(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142108
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 35/06 20060101AFI20241003BHJP
B62D 65/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65G35/06 B
B62D65/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054120
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山内 康弘
(72)【発明者】
【氏名】竹之下 裕崇
【テーマコード(参考)】
3D114
【Fターム(参考)】
3D114BA01
3D114CA05
3D114DA01
3D114DA05
3D114DA09
(57)【要約】
【課題】搬送台車と接続された状態で走行する同期台車が搬送台車にかける負荷を軽減する。
【解決手段】搬送システム(100)は、搬送台車(1)と、搬送台車(1)と同期して移動する同期台車(2)とを備える搬送システムである。同期台車(2)は、走行するための動力を発生する動力装置(23)と、搬送台車(1)の動力が伝達されるように搬送台車(1)と接触する把持部と、搬送台車(1)による把持部に加わる荷重を検出する検出部と、当該検出部によって検出された荷重に基づいて、動力装置(23)を制御する動力制御部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送移動体と、当該搬送移動体と同期して移動する同期移動体とを備える搬送システムであって、
前記同期移動体は、
走行するための動力を発生する動力部と、
前記搬送移動体の動力が伝達されるように前記搬送移動体に接触する接触部と、
前記搬送移動体による前記接触部に加わる荷重を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された荷重に基づいて、前記動力部を制御する動力制御部と、を有する、搬送システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記搬送移動体の進行方向およびその逆方向に前記接触部に加わる荷重を検出する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記動力制御部は、前記検出部によって検出された、前記進行方向の荷重と前記逆方向との荷重とが等しくなるように、前記動力部を制御する、請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記動力制御部は、前記検出部によって検出された、前記進行方向の荷重と前記逆方向の荷重とがそれぞれ所定範囲の値になるように、前記動力部を制御する、請求項2に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記動力制御部は、前記検出部によって検出された、前記進行方向の荷重または前記進行方向と逆方向の荷重が所定値以上である場合に、前記同期移動体を停止させるように、前記動力部を制御する、請求項2から4のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記同期移動体は、前記搬送移動体と並走し、
前記搬送移動体は、前記同期移動体側に突出する突出体を有し、
前記接触部は、
前記搬送移動体の進行方向前方側で前記突出体に当接する第1当接体と、
前記搬送移動体の進行方向後方側で前記突出体に当接する第2当接体と、
前記第1当接体を、前記突出体が通過する経路上の当接位置と前記経路から退いた退避位置とで移動させる第1把持機構と、
前記第2当接体を、前記当接位置と前記退避位置との間で移動させる第2把持機構と、をさらに有し、
前記検出部は、前記第1当接体に加わる荷重を検出する第1検出部と、前記第2当接体に加わる荷重を検出する第2検出部と、を有し、
前記搬送システムは、
第1把持機構を前記退避位置から前記当接位置に移動させるように制御するとともに、前記第1検出部によって第1当接体に加わる荷重が検出されると、第2把持機構を前記退避位置から前記当接位置に移動させて、前記第1当接体および前記第2当接体により前記突出体を把持するように制御する把持制御部をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車および当該搬送台車と同期して走行する同期台車とを備える搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの生産設備をライン方式で構成する場合、車体を搬送台車により一定の走行経路上を搬送する。また、当該生産設備には、ラインの上流から下流にかけて設けられる複数の工程のうちの特定の工程に同期台車が配されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、同期台車が、搬送台車と連結されることにより、搬送台車の推力を受けて搬送台車と一体に前進走行する搬送設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の搬送設備において、同期台車は推力を有していないため、搬送台車に引っ張られて走行する。それゆえ、搬送台車の動力モータ(または駆動部)や同期台車との連結部分に大きな負荷がかかっていた。
