(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142085
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、その製造方法ならびにそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 210/18 20060101AFI20241003BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241003BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08F210/18
C08L23/08
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054075
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕司
(72)【発明者】
【氏名】吉富 哲志
(72)【発明者】
【氏名】岡部 暁斗
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002GM01
4J002GN00
4J002GN01
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS15R
4J100CA05
4J100DA01
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4J100DA09
4J100FA10
4J100FA19
4J100JA28
4J100JA29
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC10
4J128AD01
4J128AD11
4J128AD16
4J128AD18
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB04
4J128EB18
4J128EC05
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA04
4J128GA06
(57)【要約】
【課題】成形性の改良された新規なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造方法ならびにそれを含む組成物を提供する。
【解決手段】下記の要件1、および要件2を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)、並びにそれを含む組成物、それを特定の触媒で製造する方法。
要件1 エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、
特定の非共役ポリエン(X-C)とに由来する構成単位を有する。
要件2 (i)エチレン(X-A)/α-オレフィン(X-B)のモル比を特定する。
(ii)非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率を特定する。
(iii)極限粘度[η]が5.1~7.0dL/gである。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率((X-C)の重量分率)とが下記式(Z)を満たす。
2.5≦P/([η]2.9)≦(X-C)の重量分率×4 式(Z)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件1、および要件2を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)。
要件1
エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を、合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C)とに由来する構成単位を有する。
要件2
下記(i)~(iv)の要件を満たす。
(i)エチレン(X-A)/α-オレフィン(X-B)のモル比が50/50~80/20である。
(ii)非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量%中に0.07重量%~10重量%である。
(iii)極限粘度[η]が5.1~7.0dL/gである。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率((X-C)の重量分率)とが下記式(Z)を満たす。
2.5≦P/([η]
2.9)≦(X-C)の重量分率×4 式(Z)
【化1】
【請求項2】
非共役ポリエン(X-C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)。
【請求項3】
請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)を含むことを特徴とする組成物。
【請求項4】
更に、下記の要件3、および要件4を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(2)を含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
要件3
エチレン(X-A’)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B’)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を、合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C’)とに由来する構成単位を有する。
要件4
極限粘度[η]が1.0~2.2dL/gの範囲にある。
【化2】
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が1.0×105~4.0×105(GPCによる測定による)であり、分子量分布(Mw/Mn)(GPCによる測定による)が2.8~5.0の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の組成物から形成される成形体。
【請求項7】
下記一般式[A-2]で表される少なくとも1種のメタロセン化合物の存在下に、請求項1に記載のエチレン(X-A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)、および非共役ポリエン(X-C)からなるモノマーを共重合することを特徴とする請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造方法。
【化3】
ただし、式[A-2]において、Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、nは1~3の整数であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、R
1~R
5およびR
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、R
1~R
5のうち隣接する基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
【請求項8】
非共役ポリエン(X-C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)であることを特徴とする請求項7に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に関する。詳しくは、本発明は、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)等の特定の非共役ポリエンに由来する構成単位を有し、架橋速度が速く、成形性に優れた新規なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびその製造方法ならびにその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)に代表されるエチレン・α-オレフィン系ゴムは、その分子構造の主鎖に不飽和結合を有していないため、汎用されている共役ジエン系ゴムに比べ、耐熱性、耐候性に優れることから、自動車用部品、電線用材料、建築土木資材、工業材部品、各種樹脂の改質材等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
エチレン・α-オレフィン系ゴムを、過酸化物を用いて架橋する場合、特に5-ビニル-2-ノルボルネン(以下、VNBともいう)などの非共役ポリエンを共重合成分として含む場合に、架橋速度が速いことが知られている。さらに、成形性の改良が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、成形性の改良された新規なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造方法ならびにそれを含む組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の事項に関する。
〔1〕
下記の要件1、および要件2を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)。
要件1
エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を、合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C)とに由来する構成単位を有する。
要件2
下記(i)~(iv)の要件を満たす。
(i)エチレン(X-A)/α-オレフィン(X-B)のモル比が50/50~80/20である。
(ii)非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量%中に0.07重量%~10重量%である。
(iii)極限粘度[η]が5.1~7.0dL/gである。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率((X-C)の重量分率)とが下記式(Z)を満たす。
2.5≦P/([η]2.9)≦(X-C)の重量分率×4 式(Z)
【0006】
【化1】
〔2〕
非共役ポリエン(X-C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)であることを特徴とする〔1〕に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)。
〔3〕
前記の〔1〕に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)を含むことを特徴とする組成物。
〔4〕
更に、下記の要件3、および要件4を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(2)を含むことを特徴とする〔2〕または〔3〕に記載の組成物。
要件3
エチレン(X-A’)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B’)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を、合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C’)とに由来する構成単位を有する。
要件4
極限粘度[η]が1.0~2.2dL/gの範囲にある。
【0007】
【化2】
〔5〕
重量平均分子量(Mw)が1.0×10
5~4.0×10
5(GPCによる測定による)であり、分子量分布(Mw/Mn)(GPCによる測定による)が2.8~5.0の範囲にあることを特徴とする〔4〕に記載の組成物。
〔6〕
〔3〕から〔5〕のいずれか一項に記載の組成物から形成される成形体。
〔7〕
下記一般式[A-2]で表される少なくとも1種のメタロセン化合物の存在下に、請求項1に記載のエチレン(X-A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)、および非共役ポリエン(X-C)からなるモノマーを共重合することを特徴とする〔1〕に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造方法。
【0008】
【化3】
ただし、式[A-2]において、Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、nは1~3の整数であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、R
1~R
5およびR
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、R
1~R
5のうち隣接する基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
〔8〕
非共役ポリエン(X-C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)であることを特徴とする〔7〕に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、VNBなどの特定の非共役ポリエンを共重合成分として含有し、成形性に優れた新規なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を提供することができ、また、該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造方法ならびに用途を提供することができる。
【0010】
また、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、成形性、架橋特性、硬化特性に優れ、得られた成形体は機械的特性などの物性バランスに優れるとともに特に耐熱老化性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C)とに由来する構成単位を有する。
