(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001421
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20231227BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231227BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20231227BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L29/78 371
H01L27/11556
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100043
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 良太
(72)【発明者】
【氏名】山中 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】岸 寛貴
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP02
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP76
5F083ER22
5F083GA02
5F083GA10
5F083GA11
5F083GA19
5F083GA27
5F083JA04
5F083JA19
5F083JA39
5F083JA40
5F101BA01
5F101BA45
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
(57)【要約】
【課題】メモリセルの動作不良を抑制する
【解決手段】半導体記憶装置は、絶縁層と、導電層と、を有し、絶縁層および導電層が第1方向に交互に積層された、積層体と、絶縁層および導電層を貫通する半導体層と、第1方向と交差する第2方向において積層体と半導体層との間に設けられたメモリ層と、第2方向において絶縁層から半導体層に向かって延在する絶縁部と、を具備する。積層体と半導体層とメモリ層と絶縁部とを含み、第1方向に沿う断面において、絶縁部とメモリ層との界面は、絶縁層の第1方向の中央部と重なる第1の部分と、絶縁層の第1方向の端部と重なる第2の部分と、を有する。第2の部分は、第1の部分よりも第2方向において絶縁層に近く、界面は、第1の部分から第2の部分まで半導体層側に凸状に湾曲する。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、導電層と、を有し、前記絶縁層および前記導電層が第1方向に交互に積層された、積層体と、
前記絶縁層および前記導電層を貫通する半導体層と、
前記第1方向と交差する第2方向において前記積層体と前記半導体層との間に設けられたメモリ層と、
前記第2方向において前記絶縁層から前記半導体層に向かって延在する絶縁部と、
を具備し、
前記積層体と前記半導体層と前記メモリ層と前記絶縁部とを含み、前記第1方向に沿う断面において、前記絶縁部と前記メモリ層との界面は、前記絶縁層の前記第1方向の中央部と重なる第1の部分と、前記絶縁層の前記第1方向の端部と重なる第2の部分と、を有し、
前記第2の部分は、前記第1の部分よりも前記第2方向において前記絶縁層に近く、
前記界面は、前記第1の部分から前記第2の部分まで前記半導体層側に凸状に湾曲する、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記メモリ層は、
前記導電層と前記半導体層との間、および前記絶縁部と前記半導体層との間に設けられたブロック絶縁膜と、
前記ブロック絶縁膜と前記半導体層との間に設けられたトンネル絶縁膜と、
前記ブロック絶縁膜と前記トンネル絶縁膜との間に設けられた電荷蓄積膜と、
を有し、
前記電荷蓄積膜は、
前記第2方向において前記導電層に重なる第1の領域と、
前記第2方向において前記絶縁部に重なる第2の領域と、
を有し、
前記第2の領域は、前記第2方向において前記第1の領域の厚さよりも小さい厚さを有する、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記絶縁部は、シリコンと、酸素と、炭素と、を含有し、
前記絶縁部中の前記炭素の濃度は、前記絶縁層中の前記炭素の濃度よりも高い、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記絶縁部中の前記炭素の濃度は、1原子%以上20原子%以下であり、
前記第2方向において前記絶縁部の厚さは、0.5nm以上5nm以下である、請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記界面は、前記導電層の前記第1方向の中央部と重なる第3の部分をさらに有し、
前記第2方向において前記第1の部分と前記第3の部分との間隔は、0.5nm以上5nm以下である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
第1の層と、第2の層と、を第1方向に交互に積層して積層体を形成する工程と、
前記第1方向に沿って前記積層体を部分的に除去することにより、前記積層体を前記第1方向に貫通する開口と、前記第1の層に設けられるとともに前記開口に面する第1の表面と、前記第2の層に設けられるとともに前記開口に面する第2の表面と、を形成する工程と、
前記第1の表面に保護膜を形成する工程と、
前記第1方向と交差する第2方向において前記第2の表面から前記開口に向かって延在する絶縁部を形成する工程と、
前記保護膜を除去する工程と、
前記第1の表面および前記絶縁部の表面にメモリ層を形成する工程と、
前記第2方向において前記メモリ層の前記第1の表面の反対側および前記絶縁部の反対側に半導体層を形成する工程と、
前記第1の層を除去して空間を形成し、前記空間に第3の層を形成する工程と、
を具備する、半導体記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記積層体と前記半導体層と前記メモリ層と前記絶縁部とを含み、前記第1方向に沿う断面において、前記絶縁部と前記メモリ層との界面は、前記第2の層の前記第1方向の中央部と重なる第1の部分と、前記第2の層の前記第1方向の端部と重なる第2の部分と、を有し、
前記第2の部分は、前記第1の部分よりも前記第2方向において前記第2の層に近く、
