(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142221
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】環境形成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054296
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】金田 誠次
(72)【発明者】
【氏名】今井 豹介
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA07
2G050BA06
2G050BA10
2G050BA11
2G050EA01
2G050EA02
2G050EA04
2G050EC07
(57)【要約】
【課題】環境形成装置を柔軟に移動させる。
【解決手段】環境形成装置100は、所定の環境を形成する装置本体1と、装置本体1に設けられ、装置本体1を移動させるキャスタ4と、装置本体1の移動を所定のガイド方向へ案内するガイド6とを備えている。キャスタ4は、ボールキャスタである。ガイド6は、ガイド方向の1つである第1方向へ延びる第1ガイド6Aと、ガイド方向の1つであって第1方向とは異なる第2方向へ第1ガイド6Aから延びる第2ガイド6Bとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境形成装置であって、
所定の環境を形成する装置本体と、
前記装置本体に設けられ、前記装置本体を移動させるキャスタと、
前記装置本体の移動を所定のガイド方向へ案内するガイドとを備え、
前記キャスタは、ボールキャスタであり、
前記ガイドは、前記ガイド方向の1つである第1方向へ延びる第1ガイドと、前記ガイド方向の1つであって前記第1方向とは異なる第2方向へ前記第1ガイドから延びる第2ガイドとを含む環境形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境形成装置において、
前記ガイド方向に沿って延び、前記ガイド方向に交差する方向への前記装置本体の移動を制限する制限壁をさらに備え、
前記装置本体は、前記制限壁と接触し得る接触部を有し、
前記制限壁は、前記接触部が接触することによって前記ガイド方向に交差する方向への前記装置本体の移動を制限する環境形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の環境形成装置において、
前記第1ガイド及び前記第2ガイドのそれぞれは、一対の側壁を有して上方に開放するガイド溝によって形成され、
前記一対の側壁は、前記キャスタが所定の第1範囲で移動可能な溝幅を有し、
前記制限壁は、前記キャスタが前記溝幅の方向へ前記第1範囲を超えて移動した場合に前記接触部が接触する位置に配置されている環境形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の環境形成装置において、
前記一対の側壁のそれぞれの上端縁は、R面によって面取りされている環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、環境形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試験のための特定の環境を形成する環境形成装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された装置は、空調機器を備えた断熱槽を備えている。断熱槽の内部には試験室が区画されている。空調機器によって試験室内に特定の環境が形成される。
【0003】
