(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142223
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】検査システム、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 22/04 20060101AFI20241003BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N22/04 Z
G01N22/00 Y
G01N22/00 W
G01N22/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054298
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】細井 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
(72)【発明者】
【氏名】南山 征慶
(57)【要約】
【課題】対象物の組成に関連する検査対象量の測定精度を向上すること。
【解決手段】検査システム1は、送信部11と、受信アンテナ22と、ミキサ部12と、演算部39と、設定部38と、を備える。送信部11は、周波数が第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号を送信アンテナ21に出力し、送信アンテナ21から対象空間200に電波を送信させる。受信アンテナ22は、送信アンテナ21から送信されて対象空間200又は対象空間200に配置された対象物100を通過した電波を受信する。ミキサ部12は、送信信号と受信アンテナ22から出力される受信信号とに基づいて中間波を生成する。演算部39は、ミキサ部12の出力に基づいて対象物100の組成に関連する検査対象量を求める。設定部38は、チャープ時間を、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナに送信信号を出力することによって、前記送信アンテナから対象物を配置可能な対象空間に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる送信部と、
前記送信アンテナから送信されて前記対象空間又は前記対象空間に配置された前記対象物を通過した電波を受信する受信アンテナと、
前記送信信号と前記受信アンテナから出力される受信信号とに基づいて中間波を生成するミキサ部と、
前記ミキサ部の出力に基づいて前記対象物の組成に関連する検査対象量を求める演算部と、
設定部と、を備え、
前記送信部は、前記送信アンテナから送信される電波の周波数が、第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した前記送信信号を前記送信アンテナに出力し、
前記設定部は、前記チャープ時間を、前記中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する、
検査システム。
【請求項2】
前記ミキサ部は、前記受信信号の周波数と、前記送信信号の周波数との差の信号を前記中間波として生成する、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記設定部が、前記送信部から出力されて前記送信アンテナに入力される前記送信信号の位相を調整する第1位相調整部、及び、前記受信アンテナから出力される前記受信信号の位相を調整する第2位相調整部の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項4】
前記第1位相調整部は、前記チャープ時間が前記中間波を1周期以上生成可能な時間となるように、前記送信部から出力されて前記送信アンテナに入力される前記送信信号の位相を調整し、
前記第2位相調整部は、前記チャープ時間が前記中間波を1周期以上生成可能な時間となるように、前記受信アンテナから出力される前記受信信号の位相を調整する、
請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記演算部が、
前記対象物が前記対象空間に不存在である第1状態で前記ミキサ部が生成した前記中間波と、前記対象物が前記対象空間に存在している第2状態で前記ミキサ部が生成した前記中間波との間での、位相及び振幅の変化、又は、前記位相の変化に基づいて前記対象物の比誘電率を算出する第1算出処理と、前記位相及び前記振幅の変化に基づいて前記対象物の誘電正接を算出する第2算出処理との少なくとも一方を行う第1演算部と、
前記第1演算部の算出結果に基づいて前記対象物の組成に関連する検査対象量を求める第2演算部と、を含む、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記ミキサ部の出力を所定のサンプリング周期でサンプリングするサンプリング部を更に備え、
前記第1演算部は、前記第1状態及び前記第2状態の各々で、前記サンプリング部がサンプリングした複数個のデータに基づいて前記中間波の位相及び振幅を算出し、
前記設定部が、前記中間波の1周期において前記サンプリング部がサンプリングするデータの数が360以上となるように、前記チャープ時間を設定する、
請求項5に記載の検査システム。
【請求項7】
前記ミキサ部の出力を所定のサンプリング周期でサンプリングするサンプリング部を更に備え、
前記第1演算部は、前記第1状態及び前記第2状態の各々で、前記サンプリング部がサンプリングした複数個のデータに基づいて前記中間波の位相及び振幅を算出し、
前記サンプリング部は、前記中間波の1周期において前記サンプリング部がサンプリングするデータの数が360以上となるように、前記チャープ時間におけるサンプリング数を設定する、
請求項5に記載の検査システム。
【請求項8】
前記第2演算部は、前記第1演算部の算出対象と前記検査対象量との関係を予め求めた検量線と、前記第1演算部の算出結果とに基づいて、前記検査対象量を求める、
請求項5に記載の検査システム。
【請求項9】
前記検査対象量は、前記対象物の含水率である、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項10】
送信アンテナに送信信号を出力することによって、前記送信アンテナから対象物を配置可能な対象空間に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる送信部と、
前記送信アンテナから送信されて前記対象空間又は前記対象空間に配置された前記対象物を通過した電波を受信する受信アンテナと、
前記送信信号と前記受信アンテナから出力される受信信号とに基づいて中間波を生成するミキサ部と、を備える検査システムの検査方法であって、
前記ミキサ部の出力に基づいて前記対象物の組成に関連する検査対象量を求める演算処理と、
設定処理と、を含み、
前記送信部は、前記送信アンテナから送信される電波の周波数が、第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した前記送信信号を前記送信アンテナに出力し、
前記設定処理では、前記チャープ時間を、前記中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する、
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム、及び検査方法に関する。より詳細には、本開示は、対象物に含まれる検査対象の組成に関連する検査対象量を検出する検査システム、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被検査物体の内部の構造や欠陥の形状を検査可能な内部検査装置を開示する。この内部検査装置は、被検査物体に向けてミリ波を放射し、被検査物体からの反射波を受信するミリ波送受信アンテナと、ミリ波送受信アンテナに接続されたミリ波送受信回路と、被検査物体を移動する電動ステージとを備える。内部検査装置は、被検査物体とミリ波送受信アンテナとの間の複数の相対的に異なる位置で受信した複数のミリ波信号と、複数の相対的に異なる位置を示す位置データを用いて合成開口処理を行い、被検査物体の内部の構造又は内部の欠陥の形状を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の内部検査装置は、被検査物体(対象物)の内部の構造又は内部の欠陥の形状を求めるものであり、対象物の組成に関連する検査対象量をより精度よく測定したいという要求があった。