前記界面は、前記第1の部分から前記第2の部分まで前記半導体層側に凸状に湾曲する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メモリ層は、
前記第1の表面と前記半導体層との間、および、前記絶縁部と前記半導体層との間に設けられたブロック絶縁膜と、
前記ブロック絶縁膜と前記半導体層との間に設けられたトンネル絶縁膜と、
前記ブロック絶縁膜と前記トンネル絶縁膜との間に設けられた電荷蓄積膜と、
を有し、
前記電荷蓄積膜は、
前記第2方向において前記第3の層に重なる第1の領域と、
前記第2方向において前記絶縁部に重なる第2の領域と、
を有し、
前記第2の領域は、前記第2方向において前記第1の領域の厚さよりも小さい厚さを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の層は、シリコンと窒素とを含有し、
前記第2の層は、シリコンと酸素とを含有し、
前記絶縁部は、シリコンと酸素と炭素とを含有し、
前記絶縁部中の前記炭素の濃度は、前記第1の層中の前記炭素の濃度よりも高い、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記絶縁部中の前記炭素の濃度は、1原子%以上20原子%以下であり、
前記第2方向において前記絶縁部の厚さは、2nm以上7nm以下である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビット線、ワード線、およびこれらに接続されるメモリセルを有する半導体記憶装置が用いられている。ビット線とワード線を選択して、電圧を印加することで、メモリセルにデータを書き込み、読み出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-150227号公報
【特許文献2】特開2021-034734号公報
【特許文献3】特開2022-056000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題の一つは、メモリセルの動作不良を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置は、絶縁層と、導電層と、を有し、絶縁層および導電層が第1方向に交互に積層された、積層体と、絶縁層および導電層を貫通する半導体層と、第1方向と交差する第2方向において積層体と半導体層との間に設けられたメモリ層と、第2方向において絶縁層から半導体層に向かって延在する絶縁部と、を具備する。積層体と半導体層とメモリ層と絶縁部とを含み、第1方向に沿う断面において、絶縁部とメモリ層との界面は、絶縁層の第1方向の中央部と重なる第1の部分と、絶縁層の第1方向の端部と重なる第2の部分と、を有する。第2の部分は、第1の部分よりも第2方向において絶縁層に近く、界面は、第1の部分から第2の部分まで半導体層側に凸状に湾曲する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】メモリセルアレイ100の回路構成を示す回路図である。
【
図3】NANDストリングNSの構造の一例を説明するための断面模式図である。
【
図4】
図3の線分A-Bにおける断面模式図である。
【
図5】
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図6】
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図である
【
図7】
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図である
【
図8】
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図9】
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図10】
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図11】NANDストリングNSの構造の他の例を説明するための断面模式図である。
【
図12】NANDストリングNSの構造の他の例を説明するための断面模式図である。
【
図13】
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図14】
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図15】
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図16】
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例の形成方法例を説明するための断面模式図である
【
図17】実施形態のNANDストリングNSの第1の構造例を説明するための断面模式図である
【
図20】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図21】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図22】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図23】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図24】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図25】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図26】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図27】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図28】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である
【
図29】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である
【
図30】実施形態のNANDストリングNSの第2の構造例を説明するための断面模式図である。
【
図33】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図34】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図35】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【
