(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142104
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F25B1/00 101E
F25B1/00 396Z
F25B1/00 396G
F25B1/00 331Z
F25B1/00 304H
F25B1/00 304Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054104
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 和宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 亮
(57)【要約】
【課題】空調能力を向上させつつ、装置の大型化を抑制する。
【解決手段】冷凍サイクル装置は、圧縮機11と凝縮器12とメイン膨張弁14と蒸発器15とが順に接続される冷媒回路5と、凝縮器12からメイン膨張弁14に流れる高圧液相冷媒と蒸発器15から圧縮機11に流れる低圧気液二相冷媒とを熱交換する内部熱交換器16と、凝縮器12からメイン膨張弁14に流れる高圧液相冷媒の一部を減圧するバイパス膨張弁18と、バイパス膨張弁18により減圧された低圧気液二相冷媒を、蒸発器15から内部熱交換器16に流れる低圧気相冷媒に合流させるバイパス回路17とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と凝縮器とメイン膨張弁と蒸発器とが順に接続される冷媒回路と、
前記凝縮器から前記メイン膨張弁に流れる冷媒と、前記蒸発器から前記圧縮機に流れる冷媒とを熱交換する内部熱交換器と、
前記凝縮器から前記メイン膨張弁に流れる冷媒の一部を減圧するバイパス膨張弁と、
前記バイパス膨張弁により減圧された冷媒を、前記蒸発器から前記内部熱交換器に流れる冷媒に合流させるバイパス回路
とを備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記圧縮機が吐出する冷媒の過熱度を示す吐出過熱度が、予め定められた下限値以上となるように前記バイパス膨張弁の開度を調整する制御部
をさらに備える請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記圧縮機が吐出する冷媒の吐出温度が、予め定められた温度上限以下となるように前記バイパス膨張弁の開度を調整する制御部
をさらに備える請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記凝縮器の出口における冷媒の過冷却度が目標値に等しくなるように、前記メイン膨張弁の開度をさらに制御し、
前記圧縮機に吸入される冷媒の過熱度が、予め定められた下限値以上となるように、前記バイパス膨張弁の開度をさらに制御する
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記バイパス膨張弁は、前記凝縮器から前記内部熱交換器に流れる冷媒の一部を減圧する
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒の比熱比は、1.3以下である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記冷媒は、HC冷媒を含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凝縮器と蒸発器との間に直列に設けられた2つの膨張弁の間を流れる冷媒の一部を減圧して圧縮機の中間圧部分に供給するガスインジェクション回路を備える空気調和機が知られている。このような空気調和機は、その減圧された冷媒と2つの膨張弁の間を流れる冷媒とを熱交換する熱交換器と、2つの膨張弁の間を流れる冷媒と、圧縮機に吸入される冷媒とを熱交換する熱交換器との2つの熱交換器が設けられることにより、低外気温の条件下での暖房運転においても暖房能力を向上させることができる。また、同時に吐出過熱度の制御も行うことが可能であり、吐出過熱度を圧縮機の使用範囲に収めることで信頼性を確保できる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような冷凍サイクル装置は、2つの熱交換器が設けられていることにより、装置が大型化するという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、吐出温度の制御を行いつつ、装置の大型化を抑制する冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による冷凍サイクル装置は、圧縮機と凝縮器とメイン膨張弁と蒸発器とが順に接続される冷媒回路と、前記凝縮器から前記メイン膨張弁に流れる冷媒と、前記蒸発器から前記圧縮機に流れる冷媒とを熱交換する内部熱交換器と、前記凝縮器から前記メイン膨張弁に流れる冷媒の一部を減圧するバイパス膨張弁と、前記バイパス膨張弁により減圧された冷媒を、前記蒸発器から前記内部熱交換器に流れる冷媒に合流させるバイパス回路とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
