(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142182
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20241003BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G18/66 007
C08G18/10
C08G18/32 006
C08G18/76
C08G18/42 069
C08G18/48
C08G18/42 044
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054228
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 慎之介
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD13
4J034DF12
4J034DG02
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
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4J034HC03
4J034HC12
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4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034RA01
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA09
4J034RA12
4J034RA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的な物性、耐加水分解性、低温柔軟性を兼ね備えるポリウレタン系樹脂を形成可能なポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示のポリウレタン樹脂組成物はジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、
前記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、
前記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する前記A成分の含有量が33~67質量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、
前記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、前記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、
前記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する前記A成分の含有量が33~67質量%であるポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記A-B-Aのブロック共重合体の数平均分子量は4000以下である請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリラクトン鎖がポリカプロラクトンである請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ジイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートである請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記鎖延長剤が1,4-ブタンジオールである請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物中の前記ウレタンプレポリマーが前記鎖延長剤により架橋したポリウレタン系樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、軟質および硬質セグメントのブロックからなる代表的なブロックコポリマーである。軟質セグメントは主に、ポリオールから形成され、硬質セグメントは主に、ジイソシアネートおよび鎖延長剤から形成される(ポリオールの末端におけるヒドロキシルが、硬質セグメントの一部を形成すると考えられる)。
【0003】
特に従来の発明では上記ポリウレタンに使用されるポリオールとして、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール使用することが知られている(たとえば特許文献1)。
【0004】
その他に引張応力や耐摩耗性などの機械的な物性を向上させるために、上記ポリオールとしてポリエステルの構造を含む化合物を使用することも知られている(たとえば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】秋葉 光雄著、「ポリウレタンの劣化と安定化」、日本接着学会誌、Vol.40 No.6,2004年、241-252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のポリオールを使用したポリウレタン樹脂組成物では引張応力や耐摩耗性などの機械的な物性が不十分となる問題があった。また、特許文献1に記載のポリオールは低温時に析出し、樹脂としての柔軟性が損なわれるという問題もあった。
【0008】
また、非特許文献1に記載のポリエステルの構造を含む場合、機械的な物性は向上するものの耐加水分解性に問題があった。
【0009】
