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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142215
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】マスタ装置及び教示システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20241003BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054288
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707HS27
3C707JT04
3C707KS21
3C707KS33
3C707KS35
3C707KS37
3C707KV01
3C707KW04
3C707LS02
(57)【要約】
【課題】スレーブ装置に動作を効率良くかつ高精度に教示すること。
【解決手段】ベース部材(18)に設けられた固定軸(24)に、第1マスタアーム(26)の基端部が旋回可能に連結される。ベース部材(18)に、第1マスタアーム(26)の旋回動作によって回転するロータ(36)を有したマスタモータ(34)設けられる。第1マスタアーム(26)の一部は、ロータ(36)の軸心から偏心した第1部位に第1連結ピン(48)を介して回転自在に連結されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に設けられた固定軸と、
基端部が前記固定軸に旋回可能に連結され、使用者の第1指を挿入するための第1挿入部を有し、使用者の指操作によって旋回し、スレーブ装置に動作を教示するための第1マスタアームと、
前記ベース部材に設けられ、前記第1マスタアームの旋回動作によって回転するロータを有したマスタモータと、を備え、
前記第1マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した第1部位に第1連結ピンを介して回転自在に連結されていることを特徴とするマスタ装置。
【請求項2】
前記マスタモータは、ダイレクトドライブモータであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ装置。
【請求項3】
基端部が前記固定軸に旋回可能に連結され、使用者の第2指を挿入するための第2挿入部を有し、使用者の指操作によって前記第1マスタアームと同期して旋回し、前記スレーブ装置に動作を教示するための第2マスタアームを更に備え、
前記第2マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した第2部位に第2連結ピンを介して回転自在に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のマスタ装置。
【請求項4】
前記第1連結ピン及び前記第2連結ピンは、前記ロータの軸心を中心として180度の回転対称に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のマスタ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマスタ装置と、
前記第1マスタアームの旋回動作に応じて動作するスレーブ装置と、
前記第1マスタアームの旋回動作に応じた前記ロータの回転角及び/又はトルクに参照して、前記スレーブ装置の動作を制御する制御部と、を備えることを特徴とする教示システム。
【請求項6】
前記スレーブ装置は、
前記ベース部材に離隔した他のベース部材に設けられた他の固定軸と、
基端部が前記他の固定軸に旋回可能に支持され、他の使用者の第1指を挿入するための他の第1挿入部を有した第1スレーブアームと、
前記他のベース部材に設けられ、前記第1マスタアームの旋回動作に応じて回転する他のロータを有したスレーブモータと、を備え、
前記第1スレーブアームの一部は、前記他のロータの軸心から偏心した部位に他の第1連結ピンを介して回転自在に連結されていることを特徴とする請求項5に記載の教示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の指操作可能なマスタ装置及び教示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マスタ装置とスレーブ装置とを備えた教示システムは、機械分野、建築分野、医療分野等の様々な分野に用いられている。使用者の指操作が可能なマスタ装置として、特許文献1に示すものがある。その先行技術に係るマスタ装置の構成を簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係るマスタ装置のベース部材(特許文献1ではヘッド部と称される)には、スレーブ装置に動作を教示するためのマスタアーム(特許文献1では操作部と称される)の基端部が揺動軸(特許文献1では操作部の回転軸と称される)を中心として揺動可能に連結されている。揺動軸は、ベース部材に回転自在に支持されており、レバーの基端部に一体的に連結されている。
