(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142178
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241003BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20241003BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20241003BHJP
B05C 5/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B05C13/02
B65H5/38
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054224
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 宏征
(72)【発明者】
【氏名】今西 亮太
【テーマコード(参考)】
2C056
3F101
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FB01
2C056FB07
2C056HA28
2C056HA29
2C056HA60
3F101FB00
3F101FC11
3F101LA06
3F101LB12
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA23
4F042AA01
4F042BA08
4F042BA10
4F042DF07
4F042DF11
4F042DF17
4F042DF29
(57)【要約】
【課題】袋状の本体部と本体部から側方に向かって伸びる紐部とを有する記録媒体に対して機能液を吐出する液滴吐出装置において、ねじれた紐部によって本体部への印刷が阻害されることを低減する。
【解決手段】本開示による液滴吐出装置は、搬送路と、吐出ヘッドと、矯正部とを有する。搬送路は、印刷面を有する袋状の本体部と、本体部の側方に向かって伸びる扁平状の紐部とを有する記録媒体が搬送される。吐出ヘッドは、搬送路に沿って搬送される記録媒体の印刷面に機能液を吐出する。矯正部は、記録媒体の搬送方向における吐出ヘッドよりも上流に位置し、紐部のねじれを矯正する。矯正部は、幅狭部と、誘導部とを有する。幅狭部は、印刷面と直交する方向における幅が紐部の横断面における長辺の長さよりも小さい。誘導部は、搬送方向における幅狭部よりも上流に位置し、紐部を幅狭部に誘導する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷面を有する袋状の本体部と、前記本体部の側方に向かって伸びる扁平状の紐部とを有する記録媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路に沿って搬送される前記記録媒体の前記印刷面に機能液を吐出する吐出ヘッドと、
前記記録媒体の搬送方向における前記吐出ヘッドよりも上流に位置し、前記紐部のねじれを矯正する矯正部と
を有し、
前記矯正部は、
前記印刷面と直交する方向における幅が前記紐部の横断面における長辺の長さよりも小さい幅狭部と、
前記搬送方向における前記幅狭部よりも上流に位置し、前記紐部を前記幅狭部に誘導する誘導部と
を有する、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記矯正部は、第1ガイド部材と第2ガイド部材とを有し、
前記第1ガイド部材は、平板状の第1部位を有し、
前記第2ガイド部材は、
前記第1部位と対向する平板状の第2部位と、
前記搬送方向における前記第2部位よりも上流に位置し、側面視において、前記搬送方向の上流に向かうにつれて前記搬送路から遠ざかるように延在する第3部位と
を有し、
前記幅狭部は、前記第1部位と前記第2部位との間の隙間に相当し、
前記誘導部は、前記第3部位に相当する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
平面視において、前記第2部位と前記第3部位との境界は、前記搬送路から遠ざかるにつれて前記搬送方向の下流側に位置するように傾斜する、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
平面視における前記境界の傾斜角度は、前記記録媒体の搬送速度に応じた角度である、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記第1ガイド部材は、
