(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142157
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
E02F 3/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 J
E02F3/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054191
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】竹田 一基
【テーマコード(参考)】
2D012
2D015
【Fターム(参考)】
2D012AA01
2D015BA01
(57)【要約】
【課題】油圧アクチュエータを有する作業装置を基台に支持した構成において、簡易な構成でありながら作業装置の支持部分における空間を通る油圧ホースの破損を防止することを可能とすること。
【解決手段】 掘削作業機1は、旋回フレーム7の前方に突設された支持ブラケット28と、支持ブラケット28に連結軸51a,51bを介して左右方向に揺動自在に支持され、掘削装置3を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケット27と、旋回フレーム7から前方に延出され、支持ブラケット28の内部およびスイングブラケット27の内部を前後方向に通り、スイングブラケット27の内部で方向を変えて掘削装置3の基端部32aの下方を抜けて掘削装置3の背面に延びる複数の油圧ホース55と、上側の連結軸51aの上方に配置され、油圧ホース55を所定の方向に案内する案内部61を備えるものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータを有する作業装置を備えた建設機械であって、
基台の前方に突設された支持ブラケットと、
前記支持ブラケットに上下に配置された上側の連結軸と下側の連結軸を介して左右方向に揺動自在に支持され、前記作業装置を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケットと、
前記基台から前記支持ブラケットの内部に延び、前記上側の連結軸と前記下側の連結軸の間を抜けて前記支持ブラケットの前方を通り前記油圧アクチュエータに接続される油圧ホースと、
前記上側の連結軸の上方に配置され、前記油圧ホースを前記作業装置の背面の方向に案内する案内部を備える建設機械。
【請求項2】
前記案内部は、前記上側の連結軸の上面に配置されている、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記案内部が前記油圧ホースを斜め上方に向けて案内する、
請求項1または請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記案内部を前方から後方に向け上方に傾斜させて支持する案内部支持ブラケットと、
前記油圧ホースを固定し前記案内部支持ブラケットに支持される固定部材と、
を備える、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記案内部が前記作業装置の基端部と前記上側の連結軸の間に配置されている、
請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記作業装置は、前記油圧アクチュエータとして前記スイングブラケットに支持され前記作業装置を前後方向に回動させる油圧シリンダを含み、
前記油圧シリンダの後方にあって、前記案内部から前記スイングブラケットの内部に延びる油圧ホースを覆うカバー部材を備える、
請求項4または請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記油圧シリンダと対面する前記カバー部材の裏面に突設部を設け、前記突設部の端部が前記油圧ホースと前記案内部支持ブラケットの間に位置している、
請求項6に記載の建設機械。
【請求項8】
前記カバー部材の下端部が前記油圧ホースから離れる方向に折り曲げられている、
請求項7に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータの駆動により動作する作業装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば掘削作業機等の建設機械は、左右一対のクローラ式の走行部を有する下部走行体と、下部走行体に旋回可能に接続された上部旋回体と、上部旋回体の旋回フレームに俯仰動可能に設けられた作業装置から構成されている。また、このような建設機械では、油圧により作業装置を動作させている。
【0003】