【0004】
ベース部材には、マスタモータ(特許文献1では第1回転モータと称される)が設けられており、マスタモータは、マスタアームの揺動操作によって回転するロータ(特許文献1では第1回転モータの回転軸と称される)を有している。マスタアームの揺動軸には、主動ギアが一体的に設けられており、マスタモータのロータには、主動ギアに噛合する従動ギアが一体的に設けられている。換言すれば、マスタアームの一部である基端部は、従動ギア及び主動ギアを介してマスタモータのロータに連動連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-34002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、先行技術に係るマスタ装置においては、マスタアームを従動ギア及び主動ギアを介してマスタモータのロータに連動連結されているため、主動ギアと従動ギアとの間のバックラッシュによって、マスタアームとマスタモータのロータとの間で力の伝達にロスが生じたり、マスタアームとマスタモータのロータとの間にガタツキが生じたりする。その結果、マスタ装置によってスレーブ装置に動作を効率良くかつ高精度に教示することが困難になる。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、第1マスタアームとマスタモータのロータとの間における力の伝達のロス、及び第1マスタアームとマスタモータのロータとの間のガタツキを無くして、マスタ装置によってスレーブ装置に動作を効率良くかつ高精度に教示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るマスタ装置は、ベース部材に設けられた固定軸と、基端部が前記固定軸に旋回可能に連結され、使用者の第1指を挿入するための第1挿入部を有し、使用者によって旋回操作され、スレーブ装置に動作を教示するための第1マスタアームと、前記ベース部材に設けられ、前記第1マスタアームの旋回動作によって回転するロータを有したマスタモータと、を備える。前記第1マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した第1部位に第1連結ピンを介して回転自在に連結されている。
【0009】
本発明の一態様に係る教示システムは、本発明の一態様に係るマスタ装置と、前記第1マスタアームの旋回動作に応じて動作するスレーブ装置と、前記第1マスタアームの旋回動作に応じた前記ロータの回転角及び/又はトルクに参照して、前記スレーブ装置の動作を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1マスタアームとマスタモータのロータとの間における力の伝達のロス、及び第1マスタアームとマスタモータのロータとの間のガタツキを無くして、マスタ装置によってスレーブ装置に動作を効率良くかつ高精度に教示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る教示システムを説明する模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るマスタ装置又はトレーニング装置の模式的な正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るマスタ装置又はトレーニング装置の模式的な左側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るマスタ装置又はトレーニング装置の模式的な右側面図である。
図5】本発明の実施形態に係るマスタ装置又はトレーニング装置を左斜め前から見た模式的な斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るマスタ装置又はトレーニング装置を右斜め前から見た模式的な斜視図である。
図7図3におけるVII-VII線に沿った模式的な図である。
図8】本発明の実施形態に係るマスタ装置又はトレーニング装置の模式的な斜視図であって、使用者の指操作の様子又は他の使用者のトレーニングの様子を示している。
図9】本発明の実施形態の変形例に係るマスタ装置又はトレーニング装置の模式的な斜視図であって、使用者の指操作の様子又は他の使用者のトレーニングの様子を示している。
図10】本発明の実施形態に係る教示システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。図面中に、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る教示システム10は、使用者Mの指操作が可能な一対のマスタ装置12を備えている。一方のマスタ装置12は、使用者Mの右手RHによって操作可能であり、他方のマスタ装置12は、使用者Mの左手LHによって操作可能である。一対のマスタ装置12は、左右対称である点を除き、同様の構成を有している。
【0014】
