(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142201
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】廃棄物種類推定装置、廃棄物種類推定方法および廃棄物種類推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20241003BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054262
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽渕 博臣
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】岩下 将也
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH01
2G059HH06
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】屋外に仮置きした堆積中の廃棄物の種類を推定すること。
【解決手段】屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定装置であって、堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出部と、少なくとも1つの画素について、画素スペクトルデータの強度分布パターンと、廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部と、生成した学習済みモデルを用いて廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定部と、を備えた。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定装置であって、
前記堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの前記堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出部と、
少なくとも1つの前記画素について、前記画素スペクトルデータの強度分布パターンと、前記廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部と、
生成した前記学習済みモデルを用いて前記廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定部と、
を備えた廃棄物種類推定装置。
【請求項2】
前記廃棄物種類推定部は、前記学習済みモデルを用いて、前記複数種の廃棄物のうちの1つの廃棄物の種類と、前記複数種の廃棄物のうちの1つの廃棄物の種類以外の廃棄物と、を推定する請求項1に記載の廃棄物種類推定装置。
【請求項3】
前記学習済みモデル生成部は、前記撮像画像において、目視により判断した廃棄物の領域に含まれる少なくとも1つの画素のスペクトルデータと前記廃棄物の種類との関係を人工知能に学習させて前記学習済みモデルを生成する請求項1または2に記載の廃棄物種類推定装置。
【請求項4】
前記撮像画像において、推定された前記廃棄物の種類ごとに画素を特定して、特定された画素の合計面積を算出する合計面積算出部と、
算出された前記合計面積を、前記撮像画像における前記廃棄物の種類ごとに、前記廃棄物の占める面積割合として、識別可能に表示する表示制御部と、
をさらに備えた請求項3に記載の廃棄物種類推定装置。
【請求項5】
屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定方法であって、
前記堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの前記堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出ステップと、
少なくとも1つの前記画素について、前記画素スペクトルデータの強度分布パターンと、前記廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成ステップと、
生成した前記学習済みモデルを用いて前記廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定ステップと、
を含む廃棄物種類推定方法。
【請求項6】
屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定プログラムであって、
前記堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの前記堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出ステップと、
少なくとも1つの前記画素について、前記画素スペクトルデータの強度分布パターンと、前記廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成ステップと、
生成した前記学習済みモデルを用いて前記廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定ステップと、
をコンピュータに実行させる廃棄物種類推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物種類推定装置、廃棄物種類推定方法および廃棄物種類推定プログラム
