(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142102
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】発泡断熱材
(51)【国際特許分類】
B32B 15/082 20060101AFI20241003BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241003BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B15/082
B32B5/18
E04B1/80 100P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054101
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(71)【出願人】
【識別番号】596105644
【氏名又は名称】株式会社東北イノアック
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲尭
(72)【発明者】
【氏名】千葉 駿太
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001GA12
2E001HB04
2E001HD01
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD04
2E001HD08
2E001HD09
4F100AB10B
4F100AK01A
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4F100BA10B
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4F100GB07
4F100HB00D
4F100JJ02
4F100JJ07
4F100JL10D
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】アルミニウム層の厚さを薄くしても十分な不燃性を確保することができる発泡断熱材を提供する。
【解決手段】樹脂発泡体と、樹脂発泡体の少なくとも一面側にアルミニウム層と、を備えた発泡断熱材であって、アルミニウム層の少なくとも一面側に、ハロゲン含有樹脂層を有することを特徴とする、発泡断熱材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体と、前記樹脂発泡体の少なくとも一面側にアルミニウム層と、を備えた発泡断熱材であって、
前記アルミニウム層の少なくとも一面側に、ハロゲン含有樹脂層を有することを特徴とする、発泡断熱材。
【請求項2】
前記ハロゲン含有樹脂層のハロゲン濃度は、40重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の発泡断熱材。
【請求項3】
前記アルミニウム層と前記樹脂発泡体との間に繊維層を有し、前記繊維層の両面に樹脂層を有することを特徴とする、請求項1に記載の発泡断熱材。
【請求項4】
前記ハロゲン含有樹脂層の少なくとも一面側に着色塗料層を有することを特徴とする、請求項1に記載の発泡断熱材。
【請求項5】
ISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料、又は、準不燃材料であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発泡断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物等で使用される断熱材として、樹脂発泡体を含む断熱材が用いられている。電力需給の安定性やエネルギー価格の高騰、環境面への配慮等から、断熱材の建造物への利用はこれまで以上に増加することが予想される。そこで、樹脂発泡体を含む断熱材に関する技術が多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリイソシアヌレート発泡体の一面にアルミニウム層を有し、ポリイソシアヌレート発泡体と当接する面に樹脂層が配置されている発泡ボードが開示されている。また、樹脂層とアルミニウム層との間に、クラフト紙等の繊維層を介在させる旨も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、アルミニウム層を不燃材料として用いるためには、一定以上の厚さが必要となる。アルミニウム層の厚さが厚いとコストや重量が増加するため好ましくない。クラフト紙等の繊維層を介在させた場合、ISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃性の基準を満たさない。
【0006】
本発明は、アルミニウム層の厚さを薄くしても十分な不燃性を確保することができる発泡断熱材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、
本発明(1)は、
樹脂発泡体と、樹脂発泡体の少なくとも一面側にアルミニウム層と、を備えた発泡断熱材であって、
アルミニウム層の少なくとも一面側に、ハロゲン含有樹脂層を有することを特徴とする、発泡断熱材である。
【0008】
本発明(2)は、
ハロゲン含有樹脂層のハロゲン濃度は、40重量%以上であることを特徴とする、発明(1)の発泡断熱材である。
【0009】
本発明(3)は、
アルミニウム層と樹脂発泡体との間に繊維層を有し、繊維層の両面に樹脂層を有することを特徴とする、発明(1)の発泡断熱材である。
【0010】
本発明(4)は、