【0005】
本開示の目的は、対象物の組成に関連する検査対象量の測定精度を向上することができる検査システム及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の検査システムは、送信部と、受信アンテナと、ミキサ部と、演算部と、設定部と、を備える。前記送信部は、送信アンテナに送信信号を出力することによって、前記送信アンテナから対象物を配置可能な対象空間に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる。前記受信アンテナは、前記送信アンテナから送信されて前記対象空間又は前記対象空間に配置された前記対象物を通過した電波を受信する。前記ミキサ部は、前記送信信号と前記受信アンテナから出力される受信信号とに基づいて中間波を生成する。前記演算部は、前記ミキサ部の出力に基づいて前記対象物の組成に関連する検査対象量を求める。前記送信部は、前記送信アンテナから送信される電波の周波数が、第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した前記送信信号を前記送信アンテナに出力する。前記設定部は、前記チャープ時間を、前記中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する。
【0007】
本開示の一態様の検査方法は、送信部と受信アンテナとミキサ部とを備える検査システムの検査方法である。前記送信部は、送信アンテナに送信信号を出力することによって、前記送信アンテナから対象物を配置可能な対象空間に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる。前記受信アンテナは、前記送信アンテナから送信されて前記対象空間又は前記対象空間に配置された前記対象物を通過した電波を受信する。前記ミキサ部は、前記送信信号と前記受信アンテナから出力される受信信号とに基づいて中間波を生成する。前記検査方法は、演算処理と、設定処理と、を含む。前記演算処理では、前記ミキサ部の出力に基づいて前記対象物の組成に関連する検査対象量を求める。前記送信部は、前記送信アンテナから送信される電波の周波数が、第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した前記送信信号を前記送信アンテナに出力する。前記設定処理では、前記チャープ時間を、前記中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象物の組成に関連する検査対象量の測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る検査システムの概略的なシステム構成図である。
【
図2】
図2は、送信信号の周波数、受信信号の周波数、及びミキサ部が生成した中間周波数の信号の信号強度の時間変化を示すグラフである。
【
図3】
図3は、同上の検査システムにおいて、対象物の比誘電率と含水率との関係を示す検量線のグラフである。
【
図4】
図4は、同上の検査システムの検査方法を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、同上の変形例1に係る検査システムの概略的なシステム構成図である。
【
図6】
図6は、送信信号の周波数、受信信号の周波数、及びミキサ部が生成した中間周波数の信号の信号強度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る検査システム及び検査方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例に過ぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(実施形態)
(1)概要
図1は、本実施形態の検査システム1の概略的なシステム構成図である。
【0012】
本実施形態の検査システム1は、送信部11と、送信アンテナ21と、受信アンテナ22と、ミキサ部12と、演算部39と、設定部38と、を備える。
【0013】
送信部11は、送信アンテナ21に送信信号SG1を出力することによって、送信アンテナから対象空間200に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる。対象空間200には対象物100を配置可能である。
【0014】
受信アンテナ22は、送信アンテナ21から送信されて対象空間200又は対象空間200に配置された対象物100を通過した電波を受信する。
【0015】
ミキサ部12は、送信信号SG1と受信アンテナ22から出力される受信信号SG2とに基づいて中間波(IF:Intermediate Frequency)を生成する。
【0016】
演算部39は、ミキサ部12の出力に基づいて対象物100の組成に関連する検査対象量を求める。
【0017】
送信部11は、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が、第1周波数faから第2周波数fbまで所定のチャープ時間tcをかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号SG1(
図2の上段のグラフを参照)を送信アンテナ21に出力する。
【0018】
設定部38は、チャープ時間tcを、中間波(中間周波数の信号SG3)を1周期T
IF以上生成可能な時間に設定する(
図2参照)。
【0019】
ここにおいて、ミリ波の周波数帯の電波とは、波長が1~10mm、周波数が30~300GHzの電波である。また、準ミリ波の周波数帯の電波とは、周波数が24GHz~29GHzの電波である。
【0020】
対象物100が対象空間200に不存在である(つまり配置されていない)第1状態では、受信アンテナ22は、送信アンテナ21から送信されて対象空間200を通過した電波を受信する。対象物100が対象空間200に存在している(つまり配置されている)第2状態では、受信アンテナ22は、送信アンテナ21から送信され、対象空間200に配置された対象物100を通過(透過)した電波を受信する。
【0021】
対象物100が対象空間200に配置された第2状態では、対象物100が対象空間200に配置されていない第1状態に比べ、対象物100の組成に応じて、受信アンテナ22が受信する電波の位相及び振幅が変化し、それによってミキサ部12の出力が変化する。
【0022】
したがって、演算部39は、例えば、第1状態でミキサ部12が生成した中間波と、第2状態でミキサ部12が生成した中間波との変化から、対象物100の組成に関連する検査対象量を非接触で求めることができる。
【0023】
また、検査システム1は、マイクロ波に比べて波長が短い準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を対象物100に送信しているので、対象物100の検査対象量の測定精度が向上するという利点もある。
【0024】
さらに、設定部38が、チャープ時間tcを中間波の1周期TIF以上生成可能な時間に設定しているので、チャープ時間tcが中間波の1周期TIF未満である場合に比べ、演算部39は、第1状態でミキサ部12が出力する中間波と、第2状態でミキサ部12が出力する中間波との間での変化をより精度よく算出することができる。したがって、演算部39は対象物100の検査対象量をより精度よく求めることができ、検査対象量の測定精度を向上させることができる。
【0025】
(2)詳細
以下、本実施形態の検査システム1及び検査方法について
図1~
図5を参照して詳しく説明する。
【0026】
本実施形態の検査システム1では対象物100が、例えば、乳製品(チーズ、バター、ヨーグルト等)、ペースト状の食材(パン、クッキー、麺類の生地)、又は調味料(ソース、ドレッシング等)等の食品である。本実施形態の検査システム1は、食品に含まれる水分の割合を表す含水率を求めるために用いられる。すなわち、検査システム1が求める検査対象量は、対象物100の含水率である。なお、対象物100の含水率は例えば重量パーセントであるが、体積パーセントでもよい。
【0027】
(2.1)構成
本実施形態の検査システム1は、
図1に示すように、上述の送信部11及びミキサ部12を有するレーダモジュール10と、送信アンテナ21と、受信アンテナ22と、上述の演算部39及び設定部38を有する演算装置30と、を備える。
