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特開2024-142095液体吐出装置及び液体吐出装置の駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142095
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/055 20060101AFI20241003BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/055
B41J2/015 101
B41J2/01 403
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054090
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 麻美
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC42
2C056FA04
2C057AG12
2C057AG44
2C057AG81
2C057AG84
2C057AG91
2C057AL24
2C057AM13
2C057AM17
2C057AM21
2C057BA03
(57)【要約】
【課題】従来の技術において、温度補正を行いつつ吐出状態判定を行う場合、環境温度の変化に起因して、吐出状態判定の精度が低下することがあった。
【解決手段】第1駆動信号Com-Aは、駆動周期のうち第1期間TQ2において第1圧電素子PZ[m]を変位させる第1駆動パルスを含み、第2駆動信号Com-Bは、駆動周期の開始時点を含む第1開始期間TQ1において基準電位V0を維持する第1基準電位維持要素と、駆動周期のうち第1期間TQ2に続く第2期間TQ3において第1電位VSを維持する第1電位維持要素と、第2期間TQ3の終了後に開始され駆動周期の終了時点を含む第1終了期間TQ4において基準電位V0を維持する第2基準電位維持要素と、を含み、振動検出部33は、第2期間TQ3において第1吐出部D[m]に生じる残留振動を検出し、生成部4は、温度検出部5が検出した温度に関わらず、第1電位VSを一定の電位に維持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧電素子の変位に応じて第1圧力室内の液体を吐出する第1吐出部、及び、
第2圧電素子の変位に応じて第2圧力室内の液体を吐出する第2吐出部、
を含む複数の吐出部を具備する液体吐出ヘッドと、
前記第1圧電素子を変位させる第1駆動信号、及び、
前記第2圧電素子を変位させる第2駆動信号を生成する生成部と、
前記第1圧電素子に前記第1駆動信号が供給された後に、
前記第1吐出部に生じる残留振動を検出する振動検出部と、
前記液体吐出ヘッドの温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記第1駆動信号は、
駆動周期のうち第1期間において前記第1圧電素子を変位させる第1駆動パルスを含み、
前記第2駆動信号は、
前記駆動周期の開始時点を含む第1開始期間において基準電位を維持する第1基準電位維持要素と、前記駆動周期のうち前記第1期間に続く第2期間において第1電位を維持する第1電位維持要素と、前記第2期間の終了後に開始され前記駆動周期の終了時点を含む第1終了期間において前記基準電位を維持する第2基準電位維持要素と、を含み、
前記振動検出部は、
前記第2期間において前記第1吐出部に生じる残留振動を検出し、
前記生成部は、
前記温度検出部が検出した温度に基づいて、前記基準電位を補正し、
前記温度検出部が検出した温度に関わらず、前記第1電位を一定の電位に維持する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記温度検出部が検出した温度に関わらず、前記第1駆動パルスの波形の形状を維持する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1駆動信号は、前記駆動周期の開始時点を含む第2開始期間において前記基準電位を維持する第3基準電位維持要素と、前記第2期間の終了後に開始され前記駆動周期の終了時点を含む第2終了期間において前記基準電位を維持する第4基準電位維持要素と、を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1駆動パルスは、電位が変化する第1電位変化要素を含み、
前記第1駆動信号は、前記第1電位変化要素の終端に対応する時点から、前記第2期間の開始時点までの期間において、前記第1電位変化要素の終端における電位を維持する第2電位維持要素を含み、
前記第2駆動信号は、前記第1期間の開始時点から前記第1電位変化要素の始端に対応する時点までに、前記基準電位から前記第1電位まで電位が変化する第2電位変化要素を含む、
ことを特徴とする、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1駆動パルスは、前記基準電位から第2電位に変化する第3電位変化要素と、前記第3電位変化要素の終端に対応する時点から、前記第3電位変化要素の終端の電位を維持する第3電位維持要素と、を含み、
前記第1駆動パルスに含まれる前記第1電位変化要素は、前記第3電位維持要素の終端を始端とし、
前記第2駆動信号は、前記第1期間の開始時点から前記第3電位維持要素の始端に対応する時点までに、前記基準電位から前記第1電位まで電位が変化する第2電位変化要素を含む、
ことを特徴とする、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数の吐出部は、第3圧電素子の変位に応じて第3圧力室内の液体を吐出する第3吐出部を備え、
前記第3吐出部は、前記第2吐出部より前記第1吐出部から離れた位置に設けられ、
前記生成部は、前記第3圧電素子を変位させる第3駆動信号を生成し、
前記第3駆動信号は、前記駆動周期のうち前記第2期間より前の期間と、前記駆動周期のうち前記第2期間より後の期間と、の少なくとも一方の期間において、前記第3吐出部が前記第3圧力室内の液体を吐出しない程度に、前記第3圧電素子を変位させる第2駆動パルスと、前記第2期間において、電位を維持する第4電位維持要素と、を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記温度検出部が検出した前記温度に基づいて、前記第2駆動パルスの波形の形状を補正する
ことを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1電位は、前記基準電位以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
第1圧電素子の変位に応じて第1圧力室内の液体を吐出する第1吐出部、及び、
第2圧電素子の変位に応じて第2圧力室内の液体を吐出する第2吐出部、
を含む複数の吐出部を具備する液体吐出ヘッドと、
前記第1圧電素子を変位させる第1駆動信号、及び、
前記第2圧電素子を変位させる第2駆動信号を生成する生成部と、
前記第1圧電素子に前記第1駆動信号が供給された後に、
前記第1吐出部に生じる残留振動を検出する振動検出部と、
前記液体吐出ヘッドの温度を検出する温度検出部と、
を備える液体吐出装置の駆動方法において、
前記第1駆動信号は、
駆動周期のうち第1期間において前記第1圧電素子を変位させる第1駆動パルスを含み、
前記第2駆動信号は、
前記駆動周期の開始時点を含む第1開始期間において基準電位を維持する第1基準電位維持要素と、前記駆動周期のうち前記第1期間に続く第2期間において第1電位を維持する第1電位維持要素と、前記第2期間の終了後に開始され前記駆動周期の終了時点を含む第1終了期間において前記基準電位を維持する第2基準電位維持要素と、を含み、
前記第2期間において前記第1吐出部に生じる残留振動を検出し、
前記検出された温度に基づいて、前記基準電位を補正し、
前記検出された温度に関わらず、前記第1電位を一定の電位に維持する、
ことを特徴とする液体吐出装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び液体吐出装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出部からインク等の液体を吐出させ、記録用紙等の媒体に画像を形成するインクジェットプリンター等の液体吐出装置が広く知られている。液体吐出装置においては、吐出部から液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じ、当該吐出異常に起因して、媒体に形成される画像の画質が低下することがある。このような吐出異常を把握するため、従来から、吐出部における液体の吐出状態を判定する、吐出状態判定に係る技術が提案されている。例えば、特許文献1には、駆動信号により駆動された吐出部に生じる残留振動に基づいて、吐出部における液体の吐出状態を判定する、吐出状態判定に係る技術が記載されている。
【0003】
また、液体吐出装置においては、温度変化に起因して、吐出部からの液体の吐出特性が変動し、これにより、媒体に形成される画像の画質が低下することがある。このため、従来から、環境温度に応じて駆動信号の波形を補正する、温度補正に係る技術が提案されている。例えば、特許文献2には、吐出部に対して駆動信号が供給される駆動周期の開始時点及び終了時点における駆動信号の電位である基準電位を環境温度に応じて調整する、温度補正に係る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-058540号公報
