IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-オルガノポリシロキサン 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142155
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/14 20060101AFI20241003BHJP
   C08G 77/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G77/14
C08G77/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054188
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】西村 一晟
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】廣中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇則
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA03
4J246AB01
4J246BA050
4J246BA05X
4J246BB020
4J246BB021
4J246CA140
4J246CA14E
4J246CA14X
4J246CA230
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA390
4J246CA400
4J246CA40X
4J246FA191
4J246FA201
4J246FA291
4J246FA321
4J246FA371
4J246FA431
4J246FA551
4J246FC281
4J246FC283
4J246FE12
4J246FE23
4J246FE26
4J246FE34
4J246GA04
4J246GA11
4J246GB02
4J246GC49
4J246HA56
4J246HA70
(57)【要約】
【課題】フェニル変性シリコーンに高熱伝導性フィラーが高充填できるウェッターとして作用する新規オルガノポリシロキサンを提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン。
【化1】
(式中、Rは、独立して炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、Rは、独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。aは2または3であり、mは1≦m≦30の整数、nは0≦n≦60の整数であり、ただし、3≦m+n≦90の範囲を満たす。前記一般式(1)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよい。)

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、独立して炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、Rは、独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。aは2または3であり、mは1≦m≦30の整数、nは0≦n≦60の整数であり、ただし、3≦m+n≦90の範囲を満たす。前記一般式(1)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよい。)
で示されるものであることを特徴とするオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R、R、R及びaは前記と同じであり、xは1≦x≦30の整数であり、m′は1≦m′≦3の整数であり、n′は0≦n′≦2の整数であり、ただし、m′+n′は3である。m′及びn′を付した括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよく、xを付した括弧で括られた2種のシロキサン単位の結合はブロック重合体である。)
で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
前記Rがフェニル基であり、前記Rがメチル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のオルガノポリシロキサンからなるウェッター。
【請求項5】
請求項3に記載のオルガノポリシロキサンからなるウェッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CPUのような高集積回路等の電子部品は、使用中の発熱によりその性能が著しく低下する。この問題を解決するために発熱部と冷却部間の空気層に導入することで、熱伝達が効率的になる放熱材料が用いられる。中でも、シリコーン放熱材料は、シリコーンに由来する高い耐熱性、耐候性、電気絶縁性を有することから、幅広い分野で応用されている。
また近年、電子機器の小型化・高集積化が進んでおり、発生する熱をより効率よく冷却することが重要であるために、放熱材料の高熱伝導化が求められている。
【0003】
シリコーンオイルと熱伝導性充填剤を配合した材料の熱伝導率は、熱伝導性充填剤の容量分率が0.6を超えると熱伝導性充填剤自身の熱伝導率が影響する。したがって、放熱材料の熱伝導率を上げるには、いかに熱伝導性充填剤を高充填化するかが重要である。しかし、単に高充填化しようとしても、伝導性グリースの流動性が著しく低下するため、加工性が悪くなる。そこで、この問題を解決するために、熱伝導性充填剤をシランカップリング剤(ウェッター)で表面処理してベースオイルであるシリコーンに分散させ、熱伝導性グリースの流動性を保つという方法が提案されている。
【0004】
メチルシリコーンの一部をフェニル基に置き換えた構造であるフェニル変性シリコーンは、メチルシリコーンに比べ耐熱性、耐寒性、耐酸化性を有する。さらに、高いガスバリア性や高屈折率を有することから、フェニル変性シリコーンは、化粧品や発光ダイオードの封止材などへ応用されている(特許文献1,2)。したがって、フェニル変性シリコーンをベースオイルとし、放熱材料へ応用することで、メチルシリコーンでは実現できない性質が実現できると考えられる。一方で、フェニル基導入によりシリコーン骨格が剛直になるため、特に高フェニル変性シリコーンでは、粘度が著しく増加するといった問題がある(特許文献3)。