教示システム10は、対象物(不図示)を把持する一対のクランプ装置14を備えており、一対のクランプ装置14は、一対のマスタ装置12の操作に応じて動作するスレーブ装置である。一方のクランプ装置14は、一方のマスタ装置12の動作に応じて把持動作/把持解除動作を行う。他方のクランプ装置14は、他方のマスタ装置12の動作に応じて把持動作/把持解除動作を行う。各クランプ装置14は、対象物を把持したときの把持力を検出するクランプセンサ(不図示)を有してもよい。
【0015】
教示システム10は、他の使用者MAの指操作のトレーニングを行うための一対のトレーニング装置16を備えており、一対のトレーニング装置16は、一対のマスタ装置12の操作に応じて動作するスレーブ装置である。一方のトレーニング装置16は、一方のマスタ装置12の動作に倣った動作を実行することで、他の使用者MAの右手RHAのトレーニングを行う。他方のトレーニング装置16は、他方のマスタ装置12の動作に倣った動作を実行することで、他の使用者MAの左手LHAのトレーニングを行う。一対のトレーニング装置16は、左右対称である点を除き、同様の構成を有している。
【0016】
次に、図2から図9を参照して、マスタ装置12の具体的な構成について説明する。
【0017】
図2から図6に示すように、マスタ装置12は、ベース部材18を備えており、ベース部材18は、支柱20と、支柱20に水平方向に突出して設けられた支持プレート22とを有している。支持プレート22は、支柱20に対して前後方向及び/又は上下方向に位置調節可能であってもよい。
【0018】
図2から図8に示すように、支持プレート22には、固定軸24が垂下して設けられている。固定軸24には、クランプ装置14及び/又はトレーニング装置16に動作を教示するための第1マスタアーム26の基端部が旋回可能に連結されている。第1マスタアーム26は、固定軸24の軸心を中心として水平方向へ旋回する。第1マスタアーム26は、使用者Mによって水平方向へ旋回操作される。第1マスタアーム26は、その先端側に、使用者Mの第1指としての人差し指を挿入するための第1挿入部28を有している(図8参照)。
【0019】
固定軸24には、クランプ装置14及び/又はトレーニング装置16に動作を教示するための第2マスタアーム30の基端部が旋回可能に連結されている。第2マスタアーム30は、第1マスタアーム26と同期して固定軸24の軸心を中心として水平方向へ旋回する。第2マスタアーム30は、使用者Mによって第1マスタアーム26と同期して水平方向へ旋回操作される。第2マスタアーム30は、その先端側に、使用者Mの第2指としての親指を挿入するための第2挿入部32を有している(図8参照)。
【0020】
支持プレート22には、マスタモータ34が設けられており、マスタモータ34は、ダイレクトドライブモータである。マスタモータ34は、第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30よりも上側に配置されている。マスタモータ34は、第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30の旋回動作によって回転するロータ36を有している。マスタモータ34は、ロータ36の回転角を検出するエンコーダ38(図10参照)を有している。マスタモータ34の近傍には、マスタモータ34の電流を計測する電流計(図10参照)が設けられている。
【0021】
ロータ36には、円板状の接続部材42が同心上に一体的に設けられている。接続部材42は、ロータ36の軸心に対して偏心した第1部位としての第1偏心部44を有している。接続部材42は、ロータ36の軸心に対して偏心しかつ第1部位とは異なる第2部位としての第2偏心部46を有している。第1偏心部44及び第2偏心部46は、ロータの軸心を中心として180度の回転対称に配置されている。
【0022】
図3から図7に示すように、第1マスタアーム26の一部である基端部の近傍は、接続部材42の第1偏心部44に第1連結ピン48を介して回転自在に連結されている。第1連結ピン48は、接続部材42の第1偏心部44に固定されており、第1マスタアーム26の基端部の近傍に形成した長孔に挿通している。また、第2マスタアーム30の一部である第2挿入部32の近傍は、接続部材42の第2偏心部46に第2連結ピン50を介して回転自在に連結されている。第2連結ピン50は、接続部材42の第2偏心部46に固定されており、第2マスタアーム30における第2挿入部32の近傍に形成した長孔に挿通している。第1連結ピン48及び第2連結ピン50は、ロータ36の軸心(接続部材42の軸心)を中心として180度の回転対称に配置されている。
【0023】
前述のように、マスタモータ34が第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30よりも上側に配置されているが、図9に示すように、マスタモータ34が第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30よりも下側に配置されてもよい。
【0024】
続いて、図1から図9を参照して、スレーブ装置としてのトレーニング装置16について説明する。
【0025】