ハロゲン含有樹脂層の少なくとも一面側に着色塗料層を有することを特徴とする、発明(1)の発泡断熱材である。
【0011】
本発明(5)は、
ISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料、又は、準不燃材料であることを特徴とする、発明(1)から発明(4)のいずれか1つの発泡断熱材である。
【発明の効果】
【0012】
本開示における発泡断熱材によれば、アルミニウム層の厚さを薄くしても十分な不燃性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発泡断熱材100を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る発泡断熱材100の繊維層40と樹脂層50とを有する場合を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.発泡断熱材
1-1.構造
1-1-1.構成要素
本形態にかかる発泡断熱材は、少なくとも、樹脂発泡体と、樹脂発泡体の少なくとも一面に配置されたアルミニウム層とを有する。また、アルミニウム層の少なくとも一面側(両面側でもよい)に、ハロゲン含有樹脂層を有する。更に、繊維層、樹脂層、着色塗料層等を有していてもよい。以下、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0015】
図1は、樹脂発泡体10の一面(樹脂発泡体10の屋外側)にアルミニウム層20が配置され、アルミニウム層20の樹脂発泡体10側と反対の面側(屋外側)にハロゲン含有樹脂層30が配置されている例を示す。
【0016】
なお、
図1では、ハロゲン含有樹脂層30がアルミニウム層20の屋外側に配置された例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ハロゲン含有樹脂層30がアルミニウム層20の樹脂発泡体10側(屋内側)に配置されていてもよい。
【0017】
また、詳細は後述の「2-4.溶剤接着性」で説明するが、
図1に示すようにハロゲン含有樹脂層30が最表面(アルミニウム層20の屋外側)に配置されると、発泡断熱材100の他の材質との接着性がより向上する。より具体的には、発泡断熱材100を、コンクリート、合板、石膏ボード、塩化ビニルシート等の他の材質に接着して使用する際に、ハロゲン含有樹脂層30が溶剤や熱により溶融するため、アルミニウム層20に直接接着するよりも接着性をより向上させることができる。
【0018】
また、
図2に示すように、本形態にかかる発泡断熱材100は、アルミニウム層20と樹脂発泡体10との間に繊維層40を有していてもよく、繊維層40の両面側に樹脂層50を有していてもよい。このとき、樹脂層50は繊維層40と接合して形成されていることが好ましい。より具体的には、樹脂層50の形成方法として、溶融させた樹脂に繊維層40の一部を浸潤後、樹脂を溶融固化させることで、アンカー効果により樹脂層50を繊維層40に接合させる方法がある。また、樹脂を溶融したもの、または、樹脂を溶解させたものに繊維層を含浸させ、樹脂を固化、または、溶媒除去させることで、繊維層40表面に樹脂層50を形成させてもよい。
【0019】
アルミニウム層20と樹脂発泡体10との間に繊維層40が配置されることで、発泡断熱材100の剛性を高めることができる。また、繊維層40の両面に樹脂層50が配置されることで、繊維層40の表面処理がなされるとともに、樹脂発泡体10やアルミニウム層20等の他の層との接着性を向上させることができる。
【0020】
更に、図示は省略するが、ハロゲン含有樹脂層30の少なくとも一面側に着色塗料層を有していてもよい。より具体的には、ハロゲン含有樹脂層30とアルミニウム層20との間に、着色塗料層を有していてもよい。また、ハロゲン含有樹脂層30の樹脂発泡体10側とは反対の面側(屋外側)に、着色塗料層を有していてもよい。着色塗料層を配置することにより、発泡断熱材100の表面に加飾(着色)を施すことができる。
【0021】
1-1-2.厚さ、形状
本形態に係る発泡断熱材は、総厚は特に限定されず、具体的には、4mm以上200mm以下であることが好ましく、10mm以上150mm以下がより好ましく、20mm以上100mm以下が更に好ましい。
【0022】
ハロゲン含有樹脂層の重量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されず、0.5g/m2以上10.0g/m2以下であることが好ましく、1.0g/m2以上8.0g/m2以下であることがより好ましく、1.5g/m2以上6.0g/m2以下であることが更に好ましい。
【0023】
ハロゲン含有樹脂層の重量が、かかる範囲にある場合、本形態の発泡断熱材は、耐候性をより向上させるとともにより十分な不燃性を確保することができる。より具体的には、ハロゲン含有樹脂層の重量が0.5g/m2以上であると、ハロゲン含有樹脂層がアルミニウム層の屋外側に配置された場合には、アルミニウム層を酸化や傷から保護することができ、耐候性がより向上する。また、ハロゲン含有樹脂層内のハロゲンが不燃性に寄与するため、後述するISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料、又は、準不燃材料の評価を得ることができる。ハロゲン含有樹脂層の重量が、10.0g/m2以下であると、発泡断熱材の用途としてより好ましい重量とすることができる。すなわち、施工時にはより軽量の物が好まれるので、壁構造材等としての観点からも好ましい。
【0024】
