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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142228
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コモンモードノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20241003BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20241003BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F27/00 R
H01F27/29 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054304
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 成白
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 託司
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070CB12
5E070CB13
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】本開示は、コモンモードノイズフィルタの内部の配線の接続信頼性を向上させることを目的とする。
【解決手段】コモンモードノイズフィルタ1は、素体2と、複数の導体部4と、複数の外部電極と、を備える。複数の導体部4の各々は、スパイラル導体41と、引出導体42と、を有する。複数の導体部4のうち所定の導体部4の引出導体42に関して、所定の寸法条件が成り立つ。所定の寸法条件は、第2方向において、所定の導体部4の引出導体42の幅が、所定の外部電極の側部の幅よりも大きいという条件である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の内部に設けられ、上下方向に並んだ複数の導体部と、
前記素体の外面に設けられた複数の外部電極と、を備え、
前記複数の導体部の各々は、
中心側の第1端と外側の第2端とを含み、前記第1端から前記第2端まで渦巻き状に延びたスパイラル導体と、
前記スパイラル導体の前記第2端と一体に設けられた引出導体と、を有し、
前記複数の外部電極は、前記複数の導体部と一対一で対応し、
前記複数の外部電極の各々は、前記複数の導体部のうち対応する導体部の前記引出導体につながっており、
前記複数の導体部のうち所定の導体部の前記引出導体に関して、所定の寸法条件が成り立ち、
前記複数の外部電極のうち前記所定の導体部に対応する外部電極を、所定の外部電極とし、
前記所定の外部電極は、前記上下方向と直交する第1方向において前記所定の導体部の前記引出導体に対向する、側部を有し、
前記所定の寸法条件は、
前記第1方向及び前記上下方向の両方と直交する第2方向において、前記所定の導体部の前記引出導体の幅が、前記所定の外部電極の前記側部の幅よりも大きいという条件である、
コモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
前記複数の導体部の各々の前記引出導体に関して、前記所定の寸法条件が成り立つ、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
前記所定の導体部の前記引出導体は、前記所定の外部電極の前記側部に対して、前記第2方向の両側へ突き出している、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
前記所定の導体部の前記引出導体は、前記素体の外部に露出している、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項5】
前記複数の導体部の各々において、前記スパイラル導体と前記引出導体とは同一平面に存在する、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項6】
