(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142208
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理プログラム、データ処理システム、データ表示装置、情報蓄積方法、情報蓄積プログラム、及びデータ蓄積システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054274
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】岡部 達哉
(72)【発明者】
【氏名】永田 孝一
(72)【発明者】
【氏名】立花 団
(72)【発明者】
【氏名】相川 孔一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 昭人
(72)【発明者】
【氏名】田伏 功
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】未確定分の温室効果ガスの排出量を適切に扱うことが可能な情報処理方法等の提供。
【解決手段】データ処理サーバは、情報処理方法を実施し、対象物に紐づく温室効果ガスの排出量、即ち、カーボンフットプリントに関連する排出量情報を処理する。この情報処理方法では、対象物に紐づくカーボンフットプリントに未確定分があるか否かが判定される。そして、未確定分のカーボンフットプリントがある場合、確定分のカーボンフットプリントを示す確定CFPに加えて、未確定分のカーボンフットプリントを示す未定CFPが、対象物の排出量情報として生成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理方法であって、
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分があるか否かを判定し(S107)、
未確定分の前記排出量がある場合、確定分の前記排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の前記排出量を示す未確定分データを、前記対象物の前記排出量情報として生成する(S111)、
というステップを、少なくとも一つのプロセッサ(11)にて実行される処理に含む情報処理方法。
【請求項2】
未確定分の前記排出量を確定させる確定情報がある場合、前記確定情報に基づく前記排出量を前記確定分データに加算してなる更新確定データを生成する(S110)、
というステップをさらに含む請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記未確定分データの生成ステップでは、予め準備された仮の概算値を前記未確定分データとして使用する請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理プログラムであって、
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分があるか否かを判定し(S107)、
未確定分の前記排出量がある場合、確定分の前記排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の前記排出量を示す未確定分データを、前記対象物の前記排出量情報として生成する(S111)、
ことを含む処理を、少なくとも一つのプロセッサ(11)に実行させる情報処理プログラム。
【請求項5】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理するデータ処理システムであって、
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分があるか否かを判定する未確定判定部(S107)と、
未確定分の前記排出量がある場合、確定分の前記排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の前記排出量を示す未確定分データを、前記対象物の前記排出量情報として生成するデータ生成部(S111)と、
を備えるデータ処理システム。
【請求項6】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理方法であって、
前記対象物の前記排出量情報を取得し(S114)、
前記排出量情報に、確定分の前記排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の前記排出量を示す未確定分データが含まれている場合、前記確定分データ及び前記未確定分データを共に表示画面(DP)に表示させる(S115)、
というステップを、少なくとも一つのプロセッサ(111)にて実行される処理に含む情報処理方法。
【請求項7】
前記未確定分データの表示ステップでは、予め準備された仮の概算値を前記未確定分データとして表示させる請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理プログラムであって、
前記対象物の前記排出量情報を取得し(S114)、
前記排出量情報に、確定分の前記排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の前記排出量を示す未確定分データが含まれている場合、前記確定分データ及び前記未確定分データを共に表示画面(DP)に表示させる(S115)、
ことを含む処理を、少なくとも一つのプロセッサ(111)に実行させる情報処理プログラム。
【請求項9】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を表示するデータ表示装置であって、
前記対象物の前記排出量情報を取得する情報取得部(S114)と、
前記排出量情報に、確定分の前記排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の前記排出量を示す未確定分データが含まれている場合、前記確定分データ及び前記未確定分データを共に表示画面(DP)に表示させる表示制御部(S115)と、
を備えるデータ表示装置。
【請求項10】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報をデータベース(20)に蓄積する情報蓄積方法であって、
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分がある場合、未確定分の確定後に生成される確定情報を前記対象物に結びつけるための追跡用情報を前記データベースに記録し(S6)、
未確定分の確定後に前記確定情報を用いて前記対象物に割り当てる前記排出量を計算する(S8)、
というステップを、少なくとも一つのプロセッサ(11)にて実行される処理に含む情報蓄積方法。
【請求項11】
前記追跡用情報の記録ステップでは、前記対象物を製造した製造ラインに関連するライン情報を、前記追跡用情報として前記データベースに記録する請求項10に記載の情報蓄積方法。
【請求項12】
前記記録ステップでは、前記製造ラインを識別するユニークな識別情報と、前記対象物が前記製造ラインにて製造された日時を示す時間情報と、を含む前記ライン情報を前記データベースに記録する請求項11に記載の情報蓄積方法。
【請求項13】
前記記録ステップでは、前記製造ラインを識別するユニークな識別情報と、前記製造ラインの変更によってカウントアップされる連番と、を含む前記ライン情報を前記データベースに記録する請求項11に記載の情報蓄積方法。
【請求項14】
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分がある場合、未確定分の前記排出量を推定した仮の概算値を、前記データベースに記録する(S64,S263)、請求項10~13のいずれか一項に記載の情報蓄積方法。