したがって、本開示の目的は機械的な物性、耐加水分解性、低温柔軟性を兼ね備えるポリウレタン系樹脂を形成可能なポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意努力した結果、ジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、上記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、上記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、上記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する上記A成分の含有量が特定の割合であるポリウレタン樹脂組成物であれば機械的な物性、耐加水分解性、低温柔軟性を兼ね備えることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0011】
すなわち、本開示はジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、上記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、上記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、上記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する上記A成分の含有量が33~67質量%であるポリウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
上記ポリウレタン樹脂組成物はジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、上記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、上記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、上記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する上記A成分の含有量が33~67質量%であることで、低温柔軟性、耐加水分解性を発揮しつつ、十分な耐摩耗性、引張応力といった機械的な物性を得ることができる。
【0013】
上記A-B-Aのブロック共重合体の数平均分子量は4000以下であることが好ましい。
【0014】
上記ポリラクトン鎖がポリカプロラクトン鎖であることが好ましい。ポリカプロラクトン鎖であることにより、機械的な物性を高めることが容易となる。
【0015】
上記芳香族ジイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートであることが好ましい。
【0016】
上記鎖延長剤が1,4-ブタンジオールであることが好ましい。
【0017】
また、本開示は上記ポリウレタン樹脂組成物中の上記ウレタンプレポリマーと上記鎖延長剤とを重合してなるポリウレタン系樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本開示のポリウレタン樹脂組成物は引張応力や耐摩耗性などの機械的な物性、耐加水分解性、低温柔軟性を兼ね備えたポリウレタン系樹脂を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ポリウレタン樹脂組成物]
本開示の一実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物はジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、上記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、上記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、上記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する前記A成分の含有量が33~67質量%である。
【0020】
上記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、上記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、上記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する前記A成分の含有量が33~67質量%であることで、上記ジオール化合物中のエーテルの構造とエステルの構造の量が適度となるため、上記ジオール化合物を含むポリウレタン樹脂組成物は機械的な物性を有しつつ、耐加水分解性、低温柔軟性を兼ね備えることができる。なお、本開示において「機械的な物性」とは耐摩耗性や引張応力といった物理的な性質を総称するものである。
【0021】
<ウレタンプレポリマー>
上記ウレタン樹脂組成物は上記ジオール化合物および上記芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーを含む。すなわち、上記ウレタンプレポリマーは、上記ジオール化合物を含むポリオールと、上記芳香族ジイソシアネートを含むイソシアネートと、必要に応じてその他の成分とを反応させて得られるプレポリマーを含む。
【0022】
上記ウレタンプレポリマーのk値(すなわち、ウレタンプレポリマーを構成するポリオールに対するポリイソシアネートのモル比[ポリイソシアネート/ポリオール])は、2.00以上~5.00未満であることが好ましく、より好ましくは3.00以上~4.80以下であり、さらに好ましくは3.50以上~4.50以下である。k値が5.00未満であることにより、高い柔軟性および耐疲労性を有するポリウレタン樹脂組成物が得られる。また、k値が2.00以上であることにより、十分な強度が得られやすい。
【0023】
(ジオール化合物)
