(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142165
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】凝縮水の排出装置
(51)【国際特許分類】
F02F 1/18 20060101AFI20241003BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02F1/18 B
F02F1/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054203
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並河 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】山口 駿介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 泰輝
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA02
3G024AA06
3G024FA00
(57)【要約】
【課題】燃焼室の内部に発生する凝縮水を適切に排出する。
【解決手段】凝縮水の排出装置は、前記燃焼室の下部に形成された凝縮水排出口と、前記エンジンのシリンダヘッドの内部に形成され、前記凝縮水排出口と前記エンジンの外部とを連通する凝縮水排出ポートと、前記凝縮水排出口に設けられる開閉弁と、前記開閉弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、1つまたは複数のプロセッサと、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、前記プロセッサは、前記エンジンの動作時に、前記開閉弁により前記凝縮水排出口を閉塞することと、前記エンジンの停止時に、前記開閉弁により前記凝縮水排出口を開放することにより、前記燃焼室の内部で発生した凝縮水を、前記凝縮水排出ポートを通じて前記エンジンの外部に排出することと、を含む処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの軸方向が実質的に水平方向になるようにシリンダが配置されたエンジンにおいて、燃焼室の内部で発生した凝縮水を排出する排出装置であって、
前記燃焼室の下部に形成された凝縮水排出口と、
前記エンジンのシリンダヘッドの内部に形成され、前記凝縮水排出口と前記エンジンの外部とを連通する凝縮水排出ポートと、
前記凝縮水排出口に設けられる開閉弁と、
前記開閉弁を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記エンジンの動作時に、前記開閉弁により前記凝縮水排出口を閉塞することと、
前記エンジンの停止時に、前記開閉弁により前記凝縮水排出口を開放することにより、前記燃焼室の内部で発生した凝縮水を、前記凝縮水排出ポートを通じて前記エンジンの外部に排出することと、
を含む処理を実行する、凝縮水の排出装置。
【請求項2】
前記凝縮水排出ポートは、前記凝縮水排出口から、前記シリンダの軸方向に対する俯角方向に傾斜して延在する、請求項1に記載の凝縮水の排出装置。
【請求項3】
前記エンジンは、
前記シリンダヘッドのうち前記燃焼室に面した部位に形成される排気口と、
前記シリンダヘッドの内部に形成され、前記排気口から、前記シリンダの軸方向に対する俯角方向に傾斜して延在する排気ポートと、
を有し、
前記凝縮水排出ポートは、前記排気ポートの少なくとも一部と並走するように配置される並走部を有する、請求項1または2に記載の凝縮水の排出装置。
【請求項4】
前記並走部は、前記燃焼室から前記凝縮水排出ポートに排出された凝縮水の少なくとも一部を貯留可能な底部を有する、請求項3に記載の凝縮水の排出装置。
【請求項5】
前記エンジンは、
前記シリンダヘッドのうち前記燃焼室に面した部位に形成される排気口と、
前記シリンダヘッドの内部に形成され、前記排気口から、前記シリンダの軸方向に対する俯角方向に傾斜して延在する排気ポートと、
前記排気ポートに接続された排気管と、
前記排気管の途中に設けられる触媒と、
前記排気管における前記排気ポートと前記触媒との間の位置に接続され、前記排気管を流通するガスの一部を前記エンジンの吸気側に還流するEGR管と、
を有し、
前記凝縮水の排出装置は、
前記凝縮水排出ポートに接続される凝縮水排出管をさらに備え、