特許文献1には、旋回フレームに作業装置を左右方向に揺動可能に支持するスイングポストを備え、上部旋回体側の油圧機器と作業装置側の油圧機器とを接続して設けられる複数の油圧ホースを、旋回フレームに上下に並べて保持する第1のホース保持具と、スイングポストに左右に並べて保持する第2のホース保持部と、を備えた建設機械が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された建設機械では、ホース保持具を2つ必要とすることから、部品点数が増える分、コストが高くなるだけでなく、構造も複雑化し油圧ホースの引き回しが煩雑になるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、油圧アクチュエータを有する作業装置を基台に支持した構成において、簡易な構成でありながら作業装置の支持部分における空間を通る油圧ホースの破損を防止することが可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建設機械は、油圧アクチュエータを有する作業装置を備えた建設機械であって、基台の前方に突設された支持ブラケットと、前記支持ブラケットに上下に配置された上側の連結軸と下側の連結軸を介して左右方向に揺動自在に支持され、前記作業装置を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケットと、前記基台から前記支持ブラケットの内部に延び、前記上側の連結軸と前記下側の連結軸の間を抜けて前記支持ブラケットの前方を通り前記油圧アクチュエータに接続される油圧ホースと、前記上側の連結軸の上方に配置され、前記油圧ホースを前記作業装置の背面の方向に案内する案内部を備えるものである。
【0008】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記案内部は、前記上側の連結軸の上面に配置されている、ものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記案内部が前記油圧ホースを斜め上方に向けて案内する、ものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記案内部を前方から後方に向け上方に傾斜させて支持する案内部支持ブラケットと、前記油圧ホースを固定し前記案内部支持ブラケットに支持される固定部材と、を備えるものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記案内部が前記作業装置の基端部と前記上側の連結軸の間に配置されている、ものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記作業装置は、前記油圧アクチュエータとして前記スイングブラケットに支持され前記作業装置を前後方向に回動させる油圧シリンダを含み、前記油圧シリンダの後方にあって、前記案内部から前記スイングブラケットの内部に延びる油圧ホースを覆うカバー部材を備えるものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記油圧シリンダと対面する前記カバー部材の裏面に突設部を設け、前記突設部の端部が前記油圧ホースと前記案内部支持ブラケットの間に位置している、ものである。
【0014】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記カバー部材の下端部が前記油圧ホースから離れる方向に折り曲げられている、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧アクチュエータを有する作業装置を基台に支持した構成において、簡易な構成でありながら作業装置の支持部分における空間を通る油圧ホースの破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の掘削装置の支持部分の左側面視からの部分拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の掘削装置の支持部分の前方左上方視からの部分拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の掘削装置の支持部分における油圧ホースの取付構造を説明する部分拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の掘削装置の支持部分における油圧ホースを保護するカバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、油圧アクチュエータを有する作業装置を基台に支持した構成において、簡易な構成でありながら、作業装置の支持部分における空間を通る油圧ホースの破損防止を図るものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の実施の形態では、本発明に係る建設機械として、旋回作業車である掘削作業機(ショベル)を例にとって説明する。ただし、本発明に係る建設機械は、掘削作業機に限らず、例えば、ブルドーザ、クレーン作業機、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用可能である。
