(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142122
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20241003BHJP
F24F 6/06 20060101ALI20241003BHJP
F24F 8/80 20210101ALN20241003BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/06
F24F8/80 400
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054142
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 タケル
(72)【発明者】
【氏名】中島 篤朗
(72)【発明者】
【氏名】飯野 峻也
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BA04
3L055DA01
(57)【要約】
【課題】吸水部材の加湿能力を向上させる。
【解決手段】加湿装置は、駆動機構(41)によって回転される回転枠(45)と、該回転枠(45)の内部に保持されるとともに前記回転枠(45)の軸方向に空気が通過する吸水部材(70)と、前記吸水部材(70)に供給する水を貯留する貯水部(33)とを有する加湿機構(40)を備え、回転枠(45)の外周面には、前記回転枠(45)の内側から通過する空気の流出を制限する制限構造(100)が設けられる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構(41)によって回転される回転枠(45)と、該回転枠(45)の内部に保持されるとともに前記回転枠(45)の軸方向に空気が通過する吸水部材(70)と、前記吸水部材(70)に供給する水を貯留する貯水部(33)と、
を有する加湿機構(40)を備え、
前記回転枠(45)の外周面には、前記回転枠(45)の内側から通過する空気の流出を制限する制限構造(100)が設けられる
加湿装置。
【請求項2】
前記回転枠(45)は、第1枠(50)と、前記吸水部材(70)を前記第1枠(50)と挟んで固定する第2枠(60)と、前記貯水部(33)から水を汲み上げ、汲み上げた水を前記吸水部材(70)に供給するための水供給部材(80)とをさらに備え、
前記制限構造(100)は、前記第1枠(50)の外周面と、前記第2枠(60)の外周面と、前記水供給部材(80)とにより構成される
請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記回転枠(45)は、
前記貯水部(33)の水が取り込まれる取込穴(55,57)と、
前記取込穴(55,57)から取り込まれた水を貯留し、前記吸水部材(70)に貯留した水を供給する水供給部材(80)と
を有し、
前記取込穴(55,57)は、前記回転枠(45)において前記軸方向へ流れる空気流れの上流側に形成される
請求項1に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記第2枠(60)は、前記第1枠に固定されるための爪部(65)を有し、
前記第1枠(50)は、前記貯水部(33)の水を取り込んで前記水供給部材(80)内へ供給する取込穴(55,57)を有し、
前記爪部(65)は、前記取込穴(55,57)に係合する
請求項2に記載の加湿装置。
【請求項5】
前記取込穴(55,57)は、
前記回転枠(45)の外周縁に沿って複数配置され、かつ、
前記回転枠(45)の回転により最下点に達したとき、前記貯水部(33)内の最低水位よりも低い高さ位置になるように形成される
請求項3に記載の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、空気を加湿する加湿装置を開示する。加湿装置は、貯水部と、回転枠を有する加湿機構とを備える。加湿機構は、回転枠と、回転枠の内部に保持される吸水部材とを有する。回転枠が回転すると、回転枠に設けられる柄杓形状の水供給部材が、回転枠の下側において貯水部内の水中を移動することで水を汲み上げる。水を汲み上げた水供給部材が回転枠の上側に移動すると、水供給部材の内部の水は注ぎ口を介して吸水部材に供給される。吸水部材を回転枠の軸方向に通過する空気には、吸水部材に付着した水により加湿される。加湿された空気は、対象空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の加湿装置では、吸水部材に向かって流れる空気のうち一部は、吸水部材を通過することで加湿されるが、一部は、吸水部材の通風抵抗により吸水部材を通過せずに回転枠の径方向外方へ流れる。この空気が回転枠の枠外へ逃げてしまうと、吸水部材により加湿されないまま吸水部材の下流側の空気と合流する。このような回転枠の枠外へ逃げる空気が多くなると、空気の加湿能力が低下してしまう。
【0005】
本開示は、加湿能力の低下を抑制する加湿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の加湿装置は、
駆動機構(41)によって回転される回転枠(45)と、該回転枠(45)の内部に保持されるとともに前記回転枠(45)の軸方向に空気が通過する吸水部材(70)と、前記吸水部材(70)に供給する水を貯留する貯水部(33)と、
を有する加湿機構(40)を備え、
前記回転枠(45)の外周面には、前記回転枠(45)の内側から通過する空気の流出を制限する制限構造(100)が設けられる。
【0007】
第1の態様では、制限構造(100)により、回転枠(45)の内部から外周面へ抜ける空気流れを制限できる。このため、吸水部材(70)を通過せずに回転枠(45)の外周面から回転枠(45)外へ逃げる空気量を抑えられ、加湿量の低下を抑えることができる。ひいては加湿装置の加湿能力の低下を抑えることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記回転枠(45)は、第1枠(50)と、前記吸水部材(70)を前記第1枠(50)と挟んで固定する第2枠(60)と、前記貯水部(33)から水を汲み上げ、汲み上げた水を前記吸水部材(70)に供給するための水供給部材(80)とをさらに備え、
