(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142114
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20241003BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20241003BHJP
F16D 66/00 20060101ALI20241003BHJP
F16D 65/22 20060101ALI20241003BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20241003BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20241003BHJP
【FI】
B60T13/74 G
B60T8/17 Z
F16D66/00 Z
F16D65/22
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054128
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】和▲崎▼ 考幸
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
3J058
【Fターム(参考)】
3D048CC49
3D048HH18
3D048QQ07
3D048QQ11
3D048RR25
3D048RR29
3D048RR35
3D246BA08
3D246DA01
3D246GC11
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA34A
3D246HA36B
3D246HA38A
3D246KA15
3D246LA13Z
3D246LA15Z
3J058AA03
3J058AA08
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA24
3J058AA29
3J058AA37
3J058BA20
3J058CC15
3J058DA04
3J058DB01
3J058DB27
(57)【要約】
【課題】電動制動装置において、摩擦材の摩耗により拡大したクリアランスを調整可能な機構を簡素に提供する。
【解決手段】直動部(40)は、シャフト(50)の径方向外側に形成され、シール部材(80、81)を収める第1溝部(55)及び第2溝部(65)を有し、第1溝部(55)のシャフト(50)の軸方向における溝幅は、シール部材(80)の前記軸方向の幅よりも大きく、直動部(40)の前記軸方向の可動範囲よりも狭く形成され、第2溝部(65)の前記軸方向の溝幅は、シール部材(81)の前記軸方向の幅よりも大きく、直動部(40)の前記軸方向の可動範囲よりも狭く形成され、シール部材(80、81)の緊迫力は、直動部(40)の駆動力の最大値よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータから伝達された回転運動が直線運動に変換されることにより、直動部の駆動軸の軸方向に前記直動部が直動し、前記直動部と連動する摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押圧することで、前記車輪に制動力を発生する電動制動装置において、
前記駆動軸の径方向外側で前記直動部を覆う筒状のシリンダと、
前記直動部と前記シリンダとの間に配置され、前記シリンダに緊迫力を付与するストッパと、を備え、
前記直動部は、前記駆動軸の径方向外側に形成され、前記ストッパを収める溝部を有し、
前記溝部の前記軸方向の溝幅は、前記ストッパの前記軸方向の幅よりも大きく、前記直動部の前記軸方向の可動範囲よりも狭く形成され、
前記ストッパの緊迫力は、前記直動部の駆動力の最大値よりも小さい、電動制動装置。
【請求項2】
前記摩擦材と前記回転体との間のクリアランスを調整すべきであると判定した場合、前記ストッパの前記緊迫力よりも大きい力で前記直動部を前記電気モータにより駆動させて、前記ストッパの前記シリンダに対する位置を変更する制御部を備えている、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記制御部は、制動力を解除すべく前記電気モータを駆動させている場合において、前記電気モータによる前記直動部を駆動させる力が前記ストッパの前記緊迫力よりも小さい所定値以上となった場合、前記電気モータの駆動を停止させる請求項2に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記溝部の前記軸方向の前記溝幅は、通常制動に必要なストローク以上であり、前記ストッパは、前記駆動軸の径方向における前記溝部の底面と離間している、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドラム型電動ブレーキの直動変換部におけるブレーキライニングの摩耗時の摩耗調整を実現する構成について記載されている。ドラムブレーキのブレーキシューを拡張する拡張装置は、ブレーキライニングの摩耗によって拡大される拡張距離を補整する再調整装置を有する。再調整装置に含まれる再調整ボルトは、第1の周方向への回転によって、拡張方向への拡張ピストンの軸方向変位をもたらし、逆の周方向への回転がバネ負荷を受ける係止装置によって阻止可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の拡張装置は、再調整装置、及び係止装置を軸方向に直列に配置させる必要が有る。そのため、ブレーキライニングの摩耗調整を行う機構が複雑になる。