図36】NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
本明細書において「接続する」とは、特に指定する場合を除き、物理的に接続することだけでなく、電気的に接続することも含む。
【0009】
半導体記憶装置の構成例について説明する。
図1は、メモリの構成例を示すブロック図である。メモリは、メモリセルアレイ100と、コマンドレジスタ101と、アドレスレジスタ102と、シーケンサ103と、ドライバ104と、ローデコーダ105と、センスアンプ106と、を含む。
【0010】
メモリセルアレイ100は、複数のブロックBLK(BLK0~BLK(L-1)(Lは2以上の自然数である))を含む。ブロックBLKは、データを記憶する複数のメモリセルの集合である。
【0011】
コマンドレジスタ101は、メモリコントローラから受信したコマンド信号CMDを保持する。コマンド信号CMDは、例えば、シーケンサ103に読み出し動作、書き込み動作、および消去動作を実行させる命令データを含む。
【0012】
アドレスレジスタ102は、メモリコントローラから受信したアドレス信号ADDを保持する。アドレス信号ADDは、例えば、ブロックアドレスBA、ページアドレスPA、およびカラムアドレスCAを含む。例えば、ブロックアドレスBA、ページアドレスPA、およびカラムアドレスCAは、それぞれブロックBLK、ワード線WL、およびビット線BLの選択に用いられる。
【0013】
シーケンサ103は、メモリの動作を制御する。シーケンサ103は、例えばコマンドレジスタ101に保持されたコマンド信号CMDに基づいてドライバ104、ローデコーダ105、およびセンスアンプ106等を制御して、読み出し動作、書き込み動作、および消去動作等の動作を実行する。
【0014】
ドライバ104は、読み出し動作、書き込み動作、および消去動作等で使用される電圧を生成する。ドライバ104は、例えばDAコンバータを含む。そして、ドライバ104は、例えば、アドレスレジスタ102に保持されたページアドレスPAに基づいて、選択されたワード線WLに対応する信号線に、生成した電圧を印加する。
【0015】
ローデコーダ105は、アドレスレジスタ102に保持されたブロックアドレスBAに基づいて、対応するメモリセルアレイ100内の1つのブロックBLKを選択する。そして、ローデコーダ105は、例えば、選択されたワード線WLに対応する信号線に印加された電圧を、選択されたブロックBLK内の選択されたワード線WLに転送する。
【0016】
センスアンプ106は、書き込み動作において、メモリコントローラから受信した書き込みデータDATに応じて、各ビット線BLに所望の電圧を印加する。また、センスアンプ106は、読み出し動作において、ビット線BLの電圧に基づいてメモリセルに記憶されたデータを判定し、判定結果を読み出しデータDATとしてメモリコントローラに転送する。
【0017】
メモリとメモリコントローラとの間の通信は、例えば、NANDインターフェイス規格をサポートしている。例えば、メモリとメモリコントローラとの間の通信は、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、リードイネーブル信号REn、レディビジー信号RBn、および入出力信号I/Oを使用する。
【0018】
コマンドラッチイネーブル信号CLEは、メモリが受信した入出力信号I/Oがコマンド信号CMDであることを示す。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、受信した信号I/Oがアドレス信号ADDであることを示す。ライトイネーブル信号WEnは、入出力信号I/Oの入力をメモリに命令する信号である。リードイネーブル信号REnは、入出力信号I/Oの出力をメモリに命令する信号である。
【0019】
レディビジー信号RBnは、メモリがメモリコントローラからの命令を受け付けるレディ状態であるか命令を受け付けないビジー状態であるかを、メモリコントローラに通知する信号である。
【0020】
入出力信号I/Oは、例えば、8ビット幅の信号であり、コマンド信号CMD、アドレス信号ADD、書き込みデータ信号DAT等の信号を含むことができる。
【0021】
以上で説明したメモリおよびメモリコントローラは、それらの組み合わせにより1つの半導体記憶装置を構成してもよい。このような半導体記憶装置の例は、例えばSDカードのようなメモリカードや、ソリッドステートドライブ(SSD)を含む。
【0022】
次に、メモリセルアレイ100の回路構成例について説明する。
図2は、メモリセルアレイ100の回路構成を示す回路図である。
図2は、ブロックBLK0を例示するが、他のブロックBLKの構成も同じである。
【0023】
ブロックBLKは、複数のストリングユニットSUを含む。各ストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。なお、
図2は、3つのストリングユニットSU(SU0~SU2)を図示しているが、ストリングユニットSUの数は、特に限定されない。
【0024】
各NANDストリングNSは、複数のビット線BL(BL0~BL(N-1)(Nは2以上の自然数である))の一つに接続される。各NANDストリングNSは、例えばメモリトランジスタMTと、選択トランジスタST1と、選択トランジスタST2と、を含む。メモリトランジスタMTは、一つのメモリセルMCを構成する。各NANDストリングNSは、直列に接続された複数のメモリセルを有する。このようなメモリセルを含むメモリをチェイン型メモリともいう。
【0025】
メモリトランジスタMTは、制御ゲートおよび電荷蓄積層を含み、データを不揮発に保持可能である。なお、メモリトランジスタMTは、電荷蓄積層に絶縁膜を用いたMONOS型であってもよいし、電荷蓄積層に導電体層を用いたFG型であってもよい。以下、実施形態では、MONOS型を例として説明する。
【0026】
メモリトランジスタMTの制御ゲートは、対応するワード線WLに接続される。複数のメモリトランジスタMTの一つのソースおよびドレインの一方は、複数のメモリトランジスタMTの他の一つのソースおよびドレインの他方に接続される。
図2は、複数のメモリトランジスタMT(MT0~MT(M-1)(Mは2以上の自然数))を図示するが、メモリトランジスタMTの数は、特に限定されない。
【0027】
選択トランジスタST1は、各種動作時におけるストリングユニットSUの選択に使用
される。選択トランジスタST1の数は、特に限定されない。
【0028】