さらに、断熱槽は、移動可能に構成されている。断熱槽は、移動することによって、補助装置に連結されたり、補助装置から離脱したりする。具体的には、断熱槽は、車輪を介してレールの上に載置されている。これにより、断熱槽は、レールに沿って移動する。補助装置には、被試験体が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、環境形成装置は、補助装置等と共に使用される場合もあり、そのために環境形成装置は移動可能に構成され得る。しかしながら、環境形成装置は重量物であるために、その移動は容易ではない。前述の装置では、車輪及びレールによって断熱槽が一方向に移動可能に構成されている。環境形成装置がさらに柔軟に移動できると、環境形成装置の利便性がさらに向上する。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環境形成装置を柔軟に移動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された環境形成装置は、所定の環境を形成する装置本体と、前記装置本体に設けられ、前記装置本体を移動させるキャスタと、前記装置本体の移動を所定のガイド方向へ案内するガイドとを備え、前記キャスタは、ボールキャスタであり、前記ガイドは、前記ガイド方向の1つである第1方向へ延びる第1ガイドと、前記ガイド方向の1つであって前記第1方向とは異なる第2方向へ前記第1ガイドから延びる第2ガイドとを含む。
【発明の効果】
【0008】
前記環境形成装置によれば、環境形成装置を柔軟に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】補助装置から離脱させられた環境形成装置を側方から視た模式的な断面図である。
【
図2】補助装置に連結された環境形成装置を側方から視た模式的な断面図である。
【
図7】別の変形例に係るガイドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、補助装置9から離脱させられた環境形成装置100を側方から視た模式的な断面図である。
図2は、補助装置9に連結された環境形成装置100を側方から視た模式的な断面図である。
【0011】
環境形成装置100は、被試験体Dを試験するための環境を形成する。環境形成装置100は、所定の環境を形成する装置本体1と、装置本体1に設けられ、装置本体1を移動させるキャスタ4と、装置本体1の移動を所定のガイド方向へ案内するガイド6とを備えている。環境形成装置100は、制限プレート7をさらに備えている。制限プレート7は、ガイド方向に沿って延び、ガイド方向に交差する方向への装置本体1の移動を制限する。環境形成装置100は、被試験体Dが設置される補助装置9と共に使用され得る。
【0012】
具体的には、装置本体1は、試験を行うための環境をその内部に形成する。装置本体1は、キャスタ4によって移動可能となっている。装置本体1は、移動時にガイド6によって案内される。装置本体1は、キャスタ4及びガイド6を介して移動することによって、補助装置9に連結されたり、補助装置9から離脱したりする。装置本体1と補助装置9とが連結されることによって、被試験体Dが装置本体1の内部に配置される。
【0013】
装置本体1は、チャンバ10と、チャンバ10内の空気を調節する空調機器2とを有している。チャンバ10は、いわゆる断熱槽である。チャンバ10は、略直方体の箱状に形成されている。チャンバ10は、内部空間を試験室12と空調室13とに仕切る仕切壁11を有する。仕切壁11は、試験室12と空調室13とを気密には仕切っておらず、試験室12と空調室13とを互いに連通させる。チャンバ10は、試験室12を外部に開放する開口14を有している。
【0014】
空調機器2は、冷却器21と加熱器22と加湿器23と送風機24とを有している。空調機器2は、チャンバ10内の空気を冷却、加熱及び加湿する。冷却器21、加熱器22、加湿器23及び送風機24は、空調室13内に配置される。
【0015】
冷却器21は、例えば、冷媒回路の蒸発器である。冷媒回路は、圧縮機と凝縮器と膨張器と蒸発器とを有している。冷媒回路は、冷媒を循環させて、冷凍サイクルを行う。蒸発器は、冷媒と周囲の空気とを熱交換させ、空気を冷却する。