【0028】
レーダモジュール10は、フィルタ13と、サンプリング部14とを更に備える。
【0029】
レーダモジュール10は、送信アンテナ21から対象空間200に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させ、対象空間200を通過した電波又は対象空間200に配置された対象物100を透過した電波を受信アンテナ22で受信する。
【0030】
送信アンテナ21は、例えば、基板上に複数のアンテナ素子がアレイ状(例えば4行4列)に配列された平面アレイアンテナである。
【0031】
受信アンテナ22は、例えば、基板上に複数のアンテナ素子がアレイ状(例えば4行4列)に配列された平面アレイアンテナである。
【0032】
送信アンテナ21と受信アンテナ22とは、対象物100を配置可能な対象空間200を挟んで、互いに対向して配置されている。
【0033】
送信部11から送信アンテナ21に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の送信信号SG1が入力されると、送信アンテナ21は準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を対象空間200に送信する。本実施形態では、送信部11は、例えば24GHz帯(24.0GHz~24.25GHz)の電波を送信アンテナ21から送信させる。対象空間200に対象物100が配置されていない第1状態では、送信アンテナ21から送信された電波は、対象空間200を通過して受信アンテナ22によって受信される。また、対象空間200に対象物100が配置されている第2状態では、送信アンテナ21から対象空間200に送信された電波は、対象空間200に配置された対象物100を透過して受信アンテナ22によって受信される。
【0034】
送信アンテナ21から送信され、対象空間200又は対象空間200に配置された対象物100を通過した電波が受信アンテナ22によって受信されると、受信アンテナ22は、受信アンテナ22が受信した電波を電気信号に変換して受信信号SG2を出力する。
【0035】
送信部11は、送信アンテナ21に送信信号SG1を出力し、送信アンテナ21が備える複数のアンテナ素子と接地導体との間に電流を流すことによって、送信アンテナ21から対象空間200を介して受信アンテナ22へ準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる。より詳細には、送信部11は、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が、
図2に示すように、第1周波数faから第2周波数fbまで所定のチャープ時間tcをかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式(FMCW方式)で変調した送信信号SG1を送信アンテナ21に出力する。ここにおいて、送信部11は、設定部38から入力される設定値に基づいてチャープ時間を決定し、周波数が第1周波数faから第2周波数fbまでチャープ時間tcをかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号SG1を送信アンテナ21に出力する。なお、
図2は、送信部11が出力する送信信号SG1の周波数、受信アンテナ22から出力される受信信号SG2の周波数、及び中間波の信号強度の時間変化を示している。
【0036】
ミキサ部12は、送信部11が出力する送信信号SG1と、受信アンテナ22が出力する受信信号SG2とを混合して中間波、つまり中間周波数の信号SG3を生成する。具体的には、ミキサ部12は、受信信号SG2の周波数frと、送信信号SG1の周波数ftとの差の信号を中間波として出力する。なお、ミキサ部12は、送信信号SG1の周波数ftと受信信号SG2の周波数frととの和(ft+fr)の信号と、送信信号SG1の周波数ftと受信信号SG2の周波数frとの差(ft-fr)の信号とを出力するが、フィルタ13によって周波数の差(ft-fr)の信号のみがサンプリング部14に出力される。すなわち、サンプリング部14には、送信信号SG1の周波数ftと受信信号SG2の周波数frとの差信号である、中間周波数の信号SG3が入力される。
【0037】
ここにおいて、数m先にある物体を検知するためのレーダ装置では、送信アンテナ21から物体まで電波が伝搬した後、物体で反射された電波が受信アンテナ22まで伝搬するため、送信信号SG1と受信信号SG2との間の遅延時間は、物体までの距離に応じた遅延時間となる。このようなレーダ装置に比べて、本実施形態の検査システム1では、送信アンテナ21と受信アンテナ22との間で電波が伝搬する距離が短くなるため、送信信号SG1と受信信号SG2との間の遅延時間が短くなる。よって、送信信号SG1の周波数ftと受信信号SG2の周波数frとの差が小さくなり、中間周波数の信号SG3の周波数が低くなる。
【0038】
サンプリング部14は、ミキサ部12の出力を所定のサンプリング周期でサンプリングする。さらに言えば、サンプリング部14は、第1状態及び第2状態の各々において、ミキサ部12から入力される中間周波数の信号SG3を、所定のサンプリング周期でサンプリングしたデータを演算装置30に出力する。上述のように、チャープ時間tcは中間波(つまり中間周波数の信号SG3)を1周期TIF以上生成可能な時間に設定されているので、サンプリング部14は、第1状態及び第2状態の各々で、中間周波数の信号SG3の少なくとも1周期TIF分のデータをサンプリングすることができる。したがって、送信信号SG1と受信信号SG2との間の遅延時間が短いために、中間波の周波数が低い場合でも、サンプリング部14が、中間波の1周期TIF以上のデータをサンプリングすることができる。
【0039】
演算装置30は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ等で実現される。
【0040】
演算装置30は、処理部31と、記憶部32と、表示部33と、操作部37と、を備える。
【0041】
記憶部32は、例えば、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含む。記憶部32は、例えば、第1状態及び第2状態の各々で、サンプリング部14が中間周波数の信号SG3をサンプリングした複数個のデータを記憶する。また、記憶部32は、後述する第1演算部34の算出対象と対象物100の検査対象量との関係を予め求めた検量線のデータを記憶する。本実施形態では、第1演算部34の算出対象が対象物100の比誘電率であり、検査対象量が対象物100に含まれる水分の含水率(例えば対象物100の重量に対する水分の重量パーセント)である。したがって、記憶部32は、対象物100の比誘電率と対象物100の含水率との関係を予め求めた検量線のデータを記憶する。
【0042】
表示部33は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示部33は、例えば、演算部39での演算結果を表示するために用いられる。
【0043】
操作部37は、ユーザの操作を受け付ける機能を有している。操作部37は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、若しくはメカニカルなスイッチ、又はこれらの組み合わせにて実現される。なお、操作部37は、ユーザが発した音声を音声認識処理で入力情報に変換することによって、音声による操作命令を入力情報として受け付けるように構成されていてもよい。
【0044】
処理部31は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリ又は記憶部32に記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、処理部31の機能が実現される。プログラムは、メモリ又は記憶部32に記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0045】
処理部31は、例えば、演算部39、出力部36、及び設定部38の機能を有している。また、演算部39は、第1演算部34と、第2演算部35の機能を含んでいる。なお、演算部39(第1演算部34及び第2演算部35)、出力部36、及び設定部38は、処理部31によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0046】
