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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142204
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054266
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 智也
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA08
5H125CD02
5H125DD13
5H125DD14
5H125EE07
5H125EE41
5H125EE44
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】クリープ制御による誤発進を抑制すること。
【解決手段】本発明に係る制御装置は、車両を複数の制御モードで制御するコントローラを有する制御装置であって、コントローラは、制御モードとして、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、第1走行モードから第2走行モードへ移行後、判定時間内に車両が動いたと判定した場合には、第2走行モードから第1走行モードへ移行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を複数の制御モードで制御するコントローラを有する制御装置であって、
前記コントローラは、
前記制御モードとして、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、
前記第1走行モードから前記第2走行モードへ移行後、判定時間内に前記車両が動いたと判定した場合には、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる、
制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
ユーザ操作による入力に応じて、前記複数の制御モードを切り替え、
前記ユーザ操作によって、前記第1走行モードから前記第2走行モードへ移行後、所定時間内に前記車両が動いたと判定した場合には、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車両は、
モータを備え、
前記コントローラは、
前記モータから前記モータの回転角度を取得し、前記モータの前記回転角度の変化を検出した場合、または、センサから前記車両の走行速度を取得し、前記走行速度が第1閾値を超えた場合に、前記車両が動いたと判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記第2走行モードへ移行後、前記判定時間内に走行速度が前記第1閾値を超えた場合に、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1走行モードから前記第2走行モードへ移行後、前記判定時間経過後に走行速度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合に、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記第1走行モードから前記第2走行モードへ切り替え後、前記判定時間内にブレーキスイッチがオフである場合、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記車両を後進させる制御モードである第3走行モードの状態から前記車両を前進させる制御モードへ切り替えるユーザ操作を検知すると、他の制御モードを介さずに前記第2走行モードへ切り替える、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
現在の制御モードにおけるクリープトルクの有無を報知する、
請求項1~7のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項9】
車両を複数の制御モードで制御するコントローラを有する制御装置であって、
前記コントローラは、
前記制御モードとして、非走行モードと、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、
前記非走行モードにある場合に、ユーザによるモード切替操作があると、前記非走行モードから前記第1走行モードへ切り替え、さらに、ユーザによるモード切替操作があると、前記第1走行モードから前記第2走行モードへ切り替える、
制御装置。
【請求項10】
車両を複数の制御モードで制御する制御方法であって、
前記制御モードとして、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、
前記第1走行モードから前記第2走行モードへ移行後、判定時間内に前記車両が動いたと判定した場合には、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる、