着色塗料層の重量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されず、2.0g/m2以下であることが好ましく、0.5g/m2以下がより好ましく、0.25g/m2以下が更に好ましい。また、着色塗料層の面積は、アルミニウム層全体の面積の15%以下となることが好ましく、10%以下がより好ましい。
【0025】
着色塗料層の重量を2.0g/m2以下とし、着色塗料層の面積をアルミニウム層全体の面積の15%以下とすれば、アルミニウム層の有する遮熱性、不燃性を担保しつつ、発泡断熱材の表面に加飾(着色)を施すことができる。
【0026】
アルミニウム層の厚さは、特に限定されず、6μm以上100μm以下であることが好ましく、6μm以上50μm以下がより好ましく、6μm以上20μm以下が更に好ましい。
【0027】
アルミニウム層の厚さが6μm以上であると、上述したハロゲン含有樹脂層を有することにより発泡断熱材が、より十分な不燃性を確保することができる。アルミニウム層の厚さが100μm以下であると、発泡断熱材の用途としてより好ましい重量とすることができ、発泡断熱材の価格をより安価にすることができる。
【0028】
繊維層の重量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されず、50g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以上180g/m2以下がより好ましく、100g/m2以上150g/m2以下が更に好ましい。
【0029】
繊維層の重量が50g/m2以上であると、発泡断熱材の剛性をより向上させることができる。繊維層の重量が200g/m2以下であると、発泡断熱材が燃焼する場合の発熱量が抑えられ、熱負荷をより低減することができるので、アルミニウム層、及び、ハロゲン含有樹脂層との組み合わせで、後述するISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料、又は、準不燃材料の評価を得ることができる。
【0030】
樹脂層の厚さは、特に制限されず、10μm以上50μm以下であることが好ましい。樹脂層の厚さが、かかる範囲にある場合、凹凸のある繊維層の表面処理がなされ、繊維層に含まれる水分による樹脂発泡体やアルミニウム層等の他の層との接着性への影響をより低減することができる。
【0031】
発泡断熱材、発泡断熱材を構成する樹脂発泡体、ハロゲン含有樹脂層、アルミニウム層、繊維層、及び、樹脂層は、好適には全て板状であり、平面形状は特に限定されず、例えば、正方形、及び、長方形等の矩形が挙げられる。
【0032】
1-2.樹脂発泡体
1-2-1.材質
樹脂発泡体の材質としては、特に限定されず、公知の樹脂成分とすることができ、例えば硬質ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。中でもポリイソシアヌレート樹脂等の熱硬化性樹脂が、耐熱性、難燃性、及び、剛性の面でより好ましい。
【0033】
樹脂発泡体の材質としてポリイソシアヌレート樹脂を例にして以下に説明する。ポリイソシアヌレート樹脂は、分子構造中にイソシアヌレート環を有する。
ポリイソシアヌレート樹脂発泡体の原料におけるイソシアネートインデックスは150以上であることが好ましく、より好適には、300~600である。イソシアネートインデックスが300以上の場合は、燃えにくくより熱収縮しにくくなり、それに対して600以下の場合には、発泡体がより固くなり、圧縮強度や曲げ強度などが構造体として十分のものとなる。
【0034】
1-2-2.構造
ポリイソシアヌレート樹脂発泡体の独立気泡率は、75%以上であり、好適には80%以上であり、より好適には82.5%以上である。尚、上限値は特に限定されず、例えば99%である。前記のように、独立気泡率が当該範囲内である場合、より高い断熱性を担保しつつ、剛性がより良いポリイソシアヌレート樹脂発泡体となる。ここで、独立気泡率は、ASTM D2856に基づいて測定された値である。
【0035】
ポリイソシアヌレート樹脂発泡体の密度(JIS K7222:2005)は、25kg/m3以上70kg/m3以下が好ましく、30kg/m3以上50kg/m3以下がより好ましく、32kg/m3以上40kg/m3以下が更に好ましい。密度が25kg/m3以上であると、発泡断熱材としての強度がより十分となる。密度が70kg/m3以下であると、天井材や壁材の用途としてより好ましい重量となる。すなわち、施工時にはより軽量の物が好まれるので壁構造材等としての観点からも好ましい。
【0036】
樹脂発泡体は、単層であってもよく、複数の樹脂層が積層された多層体であってもよい。多層体における各樹脂層は、異なる樹脂で構成されていてもよく、同一の樹脂で構成されていてもよい。
【0037】
1-2-3.物性
本形態におけるポリイソシアヌレート樹脂発泡体は、熱重量―示差熱同時測定装置(TG―DTA)測定により、空気環境下、昇温速度30℃/minで昇温した場合、300℃における重量減少率が30%以下であることが好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましい。重量減少率がかかる範囲にある場合、ポリイソシアヌレート樹脂発泡体の耐熱性が保持される。また、ハロゲン含有樹脂層とアルミニウム層とを備える構成とすることで、発泡断熱材の難燃性、及び、剛性をより向上させることができる。
【0038】
1-3.ハロゲン含有樹脂層
1-3-1.材質
ハロゲン含有樹脂層の材質としては、フッ素・塩素・臭素・ヨウ素等のハロゲンを含む樹脂であれば特に限定されず、例えば、フッ素であれば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化ポリエチレン等が挙げられる。また、塩素であれば、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0039】