前記制限構造(100)は、前記第1枠(50)の外周面と、前記第2枠(60)の外周面と、前記水供給部材(80)とにより構成される。
【0009】
第2の態様では、第1枠(50)の外周面、バケット(80)、及び第2枠(60)の外周面によって制限構造(100)が構成される。これにより、回転枠(45)、バケット(80)、及び第2枠(60)を設けても回転枠(45)の外側へ空気の漏れを抑制できる。
【0010】
第3の態様では、第2の態様において、
前記回転枠(45)は、
前記貯水部(33)の水が取り込まれる取込穴(55,57)と、
前記取込穴(55,57)から取り込まれた水を貯留し、前記吸水部材(70)に貯留した水を供給する水供給部材(80)と
を有し、
前記取込穴(55,57)は、前記回転枠(45)において前記軸方向へ流れる空気流れの上流側に形成される。
【0011】
第3の態様では、取込穴(55,57)が空気流れの上流側を向いていることで空気流れに乗った水が飛散することを抑制できる。
【0012】
第4の態様では、第2の態様において、
前記第2枠(60)は、前記第1枠に固定されるための爪部(65)を有し、
前記第1枠(50)は、前記貯水部(33)の水を取り込んで前記水供給部材(80)内へ供給する取込穴(55,57)を有し、
前記爪部(65)は、前記取込穴(55,57)に係合する。
【0013】
第4の態様では、取込穴(55,57)は、貯水部(33)から水の取り込みと、第2枠(60)の固定とを兼用できる。
【0014】
第5の態様では、第3の態様において、
前記取込穴(55,57)は、
前記回転枠(45)の外周縁に沿って複数配置され、かつ、
前記回転枠(45)の回転により最下点に達したとき、前記貯水部(33)内の最低水位よりも低い高さ位置になるように形成される。
【0015】
第5の態様では、貯水部(33)内の水が最低水位にでも取込穴(55,57)は水を取りこむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気清浄機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、空気清浄機の内部を示す概略の構成図である。
【
図3】
図3は、加湿ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、加湿ロータを第1枠側からみ側面図である。
【
図8】
図8は、第1枠を吸水部材側からみた側面図である。
【
図9】
図9は、
図8のB2の一点鎖線で囲んだ部分を拡大した斜視図である。
【
図11】
図11は、
図4のB1で囲んだ部分を拡大し、吸水部材側からみた斜視図である。
【
図12】
図12は、加湿ロータにおける空気流れを説明するための図である。
【
図13】
図13は、制限構造を説明する図である。(A)は、回転枠の外周面の正面図である。(B)は、吸水部材の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。
【0018】
(1)加湿装置の全体構成
加湿装置の全体構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、及び「左」に関する用語は、原則として、
図1の矢印で示す方向を基準とする。
【0019】
本実施形態の加湿装置は、空気を清浄する空気清浄機(10)を構成する。空気清浄機(10)は、対象空間の空気を加湿する。加えて、空気清浄機(10)は、対象空間の空気を清浄する。空気清浄機(10)は、ケーシング(11)と、該ケーシング(11)の内部の空気通路(P)に収容される複数の要素部品を有する。複数の要素部品は、空気流れに向かって順に、プレフィルタ(21)、ファン(22)、放電ユニット(23)、UV照射ユニット(24)、HEPAフィルタ(25)、脱臭フィルタ(26)、及び加湿ユニット(30)を含む。
【0020】
(1-1)ケーシング
図1に示すように、ケーシング(11)は、中空の箱状に形成される。ケーシング(11)は、縦長の直方体状に形成される。ケーシング(11)は、天板(11a)、底板(11b)、前板(11c)、後板(11d)、右側板(11e)、及び左側板(11f)を有する。
【0021】
天板(11a)には、吹出口(12)が形成される。吹出口(12)は矩形状に形成され、天板(11a)のやや後方寄りに形成される。吹出口(12)には、2つのフラップ(13)が設けられる。フラップ(13)は、吹出口(12)の左右両端に亘る板状に形成される。フラップ(13)は、吹出口(12)を開閉したり、吹出空気の風向を調節したりする。
【0022】
天板(11a)には、操作パネル(14)が設けられる。操作パネル(14)は、天板(11a)の前寄りに位置する。ユーザは、操作パネル(14)を操作することにより、空気清浄機(10)の運転モードや各種の設定を入力できる。
【0023】
前板(11c)の下端部には、第1吸込口(15)が形成される。第1吸込口(15)は、ケーシング(11)の左右両端に亘って水平方向に延びている。
【0024】
右側板(11e)には、第2吸込口(16)が形成される。第2吸込口(16)は、矩形状に形成され、右側板(11e)の下部に形成される。右側板(11e)の上部には、開閉蓋(17)が設けられる。開閉蓋(17)は、加湿ユニット(30)のタンク(32)のアクセス口(18)を開閉する。開閉蓋(17)は、その下部を支点として右側に傾くように構成される。開閉蓋(17)の上部には、引出開口(19)が形成される。ユーザは、引出開口(19)に手をかけて開閉蓋(17)の上部を右側(手前側)に引き出す。これにより、開閉蓋(17)の上部が右側に傾き、アクセス口(18)が開放されるこれにより、ユーザは、アクセス口(18)を通じてタンク(32)をケーシング(11)の外部に取り出すことができる。
【0025】