設定部38は、送信部11が送信信号SG1を周波数連続変調方式で変調するチャープ時間tcを設定する。設定部38は、中間波を1周期TIF以上生成可能な時間となるようにチャープ時間tcを設定し、チャープ時間tcの設定値を送信部11に出力する。これにより、送信部11は、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が第1周波数faから第2周波数fbまで、設定部38によって設定されたチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号SG1を送信アンテナ21に出力する。
【0047】
第1演算部34は、第1算出処理と、第2算出処理との少なくとも一方を行う。第1算出処理は、第1状態でミキサ部12が生成した中間波と、第2状態でミキサ部12が生成した中間波との間での、位相及び振幅の変化、又は、位相の変化に基づいて対象物100の比誘電率を算出する処理である。第2算出処理は、第1状態でミキサ部12が生成した中間波と、第2状態でミキサ部12が生成した中間波との間での、位相及び振幅の変化に基づいて対象物100の誘電正接を算出する処理である。第1状態は、対象物100が対象空間200に不存在の状態である。第2状態は、対象物100が対象空間200に存在している状態である。第2演算部35は、第1演算部34の算出結果(比誘電率及び誘電正接の少なくとも一方の算出結果)に基づいて対象物100の組成に関連する検査対象量を求める。なお、本実施形態では、第1演算部34が、中間波の位相及び振幅の変化に基づいて対象物100の誘電正接及び比誘電率を算出し、第2演算部35が、第1演算部34による比誘電率の算出結果に基づいて検査対象量を求める場合を例に説明を行う。
【0048】
具体的には、第1演算部34は、第1状態及び第2状態の各々で、サンプリング部14がサンプリングした複数個のデータに基づいて中間波の位相及び振幅を算出する。
【0049】
なお、本実施形態では、第1演算部34が、第1状態でミキサ部12が生成した中間波と、第2状態でミキサ部12が生成した中間波との間での位相及び振幅の変化から対象物100の誘電正接及び比誘電率を算出する。
【0050】
本実施形態では、第1演算部34は、例えば、第1状態及び第2状態の各々で、チャープの開始時点からチャープ時間tcが経過するまでの間にサンプリング部14が中間周波数の信号SG3をサンプリングした複数個のデータをFFT(Fast Fourier Transform)解析することによって、中間周波数の信号SG3の位相及び振幅を算出する。ここにおいて、チャープ時間tcは、中間波(つまり中間周波数の信号SG3)の1周期TIF以上に設定されている。これにより、サンプリング部14は、中間周波数の信号SG3の1周期TIF分以上のデータをサンプリングすることができ、第1演算部34は、中間周波数の信号SG3の位相及び振幅をより正確に求めることができる。
【0051】
第1演算部34は、第1状態及び第2状態の各々で中間周波数の信号SG3の位相及び振幅を算出すると、以下の式(1)~(5)を用いて対象物100の誘電正接tanδを算出した後、式(6)を用いて対象物100の比誘電率εrを算出する。ここで、第1状態での中間波の位相をθ1、振幅をL1とし、第2状態での中間波の位相をθ2、振幅をL2とする。また、送信アンテナ21から送信される電波の周波数をf1[Hz]、周波数f1での電波の波長をλ1[m]、対象物100の内部で電波が進行する距離(つまり、対象物100の厚さ)をt1[m]とする。なお、周波数f1は、FMCW方式で周波数を変化させる周波数範囲の中央値である。
【0052】
このとき、第1状態での中間波と第2状態での中間波との間での位相の変化量Δθ及び振幅の変化量dLは、下記の式(1)(2)となる。
【0053】
Δθ=θ2-θ1 (1)
dL=L2-L1 (2)
そして、変数a,bを下記の式(3)(4)のように定義すると、対象物100の誘電正接は下記の式(5)を用いて求めることができる。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
第1演算部34は、対象物100の誘電正接tanδを求めると、下記の式(6)を用いて対象物100の比誘電率εrを求める。
【0058】
【0059】
第1演算部34が、対象物100の比誘電率ε
rを算出すると、第2演算部35が、対象物100の比誘電率ε
rと含水率との関係を表す検量線と、比誘電率ε
rの算出結果とに基づいて、対象物100の含水率を算出する。なお、第2演算部35は、第1演算部34の算出対象と検査対象量との関係を予め求めた検量線と、第1演算部34の算出結果とに基づいて検査対象量を求めている。本実施形態では、第1演算部34の算出対象が対象物100の比誘電率ε
r、検査対象量が対象物100の含水率である。したがって、第2演算部35は、対象物100の比誘電率ε
rと含水率との関係を予め求めた検量線と、第1演算部34による比誘電率ε
rの算出結果とに基づいて含水率を求めている。
図3は、対象物100の比誘電率ε
rと含水率との関係を表す検量線の一例を示す。検量線は、例えば、複数の対象物100の含水率及び比誘電率ε
rを測定して得た複数点の測定データを補間することによって求められる。第2演算部35は、例えば、比誘電率ε
rの算出結果を検量線に当てはめることによって、対象物100の含水率を求めることができる。なお、第2演算部35は、複数の対象物100の含水率及び比誘電率ε
rを測定して得た複数点の測定データをもとに、比誘電率ε
rから含水率を求める関係式を求めておき、この関係式に比誘電率ε
rの算出結果を入力することで含水率を算出してもよい。
【0060】
出力部36は、第2演算部35によって対象物100の含水率が求められると、含水率の演算結果を表示部33に出力し、表示部33に含水率の演算結果を表示させる。
【0061】
従来、試料の含水率を測定する場合、カールフィッシャー滴定法のような化学反応を利用して試料中の水分を定量する方法があるが、このような方法は測定に手間がかかっていた。それに対して、本実施形態の検査システム1では、対象物100が配置されていない対象空間200に電波を送信した場合の中間波と、対象空間200に配置された対象物100に電波を送信した場合の中間波との間で位相及び振幅の変化を求め、位相及び振幅の変化から誘電正接及び比誘電率を算出し、検査対象量(本実施形態では含水率)を求めているので、測定の手間を軽減できるという利点がある。
【0062】
さらに、本実施形態では、設定部38が、チャープ時間tcを、中間波を1周期TIF以上生成可能な時間に設定しているので、チャープ時間tcが中間波の1周期TIF未満である場合に比べ、第1演算部34は、第1状態及び第2状態の各々で、中間波の位相及び振幅をより精度よく算出することができる。したがって、第1演算部34が対象物100の比誘電率をより精度よく算出することができ、第2演算部35が対象物100の検査対象量をより精度よく求めることができる。
【0063】
なお、設定部38は、チャープ時間tcを中間波の2周期分以上の時間に設定してもよく、第1演算部34は、第1状態及び第2状態の各々で、中間波の位相及び振幅をより精度よく算出することができる。
【0064】
ここにおいて、チャープ時間tcにおける中間波の波数をn、チャープ時間tcにおけるサンプリング数をNsとすると、サンプリング部14は、角度(n×360÷Ns)ごとに1個のデータをサンプリングすることができる。したがって、設定部38は、角度(n×360÷Ns)が1以下となるような波数nの中間波がチャープ時間tcに現れるように、チャープ時間tcを設定すればよい。
【0065】
例えば、サンプリング部14がチャープ時間tcにおけるサンプリング数を1024とした場合、チャープ時間tcにおける中間波の波数が2.84以下であれば、中間波(中間周波数の信号SG3)の位相の1度につき1個以上のデータをサンプリングすることができる。したがって、設定部38は、チャープ時間tcにおける中間波の波数が1以上かつ2.84以下となるようにチャープ時間tcを設定すればよい。
【0066】
(2.2)動作説明
本実施形態の検査システム1の動作を
図4等に基づいて説明する。なお、
図4に示すフローチャートは、本実施形態の検査システム1を用いて対象物100の含水率を測定する際の動作の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0067】