【0005】
したがって、フェニル変性シリコーンをベースオイルに、熱伝導性充填剤を充填してグリース化した場合は、熱伝導性グリースの流動性が著しく悪くなる。また、ウェッターとしてよく用いられているトリアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンは、フェニル変性シリコーンへの溶解性が悪い(特許文献4,5)。そのため、フェニル変性シリコーンに高い溶解性を示し、熱伝導性充填剤を充填した場合に、粘度上昇が抑えられるウェッターの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-162039号公報
【特許文献2】特開2007-039621号公報
【特許文献3】特開2004-262919号公報
【特許文献4】特開2004-262972号公報
【特許文献5】特開2005-162975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、樹脂材料、特にフェニル変性シリコーンに高熱伝導性フィラーが高充填できるウェッターとして作用する新規オルガノポリシロキサンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、下記新規オルガノポリシロキサンを提供する。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、独立して炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、Rは、独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。aは2または3であり、mは1≦m≦30の整数、nは0≦n≦60の整数であり、ただし、3≦m+n≦90の範囲を満たす。前記一般式(1)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよい。)
で示されるものであることを特徴とするオルガノポリシロキサンを提供する。
【0010】
このようなオルガノポリシロキサンであれば、ウェッターとして好適なものになり、例えばフェニル変性シリコーンに高熱伝導性フィラーを高充填できるものとなる。
【0011】
上記オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
【化2】
(式中、R、R、R及びaは前記と同じであり、xは1≦x≦30の整数であり、m′は1≦m′≦3の整数であり、n′は0≦n′≦2の整数であり、ただし、m′+n′は3である。m′及びn′を付した括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよく、xを付した括弧で括られた2種のシロキサン単位の結合はブロック重合体である。)
【0012】
このようなオルガノポリシロキサンは、フェニル変性シリコーンにより高い溶解性を有するものとなる。
【0013】
上記一般式(1)及び一般式(2)に示すRはフェニル基であり、Rはメチル基であることが好ましい。
オルガノポリシロキサンの合成の観点からこれらの基とするのが好ましい。
【0014】
本発明では、上記記載のオルガノポリシロキサンからなるウェッターを提供する。
上記記載のオルガノポリシロキサンをウェッターに用いることで、フェニル変性シリコーンに熱伝導性フィラーをより分散させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオルガノポリシロキサンは、フェニル変性シリコーンに対する熱伝導性フィラーの分散性を向上させるシランカップリング剤(ウェッター)として有用である。したがって、本発明のオルガノポリシロキサンを含むフェニル変性シリコーン組成物は、熱伝導性フィラーを多く含む場合でも、組成物の粘度が抑えられ、流動性が保たれる。したがって、本発明のオルガノポリシロキサンをシリコーン組成物に導入した場合、熱伝導性フィラーを高充填化させても、粘度上昇が抑制された熱伝導性シリコーン組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1で合成したオルガノポリシロキサンの29Si-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、樹脂材料、特にフェニル変性シリコーンに高熱伝導性フィラーを高充填することを可能とするウェッターに好適なオルガノポリシロキサンにつき探求したところ、これには下記一般式(1)のものが有用であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【化3】
(式中、Rは、独立して炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、Rは、独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。aは2または3であり、mは1≦m≦30の整数、nは0≦n≦60の整数であり、ただし、3≦m+n≦90の範囲を満たす。前記一般式(1)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよい。)
で示されるものであることを特徴とするオルガノポリシロキサンである。
特に前記オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)
【化4】
(式中、R、R、R及びaは前記と同じであり、xは1≦x≦30の整数であり、m′は1≦m′≦3の整数であり、n′は0≦n′≦2の整数であり、ただし、m′+n′は3である。m′及びn′を付した括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよく、xを付した括弧で括られた2種のシロキサン単位の結合はブロック重合体である。)
で示されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