【0012】
【0013】
このような本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、上記エチレン(X-A)、α-オレフィン(X-B)、非共役ポリエン(X-C)に由来する構造単位に加えて、さらに上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(X-D)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0014】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0015】
このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0016】
すなわち、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0017】
上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に過酸化物との反応性が良好で、この共重合体を含む組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(X-C)がVNBを含むことが好ましい。
なお、非共役ポリエン(X-C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0018】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、エチレン(X-A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)および前記非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(X-D)に由来する構成単位を含んでいてもよい。このような非共役ポリエン(X-D)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン等が挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に硫黄や加硫促進剤との反応性が高く、架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。
【0019】
非共役ポリエン(X-D)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)が、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(X-D)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、エチレン(X-A)、α-オレフィン(X-B)、非共役ポリエン(X-C)、非共役ポリエン(X-D)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0020】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、上述の通り、エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、上記非共役ポリエン(X-C)と、必要に応じて上記非共役ポリエン(X-D)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記(i)~(iv)の要件を満たす。
(i)エチレン(X-A)/α-オレフィン(X-B)のモル比が50/50~80/20である。
(ii)非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量%中に0.07重量%~10重量%である。
(iii)極限粘度[η]が5.1~7.0dL/gである。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率((X-C)の重量分率)とが下記式(Z)を満たす。
2.5≦P/([η]2.9)≦(X-C)の重量分率×4 式(Z)
【0021】
(i)
要件である(i)は、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)中のエチレン(X-A)/α-オレフィン(X-B)のモル比が50/50~80/20を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22を満たすことが望ましい。このような本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、架橋成形体の原料として用いた場合に、得られる架橋成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0022】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)中のエチレン量(エチレン(X-A)に由来する構成単位の重量分率)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(X-B)に由来する構成単位の重量分率)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0023】
(ii)
要件である(ii)は、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の全構成単位の重量分率を100重量%とすると、非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率は、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%であることが望ましい。
【0024】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)が、この要件である(ii)を満たすと、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、過酸化物を用いて架橋した場合には、早い架橋速度を示すものとなり、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)が、架橋された成形体の製造に好適なものとなるため好ましい。
【0025】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)中の非共役ポリエン(X-C)量(非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0026】
(iii)
要件である(iii)は、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の極限粘度[η]を5.1~7.0dL/gと特定するものである。本発明の他の要件を満たし、かつ、この極限粘度の範囲にあるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は特に加工性に優れており、成形加工の効率が向上し、多くの用途の成形品に利用が可能となる。
【0027】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、極限粘度[η]が好ましくは5.5~6.5dL/g、より好ましくは5.5~6.0dL/gであることが望ましい。
【0028】
また本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは300,000~2,500,000であり、より好ましくは500,000~2,000,000であることが望ましい。
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
【0029】
(iv)
要件である(iv)は、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率((X-C)の重量分率:重量%)とが、下記式(Z)を満たすことを特定するものである。
2.5≦P/([η]2.9)≦(X-C)の重量分率×4 式(Z)
【0030】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(Z)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(Z)を満たすことができると考えられる。本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0031】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、好ましくは、下記式(Z’)を満たす。
P/([η]2.9)≦(X-C)の重量分率×5.7 … 式(Z’)
なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値を意味する。
【0032】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上述したように、上記エチレン(X-A)、α-オレフィン(X-B)および非共役ポリエン(X-C)に由来する構造単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(X-D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、エチレン(X-A)、α-オレフィン(X-B)、非共役ポリエン(X-C)、非共役ポリエン(X-D)の重量分率の合計を100重量%とする)で含むことも好ましい。
エチレン(X-A)、α-オレフィン(X-B)、非共役ポリエン(X-C)および非共ポリエン(X-D)は、それぞれバイオマス由来のものであってもよい。
【0033】
また、非共役ポリエン(X-C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
このような本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、ENBなどの非共役ポリエン(X-D)から導かれる構成単位の含有量が本発明の目的を損なわない範囲に抑制されており、後架橋を生じにくく、十分な耐熱老化性を有するため好ましい。
【0034】
ここで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の数(nc)あるいは非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の数(nD)は、非共役ポリエン(X-C)または(X-D)の分子量と、共重合体中における非共役ポリエン(X-C)または(X-D)に由来する構成単位の重量分率((X-C)または(X-D)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とから、下記式により求めることができる。
(nc)=(Mw)×{(X-C)の重量分率/100}/非共役ポリエン(X-C)の分子量
(nD)=(Mw)×{(X-D)の重量分率/100}/非共役ポリエン(X-D)の分子量
【0035】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(X-C)および非共役ポリエン(X-D)に由来するそれぞれの構成単位の数(nc)および(nD)が、いずれも上記の範囲を満たす場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)が、長鎖分岐含有量が少なく、かつ、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0036】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C)と、必要に応じて前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ2含む非共役ポリエン(X-D)とからなるモノマーを共重合してなる共重合体である。
【0037】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、前記の要件(i)~(iv)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0038】
メタロセン化合物
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、好ましくは、下記一般式[A-2]で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン化合物の存在下に、モノマーを共重合して得られたものであることが望ましい。モノマーの共重合を、このようなメタロセン化合物を含む触媒系を用いて行うと、得られる共重合体中が含有する長鎖分岐が抑制され、上記要件を満たす本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)を容易に調製することができる。
【0039】
【0040】
ただし、式[A-2]において、Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、nは1~3の整数であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、R1~R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、R1~R5のうち隣接する基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20の環状飽和炭化水素基、炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基が例示される。
【0042】
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。
アルキル基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0043】