上記ポリオールに含まれる上記ジオール化合物は、A-B-Aのブロック共重合体を含み、上記A-B-Aのブロック共重合体のA成分はポリラクトン鎖、B成分はポリトリメチレンエーテルグリコール鎖である。上記A-B-Aブロック共重合体中の上記各A成分としては異なる構造のポリラクトン鎖を使用してもよいが、本開示に規定する各物性を発揮する観点から、同一のポリラクトン鎖を使用することが好ましい。
【0024】
上記ポリラクトン鎖を形成するラクトンとしては、たとえば、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、8-ヒドロキシオクタン酸ラクトン、12-ヒドロキシドデカン酸ラクトン、13-ヒドロキシトリデカン酸ラクトン、14-ヒドロキシテトラデカン酸ラクトン、15-ヒドロキシペンタデカン酸ラクトン等の3~16員のラクトン化合物、3-エチル-2-ケト-1,4-ジオキサン、1,4-ジオキサン-2-オン、3-プロピル-2-ケト-1,4-ジオキサン等のジオキサン類物等を挙げることができる。
【0025】
上記ラクトンは、アルキル基やアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0026】
上記アルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1~10程度の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0027】
上記アルコキシ基としては、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1~10程度(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)の低級アルコキシ基が挙げられる。
【0028】
本開示において、上記ポリラクトン鎖は上記ラクトンの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて形成することができる。なかでも、機械的な物性を高めることが容易であるため、ε-カプロラクトンから形成されるポリカプロラクトン鎖であることが好ましい。
【0029】
上記ポリラクトン鎖(A成分)の数平均分子量(Mn)は250~1500であることが好ましく、より好ましくは300~1250である。ラクトンの数平均分子量が上記範囲内であることにより、ジオール化合物中のエステル構造の量を適度とすることができる。
【0030】
上記ポリトリメチレンエーテルグリコール鎖(B成分)の数平均分子量(Mn)は500~3000であることが好ましく、より好ましくは600~2000であり、さらに好ましくは800~1500である。上記範囲内であることにより、上記A-B-Aブロック共重合体中のエーテル構造の量を適度とすることができる。
【0031】
上記A-B-Aブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は1000~4000であることが好ましく、より好ましくは1500~3000である。A-B-Aブロック共重合体の数平均分子量がジオール化合物の数平均分子量が1000以上であると、柔軟性を発揮することが容易となり、4000以下であると十分な強度を発揮しやすくなる。
【0032】
また、上記A-B-Aブロック共重合体の全量に対する上記A成分の含有量が33~67質量%であり、好ましくは40~65質量%であり、より好ましくは45~60質量%である。A成分の含有量が上記範囲内であることにより、A-B-Aブロック共重合体中のエステルとエーテルの比を適度として、機械的な物性を発揮することが容易となる。
【0033】
また、上記ジオール化合物として上記A-B-Aブロック共重合体以外のその他のジオール化合物を有していてもよいが、上記ジオール化合物中のエーテルとエステルの構造の量を適度とするために、上記A-B-Aブロック共重合体以外のその他のジオール化合物を含有しないことが好ましい。
【0034】
上記ジオール化合物中の上記A-B-Aブロック共重合体の割合は、上記ジオール化合物の総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0035】
上記A-B-Aブロック共重合体以外のその他のジオール化合物としては、たとえば、ポリトリメチレンエーテルグリコール以外のポリエーテルジオール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステルポリオール等や、上記に例示した化合物と上記ラクトンあるいは上記ポリラクトン鎖との共重合体等が挙げられる。
【0036】
また、上記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール中のジオール化合物の割合は、上記ポリオールの総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0037】
上記ジオール化合物の数平均分子量(Mn)は1000~4000であることが好ましく、より好ましくは1500~3000であり、さらに好ましくは1800~2200である。ジオール化合物の数平均分子量が1000以上であると、柔軟性を発揮することが容易となり、4000以下であると十分な強度を発揮しやすくなる。
【0038】
上記ジオール化合物のJIS K1557に従って測定される水酸基価は28~113KOHmg/gであることが好ましい。より好ましくは37~113KOHmg/gであり、さらに好ましくは51~63KOHmg/gである。この範囲のジオールを用いることで、柔軟性を有しつつ引張強度の高く、耐摩耗性が良好なポリウレタンを得ることができる。
【0039】
上記ジオール化合物のJIS K 1558に従って測定される、60℃での粘度は330mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは300mPa・s以下であり、さらに好ましくは280mPa・s以下である。粘度が上記範囲内であることにより、結晶性を低くすることができる。また、下限値としては特に限定されないが、100mPa・s以上であることが好ましい。
