(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142231
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】素子転写装置および素子の転写方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054309
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】藤重 遥
(72)【発明者】
【氏名】新井 義之
(72)【発明者】
【氏名】陣田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 達弥
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA39
5F047BA40
5F047CA08
5F047FA07
5F047FA90
(57)【要約】
【課題】支持基板から被転写基板に素子を転写する際に、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、素子を高精度に転写することが可能な素子転写装置を提供することである。
【解決手段】この素子転写装置100は、少なくとも1つの素子1が支持された支持基板10を保持する支持基板保持部30と、支持基板10に支持された素子1が転写される被転写基板20を保持する被転写基板保持部40と、支持基板10または素子1と、被転写基板20との間の距離をギャップ長Dとして取得するギャップ長取得部80と、位置調整機構50の調整方向および調整量を制御する制御部60とを備え、制御部は、ギャップ長Dに基づいて、少なくとも支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整するように位置調整機構50を制御するように構成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの素子が支持された支持基板を保持する支持基板保持部と、
前記支持基板に支持された前記素子が転写される被転写基板を保持する被転写基板保持部と、
前記支持基板が前記素子を支持する面と反対側に配置され、前記支持基板に向かってレーザ光を照射して、前記支持基板と前記素子との支持状態を解除するレーザ光照射部と、
少なくとも前記支持基板保持部と、前記被転写基板保持部との相対的な傾きを調整する位置調整機構と、
前記支持基板または前記素子と、前記被転写基板との間の距離をギャップ長として取得するギャップ長取得部と、
前記位置調整機構の調整方向および調整量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ギャップ長に基づいて、少なくとも前記支持基板保持部と前記被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように前記位置調整機構を制御する、素子転写装置。
【請求項2】
前記制御部は、
予め設定されたギャップ許容範囲と、前記ギャップ長取得部によって取得された前記ギャップ長とに基づいて、前記支持基板の前記素子を支持する面のうちの、前記ギャップ長が前記ギャップ許容範囲内に収まるような部分面領域と、前記部分面領域を形成するための前記支持基板および前記被転写基板の相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得し、
複数の前記相対位置情報に基づいて、少なくとも前記支持基板保持部と前記被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように、前記位置調整機構を制御する、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項3】
前記制御部は、転写を行う全ての領域を複数の前記部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の前記分割パターンの中から、1つの前記部分面領域に含まれる前記素子の数が最大となる最大部分面領域を含む第1分割パターンを選択し、
前記第1分割パターンに含まれるそれぞれの前記部分面領域を形成するための前記相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の素子転写装置。
【請求項4】
前記制御部は、転写を行う全ての領域を前記部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の前記分割パターンの中から、複数の前記相対位置情報の数が最も少ない数となる第2分割パターンを取得する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の素子転写装置。
【請求項5】
前記制御部は、それぞれの前記部分面領域内における複数の前記ギャップ長同士の値が均一に近づくような、前記相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の素子転写装置。
【請求項6】
前記ギャップ長取得部は、少なくとも、任意に設定する基準位置から、前記支持基板の前記素子を支持する側の面までの第1距離と、前記基準位置から、前記被転写基板の前記素子が転写される側の面までの第2距離とを取得する、請求項1または2に記載の素子転写装置。