左側板(11f)には、第3吸込口(20)が形成される。第3吸込口(20)は、矩形状に形成され、左側板(11f)の下部に形成される。
【0026】
ケーシング(11)の内部には、空気通路(P)が形成される。第1吸込口(15)、第2吸込口(16)、及び第3吸込口(20)は、空気通路(P)の流入端を構成する。吹出口(12)は、空気通路(P)の流出端を構成する。
【0027】
(1-2)プレフィルタ
図2に示すように、ケーシング(11)の内部には、2つのプレフィルタ(21)が設けられる。これらの一方のプレフィルタ(21)は、第2吸込口(16)の奥側に配置され、他方のプレフィルタ(21)は、第3吸込口(20)の奥側に配置される。プレフィルタ(21)は、空気中の比較的な塵埃を捕集する。
【0028】
(1-3)ファン
ファン(22)は、空気通路(P)の下部に配置される。ファン(22)は、空気通路(P)の空気を搬送する。ファン(22)は、遠心式のファンであり、具体的にはシロッコファンで構成される。ファン(22)は、その駆動軸の軸心方向の両端にそれぞれ吸込部が形成される、両吸込式である。ファン(22)の吹出部は、上方を向く。ファン(22)は、羽根車を駆動するファンモータ(22a)を有する。ファンモータ(22a)は、左側板(11f)寄りに配置される。ファン(22)が運転されると、対象空間の空気が第1吸込口(15)、第2吸込口(16)、及び第3吸込口(20)から空気通路(P)に吸い込まれる。空気通路(P)を流れた空気は、吹出口(12)から対象空間に吹き出される。
【0029】
(1-4)放電ユニット
放電ユニット(23)は、ファン(22)とHEPAフィルタ(25)との間に配置される。放電ユニット(23)は、空気通路(P)における左側板(11f)寄りに配置される。放電ユニット(23)は、放電に伴って、空気を酸化分解するための活性種を生成する。放電ユニット(23)は、線状の放電電極の先端と、板状の対向電極の平面との間で放電を行う。放電ユニット(23)は、放電電極の先端から対向電極に向かって略円錐状の放電領域を形成する、ストリーマ放電を行う。
【0030】
(1-5)UV照射ユニット
UV照射ユニット(24)は、ファン(22)とHEPAフィルタ(25)との間に配置される。UV照射ユニット(24)は、空気通路(P)における左側板(11f)寄りに配置される。UV照射ユニット(24)は、紫外線を照射することで、空気中、あるいは対象部品の表面のウィルスや細菌を殺菌する。UV照射ユニット(24)は、紫外線を発するLEDと、LEDを制御する制御回路とを有する(図示省略)。LEDが照射する紫外線のピーク波長は、255nm以上275nm以下である。LEDは、HEPAフィルタ(25)に向かって紫外線を照射する。このため、紫外線により、HEPAフィルタ(25)を殺菌できる。
【0031】
(1-6)HEPAフィルタ
HEPAフィルタ(25)(High Efficiency Particulate Air Filter)は、UV照射ユニット(24)と脱臭フィルタ(26)との間に配置される。HEPAフィルタ(25)は、その厚さ方向が鉛直方向に対応する板状に形成される。HEPAフィルタ(25)は、静電気力によって粒子を捕集する静電機能を有する。HEPAフィルタ(25)には、抗菌剤が添加される。HEPAフィルタ(25)は、2つ以上のフィルタ材が空気の通過方向に積層される積層構造であってもよい。
【0032】
(1-7)脱臭フィルタ
脱臭フィルタ(26)は、HEPAフィルタ(25)と加湿ユニット(30)との間に配置される。脱臭フィルタ(26)は、その厚さ方向が鉛直方向に対応する板状に形成される。脱臭フィルタ(26)は、空気中の有害物質や臭気物質を吸着する吸着部である。脱臭フィルタ(26)は、空気が通過可能な基材と、基材に担持された活性炭などの吸着材を有する。
【0033】
(1-8)加湿ユニット
加湿ユニット(30)は、脱臭フィルタ(26)と吹出口(12)との間に配置される。加湿ユニット(30)は、空気通路(P)の上部に位置する加湿空間(31)に配置される。加湿ユニット(30)は、空気通路(P)を流れる空気に水を付与する。加湿ユニット(30)は、タンク(32)と、水トレー(33)と、加湿機構(40)とを有する。
【0034】
タンク(32)は、加湿用の水を溜める容器である。タンク(32)は、その内部の水を水トレー(33)に適宜供給する。タンク(32)は、上述したアクセス口(18)を通じてケーシング(11)に出し入れ可能に構成される。
【0035】
水トレー(33)は、タンク(32)から供給された水を貯留する。水トレー(33)は、加湿機構(40)の吸水部材(70)に水を供給するための貯水部を構成する。水トレー(33)は、上側が開放された容器である。
【0036】
(2)加湿機構の全体構成
加湿機構(40)は、空気通路(P)を流れる水を加湿する。加湿機構(40)は、駆動機構(41)と、駆動機構(41)によって駆動される駆動軸(42)と、駆動軸(42)を支持する軸支持部(43)と、駆動軸(42)と連結する加湿ロータ(44)とを有する。加湿ロータ(44)は、加湿空間(31)を一次空間(31a)と二次空間(31b)とに区画する。一次空間(31a)は、加湿ロータ(44)の上流側に形成される。二次空間(31b)は、加湿ロータ(44)の下流側に形成される。
【0037】
図2に示すように、駆動機構(41)は、一次空間(31a)に配置される。本実施形態の駆動機構(41)は、モータによって構成される。駆動軸(42)は、駆動機構(41)から右側に向かって水平に延びる。駆動軸(42)には、加湿ロータ(44)の回転枠(45)の軸心部が連結する。
【0038】
本実施形態の加湿機構(40)には、2つの軸支持部(43)が設けられる。これらの軸支持部(43)のうちの一方は一次空間(31a)に位置し、他方は二次空間(31b)に位置する。各軸支持部(43)は、その上端部において駆動軸(42)を回転可能に支持する。本実施形態の軸支持部(43)は水トレー(33)と一体的に形成される。
【0039】
(3)加湿ロータ
加湿ロータ(44)の構成について、
図2から