前記第2方向において、前記所定の導体部の前記引出導体の前記幅は、前記所定の外部電極の前記側部の前記幅の1.2倍以上である、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般にコモンモードノイズフィルタに関し、より詳細には、複数の外部電極を備えるコモンモードノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコモンモードノイズフィルタは、積層体と、複数の外部電極と、を備える。積層体は、複数の非磁性体層と、複数の非磁性体層に形成された複数のコイル導体と、複数の磁性体層と、を有する。複数の外部電極は、積層体の両端面に設けられ、複数のコイル導体の端部と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/132410号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、コモンモードノイズフィルタの内部の配線の接続信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るコモンモードノイズフィルタは、素体と、複数の導体部と、複数の外部電極と、を備える。前記複数の導体部は、前記素体の内部に設けられている。前記複数の導体部は、上下方向に並んでいる。前記複数の外部電極は、前記素体の外面に設けられている。前記複数の導体部の各々は、スパイラル導体と、引出導体と、を有する。前記スパイラル導体は、中心側の第1端と外側の第2端とを含み、前記第1端から前記第2端まで渦巻き状に延びている。前記引出導体は、前記スパイラル導体の前記第2端と一体に設けられている。前記複数の外部電極は、前記複数の導体部と一対一で対応している。前記複数の外部電極の各々は、前記複数の導体部のうち対応する導体部の前記引出導体につながっている。前記複数の導体部のうち所定の導体部の前記引出導体に関して、所定の寸法条件が成り立つ。前記複数の外部電極のうち前記所定の導体部に対応する外部電極を、所定の外部電極とする。前記所定の外部電極は、前記上下方向と直交する第1方向において前記所定の導体部の前記引出導体に対向する、側部を有する。前記所定の寸法条件は、前記第1方向及び前記上下方向の両方と直交する第2方向において、前記所定の導体部の前記引出導体の幅が、前記所定の外部電極の前記側部の幅よりも大きいという条件である。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、コモンモードノイズフィルタの内部の配線の接続信頼性を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。
図2図2は、同上のコモンモードノイズフィルタの斜視図である。
図3図3は、同上のコモンモードノイズフィルタの側面図である。
図4図4は、同上のコモンモードノイズフィルタの一部分の平面図である。
図5図5は、同上のコモンモードノイズフィルタの一部分の平面図である。
図6図6は、同上のコモンモードノイズフィルタの一部分の平面図である。
図7図7は、同上のコモンモードノイズフィルタの一部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
本開示は、コモンモードノイズフィルタに関する。コモンモードノイズフィルタは、信号のディファレンシャルモード(差動モード)の成分を通過させる一方で、コモンモードのノイズ成分を減衰させる。コモンモードノイズフィルタは、電子機器の回路基板又は電子部品等に実装される。
【0009】
以下、実施形態に係るコモンモードノイズフィルタ1について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(概要)
図1図2に示すように、本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1は、素体2と、複数の導体部4と、複数の外部電極3と、を備える。なお、図1では複数の外部電極3の図示を省略している。
【0011】
複数の導体部4は、素体2の内部に設けられている。複数の導体部4は、上下方向に並んでいる。複数の外部電極3は、素体2の外面に設けられている。複数の導体部4の各々は、スパイラル導体41と、引出導体42と、を有する。スパイラル導体41は、中心側の第1端411と外側の第2端412とを含み(図4図7参照)、第1端411から第2端412まで渦巻き状に延びている。引出導体42は、スパイラル導体41の第2端412と一体に設けられている。複数の外部電極3は、複数の導体部4と一対一で対応している。複数の外部電極3の各々は、複数の導体部4のうち対応する導体部4の引出導体42につながっている。複数の導体部4のうち所定の導体部4の引出導体42に関して、所定の寸法条件が成り立つ。ここで、複数の外部電極3のうち所定の導体部4に対応する外部電極3を、所定の外部電極3とする。所定の外部電極3は、上下方向と直交する第1方向において所定の導体部4の引出導体42に対向する、側部33を有する。所定の寸法条件は、第1方向及び上下方向の両方と直交する第2方向において、所定の導体部4の引出導体42の幅W1が、所定の外部電極3の側部33の幅W2よりも大きいという条件である(図3参照)。
【0012】
本実施形態によれば、所定の導体部4の引出導体42の幅W1が、所定の外部電極3の側部33の幅W2よりも大きい。そのため、所定の導体部4の引出導体42又は所定の外部電極3を形成する位置がずれたとしても、所定の導体部4の引出導体42と所定の外部電極3との接続面積を十分大きく確保することができる。これにより、コモンモードノイズフィルタ1の内部の配線の接続信頼性を向上させることができる。よって、例えば、静電気に対するコモンモードノイズフィルタ1の耐性を向上させることができる。また、例えば、コモンモードノイズフィルタ1を基板に実装する際にコモンモードノイズフィルタ1に掛かる応力への耐性を向上させることができる。