前記搬送方向における前記第1部位よりも上流に位置し、側面視において、前記搬送方向の上流に向かうにつれて前記搬送路から遠ざかるように前記搬送路に対して傾斜する第4部位を有する、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記幅狭部は、前記搬送路における前記吐出ヘッドよりも上流の位置と前記吐出ヘッドよりも下流の位置とに跨がって延在する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記幅狭部は、前記印刷面と直交する方向における幅が前記幅狭部における他の箇所よりも狭い狭隘部を有する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記狭隘部は、前記幅狭部と前記誘導部との境界に位置する、請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記狭隘部は、前記幅狭部における前記搬送路側の端部に位置する、請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記第1ガイド部材および前記第2ガイド部材のうち少なくとも一方は、前記搬送方向に沿って延びるスリットを有する、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記スリットの幅は、前記紐部の横断面における長辺の長さよりも小さい、請求項10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記第3部位は、前記搬送路側に位置する第1端部と、前記第1端部の反対に位置する第2端部とを有し、
側面視において、前記第3部位の前記搬送路に対する傾斜角度は、前記第1端部と比較して前記第2端部の方が大きい、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送される記録媒体に対して機能液の液滴をインクジェット方式で吐出する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、段ボール、クラフト紙、紙器などの紙製の資材を記録媒体とする場合の印刷方法および印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、袋状の本体部と本体部から側方に向かって伸びる紐部とを有する記録媒体に対して機能液を吐出する液滴吐出装置において、ねじれた紐部によって本体部への印刷が阻害されることを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による液滴吐出装置は、搬送路と、吐出ヘッドと、矯正部とを有する。搬送路は、印刷面を有する袋状の本体部と、本体部の側方に向かって伸びる扁平状の紐部とを有する記録媒体が搬送される。吐出ヘッドは、搬送路に沿って搬送される記録媒体の印刷面に機能液を吐出する。矯正部は、記録媒体の搬送方向における吐出ヘッドよりも上流に位置し、紐部のねじれを矯正する。矯正部は、幅狭部と、誘導部とを有する。幅狭部は、印刷面と直交する方向における幅が紐部の横断面における長辺の長さよりも小さい。誘導部は、搬送方向における幅狭部よりも上流に位置し、紐部を幅狭部に誘導する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、袋状の本体部と本体部から側方に向かって伸びる紐部とを有する記録媒体に対して機能液を吐出する液滴吐出装置において、ねじれた紐部によって本体部への印刷が阻害されることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る液滴吐出装置の模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る記録媒体の模式的な正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る記録媒体の模式的な背面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る記録媒体の模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る矯正部の模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る矯正部の模式的な正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る矯正部を通過する紐部の状態を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る矯正部を通過する紐部の状態を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る矯正部を通過する紐部の状態を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る第2ガイド部材の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示による液滴吐出装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0011】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0012】