選択トランジスタST2は、各種動作時におけるストリングユニットSUの選択に使用される。選択トランジスタST2の数は、特に限定されない。
【0029】
各NANDストリングNSにおいて、選択トランジスタST1のドレインは、対応するビット線BLに接続される。選択トランジスタST1のソースは、直列に接続されたメモリトランジスタMTの一端に接続される。直列に接続されたメモリトランジスタMT他端は、選択トランジスタST2のドレインに接続される。
【0030】
同一のブロックBLKにおいて、選択トランジスタST2のソースは、ソース線SLに接続される。各ストリングユニットSUの選択トランジスタST1のゲートは、それぞれ対応する選択ゲート線SGDに接続される。メモリトランジスタMTのゲートは、それぞれ対応するワード線WLに接続される。選択トランジスタST2のゲートは、対応する選択ゲート線SGSに接続される。
【0031】
同じカラムアドレスCAが割り当てられた複数のNANDストリングNSは、複数のブロックBLK間で同じビット線BLに接続される。ソース線SLは、複数のブロックBLK間で接続される。
【0032】
次に、NANDストリングNSの構造例について説明する。
【0033】
図3は、実施形態のNANDストリングNSと比較するための、NANDストリングNSの構造の一例を説明するための断面模式図であり、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸と、を図示し、X軸およびZ軸を含むX-Z断面の一部を示す。
図4は、
図3の線分A-Bにおける断面模式図であり、X軸およびY軸を含むX-Y断面の一部を示す。
【0034】
図3および
図4に示すNANDストリングNSは、積層体1と、絶縁体2と、半導体層3と、メモリ層4と、を具備する。
【0035】
積層体1は、導電層11と、絶縁層12と、を含む。複数の導電層11のそれぞれおよび複数の絶縁層12のそれぞれは、Z軸方向に沿って交互に積層される。導電層11は、ワード線WLおよびメモリトランジスタMTのゲート電極を構成し、X軸方向に沿って延在する。絶縁体2は、例えば導電層11と絶縁層12との積層方向(Z軸方向)に沿って設けられる。
【0036】
半導体層3は、Z軸方向に沿って積層体1を貫通する。半導体層3は、メモリトランジスタMTのチャネル領域を形成する。半導体層3は、ビット線BLおよびソース線SLに電気的に接続される。
【0037】
メモリ層4は、半導体層3の導電層11と反対側に設けられる。メモリ層4は、X軸方向またはY軸方向において導電層11と半導体層3との間に設けられる。
【0038】
メモリ層4は、ブロック絶縁膜41と、電荷蓄積膜42と、トンネル絶縁膜43と、を有する。
【0039】
次に、半導体記憶装置の製造方法における、
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を
図5ないし
図10を参照して説明する。
図5ないし
図10は、
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例の形成方法例を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。
【0040】
まず、
図5に示すように、Z軸方向に沿って絶縁層110と絶縁層12とを交互に積層して積層体1aを形成する。絶縁層110は、犠牲層である。犠牲層は、後に空間を形成するための層である。
【0041】
次に、
図6に示すように、積層体1aを加工することにより、Z軸方向に沿って積層体1aを貫通する開口(メモリホールMH)と、表面110aと、表面120aと、を形成する。
【0042】
次に、
図7に示すように、絶縁層110をX-Y断面に沿って部分的に除去する(リセスする)ことにより、積層体1aに内溝13を形成する。
【0043】
次に、
図8に示すように、表面110aおよび表面120aにブロック絶縁膜41を形成し、ブロック絶縁膜41の表面に電荷蓄積膜42を形成し、電荷蓄積膜42の表面にトンネル絶縁膜43を形成する。
【0044】
次に、
図9に示すように、トンネル絶縁膜43の表面に半導体層3を形成し、半導体層3の表面に絶縁体2を形成する。
【0045】
次に、
図10に示すように、絶縁層110を除去することにより空間Sを形成し、その後、空間Sに導電層11を形成する。以上の工程により
図3および
図4に示すNANDストリングNSの一例を形成できる。
【0046】
図3および
図4に示すNANDストリングNSは、導電層11がX軸方向またはY軸方向において絶縁層12よりも半導体層3から離れているため、隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することができる。このような構造は、ウェットエッチングを用いて絶縁層12間の犠牲層である絶縁層110をリセスすることにより形成される。このため、導電層11の体積を大きくすることが困難である。導電層11の体積が小さいと、ワード線WLの電気抵抗が大きくなる。また、ウェットエッチングを用いて犠牲層をリセスすると、導電層11の埋め込み性が悪化するため、導電層11の成膜ガスにより、ブロック絶縁膜41がダメージを受ける場合がある。
【0047】
図11は、NANDストリングNSの構造の他の例を説明するための断面模式図であり、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸と、を図示し、X軸およびZ軸を含むX-Z断面の一部を示す。
図12は、NANDストリングNSの構造の他の例を説明するための断面模式図であり、X軸およびY軸を含むX-Y断面の一部を示す。
【0048】
図11および
図12に示すNANDストリングNSは、積層体1と、絶縁体2と、半導体層3と、メモリ層4と、絶縁層44と、絶縁層45と、を有する。積層体1、絶縁体、半導体層3、メモリ層4の説明は、
図3および
図4に示す積層体1、絶縁体2、半導体層3、メモリ層4の説明を適宜援用できる。
【0049】
絶縁層44は、導電層11と電荷蓄積膜42との間に設けられる。絶縁層44は、電荷蓄積膜42に接して設けられる。絶縁層44は、電荷蓄積膜としての機能を有する。絶縁層44は、例えば窒化シリコンを含む。
【0050】
絶縁層45は、導電層11と絶縁層44との間に設けられる。絶縁層45は、例えば酸化シリコンを含む。絶縁層45は、ブロック絶縁膜としての機能を有する。
【0051】
次に、半導体記憶装置の製造方法における、
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例の形成方法例を
図13ないし
図16を参照して説明する。
図13ないし