【特許文献2】特開2000-153608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術において、温度補正を行いつつ吐出状態判定を行う場合、吐出状態判定の対象となる吐出部である判定対象吐出部とは異なる他の吐出部に供給される駆動信号の基準電位が、環境温度に応じて変動する。このため、従来の技術において、温度補正を行いつつ吐出状態判定を行う場合、他の吐出部に供給される駆動信号の判定対象吐出部に対する影響が、環境温度に応じて変動する。よって、従来の技術において、温度補正を行いつつ吐出状態判定を行う場合、環境温度の変化に起因して、吐出状態判定の精度が低下することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、第1圧電素子の変位に応じて第1圧力室内の液体を吐出する第1吐出部、及び、第2圧電素子の変位に応じて第2圧力室内の液体を吐出する第2吐出部、を含む複数の吐出部を具備する液体吐出ヘッドと、前記第1圧電素子を変位させる第1駆動信号、及び、前記第2圧電素子を変位させる第2駆動信号を生成する生成部と、前記第1圧電素子に前記第1駆動信号が供給された後に、前記第1吐出部に生じる残留振動を検出する振動検出部と、前記液体吐出ヘッドの温度を検出する温度検出部と、を備え、前記第1駆動信号は、駆動周期のうち第1期間において前記第1圧電素子を変位させる第1駆動パルスを含み、前記第2駆動信号は、前記駆動周期の開始時点を含む第1開始期間において基準電位を維持する第1基準電位維持要素と、前記駆動周期のうち前記第1期間に続く第2期間において第1電位を維持する第1電位維持要素と、前記第2期間の終了後に開始され前記駆動周期の終了時点を含む第1終了期間において前記基準電位を維持する第2基準電位維持要素と、を含み、前記振動検出部は、前記第2期間において前記第1吐出部に生じる残留振動を検出し、前記生成部は、前記温度検出部が検出した温度に基づいて、前記基準電位を補正し、前記温度検出部が検出した温度に関わらず、前記第1電位を一定の電位に維持する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る液体吐出装置の駆動方法は、第1圧電素子の変位に応じて第1圧力室内の液体を吐出する第1吐出部、及び、第2圧電素子の変位に応じて第2圧力室内の液体を吐出する第2吐出部、を含む複数の吐出部を具備する液体吐出ヘッドと、前記第1圧電素子を変位させる第1駆動信号、及び、前記第2圧電素子を変位させる第2駆動信号を生成する生成部と、前記第1圧電素子に前記第1駆動信号が供給された後に、前記第1吐出部に生じる残留振動を検出する振動検出部と、前記液体吐出ヘッドの温度を検出する温度検出部と、を備えるプリンターの駆動方法において、前記第1駆動信号は、駆動周期のうち第1期間において前記第1圧電素子を変位させる第1駆動パルスを含み、前記第2駆動信号は、前記駆動周期の開始時点を含む第1開始期間において基準電位を維持する第1基準電位維持要素と、前記駆動周期のうち前記第1期間に続く第2期間において第1電位を維持する第1電位維持要素と、前記第2期間の終了後に開始され前記駆動周期の終了時点を含む第1終了期間において前記基準電位を維持する第2基準電位維持要素と、を含み、前記第2期間において前記第1吐出部に生じる残留振動を検出し、前記温度検出部が検出した温度に基づいて、前記基準電位を補正し、前記温度検出部が検出した温度に関わらず、前記第1電位を一定の電位に維持する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。
図2】インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
図3】吐出部D[m]の構造の一例を説明するための断面図である。
図4】ヘッドユニット3におけるノズルNの配置の一例を示す平面図である。
図5】ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。
図6】単位期間TPにおけるインクジェットプリンター1の吐出状態判定時の動作を示すためのタイミングチャートの例である。
図7】単位期間TPにおける駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bを示すタイミングチャートの例である。
図8】単位期間TPにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qa[m]、接続状態指定信号Qb[m]、接続状態指定信号Qc[m]、及び、接続状態指定信号Qs[m]との関係を説明するための説明図である。
図9】ノズル列NLの概略的な一部断面図である。
図10】ヘッドユニット3Aの構成の一例を示すブロック図である。
図11】単位期間TPにおけるインクジェットプリンター1Aの吐出状態判定時の動作を示すためのタイミングチャートの例である。
図12】単位期間TPにおける駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bを示すタイミングチャートの例である。
図13】単位期間TPにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qa[m]、接続状態指定信号Qb[m]、及び、接続状態指定信号Qs[m]との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
1:第1実施形態
第1実施形態では、インクを吐出して記録用紙Pに画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。なお、第1実施形態において、インクとは「液体」の一例であり、記録用紙Pとは「媒体」の一例である。以下、図1図8を参照することにより、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1について説明する。
【0011】
1-1:インクジェットプリンターの概要
図1は、インクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0012】
図1に例示されるように、インクジェットプリンター1には、パーソナルコンピューターまたはデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgが供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgの示す画像を記録用紙Pに形成する印刷処理を実行する。
【0013】
図1に例示されるように、インクジェットプリンター1は、インクジェットプリンター1の各部を制御する制御ユニット2と、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニット3と、吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成ユニット4と、ヘッドユニット3に備わる記録ヘッド32の温度を検出する温度検出部5と、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送ユニット7と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する判定ユニット8と、を備える。
【0014】
なお、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、1または複数のヘッドユニット3と、1または複数のヘッドユニット3と1対1に対応する1または複数の駆動信号生成ユニット4と、1または複数のヘッドユニット3と1対1に対応する1または複数の判定ユニット8と、を備える場合を想定する。但し、以下では、説明の便宜上、図1に例示されるように、1または複数のヘッドユニット3のうち一のヘッドユニット3と、1または複数の駆動信号生成ユニット4のうち一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の駆動信号生成ユニット4と、1または複数の判定ユニット8のうち一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の判定ユニット8と、に着目して説明する。
【0015】
制御ユニット2は、1または複数のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。但し、制御ユニット2は、CPUの代わりに、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを備えるものでよい。また、制御ユニット2は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、または、PROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、の一方または両方を含んで構成される。
【0016】
詳細は後述するが、制御ユニット2は、印刷信号SI、及び、波形指定信号dCom等の、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御するための信号を生成する。
ここで、波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号Comとは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。本実施形態では、駆動信号Comが、駆動信号Com-Aと、駆動信号Com-Bと、駆動信号Com-Cとを含む場合を想定する。駆動信号生成ユニット4は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成する。また、印刷信号SIとは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する信号である。駆動信号生成ユニット4は、「生成部」の一例である。
【0017】
図1に例示されるように、ヘッドユニット3は、供給回路31と、記録ヘッド32と、検出回路33と、を備える。
【0018】
記録ヘッド32は、M個の吐出部Dを備える。ここで、値Mは、「M≧1」を満たす自然数である。なお、記録ヘッド32は、「液体吐出ヘッド」の一例である。また、以下では、記録ヘッド32に設けられたM個の吐出部Dのうち、m番目の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。ここで、変数mは、「1≦m≦M」を満たす自然数である。また、以下では、インクジェットプリンター1の構成要素または信号等が、M個の吐出部Dのうち、吐出部D[m]に対応する場合は、当該構成要素または信号等を表わすための符号に、添え字[m]を付すことがある。
【0019】
供給回路31は、印刷信号SIに基づいて、駆動信号Comを吐出部D[m]に供給するか否かを切り替える。なお、以下では、駆動信号Comのうち、吐出部D[m]に供給される駆動信号Comを、供給駆動信号Vin[m]と称する場合がある。また、供給回路31は、印刷信号SIに基づいて、吐出部D[m]が具備する圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]の電位を示す検出電位信号VX[m]を、検出回路33に供給するか否かを切り替える。
以下では、吐出部D[m]から検出回路33に対して検出電位信号VX[m]が供給される場合、当該吐出部D[m]を、判定対象吐出部DSと称する場合がある。
なお、圧電素子PZ[m]及び上部電極Zu[m]については、図3において後述する。
【0020】