(実施形態)
実施形態に係る液滴吐出装置100について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る液滴吐出装置100の模式的な側面図である。
図2は、実施形態に係る記録媒体7の模式的な正面図である。
図3は、実施形態に係る記録媒体7の模式的な背面図である。
図4は、実施形態に係る記録媒体7の模式的な側面図である。
【0013】
図1に示す液滴吐出装置100は、記録媒体7を搬送方向に搬送しながら、インクジェット方式で記録媒体7に描画を行う。
【0014】
図2~
図4に示すように、液滴吐出装置100が印刷対象とする記録媒体7は、袋状の本体部71と、紐部72とを有する。本体部71は、紙製の袋であり、開口部71aと、第1主面71bと、第1主面71bの反対に位置する第2主面71cとを有する。本体部71は、扁平状に折り畳むことが可能である。
【0015】
紐部72は、扁平状の紙製の紐である。紐部72は、たとえば紙製糸を複数本並列に並べ、それらを接着剤を用いて両面から押圧して形成される。紐部72は、たとえば第2主面71cに接着剤によって固定される。具体的には、
図4に示すように、紐部72は、記録媒体7を側方から見た場合に、第2主面71cと紐部72の長辺とが対向するように接着される。紐部72の長辺は、紐部72の横断面における長辺である。横断面は、直線状に延びた紐部72の長手方向と直交する面で紐部72を切断した断面である。紐部72の両端は、本体部71の両側縁から側方に向かって伸びる。具体的には、紐部72の一端は、扁平に折り畳まれた本体部71の一方側の縁から側方に向かって伸び、紐部72の他端は、本体部71の他方側の縁から側方に向かって伸びる。なお、紐部72の内部には針金が入っていてもよい。
【0016】
液滴吐出装置100は、本体部71が扁平状に折り畳まれた記録媒体7の第1主面71bに対して印刷(印字、描画)を行う。この場合、第1主面71bは、本体部71における吐出ヘッドから機能液が吐出されて印刷(印字、描画)がなされる印刷面に相当する。印刷面は、
図1に示す液滴吐出装置100において記録媒体7の搬送時にZ軸正方向を向く面のことである。したがって、第1主面71bと第2主面71cとが逆になって記録媒体7が搬送される場合には、第2主面71cが印刷面となる。つまり、記録媒体7の紐部72が固定されていない面と固定された面のどちらも印刷面となり得てよく、2度搬送されてそれぞれの面に印刷されてもよい。
【0017】
図1に戻り、液滴吐出装置100は、搬入部1と、搬送機構2と、塗布部4と、搬出部5と、制御装置6とを有する。
【0018】
搬入部1は、搬送機構2の上流に位置する。搬入部1は、ストッカー11と、移載機構12と、載置台13とを有する。ストッカー11は、複数の記録媒体7を収容可能である。移載機構12は、たとえば吸気圧により記録媒体7を吸着する複数の吸着パッドと、複数の吸着パッドをストッカー11と載置台13との間で移動させる移動機構とを有する。載置台13には、記録媒体7が載置される。載置台13は、載置された記録媒体7を搬送機構2に向けて押し出す押し出し機構131を有する。
【0019】
搬入部1は、上記のように構成されており、移載機構12を用いてストッカー11に収容された記録媒体7を一枚ずつ載置台13に移載し、載置台13に載置された記録媒体7を押し出し機構131を用いて搬送機構2に送り出す。
【0020】
搬送機構2は、記録媒体7を水平に搬送する。搬送機構2は、たとえば、ベルトコンベヤであってもよい。この場合、搬送機構2は、循環して搬送される無端帯状のベルト部21と、ベルト部21に回転方向の駆動力を伝達する駆動ローラ22と、駆動ローラ22とともにベルトが巻かれた状態で、ベルト部21を保持する従動ローラ23とを備える。なお、ベルト部21の表面は粘着層が形成されていてもよい。ベルト部21は、記録媒体7が搬送される搬送路の一例である。
【0021】
塗布部4は、搬送機構2の上方に位置する。塗布部4は、搬送機構2のベルト部21に沿って搬送される記録媒体7に対して機能液を塗布する。機能液は、たとえばインクである。具体的には、塗布部4は、記録媒体7の本体部71の第1主面71bに機能液を吐出することによって、機能液を記録媒体7に塗布する。塗布部4は、機能液を吐出する複数の吐出ヘッドを有し、各吐出ヘッドから機能液を記録媒体7に吐出する。