【0016】
加熱器22は、例えば、電気ヒータである。加熱器22は、周囲の空気を加熱する。
【0017】
加湿器23は、例えば、蒸気を放出することによって、空気の湿度を上昇させる。
【0018】
送風機24は、例えば、ファンである。送風機24は、空調室13と試験室12とで空気を循環させる。
【0019】
空調室13には、空調室13の空気の温度を測定する温度センサ25と空調室13の空気の湿度を測定する湿度センサ26とが設けられている。
【0020】
空調機器2は、冷却器21及び加熱器22によって空気の温度を調節し、且つ、加湿器23によって空気の湿度を調節する。調和された空気は、送風機24によって空調室13から試験室12へ供給される。空調機器2は、温度センサ25及び湿度センサ26の検出結果に基づいて冷却器21、加熱器22及び加湿器23をフィードバック制御して、所望の環境を形成する。
【0021】
補助装置9には、被試験体Dが設置される。例えば、補助装置9は、被試験体Dに給電し、被試験体Dを動作させる。被試験体Dは、例えば、モータである。補助装置9は、各種センサを有していてもよい。補助装置9は、チャンバ10に連結可能に構成されている。詳しくは、補助装置9は、
図2に示すように、開口14を塞ぐようにチャンバ10に連結される。このとき、補助装置9は、被試験体Dをチャンバ10内、詳しくは、試験室12内に配置する状態でチャンバ10に連結される。
【0022】
環境形成装置100は、補助装置9に連結された状態において、空調機器2によって試験室12内に試験のための環境を形成する。試験室12内が所望の環境に維持された状態で、被試験体Dに対する試験が実施される。具体的には、補助装置9は、被試験体Dを動作させる。被試験体Dは、所望の環境下で動作する。その際に、各種センサによって被試験体Dの試験に関する様々な物理量が計測される。
【0023】
図3は、装置本体1の底面図である。キャスタ4は、複数設けられている。具体的には、装置本体1には、4個のキャスタ4が設けられている。4個のキャスタ4は、装置本体1の下面に取り付けられている。詳しくは、チャンバ10の底壁15は、略四角形、具体的には略長方形に形成されている。チャンバ10の底壁15の四隅のそれぞれにキャスタ4が取り付けられている。4個のキャスタ4を区別する場合には、符号「4」の後にアルファベットを付して区別する。具体的には、第1キャスタ4A、第2キャスタ4B、第3キャスタ4C、第4キャスタ4Dがチャンバ10の底壁15の周方向に順番に配置されている。つまり、第1キャスタ4Aと第2キャスタ4Bとは、チャンバ10の底壁15の一方の長辺に沿って並んでいる。第3キャスタ4Cと第4キャスタ4Dとは、チャンバ10の底壁15の他方の長辺に沿って並んでいる。第1キャスタ4Aと第4キャスタ4Dとは、チャンバ10の底壁15の一方の短辺に沿って並んでいる。第2キャスタ4Bと第3キャスタ4Cとは、チャンバ10の底壁15の他方の短辺に沿って並んでいる。
【0024】
図4は、キャスタ4を中心とする拡大図である。キャスタ4は、いわゆる、ボールキャスタである。詳しくは、キャスタ4は、チャンバ10の底壁15に取り付けられるサポート41と、サポート41によって回転自在に支持されるボール42とを有している。ボール42は、略球状に形成されている。サポート41は、その下端からボール42を部分的に露出させた状態でボール42を回転自在に支持する。
【0025】
装置本体1は、制限プレート7と接触し得る接触部43を有している。接触部43は、サポート41に設けられている。接触部43は、鉛直方向に延びる軸心を有する略円筒状に形成されている。
【0026】
図5は、ガイド6を示す平面図である。ガイド6は、所定の第1方向へ延びる第1ガイド6Aと、第1方向とは異なる第2方向へ第1ガイド6Aから延びる第2ガイド6Bとを含む。第1方向及び第2方向はそれぞれ、直線的に延びる方向である。第1方向及び第2方向はそれぞれ、ガイド方向である。第2方向は、第1方向に対して略直交する方向である。第2ガイド6Bは、第1ガイド6Aと交差している。第1ガイド6Aは、補助装置9へ向かって延びている。つまり、第1ガイド6Aは、装置本体1を補助装置9へ案内する。第2ガイド6Bは、第1ガイド6Aのうち補助装置9から離れた部分において第1ガイド6Aと交差している。