【0006】
本発明の一態様は、搬送台車と接続された状態で走行する同期台車が搬送台車にかける負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る搬送システムは、搬送移動体と、当該搬送移動体と同期して移動する同期移動体とを備える搬送システムであって、前記同期移動体は、走行するための動力を発生する動力部と、前記搬送移動体の動力が伝達されるように前記搬送移動体に接触する接触部と、前記搬送移動体による前記接触部に加わる荷重を検出する検出部と、前記検出部によって検出された荷重に基づいて、前記動力部を制御する動力制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、搬送台車と接続された状態で走行する同期台車が搬送台車にかける負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムの構成を示す平面図である。
【
図2】上記搬送システムにおける搬送台車の構成を示す側面図である。
【
図3】上記搬送システムにおける搬送台車と同期台車との接続状態を示す平面図である。
【
図4】上記搬送システムにおける搬送台車と同期台車との接続状態を示す正面図である。
【
図5】上記同期台車が有する把持装置の構成を示す正面図である。
【
図8】上記同期台車の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図9】上記同期台車の走行および上記搬送台車との接続の制御手順を示すフローチャートである。
【
図10】上記同期台車の待機状態を示す正面図である。
【
図11】上記同期台車が上記搬送台車と同期走行する準備状態にあるときの上記把持装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔搬送システムの構成〕
本発明の搬送システムについて、
図1~
図4を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送システムの構成を示す平面図である。
図2は、搬送システム100における搬送台車1の構成を示す側面図である。
図3は、搬送システム100における搬送台車1と同期台車2との接続状態を示す平面図である。
図4は、搬送システム100における搬送台車1と同期台車2との接続状態を示す正面図である。
【0012】
図1に示すように、自動車の製造ラインには、搬送システム100が設けられている。搬送システム100は、搬送台車1(搬送移動体)と、同期台車2(同期移動体)とを備えている。
【0013】
搬送台車1は、一定の走行経路上を、互いに接触した連続状態で走行するコンベア状の製造ラインを形成している。また、同期台車2は、製造ラインにおける特定の工程を行う作業エリアに搬送台車1と同期して並走するように配置されていて、走行中の搬送台車1に載置された車体Bに対して同期台車2に保持された部品を組付けることが可能となっている。
【0014】
図2および
図3に示すように、搬送台車1は、基台11と、車輪12と、昇降装置13と、軸体14(突出体)と、支持体15とを有している。基台11には、
図1に矢印にて示す進行方向の前後に2対の車輪12が設けられている。車輪12は、一対の走行レール3上を転動する。昇降装置13は、昇降機構13bを昇降駆動装置13cによって上下移動することによって、車体Bを載置した載置台13aを昇降させる。載置台13aが昇降する高さは、各作業エリアでの作業に好適な高さに設定されている。軸体14は、同期台車2側に突出するように、基台11の側端縁に設けられた支持体15に固定されている。
【0015】
図3および
図4に示すように、同期台車2は、基台21と、車輪22と、動力装置23(動力部)と、位置センサ24A(検知部)と、位置センサ24Bと、把持装置25(接触部)とを有している。
【0016】
基台21には、
図3に矢印にて示す進行方向の前後に2対の車輪22が設けられている。車輪22は、一対の走行レール4上を転動する。動力装置23は、同期台車2が自力走行するための動力を発生するために、モータなどを含んで構成されている。
【0017】
