(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014222
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】多細胞構造体評価方法、プログラムおよび多細胞構造体評価装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116893
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】三浦 丈苗
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA03
4B029FA04
(57)【要約】
【課題】複数の多細胞構造体を非侵襲にて個別に評価する。
【解決手段】多細胞構造体を評価する多細胞構造体評価方法は、非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像を準備する工程(ステップS11)と、対象画像において当該複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する工程(ステップS12)と、対象画像において当該複数の多細胞構造体を抽出する工程(ステップS13)と、複数のシンボルをそれぞれ当該複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程(ステップS14)と、各多細胞構造体の評価を示す評価値を各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する工程(ステップS15)と、を備える。これにより、1つの対象画像に含まれる複数の多細胞構造体を非侵襲にて個別に評価することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多細胞構造体を評価する多細胞構造体評価方法であって、
a)非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像を準備する工程と、
b)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する工程と、
c)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体を抽出する工程と、
d)前記複数のシンボルをそれぞれ前記複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程と、
e)各多細胞構造体の評価を示す評価値を前記各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する工程と、
を備えることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多細胞構造体評価方法であって、
前記各多細胞構造体はオルガノイドであることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多細胞構造体評価方法であって、
前記b)工程における前記複数のシンボルの抽出、および、前記c)工程における前記複数の多細胞構造体の抽出はそれぞれ、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて行われることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の多細胞構造体評価方法であって、
前記d)工程は、
d1)前記対象画像において、前記複数の多細胞構造体にそれぞれ対応する複数の部分領域を設定する工程と、
d2)前記複数のシンボルの各シンボルについて、前記各シンボルを含む1つの部分領域を特定し、前記各シンボルを前記1つの部分領域に対応する多細胞構造体に関連付ける工程と、
を備えることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項5】
請求項4に記載の多細胞構造体評価方法であって、
前記d1)工程において、前記複数の部分領域はそれぞれ、対応する多細胞構造体の全体を内部に含むように設定されることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の多細胞構造体評価方法であって、
前記対象画像は、倒立顕微鏡により取得されたモノクロの明視野画像であることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項7】
請求項6に記載の多細胞構造体評価方法であって、
前記倒立顕微鏡による前記対象画像の取得の際に、前記複数の多細胞構造体に拡散光が照射されることを特徴とする多細胞構造体評価方法。
【請求項8】
多細胞構造体を評価するプログラムであって、
前記プログラムがコンピュータによって実行されることにより、
a)非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像を準備する工程と、
b)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する工程と、