【0019】
本実施形態に係る掘削作業機1の全体構成について、
図1を用いて説明する。なお、以下では、特に方向視を定めない限り、掘削作業機1の運転席に着座したオペレータの位置を基準に、「前側」、「後側」、「左右側」、「平面側」又は「上側」、「底面側」又は「下側」と称する。
【0020】
図1に示すように、掘削作業機1は、自走可能な走行車体(機体)2と、走行車体2に取り付けられた作業装置としての掘削装置3および排土装置4とを備える。走行車体2は、走行部5を備えた下部走行体20Aと、下部走行体20Aの上部に旋回可能に設けられた上部旋回体20Bとから構成される。排土装置4は下部走行体20A側に取付けられ、掘削装置3は上部旋回体20B側に取付けられる。
【0021】
下部走行体20Aは、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5間に介設された基台としての機体フレーム6を有する。
【0022】
走行部5は、機体フレーム6に支持されたスプロケット、アイドラおよび複数のローラに履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、その後端部に、駆動輪である駆動スプロケット5aを有する。
【0023】
機体フレーム6の前側には、排土装置4が取り付けられている。排土装置4は、下部走行体20Aに対して上下回動可能に設けられている。排土装置4は、左右一対のアーム43と、左右一対のアーム43の先端に設けられた排土板であるブレード41とを備える。これらの構成を含む排土装置4は、全体として略左右対称に構成されている。
【0024】
左右のアーム43は、左右の走行部5,5間において前後方向に延伸して設けられている。左右のアーム43は、その基端部を機体フレーム6の前部に設けられたアーム支持ブラケット42に対して左右方向を回動軸方向として支持されている。そして、左右のアーム43は、ブレードシリンダ44の伸縮によって上下回動する。つまり、ブレードシリンダ44が伸縮することにより、左右のアーム43を介してブレード41が上下回動する。
【0025】
上部旋回体20Bは、走行部5に対して旋回可能に搭載された旋回フレーム7を有する。旋回フレーム7は、旋回ベアリング8を介して機体フレーム6に接続され、旋回モータ(図示せず)の駆動により、機体フレーム6に対して上下方向の軸回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。
【0026】
旋回フレーム7は、平面視略円形状に構成され、上部旋回体20Bの基台となる構成である。旋回フレーム7の底板71の前側には、支持ブラケット28が設けられている。支持ブラケット28の基端は、底板71に溶接等により固定されている。支持ブラケット28は、掘削装置3を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケット27を支持するものである。
【0027】
掘削装置3は、その基部側の部分を構成するブーム32と、ブーム32の先端側に連結されたアーム33と、アーム33の先端部に取り付けられたバケット34とを有する。また、掘削装置3は、ブーム32を回動動作させるブームシリンダ35と、アーム33を回動動作させるアームシリンダ36と、バケット34を回動動作させるバケットシリンダ37とを有する。
【0028】
ブーム32の基端部32aは、スイングブラケット27により支持されている。スイングブラケット27は、左右方向に揺動自在に支持ブラケット28に支持されている。より具体的には、スイングブラケット27は、旋回フレーム7に突設された支持ブラケット28に、上下方向を回動軸方向とする連結軸51a,51b(
図2参照)を介して支持されている。
【0029】
スイングブラケット27は、左右方向を回動軸方向としてブーム32の基端を回動可能に支持するブーム支持部22と、ブームシリンダ35の下端を支持するブームシリンダ支持部23と、スイングシリンダ38のロッドの先端を連結するスイングシリンダ連結部24と、を有する。スイングシリンダ38の動作により連結軸回りにスイングブラケット27が回動することにより、掘削装置3が左右方向に揺動する。
【0030】
ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37およびスイングシリンダ38は、いずれも油圧ポンプ(図示せず)が吐出する圧油によって動作する複動式の油圧シリンダである。各油圧シリンダには、油圧供給用および油圧排出用の油圧配管がそれぞれ接続される。油圧配管としては、例えば、ブーム32に沿って配設される部分には、鋼管材(油圧配管56)が使用され、ブーム32の基端側などの可動部周辺においては、可撓性のホース材(油圧ホース55)が使用される。また、掘削装置3において、バケット34は、作業用アタッチメントとして着脱可能に装着されており、作業内容に応じてバケット34に替えて挟み機(フォーク)または破砕機(ブレーカ)等の他のアタッチメントが装着される。
【0031】