【0005】
本開示の一態様は、電動制動装置において、摩擦材の摩耗により拡大したクリアランスを調整可能な機構を簡素に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る電動制動装置は、電気モータから伝達された回転運動が直線運動に変換されることにより、直動部の駆動軸の軸方向に前記直動部が直動し、前記直動部と連動する摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押圧することで、前記車輪に制動力を発生する電動制動装置において、前記駆動軸の径方向外側で前記直動部を覆う筒状のシリンダと、前記直動部と前記シリンダとの間に配置され、前記シリンダに緊迫力を付与するストッパと、を備え、前記直動部は、前記駆動軸の径方向外側に形成され、前記ストッパを収める溝部を有し、前記溝部の前記軸方向の溝幅は、前記ストッパの前記軸方向の幅よりも大きく、前記直動部の前記軸方向の可動範囲よりも狭く形成され、前記ストッパの緊迫力は、前記直動部の駆動力の最大値よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、電動制動装置において、摩擦材の摩耗により拡大したクリアランスを調整可能な機構を簡素に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態1に係る電動制動装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示すアクチュエータの概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図2に示すアクチュエータの要部を拡大した拡大図である。
【
図4】ブレーキライニングの摩耗量が所定量以下の状態における、ブレーキライニングとブレーキドラムとの間のクリアランスの調整について説明する図である。
【
図5】ブレーキライニングの摩耗量が所定量よりも多い状態における、ブレーキライニングとブレーキドラムとの間のクリアランスの調整について説明する図である。
【
図6】本開示の実施形態2に係るアクチュエータの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
<電動制動装置>
図1を参照して、車両の車輪に対して制動力を発生させる電動制動装置1の概要について説明する。
図1は、実施形態1に係る電動制動装置1の構成を示す概略図である。電動制動装置1が適用される装置の例としては、EMB(Electro Mechanical Brake)と呼ばれる電子機械式ブレーキが挙げられる。
図1に示す電動制動装置1は、ドラム型の電動制動装置である。
【0011】
図1に示す電動制動装置1は、車輪に備えられている。電動制動装置1は、バッキングプレート3と、ブレーキライニング4と、ブレーキシュー5と、付勢部材6と、アクチュエータ10と、を備えている。バッキングプレート3は、車輪と共に回転しない非回転体である。バッキングプレート3は、ブレーキライニング4、ブレーキシュー5、及びアクチュエータ10を支持している。
【0012】
ブレーキライニング4は、回転軸A1を中心に車輪と共に回転するブレーキドラム2を押圧することで、車輪に対して制動力を発生させる部材である。ブレーキライニング4は、摩擦材の一例である。ブレーキドラム2は、回転体の一例である。ブレーキライニング4は、ブレーキシュー5に固定されている。
【0013】
ブレーキシュー5は、後述するアクチュエータ10により、ブレーキドラム2の径方向に移動する。ブレーキシュー5は、後述する直動部40の直線運動と連動する。ブレーキシュー5は、ブレーキドラム2の内周面に沿うように、円弧状に形成された部材である。ブレーキシュー5は、アクチュエータ10を挟んで一対設けられている。ブレーキシュー5は、付勢部材6により、ブレーキライニング4とブレーキドラム2とが離間する方向に付勢されている。
【0014】
ブレーキシュー5がブレーキドラム2の径方向外側に移動すると、ブレーキライニング4は、ブレーキドラム2の内周面を押圧する。回転しているブレーキドラム2が、ブレーキライニング4により押圧されると、ブレーキドラム2とブレーキライニング4との間にて摩擦力が生じる。この摩擦力は、ブレーキドラム2の回転方向とは反対方向の力として車輪に対して作用する。これにより、ブレーキライニング4は、車輪に対して制動力を発生させる。
【0015】