【0027】
具体的には、ガイド6は、一対の第1ガイド6Aと一対の第2ガイド6Bとを含む。一対の第1ガイド6Aは、互いに略平行に第1方向へ延びている。一対の第2ガイド6Bは、互いに略平行に第2方向へ延びている。装置本体1の4個のキャスタ4のうち2個のキャスタ4を一方の第1ガイド6Aが案内し、残りの2個のキャスタ4を他方の第1ガイド6Aが案内する。第2ガイド6Bも同様である。
【0028】
ただし、各第1ガイド6Aは、チャンバ10の底壁15の長辺に沿って並ぶ2個のキャスタ4を案内する。一方、各第2ガイド6Bは、チャンバ10の底壁15の短辺に沿って並ぶ2個のキャスタ4を案内する。具体的には、一方の第1ガイド6Aは、第1キャスタ4A及び第2キャスタ4Bを案内し、他方の第1ガイド6Aは、第3キャスタ4C及び第4キャスタ4Dを案内する。そのため、一対の第1ガイド6Aの間隔は、第1キャスタ4Aと第4キャスタ4Dとの間隔(即ち、第2キャスタ4Bと第3キャスタ4Cとの間隔)に一致している。一方の第2ガイド6Bは、第1キャスタ4A及び第4キャスタ4Dを案内し、他方の第2ガイド6Bは、第2キャスタ4B及び第3キャスタ4Cを案内する。そのため、一対の第2ガイド6Bの間隔は、第1キャスタ4Aと第2キャスタ4Bとの間隔(即ち、第3キャスタ4Cと第4キャスタ4Dとの間隔)に一致している。
【0029】
第1ガイド6A及び第2ガイド6Bは、延びる方向が異なるだけで、基本的な構成は共通である。第1ガイド6A及び第2ガイド6Bのそれぞれは、
図4に示すように、一対の側壁61を有して上方に開放するガイド溝60によって形成されている。
【0030】
詳しくは、第1ガイド6A及び第2ガイド6Bのそれぞれは、一対のガイドプレート63を有する。各ガイドプレート63は、一定の厚さを有し、略直線状に延びる平板である。一対のガイドプレート63は、路面62上に配置されている。ガイドプレート63の厚さ方向は、路面62の法線方向と一致している。一対のガイドプレート63は、互いに間隔を空けて略平行に並んでいる。ガイド溝60は、一対のガイドプレート63と路面62とによって形成される。各ガイドプレート63の部分のうち、もう一方のガイドプレート63と対向する端面が、ガイド溝60の側壁61である。路面62が、ガイド溝60の底壁である。ここで、一方の側壁61と他方の側壁61とが対向する方向を溝幅方向と称する。各側壁61が延びる方向、即ち、ガイド6のガイド方向をガイド溝60が延びる方向と称する。
【0031】
ガイド6は、一対の側壁61によってキャスタ4の移動を案内する。つまり、一対の側壁61は、溝幅方向へのボール42の移動を制限することによって、ボール42を路面62上に維持する。基本的には、一対の側壁61は、キャスタ4をガイド溝60の延びる方向へ案内する。ただし、一対の側壁61の間隔、即ち、ガイド溝60の溝幅は、キャスタ4が溝幅方向へ所定の第1範囲で移動可能な値に設定されている。ボール42は、一対の側壁61の間を溝幅方向へ第1範囲内で移動することができる。言い換えると、所定の第1範囲は、ガイド溝60の溝幅方向に対して設定されたキャスタ4が移動可能な範囲である。
【0032】
側壁61の高さは、ボール42の半径よりも低い。そのため、ボール42が側壁61に接触する場合、ボール42は側壁61の上端縁に接触する。一対の側壁61のそれぞれの上端縁は、R面64によって面取りされている。側壁61の上端縁が角張っておらず、R面64となっているので、ボール42が側壁61に接触する場合に、ボール42の損傷、即ち、摩耗が抑制される。
【0033】