【請求項15】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報をデータベース(20)に蓄積する情報蓄積プログラムであって、
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分がある場合、未確定分の確定後に生成される確定情報を前記対象物に結びつけるための追跡用情報を前記データベースに記録し(S6)、
未確定分の確定後に前記確定情報を用いて前記対象物に割り当てる前記排出量を計算する(S8)、
ことを含む処理を、少なくとも一つのプロセッサ(111)に実行させる情報蓄積プログラム。
【請求項16】
対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報をデータベース(20)に蓄積するデータ蓄積システムであって、
前記対象物に紐づく前記排出量に未確定分がある場合、未確定分の確定後に生成される確定情報を前記対象物に結びつけるための追跡用情報を前記データベースに記録する情報記録部(S6)と、
未確定分の確定後に前記確定情報を用いて前記対象物に割り当てる前記排出量を計算する排出量算出部(S8)と、
を備えるデータ蓄積システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報の処理及び蓄積の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製品に関わる温室効果ガスの総排出量を導出する導出装置が記載されている。特許文献1の導出装置は、事業者自身により直接的に排出されたスコープ1の排出量だけでなく、間接的に排出されたスコープ2の排出量、及びサプライチェーンの活動によって排出されたスコープ3の排出量を導出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品に関わる温室効果ガスの排出量は、実際には、製品の製造時等に全て確定させることが難しい。特に、特許文献1のように、スコープ3の温室効果ガスの排出量ほど、個々の製品に割り振る排出量を早期に確定させることが困難になる。しかし、特許文献1には、製造時に確定することができない未確定分の排出量を扱うことが想定されていない。
【0005】
本開示は、未確定分の温室効果ガスの排出量を適切に扱うことが可能な情報処理方法、情報処理プログラム、データ処理システム、データ表示装置、情報蓄積方法、情報蓄積プログラム、及びデータ蓄積システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理方法であって、対象物に紐づく排出量に未確定分があるか否かを判定し(S107)、未確定分の排出量がある場合、確定分の排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の排出量を示す未確定分データを、対象物の排出量情報として生成する(S111)、というステップを、少なくとも一つのプロセッサ(11)にて実行される処理に含む情報処理方法とされる。
【0007】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理プログラムであって、対象物に紐づく排出量に未確定分があるか否かを判定し(S107)、未確定分の排出量がある場合、確定分の排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の排出量を示す未確定分データを、対象物の排出量情報として生成する(S111)、ことを含む処理を、少なくとも一つのプロセッサ(11)に実行させる情報処理プログラムとされる。
【0008】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理するデータ処理システムであって、対象物に紐づく排出量に未確定分があるか否かを判定する未確定判定部(S107)と、未確定分の排出量がある場合、確定分の排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の排出量を示す未確定分データを、対象物の排出量情報として生成するデータ生成部(S111)と、を備えるデータ処理システムとされる。
【0009】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理方法であって、対象物の排出量情報を取得し(S114)、排出量情報に、確定分の排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の排出量を示す未確定分データが含まれている場合、確定分データ及び未確定分データを共に表示画面(DP)に表示させる(S115)、というステップを、少なくとも一つのプロセッサ(111)にて実行される処理に含む情報処理方法とされる。
【0010】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を処理する情報処理プログラムであって、対象物の排出量情報を取得し(S114)、排出量情報に、確定分の排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の排出量を示す未確定分データが含まれている場合、確定分データ及び未確定分データを共に表示画面(DP)に表示させる(S115)、ことを含む処理を、少なくとも一つのプロセッサ(111)に実行させる情報処理プログラムとされる。
【0011】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報を表示するデータ表示装置であって、対象物の排出量情報を取得する情報取得部(S114)と、排出量情報に、確定分の排出量を示す確定分データに加えて、未確定分の排出量を示す未確定分データが含まれている場合、確定分データ及び未確定分データを共に表示画面(DP)に表示させる表示制御部(S115)と、を備えるデータ表示装置とされる。
【0012】
これらの態様では、対象物に紐づく排出量に未確定分がある場合、未確定分の排出量を示す未確定分データを生成又は表示することができる。このように、未確定分データとして確定分データと分離することにより、未確定分の温室効果ガスの排出量を適切に扱うことが可能になる。
【0013】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報をデータベース(20)に蓄積する情報蓄積方法であって、対象物に紐づく排出量に未確定分がある場合、未確定分の確定後に生成される確定情報を対象物に結びつけるための追跡用情報をデータベースに記録し(S6)、未確定分の確定後に確定情報を用いて対象物に割り当てる排出量を計算する(S8)、というステップを、少なくとも一つのプロセッサ(11)にて実行される処理に含む情報蓄積方法とされる。
【0014】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報をデータベース(20)に蓄積する情報蓄積プログラムであって、対象物に紐づく排出量に未確定分がある場合、未確定分の確定後に生成される確定情報を対象物に結びつけるための追跡用情報をデータベースに記録し(S6)、未確定分の確定後に確定情報を用いて対象物に割り当てる排出量を計算する(S8)、ことを含む処理を、少なくとも一つのプロセッサ(111)に実行させる情報蓄積プログラムとされる。
【0015】
また開示された一つの態様は、対象物(IM)に紐づく温室効果ガスの排出量に関連する排出量情報をデータベース(20)に蓄積するデータ蓄積システムであって、対象物に紐づく排出量に未確定分がある場合、未確定分の確定後に生成される確定情報を対象物に結びつけるための追跡用情報をデータベースに記録する情報記録部(S6)と、未確定分の確定後に確定情報を用いて対象物に割り当てる排出量を計算する排出量算出部(S8)と、を備えるデータ蓄積システムとされる。