図16は、
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例の形成方法例を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。
【0052】
まず、
図13に示すように、Z軸方向に沿って絶縁層110と絶縁層12とを交互に積層して積層体1aを形成し、積層体1aを加工することにより、Z軸方向に沿って積層体1aを貫通するメモリホールMHと、表面110aと、表面120aと、を形成する。
【0053】
次に、
図14に示すように、表面110aおよび表面120aにブロック絶縁膜41を形成し、ブロック絶縁膜41の表面に電荷蓄積膜42を形成し、電荷蓄積膜42の表面にトンネル絶縁膜43を形成し、トンネル絶縁膜43の表面に半導体層3を形成し、半導体層3の表面に絶縁体2を形成する。
【0054】
次に、
図15に示すように、絶縁層110を除去することにより空間Sを形成し、ブロック絶縁膜41の絶縁層110に面する領域を除去して電荷蓄積膜42を部分的に露出させる。
【0055】
次に、
図16に示すように、選択成長法を用いて電荷蓄積膜42の露出部を成長させて絶縁層44を形成し、絶縁層44の表面に絶縁層45を形成する。その後、空間Sに導電層11を形成する。以上の工程により
図11および
図12に示すNANDストリングNSの他の例を形成できる。
【0056】
図11および
図12に示すNANDストリングNSは、導電層11がX軸方向またはY軸方向において絶縁層12よりも半導体層3から離れているため、隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することができる。このような構造は、犠牲層を除去して空間を形成し、ブロック絶縁膜41の空間Sに面する部分を除去した後、空間Sに絶縁層44および絶縁層45を形成し、その後、空間Sに導電層11を形成することにより形成される。このため、導電層11の体積を大きくすることが困難である。導電層11の体積が小さいと、ワード線WLの電気抵抗が大きくなる。また、メモリホールMHを絶縁層44および絶縁層45の分だけ小さく形成する必要があり、メモリホールMHのアスペクト比が高くなり、加工が困難となる。さらに、選択成長法を用いて絶縁層44を形成する場合、絶縁層44の膜質が悪く、電荷蓄積膜としての機能が低く、例えばメモリセルMCの閾値電圧のシフト量が小さい(メモリウインドウが狭い)。
【0057】
これに対し、実施形態のNANDストリングNSは、例えば以下で説明する第1の構造例および第2の構造例のいずれかの構造を有する。それぞれの構造例について以下に説明する。
【0058】
(NANDストリングNSの第1の構造例)
図17は、実施形態のNANDストリングNSの第1の構造例を説明するための断面模式図であり、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸と、を図示し、X軸およびZ軸を含むX-Z断面の一部を示す。
図18は、
図17の線分A-Bにおける断面模式図であり、X軸およびY軸を含むX-Y断面の一部を示す。
【0059】
NANDストリングNSは、
図17および
図18に示すように、積層体1と、絶縁体2と、半導体層3と、メモリ層4と、絶縁部5と、を具備する。
【0060】
積層体1は、導電層11と、絶縁層12と、を含む。複数の導電層11のそれぞれおよび複数の絶縁層12のそれぞれは、Z軸方向に沿って交互に積層される。導電層11は、ワード線WLおよびメモリトランジスタMTのゲート電極を構成し、X軸方向またはY軸方向に沿って延在する。導電層11の例は、タングステン層等の導電層を含む。絶縁層12の例は、シリコン酸化物層等を含む。Z軸方向において、導電層11のメモリ層4に面する表面11aは、絶縁層12の絶縁部5に面する表面120aと面一であってもよい。なお、導電層11は、複数の層の積層構造を有していてもよい。積層構造は、例えばタングステン層と、窒化チタン層と、酸化アルミニウム層と、を有していてもよい。
【0061】
絶縁体2は、例えば導電層11と絶縁層12との積層方向(Z軸方向)に沿って設けられる。絶縁体2は、コア絶縁体として機能する。絶縁体2は、例えば円柱形状を有する。絶縁体2の例は、シリコン酸化物層等を含む。なお、NANDストリングNSは、必ずしも絶縁体2を有していなくてもよい。
【0062】
半導体層3は、
図18に示すように、A-B断面において絶縁体2を囲む。半導体層3は、Z軸方向に沿って積層体1を貫通する。半導体層3は、例えばポリシリコンを含む。半導体層3は、メモリトランジスタMTのチャネル領域を形成する。半導体層3は、ビット線BLおよびソース線SLに電気的に接続される。半導体層3の外周はメモリ層4で覆われる。
【0063】
メモリ層4は、半導体層3の絶縁体2と反対側に設けられる。メモリ層4は、X軸方向またはY軸方向において導電層11と半導体層3との間および絶縁層12と半導体層3との間に設けられる。メモリ層4は、
図18に示すように、A-B断面において半導体層3を囲む。
【0064】
メモリ層4は、ブロック絶縁膜41と、電荷蓄積膜42と、トンネル絶縁膜43と、を有する。ブロック絶縁膜41は、X軸方向またはY軸方向において、絶縁部5と半導体層3との間に設けられ、例えば酸素と、シリコンと、を含有する。電荷蓄積膜42は、X軸方向またはY軸方向において、トンネル絶縁膜43とブロック絶縁膜41との間に設けられ、例えば窒素と、シリコンと、を含有する。トンネル絶縁膜43は、電荷蓄積膜42と半導体層3との間に設けられ、例えば酸素と、窒素と、シリコンと、を含む。
【0065】
絶縁部5は、X軸方向またはY軸方向において絶縁層12から半導体層3に向かって延在する。絶縁部5は、表面120aに設けられる。絶縁部5は、絶縁層12とメモリ層4との間に設けられる。絶縁部5は、半導体層3を囲む。絶縁部5は、例えば、シリコンと、酸素と、を含有する。絶縁部5が絶縁層12と同じ材料を含む場合、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)等の装置を用いても絶縁部5と絶縁層12の界面を明確に視認できない場合がある。この場合、絶縁層12の上下の導電層11のブロック絶縁膜41に面する面同士を結ぶ線分に重なる部分を絶縁部5と絶縁層12の界面とみなしてもよい。
【0066】
図19は、
