(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142212
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】屋根下葺材
(51)【国際特許分類】
E04D 12/00 20060101AFI20241003BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20241003BHJP
B32B 25/10 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241003BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04D12/00 P
B32B25/08
B32B25/10
B32B27/12
B32B27/32 E
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054282
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪川 雅貴
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA37A
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100AK25
4F100AK41D
4F100AK41E
4F100AK51
4F100AN02A
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA01
4F100CA03A
4F100CA16A
4F100CA23A
4F100DD05B
4F100DD05C
4F100DE01A
4F100DG15D
4F100DG15E
4F100EH23
4F100GB07
4F100JA04
4F100JA06
4F100JA07
4F100JB06
4F100JK06
4F100JL13A
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明は、薄くても優れた釘穴防水性が得られ、軽量で持ち運びやすく、作業性も良く重ね葺きしても段差を生じ難いので屋根上葺材の施工品位を低下させない屋根下葺材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる屋根下葺材は、粘着樹脂層の両面に低密度ポリエチレンフィルムおよび不織布が順に積層されている屋根下葺材であって、前記粘着樹脂層がゴム系組成物であり、最小厚みが90μm以上であり、前記低密度ポリエチレンフィルムの凹部深さが5.0μm以下である屋根下葺材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着樹脂層の両面に低密度ポリエチレンフィルムおよび不織布が順に積層されている屋根下葺材であって、
前記粘着樹脂層がゴム系組成物であり、最小厚みが90μm以上であり、
前記低密度ポリエチレンフィルムの凹部深さが5.0μm以下である屋根下葺材。
【請求項2】
総重量が400~700g/m2であり、総厚みが500~800μmである請求項1に記載の屋根下葺材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦などの屋根上葺材の下側に用いられる屋根下葺材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根下葺材に使用される材料には、アスファルト系とゴム改質アスファルト系の組成物でできた屋根下葺材が知られている。アスファルト系材料を用いる方法として、例えば、特許文献1が挙げられる。アスファルト系材料は摂氏0~70℃の範囲で、ある程度の流動性を有しているため、釘を打ち込んで出来た釘穴を埋める効果があり、防水性能を発揮する。しかしながら、防水性能を発揮するためには、アスファルトが充分に流動して釘穴を塞ぐ必要がある。そのためには、流動量を確保するためには厚みが必要となる。そのため重くなり持運び作業に支障が出る。また重ね葺きした時に厚みによって段差が大きくなるため、屋根上葺材が綺麗に施工出来ず、外観品位を落してしまう虞がある。
【0003】
また、弾性に優れたゴム系材料を用いる方法が知られており、例えば、特許文献2が挙げられる。ゴム系材料は弾性に優れているため、釘穴を締め付ける効果があり、防水性能を発揮する。しかしながら、その弾性力を発揮して釘穴を締め付けるには充分な厚みが必要となる。そのため重量物になり持運び作業に支障が出る。また重ね葺きした時に厚みによって段差が大きくなるため、屋根上葺材が綺麗に施工出来ず、外観品位を落してしまう虞がある。