前記凝縮水排出管は、前記排気管のうち、前記EGR管の接続位置と前記触媒との間の位置に接続されている、請求項1または2に記載の凝縮水の排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室の内部に発生する凝縮水の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、排気マニホールドの下部に排出口を設け、排出口に排出弁を設ける構成が開示されている。かかる特許文献1では、排出弁を開くことで、排気マニホールドに貯留する凝縮水が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの停止時に、燃焼室の内部に、混合気の燃焼に起因するガスの成分を含む凝縮水が発生することがある。水平対向エンジンのように、シリンダが実質的に水平に配置されたエンジンでは、燃焼室の内部で発生した凝縮水が燃焼室の内部に残留してしまう。そうすると、残留した凝縮水によって、燃焼室の内面が腐食するなど、燃焼室の内面が損傷するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、燃焼室の内部に発生する凝縮水を適切に排出することが可能な凝縮水の排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る凝縮水の排出装置は、
シリンダの軸方向が実質的に水平方向になるようにシリンダが配置されたエンジンにおいて、燃焼室の内部で発生した凝縮水を排出する排出装置であって、
前記燃焼室の下部に形成された凝縮水排出口と、
前記エンジンのシリンダヘッドの内部に形成され、前記凝縮水排出口と前記エンジンの外部とを連通する凝縮水排出ポートと、
前記凝縮水排出口に設けられる開閉弁と、
前記開閉弁を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記エンジンの動作時に、前記開閉弁により前記凝縮水排出口を閉塞することと、
前記エンジンの停止時に、前記開閉弁により前記凝縮水排出口を開放することにより、前記燃焼室の内部で発生した凝縮水を、前記凝縮水排出ポートを通じて前記エンジンの外部に排出することと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃焼室の内部に発生する凝縮水を適切に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる凝縮水の排出装置が適用される車両の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、シリンダヘッド側から燃焼室を見たときの概略透視図である。
【
図3】
図3は、凝縮水排出口の近傍の部分拡大図である。
【
図4】
図4は、凝縮水排出口の近傍の部分拡大図である。
【
図5】
図5は、開閉弁制御部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる凝縮水の排出装置1が適用される車両2の構成を示す概略図である。車両2は、エンジン10を搭載しているエンジン自動車である。なお、車両2は、エンジン10およびモータジェネレータを搭載しているハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0011】
エンジン10は、シリンダブロック20、ピストン22およびシリンダヘッド24を有する。シリンダブロック20には、複数のシリンダ26が形成されている。
図1では、複数のシリンダ26のうちの1つのシリンダ26を例示している。
図1中の一点鎖線C1は、シリンダ26の軸を示している。シリンダ26は、シリンダ26の軸方向が実質的に水平方向になるように配置されている。エンジン10は、例えば、複数のシリンダ26が水平に配置されるとともに対向配置される水平対向エンジンである。
【0012】
ピストン22は、シリンダ26の内部に摺動可能に収容される。シリンダヘッド24は、シリンダ26の開口部を塞ぐようにシリンダブロック20に接続される。シリンダ26、ピストン22およびシリンダヘッド24により囲まれた空間は、燃焼室28としての役割を果たす。
【0013】
シリンダヘッド24のうち燃焼室28に面した部位には、吸気口30および排気口32が形成される。吸気口30は、シリンダ26の軸よりも鉛直上方側に形成される。排気口32は、シリンダ26の軸よりも鉛直下方側に形成される。
【0014】