図17の一部を示す拡大図である。導電層11と、絶縁層12と、半導体層3と、メモリ層4と、絶縁部5と、を含み、Z軸方向に沿うNANDストリングNSの断面において、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面、電荷蓄積膜42とトンネル絶縁膜43との界面、トンネル絶縁膜43と半導体層3との界面のそれぞれは、X軸方向またはY軸方向において、絶縁層12のZ軸方向の中央部12Mと重なる第1の部分と、X軸方向またはY軸方向において、絶縁層12のZ軸方向の端部12Eと重なる第2の部分と、導電層11のZ軸方向の中央部11Mと重なる第3の部分と、を有する。中央部11Mは、例えば導電層11の上面または下面から導電層11の厚さ(Z軸方向の長さ)の半分の深さに位置する領域である。中央部12Mは、例えば絶縁層12の上面または下面から絶縁層12の厚さ(Z軸方向の長さ)の半分の深さに位置する領域である。端部12Eは、Z軸方向において、導電層11の端部と接する領域である。第2の部分は、第1の部分の上側および下側にそれぞれ設けられる。
図19は、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面が絶縁層12のZ軸方向の中央部12Mと重なる部分P1と、端部12Eと重なる部分P2と、中央部11Mと重なるP3と、を有する例を示す。
【0067】
各界面において、第2の部分は、第1の部分よりもX軸方向またはY軸方向において、絶縁層12に近い。各界面は、メモリ層4に向かって突出するラウンド形状またはアーチ形状を有する。各界面は、第1の部分から上下の第2の部分まで半導体層3に凸に湾曲する。これにより、例えばゲート電極WLに電圧を印加する場合に、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面における電界集中を抑制できる。例えば、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面は、
図19に示すように、部分P1から上下の部分P2まで半導体層3側に凸状に湾曲する。
【0068】
各界面において、第2の部分と第3の部分とのX軸方向またはY軸方向の間隔D1は、0.5nm以上5nm以下であることが好ましい。0.5nm未満の場合、隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することが困難となる。5nmを超える場合、例えばゲート電極WLに電圧を印加する場合に、電界が中央部11Mに集中し、書き込み効率が低下する場合がある。
【0069】
絶縁部5の厚さ(X軸方向またはY軸方向の長さ)は、0.5nm以上5nm以下であることが好ましい。これは、絶縁部5の厚さが最小となる部分から最大となる部分までの全ての領域の厚さが0.5nm以上5nm以下であってもよいことを示す。
【0070】
絶縁部5は、炭素をさらに含有してもよい。絶縁部5の炭素の濃度は、1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。20%を超える場合、絶縁部5の絶縁性が悪化して、ワード線WL間のリークや絶縁耐圧の低下を引き起こす場合がある。絶縁部5が
炭素を含有する場合、絶縁層12と絶縁部5は、例えば炭素濃度の違いにより区別することができる。絶縁部5中の炭素の濃度は、絶縁層12中の炭素の濃度よりも高いことが好ましい。すなわち、炭素濃度が1原子%未満の領域を絶縁層12と定義し、炭素濃度が1原子%以上20原子%以下の領域を絶縁部5と定義することができる。また、絶縁部5中のシリコン濃度は、絶縁層12中のシリコン濃度よりも低くてもよい。絶縁部5および絶縁層12を含む複数の層の各元素濃度は、例えば観察断面において透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)等の元素分析を用いて測定可能である。
【0071】
炭素を含む酸化シリコンは、酸化シリコンよりも比誘電率が低いため、メモリセルのフリンジ容量を低減でき、メモリトランジスタMTのカップリング比を上げることができるため、例えばデータ書き込みの際、X軸方向またはY軸方向において、電荷蓄積膜42の導電層11と重なる領域の捕獲電子密度を向上させて隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することができる。
【0072】
次に、半導体記憶装置の製造方法における、NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を
図20ないし
図29を参照して説明する。
図20ないし
図29は、NANDストリングNSの第1の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。
【0073】
まず、
図20に示すように、Z軸方向に沿って絶縁層110と絶縁層12とを交互に積層して積層体1aを形成する。絶縁層110は、犠牲層である。犠牲層は、後に空間を形成するための層である。絶縁層110の例は、例えばシリコン窒化物層等を含む。
【0074】
次に、
図21に示すように、積層体1aを加工することにより、Z軸方向に沿って積層体1aを貫通する開口(メモリホールMH)と、表面110aと、表面120aと、を形成する。表面110aは、絶縁層110に設けられるとともに、メモリホールMHに面する。表面120aは、絶縁層12に設けられるとともに、メモリホールMHに面する。積層体1aは、例えば反応性イオンエッチング(RIE)を用いて加工可能である。
【0075】
次に、
図22に示すように、表面110aに保護膜6を形成し、
図23に示すように、絶縁層12の表面120aに絶縁部5を形成する。絶縁部5は、例えば選択成長法を用いて形成可能である。選択成長法とは、絶縁膜等の保護膜で表面の一部を覆い、表面のその他の部分を膜厚や組成を変化させて選択的に成長させる技術である。選択成長法により、例えば炭素を含む酸化シリコンを含む絶縁部5を形成する場合、例えばシリコン窒化膜である絶縁層110の表面110aに存在するNH基にのみ選択的に吸着可能な塩化珪素を用いて、表面110aを改質することにより保護膜6を形成する。次に、保護膜6が表面110aから脱離しない低温下にて、シリコン酸化膜である絶縁層12の表面120aのOH基にのみ選択的に吸着可能なアミノシランガスと酸化剤を用いて絶縁部5を形成する。酸化剤としては、H
2Oが好ましい。なお、絶縁部5の形成方法は、上記方法に限定されない。絶縁部5は、例えば化学気相成長法(CVD)または原子層堆積法(ALD)を用いて形成可能である。保護膜6は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能であるが、塗布等の手法を用いて形成してもよい。
【0076】
次に、
図24に示すように、保護膜6を除去する。保護膜6は、例えばドライエッチングやウェットエッチング等のエッチングにより除去可能である。