c)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体を抽出する工程と、
d)前記複数のシンボルをそれぞれ前記複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程と、
e)各多細胞構造体の評価を示す評価値を前記各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する工程と、
が行われることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
多細胞構造体を評価する多細胞構造体評価装置であって、
非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像において、前記複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する第1抽出部と、
前記対象画像において前記複数の多細胞構造体を抽出する第2抽出部と、
前記複数のシンボルをそれぞれ前記複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける関連付け部と、
各多細胞構造体の評価を示す評価値を前記各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する評価値算出部と、
を備えることを特徴とする多細胞構造体評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多細胞構造体を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、創薬や再生医療・細胞治療等の研究に、多細胞構造体の一種であるオルガノイドが用いられている。オルガノイドとは、複数種類の細胞が3次元的に凝集した多細胞構造体であり、生体内の臓器や器官に近い特徴を有する。オルガノイドは、通常、幹細胞やプライマリ(すなわち、患者や動物から摘出された細胞)を起点として、マイクロタイタープレートやシャーレ、スラントネック型フラスコ等の培養基材上で培養され、多くの工程を経て成長する。したがって、所望のオルガノイドを得るためには、培養途中段階におけるオルガノイドの成長度合いの観察定量や品質評価が重要である。
【0003】
現在、基礎研究や臨床応用等の研究フェーズにおいて、オルガノイドの成長の途中経過を観察する際や、オルガノイドの分化度合いをチェックする際には、培養基材上のオルガノイド群から数個のオルガノイドを抜き取って破壊検査や侵襲的検査を行っている。具体的には、抜き取ったオルガノイドに対して、内部構造の観察、蛍光染色によるマーカーの発現の有無、細胞外活動電位計測、代謝活性の評価、拍動検査等の様々な検査を行い、オルガノイドが所望の機能をどの程度保持しているかを評価する。
【0004】
このような抜き取り検査に使用されたオルガノイドは、試薬の添加等により侵襲されて死滅するため、抜き取り検査の回数を増やそうとすると、最終的に得られるオルガノイドの数(すなわち、最終収量)が少なくなる。当該問題点は、オルガノイド以外の多細胞構造体等の培養においても同様に存在する。
【0005】
特許文献1では、細胞療法等に使用される試験細胞の画像を、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて解析し、当該細胞の機能を評価する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような抜き取り検査は、同一環境下(例えば、培地成分や温度、湿度等が同一の状態)で培養されているオルガノイド群の成長度合いは均一である、という前提の元に行われている。しかしながら、実際には、同一の培養基材上で培養されているオルガノイド群においても、成長度合いには個体差が存在するため、抜き取り検査による評価の信頼性は高いとは言い難い。
【0008】
また、特許文献1の技術では、複数の試験細胞の解析を並行して個別に行うことは難しい。特に、1つの画像中に多数の試験細胞が存在する場合、当該多数の試験細胞の全数検査を個別に行うことは難しい。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の多細胞構造体を非侵襲にて個別に評価することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様1は、多細胞構造体を評価する多細胞構造体評価方法であって、a)非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像を準備する工程と、b)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する工程と、c)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体を抽出する工程と、d)前記複数のシンボルをそれぞれ前記複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程と、e)各多細胞構造体の評価を示す評価値を前記各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する工程と、を備える。
