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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014215
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116881
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中武 孝行
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD12
3D023BE36
3D023BE38
(57)【要約】
【課題】被取付部に対する組み付け荷重と被取付部からの取り外しにくさとを個別に設定可能な車両用内装材を提供する。
【解決手段】車両用内装材1は、内装材本体部3と、内装材本体部3から突出して被取付部の開口部に挿入される取付部7と、を備え、取付部7の開口部への係止により被取付部に取り付けられる。取付部7は、内装材本体部3から所定方向に延出する板状部12と、板状部12に所定方向に沿って形成された対をなすスリット17と、スリット17間に位置して所定方向に延び、板状部12の厚み方向に弾性変形可能な係止基部18と、を有する。係止基部18は、板状部12の厚み方向に隆起して、開口部に対し係止基部18の基端部側が干渉することで開口部に係止保持される突起部20を備えるとともに、突起部20に対して基端部側と先端部側とに断面積が異なる部分がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装材本体部と、この内装材本体部から突出して被取付部の開口部に挿入される取付部と、を備え、この取付部の前記開口部への係止により前記被取付部に取り付けられる車両用内装材であって、
前記取付部は、
前記内装材本体部から所定方向に延出する板状部と、
この板状部に前記所定方向に沿って形成された対をなすスリットと、
これらスリット間に位置して前記所定方向に延び、前記板状部の厚み方向に弾性変形可能な係止基部と、を有し、
前記係止基部は、前記板状部の厚み方向に隆起して、前記開口部に対し前記係止基部の基端部側が干渉することで前記開口部に係止保持される突起部を備えるとともに、この突起部に対して基端部側と先端部側とに断面積が異なる部分がある
ことを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
係止基部は、突起部よりも基端部側に断面積が最小の最小断面領域がある
ことを特徴とする請求項1記載の車両用内装材。
【請求項3】
最小断面領域は、係止基部の他部よりも幅寸法が小さい
ことを特徴とする請求項2記載の車両用内装材。
【請求項4】
最小断面領域は、係止基部の他部よりも厚み寸法が小さい
ことを特徴とする請求項2または3記載の車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部の開口部への係止により被取付部に取り付けられる車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に用いられる合成樹脂製等の内装材において、取付爪を備え、被取付部の開口部に取付爪を挿入係止することで、被取付部に取り付けられるものが知られている。このような取付爪は、内装材本体部から延出する板状部に一対のスリットを形成し、これらスリット間の板状の部分に、開口部の縁部に係止される突起部が隆起されて形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-19231号公報 (第5頁、図3-5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような取付爪の場合、スリットの長さを長くすることにより、スリット間の板状の部分を弾性変形しやすくして、取り付けに要する挿入力を低減させることが可能となっている。しかしながら、それに応じて取付爪の取り外しに要する抜去力も低減することとなる。したがって、挿入力と抜去力とを個別に設定可能とすることが求められている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被取付部に対する組み付け荷重と被取付部からの取り外しにくさとを個別に設定可能な車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用内装材は、内装材本体部と、この内装材本体部から突出して被取付部の開口部に挿入される取付部と、を備え、この取付部の前記開口部への係止により前記被取付部に取り付けられる車両用内装材であって、前記取付部は、前記内装材本体部から所定方向に延出する板状部と、この板状部に前記所定方向に沿って形成された対をなすスリットと、これらスリット間に位置して前記所定方向に延び、前記板状部の厚み方向に弾性変形可能な係止基部と、を有し、前記係止基部は、前記板状部の厚み方向に隆起して、前記開口部に対し前記係止基部の基端部側が干渉することで前記開口部に係止保持される突起部を備えるとともに、この突起部に対して基端部側と先端部側とに断面積が異なる部分があるものである。