【0013】
また、複数の導体部4のうち、より多くの導体部4の引出導体42に関して、上記の所定の寸法条件が成り立つほど、コモンモードノイズフィルタ1の内部の配線の接続信頼性を、より向上させることができる。そこで、本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1は、複数の導体部4の各々の引出導体42に関して、所定の寸法条件が成り立つように構成されている。つまり、本実施形態では、複数の導体部4の各々が、上記の「所定の導体部4」に該当する。
【0014】
第2方向において、所定の導体部4の引出導体42の幅W1は、所定の外部電極3の側部33の幅W2の1.2倍以上であることが好ましい。この場合、所定の導体部4の引出導体42又は所定の外部電極3を形成する位置のずれがある程度大きい場合でも、所定の導体部4の引出導体42と所定の外部電極3との接続面積を十分大きく確保することができる。
【0015】
また、第2方向における所定の導体部4の引出導体42の幅W1は、例えば、引出導体42が素体2の端に達するときの長さ以下、かつ、隣り合う引出導体42との間の電気絶縁性が確保できる限界の長さ以下である。
【0016】
(詳細)
(1)全体構成
以下では、本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1について、より詳細に説明する。
【0017】
なお、図1等における上下、左右、前後を表す矢印はそれぞれ、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。また、本開示で言う上下、左右、前後は、相対的な方向を示しているに過ぎず、コモンモードノイズフィルタ1の使用方向を限定する趣旨ではない。
【0018】
図1図2に示すように、コモンモードノイズフィルタ1は、素体2と、複数(図2では4つ)の外部電極3と、複数(図1では4つ)の導体部4と、を備える。以下では、4つの外部電極3を区別するために、4つの外部電極3をそれぞれ外部電極3A、3B、3C、3Dとも呼ぶ。また、以下では、4つの導体部4を区別するために、4つの導体部4をそれぞれ導体部4A、4B、4C、4Dとも呼ぶ。
【0019】
(2)素体
図1に示すように、素体2は、複数(図1では11個)の絶縁体層2a~2kを含む。複数の絶縁体層2a~2kは、上下方向に積層されている。
【0020】
素体2の形状の一例を説明する。上から見て、複数の絶縁体層2a~2kは、互いに同一形状である。各絶縁体層2a~2kの形状は、上から見て長方形状の、シート状である。複数の絶縁体層2a~2kが重なって、素体2は、全体として直方体状に形成されている。素体2の前後方向の長さは、素体2の左右方向の長さよりも長い。
【0021】
複数の絶縁体層2a~2kは、下から上へ、絶縁体層2a~2kの順で重なっている。なお、互いに隣り合う絶縁体層2a~2kは、層間の境界が視認できない程度に一体化されていてもよい。
【0022】
絶縁体層2b、2d~2h、2jは、非磁性体層である。非磁性体層は、例えば、ガラスセラミックを含む材料で形成されている。
【0023】
絶縁体層2a、2c、2i、2kは、磁性体層である。磁性体層は、例えば、フェライトを含む材料で形成されている。
【0024】
図2に示すように、素体2は、上面U2と、下面L2と、複数(図2では4つ)の側面S2と、を有する。4つの側面S2はそれぞれ、右面S21と、左面S22と、前面S23と、後面S24と、である。
【0025】
上面U2は、絶縁体層2kのうち、絶縁体層2j側とは反対側の面である。下面L2は、絶縁体層2aのうち、絶縁体層2b側とは反対側の面である。また、下面L2は、上面U2とは反対側の面である。
【0026】
側面S2は、上面U2及び下面L2と交差する面である。また、側面S2は、上面U2と下面L2とをつなぐ面である。
【0027】
左面S22は、右面S21とは反対側の面である。後面S24は、前面S23とは反対側の面である。右面S21及び左面S22は、前面S23及び後面S24と交差する面である。また、右面S21及び左面S22は、前面S23と後面S24とをつなぐ面である。
【0028】
(3)外部電極
図2に示すように、4つの外部電極3は、素体2の外面に形成されている。4つの外部電極3の各々は、素体2の上面U2、下面L2、及び、側面S2にわたって配置されている。
【0029】
外部電極3A、3Bは、素体2の上面U2、下面L2、及び、右面S21にわたって配置されている。外部電極3C、3Dは、素体2の上面U2、下面L2、及び、左面S22にわたって配置されている。
【0030】