【0016】
これらの態様では、対象物に紐づく排出量に未確定分がある場合、追跡用情報がデータベースに記録される。故に、未確定分の確定後に確定情報に基づく排出量が、対象物に正しく割り当てられ得る。したがって、未確定分の温室効果ガスの排出量を適切に扱うことが可能になる。
【0017】
尚、上記及び特許請求の範囲における括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、特許請求の範囲において明示していない請求項同士の組み合せも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の第一実施形態による情報処理システムの全体像を示すブロック図である。
【
図2】型変更に伴う温室効果ガスの排出量の製品への割り当て手法を説明するための図である。
【
図3】データベースに蓄積される排出量情報の詳細と、排出量情報の表示の詳細とを示す図である。
【
図4】製品製造の流れを示す全体フローの詳細を示す図である。
【
図5】第1蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】第1蓄積処理にて定義されるライン名称の例を示す図である。
【
図7】第2蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図8】第3蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】第4蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】データ処理サーバ及びユーザ端末にて実施されるカーボンフットプリント開示処理の詳細を示すシーケンス図である。
【
図11】第二実施形態の第2蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】第二実施形態の第3蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】第二実施形態の第4蓄積処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
【0020】
(第一実施形態)
図1に示す本開示の第一実施形態による情報処理システム100は、サプライチェーンSC全体でのカーボンフットプリントの算定及び検証を可能にする。サプライチェーンSCは、工業製品、農業製品及び水産物等をエンドユーザEUに届けるための取引者同士の繋がりである。サプライチェーンSCは、多数の取引者によって構築されている。一例として、工業製品をエンドユーザEUに供給するサプライチェーンSCは、原材料の調達、部品の製造、部品の組み立て等を行う多数のサプライヤSP、輸送業者TP、及び完成品メーカMF等を取引者として含んでなる。取引者には、最終製品の2次利用者及びリサイクル業者等がさらに含まれていてもよい。サプライチェーンSCによって供給される最終製品は、例えば自動車、バッテリ、半導体、生鮮食品、水産物、食品、花き類、医薬品、及び化学薬品等、種々の物品であってよい。
【0021】
情報処理システム100は、サプライチェーンSCによって供給される素材、部品、組立品、及び最終製品等を対象物IMとする。情報処理システム100は、対象物IMに紐づく温室効果ガス(Greenhouse Gas)の排出量(以下、GHS排出量)に関連する排出量情報を処理する。具体的に、情報処理システム100は、対象物IMに紐づく排出量情報の収集及び蓄積を継続的に実施し、蓄積した排出量情報を、各取引者、エンドユーザEU、及び監督官庁等に提供する。
【0022】
詳記すると、情報処理システム100は、対象物IMの製造、流通及び販売の各過程において排出されるGHS排出量を示す1次データを排出量情報として取得し、データベース20に蓄積する。情報処理システム100は、エンドユーザEUでの使用及び維持管理に伴うGHS排出量、原材料の採掘及びリサイクル等の工程でのGHS排出量、並びに焼却及び埋め立て等の廃棄に関連する工程でのGHS排出量をさらに取得可能であってよい。情報処理システム100は、蓄積した排出量情報に基づき、各取引者によるGHS排出量を足し合わせ、対象物IMの製品単位でのカーボンフットプリントとして可視化する。情報処理システム100は、カーボンフットプリントのトレーサビリティを実現すると共に、カーボンフットプリントの確からしさ(数値の妥当性)の保証を可能にする。
【0023】
一例として、欧州連合域内では、自動車用、産業用、携帯型等の販売される全てのバッテリを対象とし、カーボンフットプリントの表示が義務付けられる(EU電池規則)。情報処理システム100は、こうしたバッテリ等のカーボンフットプリントの表示が義務付けられた製品を供給するサプライチェーンSCへの適用に好適となる。
【0024】
[カーボンフットプリント]
カーボンフットプリントとして排出量が記録される温室効果ガスは、二酸化炭素のみであってもよく、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類及び六フッ化硫黄等を適宜含んでいてもよい。この場合、二酸化炭素以外の温室効果ガスの排出量は、二酸化炭素の排出量に換算されて、提示されるカーボンフットプリントの値に算入される。
【0025】
カーボンフットプリントとして積算されるGHS排出量(サプライチェーン排出量)は、スコープ1~3に分類されるGHS排出量を合計した値である。スコープ1のGHS排出量(以下、スコープ1排出量)は、サプライヤSP等の事業者の所有又は管理する排出源から直接的に排出されるGHS排出量である。例えば、製造時に事業者の工場で使用された燃料からの排出分がスコープ1排出量に該当する。
【0026】
スコープ2のGHS排出量(以下、スコープ2排出量)は、購入した電気、熱、及び蒸気等のエネルギーを事業者が使用することに伴い、間接的に排出されるGHS排出量である。例えば、購入した電力の発電に伴う排出分がスコープ2の排出量に該当する。カーボンニュートラルの対象となるGHS排出量は、一般的に、スコープ1排出量及びスコープ2排出量となる。
【0027】
スコープ3のGHS排出量(以下、スコープ3排出量)は、スコープ1排出量及びスコープ2排出量を除くGHS排出量である。スコープ3排出量は、活動内容によってさらに15のカテゴリに分類されている。スコープ3排出量は、カテゴリ毎に導出されたGHS排出量を合計した値である。例えば、原材料の調達、従業員の出張、廃棄物の処理委託等に伴う排出分がスコープ3排出量に該当する。スコープ3排出量は、一般的に、ネットゼロの対象となる。
【0028】
[情報処理システム100の構成]
情報処理システム100は、多数のデータ処理端末50、データ処理サーバ10、タイムスタンプサーバ30、及びアプリ配信サーバ40等によって構成されている。ユーザ端末110が、情報処理システム100の構成としてさらに含まれていてもよい。情報処理システム100を構成する各要素は、それぞれ一つのノードとしてネットワークに接続されており、互いに通信可能である。
【0029】
データ処理端末50は、サプライチェーンSCによって供給される最終製品の製造工程に関わるサプライヤSP、輸送業者TP、及び完成品メーカMF等の取引者によって運用される情報処理装置である。データ処理端末50は、取引者の事業拠点等に設置されている。各事業拠点には、前工程の取引者の事業拠点から出荷された素材、部品及び組立品等の製品が納入される。納入された製品は、自工程の事業拠点において加工等の処理を施され、新たな製品として後工程の取引者の事業拠点に出荷される。
【0030】