に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、ごみピット内のごみの表面に赤外線レーザーを照射してごみの特性を示す値またはごみの分類を機械学習させた学習済みモデルを用いて、ごみの特性を示す値等を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、上記文献に記載の技術は、赤外線を用いて室内におけるごみの特性や質を推定するものであり、屋外に仮置きした堆積物中の廃棄物の種類を推定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る廃棄物種類推定装置は、
屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定装置であって、
前記堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの前記堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出部と、
少なくとも1つの前記画素について、前記画素スペクトルデータの強度分布パターンと、前記廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部と、
生成した前記学習済みモデルを用いて前記廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定部と、
を備えた。
【0006】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る廃棄物種類推定方法は、
屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定方法であって、
前記堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの前記堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出ステップと、
少なくとも1つの前記画素について、前記画素スペクトルデータの強度分布パターンと、前記廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成ステップと、
生成した前記学習済みモデルを用いて前記廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係る廃棄物種類推定プログラムは、
屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定プログラムであって、
前記堆積物を撮像した撮像画像から、画素ごとの前記堆積物の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出する画素スペクトルデータ抽出ステップと、
少なくとも1つの前記画素について、前記画素スペクトルデータの強度分布パターンと、前記廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成ステップと、
生成した前記学習済みモデルを用いて前記廃棄物の種類を推定する廃棄物種類推定ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋外に仮置きした堆積中の廃棄物の種類を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置の動作の概要を説明するための図である。
【
図2A】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図2B】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置による廃棄物の推定に用いられるスペクトルの波長域について説明するための図である。
【
図2C】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置による廃棄物の推定に用いられるスペクトルの波長域について説明するための図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置が有する推定テーブルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態に係る廃棄物種類推定装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の好ましい実施形態としての廃棄物種類推定装置100について、
図1~
図5を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る廃棄物種類推定装置100による廃棄物種類の推定の概要について説明する。廃棄物種類推定装置100は、屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定する装置である。
【0012】
ここで、我が国においては、豪雨や地震、台風などの大規模な自然災害が毎年のように発生しており、自然災害が発生すると、その度に災害廃棄物が大量に発生する。予期しない災害廃棄物への対策として、自治体は、被災状況などから統計的に災害廃棄物の量を予測し、災害廃棄物の処理実行計画を立案したり、更新したりしている。
【0013】
しかしながら、災害廃棄物の量は、災害の種類や発生個所等により災害ごとに異なっているため、予測精度は十分とは言えず、予測と実績との乖離を克服する必要がある。災害廃棄物の正確な発生量の把握が遅れることで、処理実行計画の策定自体が遅れ、災害廃棄物の処理効率の低下を招くことが危惧されている。また、廃棄物の集積所、仮置場などにおいて、廃棄物の種類や量を具体的に推定する取り組みもなされているが、効果的な手法は確立されていないのが現状である。
【0014】