上記一般式(1)中、Rは、独立して炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基である。Rの具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基などのアリール基が挙げられ、中でも、合成のしやすさの観点からフェニル基が好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中、Rは、独立して炭素数1~10、好ましくは1~5、より好ましくは1~3のアルキル基である。Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、中でも、合成のしやすさの観点からメチル基またはエチル基が好ましい。
【0021】
上記一般式(1)中、Rは、独立して炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。なかでも、本発明のオルガノポリシロキサン化合物の加水分解性の観点から、特にメチル基及びエチル基が好ましい。また、上記一般式(1)中、aは2または3であるが、合成のしやすさ及び経済性の観点から、aは3が好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中、mは、通常、1≦m≦30、好ましくは3≦m≦20、より好ましくは5≦m≦18の整数である。mが30を超えると、オルガノポリシロキサンの粘度が著しく増加するため好ましくない。また、上記一般式(1)中、nは通常、0≦n≦60、好ましくは5≦n≦50、より好ましくは10≦n≦40の整数である。上記範囲外では、フェニル変性シリコーンとの相溶性が低下するため好ましくない。また、m+nは、3≦m+n≦90であり、6≦m+n≦60が好ましい。上記範囲外だと、本化合物の合成上、生成物の取り扱い性が悪くなるため好ましくない。
また、 一般式(1)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合はブロックであっても、ランダムであってもよい。
【0023】
上記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。また、以下に示す式において、「Me」はメチル基、「Ph」はフェニル基を表す。
【化5】
【0024】
上記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンは、例えば、下記反応式のように合成される。
【0025】
反応式:
【化6】
【0026】
式中のm,nは29Si-NMRによって同定された。
【0027】
シラノールと1,1-ジフェニル-3,3,5,5-テトラメチルトリシロキサン(以下、フェニル変性環状シロキサンと書く場合がある)をビス(1,2-ベンゼンジオレート)フェニルシリケートナトリウム塩(NAS、上記式)触媒存在下、アセトニトリル溶媒中にて加熱撹拌させ、反応停止剤として2-(トリメトキシシリル)プロピオン酸エチル(ECMS、上記式)を作用させることによって上記一般式(1)に示すようなオルガノポリシロキサン化合物が合成される。この反応の溶媒は、アセトニトリル(MeCN)やN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性溶媒が好ましい。また反応温度は、通常60~65℃であり、反応時間は各ステップ2時間程度で良い。
【0028】
シラノールに対してフェニル変性環状シロキサンの当量を変化させることで、オルガノポリシロキサン化合物の主鎖の長さ(m+n)すなわち重合度が調整される。
【0029】
得られたオルガノポリシロキサンは、フェニル変性シリコーンに高い溶解性を示す。
【0030】
本発明の上記オルガノポリシロキサンを含むフェニル変性シリコーン組成物は、熱伝導性フィラーの分散性を保持したまま高充填化することができるため、ウェッターとして好適に用いることができる。
【実施例0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の実施例において、動粘度は、JIS Z8803::2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計を用いて25℃で測定した値である。また、屈折率は、JIS K0062:1992記載のアッベ屈折計による25℃で測定したnの値である。また、下記式において、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。
【0032】
[実施例1]
300mL丸形セパラブルフラスコに、四つ口セパラブルカバーを介して、撹拌機、温度計、蛇管冷却管を備え付けた。このセパラブルフラスコに、トリメチルシラノール(9.0g,0.1mol)、フェニル変性環状シロキサン(103.8g,0.3mol)、アセトニトリル(60.8g)を加え、65℃で加熱撹拌を行い、フェニル変性環状シロキサンを溶解させた。フェニル変性環状シロキサンを完全に溶解後、NAS(61mg,0.0178mmol)を添加し、反応溶液を65℃で2時間加熱撹拌させた。反応の進行はH-NMRスペクトルで追跡し、フェニル変性環状シロキサンのシグナルが消失することを確認した後に、反応停止剤のECMS(29.1g,0.13mol)を加え、さらに65℃で2時間加熱撹拌させた。赤外分光法により、シラノールに対応するピークの消失を確認した後に、反応溶液にメタノールを加え、さらに65℃で1時間加熱撹拌させた。反応液を室温に戻した後、メタノールで洗浄し、オイル層を抽出した。得られたオイル層に含まれる溶媒及び低分子シロキサンを減圧下で除くことで、オルガノポリシロキサン化合物を得た。この化合物は、無色透明の液体であり、動粘度は314mm・s―1、屈折率は1.505であった。また、29Si-NMRスペクトル分析により、以下の構造を有することがわかった(NMRチャートを図1に示す。)。
29Si-NMRスペクトル(99.37MHz、CDCl,25℃):δ=7.9(SiMe),-17.8~-21.1(SiMe),-46.7~-47.8(SiPh),-84.7~-85.0(Si(OMe)
【化7】
【0033】
[実施例2]
フェニル変性環状シロキサンをトリメチルシラノールに対して5当量用いた他は、上記と同様の手法でオルガノポリシロキサン化合物を得た。この化合物は、無色透明の液体であり、動粘度は、552mm・s-1、屈折率は、1.509であった。また、29Si-NMRスペクトル分析により、以下の構造を有することがわかった。
【化8】
29Si-NMRスペクトル(99.37MHz,CDCl,25℃):δ=7.9(SiMe),-17.8~-21.3(SiMe),-46.7~-47.7(SiPh),-84.7~-85.0(Si(OMe)).