【0011】
本発明の態様2は、態様1の多細胞構造体評価方法であって、前記各多細胞構造体はオルガノイドである。
【0012】
本発明の態様3は、態様1または2の多細胞構造体評価方法であって、前記b)工程における前記複数のシンボルの抽出、および、前記c)工程における前記複数の多細胞構造体の抽出はそれぞれ、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて行われる。
【0013】
本発明の態様4は、態様1または2(態様1ないし3のいずれか1つ、であってもよい。)の多細胞構造体評価方法であって、前記d)工程は、d1)前記対象画像において、前記複数の多細胞構造体にそれぞれ対応する複数の部分領域を設定する工程と、d2)前記複数のシンボルの各シンボルについて、前記各シンボルを含む1つの部分領域を特定し、前記各シンボルを前記1つの部分領域に対応する多細胞構造体に関連付ける工程と、を備える。
【0014】
本発明の態様5は、態様4の多細胞構造体評価方法であって、前記d1)工程において、前記複数の部分領域はそれぞれ、対応する多細胞構造体の全体を内部に含むように設定される。
【0015】
本発明の態様6は、態様1または2(態様1ないし5のいずれか1つ、であってもよい。)の多細胞構造体評価方法であって、前記対象画像は、倒立顕微鏡により取得されたモノクロの明視野画像である。
【0016】
本発明の態様7は、態様6の多細胞構造体評価方法であって、前記倒立顕微鏡による前記対象画像の取得の際に、前記複数の多細胞構造体に拡散光が照射される。
【0017】
本発明の態様8は、多細胞構造体を評価するプログラムであって、前記プログラムがコンピュータによって実行されることにより、a)非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像を準備する工程と、b)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する工程と、c)前記対象画像において前記複数の多細胞構造体を抽出する工程と、d)前記複数のシンボルをそれぞれ前記複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程と、e)各多細胞構造体の評価を示す評価値を前記各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する工程と、が行われる。
【0018】
本発明の態様9は、多細胞構造体を評価する多細胞構造体評価装置であって、非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像において、前記複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボルを抽出する第1抽出部と、前記対象画像において前記複数の多細胞構造体を抽出する第2抽出部と、前記複数のシンボルをそれぞれ前記複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける関連付け部と、各多細胞構造体の評価を示す評価値を前記各多細胞構造体に関連付けられたシンボルに基づいて算出する評価値算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、複数の多細胞構造体を非侵襲にて個別に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一の実施の形態に係る多細胞構造体評価装置の構成を示す図である。
【
図4】コンピュータによって実現される機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る多細胞構造体評価装置1(以下、単に「評価装置1」とも呼ぶ。)の構成を示す図である。評価装置1は、複数の細胞が凝集した構造体である多細胞構造体を評価する装置である。以下では、評価装置1により評価される多細胞構造体はオルガノイドであるものとして説明する。オルガノイドとは、複数種類の多数の細胞が3次元的に凝集した多細胞構造体であり、生体内の臓器や器官に近い特徴を有するものである。
【0022】
評価装置1は、画像取得部2と、コンピュータ3とを備える。画像取得部2は、培養基材上の複数のオルガノイドを拡大しつつ撮像することにより、複数のオルガノイドを含む画像(以下、「対象画像」とも呼ぶ。)を、当該複数のオルガノイドを侵襲することなく取得する。画像取得部2としては、例えば、光学顕微鏡が利用可能である。画像取得部2では、例えば、明視野観察法によりモノクロの明視野画像が取得される。
【0023】