位置センサ24Aは、搬送台車1が、同期台車2の走行区間の開始端の位置(以降「始端位置」と称する)に達したことを検知するセンサである。始端位置は、搬送台車1と同期搬送する同期台車2が待機する位置でもある。位置センサ24Aは、例えば、光学式の位置センサが好適に用いられる。具体的には、位置センサ24Aは、同期台車2の後端部に配置されており、走行レール3側に光を照射し、搬送台車1の前端部に設けられた反射板からの当該光の反射光を受けることにより、搬送台車1が始端位置に達したことを検知する。
【0018】
位置センサ24Bは、同期台車2が、上記の走行区間の始端位置に達したこと、および走行区間の終了端の位置(以降「終端位置」と称する)に達したことを検知するセンサである。始端位置は、同期台車2が待機する待機位置でもある。終端位置は、搬送台車1と同期台車2との同期搬送が解除される解除位置でもある。位置センサ24Bは、例えば、光学式の位置センサが好適に用いられる。具体的には、位置センサ24Bは、同期台車2の前端部に配置されており、走行レール4間に光を照射し、走行レール4間の終了位置に設けられた反射板からの当該光の反射光を受けることにより、同期台車2が終端位置に達したことを検知する。
【0019】
なお、搬送台車1の動力源および動力装置23の動力源としてサーボモータを用いる場合、位置センサ24Aおよび位置センサ24Bを省略することができる。サーボモータを制御するサーボアンプは、パルス駆動によってサーボモータの回転角度を制御する。このため、1パルス当たりの移動量を規定しておけば、搬送台車1および同期台車2の移動量すなわち位置を特定することができる。これに対し、上記の動力源としてサーボモータ以外のモータ、例えばインダクションモータは、サーボモータのような位置決め機能を有していないので、位置センサ24Aおよび位置センサ24Bが必要となる。
【0020】
把持装置25は、搬送台車1の軸体14を把持する装置である。把持装置25は、軸体14における搬送台車1の進行方向およびその逆方向の2箇所で軸体14を把持する。把持装置25の構成については、続いて詳細に説明する。
【0021】
〔把持装置の構成〕
図5は、把持装置25の構成を示す正面図である。
図6は、把持装置25の構成を示す側面図である。
図7は、把持装置25の構成を示す平面図である。
【0022】
図5~
図7に示すように、把持装置25は、基台26と、一対の支持板27と、支持軸28とを有している。また、把持装置25は、スライド装置250A,250Bと、スライド板251A,251Bと、回動アーム252A,252Bと、ローラ254A,254Bと、緩衝機構255A,255Bと、取付部材256A,257Bと、当接板257A(接触部,第1当接体)と、当接板257B(接触部,第2当接体)と、荷重センサ258A,258B(検出部)とをそれぞれ一対ずつ有している。
【0023】
基台26は、方形状を成す板状の台である。一対の支持板27は、基台26上の中間部におけるX1方向およびX2方向に沿った両側端縁部から立ち上がるように形成された板状の部材である。ここで、X1方向は、同期台車2の進行方向であり、X2方向は、進行方向の逆方向であり、同期台車2が待機位置に戻る対向方向である。支持軸28は、一対の支持板27の上端部の間に架け渡されており、両端部でそれぞれの支持板27に固定されている。
【0024】
スライド装置250A,250Bは、それぞれ、基台26上に配置されており、X1方向およびX2方向に沿ってスライド板251A,251Bをスライドさせる装置である。スライド装置250A,250Bは、それぞれ、スライド機構250aと、移動板250bと、駆動モータ250cとを有している。
【0025】
スライド機構250aは、ボールねじのような、駆動モータ250cによる回転運動を直線運動に変換する機械要素によって構成されている。スライド機構250aは、スライド機構250aの上端面に配置された移動板250bを、X1方向またはX2方向に移動させる。
【0026】
スライド板251A,251Bは、それぞれスライド装置250A,250Bの移動板250b上に配置されており、移動板250bと一体に移動する、一定の長さを有する板状の部材である。スライド板251A,251Bは、高位置部251aと、傾斜部251bと、低位置部251cとを有している。
【0027】
高位置部251aは、スライド板251A,251Bの一端から一定の区間に設けられており、スライド板251A,251B底面から最も高い位置にある上端面の部分である。低位置部251cは、スライド板251A,251Bの他端から一定の区間に設けられており、スライド板251A,251B底面から最も低い位置にある上端面の部分である。傾斜部251bは、高位置部251aと低位置部251cとの間で傾斜する上端面の部分である。
【0028】
回動アーム252A,252Bは、それぞれスライド板251A,251Bの移動に応じて回動する部材である。回動アーム252A,252Bは、回動支持部252aと、アーム部252bとを有している。
【0029】