<アクチュエータ>
図2及び
図3を参照して、アクチュエータ10の構成について説明する。
図2は、
図1に示すアクチュエータ10の概略構成を示す断面図である。
図3は、
図2に示すアクチュエータ10の要部を拡大した拡大図である。なお、以下の説明において、
図2~
図6に示すX(X1-X2)方向、及びY(Y1-Y2)方向という座標軸を規定して説明する。X方向は、シャフト50の回転軸A2の軸方向である。Y方向は、X方向と直交する方向である。
【0016】
図2に示すように、アクチュエータ10は、シリンダ20と、回転部材30と、直動部40と、シール部材80及び81と、ECU(Electronic Control Unit)100と、電気モータ101と、を備えている。
【0017】
シリンダ20は、直動部40を覆っている筒状の部材である。より詳細には、シリンダ20は、直動部40のシャフト50の径方向外側にて直動部40を覆っている。回転部材30は、電気モータ101の回転運動を直動部40に伝達する部材である。回転部材30は、シリンダ20の内部に配置される。回転部材30とシリンダ20との間には、軸受け35が配置されている。回転部材30は、軸受け35によってシリンダ20に対して支持されている。回転部材30は、電気モータ101の回転運動を減速する減速機構の一部であってもよい。回転部材30には、シャフト50が嵌合する貫通孔31が形成されている。
【0018】
直動部40は、電気モータ101の回転運動を直線運動に変換することにより、X方向に直動する。直動部40は、電気モータ101の回転運動を直線運動に変換する機構としての機能を有している。直動部40は、シャフト50と、ナット60と、ピストン70及び71とを有している。
【0019】
シャフト50は、回転部材30に形成された貫通孔31に挿入されている。シャフト50は、回転部材30の回転に伴い、回転軸A2を中心に回転する。また、軸A2は直動部40の駆動軸A2でもある。駆動軸A2の軸方向は、X方向である。
【0020】
シャフト50は、スライド部51と、雄ネジ部52と、第1溝部55とを有している。
スライド部51は、シャフト50の軸方向と直交する方向における断面形状が多角形状を成しており、回転部材30の貫通孔31に嵌合している。または、スライド部51と回転部材30とがスプライン溝によってスライド可能かつ回転伝達可能に構成されてもよい。シャフト50に対してX方向の荷重が生じると、スライド部51は回転部材30に対してX方向に摺動する。
雄ネジ部52は、X方向において、スライド部51よりもX1方向側に位置している。
シャフト50の径方向外側には、第1溝部55が形成されている。より詳細には、第1溝部55は、シャフト50の外周面の周方向全周に渡って形成されている。なお、第1溝部55は、シャフト50の外周面の周方向の一部に形成される構成としてもよい。第1溝部55には、シール部材80が収められている。
【0021】
図3に示すように、第1溝部55は、底面56と、当接面57と、押圧面58とを有している。底面56は、X方向に沿う面である。当接面57は、X方向における底面56のピストン70側の端部から、シャフト50の径方向外側に向かって伸びる面である。押圧面58は、X方向における底面56の回転部材30側の端部から、シャフト50の径方向外側に向かって伸びる面である。押圧面58は、X方向において当接面57と対向している。
第1溝部55のX方向の溝幅L4は、シール部材80のX方向の幅L2よりも大きい。また、溝幅L4は、直動部40のX方向の可動範囲よりも狭い。即ち、溝幅L4は、X方向における雄ネジ部52が形成された範囲L1よりも狭い。また、溝幅L4は、通常制動に必要なストロークに応じた長さ以上である。例えば、溝幅L4は、想定される通常制動時のブレーキペダルのストローク量から算出されるシャフト50の移動量に応じた長さ以上である。なお、通常制動とは、車両の通常走行時において行われる制動であって、急ブレーキ等の緊急制動時以外の状況において行われる制動を意味する。通常制動時のブレーキペダルのストローク量は、緊急制動時のブレーキペダルのストローク量よりも少ない。溝幅L4は、電動制動装置1が搭載される車両の車両諸元に基づいてその長さが変更され得る。
【0022】
図2に示すように、ナット60は、シャフト50の回転運動を直線運動に変換する部材である。ナット60の内周面には、シャフト50の雄ネジ部52と螺合する雌ネジ部61が形成されている。ナット60の駆動軸は、シャフト50の回転軸A2と同一である。雄ネジ部52と雌ネジ部61とが螺合した状態でシャフト50が回転すると、ナット60がX方向に移動する。ナット60は、X方向における雄ネジ部52が形成された範囲L1内を移動する。換言すれば、雄ネジ部52が形成された範囲L1は、直動部40のX方向の可動範囲と対応する。
【0023】
ナット60の径方向外側には、第2溝部65が形成されている。より詳細には、第2溝部65は、ナット60の外周面の周方向に渡って形成されている。なお、第2溝部65は、ナット60の外周面の周方向の一部に形成される構成としてもよい。第2溝部65には、シール部材81が収められる。