旋回フレーム7には、オペレータが走行部5および作業機を運転・操作する運転部を収容したキャビン10と、エンジン、バッテリ、エンジン用の燃料タンクおよび油圧シリンダ用の作動油タンクを収容する機関室11が設けられている。機関室11は、キャビン10の右側から後方にかけて旋回フレーム7上に設けられている。機関室11は外装カバーにより覆われている。
【0032】
外装カバーは、旋回フレーム7の形状および旋回フレーム7上の構成の配置に応じて、形状および大きさの異なる複数の部材により構成されている。旋回フレーム7の右側となる機関室11の上方は、開閉可能に構成された右上カバー12により覆われている。機関室11の後方は、リアカバーおよび掘削装置3との重量バランスをとるためのカウンタウエイト9により覆われている。
【0033】
キャビン10内には、運転席が設けられており、運転席の周辺には、走行部5を走行させるための走行レバー、旋回フレーム7の旋回、作業機の操作を行うための複数の操作ペダル、作業操作レバー、および、操作パネル部等が設けられている。また、キャビン10の左側面には、オペレータの搭乗口となる扉部17が設けられている。
【0034】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、キャビン10に搭乗したオペレータにより走行レバーおよび/または作業操作レバー等が適宜操作されることで、所望の動作・作業が行われる。例えば、走行レバーの操作により、走行部5の前後直進走行または左右旋回走行が行われ、作業操作レバーの操作により、掘削装置3による掘削作業、あるいは、排土装置4による排土作業および/または整地作業が行われる。
【0035】
本実施形態に係る掘削作業機1において、旋回フレーム7の前方に設けられた掘削装置3の支持部分の構成について、
図2から
図5を参照しつつ説明する。
図2から
図4は、掘削装置3の支持部分の拡大図である。なお、
図2においては、キャビン10を取り払った状態、
図3においては、ブームシリンダ35およびキャビン10を取り払った状態の支持部分を示している。また、
図4においては、支持ブラケット28およびスイングブラケット27の図示を省略し、支持ブラケット28およびスイングブラケット27を連結する上側の連結軸51aの上方における油圧ホース55の支持構造を示している。なお、
図3中において示す複数の油圧ホース55a,55b,55c,55d,55eは、明細書および他の図において油圧ホース55と総称する。また、
図5は、油圧ホース55を保護するカバー部材66を裏面側から見た斜視図である。
【0036】
支持ブラケット28は、旋回フレーム7の底板71の前方に所定の距離だけ離間させて水平に突設された上下一対の連結部25,26により構成されている。上下一対の連結部25,26の同一垂直線上となる位置には、それぞれ連結軸51a,51bを挿通可能な孔部が設けられている。また、前面視において上下一対の連結部25,26の間には旋回フレーム7の内部に連通する孔部29(
図3参照)が設けられ、機関室11に設けられた油圧源から延伸された油圧ホース55を挿通可能としている。
【0037】
スイングブラケット27は、鋳型成形により形成され、左右一対の壁部47a,47bを有する。スイングブラケット27の左右一対の壁部47a,47bの間には、ブーム32を回動可能に支持する回動支軸48およびブームシリンダ35を回動可能に支持する回動支軸49が互いに平行に架設されている。スイングブラケット27の上部に回動支軸48を含むブーム支持部22、前面の上下方向中間部に回動支軸49を含むブームシリンダ支持部23、左側の壁部47aに左側方に突出させてスイングシリンダ連結部24が、それぞれ設けられている。
【0038】
スイングブラケット27の後面の上下両側には、支持ブラケット28の上下一対の連結部25,26とそれぞれ連結軸51a,51bを介して連結される連結ボス部45,46が設けられている。
【0039】
スイングブラケット27の上側の連結ボス部45は、側面視略横U字形状に形成された上下一対のボス部45a,45bを有する。同様にスイングブラケット27の下側の連結ボス部46は、側面視略横U字形状に形成された上下一対のボス部46a,46bを有する。さらに、各ボス部45a,45b,46a,46bの同一垂直線上となる位置には、連結軸51a、51bを挿通可能な孔部が設けられている。上下一対のボス部45a,45bおよびボス部46a,46bの下側のボス部45b,46bには、ボルト53a,53bを挿入可能な孔部52が回転軸方向と直交する方向(水平方向)に貫通して設けられている(
図4参照)。ボルト53a,53bは、下側のボス部45b,46bおよび連結軸51a、51bを径方向に貫通して設けられる。
【0040】
スイングブラケット27の上側の連結ボス部45と下側の連結ボス部46との間には、前後方向に油圧ホース55を貫通させることが可能な空間が形成されており、
図3に示すように、旋回フレーム7の内部からスイングブラケット27の前方に油圧ホース55を引き出し、さらに左右の壁部47a,47bの間の空間を上方に向けて引き回すことが可能となっている。