開示の冷凍サイクル装置は、圧縮機の信頼性を確保しつつ、装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の冷凍サイクル装置が設けられている空気調和機を示す冷媒回路図である。
【
図2】
図2は、実施例1の冷凍サイクル装置の冷媒回路における冷媒の状態変化の一例を示すモリエル線図である。
【
図3】
図3は、バイパス膨張弁が全閉であるときの実施例1の冷凍サイクル装置の冷媒回路における冷媒の状態変化の一例を示すモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる冷凍サイクル装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
実施例1の冷凍サイクル装置は、
図1に示されているように、空気調和機1に設けられている。
図1は、実施例1の冷凍サイクル装置が設けられている空気調和機1を示す冷媒回路図である。空気調和機1は、室外機2と室内機3とを備えている。室外機2は、屋外に設置されている。室内機3は、屋内に設置されている。空気調和機1は、冷媒回路5をさらに備えている。冷媒回路5は、室外機2の内部に配置されている。冷媒回路5には、冷媒が循環する流路が形成されている。冷媒は、比熱比が1.3以下である。例えば、炭化水素から形成されるHC冷媒を含み、具体的にはR290冷媒が用いられる。
【0011】
冷媒回路5は、圧縮機11と凝縮器12とメイン膨張弁14と蒸発器15とを備えている。圧縮機11は、圧縮機11に供給される冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は、圧縮機11から吐出されたのち、凝縮器12に流入する。凝縮器12は、メイン膨張弁14に接続されている。メイン膨張弁14は、蒸発器15に接続されている。メイン膨張弁14は、開度に応じて、凝縮器12から蒸発器15に流れる冷媒の流量を調整し、凝縮器12から蒸発器15に流れる冷媒を減圧する。メイン膨張弁14を単位時間あたりに流れる冷媒の流量は、メイン膨張弁14の開度が大きいほど大きい。メイン膨張弁14による冷媒の減圧量は、メイン膨張弁14の開度が小さいほど大きい。蒸発器15は、圧縮機11に接続されている。
【0012】
冷媒回路5は、内部熱交換器16をさらに備えている。内部熱交換器16は、内部熱交換器16が備える異なる流路を流れる冷媒同士の熱交換を行う。内部熱交換器16は、一方の流路が冷媒回路5のうちの凝縮器12とメイン膨張弁14との間に配置され、他方の流路が冷媒回路5のうちの蒸発器15と圧縮機11との間に配置されている。
【0013】
冷媒回路5は、バイパス回路17とバイパス膨張弁18とをさらに備えている。バイパス回路17の一端は、冷媒回路5のうちの凝縮器12と内部熱交換器16との間の分岐部19に接続されている。バイパス回路17の他端は、冷媒回路5のうちの蒸発器15と内部熱交換器16との間の分岐部20に接続されている。バイパス膨張弁18は、バイパス回路17の途中に設けられている。バイパス膨張弁18は、開度に応じて、バイパス回路17を冷媒が流れる量を調整し、バイパス回路17を流れる冷媒を減圧する。バイパス膨張弁18を単位時間あたりに流れる冷媒の流量は、バイパス膨張弁18の開度が大きいほど大きい。バイパス膨張弁18による冷媒の減圧量は、バイパス膨張弁18の開度が小さいほど大きい。バイパス回路17は、バイパス膨張弁18により減圧された冷媒を、蒸発器15と内部熱交換器16との間の流路に合流させる。
【0014】
空気調和機1は、水回路21をさらに備えている。水回路21は、ポンプ22と室内熱交換器23とを備え、ポンプ22と室内熱交換器23と凝縮器12とが順に接続されている。室内熱交換器23は、室内機3の内部に配置されている。ポンプ22は、室外機2の内部に配置されている。ポンプ22は、駆動することにより水回路21に水を循環させる。凝縮器12は水冷媒熱交換器であり、接続された冷媒回路5から流入した冷媒と接続された水回路から流入した水の熱交換を行う。
【0015】