検出回路33は、判定対象吐出部DSから供給回路31を介して供給される検出電位信号VX[m]に基づいて、検出信号SK[m]を生成する。具体的には、検出回路33は、例えば、検出電位信号VX[m]を増幅しノイズ成分を除去することで検出信号SK[m]を生成する。
【0021】
温度検出部5は、記録ヘッド32の温度を検出する。また、温度検出部5は、検出した温度を示す温度検出信号TIを生成し、生成した温度検出信号TIを駆動信号生成ユニット4に供給する。
【0022】
判定ユニット8は、検出信号SK[m]に基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態が正常であるか否か、すなわち、吐出部D[m]において吐出異常が生じていない正常吐出状態であるか否かを判定し、当該判定結果を示す吐出状態判定情報JH[m]を生成する。ここで、吐出異常とは、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態が異常となること、つまり、吐出部D[m]が具備するノズルNからインクを正確に吐出することのできない状態の総称である。例えば、吐出異常とは、吐出部D[m]からインクを吐出できない状態、吐出部D[m]が駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量とは異なる量のインクを吐出する状態、及び、吐出部D[m]が駆動信号Comにより規定されるインクの吐出速度とは異なる速度でインクを吐出する状態、等を含む。なお、以下では、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の判定に関連する処理を、吐出状態判定処理と称する場合がある。すなわち、判定対象吐出部DSとは、吐出状態判定処理の対象となる吐出部D[m]である。
【0023】
制御ユニット2は、印刷処理が実行される場合、印刷データImgに基づいて、印刷信号SI等のヘッドユニット3を制御するための信号を生成する。また、制御ユニット2は、印刷処理が実行される場合、波形指定信号dCom等の駆動信号生成ユニット4を制御するための信号を生成する。また、制御ユニット2は、印刷処理が実行される場合、搬送ユニット7を制御するための信号を生成する。これにより、制御ユニット2は、印刷処理において、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送ユニット7を制御しつつ、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像が記録用紙Pに形成されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
【0024】
制御ユニット2は、吐出状態判定処理が実行される場合、吐出部D[m]が判定対象吐出部DSとして駆動されることを指定する印刷信号SIを生成し、当該印刷信号SIを供給回路31に供給する。この場合、印刷信号SIは、吐出部D[m]から検出回路33に対して検出電位信号VX[m]が供給される旨を指定する。その後、検出回路33は、吐出状態判定処理において、判定対象吐出部DSとして駆動された吐出部D[m]から供給回路31を介して供給される検出電位信号VX[m]に基づいて、検出信号SK[m]を生成する。そして、判定ユニット8は、吐出状態判定処理において、検出回路33から供給される検出信号SK[m]に基づいて、吐出状態判定情報JH[m]を生成する。
【0025】
図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
【0026】
図2に例示されるように、本実施形態では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する場合、副走査方向に記録用紙Pを搬送しつつ、副走査方向に交差する主走査方向にヘッドユニット3を往復動させながら、吐出部D[m]からインクを吐出させることで、記録用紙P上に、印刷データImgに応じたドットを形成する。
以下では、+X方向とその逆方向である-X方向とを「X軸方向」と総称し、X軸方向に交差する+Y方向とその逆方向である-Y方向とを「Y軸方向」と総称し、X軸方向及びY軸方向に交差する+Z方向とその逆方向である-Z方向とを「Z軸方向」と総称する。そして、本実施形態では、図2に例示されるように、上流側である-X側から下流側である+X側に向かう方向を副走査方向とし、+Y方向及び-Y方向を主走査方向とする。また、本実施形態では、図2に例示されるように、+Z方向が、吐出部D[m]からのインクの吐出方向に該当することとする。
【0027】
図2に例示されるように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、筐体100と、筐体100内をY軸方向に往復動可能であり、1または複数のヘッドユニット3を搭載するキャリッジ110と、を備える。
本実施形態では、図2に例示されるように、キャリッジ110が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの、4色のインクと1対1に対応する4個のインクカートリッジ120を格納している場合を想定する。また、本実施形態では、一例として、インクジェットプリンター1が、4個のインクカートリッジ120と1対1に対応する、4個のヘッドユニット3を備える場合を想定する。各吐出部D[m]は、当該吐出部D[m]が設けられたヘッドユニット3に対応するインクカートリッジ120からインクの供給を受ける。これにより、各吐出部D[m]は、供給されたインクを内部に充填し、充填したインクをノズルNから吐出することができる。なお、インクカートリッジ120は、キャリッジ110の外部に設けられてもよい。ノズルNについては、図3で後述する。
【0028】
また、上記のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、搬送ユニット7を備える。搬送ユニット7は、図2に例示されるように、キャリッジ110をY軸方向に往復動させるためのキャリッジ搬送機構71と、キャリッジ110をY軸方向に往復自在に支持するキャリッジガイド軸76と、記録用紙Pを搬送するための媒体搬送機構73と、キャリッジ110の+Z側に設けられたプラテン75と、を具備する。このため、搬送ユニット7は、印刷処理が実行される場合に、キャリッジ搬送機構71により、ヘッドユニット3をキャリッジ110と共にキャリッジガイド軸76に沿ってY軸方向に往復動させると共に、媒体搬送機構73により、プラテン75上の記録用紙Pを+X方向に搬送することで、記録用紙Pのヘッドユニット3に対する相対位置を変化させ、記録用紙Pの全体に対するインクの着弾を可能とする。
【0029】
図3は、吐出部D[m]を含むように記録ヘッド32を切断した、記録ヘッド32の概略的な一部断面図である。
【0030】
図3に例示されるように、吐出部D[m]は、圧電素子PZ[m]と、内部にインクが充填されたキャビティ322と、キャビティ322に連通するノズルNと、振動板321と、を備える。吐出部D[m]は、圧電素子PZ[m]が供給駆動信号Vin[m]により駆動されることにより、キャビティ322内のインクをノズルNから吐出させる。キャビティ322は、キャビティプレート324と、ノズルNが形成されたノズルプレート323と、振動板321と、により区画される空間である。キャビティ322は、インク供給口326を介してリザーバ325と連通している。リザーバ325は、インク取入口327を介して、吐出部D[m]に対応するインクカートリッジ120と連通している。圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]と、下部電極Zd[m]と、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に設けられた圧電体Zm[m]と、を有する。下部電極Zd[m]は、電位VBSに設定された給電線Ldと電気的に接続される。そして、上部電極Zu[m]に供給駆動信号Vin[m]が供給されて、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子PZ[m]が+Z方向または-Z方向に変位し、その結果、圧電素子PZ[m]が振動する。振動板321には、下部電極Zd[m]が接合されている。このため、圧電素子PZ[m]が供給駆動信号Vin[m]により駆動されて振動すると、振動板321も振動する。そして、振動板321の振動によりキャビティ322の容積及びキャビティ322内の圧力が変化し、キャビティ322内に充填されたインクがノズルNより吐出される。
【0031】
図4は、+Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、キャリッジ110に搭載された4個のヘッドユニット3と、当該4個のヘッドユニット3に設けられた合計4M個のノズルNの配置の一例を説明するための説明図である。
【0032】
図4に例示されるように、キャリッジ110に設けられた各ヘッドユニット3には、ノズル列NLが設けられる。ここで、ノズル列NLとは、所定方向に列状に延在するように設けられた複数のノズルNである。本実施形態では、各ノズル列NLが、X軸方向に延在するように配置されたM個のノズルNから構成される場合を、一例として想定する。
【0033】
1-2:ヘッドユニットの構成
以下、図5を参照しつつ、ヘッドユニット3の構成について説明する。
【0034】
図5は、ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
図5に例示されるように、ヘッドユニット3は、供給回路31と、記録ヘッド32と、検出回路33と、を備える。また、ヘッドユニット3は、駆動信号生成ユニット4から駆動信号Com-Aが供給される配線Laと、駆動信号生成ユニット4から駆動信号Com-Bが供給される配線Lbと、駆動信号生成ユニット4から駆動信号Com-Cが供給される配線Lcと、検出電位信号VX[m]を検出回路33に供給するための配線Lsと、を備える。
【0036】
図5に例示されるように、供給回路31は、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWa[1]~Wa[M]と、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWb[1]~Wb[M]と、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWc[1]~Wc[M]と、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWs[1]~Ws[M]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路310と、を備える。