【0034】
[実施例3]
フェニル変性環状シロキサンをトリメチルシラノールに対して10当量用いた他は、上記と同様の手法でオルガノポリシロキサン化合物を得た。この化合物は、無色透明の液体であり、動粘度は1255mm・s-1、屈折率は1.512であった。また、29Si-NMRスペクトル分析により、以下の構造を有することがわかった。
【化9】
29Si-NMRスペクトル(99.37MHz,CDCl,25℃):δ=7.9(SiMe),-17.8~-21.3(SiMe),-46.7~-47.7(SiPh),-84.7~-85.0(Si(OMe)).
【0035】
[実施例4]
フェニル変性環状シロキサンをトリメチルシラノールに対して15当量用いた他は、上記と同様の手法でオルガノポリシロキサン化合物を得た。この化合物は、無色透明の液体であり、動粘度は2158mm・s-1、屈折率は1.515であった。また、29Si-NMRスペクトル分析により、以下の構造を有することがわかった。
【化10】
29Si-NMRスペクトル(99.37MHz,CDCl,25℃):δ=7.9(SiMe),-17.6~-21.3(SiMe),-47.0~-48.0(SiPh),
-84.7~-85.0(Si(OMe)).
【0036】
[相溶性テスト]
フェニル変性シリコーンに下記オルガノシロキサン(B-6)を25%分散させた場合、白濁や層分離が起こる。一方で、上記新規オルガノシロキサンを同様の条件で分散させた場合、白濁や層分離は起こらないことから、上記新規オルガノシロキサンはフェニル変性シリコーンに対して高い相溶性を示すといえる。
【0037】
後述の各成分を、表1及び表2に示す組成比で(A)~(C)成分を混合して各実施例5~11及び各比較例1~4の組成物を得た。
【0038】
[実施例5]
(A)成分としてA-1、(B)成分としてB-1及び(C)成分を混合して熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を得た。混合は自転・公転方式ミキサー(商品名:あわとり練太郎、THINKY社製)に(A)~(C)成分を量り取ったプラスチック製容器を入れ、室温、2,000rpmで1分間×2回混合後、得られた混合物を室温まで冷却した後に、粘度測定を行った。
【0039】
[実施例6]
(B)成分をB-1からB-2に変えて実施例5と同様に熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0040】
[実施例7]
(B)成分をB-1からB-3に変えて実施例5と同様に熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0041】
[実施例8]
(B)成分をB-1からB-4に変えて実施例5と同様に熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0042】
[比較例1]
(B)成分をB-1からB-5に変えて実施例5と同様にして比較例1の組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0043】
[比較例2]
(B)成分をB-1からB-6に変えて実施例5と同様にして比較例2の組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0044】
[実施例9]
(A)成分をA-1からA-2及び(B)成分をB-1からB-2に変えて実施例5と同様に熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0045】
[実施例10]
(A)成分をA-1からA-3及び(B)成分をB-1からB-2に変えて実施例5と同様に熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0046】
[実施例11]
(B)成分をB-1からB-2及び(C)成分の組成(C-1をC-4に変更した)と含量を変えて実施例5と同様に熱伝導性フェニル変性シリコーン組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0047】
[比較例3]
(A)成分としてA-1の他にA-2を加え、(B)成分を加えず、実施例5と同様に比較例3の組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0048】
[比較例4]
(B)成分を加えず、(C)成分の含量を変えて、実施例5と同様に比較例4の組成物を調製し、粘度測定を行った。
【0049】
(A)オルガノシロキサン
A-1:下記式で表され、動粘度が700mm・s-1のオルガノシロキサン