外部電極3A、3Cは、左右方向に並んでいる。外部電極3B、3Dは、左右方向に並んでいる。
【0031】
複数の外部電極3は、構造が互いに一致している。なお、外部電極3A、3Bは、外部電極3C、3Dに対して左右対称である。外部電極3A、3Bは、形状及び向きが一致している。外部電極3C、3Dは、形状及び向きが一致している。以下では、複数の外部電極3のうち、外部電極3Aの構造について説明して、外部電極3B~3Dについての説明は省略する。
【0032】
図2に示すように、外部電極3Aは、上部分31と、下部分32と、側部33と、を有する。
【0033】
上部分31は、素体2の上面U2に配置されている。上から見て、上部分31の形状は、長方形状である。上部分31は、素体2の上面U2と右面S21との境界から、左へ突出している。
【0034】
下部分32は、素体2の下面L2に配置されている。下から見て、下部分32の形状は、長方形状である。下部分32は、素体2の下面L2と右面S21との境界から、左へ突出している。
【0035】
側部33は、素体2の右面S21に配置されている。側部33は、上部分31と下部分32とをつないでいる。右から見て、側部33の形状は、長方形状である。側部33の上下方向の長さは、側部33の前後方向の長さよりも長い。また、側部33の形状は、左右方向に厚さを有する板状である。
【0036】
(4)導体部
図1に示すように、4つの導体部4は、素体2の内部に形成されている。4つの導体部4は、下から上へ、導体部4A、4B、4C、4Dの順で並んでいる。
【0037】
導体部4Aは、素体2の内部の第1平面に設けられている。導体部4Bは、素体2の内部の第2平面に設けられている。導体部4Cは、素体2の内部の第3平面に設けられている。導体部4Dは、素体2の内部の第4平面に設けられている。第1~第4平面は、上下方向に並んでいる。第1~第4平面はそれぞれ、上下方向と直交する面である。なお、本開示で言う「直交」とは、厳密な意味での直交に限らず、数度程度の誤差がある場合も含む。
【0038】
導体部4Aは、絶縁体層2dと絶縁体層2eとの間の第1平面に設けられている。導体部4Bは、絶縁体層2eと絶縁体層2fとの間の第2平面に設けられている。導体部4Cは、絶縁体層2fと絶縁体層2gとの間の第3平面に設けられている。導体部4Dは、絶縁体層2gと絶縁体層2hとの間の第4平面に設けられている。
【0039】
図1図4図7に示すように、複数の導体部4の各々は、スパイラル導体41と、引出導体42と、ビアパッド43と、を有する。スパイラル導体41と、引出導体42と、ビアパッド43とは、継ぎ目無くつながっている。複数の導体部4の各々は、例えば、銀等の導電性材料から形成されている。
【0040】
複数の導体部4の各々において、スパイラル導体41と引出導体42とは同一平面に存在する。また、複数の導体部4の各々において、スパイラル導体41と引出導体42とは厚さが等しい。本開示で言う「等しい」とは、完全に等しい状態に限定されず、実用上問題ない範囲で異なっている場合も含む。例えば、2つの値の差がいずれかの値の5%未満の範囲なら「等しい」とみなして本開示を適用してもよい。
【0041】
複数の導体部4の各々において、引出導体42の幅W1(図4参照)は、スパイラル導体41の幅W3(線幅)より大きい。
【0042】
上下方向から見て、スパイラル導体41の形状は、渦巻き状である。より詳細には、スパイラル導体41は、線状の導体を長円に沿って複数回巻いた形状である。スパイラル導体41が占める領域の前後方向の長さは、スパイラル導体41が占める領域の左右方向の長さよりも長い。図示例では、スパイラル導体41のターン数は、3であるが、ターン数は特に限定されない。
【0043】
スパイラル導体41は、渦巻きの中心側の第1端411と、渦巻きの外側の第2端412と、を含む。第1端411には、ビアパッド43がつながっている。第2端412には、引出導体42がつながっている。第2端412は、引出導体42に近い部分ほど幅が大きくなっている。
【0044】
上下方向から見て、引出導体42の形状は、長方形状である。引出導体42は、素体2の外部に露出している。つまり、引出導体42は、スパイラル導体41の第2端412から、素体2の外面までにわたって存在している。
【0045】
より詳細には、図4に示すように、導体部4Aの引出導体42の外縁のうち、スパイラル導体41の中心側とは反対側に設けられた直線状の部分4120は、長方形状の絶縁体層2dの一辺20d(あるいは、素体2の右面S21)と、上下方向に重なっている。また、上から見て、導体部4Aの引出導体42では、上記の部分4120の長さ方向(前後方向)の寸法が、長さ方向と直交する方向(左右方向)の寸法よりも長い。
【0046】
同様に、各導体部4の引出導体42の外縁のうち、スパイラル導体41の中心側とは反対側に設けられた直線状の部分は、対応する絶縁体層の一辺と、上下方向に重なっている。また、上から見て、各導体部4の引出導体42では、上記の部分の長さ方向(前後方向)の寸法が、長さ方向と直交する方向(左右方向)の寸法よりも長い。