ハロゲン含有樹脂層のハロゲン濃度は、40重量%以上が好ましく、42重量%以上がより好ましく、45重量%以上が更に好ましい。ハロゲン濃度の上限値については、特に限定されず、例えば、60重量%以下、57重量%以下、55重量%以下である。ハロゲン濃度がかかる範囲にある場合、ハロゲン含有樹脂層に含まれるハロゲンが難燃性に寄与するので、発泡断熱材に比較的燃えやすい繊維層を配置しても、発泡断熱材全体の難燃性をより向上させることができる。
【0040】
1-3-2.構造
ハロゲン含有樹脂層は、単層であってもよく、複数の樹脂層が積層された多層体であってもよい。多層体における各樹脂層は、異なる樹脂で構成されていてもよく、同一の樹脂で構成されていてもよい。
【0041】
1-3-3.物性
ハロゲン含有樹脂層の色は、特に限定されず、透明性を有していることが好ましい。ハロゲン含有樹脂層が透明性を有していれば、アルミニウム層の遮熱性を生かすことができるので、発泡断熱材の不燃性をより向上させることができる。
【0042】
なお、発泡断熱材の表面に加飾(着色)する場合は、ハロゲン含有樹脂層とアルミニウム層との間に、後述する着色塗料層を配置することが好ましい。
【0043】
1-4.着色塗料層
着色塗料層の材質としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。着色塗料層の色は、特に限定されず、発泡断熱材の表面に文字や模様等を印字する(加飾・着色する)ことが目的のため、有色であることが好ましい。
【0044】
1-5.アルミニウム層
アルミニウム層は、単層であってもよく、複数のアルミニウム層が積層された多層体であってもよい。アルミニウム層を単層とすることで、発泡断熱材の価格を比較的安価にすることができる。本形態の発泡断熱材は、アルミニウム層の少なくとも一面側にハロゲン含有樹脂層が配置されており、ハロゲン含有樹脂層が不燃性を有するため、アルミニウム層が単層であっても十分な不燃性を確保することができる。
【0045】
1-6.繊維層
繊維層の材質として、特に限定されず、紙、不織布、織布等が挙げられる。繊維層にこれらの材質を用いることで、発泡断熱材の価格を安価にすることができる。また、発泡断熱材に繊維層を配置することで、発泡断熱材の剛性をより向上させることができる。
【0046】
1-7.樹脂層
樹脂層の材質として、アルミニウム層や繊維層に対して接着および融着しうる材料であれば特に限定されず、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。樹脂層により凹凸のある繊維層の表面処理がなされ、繊維層に含まれる水分等が樹脂発泡体、アルミニウム層等の他の層との接着性等へ与える影響をより低減させることができる。
【0047】
2.発泡断熱材の物性
2-1.曲げ強度
本形態にかかる発泡断熱材は、JIS A9521に準拠して測定される曲げ強度が50kN/m2以上であることが好ましく、60kN/m2以上であることがより好ましく、70kN/m2以上であることが更に好ましい。曲げ強度の上限値については特に限定されず、例えば150kN/m2以下、140kN/m2以下、130kN/m2以下である。発泡断熱材の曲げ強度がかかる範囲にある場合、剛性を向上させるため、発泡断熱材の表面が傷つきにくくなる。発泡断熱材の曲げ強度は、樹脂発泡体の材質や厚さ、繊維層の重量等により適宜調整することができる。
【0048】
2-2.単位面積当たりの重量
また、本形態にかかる発泡断熱材は、単位面積当たりの重量が、5.0kg/m2以下であることが好ましく、3.0kg/m2以下がより好ましく、2.0kg/m2以下が更に好ましい。単位面積当たりの重量の下限値については特に限定されず、例えば0.3kg/m2以上、0.5kg/m2以上、0.7kg/m2以上である。発泡断熱材の単位面当たりの重量がかかる範囲にある場合、発泡断熱材の用途としてより好ましい重量とすることができる。すなわち、施工時にはより軽量の物が好まれるので、壁構造材等としての観点からも好ましい。
【0049】
2-3.不燃性
更に、本形態にかかる発泡断熱材は、ISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料、又は、準不燃材料であることが好ましい。コーンカロリーメータ試験とは、試料表面をコーンヒーターで加熱したときの発熱速度、発熱量等から防火性能を評価する試験である。
【0050】
2-4.溶剤接着性
ハロゲン含有樹脂層をアルミニウム層の屋外側に配置した本発明の態様において、特に、屋上用途に使用した際の防水シート(塩化ビニルシート)との接着性について説明する。
【0051】
一般的に、発泡断熱材を屋上用途に使用した場合、建物内部への漏水や雨漏りを防ぐため、防水シート(塩化ビニルシート)を発泡断熱材の表面に貼付することがある。防水シートを発泡断熱材に貼付する方法として、電磁誘導加熱により熱融着する方法、溶剤や接着剤を塗布する方法等がある。熱融着する方法、溶剤を塗布する方法は、金属ディスクとビスを打ち付けて固定する一部分のみで接着する。このため、全面で確実に接着することが困難であり、風等で防水シートが飛ばされる等の問題がある。それに対して、接着剤は全面に塗布して貼付することができるものの、上記の部分的な接着方法と比べて高価である。
【0052】
本形態に係る発泡断熱材は、ハロゲン含有樹脂層が他のポリエチレン等の樹脂よりも極性が高く、溶剤により融けやすい性質を持つ。従って、溶剤を塗布する方法で発泡断熱材に防水シートを貼付する際、ハロゲン含有樹脂層が溶剤に溶融する。溶融したハロゲン含有樹脂層は、接着剤と同様の接着効果を奏するので、防水シートを全面で接着することができる。これにより、接着剤を用いずに、風等の影響を受けることなく、より確実に防水シートを発泡断熱材に接着することができる。
