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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142130
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】集音器
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 7/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B7/04 D
A61B7/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054153
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】福田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】原澤 絵美子
(57)【要約】
【課題】高い感度で音を検知することができる集音器を提供する。
【解決手段】集音器100は、集音空間19を形成する凹部10を有する集音容器1と、集音容器1で集音した音波が伝達される伝達空間28を有し、集音容器1に接続された伝達部2と、を備え、伝達部2は、音波を共鳴させる共鳴空間39を有する共鳴部3を有し、伝達部2の音響インピーダンスは、5.0×10(Pa・s/m)以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集音空間を形成する凹部を有する集音容器と、
前記集音容器で集音した音波が伝達される伝達空間を有し、前記集音容器に接続された伝達部と、を備え、
前記伝達部は、前記音波を共鳴させる共鳴空間を有する共鳴部を有し、
前記伝達部の音響インピーダンスは、5.0×10(Pa・s/m)である集音器。
【請求項2】
前記伝達空間は、前記集音空間よりも大きい請求項1に記載の集音器。
【請求項3】
前記共鳴空間は、前記集音空間よりも大きい請求項2に記載の集音器。
【請求項4】
前記伝達部は、
内部空間が前記集音容器で集音した音波が伝達される伝達空間とされる伝達管部と、
前記伝達空間と、前記共鳴空間とを連通させる空間を形成する連結管部と、を有し、
前記共鳴空間は、前記伝達空間よりも大きい請求項2又は3に記載の集音器。
【請求項5】
前記連結管部は、管長が可変である請求項4に記載の集音器。
【請求項6】
前記共鳴部は、前記共鳴空間の容積が可変である請求項4に記載の集音器。
【請求項7】
前記伝達空間内に配置され、前記伝達空間内の音波に対応する電気信号を出力するマイクと、
前記電気信号に基づいて、前記管長を変更する制御部と、を更に備え、
前記電気信号は、前記音波の周波数情報と音圧情報とを含む請求項5に記載の集音器。
【請求項8】
前記伝達空間内に配置され、前記伝達空間内の音波に対応する電気信号を出力するマイクと、
前記電気信号に基づいて、前記共鳴空間の容積を変更する制御部と、を更に備え、
前記電気信号は、前記音波の周波数情報と音圧情報とを含む請求項6に記載の集音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集音器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子聴診器が開示されている。この電子聴診器は、体表に接触させて音を採取するためのチェストピースを備えている。電子聴診器は、1つ以上のハイパスフィルタを有し、遮断周波数の最も高いハイパスフィルタの遮断周波数が300Hz以上かつ遮断特性が12dB/OCT以上である。この電子聴診器では、チェストピースの共振周波数以上の帯域において遮断周波数以下の感度を遮断周波数付近の感度より小さくすることができ、遮断周波数以上の聴診音が、遮断周波数以下の音に邪魔されることなく明瞭に聴取できるとされている。
【0003】
特許文献2には、聴診器が開示されている。この聴診器では、チェストピースが、少なくとも1つの集音マイクロホンを装着した本体を具備し、該本体が、少なくとも約3グラム/ccの密度の高比重コンパウンドを含んで構成されている。特許文献2では、この密度が高いと、ベル型マイクロホンの音集結品質を向上させるのに特に有益であるとされている。また、特許文献2では、関心のある臓器が発する特定の音に焦点を合わせ、医師が正常な音と病的な音を鑑別する、というニーズが示されている。