このうち、接続状態指定回路310は、制御ユニット2から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHの、少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチWa[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qa[m]と、スイッチWb[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qb[m]と、スイッチWc[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qc[m]と、スイッチWs[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qs[m]と、を生成する。
ここで、スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]に基づいて、配線Laと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWa[m]がオンする場合、配線Laに供給される駆動信号Com-Aが、供給駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に供給される。
また、スイッチWb[m]は、接続状態指定信号Qb[m]に基づいて、配線Lbと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWb[m]は、接続状態指定信号Qb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWb[m]がオンする場合、配線Lbに供給される駆動信号Com-Bが、供給駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に供給される。
また、スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Qc[m]に基づいて、配線Lcと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Qc[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWc[m]がオンする場合、配線Lcに供給される駆動信号Com-Cが、供給駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に供給される。
また、スイッチWs[m]は、接続状態指定信号Qs[m]に基づいて、配線Lsと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWs[m]は、接続状態指定信号Qs[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWs[m]がオンする場合、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]の電位が、検出電位信号VX[m]として、配線Lsを介して検出回路33に供給される。
【0037】
また、検出回路33は、配線Lsから供給される検出電位信号VX[m]に基づいて、検出電位信号VX[m]の波形に応じた波形を有する検出信号SK[m]を生成する。
【0038】
1-3:ヘッドユニットの動作
以下、図6図9を参照しつつ、ヘッドユニット3の動作について説明する。
【0039】
本実施形態において、インクジェットプリンター1が、吐出状態判定処理を実行する場合、インクジェットプリンター1の動作期間として、1または複数の単位期間TPが設定される。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各単位期間TPにおいて、吐出状態判定処理のために各吐出部D[m]を駆動することができる。すなわち、実施形態に係るインクジェットプリンター1は、インクジェットプリンター1の動作期間の中に繰り返し設定される1または複数の単位期間TPの各々において吐出状態判定処理のために各吐出部D[m]を駆動することができる。なお、単位期間TPは「駆動周期」の一例である。
【0040】
図6は、単位期間TPにおけるインクジェットプリンター1の吐出状態判定時の動作を示すためのタイミングチャートの例である。また、図7は、単位期間TPにおける駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bを示すタイミングチャートの例である。
図6に例示されるように、制御ユニット2は、パルスPLLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御ユニット2は、パルスPLLの立ち上がりから次のパルスPLLの立ち上がりまでの期間として、単位期間TPを規定する。
また、制御ユニット2は、単位期間TPにおいて、パルスPLCを有するチェンジ信号CHを出力する。そして、制御ユニット2は、単位期間TPを、パルスPLLの立ち上がりからパルスPLC1の立ち上がりまでの制御期間TQ1と、パルスPLC1の立ち上がりからパルスPLC2の立ち上がりまでの制御期間TQ2と、パルスPLC2の立ち上がりからパルスPLC3の立ち上がりまでの制御期間TQ3と、パルスPLC3の立ち上がりからパルスPLLの立ち上がりまでの制御期間TQ4と、に区分する。制御期間TQ1は「開始期間」の一例である。制御期間TQ2は「第1期間」の一例である。制御期間TQ3は「第2期間」の一例である。制御期間TQ4は「終了期間」の一例である。
【0041】
本実施形態に係る印刷信号SIは、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。個別指定信号Sd[m]は、インクジェットプリンター1が吐出状態判定処理を実行する場合に、各単位期間TPにおける吐出部D[m]の駆動の態様を指定する。
図6に例示されるように、制御ユニット2は、各単位期間TPに先立って、個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路310に供給する。そして、接続状態指定回路310は、当該単位期間TPにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、接続状態指定信号Qa[m]、接続状態指定信号Qb[m]、接続状態指定信号Qc[m]、及び、接続状態指定信号Qs[m]を生成する。
【0042】
なお、本実施形態では、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて、吐出部D[m]を、判定対象吐出部DSとして指定する値「1」と、判定対象吐出部DSに隣接する近隣吐出部DKとして指定する値「2」と、判定対象吐出部DSと近隣吐出部DK以外の吐出部である通常吐出部DTとして指定する値「3」との3つの値のうち、いずれか1つの値をとることができる場合を想定する。言い換えると、制御ユニット2は、吐出状態判定処理において、M個の吐出部D[1]~D[M]のうちの1つの吐出部Dを判定対象吐出部DSとして指定し、判定対象吐出部DSとして指定された吐出部D以外の吐出部Dのうちの一部を近隣吐出部DKとして指定し、判定対象吐出部DSと近隣吐出部DKとして指定された吐出部D以外の吐出部Dを通常吐出部DTとして指定する場合を想定する。なお、近隣吐出部DKが判定対象吐出部DSに「隣接する」関係とは、例えば判定対象吐出部DSに設けられた圧力室と、近隣吐出部DKに設けられた圧力室とが隔壁を隔てて隣り合う関係でも良いし、また、例えば、M個の吐出部Dの中で、1つの判定対象吐出部DSに最も近い吐出部Dが、近隣吐出部DKとなる関係でもよい。なお、判定対象吐出部DSは、「第1吐出部」の一例である。近隣吐出部DKは、「第2吐出部」の一例である。通常吐出部DTは、「第3吐出部」の一例である。通常吐出部DTは、近隣吐出部DKより、判定対象吐出部DSから離れた位置にある。判定対象吐出部DSは、判定対象吐出部DSが有する圧電素子PZ[m]の変位に応じて、判定対象吐出部DSが有するキャビティ322内の液体に圧力変動が生じる。判定対象吐出部DSが有する圧電素子PZ[m]は、「第1圧電素子」の一例である。判定対象吐出部DSが有するキャビティ322は、「第1圧力室」の一例である。また、近隣吐出部DKは、近隣吐出部DKが有する圧電素子PZ[m]の変位に応じて、近隣吐出部DKが有するキャビティ322内の液体に圧力変動が生じる。近隣吐出部DKが有する圧電素子PZ[m]は、「第2圧電素子」の一例である。近隣吐出部DKが有するキャビティ322は、「第2圧力室」の一例である。
【0043】
図6に例示されるように、本実施形態において、駆動信号Com-Aは、単位期間TPに設けられた波形PPを有する。ここで、波形PPは、制御期間TQ1において、基準電位V0を維持し、制御期間TQ2において、基準電位V0から、電位VHを経て、電位VLに変化し、制御期間TQ3において、電位VLを維持し、制御期間TQ4において、電位VLから基準電位V0に変化する波形である。なお、本発明において、「一の信号が一の期間において一の電位を維持する」とは、「一の信号が一の期間において一の電位に一致した電位を維持する」場合の他に、「一の信号が一の期間において一の電位に一致した電位を設計上において維持する」場合、及び、「ノイズを排除すれば一の信号が一の期間において一の電位に一致した電位を維持していると看做すことができる」場合を含む概念である。
本実施形態において、電位VHは、基準電位V0よりも高い電位である。電位VHは、「第2電位」の一例である。但し、電位VHは、基準電位V0と同じ電位であってもよい。また、本実施形態において、電位VLは、基準電位V0よりも低い電位である。但し、電位VLは、電位VHよりも低い電位であればよい。
なお、本実施形態では、一例として、供給駆動信号Vin[m]の電位が高電位の場合に、低電位の場合と比較して、吐出部D[m]に対応するキャビティ322[m]の容積が小さくなる場合を想定している。つまり本実施形態では、供給駆動信号Vin[m]の電位が低電位から高電位に変化する場合に、吐出部D[m]に対応するキャビティ322[m]からインクを吐出することが可能となる。
【0044】