図13を参照しながら説明する。なお、以下の説明でいう「軸方向」、「径方向」、「周方向」、「回転方向」は、原則として、回転枠(45)の軸方向、径方向、周方向、及び回転方向をそれぞれ意味する。また、「軸方向」は、
図3に示す回転枠(45)の回転中心である回転軸(X)の延びる方向である。さらに、以下の説明でいう「外面」は、回転枠(45)を径方向外側から回転枠(45)の外周面に向かって見た回転枠(45)の外側部分の面をいい、「内面」は、回転枠(45)を軸心から径方向外方に向かって見た回転枠(45)の内側部分の面をいう。また、回転枠(45)の「外周面」は、回転枠(45)の径方向外側から回転枠(45)の外周面に向かってみた回転枠(45)の外側の面をいう。
【0040】
加湿ロータ(44)は、吸水部材(70)に含まれた水を加湿空間(31)の空気に付与する。加湿ロータ(44)は、駆動機構(41)によって回転される回転枠(45)と、回転枠(45)に保持される吸水部材(70)とを有する。回転枠(45)は樹脂材料で構成される。
図3及び
図4に示すように、回転枠(45)は、第1枠(50)と、第2枠(60)とを有する。吸水部材(70)は、第1枠(50)と第2枠(60)との間に挟み込まれることで、回転枠(45)の内部に保持される。
【0041】
回転枠(45)には、バケット(80)と注ぎ口(92)とが設けられる。バケット(80)は、水トレー(33)の水を汲み上げ、汲み上げた水を吸水部材(70)に供給するための水供給部材である。注ぎ口(92)は、バケット(80)の水を吸水部材(70)に供給する。バケット(80)は、回転枠(45)の回転に伴い水トレー(33)の内部の水に浸かる第1位置と、バケット(80)内の水を注ぎ口(92)を通じて吸水部材(70)に供給する第2位置とを交互に移動するように構成される。
【0042】
(3-1)第1枠
第1枠(50)は、回転枠(45)における空気通路(P)の上流側に位置する。第1枠(50)は、一次空間(31a)側に位置する。第1枠(50)は、駆動軸(42)が固定される第1ボス部(51)と、環状の第1枠本体(52)と、第1ボス部(51)と第1枠本体(52)とを連結する複数の第1リブ(53)とを有する。
【0043】
第1ボス部(51)は、回転枠(45)の中心部に位置する。複数の第1リブ(53)は、第1ボス部(51)から第1枠本体(52)に向かって径方向外方に延びる。複数の第1リブ(53)は、互いに等間隔を置いて周方向に配列される。
【0044】
第1枠本体(52)は、回転枠(45)の回転軸(X)と同軸の円環状に形成される。第1枠(50)には、複数のバケット(80)と、各バケット(80)にそれぞれ対応するガイド部(90)とが設けられる。ガイド部(90)には、注ぎ口(92)が形成される。第1枠本体(52)は、円環の板状の基部(52a)を有する。基部(52a)の厚さ方向は、軸方向に対応する。第1枠本体(52)は、外周縁から一次空間(31a)側へ向かって延びる周壁(58)が形成される。周壁(58)は第1枠本体(52)の全周に亘って設けられる。
【0045】
図5に示すように、第1枠本体(52)は、第1部品(C1)と、第1部品(C1)と別体に構成される複数の第2部品(C2)とで構成される。第1部品(C1)及び各第2部品(C2)は、それぞれ異なる部品からなる樹脂成型品である。第1部品(C1)及び各第2部品(C2)は、金型内においてそれぞれ射出成形によって製造される。第1部品(C1)は、第1枠本体(52)のうち、第2部品(C2)を除いた部分である。第1部品(C1)に各第2部品(C2)が取り付けられることで、第1枠本体(52)が構成される。
【0046】
複数のバケット(80)は、第1部品(C1)に設けられる第1バケット(80A)と、第2部品(C2)によってそれぞれ構成される第2バケット(80B)とを含む。本実施形態の回転枠(45)には、6つの第1バケット(80A)と、6つの第2バケット(80B)が設けられる。これらの数は単なる例示であるが、第1バケット(80A)と第2バケット(80B)の数は同じであるのが好ましい。回転枠(45)では、第1バケット(80A)と第2バケット(80B)とが周方向に交互に配置されるのが好ましい。
【0047】
第2バケット(80B)における第1部品(C1)側の面には、第1爪(56)が設けられる。
図6に示すように、基部(52a)には、各第1爪(56)が係合する第1穴(54)が形成される。各第2バケット(80B)が第1部品(C1)に固定される。
【0048】
基部(52a)には、複数の第2穴(55)が形成される。第2穴(55)は、複数の第1穴(54)のうちの一部に連通する。言い換えると、第1枠本体(52)には、第1穴(54)と第2穴(55)とが一体に形成される。第2穴(55)には、第2枠(60)の第2爪(65)が引っ掛かる。
【0049】
(3-2)第2枠
第2枠(60)は、回転枠(45)における空気通路(P)の下流側に位置する。第2枠(60)は二次空間(31b)側に位置する。第2枠(60)は、駆動軸(42)が固定される第2ボス部(61)と、環状の第2枠本体(62)と、第2ボス部(61)と第2枠本体(62)とを連結する複数の第2リブ(63)とを有する。
【0050】
第2ボス部(61)は、回転枠(45)の中心部に位置する。複数の第2リブ(63)は、第2ボス部(61)から第2枠本体(62)に向かって径方向外方に延びる。複数の第2リブ(63)は、互いに等間隔を置いて周方向に配列される。
【0051】
第2枠本体(62)は、回転枠(45)の回転軸(X)と同軸の円環状に形成される。
【0052】
図4に示すように、第2枠(60)には、複数の押さえ板(64)が設けられる。本実施形態の第2枠(60)には、12の押さえ板(64)が設けられるが、この数は単なる一例である。複数の押さえ板(64)は、第2枠本体(62)から第1枠(50)側に向かって突出する板状に形成される。複数の押さえ板(64)は、周方向に等間隔を置いて配列される。複数の押さえ板(64)は、第2枠(60)の外周縁上に配置される。複数の押さえ板(64)の径方向外方側の面は、第2枠(60)の外周面を構成する。
【0053】