取引者間でやり取りされる製品には、個々の製品を識別するための識別情報が付属する。識別情報には、データ処理サーバ10によって発行されるユニークなID情報(以下、ユニークID)、又は所定のビット数で生成されたハッシュ値等が用いられる。識別情報は、例えばQRコード(登録商標)等の2次元コードCd、又はRFタグ等に記録され、製品と共に流通する。識別情報は、取引者毎に更新されてもよく、又は複数の取引者間で同じ情報が継続利用されてもよい。
【0031】
データ処理端末50は、制御回路50aを主体とする構成である。制御回路50aは、プロセッサ51、RAM52、記憶部53、入出力インターフェース54及びこれらを接続するバス等を備え、演算処理を実施するコンピュータとして機能する。プロセッサ51は、RAM52と結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ51は、記憶部53に格納されたアプリケーションプログラム(取引記録蓄積プログラム、及び排出量情報蓄積プログラム等)を実行する。入出力インターフェース54には、キーボード及びマウス等の入力デバイス、ディスプレイ、識別情報を読み取るスキャナ又はカメラ、並びに識別情報を紙媒体又はRFタグ等に出力するプリンタ等が電気的に接続されている。
【0032】
データ処理端末50は、取引記録蓄積プログラムに基づく処理により、識別情報の読み取りを行い、製品に関連する取引記録として、どのような取引者(前工程のサプライヤSP等)から何を購入したか、いつ納入されたか等の情報を取得する。加えて、データ処理端末50は、排出量情報蓄積プログラムに基づく処理により、自工程から出荷する流通品の製造等に関連したGHG排出量を示す排出量情報を取得する。データ処理端末50は、取引記録及び排出量情報を、データ処理サーバ10へ向けて送信する。
【0033】
データ処理サーバ10、タイムスタンプサーバ30、及びアプリ配信サーバ40は、サプライチェーンSCの管理者、又は管理者の選定したプラットフォーマーPFによって運用されるサーバ装置である。管理者は、例えば完成品メーカMF、又はサプライチェーンSCによって供給される最終製品に対して監督権限を有する監督官庁等である。プラットフォーマーPFは、インターネット上で大規模な情報処理リソースを提供する事業者、又はサプライチェーンSC全体でのデータ共有を目的としたアライアンス(例えば、Catena-X等)である。データ処理サーバ10、タイムスタンプサーバ30、及びアプリ配信サーバ40は、管理者又はプラットフォーマーPF等によって物理的に管理されるオンプレミスなサーバ装置であってもよく、又はクラウド上に設けられた仮想の構成であってもよい。さらに、データ処理サーバ10、タイムスタンプサーバ30、及びアプリ配信サーバ40は、互いに異なる管理者又はプラットフォーマーPFによって管理される構成であってもよい。
【0034】
データ処理サーバ10は、制御回路10aを主体とする情報処理装置である。制御回路10aは、プロセッサ11、RAM12、記憶部13、入出力インターフェース14、及びこれらを接続するバス等を備えており、演算処理を高速で実施する高性能なコンピュータとして機能する。プロセッサ11は、RAM12と結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ11は、RAM12へのアクセスにより、データの管理及び提供に関連する種々の処理を実行する。記憶部13には、データ管理に関連した機能を実現する情報管理プログラムと、データ提供に関連した機能を実現する情報提供プログラムとが格納されている。情報管理プログラムは、本開示の情報蓄積方法をデータ処理サーバ10に実施させるためのプログラム(情報処理プログラム)である。情報提供プログラムは、本開示の情報処理方法をデータ処理サーバ10に実施させるためのプログラム(情報処理プログラム)である。
【0035】
データ処理サーバ10は、データ処理端末50の送信する取引記録及び排出量情報を、受信によって取得する。データ処理サーバ10は、取得した取引記録及び排出量情報を、対象物IMのトレーサビリティ情報(以下、トレサビ情報)として、データベース20に格納する。トレサビ情報では、蓄積される多数の排出量情報が、取引記録に基づき、互いに関連づけられた状態となる(
図3参照)。データベース20は、プラットフォーマーPFによって管理されるオンプレミスなファイルサーバ内に構築されてもよく、又はクラウド上に設けられた仮想のファイルサーバ内に構築されてもよい。
【0036】
データベース20は、取引記録及び排出量情報を含む保管対象データ(トレサビ情報)を、ブロックチェーンの技術を利用して実質的に改ざん不可能な状態で保管する。一例として、データベース20は、保管対象データをトランザクションとし、プライベート型のブロックチェーンのブロックに格納する。データベース20は、1つのブロックに格納された情報をハッシュ化し、次のブロックに格納することで、各ブロックに格納された保管対象データの改ざんを困難にする。また別の一例として、データベース20は、保管対象データから生成したハッシュ値を、コンソーシアム型又はパブリック型のブロックチェーンのブロックに保存することで、保管対象データの改ざんを実質不可能にしてもよい。
【0037】
データ処理サーバ10は、ユーザ端末110の送信するカーボンフットプリントの照会要求を、受信によって取得する(
図10参照)。データ処理サーバ10は、照会要求にて指定された対象物IMの取引記録を、データベース20に蓄積されたトレサビ情報の中から抽出する。データ処理サーバ10は、取引記録に基づき、対象物IMに関連する排出量情報を、データベース20からさらに抽出する。データ処理サーバ10は、抽出した排出量情報を用いて対象物IMのカーボンフットプリントを算出し、提供用データとして要求元のユーザ端末110に送信する(
図10参照)。
【0038】
タイムスタンプサーバ30は、コンピュータを主体として含むサーバ装置である。タイムスタンプサーバ30は、ニュース配信サーバ等の配信するニュース記事を用いて入力情報を作成する。タイムスタンプサーバ30は、作成した入力情報をハッシュ関数に入力する処理により、所定のビット数(例えば、256ビット)のハッシュ値を、タイムスタンプデータとして生成する。タイムスタンプデータは、データ処理サーバ10に提供され、トレサビ情報の取得時刻又は保存時刻等の改ざんの有無を検証する検証用データとして、トレサビ情報と共にデータベース20に保存される。
【0039】
アプリ配信サーバ40は、コンピュータを主体として含むサーバ装置である。アプリ配信サーバ40は、カーボンフットプリント照会アプリ(以下、CFP照会アプリ)を、ネットワークを通じて、ユーザ端末110に配信する。CFP照会アプリは、流通品又は最終製品のカーボンフットプリントを照会するためのアプリケーションである。CFP照会アプリは、アプリ配信サーバ40からユーザ端末110の記憶部113にダウンロードされ、ダウンロードの完了後、ユーザ端末110に自動的にインストールされる。尚、アプリ配信サーバ40は、例えばユーザ端末110のオペレーティングシステムのベンダーによって管理されるサーバ装置であってもよい。
【0040】
ユーザ端末110は、エンドユーザEUの所有するスマートフォン、タブレット端末及び専用読取端末等である。ユーザ端末110は、制御回路110a及びディスプレイ120に加えて、カメラ及び端末通信機等によって構成されている。制御回路110aは、プロセッサ111、RAM112、記憶部113、入出力インターフェース114及びこれらを接続するバス等を備え、演算処理を実施するコンピュータとして機能する。
【0041】
ユーザ端末110には、上述のCFP照会アプリがインストールされている。ユーザ端末110は、プロセッサ111によるCFP照会アプリの実行により、ディスプレイ120の表示画面DPにカーボンフットプリントを表示させる情報表示装置として機能する。ユーザ端末110は、データ処理サーバ10と連携し、後述するCFP開示処理(
図10参照)を実施する。
【0042】
[1次データ利用の課題]