【0004】
特許文献3には、音検出システム及び情報処理装置が開示されている。音検出システムは、生体の内部の音を検出し、検出した音に基づく音信号を出力可能な複数のマイク(集音器の一例)と、情報処理装置と、を備えている。情報処理装置は、複数のマイクから音信号を取得する取得部と、制御部と、出力部と、を備えている。制御部は、取得部が取得した音信号に基づいて、所定の生体部位の位置である第1の位置を特定し、第1の位置と所定の相対的な位置関係にある第2の位置を推定し、第2の位置に対して感度が高くなるように、複数のマイクの指向性を制御する。出力部は、第2の位置に対して感度が高くなるように複数のマイクの指向性が制御された状態で取得部が取得した音信号に基づく情報を出力する。特許文献3では、具体例として、音検出システムの6個のマイクを人体の表面に装着して生体の内部の音の一例である心音を検出する場合を開示している。
【0005】
非特許文献1には、胸部表面の微細振動計測による心臓運動の可視化および心音源の位置標定の研究結果が開示されている。非特許文献1では、被験者の胸部表面に63個のセンサを配置して、心音の音圧分布を求めるなどする事例が開示されている。この事例では、センサは、20mm間隔の正方格子状に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-083372号公報
【特許文献2】特開2005-523763号公報
【特許文献3】国際公開第2021-131585号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】胸部表面の微細振動計測による心臓運動の可視化および心音源の位置標定、実験力学、2017年、17巻、1号、p.45-51、坂井ら、[令和4年12月27日検索]、インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsem/17/1/17_45/_pdf/-char/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されるように、聴診器のような集音器では、生体内の音(以下、生体音と記載する)などの、検知又は検出対象の音を感度良く検出することが望まれる。
【0009】
また、特許文献2に記載されるように、聴診器のような集音器において、対象とするもの(生体音であれば、診断や観察対象とする臓器)が発する特定の音の感度を高めることが望まれる。
【0010】
特許文献3や非特許文献1に開示されるように、複数の集音器を人体のような生体の表面(以下、体表面と記載する)に装着して生体音を検知や検出する場合、例えば、集音器を隣接して体表面に配置する必要がある場合がある。この場合に、隣接する集音器の間隔を小さくしようとすると、集音器、特に、体表面に当接させるチェストピースを小型化する必要がある。例えば非特許文献1に開示された事例では、少なくとも直径20mmよりもチェストピースを小型化する必要がある。しかし、チェストピースを小型化すると、感度が低下し、生体音を適切に検知などできなくなる場合がある。そのため、チェストピースなど、集音器を小型化しつつ、感度を高めることが望まれる。
【0011】
さて、集音器の感度を高めるためには、特許文献1に開示されるように、不要な周波数の音をフィルタしたり、特許文献2に開示されるように、集音器の素材を変更したりするような方法が知られている。しかし、これらの方法のみでは、チェストピースなど、集音器を小型化した場合に、十分な感度を得られない場合がある。
【0012】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、高い感度で音を検知することができる集音器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る集音器は、
集音空間を形成する凹部を有する集音容器と、
前記集音容器で集音した音波が伝達される伝達空間を有し、前記集音容器に接続された伝達部と、を備え、
前記伝達部は、前記音波を共鳴させる共鳴空間を有する共鳴部を有し、
前記伝達部の音響インピーダンスは、5.0×10(Pa・s/m)以上である。