【0007】
請求項2記載の車両用内装材は、請求項1記載の車両用内装材において、係止基部は、突起部よりも基端部側に断面積が最小の最小断面領域があるものである。
【0008】
請求項3記載の車両用内装材は、請求項2記載の車両用内装材において、最小断面領域は、係止基部の他部よりも幅寸法が小さいものである。
【0009】
請求項4記載の車両用内装材は、請求項2または3記載の車両用内装材において、最小断面領域は、係止基部の他部よりも厚み寸法が小さいものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の車両用内装材によれば、突起部に対して基端部側の断面積と先端部側の断面積とに応じて、被取付部に対する車両用内装材の組み付け荷重と被取付部からの車両用内装材の取り外しにくさとを個別に設定できる。
【0011】
請求項2記載の車両用内装材によれば、請求項1記載の車両用内装材の効果に加えて、取付部を開口部に挿入するのに要する挿入力を相対的に小さく設定できるのに対し、取付部を開口部から抜き去るのに要する抜去力の低下を抑制できるので、車両用内装材を安価かつ容易に被取付部に組み付けできるとともに、車両用内装材を被取付部から外れにくくできる。
【0012】
請求項3記載の車両用内装材によれば、請求項2記載の車両用内装材の効果に加えて、最小断面領域の断面積を容易に小さく設定できる。
【0013】
請求項4記載の車両用内装材によれば、請求項2または3記載の車両用内装材の効果に加えて、最小断面領域の断面積を容易に小さく設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態の車両用内装材の取付部を示す正面図である。
図2図1のI-I相当位置の断面図である。
図3】同上取付部の斜視図である。
図4】(a)は同上車両用内装材を正面側から示す斜視図、(b)は同上車両用内装材を背面側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図4(a)及び図4(b)において、1は車両用内装材を示す。本実施の形態において、車両用内装材1は、例えば自動車等の車両用のインストルメントパネルの一部等に用いられる。本実施の形態において、車両用内装材1は、例えば合成樹脂により成形されている。
【0017】
車両用内装材1は、内装材本体部3を備える。内装材本体部3は、車両用内装材1の意匠部分を構成する。内装材本体部3は、車両用内装材1の主体部分である。内装材本体部3は、車両用内装材1が取り付けられる被取付部4(図2)の少なくとも一部を覆う所定の形状に形成されている。本実施の形態において、内装材本体部3は、板状に形成され、四角形状の外観を呈しているが、これに限られず、配置位置の形状や所望の意匠等に応じた任意の形状としてよい。
【0018】
内装材本体部3の背面には、補強用等のリブ5が形成されている。リブ5は、適宜の箇所に縦横に形成されている。そして、内装材本体部3の背面には、取付部7が形成されている。好ましくは、取付部7は、内装材本体部3の背面に複数配置されている。図示される例では、取付部7は、内装材本体部3の背面の外縁部近傍に位置する。
【0019】
図2に示すように、取付部7は、車両用内装材1を被取付部4に取り付ける部分である。取付部7は、取付爪等とも呼ばれる。取付部7は、被取付部4に形成された開口部10に挿入され、この開口部10に対して係止保持されることで、車両用内装材1を被取付部4に取り付けた状態で保持する。
【0020】
そして、図1ないし図3に示すように、取付部7は、所定方向(図1ないし図3中の上下方向、矢印Xで示す)、例えば取付部7の開口部10へ挿入方向に沿って内装材本体部3の背面から延びる板状部12を有する。板状部12は、内装材本体部3から延びる方向に対して交差または直交する方向に厚み方向を有する板状である。板状部12は、所定の幅寸法に形成され、正面から見て所定方向に長い長方形状となっている。
【0021】