図3に示すように、第2溝部65は、底面66と、当接面67と、押圧面68とを有している。底面66は、X方向に沿う面である。当接面67は、X方向における底面66のピストン71側の端部から、ナット60の径方向外側に向かって伸びる面である。押圧面68は、X方向における底面66の回転部材30側の端部から、ナット60の径方向外側に向かって伸びる面である。押圧面68は、X方向において当接面67と対向している。
第2溝部65のX方向の溝幅L5は、シール部材81のX方向の幅L3よりも大きい。また、溝幅L5は、直動部40のX方向の可動範囲よりも狭い。即ち、溝幅L5は、X方向における雄ネジ部52が形成された範囲L1よりも狭い。また、溝幅L5は、通常制動に必要なストロークに応じた長さ以上である。より詳細には、想定される通常制動時のブレーキペダルのストローク量から算出されるナット60の移動量に応じた長さ以上である。
【0024】
本実施形態において、溝幅L5は、溝幅L4と同じ長さである。なお、溝幅L5は、溝幅L4と異なる長さであってもよい。例えば、溝部が形成される部材におけるX方向の移動量に応じて、溝部の幅を変更してもよい。即ち、X方向における移動量が多い部材に対して形成される溝部の幅を大きくし、X方向における移動量が少ない部材に対して形成される溝部の幅を狭くする構成としてもよい。また、溝幅L4及びL5は、後述するシール部材80、81のX方向の幅L2、L3の大きさによって適宜設定され得る。
【0025】
図2に示すように、アクチュエータ10には、一対のピストン70、71が設けられている。ピストン70は、シャフト50のX2方向側の端部に取り付けられている。ピストン70は、シャフト50のX方向の直線運動に伴い、X方向に直動する。ピストン70の取付部701には、一対のブレーキシュー5のうちの一つが取り付けられている。他方のピストン71は、ナット60のX1方向側の端部に取り付けられている。ピストン71は、ナット60のX方向の直線運動に伴い、X方向に直動する。ピストン71の取付部711には、一対のブレーキシュー5のうちの他の一つが取り付けられている。
ピストン70及び71がブレーキシュー5に対する押圧を増加させる方向、即ちピストン70がX2方向に、及びピストン71がX1方向に移動すると、ブレーキライニング4とブレーキドラム2とが当接する方向にブレーキシュー5が移動する。一方、ピストン70及び71がブレーキシュー5に対する押圧力を減少させる方向、即ちピストン70がX1方向に、及びピストン71がX2方向に移動すると、ブレーキライニング4とブレーキドラム2とが離間する方向にブレーキシュー5が移動する。
【0026】
シール部材80、81は、直動部40とシリンダ20との間に配置され、シリンダ20に緊迫力を付与している。シール部材80、81は、ストッパの一例である。シール部材80、81の緊迫力は、直動部40の駆動力の最大値よりも小さくなるように設定されている。本実施形態において、シール部材80のX方向の幅L2とシール部材80のシール部材81のX方向の幅L3とは、同じ長さである。なお、幅L2と、幅L3とは異なる長さであってもよい。
シール部材80は第1溝部55の底面56と離間しており、シール部材81は第2溝部65の底面66と離間している。即ち、シール部材80は、第1溝部55の底面56とは当接していない。また、シール部材81は、第2溝部65の底面66とは当接していない。なお、ストッパとして、シール部材80、81を用いる構成に限られない。例えば、弾力を有する樹脂部材を用いてもよい。
【0027】
ECU100は、アクチュエータ10の駆動を制御することにより、電動制動装置1の動作を制御する制御ユニットである。ECU100は、制御部の一例である。ECU100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、及びRAM若しくはROM等のメモリを備えたコンピュータにより構成される電子制御ユニットである。ECU100は、シリンダ20の外部に配置されている。
ECU100は、電気モータ101と電気的に接続されている。ECU100は、電気モータ101に電力を供給する駆動回路、及び電気モータ101に供給される電流を検出する電流検出回路を備えている。ECU100は、電気モータ101に供給される電流を制御することにより、アクチュエータ10の駆動を制御する。
【0028】
電気モータ101は、アクチュエータ10の動力源である。電気モータ101は、例えば、ブラシレスモータまたはブラシ付モータである。電気モータ101の駆動は、ECU100により制御される。電気モータ101が正転駆動すると、ブレーキライニング4とブレーキドラム2とを当接させる方向に直動部40が移動する。電気モータ101が逆転駆動すると、ブレーキライニング4とブレーキドラム2とを離間させる方向に直動部40が移動する。
【0029】
<クリアランス調整について>
次に、
図4及び
図5を参照して、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整について説明する。なお、
図4及び