回動支持部252aは、筒状に形成されており、支持軸28に対して回転可能となるように、その中心に支持軸28が挿し通されている。回動アーム252A,252Bの回動支持部252aは、それぞれ支持軸28に並ぶように配置されている。
【0030】
アーム部252bは、アーム部252bにおいて最も大きく回動する回動端部と、当該回動端部に続く直線状に長く形成された直線部と、当該直線部の一端部から屈曲した屈曲部とを有する。アーム部252bは、直線部と屈曲部との境界の鋭角を成す頂部で回動支持部252aと接合されている。これにより、アーム部252bは、回動支持部252aと一体に支持軸28の周りを回動することができる。
【0031】
ローラ254A,254Bは、アーム部252bの屈曲部の端部に回転可能に取り付けられている。ローラ254A,254Bは、それぞれスライド板251A,251Bの上端面、すなわち、高位置部251a、傾斜部251bおよび低位置部251c上を点灯するように、当該状態面に接するように配置されている。
【0032】
上記のスライド装置250A、スライド板251Aおよび回動アーム252Aは、第1把持機構253Aを構成している。第1把持機構253Aは、軸体14が通過する経路上で当接板257Aが軸体14と当接する当接位置と、当接板257Aが上記の経路から退いた退避位置とで当接板257Aを移動させる機構である。
【0033】
また、上記のスライド装置250B、スライド板251Bおよび回動アーム252Bは、第2把持機構253Bを構成している。第2把持機構253Bは、軸体14が通過する経路上で当接板257Bが軸体14と当接する当接位置と、当接板257Bが上記の経路から退いた退避位置とで当接板257Bを移動させる機構である。
【0034】
緩衝機構255A,255Bは、それぞれ後述する当接板257A,257Bが移動する軸体14に当接することにより軸体14から受ける衝撃を緩衝する機構である。緩衝機構255A,255Bは、アーム部252bの回動端部に取り付けられている。緩衝機構255A,255Bは、スプリング255aと、挟持板255b,255cと、保持軸255dと、検出板252eと、距離センサ252fとを有している。
【0035】
スプリング255aは、圧縮スプリングである。スプリング255aは、
図7に示すように、当接板257A,257Bが軸体14に当接した状態で、X1方向またはX2方向に伸縮する位置に配置されている。スプリング255aの一端部は挟持板255bに固定されており、スプリング255aの他端部は挟持板255bに固定されている。これにより、スプリング255aは、挟持板255b,255cに挟持されている。
【0036】
保持軸255dは、スプリング255aの中心に配置されている。保持軸255dの一端は、挟持板255bに固定されている。保持軸255dの他端は、挟持板255cを貫通し、挟持板255cにおけるアーム部252b側の面に配置されたナット255gが嵌め入れられている。これにより、挟持板255cは、保持軸255dに沿ってX1方向またはX2方向に移動することが可能となり、X1方向への移動がナット255gの位置で規制される。
【0037】
検出板252eは、所定の厚みを有する板状の部材であり、挟持板255bにおけるスプリング255aの側方に配置されている。距離センサ252fは、検出板252eに照射した超音波や光が戻ってくるまでの時間や戻ってきたときの強度に基づいて、検出板252eとの距離を検出するセンサである。距離センサ252fは、挟持板255cにおけるスプリング255aの側方の検出板252eと対向する位置に配置されている。
図7に示すように、検出板252eと距離センサ252fとは、スプリング255aが最も伸びた状態で所定の間隔をおくように配置されている。これにより、距離センサ252fによって検出される距離に応じたスプリング255aの縮み量を検出することで、当該縮み量を搬送台車1の走行制御に利用することができる。
【0038】
取付部材256A,256Bは、それぞれ当接板257A,257Bを取り付けるための部材である。取付部材256A,256Bは、挟持板255cにおける、保持軸255dが固定される面とは反対側の面、すなわち、
図7に示す軸体14と対向する面の、保持軸255dの中心軸上に配置されている。
【0039】
当接板257Aは、搬送台車1の進行方向(X1方向)の前方側で軸体14に当接する板状の部材であり、軸体14に当接する当接面を有している。当接板257Aは、当接面と反対側の面で取付部材256Aに取り付けられている。当接板257Bは、搬送台車1の進行方向の後方側で軸体14に当接する板状の部材であり、軸体14に当接する当接面を有している。当接板257Bは、当接面と反対側の面で取付部材256Bに取り付けられている。当接板257A,257Bは、軸体14を
図7に示すようにして把持する。
【0040】