ここまで説明したカーボンフットプリントは、各取引者によって実際に排出されたGHS排出量の実績値(1次データ)を用いて算定されることが公平性の観点からは望ましい。しかし、1次データを用いたカーボンフットプリントの算定は困難であり、一般的には、産業毎の平均値等、予め登録された数値(2次データ)をカーボンフットプリントの算定に用いるケースが多くなる。さらに、スコープ2排出量、及びスコープ3排出量を含めたカーボンフットプリントを算定する場合、1次データの利用は、いっそう難しくなる。
【0043】
その理由を詳記すると、例えば取引者の事業拠点(工場等)以外のGHS排出量は、定常的に発生しているわけではなく、不定期に発生し、かつ、変動も大きい。こうしたGHS排出量には、例えば設備建設に伴うGHS排出量、ライン改修に伴うGHS排出量、ラインの空調(ブロワーの動作等)に伴うGHS排出量、工場の管理棟でのエネルギー消費に伴うGHS排出量等が挙げられる。こうしたGHS排出量を、その発生時にたまたま製造中であった製品に割り振ることは、非常に不公平であり、公平性を保つためには、不定期に発生するGHS排出量は、関連する全ての製品に均等に割り振ることが望ましい。
【0044】
しかし、
図2に示すように、例えば成形型の変更に伴うGHS排出量は、その後の製造個数の決定後に初めて個々の製品(部品等)に割り振ることが可能になる。具体的には、特定の型変更Aに伴うGHS排出量について、割り振る製品の個数(以下、CFP分配数,m個)は、型変更Aの時点では不明であり、次の型変更Bが行われるタイミングで初めて確定する。故に、型変更Aに伴うGHS排出量は、次の型変更Bまで、個々の製品に割り振ることができない。同様に、型変更Bに伴うGHS排出量のCFP分配数(n個)は、さらに次の型変更Cが行われるタイミングで初めて確定する。故に、型変更Bに伴うGHS排出量も、その次の型変更Cまで、個々の製品に割り振ることができない。以上のように、1次データの使用する場合、CFP分配数の決定までGHS排出量が割り振れないため、カーボンフットプリントを算出できない期間の発生が不可避となるのである。
【0045】
[カーボンフットプリントの蓄積処理]
こうした課題に対し、本開示による情報処理システム100では、CFP分配数が確定できないカーボンフットプリントは、未定分のカーボンフットプリント(以下、未定CFP)として扱われる(
図3 左側参照)。即ち、データベース20に蓄積される排出量情報において、未定CFPは、確定しているカーボンフットプリント(以下、確定CFP)から分離される。CFP分配数が確定しない段階では、未定CFPとして、概算値が表示される。こうした概算値には、上述の2次データのように、予め準備された仮の値であって、ある程度の確からしさが担保された値が利用されてよい。
【0046】
そして、CFP分配数が確定した段階で、確定分のGHS排出量(全体CFP)が、排出量情報として、未定CFPと紐づけ可能な状態でデータベース20(ブロックチェーン)のトレサビ情報に新規に登録される(
図3 右側参照)。これにより、未定CFPがある場合でも、この未定CFPに紐づく確定情報を用いて追加分の確定CFPを算出し、当初分の確定CFPに加算することで、正確かつ公平な確定CFPの算定及び表示が可能となる。
【0047】
以下、こうしたデータ処理に関連し、サプライヤSP及び完成品メーカMF等での製品製造の流れを示す全体フローの詳細と、全体フローの各ステップに紐づく情報処理フローの詳細とを、
図4~
図9に基づき、
図1~
図3を参照しつつ、以下説明する。
【0048】
<全体フロー>
図4に示すように、サプライヤSP又は完成品メーカMFにて、工場の建設又はラインの設置が行われると(S1)、この工場建設又はライン設置に伴うGHS排出量の測定又は(及び)算出に関連した第1蓄積処理が実施される(S2)。さらに、新設された工場又はラインに、加工機械又は成形型等が設置されると(S3)、この工程に伴うGHS排出量の測定又は(及び)算出に関連する第2蓄積処理が実施される(S4)。そして、製品の製造又は加工等の工程が実施されると(S5)、この工程に伴うGHS排出量の測定又は(及び)算出に関連する第3蓄積処理が実施される(S6)。
【0049】
部品製造等の開始後、特定のタイミングにて、加工機械又は成形型の交換又は修理が発生する(S7)。このとき、交換又は修理に伴うGHS排出量の測定又は(及び)算出に関連する第4蓄積処理が実施される(S8)。ラインの保全が完了すると、製品の製造又は加工等の工程が再び実施され(S5)、S5~S8の工程が繰り返される。尚、第1~第4蓄積処理は、データ処理サーバ10がデータ処理端末50と連携することにより実施される。
【0050】
<情報処理フロー:第1蓄積処理S2>
図5に示すように、工場の建設又はラインの設置に伴う第1蓄積処理(S2)では、まず工場及びラインの名称Nが定義される(S21)。データ処理サーバ10は、データ処理端末50からの要求に基づき、他の工場及びラインと重複しないユニークな名称Nを定義する。名称Nは、個々の製品の製造ラインを識別する識別情報である。一例として、データ処理サーバ10は、工場Aのライン1~3に対し、A01~A03という名称を定義する(
図6 上段参照)。同様に、データ処理サーバ10は、工場Bのライン1~3に対し、B01~B03という名称を定義する(
図6 下段参照)。また別の一例として、データ処理サーバ10は、工場Aのライン1~3に対し、0001~0003という名称を定義する(
図6 上段参照)。同様に、データ処理サーバ10は、工場Bのライン1~3に対し、0004~0006という名称を定義する(
図6 下段参照)。
【0051】
データ処理サーバ10は、名称Nの定義後、工場建設又はライン設置に伴うGHS排出量FNを算出する(S22)。データ処理サーバ10は、名称N及びGHS排出量FNを、トレサビ情報(排出量情報)として、データベース20(ブロックチェーン)に登録する(S23)。尚、GHS排出量FNを算出する処理は、データ処理端末50によって実施されてもよい。
【0052】
<情報処理フロー:第2蓄積処理S4>
図7に示すように、加工機械又は成形型等の設置に伴う第2蓄積処理(S4)では、変数i,jがそれぞれ1,0に設定される(S41)。変数iは、加工機械又は成形型の設置回数をカウントする変数(連番)である。変数iは、ラインに交換又は修理が発生した場合にカウントアップされる。変数iは、ラインに発生した交換又は修理の前後を区別するための情報として利用可能となる。変数jは、製品の製造数をカウントする変数(連番)である。変数jは、製品の製造に伴ってカウントアップされる。
【0053】
データ処理サーバ10は、加工機械又は成形型等の設置に伴うGHS排出量MN,iを算出する(S42)。さらに、データ処理サーバ10は、加工機械又は成形型の変更後の初稼働時の日時TMN,iを記録する(S43)。そして、変数jのカウントアップが実施される(S44)。GHS排出量MN,iを算出する処理及び変数jのカウントアップ処理は、データ処理端末50によって実施されてもよい。
【0054】
<情報処理フロー:第3蓄積処理S6>
図8に示す第3蓄積処理(S6)では、製品(対象物IM)に紐づくGHS排出量に未確定分(未定CFP)が生じることを前提に、未定CFPの確定後に生成される確定情報を、製品に結びつけるための追跡用情報が、データベース20に記録される。第3蓄積処理は、「追跡用情報の記録ステップ」に相当し、第3蓄積処理を実行するプロセッサ11の機能部が「情報記録部」に相当する。追跡用情報には、製品を製造した製造ラインに関連するライン情報が用いられる。
【0055】
具体的に、製品製造又は加工等の実施に伴う第3蓄積処理では、製造中又は加工中の製品について、製造又は加工時間T
N,jが記録される(S61)。時間T
N,jは、製品を名称Nのラインで製造又は加工した時間情報であって、日付及び時刻を示す情報である。データ処理サーバ10は、時間T