【0004】
また施工方法は異なるが、出願人は特許文献3を提案しており、ゴム系素材に粘着性を付与させた樹脂層を屋根下葺材の下層に設け、屋根板に直接貼り付ける屋根下葺材を開示している。粘着性と柔軟性によって釘に密着して釘穴を塞ぎ防水性能を発揮するが、粘着層が表面に備えられているため、作業中の誤りで粘着層が建材へくっついたり、脱落したりする虞がある。また野地板の接着に充分な粘着層の厚みが必要となるため、重量物になり持運び作業に支障が出たり、また重ね葺きしていくと厚みによって段差が出来るため、屋根上葺材が綺麗に施工出来ず、外観品位を落してしまったりする虞がある。また使用上、粘着層に積層した離型紙を がして施工するため、ゴミが出てしまう。
【0005】
また、出願人は、特許文献4のように、アスファルト系とゴム系素材を用いない屋根下葺材を提案している。吸水膨潤樹脂の層を設けることで、薄くて軽量でも釘穴防水性を発揮している。しかしながら、瞬間的に吸水膨潤するわけではないので、施工中に激しく降雨した場合は下地の合板を少し濡らしてしまう虞があり、更なる釘穴防水性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-36122号公報
【特許文献2】特開平4-238945号公報
【特許文献3】再公表特許2016/027799号
【特許文献4】再公表特許2012/026532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、薄くても優れた釘穴防水性が得られ、軽量で持ち運びやすく、作業性も良く重ね葺きしても段差を生じ難いので屋根上葺材の施工品位を低下させない屋根下葺材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる屋根下葺材は、粘着樹脂層の両面に低密度ポリエチレンフィルムおよび不織布が順に積層されている屋根下葺材であって、前記粘着樹脂層がゴム系組成物であり、最小厚みが90μm以上であり、前記低密度ポリエチレンフィルムの凹部深さが5.0μm以下である。
【0009】
また、総重量が400~700g/m2であり、総厚みが500~800μmであると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、薄くても釘穴防水性が得られ、軽量で持ち運びやすく、重ね葺きしても段差を生じ難いので屋根上葺材の施工品位を低下させない屋根下葺材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の一例である屋根下葺材を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の他の例である屋根下葺材を示す断面模式図である。
【
図3】粘着樹脂層と低密度ポリエチレンフィルムの一部を拡大した断面拡大図である。
【
図4】低密度ポリエチレンフィルムの凹部深さを説明する断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の屋根下葺材について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図するものではない。なお、図面において、本発明の屋根下葺材を構成される複数の層が図示されているが、各層の厚みや大きさは説明容易化のため適宜変更しており、実際の屋根下葺材における各層の厚みの大小関係(縮尺)を正確に反映したものではない。
【0013】
本発明の屋根下葺材1は、
図1に示すように、粘着樹脂層5の両面に低密度ポリエチレンフィルム4および不織布3がこの順に積層されている。
【0014】
粘着樹脂層5の両面に低密度ポリエチレンフィルム4が積層され、粘着樹脂層5が不織布3の凹凸にほとんど入り込まずに適度な厚みを保つことができているため、釘を打ち付けた場合でも粘着樹脂層5の厚み変化を最小限にすることを可能にし、釘と充分に密着するため、厚みが薄くても釘穴浸水防止の効果を有し、軽量の屋根下葺材1を得ることができる。
【0015】
粘着樹脂層5は、粘着性を有する樹脂層であり、その素材は、ゴム系組成物であればよく、温度の影響が少なく被着体の極性に左右され難い合成ゴムが好ましい。具体的には、ブチルゴム系、イソプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリイソブチレンゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、グラフトゴム系が挙げられる。なかでも、防水性、耐候性、耐熱性、耐薬品性、金属との粘着性に優れたブチルゴム系が好ましい。これらの群から選択される少なくとも1種の合成ゴムに、粘着付与剤が添加され、粘着性を有する粘着樹脂層が形成される。また公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色顔料等を添加することができる。