図1から図6に示すように、トレーニング装置16は、スレーブ装置として用いられる点を除き、マスタ装置12と同様の構成を有している。具体的には、トレーニング装置16は、ベース部材18に離隔した他のベース部材18Aを備えており、他のベース部材18Aは、他の支柱20Aと、他の支柱20Aに水平方向に突出して設けられた他の支持プレート22Aとを有している。
【0026】
図1から図8に示すように、他の支持プレート22Aには、他の固定軸24Aが垂下して設けられている。他の固定軸24Aには、第1スレーブアーム26Aの基端部が旋回可能に連結されている。第1スレーブアーム26Aは、他の固定軸24Aの軸心を中心として水平方向へ旋回する。第1スレーブアーム26Aは、その先端側に、他の使用者MAの第1指としての人差し指を挿入するための他の第1挿入部28Aを有している(図8参照)。
【0027】
他の固定軸24Aには、第2スレーブアーム30Aの基端部が旋回可能に連結されている。第2スレーブアーム30Aは、第1スレーブアーム26Aの旋回動作と同期して、他の固定軸24Aの軸心を中心として水平方向へ旋回する。第2スレーブアーム30Aは、その先端側に、他の使用者MAの第2指としての親指を挿入するための他の第2挿入部32Aを有している(図8参照)。
【0028】
他の支持プレート22Aには、スレーブモータ34Aが設けられており、スレーブモータ34Aは、ダイレクトドライブモータである。スレーブモータ34Aは、第1スレーブアーム26A及び第2スレーブアーム30Aよりも上側に配置されている。スレーブモータ34Aは、マスタモータ34のロータ36の回転動作に倣って回転する他のロータ36Aを有している。スレーブモータ34Aは、他のロータ36Aの回転角を検出する他のエンコーダ38A(図10参照)を有している。スレーブモータ34Aの近傍には、スレーブモータ34Aの電流を計測する他の電流計(図10参照)が設けられている。
【0029】
他のロータ36Aには、円板状の他の接続部材42Aが同心上に一体的に設けられている。他の接続部材42Aは、他のロータ36Aの軸心に対して偏心した他の第1部位としての他の第1偏心部44Aを有している。他の接続部材42Aは、他のロータ36Aの軸心に対して偏心しかつ他の第1部位とは異なる他の第2部位としての他の第2偏心部46Aを有している。他の第1偏心部44A及び他の第2偏心部46Aは、他のロータAの軸心を中心として180度の回転対称に配置されている。
【0030】
図3から図7に示すように、第1スレーブアーム26Aの一部である基端部の近傍は、他の接続部材42Aの他の第1偏心部44Aに他の第1連結ピン48Aを介して回転自在に連結されている。他の第1連結ピン48Aは、他の接続部材42Aの他の第1偏心部44Aに固定されており、第1スレーブアーム26Aの基端部の近傍に形成した長孔に挿通している。また、第2スレーブアーム30Aの一部である他の第2挿入部32Aの近傍は、他の接続部材42Aの他の第2偏心部46Aに他の第2連結ピン50Aを介して回転自在に連結されている。他の第2連結ピン50Aは、他の接続部材42Aの他の第2偏心部46Aに固定されており、第2スレーブアーム30Aにおける他の第2挿入部32Aの近傍に形成した長孔に挿通している。他の第1連結ピン48A及び他の第2連結ピン50Aは、他のロータ36Aの軸心(他の接続部材42Aの軸心)を中心として180度の回転対称に配置されている。
【0031】
前述のように、スレーブモータ34Aが第1スレーブアーム26A及び第2スレーブアーム30Aよりも上側に配置されているが、図9に示すように、スレーブモータ34Aが第1スレーブアーム26A及び第2スレーブアーム30Aよりも下側に配置されてもよい。
【0032】
図8に示すように、教示システム10は、一対のマスタ装置12、一対のクランプ装置14、及び一対のトレーニング装置16を制御する制御部としての教示コントローラ52を備えている。教示コントローラ52は、一対のマスタ装置12、一対のクランプ装置14、及び一対のトレーニング装置16の動作を制御するための複数の制御プログラム等を記憶するメモリ(不図示)と、複数の制御プログラムを解釈して実行するマイクロプロセッサ(不図示)とを有している。
【0033】
教示コントローラ52は、マスタモータ34の電流の変化を参照して、ロータ36に働くトルクを算出する。教示コントローラ52は、スレーブモータ34Aの電流の変化を参照して、他のロータ36Aに働くトルクを算出する。教示コントローラ52は、一対のマスタ装置12の第1マスタアーム26の旋回動作に応じたロータの回転角及び/又はトルクに参照して、一対のクランプ装置14の動作を制御する。教示コントローラ52は、一対のマスタ装置12の第1マスタアーム26の旋回動作に応じたロータの回転角及び/又はトルクに参照して、一対のトレーニング装置16が一対のマスタ装置12の動作を倣った動作を行うように一対のスレーブモータ34Aを制御する。教示コントローラ52は、一対のクランプ装置14の把持力に参照して、一対のマスタ装置12のマスタモータ34を制御してもよい。
【0034】