シリンダヘッド24の内部には、吸気ポート34および排気ポート36が形成される。吸気ポート34は、燃焼室28に面した吸気口30から、シリンダ26の軸方向に対する仰角方向に傾斜して延在している。排気ポート36は、燃焼室28に面した排気口32から、シリンダ26の軸方向に対する俯角方向に傾斜して延在している。
【0015】
シリンダヘッド24には、吸気弁38、排気弁40、インジェクタ42および点火プラグ44が設けられる。吸気弁38は、吸気ポート34の吸気口30を開閉する。排気弁40は、排気ポート36の排気口32を開閉する。
【0016】
吸気弁38が開状態となると、吸気ポート34を通じて燃焼室28に空気が送入される。インジェクタ42は、燃焼室28に燃料を噴射する。点火プラグ44は、空気と燃料との混合気を点火して燃焼させる。混合気が燃焼することでピストン22がシリンダ26の内部で摺動する。ピストン22が摺動すると、クランク軸が回転し、ピストン22の摺動による駆動力がクランク軸を通じて車輪に伝達される。
【0017】
混合気が燃焼すると、燃焼室28の内部にガスが発生する。排気弁40が開状態となると、燃焼室28の内部のガスが排気ポート36を通じて燃焼室28の外部に排出される。
【0018】
また、エンジン10は、吸気管46、排気管48、触媒50およびEGR管52を有する。なお、EGRは、Exhaust Gas Recirculation(排気再循環)の略である。
【0019】
吸気管46は、吸気ポート34に接続されている。吸気管46は、エンジン10の外部の空気を取得して吸気ポート34に導く。
【0020】
排気管48は、排気ポート36に接続されている。例えば、シリンダ26が複数ある場合、排気ポート36もシリンダ26と同様に複数設けられるため、排気管48は、排気ポート36ごとの排気管48を1つの排気管48に合流するエキゾーストマニホールドを含んでもよい。排気ポート36を通じて排出されたガスは、排気管48の内部を流通する。
【0021】
触媒50は、排気管48の途中に設けられる。より詳細には、触媒50は、排気管48におけるエキゾーストマニホールドの合流部よりもガスの流れの下流側に設けられる。触媒50は、排気管48の内部を流通するガスを浄化する。触媒50による浄化後のガスが、エンジン10の外部に排出される。
【0022】
EGR管52の2つの端部のうち、第1の端部は、排気管48における排気ポート36と触媒50との間の位置に接続されている。より詳細には、EGR管52の第1の端部は、排気管48におけるエキゾーストマニホールドの合流部と触媒50との間の位置に接続されている。EGR管52の第2の端部は、吸気管46に接続されている。EGR管52は、排気管48を流通するガスの一部をエンジン10の吸気側に還流する。
【0023】
上述のように、エンジン10の動作時、燃焼室28の内部には、混合気の燃焼に起因するガスが発生する。このガスの大部分は、排気ポート36および排気管48を通じてエンジン10の外部に排出される。
【0024】
しかし、動作していたエンジン10が停止した際に、燃焼室28の内部にガスの一部が残留することがある。エンジン10が停止状態で維持され、燃焼室28の温度が低下すると、燃焼室28の内部において、残留したガスの成分を含む凝縮水が生じることがある。
【0025】
ここで、直列4気筒エンジンのように、シリンダが水平方向に対して傾斜して配置されるエンジンの場合、燃焼室の内部で発生した凝縮水は、シリンダとピストンとの間を通じてクランクケースに排出される。
【0026】
しかし、水平対向エンジンのように、シリンダ26が実質的に水平に配置されていると、燃焼室28の内部で発生した凝縮水がクランクケースに排出されず、燃焼室28の内部に残留してしまう。そうすると、ガスの成分を含む凝縮水によって、シリンダヘッド24における燃焼室28に面する内面やシリンダ26の内面に腐食が生じ、燃焼室28の内面が損傷するおそれがある。
【0027】
そこで、本実施形態にかかる凝縮水の排出装置1は、燃焼室28の内部で発生した凝縮水をエンジン10の外部に排出する。本実施形態の凝縮水の排出装置1は、
図1で示すように、凝縮水排出口60、凝縮水排出ポート62、凝縮水排出管64、開閉弁66および制御装置68を備える。
【0028】
図2は、シリンダヘッド24側から燃焼室28を見たときの概略透視図である。
図1および
図2で示すように、凝縮水排出口60は、燃焼室28に開口している。凝縮水排出口60は、例えば、円形に形成されるが、多角形など任意の形状に形成されてもよい。
【0029】