【0016】
また、粘着樹脂層5の厚みは、100~300μmであることが好ましく、さらには150~250μmであると釘穴浸水防止と重量の面からより好ましい。100μm以上であれば、充分な粘着力と、積層後も釘穴浸水防止の効果を充分に得ることができる。また、300μm以下であれば、作業しやすく施工性が向上する。
【0017】
図3に示すように、粘着樹脂層5と低密度ポリエチレンフィルム4との境界は不織布3や低密度ポリエチレンフィルム4の凹凸の影響を受け、凹部と凸部が繰り返される波打つ状態になっているが、粘着樹脂層5の最小厚みTは、90μm以上であることが必須であり、100μm以上であると好ましく、200μm以上であるとより好ましい。90μm未満であると、充分に釘穴からの水の浸入を抑えることができない虞がある。なお、粘着樹脂層5の最小厚みTは、次のようにして求めることができる。屋根下葺材1の断面5か所を電子顕微鏡(倍率1000)にて観察し、各観察箇所において粘着樹脂層5の厚みを任意に10か所測定したなかの最小の厚みを「最小厚み」とし、「最小厚み」5点について平均値を求める。
【0018】
また、粘着樹脂層5の粘着力は、釘穴浸水防止の効果が得られ、低密度ポリエチレンフィルム4と強く密着させやすいため、3.0N/10mm以上であることが好ましく、5.0N/10mm以上であることがより好ましい。
【0019】
低密度ポリエチレンフィルム4には凸部および凹部が形成されており、凹部深さは、5.0μm以下であることが必須である。粘着樹脂層5が充分な厚みになるので、安定した釘穴浸水防止の効果を得られ易い。5.0μmより大きいと、低密度ポリエチレンフィルム4の凸部により粘着樹脂層5の厚みが潰れ、安定した釘穴浸水防止が得られ難い。なお、凹部深さの測定方法は、フィルムの断面を電子顕微鏡(倍率1000)にて観察し、凹部の最も深いところと隣接する凸部の頂点の高低差を10点計測して平均値を求める。なお、隣接する凸部は、測定対象の凹部のどちら側でも良いが、10点共に同じ方向に存在する凸部になる。例えば、
図4の場合は、凹部とその向かって右側の凸部の頂点との高低差を計測し、矢印で示した長さ、例えば、L1、L2が計測部となる。
【0020】
なお、凹部深さは0.1~4.5μmが好ましく、1.0~3.0μmがより好ましい。0.1μm以上では低密度ポリエチレンフィルムと粘着樹脂層の密着がより良い。4.5μm以下であれば、粘着樹脂層5が潰れず充分な厚みを確保し易い。
【0021】
積層前の低密度ポリエチレンフィルム4の凹部深さは、10.0μm以下であることが好ましい。積層し、一体化した後も粘着樹脂層5が潰れすぎず充分な厚みを得られ易い。
【0022】
低密度ポリエチレンフィルム4には、予めエンボス加工などを施してもよく、例えば、フィルムを凹凸が形成された金属ロールで熱と圧力を掛けてエンボス加工する方法や、フィルムを成型する際、冷え固まる前に凹凸が形成された金属ロールで圧力を掛けてエンボス加工する方法が挙げられる。
【0023】
低密度ポリエチレンフィルム4は、低密度ポリエチレンからなるフィルムであればよい。低密度とは、密度が0.94g/m3未満のポリエチレンを指す。なかでも直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0024】
また粘着樹脂層5が、釘を打った際の衝撃で破れないように、低密度ポリエチレンフィルム4の素材は、ノッチタイプA0.25mmの条件においてアイゾット衝撃強さ試験で破壊されないことが好ましい。具体的には、密度が0.91~0.93g/m3の低密度ポリエチレンや密度が0.88~0.93g/m3の直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0025】
また低密度ポリエチレンフィルム4の厚みは10~100μmであることが好ましく、より好ましくは30~80μmである。厚みが10μm以上であれば、強度を得やすく、作業中に破れにくくなる点で好ましい。厚みが100μm以下であれば、柔軟性が得られやすく、屋根形状に合わせて施工し易い点で好ましい。
【0026】
本発明では、各々の低密度ポリエチレンフィルム4の外側に不織布3が積層されているため、他の建材に粘着樹脂が接着することなく防水、強度、釘穴浸水防止の効果を得ることができる。
【0027】