空気調和機1は、吐出温度センサ31と凝縮器中間温度センサ32と凝縮器出口温度センサ33と制御装置34とをさらに備えている。吐出温度センサ31は、圧縮機11と凝縮器12との間の流路に流れる冷媒の温度を検出し、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出する。凝縮器中間温度センサ32は、凝縮器12を流れる冷媒の温度を検出し、凝縮器12で気相冷媒から液相冷媒に変化する冷媒の温度を検出する。凝縮器出口温度センサ33は、凝縮器12と内部熱交換器16との間の流路を流れる冷媒の温度を検出し、凝縮器12で凝縮した液相冷媒の温度を検出する。
【0016】
制御装置34は、室外機2の内部に配置されている。制御装置34は、コンピュータであり、図示されていない記憶装置とCPU(Central Processing Unit)とを備えている。記憶装置は、制御装置34にインストールされるコンピュータプログラムを記憶し、CPUにより利用される情報を記憶する。CPUは、制御装置34にインストールされるコンピュータプログラムを実行し、吐出温度センサ31と凝縮器中間温度センサ32と凝縮器出口温度センサ33と制御装置34とから情報を取得し、圧縮機11とメイン膨張弁14とバイパス膨張弁18とポンプ22とを制御する。
【0017】
[空気調和機1の動作]
制御装置34は、たとえば、空気調和機1がユーザにより暖房運転を実行するように操作されたときに、ポンプ22を制御し、凝縮器12からポンプ22に供給される水を室内熱交換器23に供給し、水を水回路21に循環させる。制御装置34は、さらに、圧縮機11を制御し、
図2に示されているように、圧縮機11に供給された低圧気相冷媒(41)を圧縮する。
図2は、冷媒回路5における冷媒の状態変化の一例を示すモリエル線図である。低圧気相冷媒の後に記載した(41)は
図2のモリエル線図上の冷媒の状態を示す点●の番号である。以下の説明でもモリエル線図上の冷媒の状態を示す点●を同様に表す。低圧気相冷媒(41)は、圧縮機11により圧縮され、高圧気相冷媒(42)になる。圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒(42)は、凝縮器12に流入する。
【0018】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒(42)と、水回路21を循環する水とを熱交換する。高圧気相冷媒(42)は、凝縮器12で水に放熱して凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒(43)になる。
【0019】
凝縮器12から流出した高圧液相冷媒(43)の一部は、バイパス回路17を介してバイパス膨張弁18に供給される。バイパス膨張弁18は、バイパス回路17を流れ蒸発器15と内部熱交換器16との間の流路に合流させる高圧液相冷媒(43)の流量を調節する。高圧液相冷媒(43)の一部は、バイパス膨張弁18により減圧され、低圧気液二相冷媒(44)になる。
【0020】
凝縮器12から流出した高圧液相冷媒(43)のうちのバイパス回路17を流れない残りは、内部熱交換器16に供給される。内部熱交換器16は、凝縮器12から供給された高圧液相冷媒(43)の残りと、後述する低圧気液二相冷媒(48)とを熱交換する。高圧液相冷媒(43)の残りは、内部熱交換器16により冷却され、高圧液相冷媒(45)になる。内部熱交換器16から流出した高圧液相冷媒(45)は、メイン膨張弁14に供給される。
【0021】
メイン膨張弁14は、蒸発器15に供給される高圧液相冷媒(45)の流量を調節し、凝縮器12から供給された高圧液相冷媒(45)を減圧する。高圧液相冷媒(45)は、メイン膨張弁14により減圧され、低圧気液二相冷媒(46)になる。メイン膨張弁14から流出した低圧気液二相冷媒(46)は、蒸発器15に供給される。
【0022】
蒸発器15は、メイン膨張弁14から供給された低圧気液二相冷媒(46)と外気とを熱交換する。低圧気液二相冷媒(46)は、蒸発器15で加熱されて蒸発し、低圧気相冷媒(47)になる。蒸発器15から流出した低圧気相冷媒(47)は、冷媒回路5のうちの蒸発器15と内部熱交換器16との間の流路で、バイパス膨張弁18により減圧された低圧気液二相冷媒(44)と混合され、低圧気液二相冷媒(48)になる。低圧気液二相冷媒(48)は、内部熱交換器16に供給される。
【0023】
内部熱交換器16は、低圧気液二相冷媒(48)と、凝縮器12から供給された高圧液相冷媒(43)の残りとを熱交換する。低圧気液二相冷媒(48)は、内部熱交換器16により加熱され、低圧気相冷媒(41)になる。内部熱交換器16から流出した低圧気相冷媒(41)は、圧縮機11に供給される。