検査システム1を用いて対象物100の含水率を測定する際の動作を
図4等に基づいて説明する。
【0068】
検査システム1のユーザは、対象空間200に検査対象の対象物100を配置していない第1状態で、操作部37を操作して送信アンテナ21から電波の送信を開始させる送信開始操作を行う。
【0069】
操作部37が送信開始操作を受け付けると、処理部31は、送信信号SG1の出力を開始する制御指令を送信部11に出力し、送信部11が送信信号SG1の出力を開始する。送信部11は、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が、第1周波数faから第2周波数fbまでチャープ時間tcをかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号SG1を送信アンテナ21に出力する。本実施形態では、送信部11は、第1状態及び第2状態の各々において、送信アンテナ21から送信される電波の周波数を、第1周波数faから第2周波数fbまでチャープ時間tcをかけて連続的に変化させる送信信号SG1を複数回繰り返し生成する。ここで、送信信号SG1を所定の回数(例えば32回)生成する期間を1フレームといい、送信部11は、第1状態及び第2状態の各々において、例えば1フレームの期間に送信信号SG1を所定の回数繰り返し生成している。なお、送信部11は、第1状態及び第2状態の各々において、送信信号SG1を所定の回数繰り返し生成する1フレームの処理を複数フレーム分行ってもよく、第1状態及び第2状態の各々において送信信号SG1を生成する回数は適宜変更が可能である。
【0070】
送信部11が送信信号SG1を送信アンテナ21に出力すると、送信アンテナ21から対象空間200に向けて電波が送信され(ステップST1)、対象空間200を通過した電波が受信アンテナ22によって受信される。このとき、ミキサ部12が、送信信号SG1と、受信アンテナ22から出力される受信信号SG2とを混合して中間波、つまり中間周波数の信号SG3を生成する(ステップST2)。送信部11は、送信信号SG1の出力開始からチャープ時間tcが経過するまで、送信信号SG1の周波数を第1周波数faから第2周波数fbまで連続的に増加させており、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が第1周波数faから第2周波数fbまで連続的に増加する。また、送信信号SG1の出力開始からチャープ時間tcが経過するまでの間、サンプリング部14はミキサ部12からフィルタ13を介して入力される信号SG3を所定のサンプリング周期でサンプリングし、信号SG3をサンプリングしたデータを処理部31に出力する。処理部31は、サンプリング部14から信号SG3をサンプリングしたデータが入力されると、このデータを記憶部32に保存する。1フレームの時間内に送信信号SG1が所定の回数生成されるので、記憶部32には、第1状態において、送信信号SG1の出力開始からチャープ時間tcが経過するまでの間に生成された中間周波数の信号SG3を所定のサンプリング周期でサンプリングした複数個のデータが記憶される。
【0071】
送信部11は、第1状態での測定開始から1フレームの時間が経過したか否かを判断し(ステップST3)、1フレームの時間が経過していない場合(ステップST3:No)、ステップST1に戻り、周波数を変化させて電波の送信を継続する。
【0072】
第1状態での測定開始から1フレームの時間が経過すると(ステップST3:Yes)、送信部11は送信信号SG1の出力を停止し、1フレームの測定の終了を示す送信終了信号を処理部31に出力する。処理部31は、送信部11から送信終了信号を受信すると、第1状態での測定が終了したことを示す表示画面を表示部33に表示させる。
【0073】
検査システム1のユーザが、表示部33の表示画面に基づいて第1状態での測定が終了したことを確認すると、対象空間200に対象物100を配置する。その後、ユーザは、操作部37を操作して送信アンテナ21から電波の送信を開始させる送信開始操作を行う。
【0074】
操作部37が送信開始操作を受け付けると、処理部31は、送信信号SG1の出力を開始する制御指令を送信部11に出力し、送信部11が送信信号SG1の出力を開始する。送信部11は、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が、第1周波数faから第2周波数fbまでチャープ時間tcをかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号SG1を送信アンテナ21に出力する。これにより、送信アンテナ21から対象空間200に向けて電波が送信され(ステップST4)、対象空間200に配置された対象物100を透過した電波が受信アンテナ22によって受信される。このとき、ミキサ部12が、送信信号SG1と、受信アンテナ22から出力される受信信号SG2とを混合して中間波、つまり中間周波数の信号SG3を生成する(ステップST5)。送信部11は、送信信号SG1の出力開始からチャープ時間tcが経過するまで、送信信号SG1の周波数を第1周波数faから第2周波数fbまで連続的に増加させており、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が第1周波数faから第2周波数fbまで連続的に増加する。また、送信信号SG1の出力開始からチャープ時間tcが経過するまでの間、サンプリング部14はミキサ部12からフィルタ13を介して入力される信号SG3を所定のサンプリング周期でサンプリングし、信号SG3をサンプリングしたデータを処理部31に出力する。処理部31は、サンプリング部14から信号SG3をサンプリングしたデータが入力されると、このデータを記憶部32に保存する。1フレームの時間内に送信信号SG1が所定の回数生成されるので、記憶部32には、第2状態において、送信信号SG1の出力開始からチャープ時間tcが経過するまでの間に生成された中間周波数の信号SG3を所定のサンプリング周期でサンプリングした複数個のデータが、送信信号SG1を生成した回数分記憶される。
【0075】
送信部11は、第2状態での測定開始から1フレームの時間が経過したか否かを判断し(ステップST6)、1フレームの時間が経過していない場合(ステップST6:No)、ステップST4に戻り、周波数を変化させて電波の送信を継続する。
【0076】
第2状態での測定開始から1フレームの時間が経過すると(ステップST6:Yes)、送信部11は、送信信号SG1の出力を停止し、電波の送信終了を示す送信終了信号を処理部31に出力する。処理部31は、送信部11から送信終了信号を受信すると、第2状態での測定が終了したと判断し、第1演算部34に対象物100の比誘電率εrを算出する第1演算処理を実行させる。
【0077】
第1演算部34は、第1状態において1フレームの時間が経過する間に中間周波数の信号SG3をサンプリングした複数個のデータを平均化処理してノイズを低減した後、FFT解析することによって、第1状態での中間波の位相及び振幅を算出する。また、第1演算部34は、第2状態において1フレームの時間が経過する間に中間周波数の信号SG3をサンプリングした複数個のデータを平均化処理してノイズを低減した後、FFT解析することによって、第2状態での中間波の位相及び振幅を算出する。そして、第1演算部34は、上述した式(1)~(6)を用いて、対象物100の比誘電率εr及び誘電正接tanδを算出する(ステップST7)。
【0078】
第1演算処理が終了すると、第2演算部35が、第1演算処理で算出された比誘電率εrを、記憶部32に保存された検量線に当てはめて、対象物100の含水率を求める(ステップST8)。
【0079】
第2演算処理が終了すると、出力部36が、対象物100の含水率の演算結果を表示部33に出力し(ステップST9)、表示部33が対象物100の含水率の演算結果を表示画面に表示する。これにより、検査システム1のユーザは、表示部33の表示画面をもとに対象物100の含水率の演算結果を確認することができる。