好ましくは、板状部12は、基端部から先端部に向かい、幅が僅かに徐々に狭くなるように形成されている。すなわち、板状部12は、基端部側の幅よりも先端部側の幅が狭くなるように形成されている。また、板状部12の一主面(図2中の左側の面)には、先端に向かって徐々に厚みが薄くなるように傾斜した傾斜部12aが形成されている。
【0022】
板状部12には、一主面及び他主面の両側縁部に、補強用のリブ部14,15が形成されている。リブ部14,15は、板状部12の一主面及び他主面の側縁部に沿って形成され、板状部12に対して厚み方向に突出している。
【0023】
また、板状部12には、対をなすスリット17が形成されている。本実施の形態において、スリット17は、一対形成されている。これらスリット17は、板状部12を厚み方向に貫通して形成されている。これらスリット17は、板状部12の幅方向、すなわち所定方向及び板状部12の厚み方向と交差または直交する方向(図1中の左右方向)に互いに離れて位置する。また、スリット17は、板状部12の長手方向、すなわち所定方向に沿って延びる長手状となっている。図示される例では、スリット17は、互いに平行または略平行な直線状に延びている。さらに、スリット17は、板状部12の基端部寄りの位置から、先端部寄りの位置に亘り連なっている。スリット17の両端部は、板状部12の外殻内に位置する。スリット17は、リブ部14,15に対して、板状部12の内側に離れて位置する。また、スリット17の一端部は、内装材本体部3から離れ、スリット17の先端部は、板状部12の先端部よりも内装材本体部3側に位置する。スリット17の間に、所定方向に延びる係止基部18が形成されている。
【0024】
係止基部18は、板状部12と厚み方向が同一の板状に形成されている。また、係止基部18は、所定方向に長い長方形状に形成されている。係止基部18は、両端部が板状部12と一体的に連なって形成されている。係止基部18は、スリット17により板状部12の厚み方向に弾性変形可能に形成されている。
【0025】
係止基部18には、板状部12の厚み方向に隆起する突起部20が一主面(図2中の左側の面)に形成されている。係止基部18の他主面(図2中の右側の面)は、板状部12の他主面と面一または略面一な平面状となっている。
【0026】
突起部20は、係止基部18の内装材本体部3側の端部である基端部に対してその反対側の端部である先端部側に離れた位置にある。また、本実施の形態において、突起部20は、係止基部18の先端部に対して僅かに基端部側に離れた位置にある。すなわち、本実施の形態では、係止基部18には、突起部20を基準として、基端部側に基端側部分22が形成され、先端部側に先端側部分23が形成されている。突起部20は、係止基部18の長手方向において、先端部寄りに位置する。すなわち、係止基部18の長手方向において、基端側部分22が先端側部分23よりも長く形成されている。
【0027】
突起部20は、最も隆起した頂部20aを有するとともに、この頂部20aに向かい基端部側から徐々に傾斜する第一面20bと、頂部20aに向かい先端部側から徐々に傾斜する第二面20cと、を有する。すなわち、突起部20は、断面視で頂部20aを頂点とする三角形状に係止基部18の一主面から突出する。
【0028】
本実施の形態において、頂部20aは、係止基部18の長手方向の中央部に対し基端部寄りつまり基端側部分22寄りに位置する。第一面20bと第二面20cとは、係止基部18の厚み方向の傾斜が逆方向となっており、係止基部18の長手方向に対し、第一面20bが第二面20cよりも急峻に傾斜している。例えば第一面20bの傾斜は、係止基部18の長手方向に対して45°以上90°未満であり、第二面20cの傾斜は、係止基部18の長手方向に対して45°未満である。この第一面20bの頂部20aの近傍の位置が被取付部4の開口部10の縁部に対し干渉することで、突起部20が開口部10に係止保持される。すなわち、第一面20bにおいて、頂部20aに対して係止基部18の基端部側つまり基端側部分22側に離れた位置に、突起部20が開口部10の縁部に係止される係合位置(爪掛かり位置)Pがある。係合位置Pは、突起部20の幅方向の両側に亘り連なる直線状の位置である。
【0029】
第一面20bは、係止基部18の基端側部分22に連なっている。第二面20cは、係止基部18の先端部近傍まで延び、先端側部分23に連なっている。
【0030】
基端側部分22は、板状に形成されている。基端側部分22は、係止基部18の基端部を構成している。基端側部分22は、取付部7を開口部10に挿入して突起部20が開口部10の縁部を乗り越えるとき、すなわち取付部7を開口部10に取り付けるときに最も応力が加わる部分である。