【0024】
凝縮器12は、高圧気相冷媒(42)と、水回路21を循環する水とが熱交換されることにより、さらに、室内熱交換器23から供給された水を加熱する。凝縮器12により加熱された水は、ポンプ22を介して室内熱交換器23に供給される。室内熱交換器23は、凝縮器12により加熱された水と、室内機3が設置されている室内の空気とを熱交換し、水を冷却し、室内機3が設置されている室内の空気を加熱する。室内熱交換器23により冷却された水は、凝縮器12に供給される。室内機3は、室内熱交換器23により加熱された空気を、室内機3が設置されている室内に吹き出し、その室内を暖房する。
【0025】
制御装置34は、過冷却度制御と吐出過熱度制御とを実行する。
[過冷却度制御]
制御装置34は、凝縮器中間温度を凝縮器中間温度センサ32から取得し、凝縮器出口温度を凝縮器出口温度センサ33から取得する。凝縮器中間温度は、
図2のモリエル線図で線分51と飽和液線52との交点53に対応する冷媒の温度を示している。線分51は、
図2のモリエル線図で高圧気相冷媒に対応する点42と、高圧液相冷媒に対応する点43とを結んでいる。凝縮器出口温度は、高圧液相冷媒(43)の温度を示している。制御装置34は、凝縮器中間温度と凝縮器出口温度とに基づいて凝縮器出口過冷却度を算出する。凝縮器出口過冷却度は、凝縮器出口温度から凝縮器中間温度を減算した値を示し、高圧液相冷媒(43)の過冷却度を示している。
【0026】
制御装置34は、凝縮器出口過冷却度が目標値に等しくなるように、メイン膨張弁14を制御する。目標値は、要求能力に応じた過冷却度が予め設定されている。たとえば、制御装置34は、凝縮器出口過冷却度が目標値以上であるときに、メイン膨張弁14を制御し、メイン膨張弁14の開度を大きくする。メイン膨張弁14の開度が大きくなることにより、凝縮器出口過冷却度は、小さくなる。制御装置34は、凝縮器出口過冷却度が目標値より小さいときに、メイン膨張弁14を制御し、メイン膨張弁14の開度を小さくする。メイン膨張弁14の開度が小さくなることにより、凝縮器出口過冷却度は、大きくなる。
【0027】
[吐出温度制御]
制御装置34は、吐出温度を吐出温度センサ31から取得する。
【0028】
制御装置34は、吐出温度が上限温度以下となるように、バイパス膨張弁18を制御する。上限温度は、吐出温度がそれを超えた場合に圧縮機11の信頼性に影響を与える温度である。たとえば、制御装置34は、吐出温度が上限温度を上回ったときに、バイパス膨張弁18を制御し、バイパス膨張弁18の開度を大きくする。低圧気液二相冷媒(48)のうちの低圧気液二相冷媒(44)が占める割合は、バイパス膨張弁18の開度が大きくなったときに、大きくなる。このため、
図2のモリエル線図で、低圧気液二相冷媒に対応する点48は、バイパス膨張弁18の開度が大きくなったときに、低圧気液二相冷媒に対応する点44の側にシフトし、すなわち、低圧気液二相冷媒(48)の乾き度は、小さくなる。低圧気相冷媒(41)の過熱度は、低圧気液二相冷媒(48)の乾き度が小さくなることにより、小さくなる。これにより、高圧気相冷媒(42)の温度である吐出温度は小さくなる。
【0029】
[吐出過熱度制御]
制御装置34は、吐出過熱度が下限値より小さいときに、バイパス膨張弁18を制御し、バイパス膨張弁18の開度を小さくする。下限値は、吐出過熱度が圧縮機11の信頼性に影響を与える値より1~2℃大きい値が設定される。低圧気液二相冷媒(48)のうちの低圧気相冷媒(47)が占める割合は、バイパス膨張弁18の開度が小さくなったときに、大きくなる。このため、
図2のモリエル線図で、低圧気液二相冷媒に対応する点48は、バイパス膨張弁18の開度が小さくなったときに、低圧気相冷媒に対応する点47の側にシフトし、すなわち、低圧気液二相冷媒(48)の乾き度は、大きくなる。低圧気相冷媒(41)の過熱度は、低圧気液二相冷媒(48)の乾き度が大きくなることにより、大きくなる。高圧気相冷媒(42)の過熱度である吐出過熱度は、低圧気相冷媒(41)の過熱度が大きくなることにより、大きくなる。
【0030】
図3は、バイパス膨張弁18が全閉であるときの冷媒回路5における冷媒の状態変化の一例を示すモリエル線図である。低圧気相冷媒(41)は、圧縮機11により圧縮され、高圧気相冷媒(42)になる。高圧気相冷媒(42)は、凝縮器12で凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒(43)になる。高圧液相冷媒(43)の全部は、内部熱交換器16によりさらに冷却され、高圧液相冷媒(45)になる。高圧液相冷媒(45)は、メイン膨張弁14により減圧され、低圧気液二相冷媒(46)になる。低圧気液二相冷媒(46)は、蒸発器15で加熱されて蒸発し、低圧気相冷媒(47)になる。低圧気相冷媒(47)は、内部熱交換器16によりさらに加熱され、低圧気相冷媒(41)になり、圧縮機11に供給される。制御装置34は、バイパス膨張弁18が全閉であるときでも、バイパス膨張弁18が全閉でないときと同様に、過冷却度制御を実行し、加えて吐出過熱度制御を実行することで、過冷却度と吐出過熱度とを調整することができる。