【0014】
本発明に係る集音器は、更に、
前記伝達空間は、前記集音空間よりも大きい。
【0015】
本発明に係る集音器は、更に、
前記共鳴空間は、前記集音空間よりも大きい。
【0016】
本発明に係る集音器は、更に、
前記伝達部は、
内部空間が前記集音容器で集音した音波が伝達される伝達空間とされる伝達管部と、
前記伝達空間と、前記共鳴空間とを連通させる空間を形成する連結管部と、を有し、
前記共鳴空間は、前記伝達空間よりも大きい。
【0017】
本発明に係る集音器は、更に、
前記連結管部は、管長が可変である。
【0018】
本発明に係る集音器は、更に、
前記共鳴部は、前記共鳴空間の容積が可変である。
【0019】
本発明に係る集音器は、更に、
前記伝達空間内に配置され、前記伝達空間内の音波に対応する電気信号を出力するマイクと、
前記電気信号に基づいて、前記管長を変更する制御部と、を更に備え、
前記電気信号は、前記音波の周波数情報と音圧情報とを含む。
【0020】
本発明に係る集音器は、更に、
前記伝達空間内に配置され、前記伝達空間内の音波に対応する電気信号を出力するマイクと、
前記電気信号に基づいて、前記共鳴空間の容積を変更する制御部と、を更に備え、
前記電気信号は、前記音波の周波数情報と音圧情報とを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い感度で音を検知することができる集音器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態に係る集音器の要部の構成の説明図である。
図2】第一実施形態に係る集音器の全体構成の説明図である。
図3】集音容器の正面図である。
図4】連結管の管長を長くした状態の集音器の説明図である。
図5】第二実施形態に係る集音器の要部の構成の説明図である。
図6】共鳴空間の容積を増大させた状態の集音器の説明図である。
図7】第三実施形態に係る集音器の要部の構成の説明図(斜視図)である。
図8】伝達管部の管長を調節可能とした場合の説明図(斜視図)である。
図9】伝達管部の管長を短くした場合の説明図(斜視図)である。
図10】第三実施形態に係る集音器の変形例の説明図(斜視図)である。
図11】第三実施形態に係る集音器の変形例の説明図(斜視図)である。
図12】伝達管部の別の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る集音器について説明する。
【0024】
(第一実施形態)
図1には、本実施形態に係る集音器100を示している。まず、集音器100の概要を説明する。集音器100は、集音空間19を形成する凹部10を有する集音容器1と、集音容器1で集音した音波が伝達される伝達空間29を有し、集音容器1に接続された伝達部2と、を備えている。伝達部2は、音波を共鳴させる共鳴空間39を有する共鳴部3を有する。伝達部2の音響インピーダンスは、5.0×10(Pa・s/m)以上である。
【0025】
この集音器100では、高い感度で音を検知することができる。
【0026】
以下、集音器100について詳述する。
【0027】
図1に示す集音器100は、上述のごとく、集音容器1と、共鳴部3を有する伝達部2とを備えている。集音器100では、検知又は検出したい周波数帯の音を、伝達部2及び共鳴部3で共鳴させて、感度良く検知することができる。集音器100は、一例として生体の体内の音の検知に用いる。生体の体内の音の検知は、例えば、生体の診断や観察のために行う。具体例は、臓器が発する音による臓器の診断や観察である。
【0028】
本実施形態において、伝達部2は、その内部空間が、集音容器1で集音した音波が伝達される伝達空間29とされる伝達管部20と、共鳴空間39が形成された容器としての共鳴部3とを有する。伝達空間29伝達空間29内には、伝達空間29内の音波に対応する電気信号を出力するマイク5が配置されている。
【0029】
集音器100は、図2に示すように、上述の集音容器1、伝達部2、共鳴部3、マイク5に加えて、後述するように、さらに、伝達部2及び共鳴部3で共鳴させる音の周波数帯を変更させるための駆動部40や、マイク5が出力した電気信号に基づいた指令を駆動部40などに送出する制御部91を備えてよい。
【0030】