【0031】
同様に、先端側部分23は、板状に形成されている。先端側部分23は、係止基部18の先端部を構成している。先端側部分23は、取付部7を開口部10から抜き去るために突起部20を開口部10の縁部に押し付けるとき、すなわち取付部7を開口部10から取り外すときに最も応力が加わる部分である。
【0032】
そして、係止基部18には、突起部20に対して基端部側と先端部側とに断面積が異なる部分がある。本実施の形態では、係止基部18は、基端側部分22と先端側部分23とで断面積が異なっている。図示される例では、基端側部分22は先端側部分23に対して断面積が小さく設定されている。
【0033】
基端側部分22は、係止基部18の長手方向に一定または略一定の幅寸法W1を有する。幅寸法W1は、突起部20及び先端側部分23の幅寸法W2よりも小さい。すなわち、基端側部分22は、係止基部18の他部よりも幅寸法が小さい。本実施の形態では、突起部20及び先端側部分23の幅寸法W2は、互いに同一または略同一であり、係止基部18の長手方向に一定または略一定となっている。そのため、基端側部分22の側部の位置では突起部20及び先端側部分23の側部の位置よりもスリット17の幅寸法が大きくなっている。
【0034】
また、基端側部分22は、突起部20及び先端側部分23よりも小さい、一定または略一定の厚み寸法t1を有している。図示される例では、厚み寸法t1は、先端側部分23の厚み寸法t2よりも小さい。すなわち、基端側部分22は、係止基部18の他部よりも厚み寸法が小さい。本実施の形態では、基端側部分22は、先端側部分23に対し、一主面側が窪み、他主面側が面一または略面一となっている。
【0035】
そのため、係止基部18において、突起部20または係合位置Pを基準として、突起部20または係合位置Pよりも基端部側にある基端側部分22が、所定方向すなわち長手方向と直交する方向つまり厚み方向の断面積が最小の最小断面領域となっている。本実施の形態では、基端側部分22全体が最小断面領域となっている。つまり、最小断面領域は、突起部20または係合位置Pよりも係止基部18の基端部に亘り長手方向に連なっている。
【0036】
そして、車両用内装材1を被取付部4に取り付ける際には、取付部7を開口部10に位置合わせした状態で車両用内装材1を被取付部4に接近させるように所定方向に押し込むと、取付部7が開口部10に挿入される。このとき、取付部7は、開口部10の縁部に対し、突起部20の第二面20cが干渉し、車両用内装材1の押し込みにしたがい、第二面20cの比較的緩やかな傾斜に応じて係止基部18に厚み方向の応力が生じ、基端側部分22の位置で係止基部18が厚み方向に弾性変形する。そして、突起部20の頂部20aが開口部10の縁部を乗り越えると、係止基部18が基端側部分22の弾性によって復帰変形し、突起部20の第一面20bが係合位置Pにおいて開口部10の縁部に引っ掛かることで、車両用内装材1が被取付部4に係止される。
【0037】
被取付部4に取り付けられた車両用内装材1は、所定方向とは反対方向の力に対して、突起部20が開口部10の縁部に干渉するが、第一面20bは、所定方向である係止基部18の長手方向に対して傾斜が急峻であるとともに、基端側部分22の長さが短いことにより、生じる応力の大部分が突起部20及び先端側基端部分23によって受けられ、係止基部18が厚み方向に弾性変形しない応力の範囲で突起部20の開口部10への係止が維持され、車両用内装材1が被取付部4に保持される。
【0038】
このように、取付部7を開口部10に対して所定方向に挿入して取り付けるときには、開口部10の縁部との干渉によって突起部20に対して先端部側から基端部側に向かい力が加わるとともに、突起部20の第二面20cの傾斜が所定方向に対して比較的緩やかであることから、その力が第二面20cの傾斜によって厚み方向に大きく変換されることで、係止基部18において、基端側部分22に最も応力が加わる。そのため、基端側部分22の長さ、弾性、断面積に応じて、取付部7を開口部10へ挿入するのに要する挿入力つまり車両用内装材1を被取付部4に取り付ける際の組み付け荷重が設定される。
【0039】
他方、取付部7を開口部10から取り外すときには開口部10の縁部との干渉によって突起部20に対して基端部側から先端部側に向かい力が加わるとともに、突起部20の第一面20bの傾斜が所定方向に対して比較的急峻であることから、その力が第二面20cの傾斜によって厚み方向に大きく変換されず、かつ、基端側部分22が短いことから、係止基部18において、基端側部分22に加わる応力よりも先端側部分23に加わる応力が支配的である。そこで、先端側部分23の長さ、弾性、断面積に応じて、取付部7を開口部10から抜き去るのに要する抜去力つまり車両用内装材1を被取付部4に保持する保持力が設定される。