【0031】
このような動作によれば、空気調和機1は、ガスインジェクション回路を用いないで、吐出温度および吐出過熱度を調整することができ、圧縮機の信頼性を確保することができる。ガスインジェクション回路を備える比較例の空気調和機は、特開2013-53849号公報に開示されるヒートポンプ装置のように、蒸発器と凝縮器と異なる2つの内部熱交換器を備えている。空気調和機1は、1つの内部熱交換器16を用いて吐出温度および吐出過熱度を調整することができ、複数の内部熱交換器を備える比較例の空気調和機に比較して、装置を小型化することができる。
【0032】
[実施例1の冷凍サイクル装置の効果]
実施例1の冷凍サイクル装置は、冷媒回路5と内部熱交換器16とバイパス膨張弁18とバイパス回路17とを備えている。冷媒回路5では、圧縮機11と凝縮器12とメイン膨張弁14と蒸発器15とが順に接続されている。内部熱交換器16は、凝縮器12からメイン膨張弁14に流れる高圧液相冷媒(43)と、低圧気液二相冷媒(48)とを熱交換する。バイパス膨張弁18は、凝縮器12から内部熱交換器16に流れる高圧液相冷媒(43)の一部を減圧する。バイパス回路17は、バイパス膨張弁18により減圧された低圧気液二相冷媒(44)を、蒸発器15から内部熱交換器16に流れる低圧気相冷媒(47)に合流させる。低圧気液二相冷媒(44)は、低圧気相冷媒(47)と合流して低圧気液二相冷媒(48)になる。
【0033】
このとき、実施例1の冷凍サイクル装置は、バイパス膨張弁18の開度を調整し、吐出温度を調整することができ圧縮機11の信頼性の低下を抑制できる。実施例1の冷凍サイクル装置は、さらに、複数の内部熱交換器を備える必要がなく、ガスインジェクション回路を用いる他の冷凍サイクルに比較して、装置の大型化を抑制することができる。
【0034】
また、実施例1の冷凍サイクル装置は、圧縮機11が吐出する高圧気相冷媒(42)の過熱度を示す吐出過熱度が、予め定められた所定範囲となるようにバイパス膨張弁18の開度を調整する制御装置34をさらに備えている。このとき、実施例1の冷凍サイクル装置は、バイパス膨張弁18により吐出過熱度を調整することで空調能力の低下を抑制することができる。
【0035】
また、実施例1の冷凍サイクル装置の制御装置34は、凝縮器12の出口における冷媒の過冷却度が目標値に等しくなるように、メイン膨張弁14の開度をさらに制御する。制御装置34は、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度が、予め定められた範囲に含まれるように、バイパス膨張弁18の開度をさらに制御する。このとき、メイン膨張弁14の開度は要求された能力を発揮するために適切な開度となるように目標過冷却度制御されるので、吐出温度が成行きになり上限温度を超えやすく、圧縮機11の信頼性が低下しやすい。したがって、本発明の吸入過熱度を制御する効果が顕著となる。
【0036】
また、実施例1の冷凍サイクル装置の冷媒回路5を循環する冷媒は、HC冷媒を含んでいる。また、実施例1の冷凍サイクル装置の冷媒回路5を循環する冷媒は、比熱比が1.3以下である。このような冷媒は、吐出過熱度が小さくなる傾向がある。実施例1の冷凍サイクル装置は、このような冷媒が用いられたときでも、吐出過熱度を調整し、吐出過熱度を、圧縮機11に設定されている吐出過熱度下限値以上に確保することができる。実施例1の冷凍サイクル装置は、吐出過熱度が吐出過熱度下限値以上に確保されることにより、このような冷媒が用いられたときでも、圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0037】
ところで、既述の実施例1の冷凍サイクル装置では、冷媒回路5にHC冷媒を循環させているが、HC冷媒と異なる他の冷媒を冷媒回路5に循環させてもよい。また、既述の実施例1の冷凍サイクル装置では、冷媒回路5に比熱比が1.3以下である冷媒を循環させているが、比熱比が1.3より大きい冷媒を冷媒回路5に循環させてもよい。このような冷媒が冷媒回路5を循環する場合でも、冷凍サイクル装置は、吐出過熱度を吐出過熱度下限値以上に確保することができ、圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。なお、比熱比が1.3以下の冷媒としてはR1234yf、R454C、R290が例示され、HC冷媒としてはR290が例示される。