不織布3の素材は、ポリエステル系、ポリアミド系、または、ポリオレフィン系のフィラメント繊維から構成されることが好ましい。特に、強度と耐久性の面からポリエステル系繊維が好ましく用いられる。また種類としては、スパンボンド、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチなどが挙げられる。特に、強度や後加工性の点からスパンボンドが好ましい。
【0028】
また、不織布3の目付は30~150g/m2が好ましく、より好ましくは50~100g/m2である。不織布3の目付が30g/m2以上であれば、強度を得やすい面で好ましい。目付が150g/m2未満であれば柔軟性が得られやすく、屋根形状に合わせて施工し易い点で好ましい。
【0029】
さらに不織布3の外側に滑り止め樹脂層2が積層されていると、安全に作業ができるため好ましい。滑り止め樹脂層2は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。なかでも生産性、加工性、強度の点でポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0030】
また、より滑り止め効果を発揮させるために、滑り止め樹脂層2に添加材を付与することができ、例えば、微細な凹凸を形成できる無機系粉末、鉱物粉末、および不活性ガスを内包する熱膨張性マイクロカプセルや、摩擦抵抗を向上させる微粉末ゴム、ウレタンビーズ等が挙げられる。これらの添加材は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0031】
また、滑り止め樹脂層2には撥水剤を添加することが好ましい。撥水剤を添加することで、釘穴浸水防止の効果が高まる。
【0032】
また
図2に示すように、施工する際に建材側になる側の不織布3の外側にフィルム6を更に追加することで、もし釘穴に浸水しても不織布で保水し水の拡がりを抑制することができるのでより好ましい。フィルム6の素材は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。なかでも靱性、柔軟性、生産性、加工性、経済性の点でポリエチレン樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0033】
本発明の屋根下葺材1の製造方法について説明する。
【0034】
本実施形態の製造方法では、まず不織布3と低密度ポリエチレンフィルム4を積層させる方法が例示される。積層方法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、Tダイラミネート法、ホットメルトラミネート法が挙げられるが、成膜と積層が同時にできるTダイラミネート法が好ましい。
【0035】
次に、積層された不織布3と低密度ポリエチレンフィルム4の、フィルム側同士を粘着樹脂層5で積層する。粘着樹脂層5の成形には、樹脂を熱ロール間に通していくことで徐々に圧延してシート状に成形するカレンダー法が、樹脂層の成形と積層が同時にできるので好ましい。
【0036】
カレンダー法で積層された後、外側の不織布3には、コーティングにより滑り止め樹脂層2を成膜する。コーティング方法は、グラビアロール法等の方法により熱処理をして樹脂を固化させる方法が挙げられるが、特に限定はされない。
【0037】
本発明の思想を妨げなければ、積層する順序を適宜変更しても良い。また、必要に応じて、さらにアルミニウムなどの金属膜層を積層し遮熱効果や耐久性の向上を図ることができ、またはガラス繊維などを含む織物や不織布などの無機繊維層を積層し強度向上を図っても良い。
【0038】
屋根下葺材1の粘着樹脂層5と低密度ポリエチレンフィルム4とのはく離接着強さは、0.25kN/m以上であることが好ましい。0.25kN/m未満では、条件によっては作業時にはく離する虞があり、釘穴の防水性を発揮することが出来ない虞がある。なお、はく離接着強さは、JIS K6854-3 接着剤-はく離接着強さ試験方法-第3部:T型はく離に準じて測定される。
【0039】
屋根下葺材1の総厚みは、500~800μmであることが好ましく、さらには500~700μmであると釘穴浸水防止と重量の面からより好ましい。500μm以上であれば、積層後も釘穴浸水防止と強度の面での効果を充分に得ることができる。また、800μm以下であれば、重ね葺きしても段差が出来難いので施工性が向上する。
【0040】
屋根下葺材1の総重量は、400~700g/m2の範囲であることが好ましい。400g/m2以上であれば釘穴の防水性が得られ易く、強度も維持し易い。また、700g/m2以下であれば、軽量であるため重量物にならず、持ち運び易い。
【実施例0041】