【0040】
具体的に、基端側部分22及び先端側部分23は、その断面積が小さいほど、挿入力(組み付け荷重)及び抜去力(保持力)が小さく設定される。
【0041】
そこで、係止基部18を、突起部20に対して基端部側と先端部側とに断面積が異なる部分が生じるように形成することで、これら突起部20に対して基端部側の断面積と先端部側の断面積とに応じて、上記の挿入力及び抜去力、すなわち被取付部4に対する車両用内装材1の組み付け荷重と被取付部4からの車両用内装材1の取り外しにくさとを個別に設定でき、利便性が向上する。
【0042】
すなわち、スリット17の長さ、特に基端側部分22の側部の位置でのスリット17の長さLを調整することで挿入力(組み付け荷重)及び抜去力(保持力)を設定する従来の場合、例えばスリット17の長さLを長くすることで基端側部分22を弾性変形しやすくして挿入力(組み付け荷重)を小さくしようとすると、基端側部分22が長いことから、取付部7を開口部10から抜き去る際に生じる応力が基端側部分22にまで作用しやすくなり、抜去力(保持力)もが小さくなってしまう。つまり、スリット17の長さによる調整の場合には、挿入力(組み付け荷重)と抜去力(保持力)とを同時に大きくまたは小さくしてしまう。
【0043】
それに対し、本実施の形態では、係止基部18における突起部20の基端側と先端側との断面積により挿入力(組み付け荷重)及び抜去力(保持力)を調整するため、基端側部分22及び先端側部分23の長さに変更がなく、挿入力(組み付け荷重)と抜去力(保持力)とを別個に設定することが可能になるとともに、例えば挿入力(組み付け荷重)を抑制するために基端側部分22が弾性変形しやすくなるようにスリット17を長くしなくて済むので、取付部7の全長も低く抑えることができる。そのため、被取付部4において、取付部7が挿入される開口部10の背後側に取付部7が大きく突出することがなく、開口部10の背後側のスペースも有効活用できる。
【0044】
特に、本実施の形態では、係止基部18の突起部20よりも基端部側に断面積が最小の最小断面領域となる基端側部分22を設定しているので、取付部7を開口部10に挿入するのに要する挿入力を相対的に小さく設定できるのに対し、取付部7を開口部10から抜き去るのに要する抜去力の低下を抑えることができる。したがって、別体のクリップ等を用いることなく、車両用内装材1を安価かつ容易に被取付部4に組み付けできるとともに、車両用内装材1を被取付部4から外れにくくできる。
【0045】
最小断面領域となる基端側部分22の幅寸法を係止基部18の他部よりも小さくすることで、基端側部分22の断面積を容易に小さく設定できる。
【0046】
同様に、最小断面領域となる基端側部分22の厚み寸法を係止基部18の他部よりも小さくすることで、基端側部分22の断面積を容易に小さく設定できる。
【0047】
なお、上記の一実施の形態において、基端側部分22及び先端側部分23の断面積は、幅寸法W1,W2と、厚み寸法t1,t2と、のいずれか一方のみを調整することで設定してもよい。
【0048】
また、係止基部18において、突起部20を基準として基端部側と先端部側とに断面積が異なる部分を形成できれば、幅寸法W1,W2及び厚み寸法t1,t2は、それぞれ一定でなくてもよい。
【0049】
先端側部分23については、必須の構成ではなく、突起部20が係止基部18の先端部を構成して板状部20に隣接して連なっていてもよい。この場合、係止基部18は、基端側部分22と突起部20の先端部側の部分とで断面積が異なっていれば、上記の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
取付部7は、内装材本体部3に対して垂直または略垂直な方向に直線状に突出するものを例に挙げたが、これに限らず、内装材本体部3に対して傾斜状に突出するもの、あるいは、円弧状等に突出するものであっても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば自動車等の車両のインストルメントパネルに用いられる車両用内装材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用内装材
3 内装材本体部
4 被取付部
7 取付部
10 開口部
12 板状部
17 スリット
18 係止基部
20 突起部
22 最小断面領域である基端側部分
図1
図2
図3
図4