又、前記投影パターンa~投影パターンdによる不陸マップを作成後、前記投影パターンeを適用しても良い。
【0154】
図13(F)は、前記グループCの投影パターンfにより作成された不陸マップを施工面に投影した状態を示している。投影パターンfは、投影範囲をグリッド化して投影する投影パターンであり、1グリッド(1枡)毎に不陸データを平均化して不陸マップを作成する。不陸マップは前記測距カメラ22による測定と平行し、リアルタイムで作成されるが、グリッド毎に平均化することでちらつきが減少する。
【0155】
前記投影パターンfによる不陸マップ作成に於いても、前記投影パターンa~投影パターンdのいずれかと組合わせることができる。図13(F)で示される不陸マップでは、合格範囲が黒で示されている。
【0156】
尚、グリッドの大きさは、投影された状態で施工面上で実寸と等しくなる様に設定される。又、グリッドの大きさは、前記測距カメラ22の測距結果、前記第2傾斜センサ18の検出結果に基づき前記演算処理部25でリアルタイムで演算され、前記プロジェクタ17による不陸マップの投影方向が変更された場合にも、常に施工面上で実寸と等しくしてもよい。
【0157】
図14により、グループDの投影パターンgについて説明する。
【0158】
図14(A)、図14(B)は、グループDの前記投影パターンgにより、枠55が施工面に投影された状態を示している。該枠55は、測定範囲を囲む様に投影される。該枠の色は、明確に認識される色が適宜選択される。又、前記枠55の形状は、矩形に限らず円或は任意の形状でもよい。
【0159】
又、前記枠55の投影は、不陸測定が保証できる範囲内で実行される。
【0160】
図15を参照すると、測距光の照射に基づく高さ測定は、施工面31bと鉛直線とのなす角度をθとすると、測定高さD=測距値L×cosθとなり、角度θは前記第2傾斜センサ18によって検出される。ここで、該第2傾斜センサ18の検出角度θは、誤差Δθを含むと考えられる。この誤差Δθは、測定高さの誤差ΔFeとなって現れる。従って、ΔFoを不陸許容値とすると、不陸測定精度が保証できる範囲は下記(2式)となる。
【0161】
ΔFe=|Lcos(θ±Δθ)-Lcosθ|≦ΔFo…(2式)
ここで、不陸許容値ΔFoは、施工上で求められる値、例えば3mmとされる。
【0162】
図14(A)は、施工面に不陸マップ4が重ねて投影されており、更に枠55が投影されている。図14(A)では、不陸マップ4の大きさ(不陸の測定範囲)と前記プロジェクタ17の投影範囲とが一致しているか、或は測定範囲が投影範囲より不陸マップの方が大きい場合を示している。
【0163】
不陸マップ4(測定範囲)が前記枠55で囲まれることで、施工面のどこの部分が測定範囲かが明確になり、施工作業の重複が避けられ、やり残しが明確になる。
【0164】
又、図14(B)は、測定範囲が前記プロジェクタ17の投影範囲より小さい場合を示している。この場合、前記プロジェクタ17の投影範囲を示す枠56を投影しても良い。
【0165】
上記した、不陸マップは施工仕上り面31a(設計高さ)に対する凹凸の状態を示すものであるが、測定範囲を囲む枠を投影することで、前記枠55内を前記施工仕上り面31aに均した場合のコンクリートの過不足について、或は均し作業の完了について、作業者に告知することが可能である。
【0166】
前記測距カメラ22により前記枠55内の不陸(凹凸)を測定しているので、前記演算処理部25により測定結果を積分することで、積分結果と前記施工仕上り面31aの高さに基づき、現状で前記枠55内を均した場合の施工面の均し高さを演算することができる。この均し高さと前記施工仕上り面31aの高さとの比較で前記枠55内のコンクリートが不足しているか、過剰であるかを求めることができる。
【0167】
更に、前記演算処理部25は、前記施工仕上り面31aの高さと前記均し高さ間の偏差を求め、該偏差と前記枠55の面積から、不足の場合は追加のコンクリート量、過剰の場合は除去するコンクリート量を演算することができる。コンクリートの不足量、過剰量を前記表示部24に表示してもよく、或はコンクリートの不足、過剰に対応させ、前記枠55の色を変えても良い。
【0168】
例えば、前記施工仕上り面31a、即ち設計高さに対して、前記均し高さが低くなる場合には前記投影枠の色を青とし、高くなる場合は赤とし、合格の高さである場合は白とする。投影枠の色を均し高さに応じた色とすることで、枠55の色が白となる迄コンクリートの追加、除去を行い、前記枠55の色が白となったところで均し作業を始めれば、作業の効率が向上する。尚、前記投影枠の色は、青、赤、白に限定されるものではない。
【0169】
更に、前記枠55内全体の均しが完了すると、前記枠55の点滅、色の変化等により作業者に告知しても良い。又、均しの完了は音によって告知してもよい。
【0170】
尚、グループDの投影パターンgの投影は、グループA~グループCの投影パターンと適宜組合わせることが可能である。
【0171】
又、測量システム及び測定方法は、コンクリートの均し作業の測定に限らず、砂、砂利、ビーズ玉等の均し材を敷設する作業の測定にも用いることができる。
【符号の説明】
【0172】
1 高さ測定装置
2 ポール装置
3 レーザレベルプレーナ
4 不陸マップ
5 制御部
15 受光器
16 測距センサ
17 プロジェクタ
18 第2傾斜センサ
19 演算制御部
21 受光センサ
22 測距カメラ
25 演算処理部
33 カメラ
34 測定用パターン
35 プリズム
37 トータルステーション
55 枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15