制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリープトルクを発生させるクリープ制御を行う電動車両がある。クリープ制御とは、オートマティック車両におけるクリープ現象を再現した制御であり、ユーザがアクセルペダルを踏まずとも電動車両が走行可能な制御である。
【0003】
特許文献1には、クリープ制御のオンとオフを切り替える技術が開示されている。具体的には、特許文献1では、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれた時間に応じてクリープ制御のオンとオフを切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-28812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ブレーキペダルに対する踏み込み時間に応じてクリープ制御のオンとオフが切り替わるので、ユーザの意図しないタイミングでクリープ制御によって車両が動き出してしまうおそれがある。そのため、クリープ制御による誤発進を抑制することが求められる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、クリープ制御による誤発進を抑制することができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、車両を複数の制御モードで制御するコントローラを有する制御装置であって、前記コントローラは、前記制御モードとして、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、前記第1走行モードから前記第2走行モードへ移行後、判定時間内に前記車両が動いたと判定した場合には、前記第2走行モードから前記第1走行モードへ移行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クリープ制御による誤発進を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、制御装置の搭載例を示す図である。
図2図2は、制御モードの概要を示す図である。
図3図3は、制御モードおよび駆動力の概要説明図である。
図4図4は、クリープトルクの駆動力を示すグラフである。
図5図5は、制御装置のブロック図である。
図6図6は、D1モードへの自動遷移条件の一例を示す図である。
図7図7は、D2モードとRモードとの間のモード遷移の一例を示す図である。
図8図8は、モード切替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する制御装置および制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、実施形態に係る制御装置の搭載例について図1を用いて説明する。図1は、制御装置の搭載例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る制御装置10は、車両Vに搭載される。車両Vは、モータによって走行する電動車両である。たとえば、車両Vは、構造が小型、かつ、車両の機能構成が必要最低限である簡易な車両である。制御装置10は、車両Vに搭載されたアクセルセンサおよびブレーキスイッチ等による入力に基づいて、車両Vの走行を制御する。
【0013】
このような構成において、アクセルセンサによる入力は、アクセルペダルの現在の踏み込み量に応じた値を示す一方で、ブレーキスイッチによる入力は、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値を超えたか否かの2値の信号である。そのため、このような構成の車両Vにおいて、制御装置10は、ブレーキペダルの踏み込み量を正確に検知することができない。
【0014】
このような車両Vでは、駆動力の制御にアクセルセンサ(アナログ)とブレーキスイッチ(ON/OFF)程度の操作入力しか用いられておらず、ブレーキ協調制御などは行われていない。
【0015】
このような車両Vでエンジン車のようなクリープトルクを再現すると、出力を開始/停止するべきタイミングが判断できず、常時トルクを出力することで停車中も電力を消費してしまう。
【0016】
そこで、制御装置10は、車両Vにクリープ制御を搭載するにあたり、ユーザによるスイッチ操作に応じて、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードを切り替える構成にしている。
【0017】
図2は、制御モードの概要を示す図である。制御装置10は、車両Vに設けられたシフトスイッチ21に対するユーザ操作に応じて制御モードを切り替える。図2に示す例において、シフトスイッチ21は、Dボタン、Nボタン、Rボタンを有する。
【0018】
Dボタンは、シフトをD(ドライブ)レンジに移行させるためのボタンであり、Nボタンは、シフトをN(ニュートラル)レンジに移行させるためのボタンである。また、Rボタンは、シフトをR(リバース)レンジに移行させるためのボタンである。なお、以下では、Dボタンに対するユーザ操作をD操作、Nボタンに対するユーザ操作をN操作、Rボタンに対するユーザ操作をR操作と記載する。