制限プレート7は、キャスタ4がガイド溝60から脱線した場合に、装置本体1の移動を制限する。具体的に、制限プレート7は、ガイド6のガイド方向(第1方向又は第2方向)と交差する方向、即ち、ガイド溝60が延びる方向と交差する方向への装置本体1の移動を制限する。接触部43が制限プレート7に接触することによって、ガイド6のガイド方向に交差する方向への装置本体1の移動が制限される。制限プレート7は、制限壁の一例である。
【0034】
制限プレート7は、ガイド溝60が延びる方向に沿って一対設けられている。各制限プレート7は、一定の厚さを有し、略直線状に延びる平板である。一対の制限プレート7は、路面62上に配置されている。制限プレート7の厚さ方向は、ガイド溝60の溝幅方向を向いている。一対の制限プレート7は、互いに間隔を空けて略平行に並んで、一対のガイドプレート63に沿って延びている。一対の制限プレート7の高さは、接触部43に対応する高さとなっている。
【0035】
詳しくは、制限プレート7は、キャスタ4が溝幅方向へ第1範囲を超えて移動した場合に接触部43が接触する位置に配置されている。具体的には、一対の制限プレート7は、溝幅方向においてガイド溝60の両側に配置されている。一対の制限プレート7の間隔は、キャスタ4の接触部43の外形(即ち、直径)よりも大きい。キャスタ4がガイド溝60内を走行している場合には、接触部43は、一対の制限プレート7に接触しない。溝幅方向における一対の制限プレート7の間隔は、接触部43が第1範囲よりも大きな第2範囲で移動可能な値に設定されている。ボール42がガイド溝60から脱線してガイドプレート63に乗り上げた場合に、接触部43は、一対の制限プレート7の一方に接触し得る。接触部43が制限プレート7に接触することによって、ガイド6のガイド方向と交差する方向への装置本体1の移動が制限される。
【0036】
この例では、ガイドプレート63及び制限プレート7は、一体的に形成されている。詳しくは、ガイドプレート63のうち、一対のガイドプレート63の並ぶ方向の外側の端縁に制限プレート7が連結されている。ガイドプレート63及び制限プレート7は、いわゆるアングル材、即ち、山形鋼で形成されている。
【0037】
このように構成された環境形成装置100では、装置本体1は、キャスタ4及びガイド6を介して移動する。詳しくは、装置本体1は、第1ガイド6Aによって第1方向へ案内される。第1方向は、装置本体1が補助装置9に接近又は補助装置9から離間する方向である。装置本体1を補助装置9に連結させる際には、装置本体1が第1ガイド6Aに沿って補助装置9に接近する向きに移動させられる。装置本体1が補助装置9まで到達すると、チャンバ10の開口14が補助装置9によって閉塞される。この状態で装置本体1が補助装置9に連結される。装置本体1は、補助装置9に連結された状態で、試験のための特定の環境を形成する。環境の形成後、試験が実施される。
【0038】
装置本体1は、第1ガイド6Aに案内されることによって、補助装置9に対して適切な位置に到達する。つまり、装置本体1と補助装置9との適切な連結を実現することができる。
【0039】
試験の終了後、装置本体1は、補助装置9から離脱させられる。具体的には、装置本体1と補助装置9との連結が解除され、装置本体1が第1ガイド6Aに沿って補助装置9から離間する向きに移動させられる。これにより、装置本体1が補助装置9から離れていく。
【0040】
さらに、装置本体1が第1ガイド6Aと第2ガイド6Bとの交差点に達すると、第2ガイド6Bに沿った第2方向へ方向転換することができる。装置本体1は、第2ガイド6Bによって第2方向へ案内され得る。装置本体1は、交差点から第2ガイド6Bへ進入することによって、第1ガイド6Aから第2方向へ逸れていく。装置本体1が第1ガイド6Aから離れていくことによって、補助装置9に対向する位置のスペースが拡大される。これにより、例えば、補助装置9からの被試験体Dの取り外し又は補助装置9への被試験体Dの設置などの補助装置9に対する処理の作業性が向上する。
【0041】