図2に示すように、集音容器1は、いわゆるチェストピースである。集音容器1は、凹部10の側を人などの生体の表面(体表面Hと称する)に押し当てて使用される。以下の説明では、集音容器1における、人の身体に押し当てられる側、すなわち、凹部10が形成されている側を表と称する。集音容器1の背面側からは、伝達部2である伝達管部20が延出している。
【0031】
集音容器1は、金属や樹脂などで形成してよい。集音容器1は、音響インピーダンスの高い材料で形成されるとよい。集音容器1を形成する材料の音響インピーダンスは、5.0×10(Pa・s/m)以上である。これにより、集音器100による音を検知する際の感度の低下を防止することができる。
【0032】
集音容器1の表側は、図3に示すように、例えば正面視で円形状に形成されてよい。集音容器1の表側を正面視で見た場合における外周部分は、体表面Hに押し当てられる押圧面部11が形成されている。押圧面部11は例えば円環状に形成されてよく、後述する凹部10を囲うように配置される。
【0033】
凹部10は、正面視で見た場合、例えば円形状に形成されている。凹部10は、集音容器1の表側の中央部分に配置されてよい。凹部10は、押圧面部11の内側に配置されている。凹部10は、押圧面部11の内周部に隣接して配置されている。凹部10の表面は凹面状に形成されてよい。集音容器1を側面から見た場合、凹部10の断面は、その輪郭が円錐形或いは円弧状に窪んだ窪み形状とされてよい。
【0034】
凹部10は、図1に示すように、その窪み形状により、集音空間19を区画している。本実施形態において、集音空間19は、凹部10の表面から、押圧面部11と面一となる位置までの間の空間である。凹部10は、表側に開放されており、集音空間19は、外部空間と直接連通している。換言すると、集音空間19は、外部空間に隣接している。
【0035】
集音容器1の内部には、集音空間19と伝達管部20の伝達空間29とを連通させる貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、例えば、凹部10の最も深い底部分に配置されてよい。
【0036】
貫通孔12は、円形状の穴でよい。貫通孔12の直径は、例えば、凹部10の直径の10分の1から3分の1とされる。
【0037】
集音容器1は、図2に示すように、表(おもて)面を体表面Hに押し当てて使用される。集音容器1が体表面Hに押し当てられている状態では、押圧面部11と体表面Hとは密に接している。集音器100が体表面Hに押し当てられている状態で、生体音が、体表面Hを介して集音空間19(図1参照)に伝播する。
【0038】
図1に示すように、集音空間19に伝播し、集音空間19で集音された生体音は、貫通孔12を介して伝達空間29に伝播する。
【0039】
ところで、体表面H(図2参照)を介して集音空間19に伝播する生体音の集音空間19内での音圧は、凹部10の開口面積に比例し、集音空間19の空間容積に反比例することが知られている。また、体表面Hを介して集音空間19に伝播する生体音の集音空間19内での音圧は、生体音の伝播に伴う体表面Hの微小な変位量に比例することが知られている。
【0040】
したがって、集音容器1が小型化して凹部10の開口面積が小さくなると、集音空間19内での音圧の変化量が小さくなって、そのままでは集音器100の感度が低下してしまう。しかし、本実施形態に係る集音器100では、後述する伝達部2及び共鳴部3により、生体音が共鳴されて、集音器100の感度の低下を防止し、また、集音器100の感度を高めることができる。
【0041】
伝達部2は、上述の伝達管部20と共鳴部3とに加えて、さらに、伝達管部20から分岐した第一連結管部23を有する。
【0042】
伝達空間29は、伝達管部20の管内の空間である。伝達空間29の容積は、集音空間19の容積よりも大きい。伝達空間29の容積が集音空間19の容積よりも小さいと、集音器100で高い感度で音を検知することが出来ない場合がある。なお、第一連結管部23の管内の空間は、以下の説明において伝達空間29に含まない。
【0043】
伝達部2は、音響インピーダンスの高い材料で形成されるとよい。伝達部2を形成する材料の音響インピーダンスは、5.0×10(Pa・s/m)である。これにより、集音器100による音を検知する際の感度の低下を防止することができる。
【0044】