【0019】
なお、Nレンジはクリープがなく、アクセル操作を行っても車両Vが走行しない非走行のレンジであり、Dレンジは車両Vを前方へ進ませる際に入力するレンジ、Rレンジは車両Vを後方へ進ませる際に入力するレンジである。
【0020】
次に、図2の右図を用いて、シフトスイッチ21に対する各種ユーザ操作と、制御モードの関係について説明する。図2に示すように、制御モードは、Nモード、D1モード(クリープなし)、D2モード(クリープあり)およびRモード(クリープあり)を有する。なお、Nモードは、非走行モードの一例であり、D1モードは、第1走行モードの一例であり、D2モードは、第2走行モードの一例である。また、Rモードは、第3モードの一例に対応する。
【0021】
図2に示すように、現在のモードがNモードである場合、D操作が行われるとNモードからD1モードへ遷移し、R操作が行われるとNモードからRモードへ遷移する。また、現在のモードがD1モードである場合に、D操作が行われると、D1モードからD2モードへ遷移し、N操作が行われると、D1モードからNモードへ遷移する。また、R操作が行われると、D1モードからRモードへ遷移する。
【0022】
また、現在のモードがD2モードである場合、D操作が行われるとD2モードからD1モードへ遷移し、N操作が行われるとD2モードからNモードへ遷移する。また、現在のモードがD2モードである場合、R操作が行われると、D2モードからRモードへ遷移する。
【0023】
図2に示す例では、NモードあるいはRモードからD2モードへ切り替える場合、D1モードを経由する必要があるが、後述するように、制御装置10は、RモードからD2モードへ直接切り替えることも可能である。この点の具体例については、図7を用いて後述する。
【0024】
なお、ここでは、Rモードがクリープトルクありの1つのモードで構成される場合について示しているが、Rモードについてもクリープトルクを発生させるモードと、クリープトルクを発生させないモードの2つのモードで構成するようにしてもよい。
【0025】
次に、図3を用いて、制御モードおよび駆動力の概要について説明する。図3は、制御モードおよび駆動力の概要説明図である。図3には、シフト、ブレーキSW、ブレーキ力、駆動力(クリープトルク)の各時間遷移を示している。
【0026】
図3の時刻t0では、シフトがNモード、ブレーキSWがオン、ブレーキ力が最大(Max)、駆動力が0であるものとする。すなわち、時刻t0においては、Nモードの状態で、アクセルペダルの操作はなく、ユーザがブレーキペダルを強く踏み込んだ状態であるため、車両Vが停車中であることを示す。
【0027】
その後、時刻t1において、ユーザがシフトスイッチ21を操作し、シフトをD1モードへ遷移させ、さらに、所定時間経過後の時刻t2において、シフトをD2モードへ遷移させると、時刻t2において、クリープトルク分の駆動力が生じる。
【0028】
その後、時刻t3から時刻t4にかけて、ユーザがブレーキペダルの踏み込み量を減らすと、踏込量に応じてブレーキ力は最大値から徐々に低下する。そして、駆動力がブレーキ力を上回ったタイミングで車両Vが動きはじめる。
【0029】
このように、制御装置10は、クリープトルクを発生させないD1モードおよびクリープトルクを発生させるD2モードを有し、ユーザによるD操作に応じて双方のモードを切り替えることができる。
【0030】
そのため、制御装置10は、ユーザが意図するタイミングでクリープトルクの有無を切り替えることが可能となる。なお、ここでは、NモードあるいはRモードからD操作を2回行った場合に、D1モードを経由してD2モードへモードを切り替える場合について示したが、これに限定されるものではない。たとえば、車両VにD1モードを経由せずに直接D2モードへ切り替えるD2モード専用のボタンを別途設けるようにしてもよい。
【0031】
次に、図4を用いて、制御モードと駆動力との関係性について説明する。図4は、クリープトルクの駆動力を示すグラフである。図4では、縦軸にモータの駆動力を示し、横軸に車速を示す。図4に示すように、D1モードおよびD2モードにおいては、アクセルに対する駆動力が異なる。具体的には、図4に実線で示すように、D1モードを選択しており、かつアクセル開度が0%である場合の駆動力は0である。一方で図4に破線で示すように、D2モードを選択しており、かつアクセル開度が0%である場合は、クリープトルク分の駆動力が生じる。また、アクセル開度が100%である場合は、D1モードとD2モードのいずれであっても、図4中の一点鎖線のような駆動力となる。
【0032】
このように、D2モードは、アクセル開度0%である場合に、クリープトルク分の駆動力を発生させるモードであるので、ユーザは、D2モードにおいては、アクセルペダルを踏まずとも、車両Vを走行させることができる。
【0033】
なお、図4に示すように、車速がV1以上かつDモードに設定しており、アクセル開度が0%の時に駆動量が負の値となっている。これは、回生エネルギによって車両Vのバッテリを充電させるためである。すなわち、車両Vの車速に応じて、バッテリを充電することで、効率よく充電することができる。