凝縮水排出口60は、燃焼室28の下部に形成される。より詳細には、凝縮水排出口60は、シリンダヘッド24における燃焼室28に面した部位のうち、鉛直方向の最下部に形成される。これにより、燃焼室28の内部で発生した凝縮水は、自重により、凝縮水排出口60を通じて燃焼室28の外部に移動可能となる。
【0030】
図1で示すように、凝縮水排出ポート62は、シリンダヘッド24の内部に形成される。凝縮水排出ポート62は、凝縮水排出口60とエンジン10の外部とを連通する。より詳細には、凝縮水排出ポート62は、凝縮水排出口60から、シリンダ26の軸方向に対する俯角方向に傾斜して延在する。これにより、凝縮水排出口60を通じて凝縮水排出ポート62に移動した凝縮水は、自重により、凝縮水排出ポート62を通じて凝縮水排出口60から離隔する方向に移動可能となる。
【0031】
凝縮水排出管64の2つの端部のうち、第1の端部は、凝縮水排出ポート62における凝縮水排出口60とは反対側の端部に接続されている。凝縮水排出管64の第2の端部は、排気管48のうち、EGR管52の接続位置70と触媒50との間の位置に接続されている。
【0032】
凝縮水排出ポート62および凝縮水排出管64を通じて排気管48に移動した凝縮水は、排気管48を流通するガスの下流側に移動し、排気管48から排出されることで、エンジン10の外部に排出される。
【0033】
凝縮水排出管64と排気管48との接続位置が、EGR管52と排気管48との接続位置70よりも下流側に位置するため、排気管48に移動した凝縮水がEGR管52に進入することを抑制することができる。
【0034】
開閉弁66は、凝縮水排出口60に設けられ、凝縮水排出口60を開閉する。
図3および
図4は、凝縮水排出口60の近傍の部分拡大図である。
図3は、開閉弁66により凝縮水排出口60を閉塞した状態を示している。
図4は、開閉弁66により凝縮水排出口60を開放した状態を示している。
【0035】
開閉弁66は、例えば、電磁弁である。より詳細には、開閉弁66は、筐体80、コア部材82、付勢部材84、コイル86およびプランジャ88を有する。
【0036】
筐体80は中空に形成される。コア部材82、付勢部材84およびコイル86は、筐体80の内部に収容される。プランジャ88は、例えば、円柱状に形成される。プランジャの基端部は、コア部材82に接続される。プランジャ88の先端部90は、筐体80の外部に露出している。プランジャ88の先端部90は、例えば、半球面状に形成されている。プランジャ88は、筐体80に対してプランジャ88の軸方向に摺動可能となっている。
【0037】
コア部材82は、磁性材料により構成される。付勢部材84は、例えば、バネである。付勢部材84の一端は筐体80に接続され、他端はコア部材82に接続される。付勢部材84は、プランジャ88の軸方向における筐体80から離隔する方向に、コア部材82およびプランジャ88を付勢する。コイル86は、コア部材82の周囲に配置される。
【0038】
コイル86に電流が流れていない状態では、
図3で示すように、筐体80に対するプランジャ88の突出量が多くなり、付勢部材84の付勢力によって、プランジャ88の先端部90が、凝縮水排出口60に押圧される。これにより、凝縮水排出口60が閉塞される。
【0039】
一方、コイル86に電流が流れると、電磁誘導によって、付勢部材84の付勢力に抗してコイル86がコア部材82を吸引する。そうすると、
図4で示すように、筐体80に対するプランジャ88の突出量が少なくなり、プランジャ88の先端部90が、凝縮水排出口60から離隔する。これにより、凝縮水排出口60が開放される。
【0040】
図1に戻って説明する。制御装置68は、1つまたは複数のプロセッサ100と、プロセッサ100に接続される1つまたは複数のメモリ102とを備える。メモリ102は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。プロセッサ100は、プログラムを実行することで、エンジン10を制御する。また、プロセッサ100は、プログラムを実行することで、開閉弁66の開閉を制御する開閉弁制御部110としても機能する。
【0041】
開閉弁制御部110は、エンジン10の動作時に、開閉弁66により凝縮水排出口60を閉塞する。また、開閉弁制御部110は、エンジン10の停止時に、開閉弁66により凝縮水排出口60を開放することにより、燃焼室28の内部で発生した凝縮水を、凝縮水排出ポート62を通じてエンジン10の外部に排出する。
【0042】
図5は、開閉弁制御部110の動作を説明するフローチャートである。開閉弁制御部110は、所定の周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、