図7に例示されるように、以下では、波形PPのうち、制御期間TQ1において、基準電位V0を維持する部分を波形PP1と称する。波形PP1は、「第3基準電位維持要素」の一例である。また、波形PPのうち、制御期間TQ2において、基準電位V0から電位VHに変化する部分を、波形PP2と称する。波形PP2は、「第3電位変化要素」の一例である。また、波形PPのうち、制御期間TQ2において、電位VHを維持する部分を、波形PP3と称する。波形PP3は、「第3電位維持要素」の一例である。また、波形PPのうち、制御期間TQ2において、電位VHから電位VLに変化する部分を、波形PP4と称する。波形PP4は、「第1電位変化要素」の一例である。また、波形PPのうち、制御期間TQ2において、電位VLを維持する部分を、波形PP5と称する。波形PP5は、「第2電位維持要素」の一例である。また、波形PPのうち、制御期間TQ4において、基準電位V0を維持する部分を、波形PP6と称する。波形PP6は、「第4基準電位維持要素」の一例である。また、波形PP2、波形PP3、及び波形PP4の総体としての波形PP7は、「第1駆動パルス」の一例である。「第1駆動パルス」としての波形PP7は、制御期間TQ2において、圧電素子PZ[m]を変位させる。本実施形態において、波形PP2は、圧電素子PZ[m]を+Z方向に変位させるための波形であり、波形PP4は、圧電素子PZ[m]を-Z方向に変位させるための波形である。
【0045】
図6に例示されるように、本実施形態において、駆動信号Com-Bは、単位期間TPに設けられた波形PSを有する。ここで、波形PSは、制御期間TQ1において、基準電位V0を維持し、制御期間TQ2において、基準電位V0から電位VSに変化し、制御期間TQ3において、電位VSを維持し、制御期間TQ4において、電位VSから基準電位V0に変化する波形である。
本実施形態において、電位VSは、基準電位V0よりも低い電位である。後述のように、駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に基づいて、基準電位V0を補正する。電位VSは、補正後の基準電位V0よりも低い電位である。また、電位VSは、例えば、インクジェットプリンター1が使用される推奨環境における最低温度下における基準電位V0より低いと好適である。あるいは、電位VSは、例えば、インクジェットプリンター1が使用される推奨環境における平均温度下における基準電位V0より低くてもよい。
電位VSは、「第1電位」の一例である。なお、駆動信号Com-Bは、「第2駆動信号」の一例である。
【0046】
図7に例示されるように、以下では、波形PSのうち、制御期間TQ1において、基準電位V0を維持する部分を、波形PS1と称する。波形PS1は、「第1基準電位維持要素」の一例である。また、波形PSのうち、制御期間TQ2において、基準電位V0から電位VSに変化する部分を、波形PS2と称する。波形PS2は、「第2電位変化要素」の一例である。また、波形PSのうち、制御期間TQ3において、電位VSを維持する部分を、波形PS3と称する。波形PS3は、「第1電位維持要素」の一例である。本実施形態において、波形PS3は、圧電素子PZ[m]の変位状態を維持させるための波形である。また、波形PSのうち、制御期間TQ4において、基準電位V0を維持する部分を、波形PS4と称する。波形PS4は、「第2基準電位維持要素」の一例である。
【0047】
なお、波形PS2は、制御期間TQ2の開始時点から、波形PP4の始端に対応する時点までに、基準電位V0から電位VSまで変化する波形であればよい。あるいは、波形PS2は、制御期間TQ2の開始時点から、波形PP3の始端に対応する時点までに、基準電位V0から電位VSまで変化する波形であってもよい。
【0048】
図6に例示されるように、本実施形態において、駆動信号Com-Cは、単位期間TPに設けられた波形PUを有する。ここで、波形PUは、制御期間TQ1において、基準電位V0を維持する。また、波形PUは、制御期間TQ2において、基準電位V0から、基準電位V0よりも低電位の電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化し、基準電位V0に変化した後、基準電位V0を維持する。また、波形PUは、制御期間TQ3において、基準電位V0を維持する。また、波形PUは、制御期間TQ4において、基準電位V0から、電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化し、基準電位V0に変化した後、基準電位V0を維持する。以下では、波形PUのうち、制御期間TQ2において、基準電位V0から電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化する部分を、波形PU1と称する。また、波形PUのうち、制御期間TQ3において、基準電位V0を維持する部分を、波形PU2と称する。また、波形PUのうち、制御期間TQ4において、基準電位V0から電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化する部分を、波形PU3と称する。本実施形態において、波形PU1及び波形PU3は、圧電素子PZ[m]を微振動させるための波形である。より詳細には、波形PU1及び波形PU3は、ノズルNから液体が吐出しない程度に、キャビティ322の液体に圧力変動を与えるように、圧電素子PZ[m]を駆動するための波形である。なお、波形PU1及び波形PU3は、「第2駆動パルス」の一例である。
【0049】
なお、波形PUは、波形PU1と波形PU3のうちいずれか一方のみを含んでもよい。また、波形PU1は、単位期間TPのうち制御期間TQ3より前の期間において、波形PUに含まれれば良い。波形PU3は、単位期間TPのうち制御期間TQ3よりのちの期間において、波形PUに含まれれば良い。つまり、波形PU3は、単位期間TPのうち制御期間TQ3以外の期間において、波形PUに含まれれば良い。
【0050】
駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に基づいて、基準電位V0を補正する。一方で、駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に関わらず、制御期間TQ3における電位VSを一定の電位に維持する。
【0051】
また、駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に関わらず、第1駆動パルスとしての波形PP7の形状を維持する。また、駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に関わらず、電位VH及び電位VLを一定の電位に維持してもよい。
【0052】
また、駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に基づいて、第2駆動パルス、すなわち波形PU1及び波形PU3の波形を補正する。
【0053】
図8は、単位期間TPにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qa[m]、接続状態指定信号Qb[m]、接続状態指定信号Qc[m]、及び、接続状態指定信号Qs[m]との関係を説明するための説明図である。
【0054】
図8に例示されるように、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を判定対象吐出部DSとして指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路310は、接続状態指定信号Qa[m]を、制御期間TQ1、制御期間TQ2及び制御期間TQ4においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号Qs[m]を、制御期間TQ3においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWa[m]が、制御期間TQ1、制御期間TQ2及び制御期間TQ4においてオンし、スイッチWs[m]が、制御期間TQ3においてオンする。このため、判定対象吐出部DSとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TQ2において、波形PP2及び波形PP4を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、吐出部D[m]に振動が生じる場合、当該振動は、制御期間TQ3においても残留する。そして、制御期間TQ3において、吐出部D[m]に振動が残留している場合、吐出部D[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位が変化する。そして、制御期間TQ3において、吐出部D[m]に振動が残留している場合、上部電極Zu[m]の電位が、スイッチWs[m]を介して、検出電位信号VX[m]として検出回路33に供給される。
すなわち、制御期間TQ3において、判定対象吐出部DSに設定された吐出部D[m]から検出される検出電位信号VX[m]の波形は、制御期間TQ2における供給駆動信号Vin[m]の駆動後に制御期間TQ3において吐出部D[m]に残留する振動の波形を示す。そして、制御期間TQ3において吐出部D[m]から検出される検出電位信号VX[m]に基づいて生成される検出信号SK[m]の波形は、制御期間TQ3において吐出部D[m]に残留する振動の波形を示す。検出回路33は、「振動検出部」の一例である。
【0055】
また、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を近隣吐出部DKとして指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路310は、接続状態指定信号Qb[m]を、制御期間TQ1、制御期間TQ2、制御期間TQ3及び制御期間TQ4においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWb[m]が、制御期間TQ1、制御期間TQ2、制御期間TQ3及び制御期間TQ4においてオンする。