【0041】
スイングブラケット27を支持ブラケット28に取り付けるときには、連結ボス部45のボス部45a,45bの間に支持ブラケット28側の連結部25を、連結ボス部46のボス部46a,46bの間に、支持ブラケット28側の連結部26を挟み込むようにして、支持ブラケット28にスイングブラケット27を係合させる。その状態で、スイングブラケット27の上側のボス部45a,45bの孔部と支持ブラケット28の上側の連結部25の孔部により形成される貫通孔に上方から連結軸51aを挿入する。同様に、スイングブラケット27の下側のボス部46a,46bの孔部と支持ブラケット28の下側の連結部26の孔部により形成される貫通孔に下方から連結軸51bを挿入する。しかる後、スイングブラケット27の上側の連結ボス部45における下側のボス部45bにボルト53aを挿入して上側の連結軸51aを径方向に貫通させ、ボス部45bから突出したボルト53aの端部にナット(図示せず)を締結する。同様に、スイングブラケット27の下側の連結ボス部46における下側のボス部46bにボルト53bを挿入し、下側の連結軸51bを径方向に貫通させ、ボス部46bから突出したボルト53bの端部にナット(図示せず)を締結する。これにより、スイングブラケット27が連結軸51a、51bを介して支持ブラケット28に連結される。
【0042】
図2に示すように、側面視において、支持ブラケット28側の連結部25とスイングブラケット27側の連結ボス部45の連結部分、および、支持ブラケット28側の連結部26とスイングブラケット27側の連結ボス部46の連結部分の間には、スイングブラケット27を左右に回動させたときに、旋回フレーム7の内部から孔部29を通して引き出した油圧ホース55と、支持ブラケット28およびスイングブラケット27の部材との干渉を避けるため、空間54が設けられている。
【0043】
旋回フレーム7内から孔部29を抜けて支持ブラケット28内に延びた複数の油圧ホースは、上側の連結軸51aと下側の連結軸51bの間を抜けて支持ブラケット28の前方を通って、掘削装置3の各油圧シリンダに接続されるように掘削装置3の背面側に延びる。言い換えると、旋回フレーム内から前方に延出された複数の油圧ホース55は、支持ブラケット28の内部およびスイングブラケット27の内部を後方から前方に向けて通り、スイングブラケット27のブームシリンダ支持部23とブーム支持部22との間で上向きに方向を変え、さらに、前方から後方斜め上方に向かいつつ、スイングブラケット27のブーム支持部22において支持された掘削装置3の基端部32aの下方を抜けて掘削装置3の背面に延びて配設される。複数の油圧ホース55は、側面視において略S字を描くように、スイングブラケット27内において、上側の連結軸51aの前方を迂回して、ブーム32の基端と上側の連結軸51aの間を抜けてブーム32の背面側に達し、さらに方向を前方斜め上方に変えてブーム32の背面に予め配設された鋼管材から形成された油圧配管56に接続される。
【0044】
上側の連結軸51aの上方には、油圧ホース55を所定の方向に案内する案内部61が設けられている。案内部61は、油圧ホース55を掘削装置3の背面の方向に案内するものである。案内部61は、略直方体状の形状を有し、連結軸51aの上面に水平基板62および案内部支持ブラケット63を介して配置されている。言い換えると、案内部61は、掘削装置3の基端部32aと連結軸51aの間のスペースに配置されている。
【0045】
案内部61は、ラバー材などの弾性部材から形成され、略前後方向が貫通方向となる複数の保持孔64が形成されている。複数の保持孔64としては、口径の異なる孔が設けられており、口径の合う孔に油圧ホース55を挿通して保持するものである。案内部61には各保持孔64に至る切り込みが形成されており、切り込みから油圧ホース55を押し込むことにより、保持孔64に油圧ホース55を挿通させることが可能となっている。
【0046】
案内部支持ブラケット63は、板金を曲げ加工して側面視において略三角形状に形成されたものである。案内部支持ブラケット63は、連結軸51aの上面に設けられた水平基板62上に、前低後高に傾斜した傾斜面63aを形成するように配設される。そして、この傾斜面63a上に案内部61が配置される。案内部支持ブラケット63が、案内部61を後方に向け上方に傾斜させて支持することにより、案内部61に設けた保持孔64の後方側開口が斜め上方を向くことになる。したがって、保持孔64に保持された油圧ホース55が斜め上方に案内されることになる。
【0047】
案内部支持ブラケット63上には、案内部61の左右側面および上面を囲う固定部材65が設けられている。固定部材65は、案内部支持ブラケット63にネジ締結等により固定されるものである。固定部材65を案内部支持ブラケット63に固定することにより、案内部61に対して上方から押圧力が与えられ、保持孔64の内周を油圧ホースの外周に密着させることができる。これにより、案内部61に各油圧ホース55が固定される。なお、案内部61における油圧ホース55の固定は、油圧ホース55が延伸方向を変える部分において描く円弧の長さを、掘削装置3の上下回動および左右揺動による可動範囲を考慮した適当な長さとなるように調整した後に行われる。