図5の一連の処理を繰り返し実行する。
【0043】
所定の割込みタイミングが到来すると、開閉弁制御部110は、イグニッションオン(IG-ON)を示す信号を受信したか否かを判定する(S10)。
【0044】
イグニッションオンを示す信号を受信した場合(S10におけるYES)、開閉弁制御部110は、開閉弁66により凝縮水排出口60を閉塞させてから(S11)、エンジン10を始動させ(S12)、一連の処理を終了する。
【0045】
イグニッションオンを示す信号を受信していない場合(S10におけるNO)、開閉弁制御部110は、現時点においてエンジン10が動作中であるかを判定する(S20)。例えば、開閉弁制御部110は、現時点のクランク角をクランク角センサから取得し、現時点のクランク角が、前回の制御タイミングにおけるクランク角から変動している場合に、エンジン10が動作中であると判定してもよい。なお、エンジン10が動作中であるかの具体的な判定方法は、例示した方法に限らず、エンジン10が動作中であるか停止中であるかを適切に判定可能な任意の方法を適用してもよい。
【0046】
エンジン10が動作中であると判定した場合(S20におけるYES)、開閉弁制御部110は、開閉弁66により凝縮水排出口60を閉塞させ(S21)、一連の処理を終了する。例えば、開閉弁制御部110は、開閉弁66のコイル86に電流を流さないようにすることで、プランジャ88の先端部90が凝縮水排出口60に押圧されるようにする。
【0047】
エンジン10の動作時に凝縮水排出口60が閉塞されるため、燃焼室28に送入された空気や燃料などが凝縮水排出口60を通じてエンジン10の外部に漏洩することを防止することができる。その結果、エンジン10の動作時に、エンジン10を適切に動作させることができる。
【0048】
エンジン10が停止中であると判定した場合(S20におけるNO)、開閉弁制御部110は、開閉弁66により凝縮水排出口60を開放させ(S22)、一連の処理を終了する。例えば、開閉弁制御部110は、開閉弁66のコイル86に電流を流すことで、プランジャ88の先端部90を凝縮水排出口60から離隔させる。
【0049】
エンジン10の停止時に凝縮水排出口60が開放されるため、燃焼室28の内部で凝縮水が発生したとしても、発生した凝縮水を、凝縮水排出口60を通じて凝縮水排出ポート62に排出することができる。つまり、凝縮水が燃焼室28の内部に残留することを抑制することができる。その結果、シリンダヘッド24における燃焼室28に面する内面やシリンダ26の内面に腐食が生じることを抑制することができる。
【0050】
なお、エンジン10が動作状態から停止状態に切り替わる場合、ピストン22の摺動が完全に停止してから凝縮水排出口60が開放されることになる。
【0051】
図1に戻って説明する。例えば、凝縮水排出管64や排気管48のレイアウトの制約などにより、凝縮水排出管64の一部において、凝縮水排出管64の内部における凝縮水の下流側への移動を物理的に阻害する流動阻害部分を設けざるを得ない場合がある。流動阻害部分は、例えば、シリンダ26の軸方向に対して仰角方向に傾斜する上昇部分、または、軸方向に対して水平方向に延びる水平部分などである。このような流動阻害部分が存在する場合、凝縮水の自重による移動だけでは、凝縮水が、排気管48まで到達できず、凝縮水排出ポート62の内部や凝縮水排出管64の内部で滞留することがある。
【0052】
そこで、凝縮水排出ポート62は、排気ポート36の少なくとも一部と並走するように配置される並走部120を有する。並走部120は、凝縮水排出ポート62のうち、排気ポート36の一部に対して近接かつ隣接して配置される部分である。例えば、凝縮水排出ポート62の並走部120は、排気ポート36に対して、近距離に配置される。ここでの近距離は、排気ポート36を流通するガスの熱を凝縮水排出ポート62の並走部120に伝達することが可能な程度の距離である。
【0053】
例えば、排気ポート36の一部と凝縮水排出ポート62の並走部120とが2重管構造となるように、並走部120が形成される。
図1の例では、排気ポート36の外周に凝縮水排出ポート62の並走部120が配置された2重管構造となるように、並走部120が形成されている。この場合、排気ポート36の外周の全周に亘って凝縮水排出ポート62の並走部120が配置されている。凝縮水排出ポート62の並走部120の内径は、排気ポート36の外径よりも大きい。凝縮水排出ポート62の並走部120は、排気ポート36の全周を取り囲むように排気ポート36を内包している。