図1に示す例では、画像取得部2は倒立顕微鏡である。画像取得部2は、ステージ21と、光照射部22と、観察光学系23と、カメラ24とを備える。ステージ21は、観察対象物である複数のオルガノイドを保持する培養基材等を支持する。光照射部22は、ステージ21の上方に配置され、ステージ21上の複数のオルガノイドに光を照射する。光照射部22から複数のオルガノイドに照射される光は、例えば拡散光である。観察光学系23は、ステージ21の下方に配置され、複数のオルガノイドを透過した光をカメラ24へと導く。カメラ24は、観察光学系23により導かれた光を受けて、複数のオルガノイドを含む対象画像を取得する。カメラ24は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を有する顕微鏡用デジタルカメラである。
【0024】
図2は、画像取得部2により取得された対象画像9の一例を示す図である。対象画像9には、複数の多細胞構造体91(以下、「オルガノイド91」と呼ぶ。)が含まれている。
図2に示す例では、対象画像9は3つのオルガノイド91を含む。対象画像9が示す複数のオルガノイド91は、同じ種類のオルガノイド91である。当該複数のオルガノイド91は、略同一の生育環境下(例えば、培地成分や温度、湿度等が略同一の状態)で培養されている。例えば、当該複数のオルガノイド91は、1つの培養基材上にて培養されている。
図2に示す例では、各オルガノイド91は脳オルガノイドである。なお、対象画像9中の複数のオルガノイド91は、上述のように、非侵襲で撮像されており、当該複数のオルガノイド91は撮像により損傷したり死滅したりはしない。
【0025】
オルガノイド91には、当該オルガノイド91の成長度合い(すなわち、生育の程度)を示す1つまたは複数のシンボル92が含まれる。
図2に示す例では、脳オルガノイドであるオルガノイド91の表面に形成される神経原基が、シンボル92である。脳オルガノイドの成長度合いは、神経原基の大きさ、数、表面被覆率(すなわち、脳オルガノイド表面のうち神経原基に被覆される領域の割合)等に基づいて評価される。
図2に示す例では、各オルガノイド91には複数のシンボル92が含まれる。
【0026】
なお、オルガノイド91は、脳オルガノイド以外のオルガノイドであってもよい。例えば、オルガノイド91は、腸管上皮オルガノイドであってもよい。この場合、腸管上皮オルガノイドの内部に形成された空洞内壁のクリプト構造が、オルガノイド91の成長度合いを示すシンボル92とされる。
【0027】
図1に示す画像取得部2により取得された対象画像9はコンピュータ3へと送られる。画像取得部2からコンピュータ3への対象画像9の送信は、無線により行われてもよく、有線により行われてもよい。
【0028】
図3は、コンピュータ3の構成を示す図である。コンピュータ3は、プロセッサ31と、メモリ32と、入出力部33と、バス34とを備える通常のコンピュータである。バス34は、プロセッサ31、メモリ32および入出力部33を接続する信号回路である。メモリ32は、各種情報を記憶する。メモリ32は、例えば、記憶媒体30に予め記憶されているプログラムプロダクトであるプログラム39を読み出して記憶する。記憶媒体30は、例えば、USBメモリやCD-ROMである。プロセッサ31は、メモリ32に記憶される上記プログラム39等に従って、メモリ32等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算)を実行する。入出力部33は、オペレータからの入力を受け付けるキーボード35およびマウス36、並びに、プロセッサ31からの出力等を表示するディスプレイ37を備える。入出力部33は、プロセッサ31からの出力等を送信する送信部38も備える。
【0029】
図4は、コンピュータ3によって上記プログラム39が実行されることにより実現される機能を示すブロック図である。評価装置1は、コンピュータ3により実現される機能として、記憶部40と、第1抽出部41と、第2抽出部42と、関連付け部43と、評価値算出部44と、評価部45とを備える。記憶部40は、主にメモリ32により実現され、画像取得部2から送られる対象画像9等を格納する。第1抽出部41、第2抽出部42、関連付け部43、評価値算出部44および評価部45は、主にプロセッサ31により実現される。
【0030】
第1抽出部41は、対象画像9から複数のシンボル92を抽出する。第2抽出部42は、対象画像9から複数のオルガノイド91を抽出する。関連付け部43は、第1抽出部41により抽出された複数のシンボル92をそれぞれ、第2抽出部42により抽出された複数のオルガノイド91のいずれか1つに関連付ける。換言すれば、関連付け部43は、第1抽出部41により抽出された各シンボル92が、どのオルガノイド91に含まれるシンボル92であるかを決定する。評価値算出部44は、各オルガノイド91の成長度合いに関する評価を示す評価値を、各オルガノイド91に関連付けられた1つまたは複数のシンボル92に基づいて算出する。
【0031】
第1抽出部41によるシンボル92の抽出は、例えば、機械学習の一種であるディープラーニングにより生成されたシンボル抽出用の学習済みモデルを用いて行われる。シンボル抽出用の学習済みモデルは、例えば、評価装置1以外の装置により予め生成され、評価装置1の記憶部40に予め記憶される。シンボル抽出用の学習済みモデルの生成は、様々な成長状態のシンボル92を撮像して得られた多数の学習用データ(すなわち、学習用画像)を用いたディープラーニングにより、シンボル92の形状等を初期モデルに学習させることにより行われる。当該学習用データは、例えば、シンボル92を撮像して得られた画像を回転させたものや反転させたもの等を含む。なお、シンボル抽出用の学習済みモデルは、ディープラーニング以外の機械学習により生成されてもよい。