【0048】
また、固定部材65の上方には、油圧ホース55を覆うカバー部材66の端部が固定されている。カバー部材66は、ブームシリンダ35の後方にあって、案内部61からスイングブラケット27の内部に延びる油圧ホース55を覆うものである。すなわち、スイングブラケット27内の前後方向においてブームシリンダ支持部23とブーム支持部22との間に位置する油圧ホース55の前方および上方側を覆って、土砂等から油圧ホース55を保護するものである。
【0049】
カバー部材66は、板金を曲げ加工して形成され、油圧ホース55の前方側を覆う前カバー部66aと、油圧ホース55の上方側を覆う上カバー部66bと、上カバー部66bから延設された取付部66cを有する。
【0050】
取付部66cは、カバー部材66を固定部材65の上部にねじ締結により取り付けるための部分である。取付部66cには、固定用のボルトを挿通可能な孔部66dが設けられている。孔部66dにボルトを挿通してカバー部材66を固定部材65に固定することにより、上カバー部66bは、側面視において、前低後高に傾斜して設けられ、油圧ホース55の上方側を覆う。上カバー部66bから下方に延設された前カバー部66aは、油圧ホース55の湾曲に沿うように屈曲され、油圧ホース55の前方側を覆う。
【0051】
カバー部材66により、油圧ホース55の前方側および上方側を覆うことにより、掘削作業時にスイングブラケット27の内部に侵入する土砂等から、油圧ホース55が保護される。また、上カバー部66bは傾斜させて設けていることから、掘削作業時にスイングブラケット27の上方から落下した土砂等は、斜面を滑ってスイングブラケット27外に排出される。
【0052】
また、油圧ホース55は、掘削作業時におけるブーム32の下方回動時において、前カバー部66aにより油圧ホース55が前方に膨らむ変形が規制される。このように、ブーム32の回動時において前カバー部66aが油圧ホース55を支えることにより、弛んだ油圧ホース55が例えばブームシリンダ35側の他の部材に引っ掛かり破損することを防止することができる。
【0053】
また、前カバー部66aの下端部には、油圧ホース55から離れるように前方に向けて屈曲させた折り曲げ部分66fが形成されている。折り曲げ部分66fにより、ブーム32の回動時に変形した油圧ホース55が前カバー部66aの下端のエッジに食い込むことが回避でき、油圧ホース55の破損を防止することができる。
【0054】
また、ブームシリンダ35と対面する前カバー部66aの裏面には、突設部66eが設けられている。突設部66eは、複数の油圧ホース55の間から後方に突出した先端部が、前後方向において油圧ホース55と支持ブラケット28の間に位置するように設けられている。このような突設部66eを設けることにより、複数の油圧ホース55を前カバー部66aの裏面側で整列させ、複数の油圧ホース55が互いに絡まることを防止することができる。したがって、油圧ホース55の破損を防止することができる。
【0055】
以上のような構成を備えた本実施形態の掘削作業機1は、次のような構成を備えていると言える。すなわち、掘削作業機1は、基台(旋回フレーム7)の前方に突設された支持ブラケット28と、支持ブラケット28に上下に配置された上側の連結軸52aと下側の連結軸52bを介して左右方向に揺動自在に支持され、作業装置(掘削装置3)を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケット27と、基台(旋回フレーム7)から支持ブラケット28の内部に延び、上側の連結軸52aと下側の連結軸52bの間を抜けて支持ブラケット28の前方を通り油圧アクチュエータ(旋回フレーム7)に接続される油圧ホース55と、上側の連結軸(52a)の上方に配置され、油圧ホース55を作業装置(掘削装置3)の背面の方向に案内する案内部61を備えるものである。なお、旋回フレーム7から前方に延出され、支持ブラケット28の内部およびスイングブラケット27の内部を前後方向に通る油圧ホース55は、スイングブラケット27の内部で方向を変えて掘削装置3の基端部32aの下方を抜けて掘削装置3の背面に延びてブームシリンダ35,アームシリンダ36,バケットシリンダ37に接続されるものである。
【0056】
また、掘削作業機1は、案内部61が上側の連結軸51aの上面に配置されているものである。さらに、案内部61は、油圧ホース55を斜め上方に向けて案内するものである。このような案内部61により、油圧ホース55が上側の連結軸51aよりも上方から掘削装置3の背面側にスムーズに案内することが可能となる。
【0057】
また、案内部61は、前方から後方に向け上方に傾斜させて支持する案内部支持ブラケット63と、油圧ホース55を固定し案内部支持ブラケット63に支持される固定部材65と、を備えるものである。このように、案内部支持ブラケット63により案内部61を支持し、固定部材65により案内部61を案内部支持ブラケット63に固定することから、油圧ホース55を斜め上方に向けて確実に案内することができる。