【0054】
なお、並走部120は、排気ポート36の外周の全周に亘って凝縮水排出ポート62の並走部120が配置される態様に限らない。排気ポート36の外周の一部に沿って、凝縮水排出ポート62の並走部120が配置されてもよい。また、凝縮水排出ポート62の並走部120の外周に排気ポート36が配置された2重管構造となるように、並走部120が形成されてもよい。
【0055】
燃焼室28の内部で発生した凝縮水は、エンジン10の停止時に、自重により凝縮水排出ポート62に移動し、仮に、凝縮水排出ポート62の内部や凝縮水排出管64の内部で滞留したとする。その後、エンジン10が動作すると、排気ポート36を流通するガスの熱が凝縮水排出ポート62の並走部120に伝達される。そうすると、凝縮水排出ポート62の温度が上昇し、凝縮水排出ポート62の内部や凝縮水排出管64に滞留していた凝縮水が気化する。
【0056】
気化した凝縮水は、液体の凝縮水と比べて、移動し易い。そのため、気化した凝縮水は、凝縮水排出管64の一部に流動阻害部分があったとしても、凝縮水排出管64の内部を下流側に向けて移動して排気管48に到達することができる。
【0057】
このように、凝縮水排出ポート62に並走部120を設けることにより、排気ポート36を流通するガスの熱を、凝縮水排出ポート62に効果的に伝達することができる。これにより、凝縮水排出ポート62の内部や凝縮水排出管64の内部に滞留する凝縮水を、適切に気化させることができる。凝縮水を気化させることで、凝縮水を排気管48に効果的に移動させることができる。
【0058】
なお、凝縮水排出口60から排気管48に至るまでに流動阻害部分が無い場合には、並走部120を省略してもよい。
【0059】
図1で示すように、並走部120は、燃焼室28から凝縮水排出ポート62に排出された凝縮水の少なくとも一部を貯留可能な底部122を有する。底部122は、並走部120における凝縮水排出口60とは反対側に設けられる。例えば、底部122は、並走部120の下端に設けられ、並走部120の内部空間の底を形成する部分である。底部122は、例えば、シリンダ26の軸方向に延びる平面で形成される。なお、底部122は、平面に限らず、例えば、鉛直下方に窪んでいてもよい。
【0060】
並走部120に底部122が設けられると、エンジン10の停止時に、自重により凝縮水排出ポート62に移動した凝縮水は、並走部120の底部122に貯留され易くなる。これにより、その後、エンジン10が動作したとき、並走部120に伝達された熱により、並走部120の底部122に貯留されていた凝縮水が気化する。
【0061】
このように、並走部120に底部122を設けることにより、凝縮水排出ポート62および凝縮水排出管64のうち最も温度が高くなる並走部120に凝縮水が貯留され易くなることから、凝縮水を効果的に気化させることができる。その結果、凝縮水を排気管48に、より効果的に移動させることができる。
【0062】
なお、凝縮水排出管64の内部に滞留する凝縮水を気化できる程度に、凝縮水排出管64に熱が伝達される場合には、底部122を省略してもよい。
【0063】
以上のように、本実施形態の凝縮水の排出装置1は、凝縮水排出口60と、凝縮水排出ポート62と、開閉弁66と、制御装置68とを備える。本実施形態の制御装置68のプロセッサ100は、エンジン10の動作時に、開閉弁66により凝縮水排出口60を閉塞する。本実施形態の制御装置68のプロセッサ100は、エンジン10の停止時に、開閉弁66により凝縮水排出口60を開放することにより、燃焼室28の内部で発生した凝縮水を、凝縮水排出ポート62を通じてエンジン10の外部に排出する。
【0064】
本実施形態の凝縮水の排出装置1によれば、エンジン10の停止時に、燃焼室28の内部で凝縮水が発生したとしても、発生した凝縮水をエンジン10の外部に適切に排出することが可能となる。その結果、本実施形態の凝縮水の排出装置1では、凝縮水に起因する燃焼室28の内部の損傷を抑制することができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1 凝縮水の排出装置
10 エンジン
24 シリンダヘッド
26 シリンダ
28 燃焼室
32 排気口
36 排気ポート
48 排気管
50 触媒
52 EGR管
60 凝縮水排出口
62 凝縮水排出ポート
64 凝縮水排出管
66 開閉弁
68 制御装置
70 接続位置
100 プロセッサ
102 メモリ
120 並走部
122 底部