図5においては、車両走行中にブレーキペダルが踏み込まれた場合を例として説明するが、本実施形態は当該例に限られるものではない。先ず、
図4を参照して、ブレーキライニング4の摩耗量が所定量以下の状態における、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整について説明する。ブレーキライニング4の摩耗量が所定量以下の状態とは、ブレーキライニング4が、ブレーキライニング4が摩耗していないと認められる状態である。換言すれば、ブレーキライニング4の摩耗量が所定量以下の場合、シール部材80、81のシリンダ20に対する位置が初期設定の状態、即ちシール部材80、81のシリンダ20に対する位置が変更されていない状態において、ブレーキペダルを通常制動時のストローク量で踏み込んだ際に、車輪に対する制動力に影響を与えない状態である。
【0030】
図4の(a)には、待機位置に位置する直動部40が図示されている。ここで、待機位置は、アクチュエータ10が駆動していない状態における直動部40の位置である。即ち、待機位置は、電気モータ101の駆動が停止した状態であって、車輪に対して制動力を発生させていないときの直動部40の位置である。直動部40が待機位置に位置している場合、第1溝部55の当接面57はシール部材80と当接した状態であり、第2溝部65の当接面67はシール部材81と当接した状態である。
【0031】
図4の(b)には、加圧位置に位置する直動部40が図示されている。ここで、加圧位置は、アクチュエータ10の駆動によりブレーキライニング4がブレーキドラム2を押圧した状態における直動部40の位置である。即ち、加圧位置は、電気モータ101の駆動により車輪に対して制動力を発生させた状態における直動部40の位置である。ECU100は、車輪に発生させる制動力に応じて、電気モータ101の駆動を制御する。直動部40の駆動力は、電気モータ101から伝達された駆動力であり、X方向に働く力である。電気モータ101のトルクが大きくなると、直動部40の駆動力も大きくなる。直動部40が待機位置から加圧位置に向かうにつれ、直動部40の駆動力が大きくなる。
【0032】
直動部40が待機位置から加圧位置に向けて移動、即ちECU100が制動力を発生させるすべく電気モータ101を駆動すると、第1溝部55の当接面57とシール部材80との当接、及び第2溝部65の当接面67とシール部材81の当接が解除される。具体的には、待機位置に位置するナット60がX1方向に移動することにより、第2溝部65の当接面67とシール部材81との当接が解除される。ナット60がX1方向に移動によりピストン71がX1方向に移動し、ブレーキライニング4がブレーキドラム2を押圧する。ブレーキライニング4がブレーキドラム2を押圧すると、ブレーキライニング4の押圧荷重の反力がピストン71及びナット60を介してシャフト50に入力される。シャフト50に反力が入力されると、待機位置に位置するシャフト50がX2方向に移動する。シャフト50のX2方向の移動に伴い、第1溝部55の当接面57とシール部材80との当接が解除される。
【0033】
直動部40が加圧位置に位置している場合、第1溝部55とシール部材80とは当接していない。即ち、シール部材80は、第1溝部55を構成する面とは当接していない状態である。また、直動部40が加圧位置に位置している場合、第2溝部65とシール部材81とは当接していない。即ち、シール部材81は、第2溝部65を構成する面とは当接していない状態である。
【0034】
ブレーキライニング4の摩耗量が所定量以下の状態において、通常のストロークでブレーキペダルが踏み込まれたとしても、シール部材80及び81はシリンダ20に対して位置が変更されるとがない。そのため、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整が行われない。
【0035】
次に、
図5を参照して、ブレーキライニング4の摩耗量が所定量よりも多い状態における、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整について説明する。ブレーキライニング4の摩耗量が所定量よりも多い状態の場合、シール部材80、81の位置が初期設定の状態において、ブレーキペダルを通常制動時のストローク量で踏み込んだ際に、発生する制動力が弱いために車輪に対する制動力に影響を与える状態である。
【0036】
図5の(a)には、待機位置に位置する直動部40が図示されている。このとき、シール部材80及び81は、それぞれ第1溝部55の当接面57、及び第2溝部65の当接面67と当接した状態である。
図5の(b)には、加圧位置に位置する直動部40が図示されている。
【0037】
ブレーキライニング4の摩耗量が所定量よりも多い状態では、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスは、ブレーキライニング4の摩耗量が所定量以下の場合のクリアランスよりも大きくなった状態である。そのため、通常のストロークよりも長いストロークでブレーキペダルが踏み込まれる。従って、ブレーキライニング4の摩耗量が所定量よりも多い状態では、直動部40が待機位置から加圧位置への移動する際、第1溝部55の押圧面58とシール部材80とが当接する。また、第2溝部65の押圧面68とシール部材81とが当接する。