教示コントローラ52は、使用者Mの指操作によって第1挿入部28と第2挿入部32が接近するように第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30が同期して旋回すると、把持動作をするようにクランプ装置14を制御する。教示コントローラ52は、使用者Mの指操作によって第1挿入部28と第2挿入部32が離反するように第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30が同期して旋回すると、把持解除動作をするようにクランプ装置14を制御する。また、教示コントローラ52は、使用者Mの指操作によって第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30が同期して旋回すると、第1スレーブアーム26A及び第2スレーブアーム30Aが同期して倣った動作を実行するようにスレーブモータ34Aを制御する。
【0035】
続いて、本発明の実施形態の作用効果について説明する。
【0036】
図1及び図10に示すように、使用者Mの指操作によって第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30を同期して旋回させる。すると、教示コントローラ52は、第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30の旋回動作に応じたロータ36の回転角及び/又はトルクに参照して、スレーブモータとしてのクランプ装置14及びトレーニング装置16を制御する。これにより、使用者Mの指操作によってクランプ装置14に所望の動作を教示すると共に、マスタ装置12に倣った動作をトレーニング装置16に教示することができる。
【0037】
マスタ装置12においては、前述のように、第1マスタアーム26の一部である基端部の近傍は、接続部材42の第1偏心部44に第1連結ピン48を介して回転自在に連結されている。第2マスタアーム30の一部である第2挿入部32の近傍は、接続部材42の第2偏心部46に第2連結ピン50を介して回転自在に連結されている。そのため、バックラッシュの原因になるギア機構を用いることなく、第1マスタアーム26の一部及び第2マスタアーム30の一部をロータ36に連動連結することができる。これにより、第1マスタアーム26とロータ36との間、及び第2マスタアーム30とロータ36との間における力の伝達のロスを無くすことができる。第1マスタアーム26とロータ36との間、及び第2マスタアーム30とロータ36との間におけるガタツキを無くすことができる。その結果、マスタ装置12によってスレーブ装置としてのクランプ装置14及びトレーニング装置16に動作を効率良くかつ高精度に教示することができる。
【0038】
マスタ装置12においては、前述のように、第1マスタアーム26は、その先端側に、使用者Mの第1指としての人差し指を挿入するための第1挿入部28を有している。第2マスタアーム30は、その先端側に、使用者Mの第2指としての親指を挿入するための第2挿入部32を有している。そのため、使用者Mの2つの指の指操作によってロータ36を正逆方向へ安定的に回転させると共に、クランプ装置14に人間の動作を再現させることができる。
【0039】
マスタ装置12においては、前述のように、マスタモータ34がダイレクトドライブモータである。そのため、ロータ36と第1マスタアーム26又は第2マスタアーム30との間に減速機等の中間機器を介在させる必要がなくなる。これにより、マスタモータ34が一般的なモータである場合に比較して、第1マスタアーム26及び第2マスタアーム30からロータ36に高精度に力を伝達することができる。
【0040】
マスタ装置12においては、前述のように、第1連結ピン48及び第2連結ピン50は、ロータ36の軸心を中心として180度の回転対称に配置されている。そのため、ロータ36の回転範囲を十分に確保して、使用者Mの指操作の操作性を高めることができる。
【0041】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るマスタ装置は、ベース部材に設けられた固定軸と、基端部が前記固定軸に旋回可能に連結され、使用者の第1指を挿入するための第1挿入部を有し、使用者の指操作によって旋回し、スレーブ装置に動作を教示するための第1マスタアームと、
前記ベース部材に設けられ、前記第1マスタアームの旋回動作によって回転するロータを有したマスタモータと、を備える。前記第1マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した第1部位に第1連結ピンを介して回転自在に連結されている。
【0042】
前記の構成によれば、前述のように、前記第1マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した前記第1部位に前記第1連結ピンを介して回転自在に連結されている。そのため、バックラッシュの原因になるギア機構を用いることなく、前記第1マスタアームの一部を前記ロータに連動連結することができる。これにより、前記第1マスタアームと前記ロータとの間における力の伝達のロス、及び前記第1マスタアームと前記ロータとの間のガタツキを無くして、前記マスタ装置によって前記スレーブ装置に動作を効率良くかつ高精度に教示することができる。