N,jを、製造ラインを識別する名称Nと共に、製品に紐づけてデータベース20のトレサビ情報に記録する(S62)。時間T
N,j及びラインの名称Nが、上述の「追跡用情報」及び「ライン情報」に相当する。また、時間T
N,jは、L1,L3ラインに紐づく「加工日時」に相当する(
図3参照)。
【0056】
データ処理サーバ10は、加工機械又は成形型の交換又は修理の有無を判定する(S63)。交換又は修理がある場合(S63:YES)、当該交換又は修理の工程が実施される(S7)。一方、交換又は修理がない場合(S63:NO)、データ処理サーバ10は、未確定分のGHS排出量を推定した仮の概算値であって、未定CFPの代替として使用される値を、製品に紐づけて、データベース20のトレサビ情報に記録する(S64)。そして、変数jのカウントアップが実施され(S44)、S61~S64の処理が繰り返される。S64の概算値の記録処理は、省略されてもよく、又は第3蓄積処理とは異なるタイミングで実施されてもよい。また、後述するCFP開示処理(
図10 S111参照)にて、概算値を設定する処理が実施されてもよい。
【0057】
<情報処理フロー:第4蓄積処理S8>
図9に示す第4蓄積処理(S8)では、加工機械又は成形型の交換又は修理に伴い、未確CFPが確定される。第4蓄積処理は、対象物に割り当てる排出量の「計算ステップ」に相当し、第4蓄積処理を実行するプロセッサ11の機能部が「排出量算出部」に相当する。第4蓄積処理では、未定CFPの確定後に、確定情報の1つであるCFP分配数を用いて、個々の製品(対象物IM)に割り当てるGHS排出量、即ち、カーボンフットプリントが計算される。
【0058】
具体的に、加工機械又は成形型の交換又は修理に伴う第4蓄積処理(S8)では、データ処理サーバ10又はデータ処理端末50によって変数iのカウントアップが実施される(S81)。こうした処理により、変数iは、未定CFPが確定する場合にカウントアップされる連番となる。
【0059】
データ処理サーバ10は、今回の加工機械又は成形型等の設置に伴うGHS排出量M
N,iを算出する(S82)。さらに、データ処理サーバ10は、加工機械又は成形型を変更した後のライン稼働開始時間(日時)であるTM
N,iを記録する(S83)。時間TM
N,iは、変数iの切り替え日時を示す時間情報となる。故に、時間TM
N,i-1から時間TM
N,iまでの期間は、型変更Aから型変更Bまでの期間、又は型変更Bから型変更Cまでの期間等に相当する(
図2参照)。
【0060】
データ処理サーバ10は、時間TMN,i-1から時間TMN,iまでの間に製造又は加工に要したGHS排出量CN,i-1を算出する(S84)。GHS排出量CN,iは、変数iに紐づく期間において、加工に使用された全てのGHS排出量である。データ処理サーバ10は、データベース20のトレサビ情報(排出量情報)に、GHS排出量MN,i,時間TMN,i,GHS排出量CN,i-1を記録する(S85)。
【0061】
データ処理サーバ10は、名称Nのラインで加工を行った製品の中から、製品に紐づく時間TN,jの情報を用いて、時間TMN,i-1から時間TMN,iまでの間の加工時間を持つ製品の情報を取得する(S86)。そして、データ処理サーバ10は、取得した製品情報に基づき、製造数nN,i-1を計算する(S87)。製造数nN,i-1は、上述のCFP分配数に相当する。データ処理サーバ10は、下記の数式1に基づき、製品あたりのカーボンフットプリントを計算する(S88)。
C = ( MN,i-1 + CN,i-1 )/nN,i-1 ・・・(数式1)
【0062】
データ処理サーバ10は、取得した製品に紐づく排出量情報に、算出したカーボンフットプリントを割り当てる(S89)。データ処理サーバ10は、割り当てたカーボンフットプリント(以下、割当CFP)を、各製品のトレサビ情報に確定情報として記録する。そして、変数jのカウントアップが実施され(S44)、製品の製造等が開始される(S5)。
【0063】
ここで、第4蓄積処理にて算出されるGHS排出量M
N,i,C
N,i-1の合計値は、
図3に示すL1,L3ラインの「全体CFP」に相当する。また、時間TM
N,i-1,TM
N,iは、
図3に示すL1,L3ラインの「開始日時」及び「終了日時」に相当する。
【0064】
[カーボンフットプリントの開示処理]
データ処理サーバ10及びユーザ端末110は、CFP開示処理により、エンドユーザEU等に、対象物IMのカーボンフットプリント(排出量情報)を開示する。以下、CFP開示処理の詳細を、
図10に基づき、
図1~
図3を参照しつつ説明する。
【0065】
尚、CFP開示処理には、ユーザ端末110に替えて、データ処理端末50等の取引者の所有する情報処理端末等が利用されてよい。このように、ユーザ端末110に限定されず、スマートフォン、タブレット端末、及びパーソナルコンピュータ等の種々の情報処理端末が、カーボンフットプリントの表示に利用可能である。
【0066】
ユーザ端末110は、エンドユーザEU等の操作により、CFP照会アプリを起動する(S101)。ユーザ端末110は、製品又は最終製品等の対象物IMに添付された2次元コードCd(又はRFタグ)から識別情報を読み出す(S102)。識別情報は、キーボード等の入力デバイスを用いて手動で入力されてもよく、又はネットワークを通じて取得されてもよい。ユーザ端末110は、読み出した識別情報を、対象物IMのCFP開示要求と共にデータ処理サーバ10に送信する(S103,S104)。
【0067】
データ処理サーバ10は、開示要求を取得すると(S104)、要求対象となっている対象物IMを特定する(S105)。データ処理サーバ10は、データベース20に蓄積されたトレサビ情報から、対象物IMに紐づく排出量情報を検索し、対象物IMの確定分の排出量を示す確定分データ(確定CFP,
図3参照)を取得する(S106)。確定CFPは、対象物IMに割り当てられた確定分のGHS排出量を示す値(単位はkg)である。
【0068】
データ処理サーバ10は、対象物IMに紐づくカーボンフットプリントに未確定分(未定CFP,
図3参照)があるか否かを判定する(S107)。S107は、未確定分の排出量があるか否かを判定する「判定ステップ」に相当し、S107を実行するプロセッサ11の機能部が「未確定判定部」に相当する。未定CFPがない場合(S107:NO)、データ処理サーバ10は、S106にて取得した確定CFPを提供用データ(対象物IMの排出量情報)として開示要求元のユーザ端末110に送信する(S112,S113)。
【0069】
一方、未定CFPがある場合(S107:YES)、データ処理サーバ10は、未定CFPに対応する確定情報を検索する(S108)。確定情報は、上述のCFP分配数(
図3の製造数)及びGHS排出量M
N,i,C
N,i-1(
図9参照)であってもよく、第4蓄積処理(
図9参照)にて算出された割当CFPであってもよい。データ処理サーバ10は、第3蓄積処理(
図8参照)にて記録されたライン名及び加工時間等のライン情報を追跡用情報として利用し、多数のトレサビ情報の中から、未定CFPに対応する確定情報を特定する。
【0070】
データ処理サーバ10は、確定情報がトレサビ情報に記録されているか否かを判定する(S109)。未定CFPを確定させる確定情報がある場合(S109:YES)、データ処理サーバ10は、確定情報に基づく排出量(割当CFP)を、S106にて取得した当初分の確定CFPに加算してなる確定CFP(更新確定データ)を生成する(S110)。即ち、データ処理サーバ10は、S110にて、カーボンフットプリントを再計算する。この処理にて、データ処理サーバ10は、記録された計算済みの割当CFPを利用してもよく、上記の数式1に基づき、割当CFPを再計算してもよい。データ処理サーバ10は、S110にて生成した更新確定データであって、更新された確定CFPの値を、提供用データとして開示要求元のユーザ端末110に送信する(S112,S113)。