複数の押さえ板(64)は、第2爪(65)が設けられる第1押さえ板(64A)と、第2爪(65)を有さない第2押さえ板(64B)とを含む。第1押さえ板(64A)と第2押さえ板(64B)は、周方向に交互に配置される。第1押さえ板(64A)の第2爪(65)は、第1枠本体(52)に形成された第1穴(54)に引っ掛かる。これにより、第1枠(50)と第2枠(60)とが互いに固定される。
【0054】
第2枠(60)には、複数の保持部(66)が設けられる。本実施形態の第2枠(60)には、12の保持部(66)が設けられるが、この数は単なる一例である。複数の保持部(66)は、第2枠本体(62)の内縁に設けられる。複数の保持部(66)は、周方向に等間隔を置いて配列される。保持部(66)は、回転枠(45)の内部に吸水部材(70)を固定するための部材を構成する。
【0055】
(3-3)吸水部材
吸水部材(70)は、回転枠(45)の回転軸(X)と同軸の円板状に形成される。吸水部材(70)の厚さ方向は、軸方向、あるいは空気流れ方向に対応する。吸水部材(70)は、吸水性を有する樹脂材料で構成される。吸水部材(70)は、円板部(71)と、円板部(71)の外周面から径方向外方に延出するフランジ部(72)とを有する。円板部(71)の中心には、駆動軸(42)が貫通する軸開口(73)が形成される。
【0056】
図7に示すように、吸水部材(70)の軸方向の一端側には、第1通風面(74)が形成され、吸水部材(70)の軸方向の他端側には、第2通風面(75)が形成される。第1通風面(74)は、吸水部材(70)における空気流れの上流側の面に対応する。第2通風面(75)は、吸水部材(70)における空気流れの下流側の面に対応する。
【0057】
吸水部材(70)の円板部(71)の外周面には、溶着部(76)が形成される。溶着部(76)は、吸水部材(70)の外周面の全周に亘って形成される。溶着部(76)は、吸水材料を溶融させた後、この材料を固化することで成形される。一方、吸水部材(70)の第1通風面(74)や第2通風面(75)には、溶着部(76)が形成されてない。このため、吸水部材(70)の第1通風面(74)や第2通風面(75)は、吸水部材(70)の外周面と比べると、空気や水の透過性が高くなっている。
【0058】
図4及び
図7に示すように、吸水部材(70)の円板部(71)の外縁には、フランジ部(72)を挟むようにして一対の溝(77,78)が形成される。言い換えると、一対の溝(77,78)は、第1通風面(74)側の第1溝(77)と第2通風面(75)側の第2溝(78)とで構成される。一対の溝(77,78)は、円板部(71)の外縁から径方向内方に凹んだ凹状に形成される。円板部(71)には、周方向に等間隔を置いて6組の一対の溝(77,78)が設けられる。一対の溝(77,78)の組数は単なる一例である。円板部(71)には、一対の溝(77,78)を連通するように軸方向に延びる挿通穴(79)が形成される。挿通穴(79)は、一対の溝(77,78)の組毎に1つずつ設けられる。一対の溝(77,78)は、溶着部(76)よりも径方向内方に位置する。
【0059】
(3-4)バケットの詳細な構成
図8~
図12に示すバケット(80)は、開口(80a)を有する水容器を構成する。バケット(80)の内部には、水貯め空間(S)が形成される。バケット(80)の開口(80a)は、回転枠(45)の回転方向側を向いている。水貯め空間(S)は、回転方向以外の部分がバケット(80)によって閉塞される。言い換えると、バケット(80)は、回転方向側の一端が開放され、回転方向と逆側の他端が閉塞された有底筒状に形成される。本実施形態のバケット(80)は、回転枠(45)の周方向に延びている。
【0060】
バケット(80)は、第1板部(81)、第2板部(82)、第3板部(83)、及び第4板部(84)を有する。第1板部(81)は、バケット(80)の径方向外方に位置する。第2板部(82)は、バケット(80)の径方向内方に位置する。第3板部(83)は、軸方向における吸水部材(70)側に位置する。第4板部(84)は、軸方向における吸水部材(70)と反対側に位置する。第1バケット(80A)の第4板部(84)は、第1枠本体(52)の基部(52a)の一部によって構成される。第2バケット(80B)の第4板部(84)は、第1爪(56)が第1穴(54)に係合した状態において基部(52a)に接する。
【0061】
第3板部(83)は、第1壁(83a)、第2壁(83b)、及び第3壁(83c)を有する。第1壁(83a)は、第3板部(83)の径方向外方側に形成され、第2壁(83b)は、第3板部(83)の径方向内方側に形成される。第1壁(83a)は、第3壁(83c)よりも軸方向において第4板部(84)から遠い位置にある。第3壁(83c)は、第2壁(83b)の径方向内方の端部と、第1壁(83a)の径方向内方の端部とに連続する。
【0062】
回転軸(X)を通る断面でみる場合に、第1板部(81)及び第2板部(82)は軸方向に延び、第4板部(84)は径方向に延びる。回転軸(X)を通る断面でみる場合に、第1壁(83a)及び第2壁(83b)は径方向に延びる。回転軸(X)を通る断面でみる場合に、第3壁(83c)は、吸水部材(70)と反対側に向かうにつれて回転軸(X)に近づくように傾斜している。「回転軸(X)を通る断面」とは、厳密には、回転軸(X)を通り且つ回転軸(X)と同一方向に延びる仮想平面上の断面を意味する。
【0063】
(3-5)ガイド部の構成
図9、
図10に示すガイド部(90)は、バケット(80)の開口(80a)から流出した水を、吸水部材(70)に案内する部分である。ガイド部(90)は、バケット(80)の開口(80a)と回転方向側に隣り合うように回転枠(45)に設けられる。ガイド部(90)は、バケット(80)の開口(80a)よりも径方向内方寄りに位置する。
【0064】
ガイド部(90)は、径方向内方に凹んだ凹部(91)を有する。凹部(91)の内側には、注ぎ口(92)が形成される。注ぎ口(92)は、吸水部材(70)に向かって開口する。具体的には、注ぎ口(92)は、吸水部材(70)の第1通風面(74)に向かって開口する。第1通風面(74)は、吸水部材(70)における軸方向の端部側の面である。