ここで、判定対象吐出部DSと近隣吐出部DKとの関係について説明する。ノズル列NL内の複数の吐出部Dは隔壁により隔てられて連続して併設されている。図9は、ノズル列NL内の隔壁により隔てられて複数併設される吐出部Dの概略的な一部断面図である。なお、吐出部Dのそれぞれにおいて、振動板321上には圧電素子PZが設けられているが、図9では図示を省略している。供給駆動信号Vin[m]の電位に依存して圧電素子PZ[m]は変位し、それに伴って振動板321が歪む。振動板321は、複数の吐出部Dに連続して設けられているため、連続して並ぶ吐出部Dに対応する部分の振動板321は、それぞれの歪みに応じて振動板321を引っ張り合う。図9に示すように、吐出部D[m+1]に対応する部分の振動板321は、吐出部D[m]及び吐出部D[m+2]に対応する部分の振動板321の撓みに応じた力Fにより引っ張られている。例えば、吐出部D[m+1]を判定対象吐出部DSに設定し、吐出部D[m]及び吐出部D[m+2]を近隣吐出部DKに設定した場合、近隣吐出部DKに対応する部分の振動板321の歪みの大きさに応じて、判定対象吐出部DSに対応する部分の振動板321のテンションの大きさが変化する。つまり、近隣吐出部DKに対応する部分の振動板321の歪みの状態の変化に応じて、判定対象吐出部DSに対応する部分の振動板321のテンションが変化するため、近隣吐出部DKに対応する部分の振動板321の歪みは、制御期間TQ3における判定対象吐出部DSに残留する振動の波形に影響を与える。
本実施形態では、近隣吐出部DKとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TQ3において、波形PS3を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、吐出部D[m]には振動が生じないため、判定対象吐出部DSに残留する振動の波形に影響を与えない。
また、インクジェットプリンター1では、温度によるインクの特性が変化により、ノズルNから吐出されるインク滴の重量や飛翔速度が変化し印刷品質が低下することを抑制するため、温度検出信号TIに基づいて駆動信号Comを補正することで適正な基準電位V0は変更される。印刷処理及び吐出状態判定処理において、複数の駆動信号Comの中から吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]と導通させる駆動信号Comを切り替えられるため、基準電位V0は複数の駆動信号Comで等しく設定し、駆動信号Comの切り替え時に上部電極Zu[m]に供給される電位が急激に変化することを抑制している。その際に、駆動信号Com-Bの波形PS形状を維持したまま、基準電位V0の変更応じて電位VSを変更してしまうと、近隣吐出部DKに指定された吐出部D[m]に対応する部分の振動板321の歪み状態が温度によって変化し、制御期間TQ3における判定対象吐出部DSに残留する振動の波形に影響を与える。
本実施形態では、駆動信号生成ユニット4は、温度検出信号TIが示す温度に関わらず、制御期間TQ3における電位VSを一定の電位に維持するため、温度によって近隣吐出部DKの歪み量が変化することが無いため、判定対象吐出部DSに残留する振動の波形に影響を与えない。
【0056】
また、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を通常吐出部DTとして指定する値「3」を示す場合、接続状態指定回路310は、接続状態指定信号Qc[m]を、制御期間TQ1、制御期間TQ2、制御期間TQ3及び制御期間TQ4においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が、制御期間TQ1、制御期間TQ2、制御期間TQ3及び制御期間TQ4においてオンする。このため、通常吐出部DTとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TQ2における波形PU1、及び制御期間TQ4における波形PU3を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、吐出部D[m]には微振動が生じる。
本実施形態の通常吐出部DTには、判定対象吐出部DSに対応する部分の振動板321のテンションに影響を与えない所に位置する吐出部[m]を指定することができる。検出電位信号VX[m]を検出する制御期間TQ3とは異なる制御期間TQ2及び制御期間TQ4において吐出部D[m]に微振動を生じさせることで、吐出部D[m]のキャビティ322内の液体の増粘を抑制しながら、判定対象吐出部DSにおけるインクの吐出状態が異常であるか否かの判定精度が低下することを抑制することができる。
【0057】
1-4:第1実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、複数の吐出部Dを具備する液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド32、生成部としての駆動信号生成ユニット4、振動検出部としての検出回路33、及び温度検出部5を備える。
複数の吐出部Dは、第1圧電素子としての圧電素子PZ[m]の変位に応じて、第1圧力室としてのキャビティ322内の液体を吐出する第1吐出部と、第2圧電素子としての圧電素子PZ[m]の変位に応じて、第2圧力室としてのキャビティ322内の液体を吐出する第2吐出部とを含む。駆動信号生成ユニット4は、判定対象吐出部DSに設定された第1吐出部の第1圧電素子としての圧電素子PZ[m]を変位させる第1駆動信号Com-A、及び、近隣吐出部DKに設定された第2吐出部の第2圧電素子としての圧電素子PZ[m]を変位させる第2駆動信号Com-Bを生成する。検出回路33は、第1圧電素子としての圧電素子PZ[m]に駆動信号Com-Aが供給された後に、判定対象吐出部DSに生じる残留振動を検出する。温度検出部5は、記録ヘッド32の温度を検出する。駆動信号Com-Aは、駆動周期のうち、第1期間としての制御期間TQ2において、第1駆動パルスとしての波形PP7を含む。駆動信号Com-Bは、第1基準電位維持要素としての波形PS1と、第1電位維持要素としての波形PS3と、第2基準電位維持要素としての波形PS4と、を含む。波形PS1は、駆動周期の開始時点を含む第1開始期間としての制御期間TQ1において、基準電位V0を維持する。波形PS3は、制御期間TQ2に続く、第2期間としての制御期間TQ3において、第1電位としての電位VSを維持する。波形PS4は、制御期間TQ3の終了後に開始され、駆動周期の終了時点を含む第1終了期間としての制御期間TQ4において基準電位V0を維持する。検出回路33は、制御期間TQ3において、判定対象吐出部DSに生じる残留振動を検出する。駆動信号生成ユニット4は、温度検出部5が検出した温度に基づいて、基準電位V0を補正する。また、駆動信号生成ユニット4は、温度検出部5が検出した温度に関わらず、電位VSを一定の電位に維持する。
【0058】
上述の通り、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、判定対象吐出部DSに生じる残留振動が検出される制御期間TQ3において、近隣吐出部DKに備わる圧電素子PZ[m]を変位させる第2駆動信号Com-Bの電位VSは、環境温度に関わらず一定の電位に維持される。従って、本実施形態においては、環境温度の変化に起因する、近隣吐出部DKに備わる圧電素子PZ[m]の、環境温度の変化に起因する変位を抑制することができる。この結果、本実施形態においては、判定対象吐出部DSに生じる残留振動の特性の変動が抑制される。従って、本実施形態においては、環境温度が変動する場合であっても、判定対象吐出部DSに生じる残留振動に基づいて、インクの吐出状態を正確に判定することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、駆動信号生成ユニット4は、温度検出部5が検出した温度に関わらず、第1駆動パルスとしての波形PP7の形状を維持する。
【0060】
このため、インクジェットプリンター1は、判定対象吐出部DSに対して振動を与える場合、環境温度に関わらず、圧電素子PZ[m]に対して、一定の変位を与えることができる。
【0061】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、第1駆動信号としての駆動信号Com-Aは、駆動周期の開始時点を含む第2開始期間において、基準電位V0を維持する第3基準電位維持要素としての波形PP1と、第2期間としての制御期間TQ3の終了後に開始され駆動周期の終了時点を含む第2終了期間において、基準電位V0を維持する第4基準電位維持要素としての波形PP6と、を含む。
【0062】
このため、接続状態指定回路310が、圧電素子PZ[m]に与える駆動信号Comを、駆動信号Com-A、駆動信号Com-B、及び駆動信号Com-Cの間で切り替える場合、基準電位V0を間に挟んでシームレスに切り替えることができる。
【0063】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、第1駆動パルスとしての波形PP7は、電位が変化する第1電位変化要素としての波形PP4を含む。第1駆動信号としての駆動信号Com-Aは、波形PP4の終端に対応する時点から、第2期間としての制御期間TQ3の開始時点までの期間において、波形PP4の終端における電位VLを維持する第2電位維持要素としての波形PP5を含む。第2駆動信号としての駆動信号Com-Bは、第1期間としての制御期間TQ2の開始時点から、波形PP4の始端に対応する時点までに、基準電位V0から第1電位としての電位VSまで電位が変化する、第2電位変化要素としての波形PS2を含む。
【0064】
このため、第1期間において、波形PS2の発生時点が、波形PP4及び波形PP5の発生中の期間に含まれる場合と比較して、第2駆動信号としてのCom-Bによる近隣吐出部DKの振動が、判定対象吐出部DSに当たる影響を小さくすることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、第1駆動パルスとしての波形PP7は、基準電位V0から第2電位としての電位VHに変化する第3電位変化要素としての波形PP2と、波形PP2の終端に対応する時点から、波形PP2の電位VHを維持する第3電位維持要素としての波形PP3と、を含む。波形PP7に含まれる第1電位変化要素としての波形PP4は、波形PP3の終端を始端とする。第2駆動信号としての駆動信号Com-Bは、第1期間としての制御期間TQ2の開始時点から、波形PP3の始端に対応する時点までに、基準電位V0から第1電位としての電位VSまで電位が変化する、第2電位変化要素としての波形PS2を含む。
【0066】
このため、第1期間において、波形PS2の発生時点が、波形PP4及び波形PP5の発生中の期間に含まれる場合と比較して、第2駆動信号としてのCom-Bによる近隣吐出部DKの振動が、判定対象吐出部DSに当たる影響を小さくすることができる。