【0032】
評価装置1は、
図4に示すように、コンピュータ3によりプログラム39(
図3参照)が実行されることにより実現される機能として、シンボル抽出用の学習済みモデルを生成する第1学習部46をさらに備えていてもよい。第1学習部46は、主にプロセッサ31により実現される。第1学習部46は、様々な状態のシンボル92を撮像して得られた多数の学習用データを用いて、初期モデルに対してディープラーニング等の機械学習を行うことにより、シンボル抽出用の学習済みモデルを生成する。当該機械学習に用いられる学習用データは、例えば、画像取得部2を用いて予め取得され、コンピュータ3の記憶部40に格納される。
【0033】
第1抽出部41では、シンボル92の抽出は、機械学習による学習済みモデルを用いる方法以外の様々な方法により行われてもよい。例えば、株式会社SCREENホールディングス製の「Cell3iMager専用ソフトウエア」等の公知の画像処理手段により、対象画像9におけるシンボル92とシンボル92以外の領域との濃度差に基づいて、対象画像9からシンボル92の輪郭線(すなわち、シンボル92の外形を規定する輪郭)が抽出されてもよい。
【0034】
第2抽出部42によるオルガノイド91の抽出は、例えば、機械学習の一種であるディープラーニングにより生成されたオルガノイド抽出用の学習済みモデルを用いて行われる。オルガノイド抽出用の学習済みモデルは、例えば、評価装置1以外の装置により予め生成され、評価装置1の記憶部40に予め記憶される。オルガノイド抽出用の学習済みモデルの生成は、様々な状態のオルガノイド91を撮像して得られた多数の学習用データ(すなわち、学習用画像)を用いたディープラーニングにより、オルガノイド91の形状等を初期モデルに学習させることにより行われる。当該学習用データは、例えば、オルガノイド91を撮像して得られた画像を回転させたものや反転させたもの等を含む。なお、オルガノイド抽出用の学習済みモデルは、ディープラーニング以外の機械学習により生成されてもよい。
【0035】
評価装置1は、
図4に示すように、コンピュータ3によりプログラム39(
図3参照)が実行されることにより実現される機能として、オルガノイド抽出用の学習済みモデルを生成する第2学習部47をさらに備えていてもよい。第2学習部47は、主にプロセッサ31により実現される。第2学習部47は、様々な状態のオルガノイド91を撮像して得られた多数の学習用データを用いて、初期モデルに対してディープラーニング等の機械学習を行うことにより、オルガノイド抽出用の学習済みモデルを生成する。当該機械学習に用いられる学習用データは、例えば、画像取得部2を用いて予め取得され、コンピュータ3の記憶部40に格納される。
【0036】
第2抽出部42では、オルガノイド91の抽出は、機械学習による学習済みモデルを用いる方法以外の様々な方法により行われてもよい。例えば、上述の「Cell3iMager専用ソフトウエア」等の公知の画像処理手段により、対象画像9におけるオルガノイド91とオルガノイド91以外の領域との濃度差に基づいて、対象画像9からオルガノイド91の輪郭線(すなわち、オルガノイド91の外形を規定する輪郭)が抽出されてもよい。
【0037】
次に、評価装置1によるオルガノイド91の評価の流れについて、
図5および
図6を参照しつつ説明する。オルガノイド91の評価が行われる際には、まず、複数のオルガノイド91を示す対象画像9が画像取得部2により取得され、記憶部40に格納されることにより準備される(ステップS11)。なお、ステップS11では、評価装置1以外の装置により取得された対象画像9が、記憶部40に格納されて準備されてもよい。
【0038】
続いて、対象画像9において、第1抽出部41により複数のシンボル92が抽出される(ステップS12)。本実施の形態では、複数のシンボル92の抽出は、ディープラーニングにより生成された上述のシンボル抽出用の学習済みモデルを用いて行われる。ステップS12では、例えば、対象画像9に含まれる全てのシンボル92がそれぞれ抽出され、対象画像9中のシンボル92の数が求められる。また、ステップS12では、対象画像9上に設定された所定位置(例えば、対象画像9の左下の角)を原点とする絶対座標系において、各シンボル92の重心位置の座標、および、各シンボル92の輪郭線上の各位置の座標が求められる。さらに、ステップS12では、各シンボル92の対象画像9上における面積も求められる。
【0039】