【0053】
なお、塩化ビニルシートの貼付に使用する溶剤は、特に限定されず、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
また、本形態に係る発泡断熱材における防水シートの接着方法として、溶剤を塗布する例を示したが、これに限定されず、電磁誘導加熱による熱融着、接着剤を使用する方法等を採用してもよい。これらの方法を組み合わせて接着してもよい。
【0055】
接着剤を使用する場合の接着剤としては、特に限定されず、ネオプレーンゴム系、ニトリルゴム系、アクリルゴム系、ブチルゴム系、クロロプレン系、ウレタンゴム系等の溶剤系接着剤、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系等の反応型接着剤が挙げられる。
【0056】
塩化ビニルシートにTHFを塗布し本形態の発泡断熱材に圧着後、180度剥離試験を行い測定した接着強度が、3N/cm2以上であることが好ましく、6N/cm2以上がより好ましく、10N/cm2以上が更に好ましい。接着用度の上限値については、特に限定されず、20N/cm2以下、17N/cm2以下、15N/cm2以下である。
【0057】
3.発泡断熱材の製造方法
本形態にかかる発泡断熱材の製造方法を原料とプロセスに分けて説明する。
【0058】
3-1.原料
3-1-1.樹脂発泡体
樹脂発泡体の原料には、例えば、発泡原料組成物と物理的発泡剤とを少なくとも含む発泡体形成用材料がある。樹脂発泡体は、発泡原料組成物と物理的発泡剤とを混合することにより製造可能である。また、樹脂の素原料と化学反応することにより発泡ガスを発生する化学的発泡剤を用いることもできる。
【0059】
発泡原料組成物は、高発泡の断熱材のバルク部分を構成するための組成物である。発泡原料組成物としては、硬化性樹脂と架橋剤とを含む硬化性樹脂組成物であることが好ましい。硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂でも電離放射線硬化性樹脂でもよいが、熱硬化性樹脂を好ましく挙げることができる。
【0060】
例えば、発泡原料組成物は、ポリオール側発泡原料液(ポリオール、触媒、任意成分として整泡剤、発泡助剤、難燃剤)と、ポリイソシアネートを含有するイソシアネート成分から構成される。
【0061】
なお、以下の説明にて、「ポリオール側発泡原料液」は、ポリオール、触媒、任意成分として、整泡剤、発泡助剤、難燃剤を含有する液を指し、「発泡原料組成物」は、上記「ポリオール側発泡原料液」と上記「イソシアネート成分」とを合わせたものである。
【0062】
また、発泡体形成用材料は、発泡原料組成物や物理的発泡剤以外の他の化合物や材料を含んでいてもよい。
【0063】
3-1-1-1.ポリオール
ポリオールとしては、複数の水酸基を有している化合物であれば特に限定されない。例えば、2官能若しくは3官能の双方又はいずれか一方のポリエーテルポリオールと、多塩基酸とを縮合させて得られた、末端又は側鎖に水酸基を2個以上有する芳香族ポリエステルポリオールと、を併用して用いることが好適である。以下、当該好適な態様について詳述する。
【0064】
2官能若しくは3官能の双方又はいずれか一方のポリエーテルポリオールを構成するポリオールとしては、2官能ポリオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、又は、これらにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドのアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、3官能ポリオール(トリメチロールプロパン、グリセリン等、又は、これらにアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物等)が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、芳香族ポリエステルポリオールを構成する多塩基酸としては、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。ここで、フタル酸と、2官能、3官能若しくは多官能のアルコール類又はこれらのアルキレンオキサイド付加物の1種以上と、を縮合させて得られたポリエステルポリオールが好ましく、より好ましくは、テレフタル酸とジエチレングリコールとを縮合させて得られたポリエステルポリオールである。芳香族ポリエステルポリオールの水酸基の含有量は、2個以上であり、好ましくは2~3個である。
【0066】
ここで、ポリオールの平均水酸基価は、好適には200mgKOH/g以上であり、上限は特に限定されず、例えば1200mgKOH/gである。より詳細には、ポリオールの平均水酸基価は、400~600mgKOH/gであることが特に好適である。ポリオールの平均水酸基価が当該範囲にあると、難燃性を担保しつつ、より高い断熱性やより好適な圧縮強度・曲げ強度を有するポリイソシアヌレート発泡体となる。ここで、平均水酸基価は、JIS K1557-1(プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法 -第一部:水酸基価の求め方)に準じて測定した値である。
【0067】
3-1-1-2.物理的発泡剤・化学的発泡剤
物理的発泡剤及び化学的発泡剤は、気泡を形成するための剤である。