【0067】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、複数の吐出部D[m]は、第3圧電素子としての圧電素子PZ[m]の変位に応じて、第3圧力室としてのキャビティ322内の液体を吐出する第3吐出部としての通常吐出部DTを備える。通常吐出部DTは、第2吐出部としての近隣吐出部DKより第1吐出部としての判定対象吐出部DSから離れた位置に設けられる。生成部としての駆動信号生成ユニット4は、第3駆動信号としての駆動信号Com-Cを生成する。駆動信号Com-Cは、駆動周期のうち第2期間としての制御期間TQ3より前の期間と、駆動周期のうち制御期間TQ3より後の期間と、の少なくとも一方の期間において、通常吐出部DTが、キャビティ322内の液体を吐出しない程度に、圧電素子PZ[m]を変位させる第2駆動パルスとしての波形PU1または波形PU3を含む。駆動信号Com-Cは、制御期間TQ3において、電位を維持する第4電位維持要素としての波形PU2を含む。
【0068】
このため、インクジェットプリンター1は、通常吐出部DTに備わる圧電素子PZ[m]に微振動を与えることで、キャビティ322内の液体の増粘を抑制できる。
【0069】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、駆動信号生成ユニット4は、温度検出部5が検出した温度に基づいて、第2駆動パルスとしての波形PU1または波形PU3の形状を補正する。
【0070】
このため、インクジェットプリンター1は、環境温度に応じて、圧電素子PZ[m]に与える微振動の振幅を変えることにより、インクジェットプリンター1は、環境温度によってキャビティ322内の液体の粘性が変化することに対応できる。
【0071】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、第1電位としての電位VSは、基準電位V0以下である。
【0072】
このため、インクジェットプリンター1は、より低い電位で、近隣吐出部DKに備わる圧電素子PZ[m]の変位を一定値とすることができる。
【0073】
また以上のように、本実施形態に係る液体吐出装置としてのインクジェットプリンター1の駆動方法は、第1吐出部としての判定対象吐出部DS、及び、第2吐出部としての近隣吐出部DKを含む複数の吐出部D[m]を具備する、液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド32、生成部としての駆動信号生成ユニット4、振動検出部としての検出回路33、及び温度検出部5を備えるインクジェットプリンター1の駆動方法である。
判定対象吐出部DSは、第1圧電素子としての圧電素子PZ[m]の変位に応じて、第1圧力室としてのキャビティ322内の液体を吐出する。近隣吐出部DKは、第2圧電素子としての圧電素子PZ[m]の変位に応じて、第2圧力室としてのキャビティ322内の液体を吐出する。駆動信号生成ユニット4は、第1圧電素子としての圧電素子PZ[m]を変位させる第1駆動信号Com-A、及び、第2圧電素子としての圧電素子PZ[m]を変位させる第2駆動信号Com-Bを生成する。検出回路33は、第1圧電素子としての圧電素子PZ[m]に駆動信号Com-Aが供給された後に、判定対象吐出部DSに生じる残留振動を検出する。温度検出部5は、記録ヘッド32の温度を検出する。
駆動信号Com-Aは、駆動周期のうち、第1期間としての制御期間TQ2において、第1駆動パルスとしての波形PP7を含む。駆動信号Com-Bは、第1基準電位維持要素としての波形PS1、第1電位維持要素としての波形PS3、第2基準電位維持要素としての波形PS4と、を含む。波形PS1は、駆動周期の開始時点を含む開始期間としての制御期間TQ1において、基準電位V0を維持する。波形PS3は、制御期間TQ2に続く、第2期間としての制御期間TQ3において、第1電位としての電位VSを維持する。波形PS4は、制御期間TQ3の終了後に開始され、駆動周期の終了時点を含む終了期間としての制御期間TQ4において基準電位V0を維持する。
上記の駆動方法は、制御期間TQ2において、判定対象吐出部DSに生じる残留振動を検出する。また、上記の駆動方法は、検出された温度に基づいて、基準電位V0を補正する。また、上記の駆動方法は、検出された温度に関わらず、電位VSを一定の電位に維持する。
【0074】
従来技術においては、以下のような問題があった。すなわち、圧電素子PZ[m]の変位量は供給駆動信号Vin[m]の電位に依存する。このため、従来技術のように環境温度に基づいて基準電位V0を補正する場合、近隣吐出部DKの圧電素子PZ[m]の変位量は、環境温度に応じて変動する。判定対象吐出部DSに備わる圧電素子PZ[m]は、近隣吐出部DKの変位に応じた大きさの応力を受ける。このため、環境温度の変化に応じて、近隣吐出部DKの圧電素子PZ[m]の変位量が変動する場合、判定対象吐出部DSが近隣吐出部DKから受ける応力も変動する。
判定対象吐出部DSが近隣吐出部DKから受ける応力が変動する場合、判定対象吐出部DSに生じる残留振動の特性も変動する。
この結果、従来技術のように環境温度に基づいて基準電位V0を補正する場合、環境温度の変化に起因して、判定対象吐出部DSに生じる残留振動の特性が変動する。従って、従来技術においては、判定対象吐出部DSに生じる残留振動に基づいて、インクの吐出状態を正確に判定することができなかった。
【0075】
一方、本実施形態に係る液体吐出装置としてのインクジェットプリンター1の駆動方法では、判定対象吐出部DSに生じる残留振動が検出される制御期間TQ3において、近隣吐出部DKに備わる圧電素子PZ[m]を変位させる第2駆動信号Com-Bの電位VSは、環境温度に関わらず一定の電位に維持される。従って、本実施形態においては、環境温度の変化に起因する、近隣吐出部DKに備わる圧電素子PZ[m]の、環境温度の変化に起因する変位を抑制することができる。この結果、本実施形態においては、判定対象吐出部DSに生じる残留振動の特性の変動が抑制される。従って、本実施形態においては、環境温度が変動する場合であっても、判定対象吐出部DSに生じる残留振動に基づいて、インクの吐出状態を正確に判定することができる。
【0076】
2:第2実施形態
以下、図10図13を参照することにより、第2実施形態に係るインクジェットプリンター1Aについて説明する。なお、説明の簡略化のため、以下では主として、第2実施形態に係るインクジェットプリンター1Aと、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1との相違点について説明する。また、第2実施形態に係るインクジェットプリンター1Aに備わる構成要素のうち、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1に備わる構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。
【0077】
第1実施形態に係るインクジェットプリンター1においては、駆動信号生成ユニット4は、駆動信号Com-A、駆動信号Com-B、及び駆動信号Com-Cの3種類の駆動信号Comを生成していた。また、駆動信号Com-Aは、判定対象吐出部DSを駆動する信号であった。駆動信号Com-Bは、近隣吐出部DKを駆動する信号であった。駆動信号Com-Cは、通常吐出部DTを駆動する信号であった。
【0078】
一方、第2実施形態に係るインクジェットプリンター1Aにおいては、駆動信号生成ユニット4は、駆動信号Com-A、及び駆動信号Com-Bの2種類の駆動信号Comを生成する。また、駆動信号Com-Aは、判定対象吐出部DSを駆動する信号である。駆動信号Com-Bは、近隣吐出部DK及び通常吐出部DTの双方を駆動する信号である。
【0079】
2-1:インクジェットプリンターの概要
第2実施形態に係るインクジェットプリンター1Aの概要は、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1の概要と同一であるため、その説明を省略する。
【0080】
2-2:ヘッドユニットの構成
以下、図10を参照しつつ、ヘッドユニット3Aの構成について説明する。図10は、ヘッドユニット3Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0081】
ヘッドユニット3Aは、第1実施形態に係るヘッドユニット3と異なり、駆動信号生成ユニット4から駆動信号Com-Cが供給される配線Lcを必須の構成要素とはしない。また、供給回路31Aは、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWc[1]~Wc[M]を必須の構成要素とはしない。また、接続状態指定回路310Aは、制御ユニット2から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHの、少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチWa[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qa[m]と、スイッチWb[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qb[m]と、スイッチWs[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qs[m]と、を生成する。
【0082】
2-3:ヘッドユニットの動作
図11は、単位期間TPにおけるインクジェットプリンター1Aの吐出状態判定時の動作を示すためのタイミングチャートの例である。図12は、単位期間TPにおける駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bを示すタイミングチャートの例である。
【0083】
図11に例示されるように、制御ユニット2Aは、単位期間TPにおいて、パルスPLCを有するチェンジ信号CHを出力する。そして、制御ユニット2は、単位期間TPを、パルスPLLの立ち上がりからパルスPLC1の立ち上がりまでの制御期間TQ1と、パルスPLC1の立ち上がりからパルスPLC2の立ち上がりまでの制御期間TQ2と、パルスPLC2の立ち上がりからパルスPLC3の立ち上がりまでの制御期間TQ3と、パルスPLC3の立ち上がりからパルスPLC4の立ち上がりまでの制御期間TQ4と、パルスPLC4の立ち上がりからパルスPLC5の立ち上がりまでの制御期間TQ5と、パルスPLC5の立ち上がりからパルスPLLの立ち上がりまでの制御期間TQ6と、に区分する。
【0084】
図11に例示されるように、本実施形態において、駆動信号Com-Aは、単位期間TPに設けられた波形PP’を有する。ここで、波形PP’は、制御期間TQ1及び制御期間TQ2において、基準電位V0を維持し、制御期間TQ3において、基準電位V0から、電位VHを経て、電位VLに変化し、制御期間TQ4において、電位VLを維持し、制御期間TQ5において、電位VLから基準電位V0に変化し、制御期間TQ6において、基準電位V0を維持する波形である。