【0043】
本発明の態様2に係るマスタ装置は、前記態様1において、前記マスタモータは、ダイレクトドライブモータであってもよい。
【0044】
前記の構成によれば、前記マスタモータがダイレクトドライブモータであるため、前記ロータと前記第1マスタアームとの間に減速機等の中間機器を介在させる必要がなくなる。これにより、前記マスタモータが一般的なモータである場合に比較して、前記第1マスタアームから前記ロータに高精度に力を伝達することができる。
【0045】
本発明の態様3に係るマスタ装置は、前記態様1又は2において、基端部が前記固定軸に旋回可能に連結され、使用者の第2指を挿入するための第2挿入部を有し、使用者の指操作によって前記第1マスタアームと同期して旋回し、前記スレーブ装置に動作を教示するための第2マスタアームを更に備え、前記第2マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した第2部位に第2連結ピンを介して回転自在に連結されてもよい。
【0046】
前記の構成によれば、前述のように、前記第2マスタアームの基端部が前記固定軸に旋回可能に連結され、前記第2マスタアームが使用者の第2指を挿入するための前記第2挿入部を有している。そのため、使用者の2つの指の指操作によって前記ロータを正逆方向へ安定的に回転させることができる。
【0047】
また、前述のように、前記第2マスタアームの一部は、前記ロータの軸心から偏心した前記第2部位に前記第2連結ピンを介して回転自在に連結されている。そのため、バックラッシュの原因になるギア機構を用いることなく、前記第2マスタアームを前記ロータに連動連結することができる。
【0048】
本発明の態様4に係るマスタ装置は、前記態様3において、前記第1連結ピン及び前記第2連結ピンは、前記ロータの軸心を中心として180度の回転対称に配置されてもよい。
【0049】
前記の構成によれば、前記ロータの回転範囲を十分に確保して、使用者の指操作の操作性を高めることができる。
【0050】
本発明の態様5に係る教示システムは、前記態様1から4のいずれかのマスタ装置と、前記第1マスタアームの旋回動作に応じて動作するスレーブ装置と、前記第1マスタアームの旋回動作に応じた前記ロータの回転角及び/又はトルクに参照して、前記スレーブ装置の動作を制御する制御部と、を備える。
【0051】
前記の構成によれば、使用者の指操作によって前記第1マスタアームを旋回させる。すると、前記制御部は、前記第1マスタアームの旋回動作に応じた前記ロータの回転角及び/又はトルクに参照して、前記スレーブ装置の動作を制御する。これにより、使用者の指操作によって前記スレーブ装置に所望の動作を教示することができる。
【0052】
本発明の態様6に係る教示システムは、前記態様5において、前記スレーブ装置は、前記ベース部材に離隔した他のベース部材に設けられた他の固定軸と、基端部が前記他の固定軸に旋回可能に支持され、他の使用者の第1指を挿入するための他の第1挿入部を有した第1スレーブアームと、前記他のベース部材に設けられ、前記第1マスタアームの旋回動作に応じて回転する他のロータを有したスレーブモータと、を備えてもよい。前記第1スレーブアームの一部は、前記他のロータの軸心から偏心した部位に他の第1連結ピンを介して回転自在に連結されてもよい。
【0053】
前記の構成によれば、使用者の指操作によって前記第1マスタアームを旋回させる。すると、前記制御部は、前記第1マスタアームの旋回動作に応じた前記ロータの回転角及び/又はトルクに参照して、前記スレーブモータを制御する。これにより、使用者の指操作によって前記マスタ装置に倣った動作を前記スレーブ装置に教示することができる。
【0054】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態の説明に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10:教示システム、12:マスタ装置、14:クランプ装置(スレーブ装置)、16:トレーニング装置(スレーブ装置)、18:ベース部材、20:支柱、22:支持プレート、24:固定軸、26:第1マスタアーム、28:第1挿入部、30:第2マスタアーム、32:第2挿入部、34:マスタモータ、36:ロータ、38:エンコーダ、40:トルクセンサ、42:接続部材、44:第1偏心部(第1部位)、46:第2偏心部(第2部位)、48:第1連結ピン、50:第2連結ピン、18A:他のベース部材、20A:他の支柱、22A:他の支持プレート、24A:他の固定軸、26A:第1スレーブアーム、28A:他の第1挿入部、30A:第2スレーブアーム、32A:他の第2挿入部、34A:スレーブモータ、36A:他のロータ、38A:他のエンコーダ、40A:他のトルクセンサ、42A:他の接続部材、44A:他の第1偏心部(他の第1部位)、46A:他の第2偏心部(他の第2部位)、48A:他の第1連結ピン、50A:他の第2連結ピン、52:教示コントローラ(制御部)
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