このような装置本体1の移動がキャスタ4によって実現されている。キャスタ4は、ボールキャスタなので、耐荷重が大きい。つまり、装置本体1の重量が大きい場合であっても、キャスタ4は装置本体1を円滑に移動させることができる。さらに、キャスタ4は、ボールキャスタなので、方向転換を容易に実現できる。例えば、車輪付きのキャスタの場合、方向転換する際にはキャスタそのものが回転する必要がある。キャスタが回転する際に装置本体1が移動する可能性があり、第1ガイド6Aと第2ガイド6Bとの間での進路変更が円滑にできない虞がある。ボールキャスタであれば、ボールの回転の方向が変わるだけで方向転換が実現される。方向転換の際に装置本体1の不要な移動もほとんどない。そのため、第1ガイド6Aと第2ガイド6Bとの間での装置本体1の進路変更が円滑に実現される。
【0042】
そして、装置本体1は、ガイド6によって案内されるので、位置精度が確保される。例えば、装置本体1を補助装置9に対して適切な位置へ移動させることができる。さらに、装置本体1は、第1ガイド6A及び第2ガイド6Bによって異なる方向へ案内されるので、単一の方向へ案内される場合と比べて、柔軟に移動することができる。例えば、装置本体1は、補助装置9から単に離れるだけでなく、補助装置9に対する作業スペースを確保できる位置まで退避させることができる。
【0043】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0044】
例えば、装置本体1は、任意の環境を形成し得る。例えば、装置本体1が形成する環境は、温度、湿度又は圧力等であってもよい。装置本体1は、環境として、塵埃、雨、雪、風、振動等を発生させてもよい。装置本体1は、環境として、特定の気体を供給してもよい。
【0045】
被試験体Dは、モータに限定されず、モータ以外の装置であってもよい。また、装置本体1は、試験のために用いられるものに限定されない。装置本体1は、オーブン等の焼成を実行する装置であってもよい。
【0046】
装置本体1は、断熱槽を有していなくてもよい。装置本体1は、形成する環境に応じた構成となり得る。
【0047】
装置本体1は、補助装置9と共に使用されるものに限定されない。装置本体1は、それ単独で使用されてもよいし、補助装置9以外の装置と共に使用されてもよい。つまり、装置本体1がガイド6によって移動させられる理由は、様々である。装置本体1に対して作業を行う作業位置、装置本体1を使用する使用位置、装置本体1を退避させる退避位置等が決められている場合、装置本体1は、ガイド6によって各位置へ適宜案内され得る。
【0048】
装置本体1に設けられたキャスタ4の個数は、4個に限定されない。キャスタ4の個数は、3個以下、又は、5個以上であってもよい。
【0049】
ガイド6の構成は、前述の構成に限定されない。例えば、ガイド6は、キャスタ4のボール42に接触することによって装置本体1の移動を案内する。しかし、ガイド6は、キャスタ4のサポート41に接触することによって、装置本体1の移動を案内してもよい。あるいは、ガイド6は、装置本体1に接触することによって装置本体1の移動を案内してもよい。
【0050】
環境形成装置100は、制限プレート7を備えていなくてもよい。例えば、前述の例において、側壁61の高さがキャスタ4に対して十分に高いために装置本体1がガイド6から逸脱し難い場合などは、環境形成装置100は、制限プレート7を備えていなくてもよい。あるいは、装置本体1がガイド6から逸脱しても、装置本体1及びその周囲に悪影響が無い場合等においては、環境形成装置100は、制限プレート7を備えていなくてもよい。この構成において、装置本体1がガイド6から逸脱した場合には、装置本体1をガイド6に案内される状態に戻せばよい。
【0051】
制限プレート7は、ガイド6と別体に形成されていてもよい。制限壁は、制限プレート7のような板材ではなく、ブロック状の部材で形成されていてもよい。
【0052】
接触部43は、キャスタ4に設けられていなくてもよい。例えば、接触部43は、装置本体1、即ち、チャンバ10に設けられていてもよい。すなわち、制限プレート7は、キャスタ4と接触せず、装置本体1の一部(即ち、接触部43)と接触することによって、装置本体1の移動を制限してもよい。