【0022】
搬出部5は、搬送機構2の下流に位置する。搬出部5には、機能液が吐出された後の記録媒体7が収容される。
【0023】
制御装置6は、たとえばコンピュータであり、制御部61と記憶部62とを備える。記憶部62には、液滴吐出装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部61は、記憶部62に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって液滴吐出装置100の動作を制御する。
【0024】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、記憶媒体から制御装置6の記憶部62にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0025】
上記のように構成された液滴吐出装置100では、上述した搬入部1によって記録媒体7が搬送機構2に搬入される。記録媒体7は、第1主面71bが塗布部4の吐出面と対向し、第2主面71cがベルト部21と対向するように載置される。その後、記録媒体7は、搬送機構2によって搬送機構2の下流に位置する搬出部5に向かって水平に搬送される。記録媒体7が搬送機構2によって搬送されている間に、塗布部4は、記録媒体7の第1主面71bに対して機能液を塗布する。
【0026】
ここで、袋状の本体部71と、本体部71から側方に向かって伸びる紐部72とを有する記録媒体7に対して機能液を塗布する場合に、紐部72がねじれていると、紐部72が本体部71の第1主面71bの一部に被さることで印刷が阻害されてしまうおそれがある。具体的には、たとえば、記録媒体7の紐部72は、先端部が第1主面71bの上方に位置するようにねじれる場合がある。このような場合、塗布部4の吐出面と印刷面である第1主面71bとの間に紐部72が介在することで、第1主面71bへの印刷が阻害されるおそれがある。
【0027】
そこで、実施形態に係る液滴吐出装置100は、紐部72のねじれを矯正する矯正部3を有する。
図1に示すように、矯正部3は、記録媒体7の搬送方向における塗布部4よりも上流に位置する。なお、矯正部3は、少なくとも後述する誘導部32および狭隘部311が塗布部4よりも上流に位置していればよい。
【0028】
つづいて、実施形態に係る矯正部3の構成について
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、実施形態に係る矯正部3の模式的な平面図である。
図5には、紐部72がねじれた状態の記録媒体7が破線で示されており、矯正部3によって紐部72のねじれが矯正された記録媒体7が実線で示されている。
図6は、実施形態に係る矯正部3の模式的な正面図である。
【0029】
図5および
図6に示すように、矯正部3は、2つの第1ガイド部材33と、2つの第2ガイド部材34とを有する。
【0030】
2つの第1ガイド部材33は、ベルト部21を挟むようにベルト部21の両側方に配置される。同様に、2つの第2ガイド部材34は、ベルト部21を挟むようにベルト部21の両側に配置される。なお、ベルト部21の側方とは、ベルト部21における記録媒体7の載置面と平行で且つ記録媒体7の搬送方向と直交する方向である。具体的には、実施形態において、ベルト部21の側方とは、ベルト部21のY軸正方向側およびY軸負方向側のことである。第1ガイド部材33は、ベルト部21における記録媒体7の載置面よりも上方に位置し、第2ガイド部材34は、ベルト部21における記録媒体7の載置面よりも下方に位置する。
【0031】
ベルト部21の両側方のうち一側方(たとえば、Y軸正方向)に位置する第1ガイド部材33と第2ガイド部材34とは、記録媒体7の第1主面71bと直交する方向(ここでは、Z軸方向)に間隔をあけて対向配置される。同様に、ベルト部21の両側方のうち他側方(たとえば、Y軸負方向)に位置する第1ガイド部材33と第2ガイド部材34とは、記録媒体7の第1主面71bと直交する方向に間隔をあけて対向配置される。なお、記録媒体7の第1主面71bは、ベルト部21における記録媒体7の載置面と言い換えても良い。
【0032】
第1ガイド部材33は、平板状の第1部位331を有する。同様に、第2ガイド部材34は、平板状の第2部位341を有する。第1ガイド部材33の第1部位331と、第2ガイド部材34の第2部位341とは、ベルト部21の搬送面と平行であり、かつ、互いに対向する。
【0033】