【0077】
次に、
図25に示すように、表面110aおよび絶縁部5の表面にブロック絶縁膜41を形成する。ブロック絶縁膜41は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。
【0078】
次に、
図26に示すように、ブロック絶縁膜41の表面に電荷蓄積膜42を形成する。電荷蓄積膜42は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。
【0079】
次に、
図27に示すように、電荷蓄積膜42の表面にトンネル絶縁膜43を形成する。トンネル絶縁膜43は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。
【0080】
次に、
図28に示すように、トンネル絶縁膜43の表面に半導体層3を形成し、半導体層3の表面に絶縁体2を形成する。半導体層3とおよび絶縁体2は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。
【0081】
次に、
図29に示すように、絶縁層110を除去することにより空間Sを形成し、その後、空間Sに導電層11を形成する。絶縁層110は、例えばウェットエッチングやドライエッチングを用いて除去可能である。導電層11は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。以上の工程によりNANDストリングNSの第1の構造例を形成できる。
【0082】
以上のように、実施形態のNANDストリングNSの第1の構造例では、絶縁部5を形成することにより、例えばデータ書き込みの際、X軸方向またはY軸方向において、電荷蓄積膜42の導電層11と重なる領域の捕獲電子密度を向上させて隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することができる。さらに、絶縁部5を半導体層3に向かって凸状に湾曲する形状にすることにより、例えば端部12E付近での電界集中を抑制できる。よって、メモリセルMCの動作不良を抑制できる。
【0083】
(NANDストリングNSの第2の構造例)
図30は、実施形態のNANDストリングNSの第2の構造例を説明するための断面模式図であり、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸と、を図示し、X軸およびZ軸を含むX-Z断面の一部を示す。
図31は、
図30の線分A-Bにおける断面模式図であり、X軸およびY軸を含むX-Y断面の一部を示す。
【0084】
NANDストリングNSは、
図30および
図31に示すように、積層体1と、絶縁体2と、半導体層3と、メモリ層4と、絶縁部5と、を具備する。
【0085】
半導体層3は、
図31に示すように、A-B断面において絶縁体2を囲む。半導体層3は、Z軸方向に沿って積層体1を貫通する。半導体層3のその他の説明は、
図17に示す半導体層3の説明を適宜援用できる。
【0086】
メモリ層4は、半導体層3の絶縁体2と反対側に設けられる。メモリ層4は、X軸方向またはY軸方向において導電層11と半導体層3との間に設けられる。
【0087】
メモリ層4は、ブロック絶縁膜41と、電荷蓄積膜42と、トンネル絶縁膜43と、を有する。ブロック絶縁膜41は、X軸方向またはY軸方向において、絶縁部5と半導体層3との間に設けられる。電荷蓄積膜42は、X軸方向またはY軸方向において、トンネル絶縁膜43とブロック絶縁膜41との間に設けられる。トンネル絶縁膜43は、電荷蓄積膜42と半導体層3との間に設けられる。ブロック絶縁膜41、電荷蓄積膜42、トンネル絶縁膜43のその他の説明は、
図17に示すブロック絶縁膜41、電荷蓄積膜42、トンネル絶縁膜43の説明を適宜援用できる。
【0088】
絶縁部5は、X軸方向またはY軸方向において絶縁層12から半導体層3に向かって延在する。絶縁部5は、表面120aに設けられる。絶縁部5は、絶縁層12とメモリ層4との間に設けられる。絶縁部5のその他の説明は、
図17に示す絶縁部5の説明を適宜援用できる。
【0089】
図32は、
図30の一部を示す拡大図である。導電層11と、絶縁層12と、半導体層3と、メモリ層4と、絶縁部5と、を含み、Z軸方向に沿うNANDストリングNSの断面において、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面、電荷蓄積膜42とトンネル絶縁膜43との界面、トンネル絶縁膜43と半導体層3との界面のそれぞれは、X軸方向またはY軸方向において、絶縁層12のZ軸方向の中央部12Mと重なる第1の部分と、X軸方向またはY軸方向において、絶縁層12のZ軸方向の端部12Eと重なる第2の部分と、導電層11のZ軸方向の中央部11Mと重なる第3の部分と、を有する。中央部11Mは、導電層11の上面または下面から導電層11の厚さ(Z軸方向の長さ)の半分の深さに位置する領域である。中央部12Mは、例えば絶縁層12の上面または下面から絶縁層12の厚さ(Z軸方向の長さ)の半分の深さに位置する領域である。端部12Eは、Z軸方向において、導電層11の端部と接する領域である。第2の部分は、第1の部分の上側および下側にそれぞれ設けられる。
図32は、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面が絶縁層12のZ軸方向の中央部12Mと重なる部分P1と、端部12Eと重なる部分P2と、中央部11Mと重なるP3と、を有する例を示す。
【0090】
各界面において、第2の部分は、第1の部分よりもX軸方向またはY軸方向において、絶縁層12に近い。各界面は、メモリ層4に向かって突出するラウンド形状またはアーチ形状を有する。各界面は、第1の部分から上下の第2の部分まで半導体層3に凸に湾曲する。これにより、例えばブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面における電界集中を抑制できる。例えば、ブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面は、
図32に示すように、部分P1から上下の部分P2まで半導体層3側に凸状に湾曲する。
【0091】
各界面において、第2の部分と第3の部分とのX軸方向またはY軸方向の間隔D1は、2nm以上7nm以下であることが好ましい。2nm未満の場合、隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することが困難となる。7nmを超える場合、メモリセルMCにデータを書き込む際に印加される電圧に応じて電界が中央部11Mに集中し、書き込み効率が低下する場合がある。