【0080】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、検査システム1と同様の機能は、検査システム1が行う検査方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る検査方法は、検査システム1の検査方法であり、演算処理と、を含む。検査システム1は、送信部11と、受信アンテナ22と、ミキサ部12と、を備える。送信部11は、送信アンテナ21に送信信号SG1を出力することによって、送信アンテナ21から、対象物100を配置可能な対象空間200に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる。受信アンテナ22は、送信アンテナ21から送信されて対象空間200又は対象空間200に配置された対象物100を通過した電波を受信する。ミキサ部12は、送信信号SG1と受信アンテナ22から出力される受信信号SG2とに基づいて中間波を生成する。演算処理では、ミキサ部12の出力に基づいて対象物100の組成に関連する検査対象量を求める。送信部11は、送信アンテナ21から送信される電波の周波数が、第1周波数faから第2周波数fbまで所定のチャープ時間tcをかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号SG1を送信アンテナ21に出力する。設定処理では、チャープ時間tcを、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の第1演算処理と、第2演算処理とを実行させるためのプログラムである。
【0081】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0082】
本開示における検査システム1又は検査方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における検査システム1又は検査方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1又は複数の電子回路で構成される。
【0083】
上記の実施形態では、検査システム1が、レーダモジュール10と、演算装置30とに分かれているが、レーダモジュール10と、演算装置30とが1つの筐体内に集約されていてもよい。つまり、検査システム1における複数の機能は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0084】
また、検査システム1の少なくとも一部の機能、例えば、演算装置30の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0085】
(3.1)変形例1
図5は、変形例1の検査システム1の概略的なシステム構成図である。変形例1の検査システム1は、設定部38に代えて、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を含む設定部40を備える点で上記実施形態と相違する。変形例1では、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を含む設定部40が、チャープ時間を、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する設定部として機能する。なお、第1位相調整部41及び第2位相調整部42以外の構成は上記実施形態と同様であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0086】
第1位相調整部41は、送信部11から出力されて送信アンテナ21に入力される送信信号の位相を調整する。第1位相調整部41は、送信部11が出力した送信信号SG1の位相を遅延させた送信信号SG1Aを送信アンテナ21に出力することによって、送信アンテナ21から電波を送信させる。第1位相調整部41は、例えば、入力信号(送信信号SG1)に対して一定の角度でシフトした位相信号(送信信号SG1A)を出力するフェイズシフタで実現される。なお、レーダモジュール10と送信アンテナ21との間を接続するケーブルの長さが、位相遅れを発生させる程度の長さ(例えば1~3m程度)である場合、このケーブル自体で第1位相調整部41を実現してもよい。
【0087】
第2位相調整部42は、受信アンテナ22から出力される受信信号の位相を調整する。第2位相調整部42は、受信アンテナ22から出力される受信信号SG2の位相を遅延させた受信信号SG2Aをミキサ部12に出力する。第1位相調整部41は、例えば、入力信号(送信信号SG1)に対して一定の角度でシフトした位相信号(送信信号SG1A)を出力するフェイズシフタで実現される。なお、受信アンテナ22とレーダモジュール10との間を接続するケーブルの長さが、位相遅れを発生させる程度の長さ(例えば1~3m程度)である場合、このケーブル自体で第2位相調整部42を実現してもよい。
【0088】
変形例1の検査システム1は第1位相調整部41及び第2位相調整部42を含む設定部40を備えているので、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を備えていない場合の受信信号SG2に比べて、受信信号SG2Aの位相を遅らせることができる。したがって、変形例1では、
図6に示すように、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を備えていない場合の中間周波数の信号SG3に比べて、ミキサ部12が出力する中間周波数の信号SG3Aの周波数を高くできる。したがって、チャープ時間tcが同じであれば、チャープ時間tc内に現れる中間波の波数を増やすことができる。つまり、変形例1の検査システム1は、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を備えることによって、チャープ時間tcを中間波の1周期T
IF以上の時間に設定することができる。言い換えると、変形例1の検査システム1では、チャープ時間tcを中間波の1周期T
IF以上の時間に設定する機能部が、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を含む。
【0089】
ここで、第1位相調整部41は、チャープ時間tcが中間波を1周期T
IF以上生成可能な時間となるように、送信部11から出力されて送信アンテナ21に入力される送信信号の位相を調整する(
図6参照)。また、第2位相調整部42は、チャープ時間tcが中間波を1周期T
IF以上生成可能な時間となるように、受信アンテナ22から出力される受信信号の位相を調整する(
図6参照)。
【0090】
このように、変形例1の検査システム1は、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を備えることで、チャープ時間tcを、中間波を1周期TIF以上生成可能な時間とすることができ、チャープ時間tcが中間波の1周期TIF未満である場合に比べ、第1演算部34は、第1状態及び第2状態の各々で、中間波の位相及び振幅をより精度よく算出することができる。したがって、第1演算部34が対象物100の比誘電率及び誘電正接をより精度よく算出することができ、第2演算部35が対象物100の検査対象量をより精度よく求めることができるので、検査対象量の測定精度を向上させることができる。
【0091】
なお、検査システム1は、第1位相調整部41及び第2位相調整部42の両方を備える必要は無く、第1位相調整部41及び第2位相調整部42のいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0092】
また、変形例1の検査システム1において、上記実施形態で説明した設定部38を更に備えてもよく、第1位相調整部41及び第2位相調整部42を含む設定部40と、上記実施形態で説明した設定部38との両方で、チャープ時間tcを、中間波を1周期TIF以上生成可能な時間に設定することができる。
【0093】
(3.2)その他の変形例
上記の実施形態において、設定部38は、中間波の1周期TIFにおいてサンプリング部14がサンプリングするデータの数が360以上となるように、チャープ時間tcを設定してもよい。これにより、サンプリング部14は、中間波(中間周波数の信号SG3)の位相の1度につき1個以上のデータをサンプリングできるから、第1演算部34はチャープ時間tcにおいてサンプリング部14がサンプリングした複数個のデータに基づいて中間波の位相及び振幅をより高精度に算出することができる。
【0094】
上記の実施形態では、演算装置30が設定部38を備えているが、チャープ時間を設定するための設定部38はレーダモジュール10に設けられていてもよい。