これに対して、本実施形態に係る廃棄物種類推定装置100は、例えば、屋外の仮置場に仮置きされた堆積物中に含まれる廃棄物の種類を推定する。堆積物111には複数種類の廃棄物が含まれており、これらが、無秩序に積み上げられた状態となっている。廃棄物種類推定装置100は、カメラ101で撮像した堆積物111の撮像画像110を取得し、取得した撮像画像110から、反射光のスペクトルデータを抽出する。反射光は、太陽光を含む自然光が、堆積物111に当たって、カメラ101の方向へ跳ね返ってくる光である。そのため、反射光には、自然光に由来する光のスペクトルが含まれている。また、スペクトルデータの抽出は、撮像画像全体で行っても、撮像画像110の画素ごとに行ってもよいが、画素ごとに行った方が推定精度を高めることができる。画素ごとに抽出を行った場合、スペクトルデータ(画素スペクトルデータ112)は、撮像画像110の解像度に応じた数のデータの集合となる。
【0015】
そして、廃棄物種類推定装置100は、画素スペクトルデータ112の周波数特性と廃棄物種類との組み合わせを人工知能に学習させて、学習済みモデルを生成する。廃棄物種類推定装置100は、生成した学習済みモデルを用いて、屋外に仮置きされた堆積物中の廃棄物の種類を推定する。なお、学習済みモデルを用いた廃棄物の種類の特定は、撮像画像110の画素数に応じた回数繰り返され、撮像画像110全体の廃棄物の種類の特定が行われる。
【0016】
このようにして、撮像画像110の画素ごとに廃棄物の種類の推定が完了したら、廃棄物種類推定装置100は、推定された廃棄物のそれぞれを識別可能に表示する。例えば、廃棄物種類推定装置100は、推定された廃棄物ごとに色分け表示120をする。このような表示とすることで、どの場所にどのような廃棄物が堆積しているかを容易に認識することが可能となる。
【0017】
次に、
図2を参照して、廃棄物種類推定装置100の構成について説明する。廃棄物種類推定装置100は、画素スペクトルデータ抽出部201、学習済みモデル生成部202、廃棄物種類推定部203、合計面積算出部204および表示制御部205を有する。
【0018】
画素スペクトルデータ抽出部201は、堆積物111を撮像した撮像画像110から、画素ごとの堆積物111の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータ112(スペクトルデータ)を抽出する。これにより、1枚の撮像画像110を画素単位で細かく分析することが可能となる。
【0019】
堆積物111の撮像画像110は、カメラ101で撮像される。カメラ101は、例えば、ハイパースペクトルカメラである。ここで、ハイパースペクトルカメラは、光の波長成分(スペクトル)を細かく分析できるカメラの一種であり、細かい波長ピッチ(例えば、5nm)での光の強度を画素ごとに計測可能となっている。
【0020】
ハイパースペクトルカメラは、分光カメラでもあるため、ハイパースペクトルカメラで撮像したイメージ(画像)には、x,y方向の2次元の平面データに加え、波長の情報も加わることとなる。波長情報が加わったイメージは、データキューブと呼ばれ、データキューブは、x,y方向の2次元の平面イメージが分光された波長ごとに層をなしているイメージを指す。このように得られたイメージ形式(データ形式)を撮像可能なカメラは、RGBカメラ、マルチスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラに区別される。これらのカメラは、バンド情報(バンドの細かさ)で区別することができる。
【0021】
バンド情報については、例えば、RGBカメラのイメージであれば3バンドの波長情報を有し、マルチスペクトルカメラのイメージであれば、10バンド程度の波長情報を有している。
【0022】
これに対して、ハイパースペクトルカメラのイメージでは、100,200バンド以上の波長情報を得ることができる。そのため、ハイパースペクトルカメラでは、マルチスペクトルカメラと比べて、非常に多くの波長データを取得でき、スペクトルの特徴が明確に表れるので、精緻なスペクトルパターンが得られ、細かい解析を行うことが可能となる。
【0023】
廃棄物(例えば、災害廃棄物)の種類によって、得られるスペクトルパターン(反射光の強度分布)が異なるため、廃棄物のスペクトル特性を抽出できれば、廃棄物の種類を精度よく推定することができる。
【0024】
スペクトルは、光(電磁波)の波長ごとの強度分布であり、横軸に波長、縦軸に強度を取った2次元グラフとして表現(定義)できる。また、スペクトルの表現は、2次元表示には限定されず、例えば、SAM(Spectral Angle Mapper:スペクトル角マッパー)として、ベクトルで表現(定義)することも可能である。SAMにおいては、ターゲット・スペクトルと画像スペクトルとをn次元スペクトル空間内のベクトルとして表現する。そのため、この2つのベクトルの間の角度(スペクトル角)が小さいほど類似性が大きいと判断できるので、このような原理を用いると、廃棄物の種類を推定することもできる。
【0025】
図2Bに示したように、得られたスペクトルのうち、用いる波長域は、種類を推定する対象が屋外に仮置きされていることを鑑み、外気(温湿度など)の影響を受けにくい波長域(スペクトルデータの範囲)が用いられる。つまり、スペクトルデータを抽出する反射光の波長の範囲は、1160nm~1310nmおよび1500nm~1720nmの少なくとも一方を用いる。この波長域においては、スペクトルの変化が、例えば、1310nm~1500nmの波長域のスペクトルと比較して、穏やかであるからである。
【0026】
この波長域を、5nmずつ計測可能とすれば、1つの撮像画像110につき、上記波長域で70点以上の強度データを得られる。すなわち、グラフに70点以上のデータを表示することが可能となる。
【0027】
このように、ハイパースペクトルカメラで撮像した画像には、多くの波長データが記録されているため、画素スペクトルデータ抽出部201は、撮像画像110から、屋外に仮置きされた堆積物111からの反射光のスペクトルデータを撮像画像110の画素ごとに抽出する(画素スペクトルデータ112)。なお、1つの堆積物111について、撮像する撮像画像110は、1つであっても、2つ以上であってもよい。すなわち、堆積物111の全周が撮像できるように、カメラ101の位置を動かしながら、複数の画像を撮像してもよい。