【0040】
また、上記ジオール成分の分子量分布(Mw/Mn)は2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。分子量分布が上記範囲内であることにより、低粘度で加工性に優れ、またポリウレタンとして使用する際に安定した品質を得ることができる。
【0041】
(芳香族ジイソシアネート化合物)
上記ポリウレタン樹脂組成物は上記ウレタンプレポリマーの構成単位として芳香族ジイソシアネート化合物を含有する。上記芳香族ジイソシアネート化合物として1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記芳香族ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルビフェニル(トリジンジイソシアネート(TODI))、4,4'-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート(PPDI)などが挙げられる。中でも、TDI、MDI、TODI、NDI、PPDIが好ましく、より好ましくはMDIである。MDIとしては、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
また、上記ウレタンプレポリマーは上記芳香族ジイソシアネート化合物以外のその他のジイソシアネート化合物を含んでいてもよい。上記その他のジイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物などが挙げられる。上記その他のジイソシアネート化合物は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0044】
上記脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,9-ノナメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
上記脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
上記ウレタンプレポリマーを構成するイソシアネート中の芳香族ジイソシアネート化合物の割合は、上記イソシアネートの総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0047】
(鎖延長剤)
上記ポリウレタン樹脂組成物は公知乃至慣用の鎖延長剤を使用することができる。また、鎖延長剤として一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0048】
上記鎖延長剤としては、特に限定されないが、低分子量のポリオール、ポリアミン等が挙げられる。鎖延長剤の分子量は、たとえば500以下、好ましくは300以下である。
【0049】
上記鎖延長剤としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のジオール;ヘキサメチレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス-2-クロロアニリン等のジアミン等が挙げられる。これらの中でも、ジオールが好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0050】
上記鎖延長剤中の1,4-ブタンジオールの割合は、上記鎖延長剤の総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0051】
上記ポリウレタン樹脂組成物は、上記芳香族ジイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数と、上記ジオール化合物および上記鎖延長剤が有するイソシアネート反応性基(水酸基、アミノ基等)のモル数との比[NCO/NCO反応性基]が、好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.93~1.07、さらに好ましくは0.97~1.03となる範囲で反応させて得られたものが好ましい。すなわち、上記ポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基に由来する構造部のモル数とイソシアネート反応性基に由来する構造部のモル数の比が上記範囲内であることが好ましい。
【0052】
(その他の成分)
また、上記ポリウレタン樹脂組成物は上記ジオール化合物、上記芳香族ジイソシアネート、上記鎖延長剤以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、たとえば、導電剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶媒、充填剤、難燃剤、顔料、抗微生物剤、帯電防止剤、加工助剤、粘度向上剤等を挙げることができる。上記その他の化合物は上記ポリウレタン樹脂組成物の総量100質量%に対して5質量%以下の含有量であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
【0053】
[ポリウレタン系樹脂]
上記ポリウレタン樹脂組成物を公知乃至慣用の方法で硬化させることポリウレタン系樹脂を製造することができる。上記ポリウレタン系樹脂は上記ウレタンプレポリマーが上記鎖延長剤により架橋したものであることが好ましい。
【0054】
上記ポリウレタン系樹脂の製造方法としては、たとえば、プレポリマー法が挙げられる。
【0055】