荷重センサ258A(第1検出部)は、当接板257Aに加わるX1方向の荷重を検出するセンサであり、例えばロードセルによって構成されている。荷重センサ258Aは、取付部材256Aに内蔵されており、当接板257Aの取付面と接触するように配置されている。荷重センサ258B(第2検出部)は、当接板257Bに加わる荷重をX2方向の検出するセンサであり、例えばロードセルによって構成されている。荷重センサ258Bは、取付部材256Bに内蔵されており、当接板257Bの取付面と接触するように配置されている。
【0041】
〔同期台車の制御系の構成〕
図8は、同期台車2の制御系の構成を示すブロック図である。
【0042】
同期台車2は、
図8に示す制御装置6を備えている。制御装置6は、同期台車2の制御対象となる各部を制御する装置である。制御装置6は、動力制御部61と、把持制御部62と、主制御部63と、走行駆動制御装置64と、把持駆動制御装置65とを有している。
【0043】
動力制御部61は、荷重センサ258Aにより検出された荷重と、荷重センサ258Bにより検出された荷重とに基づいて動力装置23を制御する。動力制御部61は、動力装置23の制御を行なうために、演算制御部611と、速度制御部612とを有している。
【0044】
演算制御部611は、荷重センサ258Aにより検出されたX1方向の荷重と、荷重センサ258Bにより検出されたX2方向の荷重との差すなわち偏差を演算し、当該偏差に基づく制御量を出力する。偏差が正の値である場合、制御量も正の値となり、偏差が負の値である場合、制御量も負の値となる。換言すれば、演算制御部611は、両荷重の比較の結果として、両荷重の差に基づく動力装置23の制御量を出力する。例えば、演算制御部611は、X1方向の荷重がX2方向の荷重以上である場合に同期台車2の速度が上昇するように制御量を大きくし、X1方向の荷重がX2方向の荷重より小さい場合に同期台車2の速度が低下するように制御量を小さくする。
【0045】
速度制御部612は、演算制御部611からの制御量に基づいて指令速度を出力する。具体的には、速度制御部612は、演算制御部611からの制御量に直前の指令速度を加算して新たな指令速度を出力する。
【0046】
走行駆動制御装置64は、速度制御部612からの指令速度に基づいて動力装置23の駆動を制御する。例えば、動力装置23の動力源としてサーボモータが用いられる場合、走行駆動制御装置64はサーボアンプに該当する。この場合、走行駆動制御装置64は、サーボモータからのフィードバック信号を取得して、主制御部63に伝達する。
【0047】
主制御部63は、制御装置6における各部を統合的に制御する。例えば、主制御部63は、走行駆動制御装置64からのフィードバック信号に基づいて、同期台車2の位置情報を生成する。主制御部63は、位置情報を把持制御部62に伝達したり、位置情報に基づいて動力装置23を始動また停止させるための指令を走行駆動制御装置64に出力したりする。主制御部63は、動力装置23の動力源としてサーボモータ以外のインダクションモータなどが用いられる場合、位置センサ24A,24Bからの検知信号に基づいて位置情報を生成してもよい。また、主制御部63は、位置情報に基づいて、同期台車2の位置に応じた、把持装置25の駆動を制御するための駆動指令を把持制御部62に出力する。
【0048】
主制御部63は、位置情報に基づいて、同期台車2が走行区間の終端位置に達したことを認識すると、同期台車2を停止させて、X2方向(戻り方向)に走行するように走行駆動制御装置64に戻り指令を出力する。また、主制御部63は、位置情報に基づいて、同期台車2が走行区間の始端位置に達したことを認識すると、同期台車2を停止させるように走行駆動制御装置64に停止指令を出力する。また、主制御部63は、位置情報に基づいて、同期台車2が待機位置にあることを認識した状態で、荷重センサ258Aによって当接板257Aに加わる荷重が検出されると、同期台車2をX1方向に走行させるように走行駆動制御装置64に走行指令を出力する。
【0049】
主制御部63は、演算制御部611を介して荷重センサ258A,258Bの出力を取得する。主制御部63は、荷重センサ258Aによって検出された荷重が所定値以上であるとき、同期台車2が停止するように動力装置23を制御する。また、このとき、主制御部63は、上位の搬送システムの制御装置または搬送台車1の制御装置に対して、同期台車2が停止したことを通知してもよい。
【0050】
把持制御部62は、搬送台車1が同期台車2の待機位置に達すると、主制御部63からの駆動指令に基づいて、第1把持機構253Aを退避位置から当接位置に移動させるように、スライド装置250Aの駆動モータ250cを制御する制御信号を出力する。また、把持制御部62は、荷重センサ258Aによって当接板257Aに加わる荷重が検出されると、駆動指令に基づいて、第2把持機構253Bを退避位置から当接位置に移動させて、軸体14を把持するようにスライド装置250Bの駆動モータ250cを制御する制御信号を出力する。また、把持制御部62は、同期台車2が走行区間の終端位置に達すると、駆動指令に基づいて、第1把持機構253Aおよび第2把持機構253Bをそれぞれ当接位置から退避位置(