炭素数3~20の環状飽和炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など、これらの環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1から17の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5~11である。
【0044】
炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2~4である。
【0045】
炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基としては、シクロペンタジエニル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、これらの環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1から15の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3から19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6~10である。
【0046】
炭素数1~20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、n-プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0047】
炭素数6~20のアリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4’-ビフェニリレン基などが例示される。アリーレン基の炭素数は好ましくは6から12である。
【0048】
アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2-ナフチル基が好ましい。
【0049】
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
【0050】
置換アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4-(トリメチルシリル)フェニル基、4-アミノフェニル基、4-(ジメチルアミノ)フェニル基、4-(ジエチルアミノ)フェニル基、4-モルフォリニルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、5-メチルナフチル基、2-(6-メチル)ピリジル基などが例示される。また、置換アリール基としては、後述する「電子供与性基含有置換アリール基」も挙げられる。
【0051】
ケイ素含有基としては、炭素数1~20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1~10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6~18が好ましい。
窒素含有基としては、アミノ基、ニトロ基、N-モルフォリニル基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構造単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH2-構造単位が、炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH3構造単位が、炭素数1から20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
【0052】
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH2-構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH3構造単位が、炭素数1~20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
【0053】
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
【0054】
R6としては、環状飽和炭化水素基が好ましい。特に好ましくはアダマンチル基である。
式[A-2]中の各記号については、式[A-1]において示したとおりである。
上記式[A-2]の中のホスフィンイミン部の具体的な構造は下記に例示される。
【0055】
【0056】
遷移金属化合物(A)を用いてエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の重合を行う際に、遷移金属化合物(A)と組み合わせて、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが出来る。以下、これら各成分について説明する。
【0057】
((B-1)有機金属化合物)
本発明で用いられる有機金属化合物(B-1)として、具体的には下記の一般式(B-1a)~(B-1c)で表される周期表第1、2、12、13族の少なくとも1種の元素を含む化合物が挙げられる:
【0058】
Ra
pAl(ОRb)qHrYs・・・(B-1a)
(一般式(B-1a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物;
【0059】
M3AlRc
4・・・(B-1b)
(一般式(B-1b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)で表される周期表第1族のアルカリ金属とアルミニウムとの錯アルキル化物;
【0060】
RdReM4 ・・・(B-1c)
(一般式(B-1c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期表第2族のアルカリ土類金属または第12族の金属とのジアルキル化合物。
【0061】
前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。
Ra
pAl(ОRb)3-p ・・・(B-1a-1)
(式(B-1a-1)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
Ra
pAlY3-p ・・・(B-1a-2)
(式(B-1a-2)中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
Ra
pAlH3-p ・・・(B-1a-3)
(式(B-1a-3)中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
Ra
pAl(ОRb)qYs ・・・(B-1a-4)
(式(B-1a-4)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0062】
一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
【0063】
(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0064】
Ra
2.5Al(ОRb)0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0065】
また(B-1a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物としてたとえば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
【0066】
前記一般式(B-1b)に属する化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを挙げることができる。
【0067】
前記一般式(B-1c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0068】
またその他にも、有機金属化合物(B-1)としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0069】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを、前記有機金属化合物(B-1)として使用することもできる。
【0070】
有機金属化合物(B-1)のなかでは、触媒活性の点から有機アルミニウム化合物が好ましい。
上記のような有機金属化合物(B-1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0071】
((B-2)有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0072】
(イ)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(ロ)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(ハ)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0073】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0074】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0075】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0076】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は、1種単独で、または混合して用いることができる。
【0077】
本発明に係る有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式(B-2a)または(B-2b)で表される構造のアルミノキサン、および下記一般式(B-2c)で表される繰り返し単位と下記一般式(B-2d)で表される繰り返し単位とを構造として有するアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
【0078】
【化7】
(一般式中、RおよびR
cは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10、好ましくは1~4の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基などの炭化水素基を例示することができる。これら例示したもののうちで、メチル基、エチル基、イソブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましく、前記一般式(B-2a)、(B-2b)および(B-2c)中、R
cの一部が塩素、臭素などのハロゲン原子で置換され、かつハロゲン含有率が40重量%以下であってもよい。
【0079】
前記一般式(B-2a)および(B-2b)中、rは2~500の整数を示し、好ましくは6~300、特に好ましくは10~100の範囲にある。
前記一般式(B-2c)および(B-2d)中、s、tはそれぞれ1以上の整数を示す。
【0080】
前記一般式(B-2c)で表される繰り返し単位と前記一般式(B-2d)で表される繰り返し単位とを有するアルミノキサンは、ベンゼンの凝固点降下法により測定した分子量が200~2000の範囲内にあることが好ましい。
【0081】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。)
【0082】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式(B-2e)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0083】
【化8】
(一般式(B-2e)中、R
15は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示し、4つのR
16は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
【0084】
前記一般式(B-2e)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(B-2f)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
R15-B(ОH)2 ・・・(B-2f)
(一般式(B-2f)中、R15は前記一般式(B-2e)におけるR15と同じ基を示す。)
【0085】
前記一般式(B-2f)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0086】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0087】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0088】
遷移金属化合物(A)に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0089】
((B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物)
本発明で用いられる、遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0090】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどである。
【0091】
前記イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(B-3a)で表される化合物が挙げられる。
【0092】
【化9】
(一般式(B-3a)中、R
17はH
+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R
18~R
21は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)