【0047】
また、図3に示すように、引出導体42の一部は外部電極3の背後に隠れているが、引出導体42の別の一部(前端及び後端)は外部電極3よりも前又は後ろへ突き出しており、外部から視認可能となっている。
【0048】
図4図7に示すように、ビアパッド43は、スパイラル導体41の内側に配置されている。
【0049】
導体部4Aのビアパッド43と、導体部4Cのビアパッド43とは、上下方向に並んでおり、素体2のビアホールに通された、第1の導体により電気的に接続されている。また、導体部4Bが設けられた絶縁体層2e(図5参照)は、第1の導体を通すためのビアホール51が形成されている。第1の導体と導体部4Bとは、電気的に接続されていない。
【0050】
導体部4Bのビアパッド43と、導体部4Dのビアパッド43とは、上下方向に並んでおり、素体2のビアホールに通された、第2の導体により電気的に接続されている。また、導体部4Cが設けられた絶縁体層2f(図6参照)は、第2の導体を通すためのビアホール52が形成されている。第2の導体と導体部4Cとは、電気的に接続されていない。
【0051】
(5)複数の外部電極と複数の導体部との関係
複数の外部電極3と複数の導体部4とは、一対一で対応している。すなわち、外部電極3Aは導体部4Aと、外部電極3Bは導体部4Bと、外部電極3Cは導体部4Cと、外部電極3Dは導体部4Dと対応している。
【0052】
複数の外部電極3の各々の側部33は、複数の導体部4のうち対応する導体部4の引出導体42につながっている。より詳細には、複数の外部電極3の各々の側部33は、対応する導体部4の引出導体42に、少なくとも接触している。これにより、複数の外部電極3の各々は、対応する導体部4の引出導体42に電気的に接続されている。なお、複数の外部電極3の各々の側部33は、対応する導体部4の引出導体42に化学的に結合していてもよい。
【0053】
複数の外部電極3は、例えば、銀ペーストを材料として形成されている。複数の導体部4を内蔵した素体2の外面に、例えば、ローラーを用いて銀ペーストを塗布し、銀ペーストを焼成することで、複数の外部電極3が形成される。
【0054】
上述の通り、複数の導体部4の各々の引出導体42に関して、所定の寸法条件が成り立つ。図4に示す導体部4Aについての所定の寸法条件を、以下で説明する。
【0055】
導体部4Aに対応する外部電極3A(所定の外部電極3)は、第1方向(左右方向)において導体部4Aの引出導体42に対向する、側部33(図2参照)を有する。第1方向及び上下方向の両方と直交する方向(前後方向)を、第2方向とする。第2方向は、素体2の外面のうち外部電極3Aの側部33が設けられた面(右面S21)と平行な方向であって、上下方向と直交する方向である。導体部4Aについての所定の寸法条件は、第2方向(前後方向)において、導体部4Aの引出導体42の幅W1が、外部電極3Aの側部33の幅W2よりも大きいという条件である。
【0056】
同様に、導体部4Bについての所定の寸法条件は、第2方向(前後方向)において、導体部4Bの引出導体42の幅W1が、外部電極3Bの側部33の幅W2よりも大きいという条件である。
【0057】
同様に、導体部4Cについての所定の寸法条件は、第2方向(前後方向)において、導体部4Cの引出導体42の幅W1が、外部電極3Cの側部33の幅W2よりも大きいという条件である。
【0058】
同様に、導体部4Dについての所定の寸法条件は、第2方向(前後方向)において、導体部4Dの引出導体42の幅W1が、外部電極3Dの側部33の幅W2よりも大きいという条件である。
【0059】
所定の寸法条件が満たされることで、引出導体42又は外部電極3を形成する位置が多少ずれたとしても、外部電極3の側部33の前端から後端までにわたって、引出導体42と側部33とを接続することができる。
【0060】
本実施形態では、複数の導体部4の寸法が互いに等しい。ただし、複数の導体部4のうち一部の導体部4の寸法が、残りの導体部4の寸法と異なっていてもよい。
【0061】
本実施形態では、複数の外部電極3の寸法が互いに等しい。ただし、複数の外部電極3のうち一部の外部電極3の寸法が、残りの導体部4の寸法と異なっていてもよい。
【0062】
一例として、引出導体42の幅W1は250μm、外部電極3の側部33の幅W2は200μmである。また、一例として、引出導体42の上下方向における厚さは、6~7μmである。
【0063】
図3に示すように、導体部4Aの引出導体42は、外部電極3Aの側部33に対して、第2方向の両側へ突き出している。つまり、導体部4Aの引出導体42は、外部電極3Aの側部33に対して、前と後ろとに突き出している。導体部4B~4D、外部電極3B~3Dについても同様である。すなわち、導体部4の引出導体42は、対応する外部電極3の側部33に対して、第2方向の両側へ突き出している。
【0064】
(6)外観検査