物理的発泡剤は、特に限定されず、好適には、炭化水素(好適にはC4~C6)やフッ素系発泡剤である。具体的には、シクロペンタン、ハイドロフルオロオレフィン(HFO、1336mzz)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO、1233zd)を挙げることができる。
化学的発泡剤は、特に限定されず、ギ酸、酢酸、シュウ酸など有機酸や、環状カーボネート、ジアルキルカーボーネート等のカーボネート類等を挙げることができる。
【0068】
3-1-1-3.難燃剤
難燃剤としては、公知の難燃剤を例示することができ、例えば、赤燐;ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物;メラミンシアヌレート、メラミン等のメラミン系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェノルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等のリン酸エステル系化合物;が挙げられる。ここで、難燃剤は、ポリイソシアヌレート樹脂発泡体の固形分重量を基準として、2~21重量%含有することが好ましく、9~21重量%含有することがより好ましく、9~17重量%含有することが更に好ましい。
【0069】
3-1-1-4.発泡助剤
発泡助剤は、特に限定されず、好適には、水である。物理的発泡剤を単独使用することで課題を達成できるが、さらに、所定量の発泡助剤を添加しても、難燃性を担保しつつ、幅広い断熱性、圧縮強度、及び、曲げ強度を有する発泡体を得ることができる。ここで、発泡助剤として水を併用する場合、物理的発泡剤(例えばシクロペンタン)の添加部数は、発泡原料組成物100重量部に対して3.0~15重量部であることが好ましい。水の添加部数は、発泡原料組成物100重量部を基準として、当該発泡原料組成物中に配合される量を0.5重量部以下とすることが好ましい。水の割合が0.5重量部以下であると、脆くなく面材等との接着性が良好で且つ高い断熱性の発泡体を得ることができる。
【0070】
3-1-1-5.触媒
触媒には、三量化触媒を必須的に含む。好適には、三量化触媒、樹脂化触媒、泡化触媒との混合触媒であり、好適には、金属塩触媒とアミン触媒との混合触媒である。ここで、三量化触媒としては、例えば、1)酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の金属酸化物類;2)メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、プロポキシナトリウム、ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、プロポキシカリウム、ブトキシカリウム等のアルコキシド類;3)酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、カプリル酸カリウム、シュウ酸鉄等の有機金属塩類;4)2,4,6‐トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”‐トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類;5)エチレンイミンの誘導体;6)アルカリ金属、アルミニウム、遷移金属類のアセチルアセトンのキレート類、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0071】
これらは、単独、又は2種以上を混合して使用することができ、中でも、有機金属塩類や4級アンモニウム塩を使用することがより好ましい。好適には、酢酸カリウムとオクチル酸カリウムとを組み合わせたものである。また、樹脂化または泡化触媒としては、特に限定はなく、通常のウレタンフォームを製造する際に使用するものを利用でき、例えば、モノアミン類(N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン等)、環状モノアミン類(ピリジン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン等)、ジアミン類(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチ-1,3-ブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、メチレン-ビス(ジメチルシクロヘキシルアミン)、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン等)、トリアミン類(N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)-フェノール等)、エーテルジアミン類(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル-3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエーテル、4,4’-オキシジメチレンジモルフォリン等)、環状ポリアミン類(トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノエチルモルフォリン、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ブトキシ-2-メチルイミダゾール等)、アルカノールアミン類(N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’-トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、2-(2-ジメチルアミノ-エトキシ)エタノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-トリメチル-1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン等)等のアミン触媒が挙げられる。これら触媒としては、1種又は2種以上併用してもよい。