【0034】
次に、図5を用いて、実施形態に係る制御装置10の構成例について説明する。図5は、制御装置10のブロック図である。図5に示すように、制御装置10は、記憶部11と、制御部12とを有する。
【0035】
また、制御装置10は、シフトスイッチ21、アクセルセンサ22、ブレーキスイッチ23、回転角検出器24、車速検出器25、報知装置26および駆動部30が接続される。
【0036】
シフトスイッチ21は、図2にて既に説明したように、ユーザが車両Vの制御モードを切り替えるためのスイッチである。アクセルセンサ22は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた値をセンサ信号として制御装置10へ出力する。
【0037】
ブレーキスイッチ23は、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値を超えたか否かを示す2値の信号を制御装置10へ出力する。回転角検出器24は、走行用モータに接続され、かかる走行用モータの回転角を検出し、検出した回転角を制御装置10へ出力する。なお、車両Vにおいて、走行用モータは、車輪の回転にあわせて回転するので、回転角検出器24は、車輪の回転を検出しているとも言える。
【0038】
車速検出器25は、車両Vの車速を検出し、検出した車速を制御装置10へ出力する。具体的には、車速は、回転角検出器24から取得したモータ制御に使用する回転角を時間微分することによって算出している。報知装置26は、インジケータやスピーカにより構成される。たとえば、報知装置26は、制御装置10による出力に基づき、現在の制御モードがクリープトルクを発生させるモードであるか否かをユーザに対して報知する。
【0039】
より具体的には、報知装置26は、たとえば、現在の制御モードがクリープトルクを発生させるモード(例えば、D2モード)である場合、その旨をユーザに音あるいはインジケータの点灯によってユーザへ報知する。これにより、ユーザは、クリープトルクの有無を聴覚あるいは視覚によって認識することができるので、ユーザの意図しないクリープトルクの発生による車両Vの誤発進を抑制することができる。なお、報知装置26は、たとえば、ディスプレイによって構成されていてもよく、ディスプレイに表示された画像によって現在の制御モードがクリープトルクを発生させるモードであるか否かをユーザに対して報知するようにしてもよい。
【0040】
駆動部30は、たとえば、走行用モータやインバータ等によって構成される。駆動部30は、制御装置10による制御に基づき、インバータを制御し、走行用モータを回転させる。なお、上述の回転角検出器24は、インバータに接続されることから、回転角検出器24および車速検出器25は、駆動部30に設置されるようにしてもよい。その場合、駆動部30から制御装置10へ角度や車速に関する情報が通信によって送信される。
【0041】
記憶部11は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイスによって実現される。記憶部11は、制御プログラムや、各種処理パラメータ情報等を記憶する。各種処理パラメータは、各制御モードの自動遷移を行う各種条件を含む。なお、各種処理パラメータの具体例については、図6を用いて、後述する。
【0042】
制御部12は、コントローラ(controller)であり、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部11に記憶されている実施形態に係る車両処理プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部12は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0043】
制御部12は、車両Vの走行を制御する。制御部12は、シフトスイッチ21から入力されるシフト情報およびアクセルセンサ22から入力されるアクセル信号に基づいて、駆動部30を制御する。
【0044】
制御部12は、現在の制御モードが車両Vを前進させるモード(D1モード、または、D2モード)である場合、アクセル信号に応じて車両Vが前進するように走行用モータを回転させる。また、制御部12は、現在の制御モードが車両Vを後進させるモード(Rモード)である場合、アクセル信号に応じて車両Vが後進するように走行用モータを回転させる。
【0045】
また、制御部12は、シフトスイッチ21に対するユーザ操作によって、制御モードを切り替える。この際、制御部12は、D1モードへの自動遷移条件を満たす場合に、D2モードからD1モードへ制御モードの切り替えを行う。
【0046】
ここで、図6を用いて、D1モードへの自動遷移条件について説明する。図6は、D1モードへの自動遷移条件の一例を示す図である。図6に示すように、たとえば、D1モードへの自動遷移条件は、「D2モードで一定車速を超えた場合」、「D2モードで所定時間車速が検出されなかった場合」、「D2モードへ移行後、所定時間内に車両Vが動き出した場合」、が該当する。
【0047】