【0093】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0094】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0095】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0096】
R17としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0097】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0098】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0099】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0100】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0101】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(B-3b)または(B-3c)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0102】
【化10】
(式(B-3b)中、Etはエチル基を示す。)
【0103】
【化11】
(式(B-3c)中、Etはエチル基を示す。)
【0104】
イオン化イオン性化合物(化合物(B-3))の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0105】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、たとえば4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0106】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族のアルカリ金属または2族のアルカリ土類金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、およびトリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0107】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0108】
上記のようなイオン化イオン性化合物(遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3))は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)(以下、「成分(A)」と略記する場合がある。)と、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)、およびイオン化イオン性化合物(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)(以下、「成分(B)と略記する場合がある。)とともに、必要に応じて下記の担体(C)を含んでもよい。
【0109】
〔(C)担体〕
本発明で用いられる担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。担体(C)に上記遷移金属化合物(A)および化合物(B)を担持させることで、良好なモルフォロジーのポリマーが得られる。
【0110】
前記無機化合物としては、多孔質酸化物、固体状アルミノキサン化合物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
前記多孔質酸化物として、具体的にはSiО2、Al2О3、MgО、ZrО、TiО2、B2О3、CaО、ZnО、BaО、ThО2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用することができ、さらに、例えば天然または合成ゼオライト、SiО2-MgО、SiО2-Al2О3、SiО2-TiО2、SiО2-V2О5、SiО2-Cr2О3、SiО2-TiО2-MgОなどを使用することができる。これらのうち多孔質酸化物としては、SiО2および/またはAl2О3を主成分とするものが好ましい。
【0111】
なお、上記多孔質酸化物は、少量のNa2CО3、K2CО3、CaCО3、MgCО3、Na2SО4、Al2(SО4)3、BaSО4、KNО3、Mg(NО3)2、Al(NО3)3、Na2О、K2О、Li2Оなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0112】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる多孔質酸化物は、粒径が10~300μm、好ましくは20~200μmであって、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3~3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような多孔質酸化物は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して使用される。
【0113】
前記固体状アルミノキサン化合物としては、前記(B-2a)~(B-2d)で示したアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
本発明で用いられる前記固体状アルミノキサンは、従来公知のオレフィン重合触媒用担体と異なり、シリカやアルミナなどの無機固体成分やポリエチレン、ポリスチレンなどの有機系ポリマー成分を含まず、アルキルアルミニウム化合物を主たる成分として固体化したものを示す。本発明中で用いる「固体状」の意味は、アルミノキサン成分(B-2)が用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、例えば後述のように成分(A)と成分(B)とを接触させてオレフィン重合用固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエンなどの不活性炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において成分(B)が固体状態であることを表す。また、例えば後述のように成分(B)を用いて調製されるオレフィン重合用固体触媒成分を用いて懸濁重合を行う場合にヘキサンやヘプタン、トルエンなどの炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において触媒成分中に含まれる成分(B)が固体状態であることも必要な要件である。溶媒の代わりに液化モノマー中で重合を行うバルク重合や、モノマーガス中で重合を行う気相重合でも同様である。
【0114】
上記の環境下において成分(B)が固体状態であるかどうかは、目視による確認が最も簡便な方法であるが、例えば重合時などは目視による確認が困難である場合が多い。その場合は、例えば重合後に得られた重合体パウダーの性状や反応器への付着状態などから判断することが可能である。逆に、重合体パウダーの性状が良好で、反応器への付着が少なければ、重合環境下において成分(B)の一部が多少溶出したとしても本発明の趣旨を逸脱することはない。重合体パウダーの性状を判断する指標としては、嵩密度、粒子形状、表面形状、不定形ポリマーの存在度合いなどが挙げられるが、定量性の観点からポリマー嵩密度が好ましい。本発明における嵩密度は通常0.01~0.9であり、好ましくは0.05~0.6、より好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
【0115】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンは、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンに対し溶解する割合が、通常0~40モル%、好ましくは0~20モル%、特に好ましくは0~10モル%の範囲を満足する。
【0116】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンのn-ヘキサンに対する溶解割合は、25℃に保持された50mlのn-ヘキサンに固体状アルミノキサン担体2gを加えた後2時間の撹拌を行ない、次いでG-4グラス製フイルターを用いて溶液部を分離して、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求めた。従って、溶解割合は用いたアルミノキサン2gに相当するアルミニウム原子の量に対する前記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定する。
【0117】
本発明に係る固体状アルミノキサンとしては、公知の固体状アルミノキサンを際限なく用いることができる。公知の製造方法として例えば、特公平7-42301号公報、特開平6-220126号公報、特開平6-220128号公報、特開平11-140113号公報、特開平11-310607号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、WО2010/55652号公報などが挙げられる。
【0118】
本発明に係る固体状アルミノキサンの平均粒子径は、一般に0.01~50000μm、好ましくは1~1000μm、特に好ましくは1~200μmの範囲にある。
固体状アルミノキサンの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粒子を観察し、100個以上の粒子の粒径を測定し、重量平均化することにより求められる。固体状アルミノキサンの粒径は、ピタゴラス法最大長を粒子像より測定した。即ち、水平方向、垂直方向それぞれに、粒子像を2本の平行線ではさんだ長さを測り、下式をもって計算で求められる。
粒径=((水平方向長さ)2+(垂直方向長さ)2)0.5
【0119】
固体状アルミノキサンの重量平均粒子径は、上記で求めた粒径を用いて下式により求められる。
平均粒径=Σnd4/Σnd3(ここでn;粒子個数、d;粒径)
【0120】
本発明に好ましく用いられる固体状アルミノキサンは、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~800m2/gであり、細孔容積が0.1~2.5cm3/gであることが望ましい。
【0121】
前記無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0122】
前記粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、上記イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0123】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0124】
さらに、粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、
イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsО4)2・H2О、α-Zr(HPО4)2、α-Zr(KPО4)2・3H2О、α-Ti(HPО4)2、α-Ti(HAsО4)2・H2О、α-Sn(HPО4)2・H2О、γ-Zr(HPО4)2、γ-Ti(HPО4)2、γ-Ti(NH4PО4)2・H2Оなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0125】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上であることが好ましく、0.3~5cc/gであることが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~30000Åの範囲について測定される。
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0126】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0127】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(ОR)4、Zr(ОR)4、PО(ОR)3、B(ОR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13О4(ОH)24]7+、[Zr4(ОH)14]2+、[Fe3О(ОCОCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(ОR)4、Al(ОR)3、Ge(ОR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基などを示す)などを加水分解して得た重合物、SiО2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物なども挙げられる。
【0128】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
前述のように担体(C)は無機または有機の化合物であるが、有機化合物としては、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0130】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、上記化合物(B)、必要に応じて担体(C)と共に、必要に応じてさらに下記の特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0131】
〔(D)有機化合物成分〕
本発明において有機化合物成分(D)は、必要に応じて、本発明のオレフィン重合用触媒の重合性能および生成ポリマーの物性(たとえば生成ポリマーの分子量)を向上(分子量であれば、高分子量化)させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0132】