図10参照)に移動させるようにスライド装置250A,250Bの駆動モータ250cを制御する制御信号を出力する。
【0051】
把持駆動制御装置65は、把持制御部62からの制御信号に基づいて、スライド装置250A,250Bの駆動モータ250cのいずれか一方または両方の駆動を制御する。
【0052】
〔同期台車による搬送台車との同期走行〕
図9は、同期台車2の走行および搬送台車1との接続の制御手順を示すフローチャートである。
図10は、同期台車2が待機位状態を示す正面図である。
図11は、同期台車2が搬送台車1と同期走行する準備状態を示す正面図である。
【0053】
図9に示すように、主制御部63は、同期台車2が待機位置にあるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、主制御部63は、同期台車2が待機位置にあると判定しない場合(NO)、同期台車2を待機位置へ移動させる(ステップS10)。また、ステップS1において、主制御部63によって同期台車2が待機位置にあると判定された場合(YES)、把持制御部62は、
図11に示すように、第1把持機構253Aを当接位置に駆動させる(ステップS2)。把持制御部62は、第1把持機構253Aの駆動を完了したか否かを判定する(ステップS3)。把持制御部62は、第1把持機構253Aの駆動を完了したと判定しない場合(NO)、判定を繰り返す。
【0054】
把持制御部62によって第1把持機構253Aの駆動を完了したと判定された場合(YES)、動力制御部61、把持制御部62および主制御部63は、同期台車2の搬送台車1と同期走行させる制御の処理を行う(ステップSS4)。同期走行制御処理において、主制御部63は、荷重センサ258A(第1荷重センサ)からの検出値が一定値以上であることを確認すると、動力制御部61および把持制御部62に駆動指令を出力する。動力制御部61は、同期台車2を進行方向(X1方向)に駆動させて、把持制御部62は、当該駆動指令に基づいて、
図5に示すように、第2把持機構253Bを当接位置に駆動させる。これにより、同期台車2の搬送台車1との同期走行が開始する。
【0055】
同期走行時において、演算制御部611は、荷重センサ258Aの検出値と荷重センサ258Bの検出値との偏差に基づく制御量を出力する。速度制御部612は、演算制御部611からの制御量に基づいて指令速度を出力する。この結果、同期台車2は、搬送台車1と同期走行するように駆動制御される。
【0056】
演算制御部611は、偏差が0になる、すなわち両検出値が等しくなるように制御量を出力してもよい。また、X1方向の荷重とX2方向の荷重とがそれぞれ所定範囲の値であれば、両荷重の偏差が規定範囲内に収まるため、同期台車2が搬送台車1とほぼ同期走行していると見なしてよい。あるいは、X1方向の荷重がX2方向の荷重以上である場合に同期台車2の速度が上昇するように制御量を大きくし、X1方向の荷重がX2方向の荷重より小さい場合に同期台車2の速度が低下するように制御量を小さくする。
【0057】
主制御部63は、同期台車2が終端位置に達したことを認識すると、把持制御部62に駆動指令を出力する。把持制御部62は、当該駆動指令に基づいて、
図11に示すように、第1把持機構253Aを退避位置に移動させる。動力制御部61は、第1把持機構253Aの駆動完了後、同期台車2を一時的に停止させる。
【0058】
そして、主制御部63は、同期台車2の停止が完了したか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、動力制御部61は、同期台車2の停止が完了したことが検知されない場合(NO)、判定を繰り返す。また、ステップS5において、主制御部63は、同期台車2の停止が完了したと判定した場合(YES)、把持制御部62に駆動指令を出力する。把持制御部62は、当該駆動指令に基づいて、
図10に示すように、第2把持機構253Bを退避位置に移動させる(ステップS6)。把持制御部62は、第2把持機構253Bの駆動を完了するまで、判定を繰り返す(NO)。把持制御部62によって第2把持機構253Bの駆動が完了したと判定されると(YES)、主制御部63は、同期台車2を待機位置まで戻る方向に移動させる(ステップS8)。
【0059】
さらに、主制御部63は、同期台車2が待機位置にあるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9において、主制御部63は、同期台車2が待機位置にあると判定しない場合(NO)、判定を繰り返す。また、ステップS9において、主制御部63によって同期台車2が待機位置にあると判定された場合(YES)、1サイクルの同期運転を完了する。
【0060】