【0038】
ところで、既述の実施例1の冷凍サイクル装置のバイパス回路17の上流側の一端は、凝縮器12と内部熱交換器16との間の流路に接続されているが、内部熱交換器16とメイン膨張弁14との間の流路に接続されてもよい。
実施例2の冷凍サイクル装置は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置のバイパス回路17の上流側の一端が内部熱交換器16とメイン膨張弁14との間の流路に接続され、他の部分は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同じである。このため、実施例2の冷凍サイクル装置は、実施例1の冷凍サイクル装置と同様に、複数の内部熱交換器を備える必要がなく、ガスインジェクション回路を用いる他の冷凍サイクルに比較して、装置の大型化を抑制することができる。
実施例2の冷凍サイクル装置の動作は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置の動作と同じである。実施例2の冷凍サイクル装置は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に動作することにより、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に、圧縮機の信頼性を確保することができる。
また、実施例1の冷凍サイクル装置は、内部熱交換器16からメイン膨張弁14に流れる冷媒の一部をバイパス膨張弁18が減圧する実施例2の冷凍サイクル装置に比較して、バイパス回路17を流れる冷媒のエンタルピーが高くなる。このため、実施例1の冷凍サイクル装置は、実施例2の冷凍サイクル装置に比較して、バイパス膨張弁18の開度制御による吸入過熱度の過度な変化を抑制することができ、吐出温度の急激な低下や圧縮機11への液バックを抑制することができる。
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置は、メイン膨張弁14の開度を調整して過冷却度を制御しているが、メイン膨張弁14の開度とバイパス膨張弁18の開度との両方を調整して吐出過熱度を制御しても、既述の実施例の冷凍サイクル装置と同様の効果を得ることができる。しかしながら、このような冷凍サイクル装置は、過冷却度が成行きになってしまうため、空調性能が悪化しやすい。既述の実施例の冷凍サイクル装置は、吐出過熱度がバイパス膨張弁18の開度のみに基づいて制御されることにより、空調性能の低下を抑制することができる。
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置の空気調和機は、暖房しているが、冷房するように構成されてもよい。このとき、凝縮器12は、冷媒回路5を循環する冷媒と、外気とを熱交換し、蒸発器15は、冷媒回路5を循環する冷媒と、水回路21を循環する水とを熱交換する。このようなときでも、冷凍サイクル装置は、既述の実施例の冷凍サイクル装置と同様に動作することにより、圧縮機の信頼性を確保することができ、装置の大型化を抑制することができる。
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置は、水回路21を循環する水と、冷媒とを熱交換する凝縮器12が設けられているが、凝縮器12が部屋の空気と熱交換する室内熱交換器に置換されてもよい。この室内熱交換器は、室内機3の内部に配置され、冷媒回路5を循環する冷媒と、室内機3が設置されている部屋の空気とを熱交換する。このとき、室内機3は、室内熱交換器により熱交換された空気を、室内機3が設置されている部屋に吹き出し、その部屋を冷房又は暖房する。このようなときでも、冷凍サイクル装置は、既述の実施例の冷凍サイクル装置と同様に動作することにより、圧縮機の信頼性を確保することができ、装置の大型化を抑制することができる。
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置は、冷暖房に利用されているが、他の用途に利用されてもよい。その用途としては、給湯が例示される。このようなときでも、冷凍サイクル装置は、既述の実施例の冷凍サイクル装置と同様に動作することにより、圧縮機の信頼性を確保することができ、装置の大型化を抑制することができる。
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。