【0071】
データ処理サーバ10は、未定CFPがあり、かつ、この未定CFPを確定させる確定情報がない場合(S109:NO)、未確定分のGHS排出量を示す未確定分データを生成する(S111)。S111は、未確定分データの「生成ステップ」に相当し、S107を実行するプロセッサ11の機能部が「データ生成部」に相当する。未確定分データは、第3蓄積処理(
図8参照)にて、未定CFPとして記録された概算値であってもよく、又は未定CFPの存在を示す通知フラグであってもよい。データ処理サーバ10は、S106にて取得した確定CFPと、S111にて取得した概算値又は通知フラグとを、提供用データとして開示要求元のユーザ端末110に送信する(S112,S113)。
【0072】
データ処理サーバ10は、対象物IMの製造工程(現工程)だけのカーボンフットプリント(現工程CFP)に加えて、現工程までのカーボンフットプリントを積算した値(積算CFP)を算出可能である(
図3参照)。データ処理サーバ10は、未定CFPがある場合、現工程CFP及び積算CFPのそれぞれの未定分及び確定分を提供用データとして、ユーザ端末110に提供する。また、複数の未定CFPのうちの一部のみに確定情報がある場合、データ処理サーバ10は、この確定情報を用いて更新確定データを生成する処理と、未定CFPについての未確定分データを生成する処理とを共に実施する。
【0073】
ユーザ端末110は、データ処理サーバ10から提供用データ(対象物IMの排出量情報)を受信によって取得する(S113,S114)。S114は、排出量情報の「取得ステップ」に相当し、S107を実行するプロセッサ111の機能部が「情報取得部」に相当する。ユーザ端末110は、提供用データに基づく値を、対象物IMのカーボンフットプリントとしてディスプレイ120の表示画面DPに表示させる(S115)。S115は、確定分データ及び未確定分データの「表示ステップ」に相当し、S107を実行するプロセッサ111の機能部が「表示制御部」に相当する。
【0074】
ユーザ端末110は、未定CFPがあることを示す情報(未確定分データ)が提供用データに含まれているか否かを判定する。未確定分データがない場合、ユーザ端末110は、提供用データの確定CFPをディスプレイ120に表示する(
図3 右下図参照)。一方、未確定分データとしての概算値が提供用データに含まれている場合、ユーザ端末110は、概算値を未定CFPとして、確定CFPと共にディスプレイ120に表示する(
図3 左下図参照)。さらに、未確定分データとしての通知フラグが提供用データに含まれている場合、ユーザ端末110は、確定CFPに加えて、「未確定のカーボンフットプリントがあります」とのメッセージを、ディスプレイ120に表示する。
【0075】
[第一実施形態まとめ]
ここまで説明した第一実施形態では、対象物IMに紐づくカーボンフットプリントに未確定分がある場合、未確定分のカーボンフットプリントを示す未確定分データが生成される。このように、未確定分データとして確定分データと分離することで、未確定分のGHS排出量を適切に扱うことが可能になる。その結果、排出量情報として、実績値であるカーボンフットプリントの1次データの利用が実現され得る。
【0076】
加えて第一実施形態では、未確定分のGHS排出量を確定させる確定情報がある場合、確定情報に基づくカーボンフットプリント(割当CFP)が、当初分の確定CFPを示す確定分データに加算され、更新確定データが生成される。以上によれば、製造時等において、直ちにカーボンフットプリントを確定できなくても、製造数等が確定した段階にて、正確なカーボンフットプリントが算定され得る。以上によれば、不定期に発生するGHS排出量を、個々の製品に公平に割り振ることが可能になる。
【0077】
また第一実施形態では、予め準備された仮の概算値が未確定分データとして使用される。故に、未確定分のGHS排出量が確定する前の段階であっても、対象物IMのカーボンフットプリントのおおよその値を提示することが可能になる。
【0078】
さらに第一実施形態では、対象物IMに紐づくカーボンフットプリントに未確定分がある場合、未確定分のカーボンフットプリントを示す未確定分データが、未定CFPとしてディスプレイ120に表示される。このように、未確定分データとして確定分データと分離することで、未確定分のGHS排出量を適切に扱うことが可能になる。その結果、カーボンフットプリントの問い合わせを行うエンドユーザEU等は、対象物IMのカーボンフットプリントを正しく把握できる。
【0079】
加えて第一実施形態では、予め準備された仮の概算値が未確定分データ(未定CFP)として表示される。故に、エンドユーザEU等は、未確定分のGHS排出量が確定する前に問い合わせを行ったとしても、対象物IMのカーボンフットプリントのおおよその値を把握することができる。
【0080】
また第一実施形態では、対象物IMに紐づくカーボンフットプリントに未確定分がある場合、追跡用情報がデータベース20に記録される。故に、未確定分の確定後に確定情報に基づく排出量が、対象物IMに正しく割り当てられ得る。その結果、未確定分のGHS排出量を適切に扱うことが可能になる。そして、カーボンフットプリントの正確性及び公平性が確保され得る。
【0081】
さらに第一実施形態では、対象物IMを製造した製造ラインに関連するライン情報が、追跡用情報としてデータベース20に記録される。こうしたライン情報を追跡用情報として用いることで、サプライヤSPによって製造される対象物IMに対し、型変更等によって製造数が確定した段階で、確定分のカーボンフットプリントを確実に割り当て可能となる。
【0082】
加えて第一実施形態では、製造ラインを識別するユニークな識別情報である名称Nと、製品が製造ラインにて製造された日時を示す時間情報とを含むライン情報が、データベース20に記録される。こうしたライン情報を追跡用情報として用いることで、型変更等に伴い未確定だったカーボンフットプリントが確定したタイミングで、確定分のカーボンフットプリントが個々の製品に適切に割り当て可能となる。
【0083】
また第一実施形態では、対象物IMに紐づくカーボンフットプリントに未確定分がある場合、未確定分の排出量を推定した仮の概算値が、データベース20に記録される。故に、未確定分のGHS排出量が確定する前の段階であっても、対象物IMのカーボンフットプリントのおおよその値を提示することが可能になる。
【0084】
尚、第一実施形態では、データ処理サーバ10が「データ処理システム」及び「データ蓄積システム」に相当しユーザ端末110が「データ表示装置」に相当する。
【0085】
(第二実施形態)
図11~
図13に示す本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、カーボンフットプリントの蓄積処理のうち、第2~第4蓄積処理の内容が、第一実施形態とは異なっている。以下、第二実施形態の第2~第4蓄積処理の詳細を、
図11~
図13に基づき、
図1及び
図3を参照しつつ説明する。尚、第二実施形態でも、第2~第4蓄積処理は、データ処理サーバ10がデータ処理端末50と連携することにより実施される。
【0086】
<情報処理フロー:第2蓄積処理S4>
図11に示す第二実施形態の第2蓄積処理(S4)では、第一実施形態と同様に、変数i,mがそれぞれ1,0に設定される(S241)。変数mは、現行の加工機械又は成形型が設置された後の製品の製造数を示す値であり、製品の製造に伴ってカウントアップされる。そして、加工機械又は成形型等の設置に伴うGHS排出量M
N,iの算出(S242)と、変数mのカウントアップ(S243)とが、データ処理サーバ10又はデータ処理端末50によって順に実施される。
【0087】
<情報処理フロー:第3蓄積処理S6>