このように、本実施形態に係る搬送システム100は、同期台車2が搬送台車1の軸体14を把持する把持装置25と、把持装置25の第1把持機構253Aおよび第2把持機構253Bの移動、および同期台車2の走行を制御する制御装置6とを有している。これにより、荷重センサ258A,258Bによって検出された荷重に基づいて、同期台車2が搬送台車1と速度が同じになるように動力装置23が制御される。それゆえ、同期台車2の搬送台車1との同期走行を高度に制御することができる。したがって、把持装置25が軸体14を把持した状態で、軸体14に加わる負荷を軽減することができる。よって、搬送台車1と接続された状態で走行する同期台車2が搬送台車1の駆動装置にかける負荷を軽減することができる。
【0061】
ところで、従来、搬送台車と同期台車とが連結せずに非接続で並走する搬送設備も知られている。このような搬送設備は、センサや通信を用いて制御装置により搬送台車と同期台車との同期を確保する。このような搬送設備では、同期台車が搬送台車に追従する制御の精度が低く、特に工程作業中に搬送台車が停止した場合、同期台車が搬送台車の停止に追従する制御の精度が低く、同期台車の停止位置が搬送台車の停止位置とずれやすかった。そのため、組付け途中の搬送物などにダメージを与える可能性があった。
【0062】
これに対し、搬送システム100は、把持装置25が軸体14を物理的に把持しているため、搬送台車1が停止しても、搬送台車1と同期台車2との位置関係が変わらず、組付け途中の搬送物へのダメージを低減することができる。また、荷重センサ258Aによって検出された荷重が所定値以上であれば、同期台車2を停止させてもよい。これにより、搬送台車1の軸体14に大きな負荷がかかる時間を短縮することができる。したがって、軸体14に加わる負担を軽減することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、製造ラインは、少なくとも直線状の部分を有しておればよく、全体がループ状に形成されていてもよい。また、本実施形態では、
図1に示すように、同期台車2が走行する区間も、少なくとも直線状の部分を有しておればよく、全体がループ状に形成されていてもよい。この場合、同期台車2は、搬送台車1との同期走行が終了すると、上述したように戻り方向(X2方向)に走行して待機位置に戻るのではなく、そのまま走行して待機位置に戻る。また、同期走行を行う区間に曲線部が含まれていてもよい。その場合、本実施形態の同期制御では曲率半径の違いによる搬送台車および同期台車の走行距離の差を考慮しなくてよく、複雑な制御を必要としない。
【0064】
〔変形例〕
本実施形態では、同期台車2が突出体として軸体14を備える構成について説明した。軸体14の形状は、軸(円柱、角柱など)に限らず、同期台車2が搬送台車1と係合することができれば、いかなる形状であってもよい。また、同期台車2の搬送台車1との接触については、搬送台車1の前端と後端とをそれぞれ分離したアームで挟むような構造であってもよい。あるいは、搬送台車1が同期台車2を把持するような構造を備えていてもよい。また、本実施形態では、把持装置25が緩衝機構255A,255Bを備える構成について説明した。しかしながら、把持装置25は、これらの緩衝機構255A,255Bを備えなくてもよい。そのような把持装置25において、軸体14への負荷は大きくなるが、搬送台車1と同期台車2との位置関係がより強固に保たれるため、搬送物へのダメージをより低減することができる。
【0065】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置6(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に動力制御部61、把持制御部62および主制御部63)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0066】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。このプロセッサと記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0067】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0068】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1に係る搬送システムは、搬送移動体と、当該搬送移動体と同期して移動する同期移動体とを備える搬送システムであって、前記同期移動体は、走行するための動力を発生する動力部と、前記搬送移動体の動力が伝達されるように前記搬送移動体に接触する接触部と、前記搬送移動体による前記接触部に加わる荷重を検出する検出部と、前記検出部によって検出された荷重に基づいて、前記動力部を制御する動力制御部と、を有する。
【0069】