第1ガイド部材33の第1部位331と、第2ガイド部材34の第2部位341との間隔は、紐部72の横断面における長辺の長さL1(
図4参照)よりも狭い。第1部位331と第2部位341との隙間は、矯正部3における幅狭部31に相当する。幅狭部31、言い換えれば、第1部位331および第2部位341は、ベルト部21に沿って、言い換えれば、記録媒体7の搬送方向に沿って延在する。具体的には、実施形態において幅狭部31は、ベルト部21における塗布部4よりも上流の位置と塗布部4よりも下流の位置とに跨がって延在する。
【0034】
また、第2ガイド部材34は、第3部位342を有する。第3部位342は、第2部位341に連続する部位であり、記録媒体7の搬送方向における第2部位341よりも上流に位置する。側面視において、第2部位341は、記録媒体7の搬送方向の上流に向かうにつれてベルト部21における記録媒体7の搬送面から遠ざかるように延在する。言い換えれば、側面視において、第2部位341は、記録媒体7の搬送方向の上流に向かうにつれてベルト部21の搬送面からの距離が大きくなるよう形成されている。
【0035】
また、第1ガイド部材33は、第4部位332を有する。第4部位332は、第1部位331に連続する部位であり、記録媒体7の搬送方向における第1部位331よりも上流に位置する。側面視において、第1部位331は、記録媒体7の搬送方向の上流に向かうにつれてベルト部21における記録媒体7の搬送面から遠ざかるように延在する。言い換えれば、側面視において、第1部位331は、記録媒体7の搬送方向の上流に向かうにつれてベルト部21の搬送面からの距離が大きくなるよう形成されている。
【0036】
第3部位342および第4部位332は、紐部72を幅狭部31に誘導する誘導部32に相当する。
【0037】
図7~
図9は、実施形態に係る矯正部3を通過する紐部72の状態を説明するための模式図である。
図7~
図9では、理解を容易にするために、紐部72を横断面で示している。なお、
図7~
図9は、
図5に示すXI-XI線矢視における断面を拡大した図である。
【0038】
上記のように構成された矯正部3では、まず、誘導部32によって、記録媒体7の紐部72が幅狭部31に誘導される(
図7参照)。幅狭部31の幅は紐部72の横断面における長辺の長さL1よりも小さいため、かかる誘導部32において、紐部72の向きが矯正される。具体的には、誘導部32から幅狭部31に向かうにつれて、幅狭部31の側壁に紐部72の横断面の長辺が対向するように紐部72が回転するため、紐部72のねじれた状態が解消される(
図8、
図9参照)。その後、紐部72は幅狭部31を通過する。
【0039】
このように、実施形態に係る液滴吐出装置100は矯正部3を有することで、記録媒体7の第1主面71bに機能液を吐出する前に、ねじれた紐部72を矯正することができる。これにより、ねじれた紐部72によって本体部71への印刷が阻害されることを低減することができる。
【0040】
実施形態において、矯正部3は、第1ガイド部材33に第3部位342を有するとともに、第2ガイド部材34にも第4部位332を有する。かかる構成によれば、紐部72が上方(Z軸正方向)にねじれている場合および下方(Z軸負方向)にねじれている場合のいずれの場合であっても、紐部72を幅狭部31に適切に誘導することができる。
【0041】
なお、第1ガイド部材33は、必ずしも第4部位332を有することを要しない。言い換えれば、誘導部32は、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34のうち第2ガイド部材34にのみ設けられてもよい。この場合、誘導部32としての第3部位342を有する第2ガイド部材34は、第1ガイド部材33の下方に配置されてもよい。
【0042】
実施形態において、第1ガイド部材33の第1部位331および第2ガイド部材34の第2部位341、言い換えれば、幅狭部31は、塗布部4よりも上流の位置と塗布部4よりも下流の位置とに跨がって延在する。かかる構成によれば、塗布部4による塗布処理が終わるまで紐部72のねじれが矯正された状態をより確実に維持しておくことができる。すなわち、ねじれた紐部72によって本体部71への印刷が阻害されることをより確実に低減することができる。
【0043】
なお、幅狭部31は、少なくとも塗布部4よりも上流に位置していればよく、必ずしも、塗布部4よりも下流の位置まで延在していることを要しない。
【0044】
次に、矯正部3のより詳細な構成について
図10および
図11を参照して説明する。
図10は、実施形態に係る第2ガイド部材34の模式的な平面図である。
図11は、
図6に示すXI-XI線矢視における側面図である。
【0045】
図5および