【0038】
電気モータ101の正転駆動による直動部40の駆動力は、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて大きくなる。シール部材80、81の緊迫力よりも大きい力が押圧面58及び68を介して各シール部材80及び81に伝達されると、各シール部材80、81はシリンダ20の内周面に沿ってX方向に移動する。具体的には、ナット60がX1方向に移動すると、第2溝部65の押圧面68はシール部材81をX1方向に押圧する。シャフト50がX2方向に移動すると、第1溝部55の押圧面58はシール部材80をX2方向に押圧する。シール部材80は、第1溝部55の押圧面58に押圧されX2方向に移動し、シリンダ20に対する位置が変更されている。
図5の破線にて示すように、
図5の(b)に示すシール部材80の位置は、
図5の(a)に示すシール部材80の位置よりもX2方向に位置している。また、シール部材81は第2溝部65の押圧面68に押圧されX1方向に移動し、シリンダ20に対するシール部材81の位置が変更されている。
図5の破線にて示すように、
図5の(b)に示すシール部材81の位置は、
図5の(a)に示すシール部材81の位置よりもX1方向に位置している。
【0039】
図5の(c)には、加圧位置から待機位置に移動した直動部40が図示されている。加圧位置から待機位置に向かって直動部40が移動、即ち発生した制動力を解除すべく電気モータ101を駆動すると、第1溝部55の当接面57及び第2溝部65の当接面67は、それぞれシール部材80及び81と当接する。ECU100は、加圧位置から待機位置に移動する際の直動部40の駆動力、即ち、電気モータ101を逆転駆動した場合の直動部40の駆動力は、加圧位置に位置する直動部40の駆動力よりも小さい。そのため、直動部40のX方向への移動がシール部材80及び81により制限される。
【0040】
ブレーキライニング4の摩耗量が所定量よりも多い状態では、車輪に対する制動力の発生と共に、シリンダ20に対するシール部材80及び81の位置が変更される。また、加圧位置から待機位置に移動した直動部40は、位置が変更されたシール部材80及び81により移動が制限される。そのため、待機位置において、シリンダ20に対する直動部40の位置が変更される。これにより、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整が行われる。
【0041】
また、ECU100は、電気モータ101に供給される電流を検出する電流検出回路を備える構成としてもよい。直動部40を加圧位置から待機位置へ移動させる際、電流検出回路が検出した電流値に基づいて直動部40の移動を停止させてもよい。即ち、第1溝部55の当接面57及び第2溝部65の当接面67のそれぞれにシール部材が当接すると、電気モータ101に供給される電流の電流値が大きくなる。そのため、ECU100は、検出した電流値が閾値以上となった場合に電気モータ101の駆動を停止する構成としてもよい。この場合の閾値は、シール部材80、81の緊迫力よりも小さい値である。また、ECU100は、直動部40を加圧位置から待機位置へ移動させる際、直動部40にかかる荷重を検出し、検出した荷重に基づいて直動部40の移動を停止させてもよい。
【0042】
上記構成によれば、シール部材80及び81による緊迫力は直動部40の駆動力の最大値よりも小さく設定されている。そのため、直動部40を緊迫力よりも小さい駆動力で直線運動させれば、シール部材80及び81のそれぞれが第1溝部55及び第2溝部65と当接することにより、ブレーキライニング4の摩耗により拡がった直動部40の直線運動の移動範囲を制限することができる。
一方、直動部40を緊迫力よりも大きな駆動力で直線運動させれば、シール部材80及び81のシリンダ20に対する位置が変更されるため、直動部40の直線運動の移動範囲を変更することができる。これにより、摩擦材が摩耗して摩擦材と回転体とのクリアランスが変化したとしても、当該クリアランスを調整することができる。
従って、シール部材80、81と溝部55、65という簡素な構成によりブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整することができる。これは、電動制動装置1の低コスト化に寄与する。
また、上記構成によれば、直動部に別途ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整する機構を配置する必要がない。これにより、アクチュエータ10のX方向における長さが長くなることを防止することが可能となる。
【0043】