【0028】
また、カメラ101をドローンなどの無人航空機に搭載して様々な角度や高さ位置から堆積物111を撮像してもよい。このように、1つの堆積物111について、複数の画像を撮像することにより、堆積物111を立体的に把握することが可能となる。例えば、1つの廃棄物を違う角度から撮像することにより、より多くのスペクトルパターンを得ることができるので、より精度の高い廃棄物の種類の推定を行うことができるようになる。
【0029】
学習済みモデル生成部202は、少なくとも1つの画素について、スペクトルデータ(画素スペクトルデータ112)の強度分布パターンと、廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する。例えば、人工知能に対して、推定対象廃棄物として、紙を推定させたい場合、廃棄物種類推定装置100のオペレータなどが、目視により、撮像画像110における紙の部分に印を付け、紙以外の廃棄物には、紙以外の廃棄物であることを示す印を付けた画像を人工知能に学習させる。これにより、人工知能は、堆積物111に含まれる紙を効率的に学習することが可能となる。同様に、他の廃棄物についても、撮像画像110において、推定対象廃棄物とそれ以外の廃棄物という形式で印を付けて、印を付けた画像を人工知能に学習させる。このような学習過程を、推定対象廃棄物の数だけ繰り返して、学習済みモデル生成部202は、学習済みモデルを生成する。
【0030】
なお、学習済みモデル生成部202が、人工知能に学習させる廃棄物の種類は、例えば、コンクリート、金属、石、陶器、ガラス、木、紙、ビニール製品、織物、プラスチックなどであるが、これらには限定されない。
【0031】
廃棄物種類推定部203は、生成した学習済みモデルを用いて廃棄物の種類を推定する。廃棄物種類推定部203は、例えば、屋外に仮置きされた堆積物111に含まれる廃棄物の種類を推定する。廃棄物種類推定部203は、生成された学習済みモデルを用いて、廃棄物の種類を推定するが、廃棄物の種類の推定方法は、例えば、以下の2通りが考えられる。つまり、撮像画像110に写っている堆積物111に含まれる廃棄物を全て推定させる方法と、堆積物111に含まれる廃棄物の中から1つの廃棄物の種類と、それ以外の廃棄物を推定させる方法と、が考えらえる。
【0032】
ここで、
図2Cに示したように、上述の2通りの推定方法による、正解の割合を、IoU(Intersection over Union)と、RMSE(Root-Mean-Square Error:二乗平均平方根誤差)とにより評価した。
図2Cにおいては、IoUによる評価をIoU評価210として示し、RMSEによる評価をRMSE評価220として示している。
【0033】
IoU評価210およびRMSE評価220のいずれにおいても、堆積物111に含まれる全ての廃棄物の種類を推定させるよりも(all)、堆積物111に含まれる1つの廃棄物の種類とそれ以外の廃棄物の種類とを推定させる方が(each)、正解率が高くなっている。
【0034】
従って、本実施形態においては、学習済みモデル生成部202は、堆積物111に含まれる1つの廃棄物の種類とそれ以外の廃棄物とを人工知能に学習させて学習モデルを生成させている。このように学習させることで、正解率の高い学習済みモデルを得ることが可能となる。なお、撮像画像110に写っている堆積物111に含まれる廃棄物の種類の全てを推定したい場合には、上述した1つの廃棄物の種類とそれ以外の廃棄物とを推定させる方法(each)を必要な回数繰り返せばよい。
【0035】
ここで示した2つの指標は、IoUが、2つの領域(正解と回答)がどれくらい重なっているかを表す指標であり、2つの領域の共通部分を和集合で割った値で示される。廃棄物の検出においては、「どの廃棄物」が、「どこに」写っているかを検出することとなる。つまり、検出された廃棄物の座標と正解の座標との重なり具合を評価することで、廃棄物の検出の精度を測っている。また、RMSEが、モデルにより予測された値と観測された値との差を表す指標であり、この値が小さければ小さいほど誤差が小さく、正解の可能性が高いといえる指標である。
【0036】
合計面積算出部204は、撮像画像110において、推定された廃棄物の種類ごとに画素を特定して、特定された画素の合計面積を算出する。すなわち、廃棄物種類推定部203は、画素ごとに廃棄物の種類を推定しているので、撮像画像110における、各画素の廃棄物の種類は、決まっている。また、撮像画像110において、1画素の大きさは、決まっているので、例えば、同種の廃棄物を示す画素の数をカウントして、カウントされた数と画素の大きさ(面積)を掛け合わせることで、撮像画像110おける所定廃棄物の合計面積を算出できる。
【0037】
表示制御部205は、算出された合計面積を、撮像画像110における廃棄物の種類ごとに、廃棄物の占める面積割合として、識別可能に表示する。例えば、
図1の色分け表示120で示したように、同じ廃棄物には、同じ着色をして、堆積物111の中に占めるそれぞれの廃棄物の割合が一目で分かるような表示としてもよい。また、着色表示とともに、その色が、堆積物全体の面積の中に占める割合の数値を合わせて表示してもよい。
【0038】
図3を参照して、廃棄物種類推定装置100が有する推定テーブル301の一例について説明する。推定テーブル301は、廃棄物種類311に関連付けて強度分布パターン312を記憶する。なお、