図10に示すように、第2部位341と第3部位342との境界343は、平面視において、ベルト部21から遠ざかるにつれて、搬送方向の下流側に位置するように傾斜する。なお、第2部位341と第3部位342との境界343は、第2ガイド部材34の下面のうちベルト部21の搬送面と平行な領域の端部の位置、言い換えれば、第2ガイド部材34の下面が立ち上がり始める位置と言い換えてもよい。
【0046】
このように、境界343に傾斜をつけることで、紐部72のうち本体部71との接触部に近い箇所から順に幅狭部31に誘導することができる。これにより、境界343に傾斜をつけない場合、すなわち、境界343が記録媒体7の搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に延びている場合と比較して、紐部72が誘導部32から幅狭部31に入る際に受ける抵抗を低減することができる。
【0047】
境界343の傾斜角度は、記録媒体7の搬送速度に応じた角度であってもよい。かかる構成によれば、紐部72のうち本体部71との接触部に近い箇所から先端に向かうにつれて紐部72が矯正されるタイミングを搬送速度に合わせることができる。これにより、紐部72が誘導部32から幅狭部31に入る際に受ける抵抗を効果的に低減することができる。
【0048】
ここで、境界343の傾斜角度について、記録媒体7の搬送速度に応じた角度とは、以下のような考察に基づいて決定された角度のことを意味している。
【0049】
第1ガイド部材33と第2ガイド部材34とに挟まれた紐部72は、第1ガイド部材33と第2ガイド部材34との間に紐部72の搬送方向に対してある角度を付けて連続的に設けられた幅狭部31と誘導部32との境界部(境界343)を通過することによって、紐部72の根元から先端に向けて徐々に変形させられる。この時、変形に要する仕事は、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34から紐部72に向けて与えられる。ここで、紐部72の全体が第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の境界部(境界343)の間を通過した時に受ける仕事の総量(仕事量)は、紐部72が通過する速度に拠らず一定と考えられる。そこで、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34が紐部72へ与える仕事量をWpとするとき、紐部72が第1ガイド部材33および第2ガイド部材34から受ける力をFd、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の境界部(境界343)の間を通過して変形させられる紐部72の長さをX、紐部72が第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の境界部(境界343)の間を通過するのにかかる時間をΔtとすると、Wpは以下の式(1)で表される。
Wp=Fd*X*Δt ・・・(1)
【0050】
そして、上記の式(1)から、Fdは以下の式(2)で表される。
Fd=Wp/(X*Δt) ・・・(2)
【0051】
ここで、紐部72が第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の間を通過する速度が大きい場合はΔtが小さくなるので、Fdが大きくなる。逆に、速度が小さい場合はFdが小さくなる。
【0052】
また、紐部72の全長を伸ばす場合、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の幅は、紐部72の長さ(X)と同じ長さだけ必要になる。そこで、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の幅をxとした場合、紐部72を変形させるための幅狭部31と誘導部32との境界部の搬送方向に対する角度θ(搬送方向に対して傾斜する角度)と、紐部72が受ける抗力の関係を考える。紐部72が境界部を通過して変形させられるのにかかる時間Δtは、搬送速度をvとした場合、以下の式(3)で表される。
Δt=x/tanθ/v=x/(v*tanθ)・・・(3)
【0053】
そして、式(3)を式(2)に代入すると、Fdは、以下の式(4)で表される。
Fd=Wp/(x*(x/v*tanθ))=Wp*v*tanθ/x^2・・・(4)
【0054】
ここで、Wpとxとは、紐部72の仕様が決まれば決まる定数Cとみなし、C=Wp/x^2とすると、Fdは、以下の式(5)で表される。
Fd=C*v*tanθ・・・(5)
【0055】