伝達管部20は、集音容器1の背面側から延出する管状の部材であり、集音容器1と反対側の端部が閉塞した閉塞端部28となっている。図1では、伝達管部20がアルファベットのL字形状に折れ曲がった形状をしており、その折れ曲がり部分から第一連結管部23が延出している場合を示している。伝達管部20の内径は、例えば貫通孔12の直径と同じであると好ましい。
【0045】
第一連結管部23は、その内部空間を介して伝達空間29を共鳴空間39に連通させる管状の部材又は貫通孔を有する部材である。第一連結管部23は、伝達管部20における、集音容器1と閉塞端部28との間から分岐している。
【0046】
共鳴部3は、共鳴空間39が形成された共鳴容器30と、共鳴容器30から延出し、共鳴空間39を伝達空間29に連通させる第二連結管部32と、を有する。本実施形態では、共鳴空間39と伝達空間29とは重複していない。換言すると、共鳴空間39は伝達空間29とは別の空間である。
【0047】
第二連結管部32は、第一連結管部23と連結されることで、その内部空間を介して共鳴空間39を伝達空間29に連通させる管状の部材又は貫通孔を有する部材である。第二連結管部32は、例えば、第一連結管部23と連結される側の端部の外径が、第一連結管部23の内径と同じかやや小さく形成されてよい。
【0048】
本実施形態では、第一連結管部23と第二連結管部32とを連結し、それぞれの管内空間を連通させることで、伝達空間29と共鳴空間39とを連通させている。これにより、伝達空間29に伝播した音が、共鳴空間39に伝播する。図1では、第一連結管部23の管内に、第二連結管部32の端部の一部が挿入されることで、第一連結管部23と第二連結管部32とが連結されて、それぞれの管内空間が連通する場合を例示している。
【0049】
本実施形態において、共鳴容器30と第二連結管部32とを有する共鳴部3及び第一連結管部23は、いわゆるヘルムホルツ共鳴器を構成してよい。すなわち、共鳴空間39がヘルムホルツ共鳴器における空洞部である。また、第二連結管部32と第一連結管部23とが、ヘルムホルツ共鳴器におけるネック部である。これにより、共鳴部3及び第一連結管部23で生体音が共鳴されて、集音器100の感度の低下を防止し、また、集音器100の感度を高めることができる。
【0050】
共鳴空間39の容積は、連結された状態の第一連結管部23及び第二連結管部32の内部空間の容積の合計(有効容積)よりも十分に大きくされることが好ましい。以下の説明では、連結された状態の第一連結管部23及び第二連結管部32を包括して、単に連結管部Rと称する場合がある。また、連結された状態の第一連結管部23及び第二連結管部32の内部空間の容積の合計を、単に、連結管部Rの合計容積と称する場合がある。
【0051】
共鳴空間39の容積は、伝達空間29の容積よりも大きいことが好ましい。共鳴空間39の容積が伝達空間29の容積よりも小さいと、集音器100で高い感度で音を検知することが出来ない場合がある。
【0052】
共鳴空間39の容積は、集音空間19の容積よりも大きいことが好ましい。共鳴空間39の容積が集音空間19の容積よりも小さいと、集音器100で高い感度で音を検知することが出来ない場合がある。
【0053】
共鳴空間39の容積と、連結管部Rの合計容積との比率は、集音器100として検知又は検出したい音の周波数帯に基づいて適宜定めてよい。
【0054】
本実施形態の集音器100では、連結管部Rの合計容積が変更可能となっている。具体的には、第二連結管部32を第一連結管部23の管内に挿入する挿入長さL1を変更することで、連結管部Rの管長を変更可能となっている(すなわち、連結管部Rの管長が可変とされている)。
【0055】
図1では、第一連結管部23に支持されており、且つ、連結管部Rに沿って延在する支持棒41に沿わせて共鳴部3をスライド移動させることで、挿入長さL1を変更可能とする場合を例示している。
【0056】
共鳴部3のスライド移動は、電動モータやシリンダ機構のようなアクチュエータを有し、支持棒41に支持された駆動部40により行ってよい。例えば、駆動部40で共鳴部3を支持し、駆動部40を支持棒41に沿わせてスライド移動させることで、共鳴部3を支持棒41に沿わせて挿入長さL1を変更してよい。これにより挿入長さL1を変更して連結管部Rの合計容積を変更し、共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節することができる。