次に、対象画像9において、第2抽出部42により複数のオルガノイド91が抽出される(ステップS13)。本実施の形態では、複数のオルガノイド91の抽出は、ディープラーニングにより生成された上述のオルガノイド抽出用の学習済みモデルを用いて行われる。ステップS13では、例えば、対象画像9に含まれる全てのオルガノイド91がそれぞれ抽出され、対象画像9中のオルガノイド91の数が求められる。また、ステップS13では、上記絶対座標系における各オルガノイド91の重心位置の座標、および、各オルガノイド91の輪郭線上の各位置の座標が求められる。さらに、ステップS13では、各オルガノイド91の対象画像9上における面積、および、対象画像9上における換算直径も求められる。オルガノイド91の換算直径とは、オルガノイド91がステップS13で求められた面積を有する円であると仮定した場合の当該オルガノイド91の直径である。なお、ステップS13は、ステップS12と独立して行われる処理であり、ステップS12よりも前に行われてもよく、ステップS12と並行して行われてもよい。
【0040】
評価装置1では、ステップS13において求められた各オルガノイド91の重心位置、輪郭線の位置、面積および換算直径は、親オブジェクトである各オルガノイド91に関連付けられて記憶部40に記憶される。また、ステップS12において求められた各シンボル92の重心位置、輪郭線の位置および面積は、子オブジェクトである各シンボル92に関連付けられて記憶部40に記憶される。なお、ステップS12では、各シンボル92の上記以外のパラメータが取得されてもよい。ステップS13においても同様に、各オルガノイド91の上記以外のパラメータが取得されてもよい。
【0041】
ステップS12およびステップS13が終了すると、ステップS12において抽出された複数のシンボル92がそれぞれ、ステップS13において抽出された複数のオルガノイド91のうちいずれか1つに、関連付け部43により関連付けられる(ステップS14)。ステップS14における関連付けは様々な方法により行われてよいが、本実施の形態では、
図6に示すステップS141~S142により行われる。
【0042】
ステップS14では、まず、対象画像9において、
図7に示すように、複数のオルガノイド91にそれぞれ対応する複数の部分領域93が設定される(ステップS141)。具体的には、例えば、ステップS13において抽出された封数のオルガノイド91から一のオルガノイド91が選択される。そして、選択されたオルガノイド91の重心94を中心として、当該オルガノイド91の換算直径に基づいて決定された半径rを有する円形の1つの部分領域93が設定される。半径rは、例えば、当該換算直径に所定の倍率を乗算して決定される。その後、上記複数のオルガノイド91から一のオルガノイド91を選択し、当該オルガノイド91に対応する1つの部分領域93を設定する処理が、対象画像9中の全てのオルガノイド91に対して順次行われる。ステップS141では、各部分領域93について、各部分領域93の中心を原点とするローカル座標系(r,θ座標系)が設定される。
【0043】
ステップS141が終了すると、対象画像9中の各シンボル92について、各シンボル92を含む1つの部分領域93が特定され、各シンボル92が当該1つの部分領域93に対応する1つのオルガノイド91に関連付けられる(ステップS142)。具体的には、例えば、ステップS12において抽出された複数のシンボル92から一のシンボル92が選択される。続いて、選択されたシンボル92の重心位置や輪郭線の位置等に基づいて、当該シンボル92が含まれる1つの部分領域93が特定される。例えば、選択されたシンボル92の重心位置を内包する1つの部分領域93が、当該シンボル92を含む部分領域93として特定される。また、例えば、選択されたシンボル92の重心位置を内包する部分領域93が複数存在する場合、当該複数の部分領域93のうち、選択されたシンボル92の重心位置と最も近接した位置に中心が存在する1つの部分領域93が、当該シンボル92を含む部分領域93として特定される。なお、当該1つの部分領域93の特定は、他の方法により行われてもよい。そして、選択されたシンボル92は、当該1つの部分領域93に対応する1つのオルガノイド91に関連付けられる。その後、上記複数のシンボル92から新たな一のシンボル92を選択し、当該シンボル92を1つのオルガノイド91に関連付ける処理が、対象画像9中の全てのシンボル92に対して順次行われる。
【0044】
ステップS142では、対象画像9におけるオルガノイド91の形状が円形から大きく離れた形状である場合、いずれの部分領域93にも含まれないシンボル92が存在する可能性がある。例えば、対象画像9におけるオルガノイド91が細長い略楕円形である場合、オルガノイド91の長径の端部近傍に存在するシンボル92は、当該オルガノイド91に対応する上述の部分領域93には含まれない可能性がある。この場合、ステップS141では、オルガノイド91に対応する部分領域93の半径を大きくしてもよい。例えば、部分領域93の半径は、上述の方法により求められた値に所定のオフセット値を加えたものとされてもよい。あるいは、部分領域93の半径は、オルガノイド91が略楕円形である場合、オルガノイド91の長径と同じ長さとされてもよい。対象画像9中の全てのシンボル92がいずれかの部分領域93に含まれるように部分領域93を設定するという観点からは、ステップS141において、各部分領域93は、対応するオルガノイド91の全体を内部に含むように設定されることが好ましい。
【0045】