また、上記構成によれば、ECU100は、制動力を解除すべく電気モータ101を駆動させている場合において、電気モータ101による直動部40を駆動させる力がストッパの緊迫力よりも小さい所定値以上になった場合に電気モータ101の駆動を停止することで、制動力解除時に、シール部材80、81の位置が変更されてしまうことを抑制できる。これにより、直動部40の位置をブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスに応じた適正な位置にとどめておくことができる。
【0044】
また、上記構成によれば、第1溝部55の溝幅L4及び第2溝部65の溝幅L5が、通常制動に必要なストローク以上に設定されている。また、シール部材80はシャフト50の径方向において第1溝部55の底面56と離間しており、シール部材81はシャフト50の径方向において第2溝部65の底面66と離間している。したがって、通常制動時ではシール部材80、81と直動部40とが当接しない。これにより、通常制動中にシール部材80、81と直動部40とが摺動することによる電動制動装置1の効率低下を抑制することができる。
【0045】
(変形例1)
実施形態1において、ブレーキペダルが踏み込まれた場合、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整を行う構成について説明したが、このような構成に限られるものではない。ECU100は、摩擦材と回転体との間のクリアランスを調整すべきであると判定した場合、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスの調整を行う構成としてもよい。
【0046】
ECU100は、車両が停止している状態において、予め定められた条件を満たすか否かを判定する処理を実行する。予め定められた条件は、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整すべきと考えられる条件である。予め定められた条件の例として、(i)ブレーキペダルのストローク量に対して目標ストロークを設定し、目標ストロークから目標モータ回転角に変換し、図示しないモータ回転角センサで検出された実モータ回転角を目標モータ回転角に追従させる回転角制御を行う構成において、実モータ回転角が目標モータ回転角に追従しても実モータ回転角で発生するブレーキライニング4の押圧荷重(図示しない押圧力センサなどで検出)が閾値よりも低い場合、(ii)ブレーキの踏み込み回数が閾値よりも多い場合、(iii)所定の期間が経過している場合、(iv)車両の走行距離が閾値を超えている場合、などの条件が挙げられる。予め定められた条件は、上述の例に限られるものではない。
【0047】
ECU100は、予め定められた条件を満たすと判定した場合、シール部材80及び81の緊迫力よりも大きい力で直動部40を電気モータ101により駆動させる。具体的には、ECU100は、シール部材80及び81の緊迫力よりも大きい力となるように電気モータ101を正転駆動する。これにより、シール部材80及び81のそれぞれは、第1溝部55の押圧面58及び第2溝部65の押圧面68に押圧され、シリンダ20に対する位置が変更される。即ち、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスが小さくなるように調整される。
【0048】
(変形例2)
また、ECU100は、ブレーキライニング4が新品に交換された場合に、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整する構成としてもよい。ブレーキライニング4が新品に交換された場合は、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整すべきと考えられる条件の一例である。
【0049】
ECU100は、ブレーキライニング4が新品に交換されたと判定された場合、シール部材80及び81の緊迫力よりも大きい力で直動部40を電気モータ101により駆動させる。具体的には、ECU100は、電気モータ101を正転動した後、シール部材80及び81の緊迫力よりも大きい力となるように電気モータ101を逆転駆動する。シール部材80及び81のそれぞれは、第1溝部55の当接面57及び第2溝部65の当接面67により押圧され、シリンダ20に対する位置が変更される。より詳細には、シール部材80は第1溝部55の当接面57によりX1方向に移動し、シール部材81は第2溝部65の当接面67によりX2方向側に移動する。これにより、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスが大きくなるように調整される。
【0050】
ECU100は、変形例2において、電流検出回路により検出される電気モータ101に供給される電流の電流値が2回目に上昇したタイミングにおいて、電気モータ101の逆転駆動を停止する構成としてもよい。具体的には、1回目に電流値が上昇するタイミングは第1溝部55の当接面57及び第2溝部65の当接面67が各シール部材80及び81に当接したタイミングであり、2回目に電流値が上昇するタイミングは直動部40が可動範囲の限界に達したタイミングである。より詳細には、2回目に電流値が上昇するタイミングは、ナット60がシャフト50の雄ネジ部52が形成されている限界に到達したタイミングである。これにより、シリンダ20に対して移動したシール部材80の位置を初期位置として設定することができる。