以下に述べる実施例、比較例によって本発明の屋根下葺材を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性測定および評価は、以下の方法により行った。
【0042】
<粘着樹脂層の粘着力>
JIS Z0237 粘着力10.4.1方法1:試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準じて、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに粘着樹脂層を製膜したものを試験片とし粘着力を測定した。なお、試験板として表面仕上げBAのSUS304鋼板を用い、測定条件は、試験体の幅10mm、温度23℃、湿度50%であった。
【0043】
<粘着樹脂層の最小厚み>
屋根下葺材の断面5か所を電子顕微鏡(倍率1000)にて観察し、各観察箇所において粘着樹脂層の厚みを任意に10か所測定したなかの最小の厚みを「最小厚み」とし、「最小厚み」5点について平均値を求めた。
【0044】
<フィルムの衝撃試験>
JIS K7110 3.2ノッチ付き試験片アイゾット衝撃強さに準じて、フィルムを評価し、破断の有無のみ確認した。測定条件は、試験片長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm、ノッチタイプA0.25mm、温度23℃、湿度50%、ハンマー容量1.0J、衝撃速度3.5m/sであった。
【0045】
<フィルム表面の凹部深さ>
屋根下葺剤のフィルムの断面を電子顕微鏡(倍率1000)にて観察し、凹部の最も深いところと隣接する凸部の頂点の高低差を10点計測して平均値を求めた。
【0046】
<はく離接着強さ>
JIS K6854-3 接着剤-はく離接着強さ試験方法-第3部:T型はく離に準じて、粘着樹脂層と低密度ポリエチレンフィルムとをT形になるよう接着した試料を用い、粘着樹脂層と低密度ポリエチレンフィルムとの平均はく離強さを5点計測して平均値を求めた。測定条件は、試験体の幅25mm、温度23℃、湿度50%であった。
【0047】
<釘穴防水性>
一般社団法人 日本防水材料協会 アスファルト防水部会規格「改質アスファルトルーフィング下葺材」の7.8釘穴防水性に準じて、水頭は150mm高さ、釘はリング釘(ケイミュー株式会社製、屋根釘32KL32TZ)、で実施し、合板表面の濡れ数を測定した。10個の試験体中7個以上濡れていなければ評価を〇とし、7個未満では×とする。
【0048】
<厚み>
株式会社尾崎製作所製厚み測定器G-6(測定端子アンビルΦ5フラット、測定力1.8N以下)を用いて各層の厚みを測定した。
【0049】
[実施例1]
まず、不織布と低密度ポリエチレンフィルムを積層させる。ポリエステルスパンボンド不織布(東レ株式会社製、アクスターG2050-1SBKO、目付50g/m2)に、低密度ポリエチレンフィルム(林一二株式会社製、皮目のエンボスが入ったフィルム、ナチュラルL-LDPE、凹部深さ3.2μm、厚み50μm、密度0.91~0.93g/m3、アイゾット衝撃試験で破断しない)を、ポリエチレンペレット(東ソー株式会社製、ペトロセン212)を用い押出ラミネート法にて厚み20μmの接着層を介し積層させ、積層体Aを得た。
次に、ポリエステルスパンボンド不織布(東レ株式会社製、アクスターG2070-1S、目付70g/m2)に、前述と同じ低密度ポリエチレンフィルムおよびポリエチレンペレットを用い、押出ラミネート法にて厚み20μmの接着層を介し積層させ、積層体Bを得た。
【0050】
次に、積層体Aおよび積層体Bそれぞれのフィルム側の面で粘着樹脂をはさんで積層させる。粘着樹脂は次のように調製した。ブチルゴム(ムーニー粘度ML1+8(125℃)32、比重0.92)100重量部に対し、粘着付与剤(脂肪族系炭化水素樹脂、軟化点
97℃、重量平均分子量Mw1310)を30重量部、軟化剤(高級脂肪酸エステル、融点60℃、灰分0.3%以下、比重0.92)を10重量部、充填剤(重質炭酸カルシウム、平均粒子径3.2μm、見掛密度0.40)を30重量部、加硫剤(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、軟化点86℃、灰分0.1%以下)を2重量部、補強剤(カーボンブラック、平均粒子径43nm、灰分0.2%、かさ密度380kg/m3)を10重量部、を混錬して粘着樹脂を得た。粘着樹脂の粘着力は5.3N/10mmであった。得られた粘着樹脂をカレンダー法によってシート状に成形し、積層体Aおよび積層体Bそれぞれのフィルム側の面で粘着樹脂をはさんで一体化し積層体を得た。粘着樹脂層の厚みは200μmであった。
【0051】