図3に示す強度分布パターン312は、説明しやすい概念として、横軸を波長、縦軸を反射強度としたグラフ画像を用いたが、本発明における強度分布パターンはこれに限るものではなく、例えば各波長を次元とするn次元スペクトル空間内のベクトルとして表現することも可能であり(SAM:Spectral Angle Mapperと呼ばれている手法)、現存するあらゆるパターン表現手法を利用することができる。廃棄物種類311は、推定したい廃棄物の種類を示し、例えば、コンクリート、金属、石などである。強度分布パターン312は、複数種類ある廃棄物のそれぞれの反射光のスペクトルの強度分布のパターンを示している。強度分布パターン312は、推定したい廃棄物の種類ごとに、反射光のスペクトルデータを事前に取得したものとなっている。
【0039】
図4を参照して、廃棄物種類推定装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2の廃棄物種類推定装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0040】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。撮像画像データ441は、カメラ101(ハイパースペクトルカメラ)により撮像された堆積物111の画像である。スペクトルデータ442は、撮像された撮像画像データ441に含まれる反射光のスペクトルデータを抽出したデータである。強度分布パターン443は、抽出したスペクトルデータにおける反射光の波長の強度分布を示すパターンである。推定廃棄物データ444は、学習済みモデルを用いて推定された廃棄物に関するデータである。
【0041】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0042】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、推定テーブル301を格納する。推定テーブル301は、
図3に示した、廃棄物種類311と強度分布パターン312との関係を管理するテーブルである。
【0043】
ストレージ450は、さらに、画素スペクトルデータ抽出モジュール451学習済みモデル生成モジュール452、廃棄物種類推定モジュール453、合計面積算出モジュール454および表示制御モジュール455を格納する。画素スペクトルデータ抽出部451は、堆積物111を撮像した撮像画像110から、画素ごとの堆積物111の反射光のスペクトルデータである画素スペクトルデータを抽出するモジュールである。学習済みモデル生成モジュール452は、少なくとも1つの画素について、画素スペクトルデータの強度分布パターンと、廃棄物の種類と、の関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成するモジュールである。廃棄物種類推定モジュール453は、生成した学習済みモデルを用いて廃棄物の種類を推定するモジュールである。合計面積算出モジュール454は、撮像画像110において、推定された廃棄物の種類ごとに画素を特定して、特定された画素の合計面積を算出するモジュールである。表示制御モジュール455は、算出された合計面積を、撮像画像110における廃棄物の種類ごとに、廃棄物の占める面積割合として、識別可能に表示するモジュールである。これらのモジュール451~455は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム456は、廃棄物種類推定装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0044】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、廃棄物種類推定装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0045】
次に
図5に示したフローチャートを参照して、廃棄物種類推定装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2の廃棄物種類推定装置100の各機能構成を実現する。
【0046】
ステップS501において、廃棄物種類推定装置100は、撮像画像110を取得する。ステップS503において、画素スペクトルデータ抽出部201は、撮像画像110から画素スペクトルデータを抽出する。ステップS505において、画素スペクトルデータにおける反射光の波長の高度分布パターンを生成する。ステップS507において、学習済みモデル生成部202は、画素スペクトルデータの強度分布パターンと、廃棄物の種類との関係を人工知能に学習させて学習済みモデルを生成する。
【0047】
ステップS509において、廃棄物種類推定部203は、生成した学習済みモデルを用いて、廃棄物の種類を推定する。ステップS511において、廃棄物種類推定装置100は、撮像画像110の堆積物111に含まれる廃棄物を全て推定したか否かを判定する。推定できたと判定した場合(ステップS511のYES)、廃棄物種類推定装置100は、次のステップ513へ進む。推定できていないと判定した場合(ステップS511のNO)、廃棄物種類推定装置100は、ステップS509へ戻る。
【0048】
ステップS513において、合計面積算出部204は、推定された廃棄物の種類ごとに画素を特定して、特定された画素の合計面積を算出する。ステップS515において、表示制御部205は、算出された合計面積を、撮像画像110における廃棄物の種類ごとに、廃棄物の占める面積割合として、識別可能に表示する。
【0049】
本実施形態によれば、学習済みモデルを用いて、屋外に仮置きされた堆積物に含まれる複数種の廃棄物の種類を推定することができる。また、学習済みモデルを用いて、撮像画像における堆積物から1種類の廃棄物を特定するので、精度高く廃棄物を推定することができる。
【0050】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0051】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。