【0095】
また、サンプリング部14は、中間波の1周期TIFにおいてサンプリング部14がサンプリングするデータの数が360以上となるように、チャープ時間tcにおけるサンプリング数を設定してもよい。例えば、チャープ時間tcにおける中間波の波数をnとすると、サンプリング部14は、チャープ時間tcにおけるサンプリング数Nsを(n×360)以上に設定すればよく、中間波(中間周波数の信号SG3)の位相の1度につき1個以上のデータをサンプリングすることができるので、中間波の位相及び振幅をより高精度に算出することができる。
【0096】
上記の実施形態では、検査システム1の対象物100が食品であり、検査対象量として含水率を測定しているが、検査システム1の対象物100及び検査対象量は適宜変更が可能である。例えば、検査システム1の対象物100は、農作物等の植物でもよいし、魚及び家畜等の動物でもよいし、クリーム状の化粧品又は医薬品でもよいし、グリース、塗料又は樹脂材料などの工業製品でもよい。また、検査システム1が検査する対象物100の検査対象量は、対象物100の含水率に限定されず、対象物100の比誘電率εrに基づいて判定可能な含水率以外の物性値でもよい。
【0097】
上記の実施形態では、検査システム1は、第1状態で電波を送受波した後、第2状態で電波を送受波しているが、第2状態で電波を送受波した後に、第1状態で電波を送受波してもよい。
【0098】
また、上記の実施形態では、検査システム1は、第1状態で対象空間200に電波を送信して中間波の位相及び振幅を求める処理と、第2状態で対象物100に電波を送信して中間波の位相及び振幅を求める処理とを毎回行っているが、第1状態で対象空間200に電波を送信して中間波の位相及び振幅を求める処理は毎回行う必要はない。この場合、検査システム1は、第1状態で対象空間200に電波を送信して中間波の位相及び振幅を求めた結果を記憶部32に予め保存しておけばよい。そして、検査システム1が対象物100の検査対象量を測定する場合、検査システム1は、対象物100が対象空間200に配置された第2状態で対象物100に電波を送信して中間波の位相及び振幅をその都度算出する。そして、検査システム1は、対象物100の検査対象量を測定するごとに算出した第2状態での中間波の位相及び振幅の算出結果と、記憶部32に予め保存された第1状態での中間波の位相及び振幅の算出結果とを用いて、検査対象量の演算を行えばよい。
【0099】
また、上記の実施形態では、第1演算部34は、第1状態でミキサ部12が生成した中間波と、第2状態でミキサ部12が生成した中間波との間での位相と振幅の両方の変化から対象物100の比誘電率を算出しているが、位相の変化に基づいて対象物100の比誘電率を算出してもよい。
【0100】
例えば、第1演算部34は、誘電正接tanδ=0と仮定し、以下の式(7)を用いて簡易的に比誘電率εrを算出してもよい。第1演算部34は、式(7)を用いることによって、第1状態での中間波の位相θ1と第2状態での中間波の位相θ2との差Δθ(=θ2-θ1)に基づいて対象物100の比誘電率を算出することができる。ここにおいて、送信アンテナ21から送信される電波の波長をλ1[m]、対象物100の内部で電波が進行する距離(つまり、対象物100の厚さ)をt1[m]とする。
【0101】
【0102】
また、上記の実施形態では、第1演算部34の算出対象が対象物100の比誘電率εrであったが、第1演算部34の算出対象は対象物100の誘電正接tanδであってもよい。この場合、記憶部32には、第1演算部34の算出対象である対象物100の誘電正接tanδと検査対象量(例えば含水率)との関係を予め求めた検量線のデータを予め記憶していればよい。第1演算部34は、第1状態でミキサ部12が生成した中間波と、第2状態でミキサ部12が生成した中間波との間での位相と振幅の変化から対象物100の誘電正接tanδを算出する。具体的には、第1演算部34は、上述した式(1)~(5)を用いて誘電正接tanδを算出する。そして、第2演算部35が、第1演算部34による誘電正接tanδの算出結果と、記憶部32に記憶された検量線のデータとを用いて、対象物100の検査対象量(例えば含水率)を求めればよい。
【0103】
また、上記の実施形態において、第1演算部34の算出対象が対象物100の比誘電率εrと誘電正接tanδの両方であってもよい。この場合、記憶部32には、第1演算部34の算出対象である対象物100の比誘電率εr及び誘電正接tanδと、検査対象量(例えば含水率)との関係を予め求めた検量線のデータを予め記憶していればよい。第1演算部34は、例えば、上述した式(1)~(6)を用いて対象物100の比誘電率εr及び誘電正接tanδを算出する。そして、第2演算部35が、第1演算部34による比誘電率εr及び誘電正接tanδの算出結果と、記憶部32に記憶された検量線のデータとを用いて、対象物100の検査対象量(例えば含水率)を求めればよい。
【0104】
また、上記の実施形態において、設定部38は、中間波の測定結果に基づいてチャープ時間tcを自動的に設定してもよい。例えば、対象物100の検査対象量を測定する前に、設定部38がチャープ時間tcを所定のデフォルト値に設定した状態で電波の送受信を行い、第1演算部34が、サンプリング部14によってサンプリングされた複数個のデータをFFT解析して中間波の周波数を求める。そして、設定部38が、中間波の周波数の算出結果に基づいて、チャープ時間tcが中間波の1周期TIF以上の時間となるように、チャープ時間tcを設定する。これにより、検査システム1は、チャープ時間tcが中間波の1周期TIF以上の時間に設定された状態で、対象物100の検査対象量を測定することができる。
【0105】
また、上記の実施形態では、出力部36が、検査対象量(本実施形態では含水率)の測定結果を表示部33に表示させているが、例えばスピーカから音声で測定結果を出力してもよいし、測定結果をプリンタに印刷させてもよい。また、出力部36は、検査対象量の測定結果を外部システム(例えばスマートフォン、タブレット端末などのコンピュータ端末)に送信してもよい。
【0106】
また、上記の実施形態では、検査システム1は、24GHz帯の電波を送信アンテナ21から送信させているが、送信アンテナ21から送信する電波の周波数帯は適宜変更可能である。検査システム1は、送信アンテナ21から準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させればよく、ミリ波レーダで使用される60GHz、76GHz帯、79GHz帯の電波を送信させてもよい。
【0107】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0108】
第1の態様の検査システムは、送信部(11)と、受信アンテナ(22)と、ミキサ部(12)と、演算部(39)と、設定部(38,40)と、を備える。送信部(11)は、送信アンテナ(21)に送信信号を出力することによって、送信アンテナ(21)から対象物(100)を配置可能な対象空間(200)に準ミリ波又はミリ波の周波数帯の電波を送信させる。受信アンテナ(22)は、送信アンテナ(21)から送信されて対象空間(200)又は対象空間(200)に配置された対象物(100)を通過した電波を受信する。ミキサ部(12)は、送信信号と受信アンテナ(22)から出力される受信信号とに基づいて中間波を生成する。演算部(39)は、ミキサ部(12)の出力に基づいて対象物(100)の組成に関連する検査対象量を求める。送信部(11)は、送信アンテナ(21)から送信される電波の周波数が、第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号を送信アンテナ(21)に出力する。設定部(38,40)は、チャープ時間を、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する。
【0109】
この態様によれば、設定部(38,40)が、チャープ時間を、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定しているので、チャープ時間が中間波の1周期未満である場合に比べ、演算部(39)は、対象物(100)が対象空間(200)に不存在である第1状態と、対象物(100)が対象空間(200)に存在している第2状態との間での中間波の変化をより精度よく算出することができる。したがって、演算部(39)が対象物(100)の検査対象量をより精度よく求めることができ、検査対象量の測定精度を向上させることができる。