作製した積層体の両面、すなわち両方の不織布面上に、滑り止め樹脂層用樹脂をグラビアコーティング法よって、固形分が5g/m
2付着するように塗布し滑り止め樹脂層を形成して、
図1のような屋根下葺材を得た。なお、滑り止め樹脂層用樹脂は、アクリル樹脂(根上工業株式会社製、パラクロンW248E)100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(大日精化工業株式会社製、NE架橋剤)を3重量部、架橋促進剤(DIC株式会社製、クリスボンアクセルT81)を0.3重量部、アクリル樹脂からなる熱発泡剤(松本油脂製薬株式会社製、マツモトマイクロスフェアーF-36D)を22重量部、フッ素系撥水剤(ダイキン株式会社製、ダイフリーFB-961)を1.7重量部添加し作製した。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0052】
[実施例2]
積層体Aおよび積層体Bの低密度ポリエチレンフィルムを、表面に四角錘状の凹部を形成するようエンボス加工された、凹部深さが1.9μmのフィルム(林一二株式会社製、ハイシボフィルムナチュラルL-LDPE、厚み50μm、密度0.91~0.93g/m3、アイゾット衝撃試験で破断しない)にした以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。なお、エンボス加工面側に粘着樹脂層が積層されるようにした。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例3]
積層体Aおよび積層体Bの低密度ポリエチレンフィルムを、表面に四角錘状の凹部を形成するようにエンボス加工された、凹部深さが9.4μmのフィルム(林一二株式会社製、ハイシボフィルムナチュラルL-LDPE、厚み50μm、密度0.91~0.93g/m3、アイゾット衝撃試験で破断しない)にした以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。なお、エンボス加工面側に粘着樹脂層が積層されるようにした。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例4]
粘着樹脂の粘着付与剤を15重量部に変更し混錬して粘着樹脂を得た。粘着樹脂の粘着力は3.7N/10mmであった。
それ以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例5]
粘着樹脂の粘着付与剤を40重量部、軟化剤を15重量部に変更し混錬して粘着樹脂を得た。粘着樹脂の粘着力は8.6N/10mmであった。
それ以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例6]
粘着樹脂層の厚みを100μmにした以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例7]
実施例1と同様に一体化した積層体を得た後、積層体B側の表面に、低密度ポリエチレンフィルム(林一二株式会社製、皮目のエンボスが入ったフィルム、ナチュラルL-LDPE、凹部深さ4.2μm、厚み50μm、密度0.91~0.93g/m
3、アイゾット衝撃試験で破断しない)を、ポリエチレンペレット(東ソー株式会社製、ペトロセン212)を用い押出ラミネート法にて厚み20μmの接着層を介し積層させ、
図2のような屋根下葺材を得た。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
低密度ポリエチレンフィルムを積層せず、不織布面に直接と粘着樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。なお、はく離接着強さは、不織布と低密度ポリエチレンフィルムとをT形になるよう接着した試料を用いて測定した。
【0059】
[比較例2]
積層体Aおよび積層体Bの低密度ポリエチレンフィルムを、表面に四角錘状の凹部を形成するようにエンボス加工された、凹部深さが16.3μmのフィルム(林一二株式会社製、ハイシボフィルムナチュラルL-LDPE、厚み50μm、密度0.91~0.93g/m3、アイゾット衝撃試験で破断しない)にした以外は、実施例1と同様に加工して、屋根下葺材を得た。なお、エンボス加工面側に粘着樹脂層が積層されるようにした。各物性の測定結果および評価結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
表1に示すように、実施例に係る屋根下葺材は、軽量で厚みも薄いが、釘穴の防水性およびはく離接着強さに優れていた。これに対して、比較例に係る屋根下葺材は、釘穴防水性およびはく離接着強さの評価が不良であった。