【0058】
また、案内部61は、作業装置(掘削装置3)の基端部32aと連結軸51aの間に配置されている。このような作業装置(掘削装置3)の基端部32aと上側の連結軸51aの間の隙間を有効に活用することにより、油圧ホース55を保護しつつ掘削装置3側に導くことが可能となる。
【0059】
また、掘削作業機1は、油圧アクチュエータとしてスイングブラケット27に支持され作業装置(掘削装置3)を前後方向に回動させる油圧シリンダ(ブームシリンダ35)を含み、油圧シリンダ(ブームシリンダ35)の後方にあって、案内部61からスイングブラケット27の内部に延びる油圧ホース55を覆うカバー部材66を備えるものである。これにより、掘削作業時のスイングブラケット27内への土砂等の流入を防止し、油圧ホース55を土砂等から保護することが可能となる。油圧ホース55間に石等が挟まることがないため、スイングブラケット27の油圧ホースの収容空間を通る油圧ホース55が破損することを防止することができる。
【0060】
また、掘削作業機1は、油圧シリンダ(ブームシリンダ35)と対面するカバー部材66の裏面に突設部66eを設け、突設部66eの端部が油圧ホース55と案内部支持ブラケット63の間に位置しているものである。これにより、複数の油圧ホース55を互いに絡ませることなく整列させることが可能となる。
【0061】
また、掘削作業機1は、カバー部材66の下端部が油圧ホース55から離れる方向に折り曲げられている。これにより、スイングブラケット27の油圧ホースの収容空間を通る油圧ホース55が、カバー部材66の下端に擦れることによる切創等の破損を防止することができる。
【0062】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る建設機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0063】
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(1)
油圧アクチュエータを有する作業装置を備えた建設機械であって、
基台の前方に突設された支持ブラケットと、
前記支持ブラケットに上下に配置された上側の連結軸と下側の連結軸を介して左右方向に揺動自在に支持され、前記作業装置を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケットと、
前記基台から前記支持ブラケットの内部に延び、前記上側の連結軸と前記下側の連結軸の間を抜けて前記支持ブラケットの前方を通り前記油圧アクチュエータに接続される油圧ホースと、
前記上側の連結軸の上方に配置され、前記油圧ホースを前記作業装置の背面の方向に案内する案内部を備える建設機械。
(2)
前記案内部は、前記上側の連結軸の上面に配置されている、
(1)に記載の建設機械。
(3)
前記案内部が前記油圧ホースを斜め上方に向けて案内する、
(1)または(2)に記載の建設機械。
(4)
前記案内部を前方から後方に向け上方に傾斜させて支持する案内部支持ブラケットと、
前記油圧ホースを固定し前記案内部支持ブラケットに支持される固定部材と、
を備える、
(1)から(3)のいずれか1に記載の建設機械。
(5)
前記案内部が前記作業装置の基端部と前記上側の連結軸の間に配置されている、
(1)から(4)のいずれか1に記載の建設機械。
(6)
前記作業装置は、前記油圧アクチュエータとして前記スイングブラケットに支持され前記作業装置を前後方向に回動させる油圧シリンダを含み、
前記油圧シリンダの後方にあって、前記案内部から前記スイングブラケットの内部に延びる油圧ホースを覆うカバー部材を備える、
(1)から(5)のいずれか1に記載の建設機械。
(7)
前記油圧シリンダと対面する前記カバー部材の裏面に突設部を設け、前記突設部の端部が前記油圧ホースと前記案内部支持ブラケットの間に位置している、
(4)から(6)のいずれか1に記載の建設機械。
(8)
前記カバー部材の下端部が前記油圧ホースから離れる方向に折り曲げられている、
(6)または(7)に記載の建設機械。
【符号の説明】
【0064】
1 掘削作業機(建設機械)
2 走行車体
5 走行部
7 旋回フレーム(基台)
10 キャビン
11 機関室
20A 下部走行体
20B 上部旋回体
22 アーム支持部
23 アームシリンダ支持部
24 スイングシリンダ支持部
27 スイングブラケット
28 支持ブラケット
32 ブーム
35 ブームシリンダ
47 回転支軸
48 回転支軸
51a 連結軸(上側の連結軸)
51b 連結軸(下側の連結軸)
52 孔部
53a,53b ボルト
55 油圧ホース
56 油圧配管
61 案内部
62 水平基板
63 案内部支持ブラケット
64 保持孔
65 固定部材
66 カバー部材
66e 突設部
66f 折り曲げ部分
71 底板