上記プレポリマー法としてはたとえばジオール化合物に含まれるA成分とB成分とを混合し、公知乃至慣用の方法にてA-B-Aのブロック共重合体を調製後、上記ジオール化合物中のヒドロキシ基に対してイソシアネート基が過剰となるように芳香族ジイソシアネート化合物を120℃以下の温度で予め反応させて得られたイソシアネート基末端を有するプレポリマーと、鎖延長剤とを反応させる方法が挙げられる。
【0056】
上記方法で作製した上記ポリウレタン系樹脂は上記ウレタンプレポリマーを含む構造部と上記鎖延長剤を含む構造部を有することが好ましい。
【0057】
上記ポリウレタン系樹脂は、粘弾性測定により得られるDMAチャートにおいて、-40℃~40℃(好ましくは-60℃~40℃)の間にショルダーピークが確認されないことが好ましい。この場合、上記ポリウレタン樹脂組成物は低温領域で硬くなりにくく、低温柔軟性を発揮することが容易となる。
【0058】
上記ポリウレタン系樹脂はJIS K 7312に従って測定されるA硬度が85以上、D硬度50以下が好ましい。A硬度が85以上であると高強度を発揮することが容易となり、D硬度が50以下だと柔軟性を発揮することが容易となる。
【0059】
また、上記ポリウレタン系樹脂はJIS K 7312に従って3号ダンベルを使用し、温度23℃の条件で測定される400~500%伸長時の引張応力が38MPa以上であることが好ましく、より好ましくは40MPa以上であり、さらに好ましくは42MPa以上である。なお、上記条件の範囲内で試料が破断した場合は、破断した際の値を評価し、破断しない場合は500%伸長時の引張応力の値を評価するものとする。上記引張応力が38MPa以上であることにより、ポリウレタン系樹脂組成物は十分な強度を発揮することができる。また上限としては特に制限されないが70MPa以下であることが好ましい。
【0060】
また、上記ポリウレタン系樹脂はJIS K 7312に従って実施するテーバー摩耗試験において、厚さ2mm×縦12mm×横20mmの形状に成形した上記ポリウレタン系樹脂の試験片を温度23℃の条件で1000回摩擦した際に試験片の重量の減少量(摩耗量)が12mg以下であることが好ましく、より好ましくは11mg以下である。上記摩耗量が12mg以下であることにより、耐摩耗性を発揮することが容易となる。
【0061】
また、上記ポリウレタン系樹脂は70℃、RH95%の条件下で7日経過前後の引張応力の保持率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは100%である。引張応力の保持率が80%以上であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性を発揮することが容易となる。
【0062】
上記ポリウレタン系樹脂は機械物性、耐加水分解性、低温柔軟性に優れるため、電気・電子部品、精密機器、家電・AV機器、OA機器、自動車、農林水産、食品、繊維、衣類、皮革、医療等の多くの分野に用いることができる。
【0063】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、およびその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0064】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0065】
実施例1、比較例1
(ジオール化合物の調製)
フラスコ内にPO3G(ポリトリメチレンエーテルグリコール)とCLMをモル比が、以下の比率になるように加える。
PO3G:CLM=1:(2000-(56100/PO3Gの水酸基価×2))/114.14
減圧脱水操作を行った後、触媒を加え、160℃で反応させ、A成分としてポリカプロラクトンジオール、B成分としてPO3Gを有するA-B-Aのブロック共重合体である実施例1のジオール化合物を得た。なお、上記ジオール化合物中の全量に対する上記A成分の含有量は50質量%であった。また、PO3GをPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)に変更し、同様の方法で合成を行うことにより比較例1のジオール化合物を得た。
【0066】
(プレポリマーの調製)
フラスコ内に上記ジオール化合物および芳香族ジイソシアネート化合物を表1に示すk値(イソシアネート/ポリオールのモル比)に従って加え、混合し、80℃でイソシアネート基の残存量が9NCO%となるよう反応を行い、実施例1、比較例1のプレポリマーを得た。なお、表1中「-」は未添加であること、あるいは測定していない、もしくは測定できない項目を示す。
【0067】
(ポリウレタン系樹脂の試験片の作製)
カップ容器内に上記プレポリマーおよび鎖延長剤をイソシアネート基と水酸基のモル比が1.03になるよう仕込み、真空脱泡撹拌機(商品名「自転・公転ミキサーあわとり練太郎 真空タイプARV-310」、シンキー社製)を用いて混合、脱泡を行い、ポリウレタン樹脂組成物を作製した。その後、厚さ2mm×縦12mm×横20mmの金型に注型を行い、オーブンで120℃、16時間の条件で加熱し、硬化した。さらに、23℃、50%Rhの高温高質環境下で48時間養生し、ポリウレタン系樹脂の試験片を作製した。
【0068】
比較例2~4
(プレポリマーの調製)
ジオール化合物として表1に記載の各ジオール化合物を使用したこと以外は実施例1と同様にして比較例2~4のプレポリマーを得た。
【0069】
(ポリウレタン樹脂の試験片の作製)
比較例2~4のプレポリマーを使用した以外は実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂組成物およびポリウレタン系樹脂の試験片を作製した。
【0070】
表1の各成分の詳細を以下に記載する。
・PO3G1000:ポリトリメチレンエーテルグリコール、SKケミカル社製、数平均分子量1000
・PO3G2000:ポリトリメチレンエーテルグリコール、SKケミカル社製、数平均分子量2000
・PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱ケミカル社製、数平均分子量1000
・PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱ケミカル社製、数平均分子量2000
・PCL2000:ポリカプロラクトンジオール、ダイセル社製、数平均分子量2000
・MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、商品名「ミリオネートMT」、東ソー社製
・BDO:1,4-ブタンジオール、三菱ケミカル社製
【0071】
[評価]
実施例および比較例で得られたジオール化合物、ポリウレタン系樹脂の試験片に関し、以下の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0072】
(1)水酸基価
実施例および比較例のジオール化合物に関して、JIS K 1557に従って水酸基価を測定した。
【0073】
(2)粘度
実施例および比較例のジオール化合物に関して、JIS K 1557に従って60℃での粘度を測定した。
【0074】
(3)分子量分布
実施例および比較例のジオール化合物をそれぞれTHF中に溶解し、THF溶液中の分子量分布をGPC(商品名「HLC-8420GPC」、東ソー社製)を使用して測定した。
【0075】
(4)硬度
実施例および比較例で作製したポリウレタン系樹脂の試験片の23℃でのD硬度をJIS K 7312に従って測定した。
【0076】
(5)coldhardening
実施例および比較例で作製したポリウレタン系樹脂の試験片に対して、粘弾性測定装置(商品名「DMA7100」、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、チャック間20mm、温度-100~200℃、昇温速度2℃/min、周波数10Hz、初期歪み、動歪み0.05、引張りモード状態で、各温度でのE’を測定してDMAチャートを作製した。
【0077】
上記貯蔵弾性率の測定により得られたDMAチャートにおいて、-60℃~40℃の間にショルダーピークが確認されたものを「coldhardeningあり」と評価し、ショルダーピークが確認されなかったものを「coldhardeningなし」と評価した。
【0078】
(6)引張応力
実施例および比較例で作製したポリウレタン系樹脂の試験片を使用してJIS K 7312に従って、3号ダンベルを用いて、温度23℃での100%伸長時、300%伸長時、500%伸長時の各引張応力を測定した。なお、表1中カッコ内に記載の数値は、ポリウレタン試験片が破断した場合の破断時の伸長度を表すものであり、上記範囲内で破断しない場合は500%伸長時の引張応力の値を評価したものである。
【0079】
(7)耐摩耗性
実施例および比較例で作製したポリウレタン系樹脂の試験片を使用してJIS K 7312に従って、テーバー摩耗試験を実施し、温度23℃の条件で1000回の摩耗量(mg)を測定した。
【0080】
(8)引張応力の保持率
実施例および比較例で作製したポリウレタン系樹脂の試験片を使用し、環境試験機(商品名「小型環境試験機SH-641」、ESPEC社製)を用いて、70℃、95%RHの条件下で7日間静置した。試験前後の引張応力の保持率を以下のように評価した。なお、上記引張応力の保持率の計算値が100%以上である場合は結果を100%として評価した。
引張応力の保持率(%)=(試験前の引張応力-試験後の引張応力)/(試験前の引張応力)×100
【0081】
【0082】
実施例1で使用したポリウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン系樹脂は引張応力や耐摩耗性などの機械的な物性、低温柔軟性、耐加水分解性に優れることが確認された。一方で、ジオール化合物がポリラクトン鎖を含有しない場合、引張応力や耐摩耗性などの機械的な物性、低温柔軟性に問題があることが確認された(比較例2,3)。また、A-B-Aのブロック共重合体中のB成分としてポリトリメチレンエーテルグリコール以外のポリエーテルポリオール鎖を使用した場合、引張応力や耐摩耗性などの機械的な物性が十分でなく(比較例1)、ポリラクトン鎖のみ使用した場合、耐加水分解性に劣ることが確認された(比較例4)。
【0083】
以下に本開示のバリエーションを記載する。
[付記1]
ジオール化合物および芳香族ジイソシアネートを構成単位とするウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを含み、
前記ジオール化合物はA-B-Aのブロック共重合体を含み、前記A-B-Aのブロック共重合体はA成分がポリラクトン鎖、B成分がポリトリメチレンエーテルグリコール鎖であり、
前記A-B-Aのブロック共重合体の全量に対する前記A成分の含有量が33~67質量%であるポリウレタン樹脂組成物。
[付記2]
前記A-B-Aのブロック共重合体の数平均分子量は4000以下である付記1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[付記3]
前記ポリラクトン鎖がポリカプロラクトンである付記1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[付記4]
前記芳香族ジイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートである付記1~3のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。
[付記5]
前記鎖延長剤が1,4-ブタンジオールである付記1~4のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。
[付記6]
付記1~5のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物中の前記ウレタンプレポリマーが前記鎖延長剤により架橋したポリウレタン系樹脂。