【0092】
絶縁部5の厚さ(X軸方向またはY軸方向の長さ)は、各界面の第1の部分から第2の部分に向かって小さくてもよい。絶縁部5の厚さは、2nm以上7nm以下であることが好ましい。これは、絶縁部5の厚さが最小となる部分から最大となる部分までの全ての領域の厚さが2nm以上7nm以下であってもよいことを示す。
【0093】
絶縁部5は、炭素をさらに含有してもよい。絶縁部5の炭素の濃度は、1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。20%を超える場合、絶縁部5の絶縁性が悪化して、ワード線WL間のリークや絶縁耐圧の低下を引き起こす場合がある。絶縁部5が
炭素を含有する場合、絶縁層12と絶縁部5は、例えば炭素濃度の違いにより区別することができる。絶縁部5中の炭素の濃度は、絶縁層12中の炭素の濃度よりも高いことが好ましい。すなわち、炭素濃度が1原子%未満の領域を絶縁層12と定義し、炭素濃度が1原子%以上20原子%以下の領域を絶縁部5と定義することができる。また、絶縁部5中のシリコン濃度は、絶縁層12中のシリコン濃度よりも低くてもよい。絶縁部5および絶縁層12を含む複数の層の各元素濃度は、例えば観察断面においてTEM-EDX等の元素分析を用いて測定可能である。
【0094】
炭素を含む酸化シリコンは、酸化シリコンよりも比誘電率が低いため、メモリセルのフリンジ容量を低減でき、メモリトランジスタMTのカップリング比を上げることができるため、例えばデータ書き込みの際、X軸方向またはY軸方向において、電荷蓄積膜42の導電層11と重なる領域の捕獲電子密度を向上させて隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することができる。
【0095】
電荷蓄積膜42の厚さ(電荷蓄積膜42のX軸方向またはY軸方向の長さ)は、各界面の第1の部分から第2の部分に向かって大きくてもよい。電荷蓄積膜42の第1の部分に重なる領域の厚さは、絶縁部5の厚さよりも小さいことが好ましい。これにより、電荷蓄積膜42の電子の捕獲領域を大きくできるため、例えば書き込み特性の低下を抑制できる。電荷蓄積膜42の厚さは、例えば2nm以上10nm以下であることが好ましい。2nm未満であると、電荷の捕獲性能が悪化し、例えば書き込み特性が低下する。10nmを超えると、隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉が大きくなる。
【0096】
電荷蓄積膜42は、X軸方向またはY軸方向において導電層11に重なる領域42aと、X軸方向またはY軸方向において絶縁部5と重なる領域42bと、を有する。
図32は、領域42aと領域42bとの境界を二点鎖線で示す。領域42bは、X軸方向またはY軸方向において領域42aの厚さよりも小さい厚さを有することが好ましい。これにより、隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制できる。なお、これに限定されず、電荷蓄積膜42を薄くして、領域42bを形成することなく、複数の領域42aが分断されていてもよい。
【0097】
次に、半導体記憶装置の製造方法におけるNANDストリングNSの第2の構造例の形成方法例を
図33ないし
図36を参照して説明する。
図33ないし
図36は、NANDストリングNSの第2の構造例の形成方法例を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。ここでは、第1の構造例の形成方法例と異なる部分について説明し、その他の部分については、第1の構造例の形成方法例の説明を必要に応じて適宜援用できる。
【0098】
まず、第1の構造例と同様に、
図20ないし
図25に示す工程によりブロック絶縁膜41まで形成した後、
図33に示すように、ブロック絶縁膜41の表面に電荷蓄積膜42を形成する。電荷蓄積膜42は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。電荷蓄積膜42は、絶縁部5よりも厚いことが好ましい。
【0099】
次に、
図34に示すように、電荷蓄積膜42を厚さ方向(X軸方向またはY軸方向)に部分的に除去して電荷蓄積膜42を薄くする。電荷蓄積膜42は、例えばウェットエッチングやケミカルドライエッチング(CDE)を用いて部分的に除去可能である。
【0100】
次に、第1の構造例と同様に、
図35に示すように、ブロック絶縁膜41の表面にトンネル絶縁膜43を形成し、トンネル絶縁膜43の表面に半導体層3を形成し、半導体層3の表面に絶縁体2を形成する。トンネル絶縁膜43、半導体層3、絶縁体2は、例えばCVDまたはALDを用いて形成可能である。
【0101】
次に、第1の構造例と同様に、
図36に示すように、絶縁層110を除去することにより空間Sを形成し、その後、空間Sに導電層11を形成する。以上の工程によりNANDストリングNSの第2の構造例を形成できる。
【0102】
以上のように、NANDストリングNSの第2の構造例では、絶縁部5を形成することにより、例えばデータ書き込みの際、X軸方向またはY軸方向において、電荷蓄積膜42の導電層11と重なる領域の捕獲電子密度を向上させて隣接するメモリセルMC間の電気的な干渉を抑制することができる。さらに、絶縁部5を半導体層3に向かって凸状に湾曲する形状にすることにより、例えばブロック絶縁膜41と電荷蓄積膜42との界面における電界集中を抑制できる。また、電荷蓄積膜42の厚さを各界面の第1の部分から第2の部分に向かって大きくすることにより、メモリホールMHのアスペクト比を高くすることなく、高い良質な電荷蓄積膜42を形成できるため、例えば電荷保持特性の劣化を抑制できる。よって、メモリセルMCの動作不良を抑制できる。
【0103】
なお、第2の構造例の構成要素は、第1の構造例の構成要素と適宜組み合わせることができる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1…積層体、1a…積層体、2…絶縁体、3…半導体層、4…メモリ層、5…絶縁部、6…保護膜、11…導電層、11M…中央部、12…絶縁層、12E…端部、12M…中央部、13…内溝、41…ブロック絶縁膜、42…電荷蓄積膜、43…トンネル絶縁膜、44…絶縁層、45…絶縁層、100…メモリセルアレイ、101…コマンドレジスタ、102…アドレスレジスタ、103…シーケンサ、104…ドライバ、105…ローデコーダ、106…センスアンプ、110…絶縁層、110a…表面、120a…表面。