【0053】
ガイド6は、前述の構成に限定されない。
図6は、変形例に係るガイド6を示す平面図である。例えば、第2ガイド6Bは、第1ガイド6Aと略直交する方向の両側に延びていてもよい。そして、環境形成装置100は、2つの装置本体1、具体的には第1装置本体1A及び第2装置本体1Bを備えていてもよい。第2ガイド6Bのうち第2方向の一端部は、第1装置本体1Aが退避するための第1退避位置となっている。第2ガイド6Bのうち第2方向の他端部は、第2装置本体1Bが退避するための第2退避位置となっている。つまり、第1装置本体1Aが補助装置9に連結されている場合には、第2装置本体1Bは、第2ガイド6Bのうち第2退避位置に位置する。第1装置本体1Aが補助装置9から離脱させられたときには、第1装置本体1Aは、第1ガイド6Aから第2ガイド6Bの第1退避位置まで案内される。第1装置本体1Aが第1退避位置に位置する状態において、第2装置本体1Bは、第2ガイド6Bの第2退避位置から第1ガイド6Aを介して補助装置9まで案内されることができる。このように、第1装置本体1A及び第2装置本体1Bを補助装置9へ交互に連結させることができる。第1装置本体1A及び第2装置本体1Bのうち補助装置9に連結されていない方は、第2ガイド6Bにおける退避位置に退避している。第1装置本体1A及び第2装置本体1Bのうち退避している方を、補助装置9に連結されている方と異なる環境にしておくことによって、補助装置9に取り付けられた被試験体Dを複数の異なる環境に交互にさらすことができる。なお、装置本体1は、開口14を一時的に塞ぐ部材を備えてもよい。
【0054】
ガイド6は、第1ガイド6A及び第2ガイド6B以外のガイドを含んでいてもよい。つまり、ガイド6は、第1方向及び第2方向とは異なる方向へ延びるガイドを含んでいてもよい。
図7は、別の変形例に係るガイド6を示す平面図である。ガイド6は、第1ガイド6A及び第2ガイド6Bに加えて、第3ガイド6Cをさらに含んでいる。第3ガイド6Cは、ガイド方向の1つであって第2方向と異なる第3方向へ第2ガイド6Bから延びている。第3方向は、第1方向と略平行である。すなわち、第3ガイド6Cは、第1ガイド6Aと略平行である。第1ガイド6Aの一端には、第1補助装置9Aが隣接して配置されている。第3ガイド6Cの一端には、第2補助装置9Bが隣接して配置されている。第1ガイド6Aは、装置本体1を第1補助装置9Aへ接近及び離間させるように案内し、第3ガイド6Cは、装置本体1を第2補助装置9Bへ接近及び離間させるように案内する。第2ガイド6Bは、装置本体1を第1ガイド6Aと第3ガイド6Cとの間で移動させる。このガイド6によれば、装置本体1は、第1ガイド6Aによって第1補助装置9Aまで案内される。装置本体1は、第1補助装置9Aと連結され、特定の環境を形成する。このとき、第2補助装置9Bは、装置本体1が連結されておらず、作業スペースが確保されている。第2補助装置9Bからの被試験体Dの取り外し又は第2補助装置9Bへの被試験体Dの設置などの作業を容易に行うことができる。装置本体1と第1補助装置9Aによる試験が完了すると、装置本体1が第1ガイド6Aに案内されて、第1補助装置9Aから離脱させられる。装置本体1は、第1ガイド6Aから第2ガイド6Bを介して第3ガイド6Cまで案内される。装置本体1は、第3ガイド6Cによって第2補助装置9Bまで案内される。装置本体1は、第2補助装置9Bと連結され、特定の環境を形成する。このとき、第1補助装置9Aは、装置本体1が連結されておらず、作業スペースが確保されている。第1補助装置9Aからの被試験体Dの取り外し又は第1補助装置9Aへの被試験体Dの設置などの作業を容易に行うことができる。このように、ガイド6は、装置本体1を第1補助装置9Aと第2補助装置9Bとの間で柔軟に且つ高い位置精度で移動させることができる。
【0055】
ここに開示された技術をまとめると以下のようになる。