【0057】
具体的には、図1に示す状態から、図4に示す状態のように、挿入長さL1を浅く(短く)すると、連結管部Rの管長を長くすることができる。連結管部Rの管長を長くすることで、共鳴部3で共鳴する音の周波数帯を低い周波数へ変更することができる。これにより、集音器100において、低い周波数での感度を高めることができる。
【0058】
なお、集音器100において、高い周波数での感度を高めたい場合は、挿入長さL1を深く(長く)するとよい。これにより、連結管部Rの管長を短くし、集音器100において、高い周波数での感度を高めることができる。
【0059】
図1に示すように、マイク5は、伝達空間29内の音波を検知して、この音波に対応する電気信号を出力する変換器である。マイク5は、例えば、圧電素子やコンデンサマイクであってよい。マイク5は、伝達管部20の伝達空間29内であって、閉塞端部28の近傍に配置するとよい。マイク5が出力する電気信号には、伝達空間29内の音波の周波数に係る情報(周波数情報)と、音圧に係る情報(音圧情報)とが含まれてよい。マイク5が出力する電気信号には、具体的には、伝達空間29内の音波の、周波数ごとの音圧に係る情報が含まれてよい。
【0060】
図2に示す制御部91は、プロセッサやプロセッサ及び所定のプログラムでソフトウェア的に実現されてよい。制御部91は、マイク5が出力する電気信号に基づいて、共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節する機能を有してよい。また、制御部91は、マイク5が出力する電気信号に基づいて、伝達空間29(図1参照)内の音波に係る情報、すなわち、集音器100が検知した音の情報を、出力部92に出力させる機能を有してよい。
【0061】
制御部91は、マイク5が出力した電気信号に基づいて、集音器100が検知した音の情報を、モニタ、プリンタ、スピーカなどの出力部92に出力させることができる。出力部92がモニタやプリンタの場合、制御部91は、マイク5が出力する電気信号を、例えば波形としてこれらに出力させてよい。出力部92がスピーカの場合、制御部91は、マイク5が出力する電気信号を音に再変換して出力させてよい。
【0062】
制御部91は、予め検知又は検出したい音の周波数帯(以下、目標周波数と称する)を入力されるなどすることにより、共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節してよい。本実施形態では、共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯が目標周波数に対応するように、制御部91が駆動部40を駆動させて、共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節してよい。
【0063】
集音器100は、例えば、生体音の一例である心音の検知に用いてよい。集音器100を心音の検知に用いる場合、例えば、心臓の血管の狭窄によって生じる音(狭窄部分での血液の乱流発生によって生じる音)や、心臓の弁の音の検知に用いてよい。
【0064】
例えば、冠動脈の狭窄によって発生する乱流音は、数100Hzから1000Hz付近の周波数成分の音圧が高いことが知られている。集音器100では、共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯をこの数100Hzから1000Hz付近の周波数と重複させてよい。
【0065】
集音器100は、2個以上を並べて用いてよい。この場合、複数の集音器100で一つの制御部91を共有してもよい。
【0066】
上述のように、集音器100は、高い感度で音を検知することができる。そのため、集音器100は、集音容器1を小型化しても、所望の感度(例えば、臓器の診断や観察に必要な感度)での音の検知を実現することができる。
【0067】
(第二実施形態)
上記第一実施形態では、集音器100が、連結管部Rの合計容積を変更して共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節する場合を説明した。第二実施形態は、連結管部Rの合計容積を変更することに変えて、共鳴空間39の容積を変更して共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節する点で第一実施形態と異なり、その他は同様である。以下では、第一実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は適宜省略する。