自動遷移条件の「D2モードで一定車速を超えた場合」とは、D2モードで車両Vが走行を開始し、走行速度が所定値を超えたことを意味する。この場合、車両Vの走行において、ユーザがクリープトルクを必要としない状況である。なお、所定値とは、たとえば、10km/hなどであるが、任意に設定可能である。
【0048】
そのため、制御部12は、D2モードにおいて、車両Vの走行速度が所定値を超えた場合に、D2モードからD1モードへ移行させる。これにより、車両Vが走行中である場合に不要なクリープトルクの発生を抑制することができる。なお、制御部12は、D2モードに移行してから1秒程度の判定時間経過後に走行速度が所定値(例えば10km/h)を超えたかを判定してもよい。
【0049】
また、自動遷移条件の「D2モードで所定時間車速が検出されなかった場合」とは、車両VがD2モードにおいて所定時間停車していることを意味する。ここでの所定時間は、たとえば、1分であるが、車両Vのバッテリ容量や充電状態に応じて適宜決定するようにしてもよい。車両Vの停車中にクリープトルクを発生させておくと、車両Vの停車中も電力を消費してしまう。そのため、制御部12は、D2モードにおいて、所定時間車速が検出されなかった場合にD1モードへ切り替えることで、電力消費を抑えることができる。なお、この場合、制御部12は、D2モードからNモードへ切り替えるようにしてもよい。
【0050】
また、自動遷移条件の「D2モードへ移行後、所定時間内に車両Vが動き出した場合」とは、他の制御モード(例えば、D1モード)からD2モードに切り替わった後に、車両Vがすぐに動き出すことを意味する。すなわち、ここでの所定時間は、比較的短い時間であり、たとえば、1秒程度であるが、これに限定されるものではない。また、動き出したと判定する所定値は1km/hであるが、任意に設定可能である。
【0051】
具体的には、たとえば、ブレーキスイッチがオンである状況下において、ユーザによるブレーキペダルの踏み込みが弱い状態、D2モードへ切り替えわると、ブレーキ力よりもクリープトルクによる推進力が上回る場合がある。すなわち、クリープトルクによる推進力よりもブレーキペダルの踏み込み量が小さい場合には、ユーザがブレーキペダルを踏んでいたとしても、車両Vが動き出すおそれがある。かかる場合には、ユーザの意図しないタイミングで車両Vが動き出すおそれがある。そのため、制御部12は、D2モードへ切り替え後、車両が動き出した場合、換言すればブレーキスイッチがオフの場合、D2モードからD1モードへ移行させる。
【0052】
なお、ブレーキスイッチとは別にブレーキペダルの踏み込み量を取得するアナログのブレーキセンサを備えていてもよい。制御部12はブレーキセンサから取得した踏み込み量に応じてクリープトルクを発生させる。例えば、踏み込み量が僅かで踏み込み量に応じたクリープトルクが発生し、車両が動き出した場合でも、制御部12はD2モードからD1モードへ移行させる。
【0053】
このように、制御部12は、D2モードへ遷移後、D2モードからD1モードへ制御モードを切り替えることで、クリープトルクによる車両Vの誤発進を抑制することができる。なお、この場合においても、D2モードの遷移先は、D1モードに限定されず、Nモードへ遷移させるようにしてもよい。
【0054】
ここで、制御部12は、車両Vが動いたか否かの判定を回転角検出器24または車速検出器25のいずれかの入力に基づいて判定する。具体的には、回転角検出器24によって走行用モータの回転角、換言すれば、車輪の回転が検知された場合に、制御部12は、車両Vが動いたと判定する。また、回転角検出器24によって走行用モータの回転が検知されなかった場合には、制御部12は、車両Vが動いていない、すなわち、停車中と判定する。
【0055】
このように、制御部12は、走行用モータの回転角に基づいて、車両Vが動いたか否を判定する。これにより、制御部12は、車両Vの動きを正確に把握することができる。
【0056】
また、制御部12は、車速検出器25による入力に基づいて、車両Vが動いたか否かを判定する場合、車速検出器25から入力される車両Vの走行速度が閾値を超えたか否かを判定する。
【0057】
具体的には、制御部12は、車両Vの走行速度が閾値を超えている場合には、車両Vが動いたと判定し、車両Vの走行速度が閾値未満である場合、車両Vが動いていないと判定する。
【0058】
このように、制御部12は、車速検出器25による入力に基づいて、車両Vが動いたか否かを判定することで、既に車両Vに搭載された検出器を活用しつつ、車両Vが動いたか否かを判定することができる。換言すれば、車両Vのパーツを増やすことなく、車両Vが動いたか否かを判定することができるので、車両Vのコストアップを抑えることができる。
【0059】
ところで、D2モードの使用用途として、車両Vの駐車シーンが挙げられる。駐車シーンにおいて、ユーザは車両Vの切り返しによる駐車を行う場合がある。
【0060】
そのため、制御部12は、Rモードから車両Vを前進させるモードへユーザによる切り替え操作が行われた場合、D1モードを経由せず、D2モードへ移行させる。図7は、D2モードとRモードとの間のモード遷移の一例を示す図である。
【0061】