図12に示す第二実施形態の第3蓄積処理(S6)では、製造又は加工時間T
N,jを記録する処理(
図8 S61参照)が省略される。この第3蓄積処理にて、データ処理サーバ10は、製造ラインを識別するユニークな名称Nに加えて、変数i,mを、製造中の製品に紐づけてデータベース20のトレサビ情報に記録する(S261)。変数iは、加工機械又は成形型の交換又は修理等、製造ラインの変更によってカウントアップされる値(連番)である。変数iは、型番号を示す値として使用される。変数mは、上述したように、変数iの切り替え後の製造数を示す個数情報である。ラインの名称N、及び変数iが、第二実施形態での「追跡用情報」及び「ライン情報」に相当する。CFP開示処理(
図10参照)では、これらのライン情報を用いて確定情報を紐づける製品が検索される(S108)。
【0088】
データ処理サーバ10又はデータ処理端末50は、加工機械又は成形型の交換又は修理の有無を判定する(S262)。交換又は修理がある場合(S262:YES)、交換又は修理の工程が実施される(S7)。一方、交換又は修理がない場合(S262:NO)、データ処理サーバ10は、未確定分のGHS排出量を推定した仮の概算値であって、未定CFPの代替として使用される値を、データベース20のトレサビ情報に記録する(S263)。
【0089】
<情報処理フロー:第4蓄積処理S8>
図13に示す第二実施形態の第4蓄積処理(S8)では、第一実施形態と同様に、変数iのカウントアップが実施されると共に(S281)、今回の加工機械又は成形型等の設置に伴うGHS排出量M
N,iが算出される(S282)。さらに、前回(i-1回目)の型交換から今回(i回目)の型交換までの間に製造又は加工に要したGHS排出量C
N,i-1が算出される(S283)。そして、変数i,m、及びGHS排出量M
N,i,C
N,i-1がデータベース20のトレサビ情報(排出量情報)に記録される(S284)。
【0090】
データ処理サーバ10は、名称Nのラインで加工を行った製品の中から、型番号i-1の情報を持つ製品の情報を取得する(S285)。そして、データ処理サーバ10は、下記の数式2に基づき、製品あたりのカーボンフットプリントを計算する(S286)。
C = ( MN,i-1 + CN,i-1 )/m ・・・(数式2)
【0091】
データ処理サーバ10は、型番号i-1の情報を持つ製品の排出量情報に、算出したカーボンフットプリントを割り当てる(S287)。そして、変数mのリセット及びカウントアップが順に実施される(S288,S243)。
【0092】
[第二実施形態まとめ]
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、未確定分データがある場合でも、未確定分のGHS排出量を適切に扱うことが可能になる。
【0093】
加えて第二実施形態では、製造ラインを識別するユニークな識別情報である名称Nと、製造ラインの変更によってカウントアップされる変数iとが、ライン情報に含まれている。こうしたライン情報を追跡用情報として用いることで、製造ラインの変更等により、未確定だったカーボンフットプリントが確定したタイミングで、個々の製品に確定分のカーボンフットプリントに適切に割り当てることが可能になる。
【0094】
(他の実施形態)
以上、本開示による複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0095】
上記実施形態では、現工程CFP及び積算CFPそれぞれについて、確定分データ及び未確定分データが生成され、確定CFP及び未定CFPとして表示されていた。一方、上記実施形態の変形例1では、現工程CFP及び積算CFPの一方のみについて、確定分データ及び未確定分データが生成され、確定CFP及び未定CFPが表示される。また、上記実施形態の変形例2では、現工程CFPのみ、確定分データ及び未確定分データが生成され、確定CFP及び未定CFPの両方が表示される。一方、積算CFPについては、確定分データのみが生成され、確定CFPのみが表示される。
【0096】
上記実施形態の変形例3では、製造時に確定していた当初分の確定CFPの確定分データと、後日確定した追加分の確定CFPの確定分データとがそれぞれ生成される。その結果、当初分の確定CFPと追加分の確定分CFPとが別々に表示される。
【0097】
上記実施形態の変形例4では、未定CFPを代替する概算値がデータベース20に登録されていない場合、生成される未確定分データ及び表示される未定CFPは、ゼロとされる。
【0098】
情報処理システム100にて蓄積されるGHS排出量(カーボンフットプリント)の一部は、1次データでなくてもよい。こうした情報処理システム100では、対象物IMのカーボンフットプリントに占める1次データの割合が、排出量情報としてユーザ端末110に提供され、ディスプレイ120に表示されてもよい。さらに、カーボンフットプリントに関連する国際基準(例えば、ISO14065等)を取得している取引者の割合、又はこうした取引者のGHS排出量の割合等が、排出量情報としてユーザ端末110に提供され、ディスプレイ120に表示されてもよい。
【0099】
上記実施形態にて、確定分データ(更新確定データを含む)は、確定分のカーボンフットプリントを示す値であり、未確定分データは、未確定分のカーボンフットプリントを示す値、又は未確定分のカーボンフットプリントがあることを示す通知フラグであった。このような、確定分データ及び未確定分データのデータ形式は、適宜変更されてよい。例えば、カーボンフットプリントの単位は、上述の「kg」に限定されず、対象物IMの種別、及び情報処理システム100の利用される地域又は国等に応じて適宜変更されてよい。
【0100】
上記実施形態にて、データ処理サーバ10、及び各端末50,110によって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0101】
上記実施形態の各プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成であってよい。プロセッサは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural network Processing Unit)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。またプロセッサは、プリント基板に個別に実装された構成であってもよい。又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、SoC(System on Chip)及びFPGA等に実装された構成がプロセッサに相当してもよい。
【0102】
上記実施形態の各記憶部として採用され、各プログラムを記憶する記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)の形態は、適宜変更されてよい。例えば記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、コンピュータのバスに電気的に接続される構成であってよい。さらに、記憶媒体は、コンピュータへのプログラムのコピー元又は配信元として利用される光学ディスク及びハードディスクドライブ等であってもよい。
【0103】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 データ処理サーバ(データ処理システム,データ蓄積システム)、11 プロセッサ(未確定判定部,データ生成部,情報記録部,排出量算出部)、20 データベース、50 データ処理端末、100 情報処理システム、110 ユーザ端末(データ表示装置)、111 プロセッサ(情報取得部,表示制御部)、DP 表示画面、IM 対象物、S6 第3蓄積処理(記録ステップ)、S8 第4蓄積処理