【0068】
図5には、本実施形態に係る集音器100を示している。
【0069】
本実施形態に係る集音器100では、第一連結管部23の内径と第二連結管部32の内径とが同じであってもよい。
【0070】
共鳴容器30は、筒状の部分の一方の端部が閉じた、有底筒状の第一容器61と有底筒状の第二容器62とで構成されてよい。第一容器61からは、第二連結管部32が延出している。図5に示す例では、第二容器62の筒状の部分の内径が第一容器61の筒部分の外径と同じかやや大きく、第二容器62の筒状の部分が第一容器61の筒部分の外側に嵌め込まれている。本実施形態では、第二容器62の筒状の部分が第一容器61の筒部分の外側に嵌め込まれている状態における、第一容器61と第二容器62とで区画される領域が、共鳴空間39である。
【0071】
本実施形態の集音器100では、共鳴空間39の容積が可変である。具体的には、第二容器62の筒状の部分を第一容器61の筒部分の外側に嵌め込む深さである嵌め込み深さL2を変更することで、共鳴空間39の容積を変更可能となっている。
【0072】
例えば、駆動部40により、第二容器62を支持棒41に沿わせてスライド移動させて嵌め込み深さL2を変更し、これにより共鳴空間39の容積を変更して共鳴部3で共鳴させることが可能な音の周波数帯を調節することができる。
【0073】
具体的には、図5に示す状態から、図6に示す状態のように、嵌め込み深さL2を浅く(短く)すると、共鳴空間39の容積を増大させて、共鳴部3で共鳴する音の周波数帯を低い周波数へ変更することができる。これにより、集音器100において、低い周波数での感度を高めることができる。
【0074】
なお、集音器100において、高い周波数での感度を高めたい場合は、嵌め込み深さL2を深く(長く)するとよい。
【0075】
(第三実施形態)
上記第一実施形態では、伝達部2が共鳴部3を有する場合を説明した。第三実施形態は、伝達部2が共鳴部3及び共鳴部3に関連するものを有しない点で第一実施形態と異なり、その他は同様である。以下では、第一実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は適宜省略する。
【0076】
図7には、本実施形態に係る集音器100を示している。集音器100は、集音容器1と、伝達管部20を有する伝達部2と、を備えている。
【0077】
本実施形態において、伝達管部20は、たとえば、凹部10の直径の以上、好ましくは2倍以上の管長を有する。これにより、伝達管部20の伝達空間29(図1参照)内に伝播した音波を、伝達空間29内における気柱共鳴により共鳴させることができる。つまり、伝達管部20を、いわゆる共鳴管とする。これにより、集音器100の感度の低下を防止し、また、集音器100の感度を高めることができる。すなわち、本実施形態では、伝達空間29を共鳴空間として機能させてよい。なお、図7では、伝達管部20をアルファベットのU字形状に二回折り曲げて、伝達管部20の配置スペースを少なくしている。
【0078】
伝達管部20の管長は、集音器100として検知又は検出したい音の周波数帯に基づいて適宜定めてよい。例えば、伝達管部20の管長を長くすると、伝達空間29で共鳴する音の周波数帯を低い周波数へ変更することができる。これにより、集音器100において、低い周波数での感度を高めることができる。
【0079】
なお、集音器100において、高い周波数での感度を高めたい場合は、伝達管部20の管長を短くするとよい。
【0080】
伝達管部20の管長の変更は、例えば、伝達管部20を2つ以上の管部に分割し、伝達管部20が所望の長さになるように、これら管部を必要個数だけ組み合わせるようにすることができる。また、伝達管部20の一部を二重管にしてスライド移動可能とさせて、このスライド移動により伝達管部20の管長を所望の長さに調節可能とすることができる。
【0081】