【0110】
第2の態様の検査システム(1)では、第1の態様において、ミキサ部(12)は、受信信号の周波数と、送信信号の周波数との差の信号を中間波として生成する。
【0111】
この態様によれば、対象物(100)の組成に関連する検査対象量をより精度よく求めることができる。
【0112】
第3の態様の検査システム(1)は、第1又は第2の態様において、設定部(40)が、第1位相調整部(41)及び第2位相調整部(42)の少なくとも一方を含む。第1位相調整部(41)は、送信部(11)から出力されて送信アンテナ(21)に入力される送信信号の位相を調整する。第2位相調整部(42)は、受信アンテナ(22)から出力される受信信号の位相を調整する。
【0113】
この態様によれば、第1位相調整部(41)及び第2位相調整部(42)を備えていない場合に比べて、ミキサ部(12)が出力する中間波の周波数を高くでき、それによって、チャープ時間を中間波の1周期以上の時間に設定することができる。これにより、チャープ時間が中間波の1周期未満である場合に比べ、第1演算部(34)は、第1状態及び第2状態の各々で、中間波の位相及び振幅をより精度よく算出することができる。
【0114】
第4の態様の検査システム(1)では、第3の態様において、第1位相調整部(41)は、チャープ時間が中間波を1周期以上生成可能な時間となるように、送信部(11)から出力されて送信アンテナ(21)に入力される送信信号の位相を調整する。第2位相調整部(42)は、チャープ時間が中間波を1周期以上生成可能な時間となるように、受信アンテナ(22)から出力される受信信号の位相を調整する。
【0115】
この態様によれば、第1位相調整部(41)及び第2位相調整部(42)の少なくとも一方を備えることで、チャープ時間を中間波の1周期以上の時間に設定することができる。これにより、チャープ時間が中間波の1周期未満である場合に比べ、第1演算部(34)は、第1状態及び第2状態の各々で、中間波の位相及び振幅をより精度よく算出することができる。
【0116】
第5の態様の検査システム(1)は、第1~第4のいずれかの態様において、演算部(39)が、第1演算部(34)と、第2演算部(35)と、を含む。第1演算部(34)は、第1算出処理と、第2算出処理との少なくとも一方を行う。第1算出処理は、第1状態でミキサ部(12)が生成した中間波と、第2状態でミキサ部(12)が生成した中間波との間での、位相及び振幅の変化、又は、位相の変化に基づいて対象物(100)の比誘電率を算出する処理である。第2算出処理は、第1状態でミキサ部(12)が生成した中間波と、第2状態でミキサ部(12)が生成した中間波との間での、位相及び振幅の変化に基づいて対象物(100)の誘電正接を算出する処理である。第1状態は、対象物(100)が対象空間(200)に不存在の状態である。第2状態は、対象物(100)が対象空間(200)に存在している状態である。第2演算部(35)は、第1演算部(34)の算出結果に基づいて対象物(100)の組成に関連する検査対象量を求める。
【0117】
この態様によれば、第1演算部(34)が対象物(100)の比誘電率及び誘電正接の少なくとも一方をより精度よく算出することができ、第2演算部(35)が対象物(100)の検査対象量をより精度よく求めることができるので、検査対象量の測定精度を向上させることができる。
【0118】
第6の態様の検査システム(1)は、第5の態様において、ミキサ部(12)の出力を所定のサンプリング周期でサンプリングするサンプリング部(14)を更に備える。第1演算部(34)は、第1状態及び第2状態の各々で、サンプリング部(14)がサンプリングした複数個のデータに基づいて中間波の位相及び振幅を算出する。設定部(38)が、中間波の1周期においてサンプリング部(14)がサンプリングするデータの数が360以上となるように、チャープ時間を設定する。
【0119】
この態様によれば、サンプリング部(14)は、中間波の位相の1度につき1個以上のデータをサンプリングすることができ、第1演算部(34)が、第1状態及び第2状態の各々において、中間波の位相及び振幅をより高精度に算出することができる。
【0120】
第7の態様の検査システム(1)では、第5又は第6の態様において、ミキサ部(12)の出力を所定のサンプリング周期でサンプリングするサンプリング部(14)を更に備える。第1演算部(34)は、第1状態及び第2状態の各々で、サンプリング部(14)がサンプリングした複数個のデータに基づいて中間波の位相及び振幅を算出する。サンプリング部(14)は、中間波の1周期においてサンプリング部(14)がサンプリングするデータの数が360以上となるように、チャープ時間におけるサンプリング数を設定する。
【0121】
この態様によれば、サンプリング部(14)は、中間波の位相の1度につき1個以上のデータをサンプリングすることができ、第1演算部(34)が、第1状態及び第2状態の各々において、中間波の位相及び振幅をより高精度に算出することができる。
【0122】
第8の態様の検査システム(1)では、第1~第7のいずれかの態様において、第2演算部(35)は、第1演算部(34)の算出対象と検査対象量との関係を予め求めた検量線と、第1演算部(34)の算出結果とに基づいて、検査対象量を求める。
【0123】
この態様によれば、第1演算部(34)の算出対象と検査対象量との関係を予め求めた検量線を用いて、対象物(100)の組成に関連する検査対象量を求めることができる。
【0124】
第9の態様の検査システム(1)では、第1~第8のいずれかの態様において、検査対象量は、対象物(100)の含水率である。
【0125】
この態様によれば、対象物(100)の含水率を求めることができる。
【0126】
第10の態様の検査方法は、送信部(11)と受信アンテナ(22)とミキサ部(12)とを備える検査システムの検査方法である。送信部(11)は、送信アンテナ(21)に送信信号を出力することによって、送信アンテナ(21)から対象物(100)を配置可能な対象空間(200)にミリ波の周波数帯の電波を送信させる。受信アンテナ(22)は、送信アンテナ(21)から送信されて対象空間(200)又は対象空間(200)に配置された対象物(100)を通過した電波を受信する。ミキサ部(12)は、送信信号と受信アンテナ(22)から出力される受信信号とに基づいて中間波を生成する。検査方法は、演算処理と、設定処理と、を含む。演算処理では、ミキサ部(12)の出力に基づいて対象物(100)の組成に関連する検査対象量を求める。送信部(11)は、送信アンテナ(21)から送信される電波の周波数が、第1周波数から第2周波数まで所定のチャープ時間をかけて連続的に変化するように周波数連続変調方式で変調した送信信号を送信アンテナ(21)に出力する。設定処理では、チャープ時間を、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定する。
【0127】
この態様によれば、設定処理によって、チャープ時間を、中間波を1周期以上生成可能な時間に設定しているので、チャープ時間が中間波の1周期未満である場合に比べ、演算処理により、対象物(100)が対象空間(200)に不存在である第1状態と、対象物(100)が対象空間(200)に存在している第2状態との間で、中間波の変化をより精度よく算出することができる。したがって、演算処理により対象物(100)の検査対象量をより精度よく求めることができ、検査対象量の測定精度を向上させることができる。
【0128】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る検査システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、検査システム(1)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0129】
第2~第9の態様に係る構成については、検査システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 検査システム
11 送信部
12 ミキサ部
14 サンプリング部
21 送信アンテナ
22 受信アンテナ
34 第1演算部
35 第2演算部
38,40 設定部
39 演算部
41 第1位相調整部
42 第2位相調整部
100 対象物
200 対象空間