【0072】
3-1-1-6.他の添加成分
樹脂発泡体を製造するに際し、整泡剤、減粘剤、面材接着性向上剤、気泡微細化剤等の各種添加剤をさらに用いてもよい。この際、これらの添加剤は、ポリオール側発泡原料液と、ポリイソシアネート成分とを混合する際に添加してもよく、また、予めポリオール側発泡原料液中に含有させておいてもよい。なお、整泡剤としては、従来公知のノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が使用できる。
【0073】
3-1-1-7.ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネートとしては、好適には芳香族ポリイソシアネート化合物である。例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。そして、上記芳香族ポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上用いて混合物としてもよい。
【0074】
3-1-2.ハロゲン含有樹脂層、着色塗料層、アルミニウム層、繊維層、及び、樹脂層
ハロゲン含有樹脂層、着色塗料層、アルミニウム層、繊維層、及び、樹脂層の原料は、上記「1-3.ハロゲン含有樹脂層」、「1-4.着色塗料層」、「1-5.アルミニウム層」、「1-6.繊維層」、「1-7.樹脂層」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0075】
3-2.プロセス
以下、本形態にかかる発泡断熱材の製造プロセスの一例を説明する。
【0076】
3-2-1.準備工程
アルミニウム層としてのアルミニウム箔の表面に、ハロゲン含有樹脂層として塩化ビニル―酢酸ビニル共重樹脂塗料を塗布乾燥する。その後、着色塗料層としてアクリル樹脂を塗布し、塗装つきのアルミニウム層を形成する。
繊維層としてクラフト紙を用い、クラフト紙と上記塗装付きのアルミニウム層を、溶融したポリエチレン(PE)でラミネート溶着する。クラフト紙のアルミニウム層と反対側にも溶融したポリエチレンをラミネート溶着する。溶融したポリエチレンは後に樹脂層となる。
両面に樹脂層を備えた繊維層、アルミニウム層、ハロゲン含有樹脂層、着色塗料層が積層された積層体が作成される。
【0077】
3-2-2.発泡体形成用材料の作成工程
樹脂発泡体の原料である発泡体形成用材料は、例えば、発泡原料組成物と物理的発泡剤とを少なくとも含む。ポリオール側発泡原料液とポリイソシアネート成分とを混合することで発泡原料組成物を得た後、物理的発泡剤を混合し、例えば、汎用の高圧発泡機などを用い、衝突混合することで、混合液、すなわち、発泡体形成用材料を作成する。
【0078】
3-2-3.発泡硬化の工程
発泡体形成用材料である該混合液を、発泡硬化させることにより、樹脂発泡体が形成される。より具体的には、コイル状の上面材(上述した積層体)及び下面材(上述した積層体)を連続して引き出し、高圧注入機を用いて上面材と下面材の間に(上記混合液が上面材と下面材のそれぞれ樹脂層側に配置されるように)、混合液を塗布後、発泡硬化する。これにより、上記積層体が積層された平板状の樹脂発泡体が形成される。基本的な製造方法は、特許文献(特開2006-321882、特開2007-099822)に示したものが適用される。但し、下記に、より好適な特徴を記載する。
【0079】
3-2-4.イソシアネートインデックス
上記ポリオール側発泡原料液と上記ポリイソシアネート成分とを混合する際、当該混合物(発泡原料組成物)のイソシアネートインデックスが、好適には150~1000、より好適には200~800、さらに好適には300~600である。当該範囲にあると、難燃性を担保しつつ、より高い断熱性やより好適な圧縮強度・曲げ強度を有する樹脂発泡体となる。ここで、イソシアネートインデックスとは、全原料配合である反応混合液のすべての活性水素のモル数と、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数の比(NCO/OHのモル比)をいう。また、下記実施例及び比較例におけるOHVは水酸基価を指す。ここで、複数のポリオールを添加する場合は、個々の水酸基価に個々の添加部数を掛け、全ポリオールの添加部数合計で除した加重平均を平均水酸基価(平均OHV)とする。
【0080】
3-2-5.ポリイソシアネート成分の粘度
上記ポリイソシアネート成分の25℃粘度は、150~750mPa・sであることが好適である。ここで、当該粘度は、ASTM D4889に準じて測定される。
【0081】
4.発泡断熱材の用途
本発明に係る発泡断熱材は、例えば、住宅、工場、自動車、又は、船体に使用する断熱材として使用することができる。
【実施例0082】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0083】
≪実施例1≫
厚さ6μmのアルミニウム層の表面に、ハロゲン含有樹脂層として塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体(株式会社カネカ製 商品名:カネビニールT428A)5.0g/m2を塗布乾燥した。その後、着色塗料層としてアクリル樹脂(大橋化学工業株式会社製 商品名:ユニパールラッカー)0.1g/m2を塗布し、塗装付きのアルミニウム層を得た。
クラフト紙に上記塗装付きのアルミニウム層を、溶融したPE樹脂でラミネート溶着した。クラフト紙のアルミニウム層と反対側にも溶融したPE樹脂をラミネート溶着し、積層体を得た。
塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体のハロゲン濃度(塩素濃度)は、42重量%であった。
【0084】
ポリエステルポリオールとして、オルトフタル酸とジエチレングリコール(DEG)とを脱水縮合してなるポリエステルポリオール(OHV400mgKOH/g、重量平均分子量510)100重量部と;ポリエーテルポリオールとして、ポリエステルポリオール100重量部に対してジエチレングリコール(DEG)14.1重量部及びトリエチレングリコール(TEG)2.0重量部と;さらに、整泡剤、触媒及び難燃剤を添加し、ポリオール側発泡原料液を得た。以上のポリオール側発泡原料液に含まれるポリオール(全ポリオール)の平均水酸基価(平均OHV)は、490mgKOH/gであった。
【0085】
ここで、整泡剤としては、発泡原料組成物の全重量を基準として、商品名:NiaxSliconeL-6635(MOMENTIVE社製)0.9重量%及びメチルカルビトール(三協化学株式会社製 商品名:メチルジグリコール)0.6重量%となるよう添加した。触媒としては、発泡原料組成物の全重量を基準として、三量化触媒としてオクチル酸カリウム及び酢酸カリウムをそれぞれ0.6重量%及び0.2重量%、ルベアックDMP-30(ナカライテスク社製)を0.3重量%となるよう添加した。さらに、難燃剤としては、発泡原料組成物の全重量を基準として、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)(商品名:ProFlame-PC1389、ProFlame社製)を15重量%となるように添加した。
【0086】
このポリオール側発泡原料液を計量後、3000rpmのプロペラ攪拌機で30秒間攪拌した。その後、15℃に温調したポリオール側発泡原料液に対し、同じく15℃に温調したイソシアネート成分(東ソー株式会社製クルードMDI 商品名:MR-200)をイソシアネートインデックスが450になるように添加し、また、発泡原料組成物の全重量に対し、物理的発泡剤としてシクロペンタン(商品名:マルカゾールFH、丸善石油株式会社製)を6.5重量%となるように添加した。5000rpmのプロペラ攪拌機にてこれらの混合物を速やかに10秒攪拌し、攪拌物を得た。その後、上記積層体を備えた300×300×50mmのモールド型枠に当該攪拌物を投入し、イソシアネートインデックスが450、厚さが25mmの樹脂発泡体を備えた発泡断熱材を形成した。
【0087】
≪実施例2≫
着色塗料層としてアクリル樹脂0.25g/m2(アルミニウム層の全体の面積の15%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、発泡断熱材を作製した。
【0088】
≪実施例3≫
樹脂発泡体としてフェノール樹脂発泡体を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、発泡断熱材を作製した。
【0089】
≪比較例1≫
ハロゲン含有樹脂層の代わりに低密度ポリエチレン(LDPE)20μmを用い、着色塗料層を形成しないこと以外は、実施例1と同様の手法にて、発泡断熱材を作製した。
【0090】
≪比較例2≫
ハロゲン含有樹脂層、及び、着色塗料層を形成しないこと以外は、実施例1と同様の手法にて、発泡断熱材を作製した。
【0091】
≪比較例3≫
ハロゲン含有樹脂層の代わりに低密度ポリエチレン(LDPE)20μmを用い、着色塗料層、及び、アルミニウム層を形成しないこと以外は、実施例1と同様の手法にて、発泡断熱材を作製した。
【0092】
≪比較例4≫
ハロゲン含有樹脂層、着色塗料層、及び、繊維層を形成せず、厚さ35μmのアルミニウム層を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、発泡断熱材を作製した。
【0093】
≪評価方法≫
(不燃性試験)
ISO 5660 コーンカロリーメータ試験に準拠した方法で行い、各実施例、比較例の発泡断熱材を屋外側からコーンヒーターを当てて加熱した。
「加熱開始後20分間の総発熱量が、8MJ/m2以下である」という不燃材料の基準を満たすことができれば〇、満たさなければ×とした。
【0094】
(曲げ強度試験)
JIS A9521に準じて、厚さが25mmの樹脂発泡体を用いたときの各実施例、比較例における発泡断熱材の曲げ強度(kN/m2)を測定した。
【0095】
(単位面積当たりの重量)
厚さが25mmの樹脂発泡体を用いたときの各実施例、比較例における発泡断熱材の単位面積当たりの重量(kg/m2)を測定した。
【0096】
(落球凹み試験)
1kg、直径50mmの球を30cmの高さから落下させ、発泡断熱材の表面の凹み(mm)を測定した。
【0097】
(接着性試験)
5cm角の塩化ビニルシートに溶剤としてTHFを塗布し、各実施例、比較例における5cm角の発泡断熱材の表面に圧着してサンプルを作成した。180度剥離試験により、接着強度を測定した。接着強度の実測値が、6N/cm2以上のものを〇、6N/cm2未満のものは×と判定した。
【0098】
実施例1~3及び比較例1~4で用いた発泡断熱材における、不燃性試験、曲げ強度、単位面積当たりの重量、落球凹み試験、及び、接着性試験の判定結果を表1に示した。
【0099】
【0100】
(評価結果)
表1から本実施例の発泡断熱材は、アルミニウム層の厚さを薄くしても十分な不燃性を確保することができることが理解できる。また、単位面積当たりの重量を抑えることができるので、繊維層を配置して曲げ強度、剛性を高めることができる。更に、塩化ビニルシートとの溶剤接着性にも優れることがわかる。