例えば、図8及び図9に示す伝達管部20は、集音容器1から延出する第一伝達管部71と、第一伝達管部71に嵌る第二伝達管部72と、第二伝達管部72に連なる第三連結管部73とを有する。第二伝達管部72は、例えば、第一伝達管部71の一部が第二伝達管部72の管内に挿入された状態、すなわち、第一伝達管部71の外側に嵌る状態とされる。この伝達管部20では、第二伝達管部72が第一伝達管部71に嵌る嵌め込みの深さを変更することで、伝達管部20の管長を所望の長さに調節可能である。なお、図9は、図8の状態よりも、第二伝達管部72が第一伝達管部71に嵌る嵌め込みの深さを深く(長く)して、伝達管部20の管長を、図8に示す状態よりも短くした場合を示している。
【0082】
(第三実施形態の変形例)
図7では、伝達管部20をアルファベットのU字形状に二回折り曲げて、伝達管部20の配置スペースを少なくしている場合を説明した。しかし、伝達管部20の配置スペースを少なくする工夫は、伝達管部20をアルファベットのU字形状に折り曲げる場合に限られない。
【0083】
例えば、図10に示すように、伝達管部20を渦巻き状に形成して伝達管部20の配置スペースを少なくすることもできる。また、図11に示すように、伝達管部20をらせん状に形成して、伝達管部20の配置スペースを少なくすることもできる。伝達管部20の配置スペースを少なくするために、伝達管部20をこれら例示以外の形状に形成することも許容される。
【0084】
以上のようにして、高い感度で音を検知することができる集音器を提供することができる。
【0085】
〔別実施形態〕
(1)上記第一実施形態では、伝達部2が共鳴部3を有する場合を説明した。また、伝達管部20は、集音容器1と閉塞端部28との間から分岐した第一連結管部23を有することを説明した。また、共鳴部3は、共鳴空間39が形成された共鳴容器30と、共鳴容器30から延出し、共鳴空間39を伝達空間29に連通させる第二連結管部32と、有することを説明した。そして、第一連結管部23と第二連結管部32とが連結されて、それぞれの管内空間が連通することで、伝達空間29と共鳴空間39とが連通している状態とされる場合を説明した。そして、第一実施形態では、共鳴空間39と伝達空間29とは重複していないことを説明した。また、上記第三実施形態では、伝達空間29を共鳴空間として機能させてよいことを説明した。しかし、伝達空間29は、共鳴空間と厳密に区別する必要もなく、また、共鳴空間を伝達空間29と完全に重複させることも要しない。
【0086】
たとえば、図12に示す伝達部2のごとく、伝達管部20の一部を拡径させて共鳴容器30とし、伝達管部20の管内空間の一部を共鳴空間として機能させることも許容される。
【0087】
(2)上記第一実施形態では、連結管部Rの管長が可変とされている場合を説明したが、連結管部Rの管長は固定されていてもよい。連結管部Rの管長が固定されている場合であっても、例えば、第二連結管部32の長さが異なる共鳴部3をあらかじめいくつか用意し、検出したい音の周波数帯に基づいて適切な管長に設定された第二連結管部32を有する共鳴部3を適宜選択して用いてもよい。
【0088】
(3)上記第二実施形態では、共鳴空間39の容積が可変とされている場合を説明したが、共鳴空間39の容積は固定されていてもよい。共鳴空間39の容積が固定されている場合であっても、例えば、共鳴空間39の容積が異なる共鳴部3をあらかじめいくつか用意し、検出したい音の周波数帯に基づいて適切な容積に設定された共鳴空間39を有する共鳴部3を適宜選択して用いてもよい。
【0089】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、集音器に適用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 :集音容器
10 :凹部
100 :集音器
11 :押圧面部
12 :貫通孔
19 :集音空間
2 :伝達部
20 :伝達管部
23 :第一連結管部
28 :閉塞端部
29 :伝達空間
3 :共鳴部
30 :共鳴容器
32 :第二連結管部
39 :共鳴空間
40 :駆動部
41 :支持棒
5 :マイク
61 :第一容器
62 :第二容器
71 :第一伝達管部
72 :第二伝達管部
73 :第三連結管部
91 :制御部
92 :出力部
H :体表面
L1 :挿入長さ
L2 :嵌め込み深さ
R :連結管部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12