上述のように、図2に示した制御モードのモード遷移では、RモードからD2モードへ制御モードを切り替える場合に、D1モードを経由する必要がある。これに対し、図7に示すように、制御部12は、Rモードから車両Vを前進させるモードへ遷移する場合、D1モードを経由せず、D2モードへ直接遷移させる。
【0062】
この場合、制御部12は、ユーザによるR操作およびD操作に基づき、制御モードをRモードおよびD2モードの間で切り替えることになる。すなわち、制御部12は、車両Vを後進させるリバース状態でクリープトルクを発生させるRモードから車両Vを前進させる制御モードへ切り替える場合、他の制御モードを介さずにD2モードへ切り替える。
【0063】
これにより、いずれもクリープトルクが発生するRモードおよびD2モードで制御モードが切り替わるので、ユーザによる車両Vの駐車時の操作を簡略化することができる。なお、たとえば、制御部12は、ユーザによる所定操作をトリガとして、RモードおよびD2モード間の制御モードの切り替えを行うようにしてもよい。
【0064】
また、制御部12は、たとえば、車両Vの位置情報に基づき、現在地が駐車場か否かに基づいて、D2モードへ切り替えるようにしてもよい。この場合、制御部12は、駐車場の位置を示すマップと、現在地とを照合することで、駐車場か否かを判定し、D2モードへ切り替えるようにしてもよい。
【0065】
次に、図8を用いて、実施形態に係る制御部12が実行する処理手順について説明する。図8は、モード切替処理を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理は、車両Vの電源がオンである期間に制御部12によって繰り返し実行される。
【0066】
図8に示すように、制御部12は、現在のシフトを判定する(ステップS101)。制御部12は、ステップS101において、Nモードと判定した場合、ステップS111へ進む。
【0067】
ステップS111において、制御部12は、切り替え操作の有無を判定し(ステップS111)、ユーザによるモードの切り替え操作があった場合(ステップS111;Yes)、切り替え操作によって指定されたモードへ切り替えて、処理を終了する。また、制御部12は、ユーザによるモードの切り替え操作がなかった場合は(ステップS111;No)、Nモードを継続した状態で、処理を終了する。
【0068】
また、制御部12は、ステップS101において、D1モードと判定した場合、ステップS121の処理へ進む。ステップS121において、制御部12は、D操作、停車、ブレーキのD2モードへの切り替え条件が成立したか否かを判定する(ステップS121)。具体的には、制御部12は、D2モードに切り替えるD操作がなされ、車両Vが停車しており、かつ、ブレーキスイッチがオンの場合にD2モードへの切り替え条件が成立したと判定する。
【0069】
制御部12は、D2モードへの切り替え条件が成立したと判定した場合(ステップS121;Yes)、D2モードへ切り替えて、処理を終了する。また、制御部12は、D2モードへの切り替え条件が成立していないと判定した場合(ステップS121;No)、ユーザによるN操作の有無を判定する(ステップS122)。
【0070】
制御部12は、ユーザによるN操作が行われた場合(ステップS122;Yes)、Nモードへ切り替えて、処理を終了する。また、制御部12は、ユーザによるN操作が行われなかった場合(ステップS122;No)、R操作、停車、ブレーキのRモードへの切り替え条件が成立したか否かを判定する(ステップS123)。具体的には、制御部12は、Rモードに切り替えるモードの操作がなされ、車両Vが停車しており、かつ、ブレーキスイッチがオンの場合にRモードへの切り替え条件が成立したと判定する。
【0071】
制御部12は、Rモードへの切り替え条件が成立したと判定した場合(ステップS123;Yes)、Rモードへ切り替えて処理を終了する。また、制御部12は、Rモードへの切り替え条件が成立していないと判定した場合(ステップS123;No)、D1モードを継続した状態で、処理を終了する。
【0072】
また、制御部12は、ステップS101において、D2モードと判定した場合、ステップS131の処理へ進む。D2モードにおいて、まず、制御部12は、D2モードへ切り替え後、短時間経過(判定時間の一例)したか否かを判定する(ステップS131)。
【0073】
制御部12は、短時間経過したと判定した場合(ステップS131;Yes)、ステップS132へ進み、短時間経過していないと判定した場合(ステップS131;No)、ステップS137の処理へ進む。
【0074】
制御部12は、ステップS137において、走行用モータの回転を検知したか否か、すなわち、車両Vが動いたか否かを判定する(ステップS137)。制御部12は、車両Vが動いたと判定した場合(ステップS137;Yes)、D1モードへ切り替える。また、制御部12は、車両Vが動いていないと判定した場合(ステップS137;No)、ステップS132へ進む。
【0075】