上記の構成によれば、同期移動体が動力部の動力によって自力走行するので、同期移動体が搬送移動体に引っ張られることはない。これにより、搬送移動体にかける負担を軽減することができる。したがって、搬送移動体の駆動装置に加わる負担を軽減することができる。
【0070】
本発明の態様2に係る搬送システムは、上記態様1において、前記検出部が、前記搬送移動体の進行方向およびその逆方向に前記接触部に加わる荷重を検出する。
【0071】
上記の構成によれば、搬送移動体の速度の増減に応じて、搬送移動体の進行方向またはその逆方向の荷重も変化する。それゆえ、その変化した荷重に基づいて、動力部を制御することにより、搬送移動体に同期するように同期移動体の速度を容易に制御することができる。
【0072】
本発明の態様3に係る搬送システムは、上記態様2において、前記動力制御部が、前記検出部によって検出された、前記進行方向の荷重と前記逆方向との荷重とが等しくなるように、前記動力部を制御する。
【0073】
上記の構成によれば、搬送移動体の進行方向の荷重と、進行方向と逆方向の荷重とが等しくなれば、搬送移動体の速度と同期移動体の速度とが等しくなる。それゆえ、搬送移動体に同期するように同期移動体の速度を正確に制御することができる。
【0074】
本発明の態様4に係る搬送システムは、上記態様2において、前記動力制御部が、前記検出部によって検出された、前記進行方向の荷重と前記逆方向の荷重とがそれぞれ所定範囲の値になるように、前記動力部を制御する。
【0075】
搬送移動体の速度と同期移動体の速度とが一致していなくても、許容できる程度の負荷が搬送移動体にかかる場合、実用上では不都合がないと見なしてもよい場合がある。上記の構成によれば、このような場合、搬送移動体の進行方向の荷重と、進行方向と逆方向の荷重とがそれぞれ所定範囲の値であれば、同期移動体が搬送移動体と同期して移動していると見なして、同期移動体の速度を維持するように制御することができる。
【0076】
本発明の態様5に係る搬送システムは、上記態様2から4のいずれかにおいて、前記動力制御部が、前記検出部によって検出された、前記進行方向の荷重または前記進行方向と逆方向の荷重が所定値以上である場合に、前記同期移動体を停止させるように、前記動力部を制御する。
【0077】
上記の構成によれば、搬送移動体が急停止した場合、接触部には、接触部が搬送移動体と接触する形態に応じて進行方向またはその逆方向に過大な荷重が加わるので、進行方向またはその逆方向の荷重が所定値以上である場合に同期移動体が停止すると、接触部に大きな負荷がかかる時間を短縮することができる。したがって、接触部に加わる負担を軽減することができる。
【0078】
本発明の態様6に係る搬送システムは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記同期移動体が、前記搬送移動体と並走し、前記搬送移動体が、前記同期移動体側に突出する突出体を有し、前記接触部が、前記搬送移動体の進行方向前方側で前記突出体に当接する第1当接体と、前記搬送移動体の進行方向後方側で前記突出体に当接する第2当接体と、前記第1当接体を、前記突出体が通過する経路上の当接位置と前記経路から退いた退避位置とで移動させる第1把持機構と、前記第2当接体を、前記当接位置と前記退避位置との間で移動させる第2把持機構と、をさらに有し、前記検出部が、前記第1当接体に加わる荷重を検出する第1検出部と、前記第2当接体に加わる荷重を検出する第2検出部と、を有し、前記搬送システムが、第1把持機構を前記退避位置から前記当接位置に移動させるように制御するとともに、前記第1検出部によって第1当接体に加わる荷重が検出されると、第2把持機構を前記退避位置から前記当接位置に移動させて、前記第1当接体および前記第2当接体により前記突出体を把持するように制御する把持制御部をさらに備える。
【0079】
上記の構成によれば、同期移動体が待機している状態で、予め搬送移動体の突出体が通過する当接位置に第1当接体を待機させておき、搬送移動体が同期移動体の待機位置まで移動して突出体が第1当接体に当接すると、第2当接体を移動させて突出体に当接させる。これにより、同期移動体が搬送移動体との同期搬送する前の待機状態から、円滑に突出体と接触することができる。
【0080】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、本発明は、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 搬送台車(搬送移動体)
2 同期台車(同期移動体)
14 軸体(突出体)
23 動力装置(動力部)
24A 位置センサ(検知部)
25 把持装置(接触部)
61 動力制御部
62 把持制御部
100 搬送システム
253A 第1把持機構
253B 第2把持機構
257A 当接板(接触部,第1当接体)
257B 当接板(接触部,第2当接体)
258A 荷重センサ(検出部,第1検出部)
258B 荷重センサ(検出部,第2検出部)