前記アルコール類および前記フェノール性化合物としては、通常、R22-ОHで表されるものが使用され、ここで、R22は炭素原子数1~50の炭化水素基(フェノール類の場合は炭素原子数は6~50)または炭素原子数1~50(フェノール類の場合は炭素原子数は6~50)のハロゲン化炭化水素基を示す。
【0133】
アルコール類としては、R22がハロゲン化炭化水素基のものが好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’-位が炭素数1~20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0134】
上記カルボン酸としては、通常、R23-CООHで表されるものが使用される。R23は炭素原子数1~50の炭化水素基または炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に、炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0135】
上記リン化合物としては、P-О-H結合を有するリン酸類、P-ОR、P=О結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
上記スルホン酸塩としては、下記一般式(D-a)で表されるものが挙げられる。
【0136】
【化12】
(一般式(D-a)中、M
5は周期表第1~14族の原子であり、R
24は水素、炭素原子数1~20の炭化水素基または炭素原子数1~20のハロゲン化炭化水素基であり、Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~20の炭化水素基または炭素原子数が1~20のハロゲン化炭化水素基であり、tは1~7の整数であり、uは1~7の整数であり、また、t-u≧1である。)
【0137】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造では、エチレン(X-A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B)と、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C)と、必要に応じて前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(X-D)とからなるモノマーを共重合する工程を含む。
【0138】
重合における、本発明の触媒を構成する各成分の使用法、重合器への添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
<1>遷移金属化合物(A)を単独で重合器に添加する方法。
<2>)遷移金属化合物(A)および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<3>遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した触媒成分、化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<4>化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<5>遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
<6>遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持した触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
<7>化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<8>化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
<9>遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)を担体(C)に担持した成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
<10>)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物(B)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)を任意の順序重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
<11>)遷移金属化合物(A)、化合物(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<12>化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<13>化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<14>遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<15>遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)、有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<16>遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)と接触させられる化合物(B)と、有機化合物成分(D)と接触させられる化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
<17>遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
<18>遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
<19>遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を重合器に添加する方法。
<20>遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)および有機化合物成分(D)と接触させられる化合物(B)と、単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
<21>遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒を重合器に添加方法。
<22>遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0139】
上記の担体(C)に遷移金属化合物(A)が担持された固体触媒成分、担体(C)に遷移金属化合物(A)および化合物(B)が担持された固体触媒成分には、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0140】
本発明では、共重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、また(共)重合に供するオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0141】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、遷移金属化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-3モルになるような量で用いられる。
【0142】
有機金属化合物(B-1)は、有機金属化合物(B-1)と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が通常0.01~100000、好ましくは0.05~50000となるような量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)中のアルミニウム原子と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10~500000、好ましくは20~100000となるような量で用いられる。遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(イオン化イオン性化合物)(B-3)は、イオン化イオン性化合物(B-3)と、遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1~10、好ましくは1~5となるような量で用いられる。
【0143】
有機化合物成分(D)は、有機金属化合物(B-1)とのモル比〔(D)/(B-1)〕が、通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)とのモル比〔(D)/(B-2)〕が、通常0.001~2、好ましくは0.005~1となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、イオン化イオン性化合物(B-3)とのモル比〔(D)/(B-3)〕が、通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。
【0144】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧~100kg/cm2-G、好ましくは常圧~50kg/cm2-Gの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0145】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間である。
【0146】
得られるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(b)の量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001~100NL程度が適当である。
【0147】
また、エチレン(X-A)とα-オレフィン(X-B)との仕込みのモル比(エチレン(X-A)/α-オレフィン(X-B))は、好ましくは40/60~99.9/0.1、より好ましくは50/50~90/10、さらに好ましくは55/45~85/15、最も好ましくは55/45~78/22である。
【0148】
非共役ポリエン(X-C)の仕込み量は、エチレン(X-A)と、α-オレフィン(X-B)と、非共役ポリエン(X-C)との合計(全モノマー仕込み量)100重量%に対して、通常0.07重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%である。
【0149】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)を含む組成物>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)はその有用性により、他の成分と共に使用される。他の成分として、各種のゴム、エラストマー、樹脂、可塑剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤、加硫助剤、フィラー、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤などが挙げられる。
【0150】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)および他の成分との組成物は、他の成分として、樹脂およびスチレン系エラストマーから選ばれる少なくとも1種が好適な態様である。
この場合は、組成物からの成形性が向上し、成形の効率が向上し、多くの用途の成形品に利用が可能となる。
【0151】
このような樹脂として、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ランダムPP、ブロックPPをはじめとするプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリ-4-メチレン-ペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、およびアクリル樹脂等を挙げることができる。
【0152】
これらの樹脂の中でも、エンジニアリングプラスチックとして、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミノビスマレイミドおよびポリビスアミドトリアゾール等がある。
また、スチレン系エラストマーは、例えば、ポリスチレンブロックと、炭素数4~10のアルカジエンに由来する単量体単位からなるポリオレフィンブロックとから構成されるブロック共重合体、又はその水素添加物であってもよい。
【0153】
スチレン系エラストマーは、ポリスチレンブロックとこれに結合したポリオレフィンブロックとからなるジブロックタイプの共重合体であってもよいし、両末端に配置されたポリスチレンブロックと、それらの間に配置されたポリオレフィンブロックとからなるトリブロックタイプの共重合体であってもよい。トリブロックタイプの共重合体は、成形体の耐衝撃性の向上により一層寄与することができる。スチレン系エラストマーとしてのブロック共重合体における、上記ポリオレフィンブロックの含有量は、ブロック共重合体の全体を100質量%としたとき、例えば95質量%以下、または90質量%以下であってもよく、例えば5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってもよい。スチレン系エラストマーが適切な割合のポリオレフィンブロックを含むことで、透明性、耐衝撃性、剛性、及びベタツキに関して良好な特性を有する成形体が得られ易い。
【0154】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと軟質部となるイソプレンまたはブタジエンなどの共役ジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBC)、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合(SBS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン/スチレン・ブタジエンランダム共重合体/スチレンブロックの共重合体の水添物(SESS)等が挙げられる。