制御部12は、ステップS132において、車両Vの車速が一定車速以上か否かを判定する(ステップS132)。制御部12は、車速が一定車速以上であると判定した場合(ステップS132;Yes)、D1モードへ切り替える。また、制御部12は、車速が一定車速未満であると判定した場合(ステップS132;No)、車両Vによる停車が継続中か否かを判定する(ステップS133)。
【0076】
制御部12は、車両Vの停車が継続していると判定した場合(ステップS133;Yes)、D1モードへ切り替える。具体的には、制御部12は、ステップS131の判定時から、予め設定している時間が経過するまで車両Vが停車していると、停車が継続していると判定する。また、車両Vの停車が継続していないと判定した場合(ステップS133;No)、ステップS134へ進む。
【0077】
つづいて、制御部12は、ユーザによるD操作の有無を判定し(ステップS134)、D操作が行われた場合(ステップS134;Yes)、D1モードへ切り替え、D操作が行われていない場合(ステップS134;No)、ステップS135へ進む。
【0078】
つづいて、制御部12は、ユーザによるN操作の有無を判定し(ステップS135)、N操作が行われた場合(ステップS135;Yes)、Nモードへ切り替え、N操作が行われていない場合(ステップS135;No)、ステップS136へ進む。
【0079】
つづいて、制御部12は、R操作、停車、ブレーキを含む、Rモードへの切り替え条件が成立したか否かを判定する(ステップS136)。具体的には、制御部12は、Rモードに切り替えるR操作がなされ、車両Vが停車しており、かつ、ブレーキスイッチがオンの場合にRモードへの切り替え条件が成立したと判定する。制御部12は、切り替え条件が成立したと判定した場合(ステップS136;Yes)、Rモードへ切り替え、切り替え条件が成立していないと判定した場合(ステップS136;No)、処理を終了する。
【0080】
また、制御部12は、ステップS101において、Rモードと判定した場合、ステップS141の処理へ進む。ステップS141において、制御部12は、D操作の有無を判定し(ステップS141)、D操作が行われた場合(ステップS141;Yes)、前回のモードはD2モードか否かを判定する(ステップS142)。
【0081】
制御部12は、前回のモードがD2モードと判定した場合(ステップS142;Yes)、D2モードへ切り替え、前回のモードがD2モードでない判定した場合(ステップS142;No)、すなわち、前回のモードがD1モードであった場合、D1モードへ切り替える。
【0082】
また、制御部12は、D操作が行われていない場合(ステップS141;No)、処理を終了する。また、図には示していないが、Rモードにおいて、制御部12は、N操作が行われた場合には、Nモードへ切り替えることになる。
【0083】
上述したように、実施形態に係る制御装置10は、車両Vを複数の制御モードで制御するコントローラ(制御部12)を有する制御装置であって、制御部12は、制御モードとして、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、第2走行モードへ移行後、所定時間内に車両Vが動いたと判定した場合には、第2走行モードから第1走行モードへ移行させる。
【0084】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、クリープ制御による誤発進を抑制することができる。
【0085】
また、実施形態に係る制御装置10は、車両Vを複数の制御モードで制御するコントローラ(制御部12)を有する制御装置であって、制御部12は、制御モードとして、非走行モードと、クリープトルクを発生させない第1走行モードと、クリープトルクを発生させる第2走行モードとを有し、ユーザのモード切替操作によって、非走行モードから第1走行モードを切り替え、さらに、ユーザのモード切替操作によって、第1走行モードから第2走行モードへ移行させる。
【0086】
このように、実施形態に係る制御装置10によれば、非走行モードからクリープトルクが発生しない第1走行モードを経てクリープトルクが発生する第2走行モードへ切り替える。したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、非走行モードから第1走行モードを経由して第2走行モードへ移行するので、非走行モードからモード切替を行う際に、クリープトルクによる誤発進を抑制することができる。
【0087】
上述した実施形態では、車両Vの制御モードが、D1モード、D2モード、Nモード、Rモードである場合について説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、制御部12は、上記制御モードの他、P(パーキング)モード等の他の制御モードにて車両Vを制御するようにしてもよい。
【0088】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 制御装置
11 記憶部
12 制御部
21 シフトスイッチ
22 アクセルセンサ
23 ブレーキスイッチ
24 回転角検出器
25 車速検出器
26 報知装置
30 駆動部
V 車両
図1
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図8