上記の式(5)により、Fdの大きさは速度vとtanθに比例することが分かる。ここで、tanθは0°~90°の範囲において、θが大きくなるにつれて大きくなるため、なるべく小さい方がFdが小さくなるが、θをあまりにも小さくするとガイドの寸法(紐部の搬送方向の距離(x/tanθ))が大きくなるため、装置サイズの観点からFdが実用上問題ない程度までθを大きくするのが望ましい。
【0056】
ここでは、第2ガイド部材34が有する第2部位341と第3部位342との境界343について説明したが、第1ガイド部材33が有する第1部位331と第4部位332との境界も同様の構成を有する。
【0057】
図5および
図10に示すように、第2ガイド部材34の搬送方向における長さは、ベルト部21から遠ざかるにつれて短くなる。同様に、第1ガイド部材33の搬送方向における長さは、ベルト部21から遠ざかるにつれて短くなる。かかる構成によれば、紐部72を、紐部72のうち本体部71との接触部に近い箇所から先端に向かうにつれて徐々に誘導部32に誘導することができる。これにより、第2ガイド部材34の搬送方向における長さが、ベルト部21からの距離によらず一定である場合と比較して、紐部72が誘導部32に入る際に受ける抵抗を低減することができる。
【0058】
<狭隘部>
図11に示すように、幅狭部31は、第1主面71bと直交する方向(Z軸方向)における幅D1が幅狭部31における他の箇所の幅D2よりも狭い狭隘部311を有する。
図6に示すように、狭隘部311は、幅狭部31と誘導部32との境界部に位置する。幅狭部31と誘導部32との境界部は、上述した第2ガイド部材34における第2部位341と第3部位342との境界343を含む領域である。
【0059】
幅狭部31に誘導された紐部72は、狭隘部311を通過したあとで、幅狭部31の他の箇所を通過する。このため、狭隘部311でねじれを矯正し、その後は搬送の抵抗にならない程度にねじれが解消された状態を維持することで、幅狭部31を通過する際に紐部72が受ける抵抗を低減しつつ、紐部72のねじれが解消された状態を定着することができる。
【0060】
図10に示すように、狭隘部311は、幅狭部31におけるベルト部21側の端部に位置する。紐部72のねじれは、紐部72の根元付近で生じる。したがって、かかる構成とすることにより、紐部72のねじれを適切に解消しつつ、幅狭部31の一端部および他端部の全域に亘って狭隘部311が位置する場合と比較して幅狭部31を通過する際に紐部72が受ける抵抗をさらに低減することができる。
【0061】
<スリット>
図10および
図11に示すように、第1ガイド部材33は、搬送方向に沿って延びる複数(ここでは、4つ)のスリット33aを有する。複数のスリット33aは、搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って並ぶ。同様に、第2ガイド部材34は、搬送方向に沿って延びる複数(ここでは、4つ)のスリット34aを有する。複数のスリット34aは、搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って並ぶ。
【0062】
スリット33a、34aの幅は、紐部72の横断面における長辺の長さL1よりも小さくてもよい。たとえば、スリット34aの幅は、5mm以下であってよく、紐部72が視認可能な2mm~5mm程度であってよい。
【0063】
このように第1ガイド部材33および第2ガイド部材34がスリット33a、34aを有することで、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34がスリット33a、34aを有しない場合と比較して、第1ガイド部材33と第2ガイド部材34との間の隙間を通過する紐部72の状態を目視により容易に確認することができる。また、スリット33a、34aの幅が紐部72の横断面における長辺の長さL1よりも小さいと、ねじれた紐部72がスリット33a、34aに入り込んで引っ掛かることを低減することができる。
【0064】
なお、ここでは、第1ガイド部材33と第2ガイド部材34とがともにスリット33a、34aを有する例を示したが、この限りではない。第1ガイド部材33および第2ガイド部材34の少なくとも一方がスリットを有していてもよい。また、スリット33a、34aの数は4つに限られない。
【0065】
<第3部位の傾斜角度について>
図10および
図11に示すように、第2ガイド部材34の第3部位342は、ベルト部21の位置する第1端部342aと、第1端部342aと反対に位置する第2端部342bとを有する。側面視において、ベルト部21の搬送面に対する第3部位342の傾斜角度は、第1端部342aと比較して第2端部342bの方が大きくてもよい。紐部72は根元部と比べて先端部の方がベルト部21の搬送面から離れやすい。これに対し、実施形態に係る矯正部3によれば、先端部が上方向(Z軸正方向)に大きく曲がった紐部72であっても、第1ガイド部材33および第2ガイド部材34との間の隙間に適切に誘導することができる。