【0155】
スチレン系エラストマーは、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。これらのうち、スチレン系エラストマーとしては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン/スチレン・ブタジエンランダム共重合体/スチレンブロックの共重合体の水添物(SESS)から選択される少なくとも一種であることが好ましい。水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)の市販品の例としては、JSR株式会社の商品名ダイナロン(登録商標)等が挙げられる。
【0156】
スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)を水素添加してなるものである。SISの市販品の例としては、JSR株式会社の商品名JSR SIS(登録商標)、株式会社クラレの商品名ハイブラー(登録商標)、およびシェル株式会社の商品名クレイトンD(登録商標)等が挙げられる。また、SEPSの市販品の例としては、株式会社クラレの商品名セプトン(登録商標)、およびシェル株式会社の商品名クレイトン(登録商標)等が挙げられる。
【0157】
スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)の市販品の例としては、旭化成株式会社の商品名タフテック(登録商標)およびシェル株式会社の商品名クレイトン(登録商標)等が挙げられる。
【0158】
スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)またはスチレン・イソブチレン共重合体(SIB)の市販品の例としては、株式会社カネカの商品名シブスター(登録商標)等が挙げられる。
【0159】
上記SESSとしては、旭化成社製の商品名S.O.E.(登録商標)S1606、あるいは、S.O.E.(登録商標)S1606とS1605との混合物等が挙げられる。
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)と樹脂および/又はスチレン系エラストマーからなる組成物における配合割合は、樹脂および/又はスチレン系エラストマー100重量部に対して、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)を1~100重量部が好適であり、中でも5~70重量部が更に好適である。
【0160】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)およびエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(2)からなる組成物>
これらの中でも、本発明のエチレン・α-オレフィン・ポリエン共重合体(1)および下記の要件3、および要件4を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(2)を含む組成物は、成形性に優れている。
要件3
エチレン(X-A’)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B’)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を、合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(X-C’)とに由来する構成単位を有する。
要件4
極限粘度[η]が1.0~2.2dL/gの範囲にある。
ここで、要件3における炭素原子数3~20のα-オレフィン(X-B’)は上記のα-オレフィン(X-B)と同様であり、非共役ポリエン(X-C’)も上記の非共役ポリエン(X-C)と同様である。
また、要件4では極限粘度[η]が1.0~2.2dL/gの範囲に規定されている。これは、上記のエチレン・α-オレフィン・ポリエン共重合体(1)の極限粘度[η]が5.1~7.0dL/gに比して、小さい値の範囲である。
【0161】
このような共重合体は、バナジウム系触媒、種々のメタロセン系触媒のいずれを用いても製造することができる。また、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)の製造に好適である上記のメタロセン化合物を用いて製造することもできる。
【0162】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)(ポリエン共重合体(1)と略称することがある)およびエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(2)(ポリエン共重合体(2)と略称することがある。)の重量比は、ポリエン共重合体(1)/ポリエン共重合体(2)の重量比が99/1~1/99が好適であり、その中でも90/10~5/95がより好適であり、その中でも80/20~10/90が更に好適な範囲である。その中でも、ポリエン共重合体(1)/ポリエン共重合体(2)の重量比が40/60~20/80が特に好適である。
【0163】
ポリエン共重合体(1)およびポリエン共重合体(2)からなる組成物の重量平均分子量(Mw)の好適な範囲は1.0×105~4.0×105(GPCによる測定による)である。その中でも、1.5×105~3.5×105(GPCによる測定による)が好適な範囲である。
【0164】
また、ポリエン共重合体(1)およびポリエン共重合体(2)からなる組成物の分子量分布(Mw/Mn)(GPCによる測定による)の好適な範囲は2.8~5.0である。その中でも、3.0~4.5(GPCによる測定による)が好適な範囲である。
【0165】
以下に示すポリエン共重合体(1)を用いた種々の組成物における「ポリエン共重合体(1)」の替わりに、この「ポリエン共重合体(1)およびポリエン共重合体(2)からなる組成物」を用いることが望ましい。
【0166】
なお、「ポリエン共重合体(1)」の替わりに、「ポリエン共重合体(1)およびポリエン共重合体(2)からなる組成物」を用いる場合は、以下において、ポリエン共重合体(1)100重量部に対して配合される割合が記載されている範囲を、「ポリエン共重合体(1)およびポリエン共重合体(2)からなる組成物」100重量部に対して配合される範囲として、読み替えるものとする。
エチレン・α-オレフィン・ポリエン共重合体(1)を用いた組成物の好適な例として、以下に「熱可塑性樹脂組成物」および「ゴム組成物」について説明する。
【0167】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)及び熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物である。
【0168】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂組成物に配合可能な各種添加剤、充填剤、および本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)以外の本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を適宜含有することができる。
【0169】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、架橋を行って各種用途に好適に用いることができ、熱可塑性樹脂組成物中に架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては公知の架橋剤を特に制限なく用いることができるが、なかでも有機過酸化物が好ましい。
【0170】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、有機過酸化物を含有する場合、有機過酸化物の含有量(モル)は、下記式(Q)を満たすことが好ましい。
有機過酸化物の含有量(モル)×有機過酸化物1分子中の酸素-酸素結合数
≦ (X-C)の重量分率/(X-C)の分子量×100 … 式(Q)
(式(Q)中、(X-C)の重量分率は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)中の非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率(重量%)を、(X-C)の分子量は非共役ポリエン(X-C)の分子量を表す。)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、後述するゴム組成物であることが好ましい。
【0171】
<ゴム組成物>
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)は、良好なゴム性状を示し、ゴム組成物の原料として好適に用いられる。
【0172】
本発明に係るゴム組成物は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)に加えて、軟化剤、充填剤、その他の樹脂成分、架橋剤などを適宜含有することができる。
【0173】
軟化剤
軟化剤としては、特に限定はないが、通常、鉱物油や合成油が用いられる。
【0174】
鉱物油としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等が挙げられる。また、合成油としては、ブテン系オリゴマー、エチレン・α-オレフィンコオリゴマー等が挙げられる。
【0175】
なお、エチレン・α-オレフィンコオリゴマーとは、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより得られる、GPCで測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10,000未満の重合体である。エチレン・α-オレフィンコオリゴマーとしては、エチレン・炭素原子数3~8のα-オレフィンコオリゴマーが好ましく、液状のエチレン・プロピレンラバー(EPR)がより好ましく、GPCで測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量が2,500~5,000の液状のエチレン・プロピレンラバー(EPR)が特に好ましい。
【0176】
なお、軟化剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
本発明のゴム組成物における軟化剤の含有量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、軟化剤が0.1~300重量部であり、好ましくは、1~250重量部であり、より好ましくは、5~200重量部である。前記範囲内では、ゴム組成物の押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等や、ロール加工性などの成型加工性に優れるため好ましい。
【0177】
充填剤
本発明のゴム組成物には、充填剤が含まれることが好ましい。
充填剤としては、特に限定はないが、無機充填剤がゴム組成物の引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械強度を向上させるため好ましい。
【0178】
無機充填剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク等が通常は用いられる。無機充填剤としては、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムが好ましい。
なお、充填剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0179】
本発明のゴム組成物における充填剤の含有量は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、充填剤が1~300重量部であり、好ましくは5~250重量部であり、より好ましくは10~200重量部である。前記範囲内では、ゴム組成物の混練性、加工性に優れ、ゴム成形体の機械的性質、圧縮永久歪みに優れるため好ましい。
【0180】
その他の樹脂成分
本発明のゴム組成物は、前述のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)以外の樹脂成分を必要に応じて含有してもよい。このようなその他の樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0181】
本発明のゴム組成物がポリオレフィン樹脂を含有すると、製品硬度を調整できるとともに、加工温度でのコンパウンド粘度を下げることができるため、加工性をより向上させることができる。また熱可塑性エラストマーとして取り扱いができ、ハンドリング性、混練手法の幅が広がるため好ましい。
【0182】
ポリオレフィン樹脂としては、通常、GPCで測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10,000以上のポリオレフィン樹脂が好適に用いられる。
ポリオレフィン樹脂としては、α-オレフィン単独重合体、α-オレフィン共重合体が挙げられる。α-オレフィン単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、α-オレフィン共重合体としては、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン共重合体、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(ただし、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とは異なる)が挙げられる。エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレンラバー(EPR)、プロピレン・エチレンラバー(PER)、エチレン・ブテンラバー(EBR)、エチレン・オクテンラバー(EOR)などが挙げられる。
【0183】