コモンモードノイズフィルタ1を外観検査して、引出導体42と外部電極3との電気的な接続を確認する工程について、以下で説明する。なお、カメラでコモンモードノイズフィルタ1を撮影して生成された画像をコンピュータシステムが解析することで、外観検査が実施される。あるいは、人(検査者)が画像を見て、若しくは人がコモンモードノイズフィルタ1を直接見て、人が引出導体42と外部電極3との電気的な接続の状態を判断してもよい。
【0065】
正常品のコモンモードノイズフィルタ1では、図3に示すように、引出導体42は、素体2の外部に露出しており、外部から視認可能である。
【0066】
コモンモードノイズフィルタ1が製造工程において焼成されるとき、素体2と導体部4との間の熱膨張率の差によって、引出導体42が素体2の外面よりも中心側へ引き込まれる可能性がある。これにより、引出導体42と外部電極3との電気的な接続が不完全になる可能性がある。言い換えると、引出導体42と外部電極3との電気的な接続が失われたり、引出導体42と外部電極3との接続面積が小さくなったりする可能性がある。なお、引出導体42が素体2の外面よりも中心側へ引き込まれることでできる空洞は、例えば、素体2を構成する材料が拡散することで埋まる。
【0067】
コモンモードノイズフィルタ1を外観検査して、引出導体42が視認できた場合は、引出導体42がスパイラル導体41の第2端412(図4参照)から、素体2の外面までにわたって存在していることになる。つまり、引出導体42が第2端412から、外部電極3の側部33の裏面(引出導体42側の面)までにわたって存在していることになる。一方で、引出導体42が視認できなかった場合は、引出導体42が外部電極3の側部33の裏面に達していないことになる。つまり、この場合は、引出導体42と外部電極3との電気的な接続が不完全である。また、引出導体42が視認できるものの、引出導体42の露出面積が標準値よりも小さい場合も、引出導体42と外部電極3との電気的な接続が不完全である可能性がある。このように、本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1は、外観検査によって、内部の配線の接続状態を検査することができる。
【0068】
上述の通り、第2方向において、所定の導体部4の引出導体42の幅W1は、所定の外部電極3の側部33の幅W2の1.2倍以上であることが好ましい。この場合、外観検査において引出導体42の有無を判断しやすい。
【0069】
(実施形態の変形例)
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。以下では、上述した実施形態の構成を、基本例と呼ぶ。
【0070】
外部電極3の個数は、4個に限定されない。外部電極3の個数は、例えば、6個、8個、10個、12個、……、であってもよい。
【0071】
導体部4の個数は、4個に限定されない。導体部4の個数は、例えば、6個、8個、10個、12個、……、であってもよい。
【0072】
基本例では、複数の導体部4の各々の引出導体42は、対応する外部電極3の側部33に対して、第2方向の両側(前及び後ろ)へ突き出している。これに対して、複数の導体部4のうち少なくとも一部の導体部4において、引出導体42は、対応する外部電極3の側部33に対して、第2方向の片側(前又は後ろ)へのみ突き出していてもよい。
【0073】
引出導体42の形状は、長方形状に限定されない。例えば、引出導体42のうち外部電極3に接続される部分の、前後方向(第2方向)における寸法が、スパイラル導体41のうち第2端412の、前後方向における寸法に比べて大きければよい。
【0074】
複数の外部電極3の配置は、図2で示す配置に限定されない。少なくとも1つの外部電極3が、素体2の上面U2、下面L2、及び、前面S23にわたって配置されていてもよい。また、少なくとも1つの外部電極3が、素体2の上面U2、下面L2、及び、後面S24にわたって配置されていてもよい。
【0075】
基本例の各外部電極3に対応する第1方向は、左右方向であり、基本例の外部電極3に対応する第2方向は、前後方向である。これに対して、素体2の上面U2、下面L2、及び、前面S23、又は、素体2の上面U2、下面L2、及び、後面S24にわたって配置された外部電極3に対応する第1方向は、前後方向であり、この外部電極3に対応する第2方向は、左右方向である。
【0076】
基本例の各外部電極3の側部33の平面視形状は、長方形状であり、上下方向におけるどの位置でも、第2方向における側部33の幅W2が一定である。もし、上下方向における位置によって第2方向における側部33の幅が異なっている場合は、所定の寸法条件に係る「第2方向における側部33の幅W2」は、側部33のうち、引出導体42と重なっている部分の幅として定義されてもよい。
【0077】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0078】