【0065】
注ぎ口(92)を吸水部材(70)の第1通風面(74)に向かって開口させることで、バケット(80)の水が、吸水部材(70)を通過する空気と接触しやすくなる。このため、吸水部材(70)の加湿能力を向上できる。特に、凹部(91)の底面(97)は、吸水部材(70)に向かって回転軸(X)に近づくように傾斜している(
図7参照)。そのため、第2位置において、水貯め空間(S)内の水は底面(97)をつたって吸水部材(70)へ案内されやすくなる。
【0066】
特に、本実施形態の吸水部材(70)では、その本体である円板部(71)の外周面に溶着部(76)が形成される。仮に注ぎ口(92)が吸水部材(70)の外周面に向かって開口する場合、注ぎ口(92)から流出した水が吸水部材(70)の内部に移動することが、溶着部(76)によって阻害されてしまう。これに対し、注ぎ口(92)を第1通風面(74)に向かって開口させることで、水の吸水部材(70)への移動が溶着部(76)によって阻害されてしまうことを抑制できる。
【0067】
さらに、本実施形態の注ぎ口(92)は、吸水部材(70)の第1通風面(74)側の第1溝(77)に向かって開口する。注ぎ口(92)と、第1溝(77)とは、軸方向に対向する。これにより、注ぎ口(92)を通過した水の一部が、第1溝(77)を通じて吸水部材(70)の内部に入り込みやすくなる。
【0068】
図9及び
図10に示すように、ガイド部(90)は、案内板(99)を有する。案内板(99)は、注ぎ口(92)を挟んでバケット(80)の開口(80a)と径方向の反対側に配置される。案内板(99)には、バケット(80)の開口(80a)と対向する平面(99a)が形成される。案内板(99)の平面(99a)は、回転方向と逆側を向いている。案内板(99)の平面は、第2壁(83b)よりも径方向外側且つ回転方向の奥側に位置する。案内板(99)の平面(99a)には、バケット(80)の開口(80a)から流出した水が衝突する。衝突した水は、径方向から軸方向へと向きを変え、注ぎ口(92)に案内される。
【0069】
(3-6)保持部の構成
図7に示すように、第2枠(60)には保持部(66)が設けられる。保持部(66)は、各注ぎ口(92)に対応して設けられる。保持部(66)は、遮水壁(66a)と、遮水壁(66a)から吸水部材(70)側に突出する固定ピン(66b)と、固定ピン(66b)を囲む固定壁(66c)とを有する。
【0070】
遮水壁(66a)は、吸水部材(70)を挟んで、注ぎ口(92)と軸方向の反対側に位置する。遮水壁(66a)は、吸水部材(70)を介して注ぎ口(92)と対向する。遮水壁(66a)と吸水部材(70)とは軸方向に重なる。
【0071】
遮水壁(66a)における注ぎ口(92)側の面の面積は、注ぎ口(92)の開口面積よりも大きい。遮水壁(66a)は、注ぎ口(92)から吸水部材(70)に向かって供給された水が、吸水部材(70)を通過することを抑制する。これにより、吸水部材(70)の内部に保持される水の量を増大できる。
【0072】
固定ピン(66b)は、遮水壁(66a)における吸水部材(70)側の面の中央に位置する。固定ピン(66b)は、吸水部材(70)側に向かうにつれて外径が小さくなる台形円錐状に形成される。固定ピン(66b)は、吸水部材(70)の挿通穴(79)に挿通される。挿通穴(79)に固定ピン(66b)が嵌合することで、吸水部材(70)が第2枠(60)に固定される。
【0073】
固定壁(66c)は、軸方向に直角な断面でみる場合に、径方向外方が開放されたU字状に形成される。第2枠本体(62)における吸水部材(70)側の面には、軸方向に突出する環状の鍔部(67)が形成される。固定壁(66c)の径方向外方側の2つの端部は、鍔部(67)の内周面に連続する。固定壁(66c)は、吸水部材(70)の第2溝(78)に嵌まる。固定壁(66c)が、吸水部材(70)に嵌合することで、吸水部材(70)が第2枠(60)に固定される。
【0074】
以上のように、遮水壁(66a)には、固定部としての、固定ピン(66b)及び固定壁(66c)が設けられる。遮水壁(66a)は、吸水部材(70)の水の通過を抑制する部材だけでなく、吸水部材(70)を固定するための部材を兼用する。
【0075】
(3-7)吸水口
図8に示すように、回転枠(45)は、水トレー(33)の水が取り込まれる取込穴(55,57)を有する。取込穴(55,57)は、取り込んだ水をバケット(80)内に供給する。取込穴(55,57)は、回転枠(45)において、軸方向に流れる空気流れの上流側に形成される。具体的に、取込穴(55,57)は、第1枠本体(52)の基部(52a)に設けられる複数の第2穴(55)及び複数の第3穴(57)である。第3穴(57)は、第1バケット(80A)に対応する。第2穴(55)は、第2バケット(80B)に対応する。第2穴(55)は、第2バケット(80B)に水を取り込む取込穴と、第2枠(60)の第2爪(65)が引っ掛かる係合穴とを兼用する。
【0076】
第2穴(55)は、軸方向からみる場合に、矩形状に形成される。第3穴(57)は、軸方向からみる場合に、円形状に形成される。第2穴(55)は、第2バケット(80B)の開口(80a)よりも回転方向の前側に位置する。
図9及び
図10に示すように、第3穴(57)は、第1バケット(80A)の開口(80a)よりも回転方向の前側に位置する。
【0077】
第2穴(55)及び第3穴(57)は、回転枠(45)の回転により最下点に達したとき、水トレー(33)の最低水位よりも低い高さ位置になるように配置される。具体的に、第2穴(55)及び第3穴(57)は、基部(52a)の径方向における中央よりも外周縁寄りに配置される。より具体的には、第2穴(55)及び第3穴(57)それぞれの一部が、回転枠(45)を一次空間(31a)側から見て、周壁(58)の内周面に接するように形成される。
【0078】
第2穴(55)が水トレー(33)内の水中に浸かると、この水が第2穴(55)を通じて第2バケット(80B)の内部に入る。第3穴(57)が水トレー(33)内の水中に浸かると、この水が第3穴(57)を通じて第1バケット(80A)の内部に入る。