ステップS142では、選択されたシンボル92が含まれる部分領域93の特定は、上記以外の方法により行われてもよい。例えば、選択されたシンボル92の輪郭線の位置に基づいて、当該輪郭線の全体を内包する1つの部分領域93が、当該シンボル92を含む部分領域93として特定されてもよい。シンボル92を含む部分領域93が特定できない場合は、上記と同様に、複数の部分領域93の直径がそれぞれ変更され、各部分領域93が、対応するオルガノイド91の全体を内部に含むように設定されてもよい。
【0046】
ステップS14において、各シンボル92(すなわち、子オブジェクト)がいずれか1つのオルガノイド91(すなわち、親オブジェクト)に関連付けられると、各オルガノイド91に関連付けられた1つまたは複数のシンボル92に基づいて、各オルガノイド91の評価値が評価値算出部44により算出される(ステップS15)。
【0047】
ステップS15では、まず、対象画像9中の複数のオルガノイド91のうち一のオルガノイド91が選択される。続いて、ステップS14において当該オルガノイド91に関連付けられた1つまたは複数のシンボル92について、上述の絶対座標系から当該オルガノイド91に対応する上述のローカル座標系への座標変換が行われる。そして、当該ローカル座標系における各シンボル92の位置等に基づいて、オルガノイド91の成長度合いに関する評価を示す評価値が算出される。当該評価値の算出は、例えば、オルガノイド91に含まれるシンボル92の数、オルガノイド91に含まれる各シンボル92の大きさ、オルガノイド91におけるシンボル92による表面被覆率(すなわち、対象画像9中におけるオルガノイド91の占有面積のうちシンボル92に被覆されている領域の割合)、および/または、ローカル座標系の周方向において隣接するシンボル92の内積(cos)等に基づいて行われる。当該評価値の算出には、上記以外の様々なパラメータが用いられてよい。
【0048】
その後、上記複数のオルガノイド91から新たな一のオルガノイド91を選択し、当該オルガノイド91の評価値を算出する処理が、対象画像9中の全てのオルガノイド91に対して順次行われる。なお、ステップS15では、シンボル92が関連付けられていないオルガノイド91(すなわち、関連付けられるシンボル92の数が0であるオルガノイド91)については、成長度合いが最も低い(すなわち、シンボル92が確認できる程度まで成長していない)ことを示す評価値が付与される。
【0049】
ステップS15が終了すると、各オルガノイド91の成長度合いの評価が、ステップS15において求められた各オルガノイド91の評価値に基づいて評価部45により行われる(ステップS16)。ステップS16では、例えば、各オルガノイド91の上記評価値が、記憶部40に予め記憶されている所定の閾値と比較され、当該比較結果に基づいて各オルガノイド91の成長度合いが評価される。これにより、対象画像9中の全てのオルガノイド91について、各オルガノイド91の成長度合いの評価(すなわち、全数検査)が非侵襲にて行われる。なお、ステップS16は、ステップS15と並行して行われ、複数のオルガノイド91のそれぞれについて、上述の評価値算出および評価が順次行われてもよい。
【0050】
以上に説明したように、多細胞構造体(上記例では、オルガノイド91)を評価する多細胞構造体評価方法は、非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像9を準備する工程(ステップS11)と、対象画像9において当該複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボル92を抽出する工程(ステップS12)と、対象画像9において当該複数の多細胞構造体を抽出する工程(ステップS13)と、複数のシンボル92をそれぞれ当該複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程(ステップS14)と、各多細胞構造体の評価を示す評価値を各多細胞構造体に関連付けられたシンボル92に基づいて算出する工程(ステップS15)と、を備える。
【0051】
当該多細胞構造体評価方法によれば、1つの対象画像9に含まれる複数の多細胞構造体の成長度合いを、非侵襲にて個別に評価することができる。その結果、各多細胞構造体の成長度合いを、抜き取り検査に比べて精度良く評価することができる。また、多細胞構造体の侵襲を避けることにより、抜き取り検査に比べて多細胞構造体の最終収量の減少を抑制しつつ、所望の頻度にて多細胞構造体の成長度合いの評価を行うことができる。
【0052】
上述のように、各多細胞構造体はオルガノイド91であることが好ましい。これにより、1つの対象画像9に含まれる複数のオルガノイド91の成長度合いを、非侵襲にて個別に評価することができる。その結果、各オルガノイド91の成長度合いを精度良く評価することができるとともに、オルガノイド91の成長度合いの評価を、最終収量の減少を抑制しつつ所望の頻度にて行うことができる。
【0053】
上述のように、ステップS12における複数のシンボル92の抽出、および、ステップS13における複数の多細胞構造体の抽出はそれぞれ、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて行われることが好ましい。これにより、シンボル92および多細胞構造体の抽出作業を精度良く行うことができる。シンボル92および多細胞構造体の抽出作業の更なる精度向上という観点からは、上記学習済みモデルはディープラーニングにより生成されることが好ましい。