【0066】
第2ガイド部材34と同様に、第1ガイド部材33の第4部位332は、ベルト部21の位置する第1端部332aと、第1端部332aと反対に位置する第2端部332bとを有する。側面視において、ベルト部21の搬送面に対する第4部位332の傾斜角度は、第1端部332aと比較して第2端部332bの方が大きくてもよい。
【0067】
一実施形態において、(1)液滴吐出装置(一例として、液滴吐出装置100)は、搬送路(一例として、ベルト部21)と、吐出ヘッド(一例として、塗布部4)と、矯正部(一例として、矯正部3)とを有する。搬送路は、印刷面を有する袋状の本体部(一例として、本体部71)と、本体部の側方に向かって伸びる扁平状の紐部(一例として、紐部72)とを有する記録媒体(一例として、記録媒体7)が搬送される。吐出ヘッドは、搬送路に沿って搬送される記録媒体の印刷面(一例として、第1主面71b)に機能液を吐出する。矯正部は、記録媒体の搬送方向における吐出ヘッドよりも上流に位置し、紐部のねじれを矯正する。矯正部は、幅狭部(一例として、幅狭部31)と、誘導部(一例として、誘導部32)とを有する。幅狭部は、印刷面と直交する方向における幅が紐部の横断面における長辺の長さよりも小さい。誘導部は、搬送方向における幅狭部よりも上流に位置し、紐部を幅狭部に誘導する。
【0068】
(2)上記(1)の液滴吐出装置において、矯正部は、第1ガイド部材(一例として、第1ガイド部材33)と第2ガイド部材(一例として、第2ガイド部材34)とを有し、第1ガイド部材は、平板状の第1部位(一例として、第1部位331)を有し、第2ガイド部材は、第1部位と対向する平板状の第2部位(一例として、第2部位341)と、搬送方向における第2部位よりも上流に位置し、側面視において、搬送方向の上流に向かうにつれて前記搬送路から遠ざかるように延在する第3部位(一例として、第3部位342)とを有し、幅狭部は、第1部位と第2部位との間の隙間に相当し、誘導部は、第3部位に相当してもよい。
【0069】
(3)上記(2)の液滴吐出装置は、平面視において、第2部位と第3部位との境界は、搬送路から遠ざかるにつれて搬送方向の下流側に位置するように傾斜してもよい。
【0070】
(4)上記(3)の液滴吐出装置において、平面視における境界の傾斜角度は、記録媒体の搬送速度に応じた角度であってもよい。
【0071】
(5)上記(2)または(3)の液滴吐出装置において、第1ガイド部材は、搬送方向における第1部位よりも上流に位置し、側面視において、搬送方向の上流に向かうにつれて搬送路から遠ざかるように搬送路に対して傾斜する第4部位(一例として、第4部位332)を有してもよい。
【0072】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの液滴吐出装置において、幅狭部は、搬送路における吐出ヘッドよりも上流の位置と吐出ヘッドよりも下流の位置とに跨がって延在してもよい。
【0073】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つの液滴吐出装置において、幅狭部は、印刷面と直交する方向における幅が幅狭部における他の箇所よりも狭い狭隘部(一例として、狭隘部311)を有してもよい。
【0074】
(8)上記(7)の液滴吐出装置において、狭隘部は、幅狭部と誘導部との境界に位置してもよい。
【0075】
(9)上記(7)または(8)の液滴吐出装置において、狭隘部は、幅狭部における搬送路側の端部に位置してもよい。
【0076】
(10)上記(2)または(3)の液滴吐出装置において、第1ガイド部材および第2ガイド部材のうち少なくとも一方は、搬送方向に沿って延びるスリット(一例として、スリット33a、34a)を有してもよい。
【0077】
(11)上記(10)の液滴吐出装置において、スリットの幅は、紐部の横断面における長辺の長さよりも小さくてもよい。
【0078】
(12)上記(2)または(3)の液滴吐出装置において、第3部位は、搬送路側に位置する第1端部(一例として、第1端部342a)と、第1端部の反対に位置する第2端部(一例として、第2端部342b)とを有し、側面視において、第3部位の搬送路に対する傾斜角度は、第1端部と比較して第2端部の方が大きくてもよい。
【0079】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 搬入部
2 搬送機構
3 矯正部
4 塗布部
5 搬出部
6 制御装置
7 記録媒体
21 ベルト部
31 幅狭部
32 誘導部
71 本体部
72 紐部
100 液滴吐出装置