【0079】
(4)加湿ロータにおける空気流れのバイパスの課題
図12は、加湿ロータの回転軸を通る断面の模式図である。
図12中の矢印は空気の流れ方向を示す。
図12に示すように、吸水部材(70)には空気に対する通風抵抗があるため、第1通風面(74)に向かって一次空間(31a)を流れる空気の一部は、吸水部材(70)内を通過して加湿される一方、他の一部は、第1通風面(74)上を回転枠(45)の径方向外方に向かって流れる。
【0080】
そのため、回転枠(45)の外周面に回転枠の内外を連通する隙間があると、径方向外方に向かって流れる空気は該隙間を通って回転枠外へ逃げてしまう。このような隙間を流れる空気は、吸水部材(70)を通過しないため加湿されないまま二次空間(31b)側に流出して加湿された空気と合流する。このように隙間を流れる空気が増大すると、加湿機構を通過する空気に対する加湿量が低下し、その結果加湿装置の加湿能力が低下してしまう。
【0081】
これに対して、本実施形態の回転枠(45)の外周面には、回転枠(45)の内側から通過する空気の流出を制限する制限構造(100)が設けられる。本実施形態の制限構造(100)は、空気が通る孔が形成されない回転枠(45)の外周面の構造である。言い換えると、回転枠(45)の外周面において、回転枠(45)の内外を連通する孔が形成されない。以下、本実施形態の制限構造(100)について説明する。
【0082】
(4-1)制限構造
図13に示すように、制限構造(100)は、第1枠(50)の外周面と、第2枠(60)の外周面と、バケット(80)とにより構成される。厳密には、第1枠本体(52)は、第1部品(C1)を構成する第1バケット(80A)と、第2部品(C2)の第2バケット(80B)とを含むため、本実施形態の制限構造(100)は、第1枠本体(52)の外周面と第2枠本体(62)の外周面とにより構成される。なお、第2バケット(80B)は、第1爪(56)が第1穴(54)に引っ掛かることで基部(52a)に固定された状態である。この状態では、第2バケット(80B)の第4板部(84)は、基部(52a)の吸水部材(70)側の面に接している。
【0083】
図13(A)に示すように、回転枠(45)の外周面は、第1枠(50)の外周面と、第2枠(60)の外周面と、第2バケット(80B)の第1板部(81)の外面とを隙間なく組み合わせることで形成される。別の言い方をすると、回転枠(45)の外周面は、第1枠本体(52)と第2枠本体(62)とが互いに嵌め合うことで形成される。これにより、回転枠(45)の外周面には、回転枠(45)の径方向の内側と外側とを連通する孔が形成されない。すなわち、本実施形態の制限構造(100)は、回転枠(45)の外周面である。
【0084】
回転枠(45)の外周面を正面に見て、第1枠本体(52)には、周方向に隣り合う第1バケット(80A)と第2バケット(80B)との間に第1凹部(101)が形成される。12個の第1凹部(101)が回転枠(45)の外周面上に形成される。各第1凹部(101)は同一形状である。第1凹部(101)には、第2枠(60)の押さえ板(64)が嵌合する。
【0085】
具体的に、第1凹部(101)は、周方向に延びる第1底辺部(101a)と、第1底辺部(101a)の両端部から二次空間(31b)側(吸水部材(70)側)に延びる一対の第1側辺部(101b)とを有する。第1底辺部(101a)の長さは、押さえ板(64)の周方向に延びる辺の長さと等しい。各第1側辺部(101b)は、押さえ板(64)の軸方向に延びる辺の長さと等しい。すなわち、第1凹部(101)内に押さえ板(64)が収まった状態において、回転枠(45)の外周面を正面に見ると、第1凹部(101)と押さえ板(64)とが互いに接した状態となる。
【0086】
また、回転枠(45)の外周面を正面に見て、第2枠(60)には、周方向に隣り合う2つの押さえ板(64)の間に第2凹部(102)が形成される。12個の第2凹部(102)が、回転枠(45)の外周上に形成される。各第2凹部(102)は同一形状である。12個の第2凹部(102)には、周方向に第1バケット(80A)と第2バケット(80B)とが順に交互に嵌合する。
【0087】
具体的に、第2凹部(102)は、周方向に延びる第2底辺部(102a)と、第2底辺部(102a)の周方向端部から一次空間(31a)側へ延びる一対の第2側辺部(102b)とを有する。第2底辺部(102a)の長さは、第1バケット(80A)及び第2バケット(80B)の第1板部(81)の外面の周方向の長さと等しい。第2側辺部(102b)の長さは、第1バケット(80A)及び第2バケット(80B)の第1板部(81)の外面の径方向の長さと等しい。すなわち、第2凹部(102)内に第1バケット(80A)及び第2バケット(80B)が収まった状態において、回転枠(45)の外周面を正面に見ると、第2凹部(102)と第1バケット(80A)は互いに接した状態となり、かつ、第2凹部(102)と第2バケット(80B)は互いに接した状態となる。
【0088】
このように、回転枠(45)の外周面は、第2枠本体(62)の押さえ板(64)が第1枠本体(52)の第1凹部(101)に嵌め込まれると共に、第1枠本体(52)のバケット(80)の外面が第2枠本体(62)の第2凹部(102)に嵌め込まれるように形成される。これにより、第1凹部(101)の第1側辺部(101b)(第2凹部(102)の第2側辺部(102b))は、第1通風面(74)に直交する(
図13(B)参照)。そのため、第1通風面(74)上を径方向外方に向かって這う空気は、第1バケット(80A)及び第2バケット(80B)の第2板部(82)の内面や押さえ板(64)の内面に衝突しやすくなって、回転枠(45)の外周面から径方向外方へ空気が逃げにくくなる。
【0089】
(5)運転動作
空気清浄機(10)の運転動作について説明する。
【0090】
(5-1)空気清浄機の基本動作
空気清浄機(10)の運転時には、ファン(22)、放電ユニット(23)、UV照射ユニット(24)、及び加湿ユニット(30)が駆動する。