【0054】
上述のように、ステップS14は、対象画像9において複数の多細胞構造体にそれぞれ対応する複数の部分領域93を設定する工程(ステップS141)と、複数のシンボル92の各シンボル92について、各シンボル92を含む1つの部分領域93を特定し、各シンボル92を当該1つの部分領域93に対応する多細胞構造体に関連付ける工程(ステップS142)と、を備えることが好ましい。これにより、対象画像9中における多細胞構造体とシンボル92との関連付けを容易に行うことができる。
【0055】
上述のように、ステップS141において、複数の部分領域93はそれぞれ、対応する多細胞構造体の全体を内部に含むように設定されることが好ましい。これにより、対象画像9中における多細胞構造体とシンボル92との関連付けを精度良く行うことができる。
【0056】
上述のように、対象画像9は、倒立顕微鏡により取得されたモノクロの明視野画像であることが好ましい。これにより、実体顕微鏡では観察することが難しい比較的小さい多細胞構造体から、ある程度大きく成長した多細胞構造体まで、好適に観察して評価することができる。また、当該倒立顕微鏡による対象画像9の取得の際には、複数の多細胞構造体に拡散光が照射されることが好ましい。これにより、倒立顕微鏡による対象画像9の取得を好適に行うことができる。
【0057】
上述のように、コンピュータ3によってプログラム39が実行されることにより、非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像9を準備する工程(ステップS11)と、対象画像9において当該複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボル92を抽出する工程(ステップS12)と、対象画像9において当該複数の多細胞構造体を抽出する工程(ステップS13)と、複数のシンボル92をそれぞれ当該複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける工程(ステップS14)と、各多細胞構造体の評価を示す評価値を各多細胞構造体に関連付けられたシンボル92に基づいて算出する工程(ステップS15)と、が行われる。これにより、上記と同様に、1つの対象画像9に含まれる複数の多細胞構造体の成長度合いを、非侵襲にて個別に評価することができる。
【0058】
上述の評価装置1は、第1抽出部41と、第2抽出部42と、関連付け部43と、評価値算出部44とを備える。第1抽出部41は、非侵襲で撮像された複数の多細胞構造体を示す対象画像9において、当該複数の多細胞構造体の成長度合いを示す複数のシンボル92を抽出する。第2抽出部42は、対象画像9において複数の多細胞構造体を抽出する。関連付け部43は、複数のシンボル92をそれぞれ当該複数の多細胞構造体のいずれか1つに関連付ける。評価値算出部44は、各多細胞構造体の評価を示す評価値を各多細胞構造体に関連付けられたシンボル92に基づいて算出する。これにより、上記と同様に、1つの対象画像9に含まれる複数の多細胞構造体の成長度合いを、非侵襲にて個別に評価することができる。
【0059】
上述の多細胞構造体評価方法、プログラム39および評価装置1では、様々な変更が可能である。
【0060】
例えば、対象画像9の取得の際に複数の多細胞構造体に照射される光は、拡散光以外の光であってもよい。また、対象画像9を取得する画像取得部2は、必ずしも倒立顕微鏡である必要はなく、他の構造を有する顕微鏡、または、顕微鏡以外の構成であってもよい。対象画像9は、カラー画像であってもよく、明視野画像以外の画像であってもよい。
【0061】
ステップS141において設定される各部分領域93は、必ずしも、対応する多細胞構造体の全体を内部に含むように設定される必要はなく、例えば、対応する多細胞構造体を部分的に内部に含むように設定されてもよい。また、部分領域93の形状は円形には限定されず、様々に変更されてよい。
【0062】
また、ステップS14におけるシンボル92と多細胞構造体との関連付けは、上述のステップS141~S142以外の様々な方法により行われてよい。例えば、部分領域93の設定は、ステップS14から省略されてもよい。
【0063】
上述の多細胞構造体評価方法により評価される多細胞構造体は、オルガノイドには限定されず、他の多細胞構造体であってもよい。当該他の多細胞構造体としては、例えば、スフェロイド(すなわち、多数の細胞が単に3次元的に集合した単純なクラスタ)や、多数の細胞が単に2次元的に集合したもの等が挙げられる。
【0064】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0065】
1 評価装置
2 画像取得部
3 コンピュータ
9 対象画像
39 プログラム
41 第1抽出部
42 第2抽出部
43 関連付け部
44 評価値算出部
91 オルガノイド
92 シンボル
93 部分領域
S11~S16,S141~S142 ステップ