また、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(ただし、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)とは異なる)としては、エチレン・プロピレンターポリマー(EPT)、エチレン・ブテンターポリマー(EBT)などが挙げられる。
【0184】
ポリオレフィン樹脂としては、これらの中でも、ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレンが好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0185】
本発明のゴム組成物がポリオレフィン樹脂を含有する場合の、ポリオレフィン樹脂の含有量は、前述のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、ポリオレフィン樹脂が1~100重量部であり、好ましくは5~80重量部であり、より好ましくは10~50重量部である。前記範囲内では、ゴム組成物から形成される成形体の硬度を調整できるとともに、加工温度でのコンパウンド粘度を下げることができるため、加工性をより向上させることができる。また熱可塑性エラストマーとして取り扱いができ、ハンドリング性、混練手法の幅が広がるため好ましい。
【0186】
架橋剤
本発明のゴム組成物は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤を含有するゴム組成物を用いることにより、ゴム組成物を架橋し、架橋体を得ることができる。
【0187】
架橋剤としては、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノン又はその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート等のゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂が好ましい。
【0188】
本発明に係るエチレン・α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、有機過酸化物を用いた架橋において、特に優れた架橋特性を達成し得るため、本発明のゴム組成物は、架橋剤として有機過酸化物を含有することが特に好ましい。
【0189】
架橋剤が有機過酸化物である場合には、その具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0190】
これらのうち、反応性、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート等の1分子内に2つのペルオキシド結合(-O-O-)を有する2官能性の有機過酸化物が好ましく、中でも、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンが最も好ましい。
【0191】
架橋剤が有機過酸化物である場合には、該有機過酸化物の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.2~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部である。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、ゴム成形体が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0192】
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合には、本発明のゴム組成物は、下記架橋助剤を含有することが好ましい。
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合に、ゴム組成物が含有することが好ましい架橋助剤としては、例えば、イオウ、p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;その他マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~5モルである。また、架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して0.5~2モル、好ましくは0.5~1.5モル、さらに好ましくはほぼ等モルの量とすることも望ましい。
【0193】
本発明のゴム組成物において、有機過酸化物の配合量は、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる量、すなわち、有機過酸化物の含有量(モル)が、下記式(Q)を満たす量であることも好ましい。
有機過酸化物の含有量(モル)×有機過酸化物1分子中の酸素-酸素結合数
≦ (X-C)の重量分率/(X-C)の分子量×100 … 式(Q)
(式(Q)中、(X-C)の重量分率は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体中の非共役ポリエン(X-C)に由来する構成単位の重量分率(重量%)を、(X-C)の分子量は非共役ポリエン(X-C)の分子量を表す。)
なお、架橋剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0194】
架橋剤が硫黄系化合物である場合には、その具体例としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。
【0195】
架橋剤が硫黄系化合物である場合には、該硫黄系化合物の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.3~10重量部、好ましくは0.5~7.0重量部、さらに好ましくは0.7~5.0重量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、ゴム組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合には、本発明のゴム組成物は、下記架橋助剤を含有することが好ましい。
【0196】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合に、ゴム組成物が含有することが好ましい架橋助剤としては、例えば、酸化亜鉛、亜鉛華などが挙げられる。架橋助剤の配合量は、エチレン・-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常1~20重量部である。
架橋剤に硫黄系化合物を使用する場合には、硫黄と加硫促進剤を併用することが望ましい。
【0197】
加硫促進剤の具体例としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)(例えば、「ノクセラーNS」(商品名;大内新興(株)社製)など)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB-P」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド-アニリン縮合物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、アルデヒドアミン系;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)(例えば、「ノクセラーTT」(商品名;大内新興(株)社製)など)等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)(例えば、「サンセラーBz」(商品名;三新化学工業社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素。N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;その他亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0198】
これらの加硫促進剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.1~20重量部、好ましくは0.2~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、優れた架橋特性を示すので好適である。
【0199】
加硫助剤は、その用途により適宜選択でき、単独でも2種以上混合して用いることができる。加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。
その配合量は、通常、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常1~20重量部である。
【0200】
発泡剤
本発明のゴム組成物は、発泡剤を含有してもよい。なお、本発明のゴム組成物が、発泡剤を含有する場合には、通常、前記架橋剤も含有する。架橋剤および発泡剤を含有するゴム組成物を用いることにより、ゴム組成物を架橋および発泡し、発泡体を得ることができ
る。
【0201】
発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)等のヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’-ジフェニルジスルホニルアジド等のアジド化合物などの有機発泡剤が挙げられる。発泡剤としては、ADCA、OBSHが好ましい。発泡剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0202】
本発明のゴム組成物が、発泡剤を含有する場合には、発泡剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.2~30重量部、好ましくは0.5~25重量部、より好ましくは0.5~20重量部である。
【0203】
発泡助剤
本発明のゴム組成物が発泡剤を含有する場合には、必要に応じて発泡助剤さらに含有してもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用を示す。
このような発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸やその塩、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0204】
本発明のゴム組成物が、発泡助剤を含有する場合には、発泡助剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.2~30重量部、好ましくは0.5~25重量部、より好ましくは0.5~20重量部である。
【0205】
加工助剤
本発明のゴム組成物は、加工助剤を含有してもよい。加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0206】
本発明のゴム組成物が、加工助剤を含有する場合には、加工助剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.1~10重量部、好ましくは0.5~8重量部、より好ましくは1~6重量部である。上記範囲内であると、得られるゴム組成物の表面のブルームがなく、さらにゴム組成物を架橋する際に、架橋阻害が発生しないため好ましい。また、加工助剤を含有するゴム組成物は押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等の成形性、およびロール加工性に優れるため好ましい。
【0207】
界面活性剤
本発明のゴム組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン、トリエタノールアミン、「アクチングB(吉富製薬株式会社製)、「アクチングSL(吉富製薬株式会社製)等のアミン類、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例;「Struktol activator73」、「Struktol IB 531」、「Struktol FA541」Schill&Seilacher社製)、「ZEONET ZP」(日本ゼオン株式会社製)、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(例;「アーカード2HF」(ライオン・アクゾ株式会社製)等が挙げられる。
【0208】
本発明のゴム組成物が、界面活性剤を含有する場合には、界面活性剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.2~10重量部、好ましくは0.3~5重量部、さらに好ましくは0.5~4重量部である。
界面活性剤は、その用途により適宜選択でき、単独でも2種類以上混合して用いることができる。
【0209】
老化防止剤
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。本発明のゴム組成物が老化防止剤を含有すると、該組成物から得られる製品寿命を長くすることが可能である。老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等を用いることができる。
【0210】
老化防止剤としては、具体的には、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0211】
本発明のゴム組成物が、老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.01~10重量部、好ましくは0.02~7重量部、さらに好ましくは0.03~5重量部である。上記範囲内であると、本発明のゴム組成物から得られる成形体が耐熱老化性に優れるため好ましい。
【0212】
擬似ゲル防止剤
本発明のゴム組成物は、擬似ゲル防止剤を含有してもよい。擬似ゲル防止剤としては、たとえば、「NHM-007」(三井化学社製)が挙げられる。
【0213】
本発明のゴム組成物が、擬似ゲル防止剤含有する場合には、擬似ゲル防止剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、通常は0.1~15重量部、好ましくは0.5~12重量部、さらに好ましくは1.0~10重量部である。