【0051】
上記変形例1及び2によれば、ECU100は、ブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整すべきであると判定した場合、シール部材80、81の緊迫力より大きい力で直動部40を電気モータ101により駆動させることで、シール部材80、81のシリンダ20に対する位置を調整する。ECU100による電気モータ101の駆動力の調整により、シール部材80、81の位置を変更できるため、容易にブレーキライニング4とブレーキドラム2との間のクリアランスを調整することができる。
【0052】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0053】
図6を参照して、実施形態2に係るアクチュエータ10Aの構成について説明する。
図6は、実施形態2に係るアクチュエータ10Aの概略構成を示す断面図である。実施形態2に係るアクチュエータ10Aは、実施形態1に係るアクチュエータ10と比べて、溝部がピストンに形成されている点で異なる。
【0054】
アクチュエータ10Aの直動部40Aは、シャフト50と、ナット60Aと、ピストン70及び71Aと、スラストベアリング90と、を有している。ナット60Aは、雌ネジ部61と、スライド部63と、フランジ部64と、を有している。スライド部63は、回転部材30の貫通孔31に嵌合している。回転部材30とシリンダ20との間には、軸受け36が配置されている。スライド部63の外周面は、X方向と直交する方向の断面でみたとき、多角形状を成している。または、スライド部63と回転部材30とがスプライン溝によってスライド可能かつ回転伝達可能に構成されてもよい。実施形態2のアクチュエータ10Aでは、ナット60Aが回転部材30と共に回転し、スライド部63が回転部材30に対してX方向に摺動する。
フランジ部64は、ナット60の外周面からナット60の径方向外側に向かって突出している。フランジ部64は、スライド部63よりもX2方向側に位置している。ナット60AのX2方向側には、ピストン71Aが取り付けられている。ナット60AのX2方向側の端部は、ピストン71Aの係合孔712に係合している。
【0055】
スラストベアリング90は、X方向において、ナット60Aのフランジ部64とピストン71Aとの間に配置される。ナット60AがX2方向に移動すると、フランジ部64からスラストベアリング90にナット60Aの駆動力が伝達される。ピストン71Aには、スラストベアリング90を介して、ナット60Aの駆動力が伝達される。
【0056】
ピストン71Aには、第3溝部72が形成されている。第3溝部72は、シャフト50の径方向外側に位置するピストン71Aの外周面に形成されている。より詳細には、第3溝部72は、ピストン71Aの外周面の周方向全周に渡って形成されている。なお、第3溝部72は、ピストン71Aの外周面の周方向の一部に形成される構成としてもよい。第3溝部72には、シール部材81が収められている。
【0057】
第3溝部72は、底面73と、当接面74と、押圧面75とを有している。底面73は、X方向に沿う面である。当接面74は、X方向における底面73の取付部711側の端部から、シャフト50の径方向外側に向かって伸びる面である。押圧面75は、X方向における底面73の回転部材30側の端部から、シャフト50の径方向外側に向かって伸びる面である。押圧面75は、X方向において当接面74と対向している。
第3溝部72のX方向の溝幅L6は、シール部材81のX方向の幅L3よりも大きい。また、溝幅L6は、直動部40AのX方向の可動範囲よりも狭い。即ち、溝幅L6は、X方向における雄ネジ部52が形成された範囲L1よりも狭い。また、溝幅L6は、通常制動に必要なストロークに応じた長さ以上である。より詳細には、想定される通常制動時のブレーキペダルのストローク量から算出されるピストン70の移動量に応じた長さ以上である。
【0058】
〔その他の実施形態〕
上述した実施形態において、ブレーキドラム2をブレーキライニング4により押圧するドラム型の電動制動装置1について説明したが、本開示はドラム型の電動制動装置1に限定されるものではない。本開示は、車輪と共に回転するディスクロータを摩擦材により挟み込むことでディスクロータを押圧し、車輪に対して制動力を発生させるキャリパ型の電動制動装置に対しても採用することができる。
【0059】
また、直動部40、40Aは、複数の溝部を有する構成としたが、このような構成に限られるものではない。直動部40、40Aが有する溝部は、一つであってもよい。
【0060】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 電動制動装置
2 ブレーキドラム
4 ブレーキライニング
5 ブレーキシュー
10 アクチュエータ
20 シリンダ
40 直動部
50 シャフト
55 第1溝部
60 ナット
65 第2溝部
80 シール部材
81 シール部材