【0085】
図12に例示されるように、以下では、波形PP’のうち、制御期間TQ1及び制御期間TQ2において、基準電位V0を維持する部分を波形PP1’と称する。波形PP1’は、「第3基準電位維持要素」の一例である。また、波形PP’のうち、制御期間TQ3において、基準電位V0から電位VHに変化する部分を、波形PP2’と称する。波形PP2’は、「第3電位変化要素」の一例である。また、波形PP’のうち、制御期間TQ3において、電位VHを維持する部分を、波形PP3’と称する。波形PP3’は、「第3電位維持要素」の一例である。また、波形PP’のうち、制御期間TQ3において、電位VHから電位VLに変化する部分を、波形PP4’と称する。波形PP4’は、「第1電位変化要素」の一例である。また、波形PP’のうち、制御期間TQ3において、電位VLを維持する部分を、波形PP5’と称する。波形PP5’は、「第2電位維持要素」の一例である。また、波形PPのうち、制御期間TQ5及び制御期間TQ6において、基準電位V0を維持する部分を、波形PP6’と称する。波形PP6’は、「第4基準電位維持要素」の一例である。また、波形PP2’、波形PP3’、及び波形PP4’の総体としての波形PP7’は、「第1駆動パルス」の一例である。
【0086】
図11に例示されるように、本実施形態において、駆動信号Com-Bは、単位期間TPに設けられた波形PS’を有する。ここで、波形PS’は、制御期間TQ1において、基準電位V0を維持した後、基準電位V0から、基準電位V0よりも低電位の電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化し、基準電位V0を維持する。波形PS’は、制御期間TQ2において、基準電位V0を維持した後基準電位V0から、基準電位V0よりも高電位の電位VSに変化し、電位VSを維持する。波形PS’は、制御期間TQ3及び制御期間TQ4において、電位VSを維持する。波形PS’は、制御期間TQ5において、電位VSを維持した後、電位VSから基準電位V0に変化し、基準電位V0を維持する。波形PS’は、制御期間TQ6において、基準電位V0を維持した後、基準電位V0から電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化し、基準電位V0を維持する。
【0087】
図12に例示されるように、波形PS’のうち、制御期間TQ1において、基準電位V0から電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化する部分を、波形PU1’と称する。また、波形PS’のうち、制御期間TQ1及び制御期間TQ2において、基準電位V0を維持する部分を、波形PS1’と称する。波形PS1’は、「第1基準電位維持要素」の一例である。また、波形PS’のうち、制御期間TQ2において、基準電位V0から電位VSに変化する部分を、波形PS2’と称する。波形PS2’は、「第2電位変化要素」の一例である。また、波形PS’のうち、制御期間TQ4において、電位VSを維持する部分を、波形PS3’と称する。波形PS3は、「第1電位維持要素」の一例である。また、波形PS’のうち、制御期間TQ6において、基準電位V0から電位VUに変化し、電位VUを維持した後、電位VUから基準電位V0に変化する部分を、波形PU3’と称する。なお、波形PU1’及び波形PU3’は、「第2駆動パルス」の一例である。また、波形PS’のうち、制御期間TQ5において、基準電位V0を維持する部分を、波形PS4’と称する。波形PS4’は、「第2基準電位維持要素」の一例である。
【0088】
図13は、単位期間TPにおける、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号Qa[m]、接続状態指定信号Qb[m]、及び、接続状態指定信号Qs[m]との関係を説明するための説明図である。
【0089】
図13に例示されるように、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を判定対象吐出部DSとして指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路310は、接続状態指定信号Qa[m]を、制御期間TQ1、制御期間TQ2、制御期間TQ3、制御期間TQ5及び制御期間TQ6においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号Qs[m]を、制御期間TQ4においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWa[m]が、制御期間TQ1、制御期間TQ2、制御期間TQ3、制御期間TQ5、及び制御期間TQ6においてオンし、スイッチWs[m]が、制御期間TQ4においてオンする。このため、判定対象吐出部DSとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TQ3において、波形PP2’及び波形PP4’を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、吐出部D[m]に振動が生じる場合、当該振動は、制御期間TQ4においても残留する。そして、制御期間TQ4において、吐出部D[m]に振動が残留している場合、吐出部D[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位が変化する。そして、制御期間TQ4において、吐出部D[m]に振動が残留している場合、上部電極Zu[m]の電位が、スイッチWs[m]を介して、検出電位信号VX[m]として検出回路33に供給される。
すなわち、制御期間TQ4において吐出部D[m]から検出される検出電位信号VX[m]の波形は、制御期間TQ4において吐出部D[m]に残留する振動の波形を示す。そして、制御期間TQ4において吐出部D[m]から検出される検出電位信号VX[m]に基づいて生成される検出信号SK[m]の波形は、制御期間TQ4において吐出部D[m]に残留する振動の波形を示す。
【0090】
また、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を近隣吐出部DKとして指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路310は、接続状態指定信号Qb[m]を、制御期間TQ1、及び制御期間TQ6においてローレベルに設定し、制御期間TQ2、制御期間TQ3、制御期間TQ4、及び制御期間TQ5においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWb[m]が、制御期間TQ2、制御期間TQ3、制御期間TQ4、及び制御期間TQ5においてオンする。このため、近隣吐出部DKとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TQ4において、波形PS3’を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、制御期間TQ4において、吐出部D[m]には振動が生じない。
【0091】
また、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を通常吐出部DTとして指定する値「3」を示す場合、接続状態指定回路310は、接続状態指定信号Qb[m]を、制御期間TQ1、及び制御期間TQ6においてハイレベルに設定し、制御期間TQ2、制御期間TQ3、制御期間TQ4、及び制御期間TQ5においてローレベルに設定する。この場合、スイッチWb[m]が、制御期間TQ1、及び制御期間TQ6においてオンする。このため、通常吐出部DTとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TQ1における波形PU1’、及び制御期間TQ6における波形PU3’を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、吐出部D[m]には微振動が生じるものの、制御期間TQ4において、吐出部D[m]には振動が生じない。
【0092】
3:変形例
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下に例示される態様と、と上記の実施形態において示される態様とは、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示される変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0093】
3-1:変形例1
上記の実施形態において、近隣吐出部DKは、判定対象吐出部DSに隣接する吐出部D[m]であった。しかし、近隣吐出部DKは、判定対象吐出部DSに隣接する吐出部D[m]に限定されない。例えば、近隣吐出部DKは、判定対象吐出部DS以外の全ての吐出部D[m]であってもよい。近隣吐出部DKはM個の吐出部Dのうち、判定対象吐出部DSを含む近隣領域に含まれる吐出部Dであってもよい。ここで近隣領域とは、例えば、判定対象吐出部DSを含み、判定対象吐出部DSから所定距離内に位置する領域であってもよい。また、近隣領域とは、例えば、M個の吐出部Dのうち、近隣吐出部DKを含む所定数の吐出部Dが含まれるように設定された領域であってもよい。ここで、所定数とは、例えば、3以上30個以下の値であってもよい。
【0094】
3-2:変形例2
上記の実施形態において、温度検出部5は、温度検出信号TIを生成し、生成した温度検出信号TIを駆動信号生成ユニット4に供給していた。しかし、温度検出部5は、温度検出信号TIを、制御ユニット2に供給してもよい。この場合、制御ユニット2は、温度検出信号TIに基づいて、波形指定信号dComを補正する。またこの場合、駆動信号生成ユニット4と制御ユニット2とが、「生成部」の一例となる。
【符号の説明】
【0095】
1,1A…インクジェットプリンター、2…制御ユニット、3,3A…ヘッドユニット、4…駆動信号生成ユニット、5…温度検出部、7…搬送ユニット、8…判定ユニット、31,31A…供給回路、32…記録ヘッド、33…検出回路、71…キャリッジ搬送機構、73…媒体搬送機構、75…プラテン、76…キャリッジガイド軸、100…筐体、110…キャリッジ、120…インクカートリッジ、310,310A…接続状態指定回路、321…振動板、322…キャビティ、323…ノズルプレート、324…キャビティプレート、325…リザーバ、326…インク供給口、327…インク取入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13