【0214】
その他の添加剤
本発明のゴム組成物には、さらにその他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤等が挙げられる。
【0215】
<ゴム組成物の調製方法>
本発明のゴム組成物は、前述のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含有するゴム組成物であり、好ましくは、軟化剤、充填剤、架橋剤などの成分を含有する。たとえば、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)100重量部に対して、軟化剤0.1~300重量部、充填剤1~300重量部含有するゴム組成物が挙げられるが、その調製方法としては特に限定はない。
【0216】
ゴム組成物の調製方法としては、例えば、ゴム組成物に含まれる各成分を、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られる混練機、さらに二軸押出機のような連続混練機等を用いて混合する方法、ゴム組成物に含まれる各成分が溶解または分散した溶液を調製し、溶媒を除去する方法、等が挙げられる。
【0217】
成形・加硫に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合には、ゴム組成物は通常連続的に成形・加硫される。
【0218】
<架橋ゴム成形体>
本発明の架橋ゴム成形体は、前述のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体と、架橋剤とを含有し、必要に応じて軟化剤、充填剤等の添加剤を含有するゴム組成物を架橋することにより得られる。なお、架橋の際には、金型を用いても、用いなくてもよい。金型を用いない場合には、ゴム組成物は、通常連続的に成形、架橋される。
【0219】
ゴム組成物を架橋させる方法としては、(m)架橋剤を含有するゴム組成物を、通常、押出し成形、プレス成形、インジェクション成形等の成形法や、ロール加工により所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入して加熱する方法や、(n)架橋剤を含有するゴム組成物を、(m)の方法と同様の方法で予備成形し、次いで電子線を照射する方法を例示することができる。
【0220】
なお、(m)の方法では、加熱によりゴム組成物中の架橋剤による架橋反応が起こり、架橋体が得られる。また、(n)の方法では、電子線により架橋反応が起こり、架橋体が得られる。(n)の方法においては通常、予備成形が施されたゴム組成物に、0.1~10MeVのエネルギーを有する電子線を、ゴム組成物の吸収線量が通常は0.5~36Mrad、好ましくは0.5~20Mrad、さらに好ましくは1~10Mradになるように照射する。
【0221】
<発泡体>
本発明の発泡体は、前述のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体と、必要に応じて、軟化剤、充填剤、架橋剤等の添加剤と、発泡剤とを含有するゴム組成物を架橋および発泡することにより得られる。
【0222】
前記ゴム組成物は、発泡剤を含むため、ゴム組成物を加熱することによって、架橋剤による架橋反応と共に、発泡剤が分解して炭酸ガスや窒素ガスを発生する。このため、気泡構造を有する発泡体が得られる。
【0223】
<用途>
本発明のゴム組成物は、低温特性、機械特性、押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等の成形性、およびロール加工性に非常に優れており、本発明のゴム組成物から、低温特性(低温での柔軟性、ゴム弾性等)、機械特性などに優れる成形体を好適に得ることができる。
【0224】
また、本発明のゴム組成物は、前述のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いることにより、成形性および架橋特性に優れ、耐熱安定性に優れた架橋体を製造することができるため、本発明のゴム組成物から得られた架橋体は、高温下での長期使用が見込まれる用途にも好適に使用することができる。
【0225】
本発明のゴム組成物、該組成物から得られる成形体、たとえば、架橋体や発泡体などは、様々な用途に用いることができる。具体的には、タイヤ用ゴム、O-リング、工業用ロール、パッキン(例えばコンデンサーパッキン)、ガスケット、ベルト(例えば、断熱ベルト、複写機ベルト、搬送ベルト)、自動車用ホースなどのホース類(例えば、ターボチャージャーホース、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース、エアーホース)、防振ゴム、防振材あるいは制振材(例えば、エンジンマウント、モーターマウント)、マフラーハンガー、スポンジ(例えば、ウェザーストリップスポンジ、断熱スポンジ、プロテクトスポンジ、微発泡スポンジ)、ケーブル(イグニッションケーブル、キャブタイヤケーブル、ハイテンションケーブル)、電線被覆材(高圧電線被覆材、低電圧電線被覆材、舶用電線被覆材)、グラスランチャネル、カラー表皮材、給紙ロール、ルーフィングシート等に好適に用いられる。これらのうちでも、自動車用内外装部品や耐熱性を求められる用途に好適に用いられ、自動車内装部品として用いられるブレーキリザーバーホース、ラジエターホースなどのホース用途に好適である。
【0226】
本発明においては、上述した要件を満たす範囲で、その用途に応じて適切な特性を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を選択して用いることができる。たとえば、マフラーハンガー用途には、比較的高分子量のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を好適に用いることができ、具体的には、重量平均分子量(Mw)が200,000~600,000のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を好ましく用いることができる。
【0227】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0228】
〔実施例〕
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(共重合体-1)の製造]
重合実施例1
(共重合体―1)充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘキサン1030mL、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)1.5mLを装入し、系内の温度を70℃に昇温した後、プロピレンを分圧で1.10MPa分装入し、エチレンを供給することにより全圧を1.6MPa-Gとした。
次に、トリイソブチルアルミニウム0.3mmol、下記の遷移金属化合物Aを0.00005mmolおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00025mmolを窒素で圧入し、攪拌回転数を250rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を1.6MPa-Gに保ち、70℃で15分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンをパージした。
得られたポリマー溶液を、大過剰のメタノール/アセトン混合溶液中に投入することにより、ポリマーを析出させた。ポリマーをろ過により回収し、120℃の減圧下で一晩乾燥することでエチレン・プロピレン・VNB共重合体を6.34g得た。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
遷移金属化合物A
[p-n-ブチル-p,p-ビス(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ-1-イル)ホスフィンイミナト-κN]ジシクロ[(1,2,3,4,5-η)-1-[(2,3,4,5,6,-ペンタフルオロフェニル)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]チタン
【0229】
エチレン・プロピレン・VNB共重合体の物性は以下の方法により測定した。
〔エチレン、VNBの重量分率(重量%)〕
エチレン・プロピレン・VNB共重合体におけるエチレン、VNBの重量分率は、以下のように、エチレン、VNBのそれぞれの検量線を作成して、求めた。
すなわち、エチレンについては、13C-NMR測定によりエチレンの重量分率が既知となったサンプルを用いて、各サンプルについて、エチレンの特定の赤外吸収の強度を測定して、特定の赤外吸収の強度とエチレンの重量分率との間の検量線を作成した。
同様にして、VNBについても、特定の赤外吸収の強度とVNBの重量分率との間の検量線を作成した。
上記の共重合体-1について、エチレンの特定の赤外吸収の強度、VNBの特定の吸収強度を測定して、検量線を利用して、エチレン、VNBの重量分率を求めた。
【0230】
(FT-IRの測定方法)
まず、上記の重合実施例1で得られた重合体を135℃に加熱し、ホットプレスにて融解延伸後、室温下加圧冷却して得られたフィルムを用いて、エチレンの特定の赤外吸収の強度、およびVNBの特定の吸収強度を測定した。
FT-IR(日本分光製FT-IR410型赤外分光光度計)を用いた。
【0231】
(13C-NMR測定方法)
検量線のための各サンプルのエチレンの重量分率、VNBの重量分率は、以下の方法で測定して求めた。
o-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1{vol/vol%})を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅4.7μ秒(45°パルス)の測定条件下(100MHz、日本電子ECX400P)、または測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅5.0μ秒(45°パルス)の測定条件下(125MHz、ブルカー・バイオスピンAVANCEIIIcryo-500)にて13C-NMRスペクトルを測定し、常法により各種シグナルをアサインし、シグナル強度の積分値を基にして、各サンプルのエチレン、VNBの重量分率を求めた。これらを上記の検量線の作成に利用した。
得られたエチレン・プロピレン・VNB共重合体(共重合体-1)のエチレンに由来する構造単位(エチレンの重量分率)などを表1に示す。
【0232】
〔極限粘度〕
極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値である。
【0233】
〔分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)〕
ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321 GPC/HT型 (東ソー社製)を用い、Mw、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。主な測定条件は以下の通りである。
検出器:示差屈折率計
カラム:TSKgel GMH6-HT×2本+TSKgel GMH6-HTL×1本(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:400μL
試料濃度:ca0.15%(w/v)
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算:EPR換算/粘度を考慮した較正法
東ソー社製の単分散標準ポリスチレン16点(分子量2060万~580)を測定して三次多項式の汎用較正曲線(Universal Calibration Curve)を作成した。
EPR換算パラメータK:0.000403、α:0.700
【0234】
〔P値〕
P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0235】
〔三井EPT 3110M〕
三井EPT 3110Mの測定結果を表1に示す。
【0236】
【0237】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(共重合体-2)の製造]
重合実施例2(共重合体―2)
H2を100mL添加し、プロピレン分圧を1.00MPa、下記の遷移金属化合物Aを0.0001mmolおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0005mmolとしたこと以外は重合実施例1と同様に重合を行い、エチレン/プロピレン/VNB共重合体を6.51g得た。ポリマーの物性値を表2に示す。
遷移金属化合物A
[p-n-ブチル-p,p-ビス(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ-1-イル)ホスフィンイミナト-κN]ジシクロ[(1,2,3,4,5-η)-1-[(2,3,4,5,6,-ペンタフルオロフェニル)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]チタン
【0238】
〔組成物〕
6インチロール(日豊工機社製)(ロール温度:F/B=50/50℃、ロール間隙0.5mmの条件)を用いて、共重合体-1と共重合体-2を、表2に示す組成物ブレンド比率でブレンドし、組成物を得た。得られた組成物の分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定結果を表2に示す。
【0239】
【0240】
得られた組成物に対して、以下に示す方法でロール加工性を評価した。結果を表3に示す。
〔ロール加工性〕
ロール加工性:6インチロール(日豊工機社製)、ロール温度:F/B=50/50℃、ロール間隙0.5mmの条件でロール加工性について評価した。
評価は次の3段階で行った。
悪い Poor → Fair → Good 良い
Good: ロール加工性に優れている
Fair: ロール加工性が良好である
Poor: ロール加工性が悪い
【0241】