図2に示すように、対象空間の空気は、第1吸込口(15)、第2吸込口(16)、及び第3吸込口(20)のそれぞれから空気通路(P)に吸い込まれる。第2吸込口(16)及び第3吸込口(20)から吸い込まれた空気は、各プレフィルタ(21)をそれぞれ通過する。プレフィルタ(21)は、空気中の比較的大きな塵埃を捕集する。
【0091】
プレフィルタ(21)を通過した空気は、放電ユニット(23)及びUV照射ユニット(24)の周辺を通過する。放電ユニット(23)が発生した活性種により、空気中の臭気成分や有害成分が酸化分解される。UV照射ユニット(24)が照射した紫外線により、空気中のウィルスや細菌が殺菌される。
【0092】
その後、空気はHEPAフィルタ(25)、脱臭フィルタ(26)を順に通過した後、加湿空間(31)を流れる。加湿空間(31)の空気は、加湿ロータ(44)を軸方向に通過する。この際、吸水部材(70)の水が空気中に付与される。加湿ロータ(44)で加湿された空気は、吹出口(12)から対象空間へ供給される。
【0093】
(5-2)加湿ユニットの動作
上述した空気清浄機(10)の運転時には、加湿ユニット(30)が次の動作を行う。
【0094】
駆動機構(41)は、駆動軸(42)を回転させる。これにより、加湿ロータ(44)が回転軸(X)を中心として回転する。回転枠(45)が回転すると、バケット(80)は回転軸(X)の軸周りを旋回する。バケット(80)が回転枠(45)の下側に移動し、水トレー(33)の水中に入ると、バケット(80)の水貯め空間(S)に水が入り込む。バケット(80)が上方に移動して水トレー(33)の水中から出ると、バケット(80)の水貯め空間(S)に水が汲み上げられる。
【0095】
バケット(80)がさらに上方に移動して回転枠(45)の上端よりも手前側の所定の第1角度位置に至ると、水貯め空間(S)の水が開口(80a)に向かって流れ落ち始める。
【0096】
回転枠(45)がさらに回転すると、バケット(80)の開口(80a)を通過した水が、ガイド部(90)により注ぎ口(92)に案内される。具体的には、ガイド部(90)では、開口(80a)を通過した水が底面(97)に沿って注ぎ口(92)に送られる。注ぎ口(92)を通過した水は、吸水部材(70)の第1通風面(74)から吸水部材(70)の内部に供給される。吸水部材(70)の水は、加湿空間(31)を流れる空気に付与される。
【0097】
回転枠(45)がさらに回転すると、バケット(80)が回転枠(45)の下側に移動し、水トレー(33)の水中に再び入る。以上のような動作が連続的に繰り返される。
【0098】
(6)実施形態の効果
(6-1)効果1
本実施形態では、回転枠(45)の外周面には、回転枠(45)の内側から通過する空気の流出を制限する制限構造(100)が設けられる。
【0099】
制限構造(100)により、回転枠(45)の内部から外周面へ抜ける空気流れを制限できる。このため、吸水部材(70)を通過せずに第1通風面(74)上を回転枠(45)の径方向外方へ向かう空気が回転枠(45)の外周面から漏れることを抑えることができる。このように、加湿ロータ(44)を通過する空気への加湿量の低下を抑えることができるため、空気清浄機(10)の加湿能力の低下を抑制できる。
【0100】
(6-2)効果2
本実施形態では、制限構造(100)は、第1枠(50)の外周面と、第2枠(60)の外周面と、第2バケット(80B)とにより構成される。
【0101】
第1枠(50)の外周面、第2バケット(80B)及び第2枠(60)の外周面が、フラットになるように互いに組み合わせることで回転枠(45)の外周面が形成される。このことで、回転枠(45)の外周面には、回転枠(45)の内側と外側とを連通する隙間の形成が抑制される。
【0102】
(6-3)効果3
本実施形態では、第2穴(55)及び第3穴(57)(取込穴)は、回転枠(45)において軸方向へ流れる空気流れの上流側に形成される。第2穴(55)及び第3穴(57)が空気流れの上流側を向いていることで、第2穴(55)及び第3穴(57)に流入する水が空気流れに乗って、空気清浄機(10)内に飛散することを抑制できる。これにより、飛散した水が例えば電気部品等に付着することが抑制され、空気清浄機(10)の故障を抑制できる。
【0103】
(6-4)効果4
本実施形態では、第2爪(65)は、第2穴(55)(取込穴)に係合する。第2穴(55)は、水トレー(33)から水の取り込みと、第2枠(60)の固定とを兼用できる。
【0104】
(6-5)効果5
本実施形態では、回転枠(45)の外周縁に沿って複数配置され、かつ、回転枠(45)の回転により最下点に達したとき、水トレー(33)内の最低水位よりも低い高さ位置になるように形成される。これにより、水トレー(33)内の水が最低水位にでも第2穴(55)及び第3穴(57)は水を取りこむことができる。これにより、水トレー(33)が最低水位であっても、バケット(80)内に水を供給でき、ひいては吸水部材(70)への水の供給不足を抑えることができる。
【0105】
(7)その他の実施形態
制限構造(100)は、回転枠(45)の外周面において、該回転枠(45)の内外側を通風する空間が形成されないように構成されていればよい。制限構造(100)は、回転枠(45)の外周面が封止されていてもよい。例えば、制限構造(100)は、回転枠(45)の外周面をシール部材で覆われていてもよい。
【0106】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0107】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上に説明したように、本開示は、加湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0109】
33 水トレー(貯水部)
40 加湿機構
41 駆動機構
45 回転枠
50 第1枠
55,57 取込穴
60 第2枠
65 第2爪(爪部)
70 吸水部材
80 バケット(水供給部材)
100 制限構造