第1の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1)は、素体(2)と、複数の導体部(4)と、複数の外部電極(3)と、を備える。複数の導体部(4)は、素体(2)の内部に設けられている。複数の導体部(4)は、上下方向に並んでいる。複数の外部電極(3)は、素体(2)の外面に設けられている。複数の導体部(4)の各々は、スパイラル導体(41)と、引出導体(42)と、を有する。スパイラル導体(41)は、中心側の第1端(411)と外側の第2端(412)とを含み、第1端(411)から第2端(412)まで渦巻き状に延びている。引出導体(42)は、スパイラル導体(41)の第2端(412)と一体に設けられている。複数の外部電極(3)は、複数の導体部(4)と一対一で対応している。複数の外部電極(3)の各々は、複数の導体部(4)のうち対応する導体部(4)の引出導体(42)につながっている。複数の導体部(4)のうち所定の導体部(4)の引出導体(42)に関して、所定の寸法条件が成り立つ。複数の外部電極(3)のうち所定の導体部(4)に対応する外部電極(3)を、所定の外部電極(3)とする。所定の外部電極(3)は、上下方向と直交する第1方向において所定の導体部(4)の引出導体(42)に対向する、側部(33)を有する。所定の寸法条件は、第1方向及び上下方向の両方と直交する第2方向において、所定の導体部(4)の引出導体(42)の幅(W1)が、所定の外部電極(3)の側部(33)の幅(W2)よりも大きいという条件である。
【0079】
上記の構成によれば、所定の導体部(4)の引出導体(42)の幅(W1)が、所定の外部電極(3)の側部(33)の幅(W2)よりも大きい。そのため、所定の導体部(4)の引出導体(42)又は所定の外部電極(3)を形成する位置がずれたとしても、所定の導体部(4)の引出導体(42)と所定の外部電極(3)との接続面積を十分大きく確保することができる。これにより、コモンモードノイズフィルタ(1)の内部の配線の接続信頼性を向上させることができる。
【0080】
また、第2の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1)では、第1の態様において、複数の導体部(4)の各々の引出導体(42)に関して、所定の寸法条件が成り立つ。
【0081】
上記の構成によれば、コモンモードノイズフィルタ(1)の内部の配線の接続信頼性を更に向上させることができる。
【0082】
また、第3の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1)では、第1又は2の態様において、所定の導体部(4)の引出導体(42)は、所定の外部電極(3)の側部(33)に対して、第2方向の両側へ突き出している。
【0083】
上記の構成によれば、所定の導体部(4)の引出導体(42)又は所定の外部電極(3)を形成する位置が、第2方向の両側(前及び後ろ)のうち、いずれの側へずれたとしても、所定の導体部(4)の引出導体(42)と所定の外部電極(3)との接続面積を十分大きく確保することができる。
【0084】
また、第4の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、所定の導体部(4)の引出導体(42)は、素体(2)の外部に露出している。
【0085】
上記の構成によれば、外観検査によって、検査者又はコンピュータシステム等は、引出導体(42)の有無を判定できる。
【0086】
また、第5の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1)では、第1~4の態様のいずれか1つにおいて、複数の導体部(4)の各々において、スパイラル導体(41)と引出導体(42)とは同一平面に存在する。
【0087】
上記の構成によれば、導体部(4)と外部電極(3)との間の配線長を短くできる。
【0088】
また、第6の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、第2方向において、所定の導体部(4)の引出導体(42)の幅(W1)は、所定の外部電極(3)の側部(33)の幅(W2)の1.2倍以上である。
【0089】
上記の構成によれば、所定の導体部(4)の引出導体(42)又は所定の外部電極(3)を形成する位置のずれがある程度大きい場合でも、所定の導体部(4)の引出導体(42)と所定の外部電極(3)との接続面積を十分大きく確保することができる。
【0090】
第1の態様以外の構成については、コモンモードノイズフィルタ(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 コモンモードノイズフィルタ
2 素体
3 外部電極
4 導体部
33 側部
41 スパイラル導体
42 引出導体
411 第1端
412 第2端
W1、W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7