【0056】
[1]環境形成装置100は、所定の環境を形成する装置本体1と、前記装置本体1に設けられ、前記装置本体1を移動させるキャスタ4と、前記装置本体1の移動を所定のガイド方向へ案内するガイド6とを備え、前記キャスタ4は、ボールキャスタであり、前記ガイド6は、前記ガイド方向の1つである第1方向へ延びる第1ガイド6Aと、前記ガイド方向の1つであって前記第1方向とは異なる第2方向へ前記第1ガイドから延びる第2ガイド6Bとを含む。
【0057】
この構成によれば、装置本体1は、ボールキャスタであるキャスタ4によって移動が可能である。ボールキャスタの耐荷重は比較的大きく、且つ、ボールキャスタの方向転換は比較的容易である。そのため、装置本体1の重量が大きい場合であっても、装置本体1を円滑に移動させ且つ方向転換させることができる。つまり、装置本体1を柔軟に移動させることができる。それに加えて、装置本体1の移動はガイド6によってガイド方向へ案内されるので、装置本体1の位置精度が確保される。さらに、ガイド6は、第1ガイド6A及び第2ガイド6Bを含むので、装置本体1は、単一の方向だけでなく、複数の方向に移動することができる。以上のように、ボールキャスタ、第1ガイド6A及び第2ガイド6Bによって、装置本体1を高い位置精度で柔軟に移動させることができる。
【0058】
[2] [1]に記載の環境形成装置100において、前記ガイド方向に沿って延び、前記ガイド方向に交差する方向への前記装置本体1の移動を制限する制限プレート7をさらに備え、前記装置本体1は、前記制限プレート7と接触し得る接触部43を有し、前記制限プレート7は、前記接触部43が接触することによって前記ガイド方向に交差する方向への前記装置本体1の移動を制限する。
【0059】
この構成によれば、装置本体1がガイド方向に沿った方向ではなく、ガイド方向に交差する方向へ移動しようとした場合に、接触部43が制限プレート7に接触することによって装置本体1の移動が制限させる。これにより、装置本体1がガイド6から逸れてしまうことが防止される。
【0060】
[3] [1]又は[2]に記載の環境形成装置100において、前記第1ガイド6A及び前記第2ガイド6Bのそれぞれは、一対の側壁61を有して上方に開放するガイド溝60によって形成され、前記一対の側壁61は、前記キャスタ4が所定の第1範囲で移動可能な溝幅を有し、前記制限プレート7は、前記キャスタ4が前記溝幅の方向へ前記第1範囲を超えて移動した場合に前記接触部43が接触する位置に配置されている。
【0061】
この構成によれば、キャスタ4は、基本的にはガイド溝60によってガイド方向へ案内される。ガイド溝60は、キャスタ4が溝幅の方向へ第1範囲内で移動できる余裕を有している。ガイド溝60がこのような余裕を有することによって、キャスタ4はガイド溝60内を円滑に移動することができる。しかし、キャスタ4が溝幅の方向へ第1範囲を超えて移動した場合には、接触部43が制限プレート7に接触することによって、ガイド方向に交差する方向への装置本体1の移動が制限される。このように、キャスタ4の円滑な移動を可能としつつ、キャスタ4がガイド溝60から逸脱した場合には、装置本体1の移動を制限できる。
【0062】
[4] [1]乃至[3]の何れか1つに記載の環境形成装置100において、前記一対の側壁61のそれぞれの上端縁は、R面64によって面取りされている。
【0063】
この構成によれば、キャスタ4は、ガイド溝60の側壁61に接触し得る。側壁61の上端縁が角張っていると、キャスタ4の摩耗が大きくなり得る。しかし、側壁61の上端縁をR面64によって面取りすることによって、キャスタ4の摩耗を低減することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 環境形成装置
1 装置本体
4 キャスタ
42 ボール
43 接触部
6 ガイド
6A 第1ガイド
6B 第2ガイド
60 ガイド溝
61 側壁
64 R面
7 制限プレート(制限壁)