【化11】
【0050】
A-2:下記式で表され、動粘度が380mm・s-1のフェニル変性オルガノシロキサン
【化12】
【0051】
A-3:下記式で表され、動粘度が2,000mm・s-1のフェニル変性オルガノシロキサン
【化13】
【0052】
(B)ウェッター
B-1:下記式で表される実施例1で合成したオルガノシロキサン
【化14】
【0053】
B-2:下記式で表される実施例2で合成したオルガノシロキサン
【化15】
【0054】
B-3:下記式で表される実施例3で合成したオルガノシロキサン
【化16】
【0055】
B-4:下記式で表される実施例4で合成したオルガノシロキサン
【化17】
【0056】
B-5:下記式で表される比較例1のオルガノシロキサン
【化18】
【0057】
B-6:下記式で表されるオルガノシロキサン
【化19】
【0058】
(C)熱伝導性充填剤
C-1:球状アルミナ粉末(平均粒径45μm)
C-2:球状アルミナ粉末(平均粒径10μm)
C-3:不定形アルミナ粉末(平均粒径2μm)
C-4:不定形窒化アルミニウム粉末(平均粒径30μm)
【0059】
[製造方法]
(A)~(C)成分を以下の通りに混合して組成物例及び比較例の組成物を得た。表1に示す組成比(容量部)で自転・公転方式ミキサー(商品名:あわとり練太郎、THINKY社製)に(A)~(C)成分を量り取ったプラスチック製容器を入れ、室温、2,000rpmで1分間×2回混合後、得られた混合物を室温まで冷却した。
【0060】
[試験方法]
得られた組成物の特性を下記の試験方法で測定した。結果を下記表に併記する。
【0061】
[粘度測定]
得られた組成物を粘度・粘弾性測定装置(商品名:MARS40(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社))を使用して回転数10s-1での粘度を該粘度計により測定した。測定条件は、23℃でパラレルプレートを使用し、ギャップは0.5mmである。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1及び表2の結果から、本発明のオルガノポリシロキサンを含むフェニル変性シリコーン組成物では、その組成物の粘度が抑えられるため、熱伝導性フィラーを高充填化させることができることがわかった。特に実施例10ではA成分として高粘度のA―3を用いたにもかかわらず、比較例1よりも組成物の粘度を低下させることができた。
一方、一般式(2)に示される範囲に含まれないB―5を用いた場合(比較例1)及び(B)成分を含まない組成物(比較例3及び4)では、その粘度は上昇した。またフェニル基を含まないB―6を用いた場合(比較例2)では、その組成物の粘度は上昇しなかった。
【0065】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とするオルガノポリシロキサン。
【化20】
(式中、Rは、独立して炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、Rは、独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。aは2または3であり、mは1≦m≦30の整数、nは0≦n≦60の整数であり、ただし、3≦m+n≦90の範囲を満たす。前記一般式(1)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよい。)
[2]:前記オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で示されるものであることを特徴とする[1]のオルガノポリシロキサン。
【化21】
(式中、R、R、R及びaは前記と同じであり、xは1≦x≦30の整数であり、m′は1≦m′≦3の整数であり、n′は0≦n′≦2の整数であり、ただし、m′+n′は3である。前記一般式(2)中の括弧で括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよく、xを付した括弧で括られた2種のシロキサン単位の結合はブロック重合体である。)
[3]:前記一般式(1)及び一般式(2)において、Rがフェニル基、Rがメチル基であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のオルガノポリシロキサン。
[4]:前記[1]から[3]のいずれかに記載のオルガノポリシロキサンからなるウェッター。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1