【請求項7】
前記ギャップ長取得部は、前記被転写基板の前記素子が転写される側の面とは反対側において任意に設定される第1基準位置から前記支持基板の前記素子を支持する側の面までの第1基準距離と、前記支持基板が前記素子を支持する側の面と反対側において任意に設定される第2基準位置から前記被転写基板の前記素子が転写される側の面までの第2基準距離と、前記第1基準位置および前記第2基準位置の基準位置間距離とを取得する、請求項1または2に記載の素子転写装置。
【請求項8】
素子または前記素子を支持する支持基板と、前記素子が転写される被転写基板との間の距離をギャップ長として複数点取得するギャップ長取得工程と、
少なくとも前記支持基板と前記被転写基板との相対的な傾きを調整する位置調整工程と、
前記支持基板に向かってレーザ光を照射して、前記支持基板と前記素子との支持状態を解除するレーザ光照射工程とを備え、
前記位置調整工程は、前記ギャップ長取得工程によって取得された前記ギャップ長に基づいて、少なくとも前記支持基板と前記被転写基板との相対的な傾きを調整する、素子の転写方法。
【請求項9】
予め設定されたギャップ許容範囲と、前記ギャップ長取得工程によって取得された前記ギャップ長とに基づいて、前記支持基板の前記素子を支持する面のうち、前記ギャップ長が前記ギャップ許容範囲内に収まるような部分面領域と、
前記部分面領域を形成するための前記支持基板および前記被転写基板の相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得する情報取得工程をさらに備え、
前記位置調整工程は、複数の前記相対位置情報に基づいて、少なくとも前記支持基板と前記被転写基板との相対的な傾きを調整する、請求項8に記載の素子転写方法。
【請求項10】
前記情報取得工程は、転写を行う全ての領域を複数の前記部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の前記分割パターンの中から、1つの前記部分面領域に含まれる前記素子の数が最大となる第1部分面領域を含む第1分割パターンを選択し、
前記第1分割パターンに含まれるそれぞれの前記部分面領域を形成するための前記相対位置情報を取得する工程を含む、請求項9に記載の素子の転写方法。
【請求項11】
前記情報取得工程は、転写を行う全ての領域を前記部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得し、複数の前記分割パターンの中から、複数の前記相対位置情報の数が最も少ない数となる第2分割パターンを取得する工程を含む、請求項9に記載の素子の転写方法。
【請求項12】
前記情報取得工程は、それぞれの前記部分面領域内において、複数の前記ギャップ長同士の値が均一に近づくような、前記相対位置情報を取得する工程を含む、請求項9に記載の素子の転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光を照射するレーザ光照射部を含む素子転写装置および素子の転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光照射部からレーザ光を照射する工程を含む半導体チップ(素子)の転写装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ドナー基板(支持基板)の表面に配置された転写対象のチップ(素子)にレーザ光照射部からレーザ光を照射して、転写対象の素子をターゲット基板(被転写基板)の表面に設定された被転写部位に転写させる構成の素子転写装置が開示されている。
【0004】
上記特許文献1の素子転写装置では、被転写基板保持部と、支持基板保持部と、たわみ量測定部と、レーザ光照射部と、相対移動部と、制御部とを備えている。また、相対移動部は、被転写基板と支持基板との隙間距離(ギャップ長)を変更するギャップ長変更部を含む。そして、上記特許文献1の素子転写装置は、支持基板が自重でたわんだ場合に、ギャップ長が、支持基板の面内の位置によって異なる状態となることに起因して素子の転写位置のずれが発生する。そこで、上記特許文献1では、素子の転写位置のずれを防ぐために、制御部が、支持基板を介して転写対象の素子に向けてレーザ光を照射する際、たわみ量測定部で測定した支持基板のたわみ量に基づいて、ギャップ長が所望の範囲内に収まるように、ギャップ長変更部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のような従来の素子転写装置では、たわみ量測定部で測定した支持基板のたわみ量(変位量)に基づいて、ギャップ長を制御することによって、たわみの影響を抑制している。しかし、実際の装置構成においては、支持基板の厚みムラや、被転写基板の厚みムラ、被転写基板の平面度および装置の組み付け精度など、支持基板のたわみ量以外にもギャップ長を変動させる要因が存在しており、支持基板のたわみ量を測定するのみでは、ギャップ長の正確な調整が困難であり、素子を高精度に転写することができない場合がある。そこで、支持基板から被転写基板に素子を転写する際に、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、素子を高精度に転写する技術が望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、支持基板から被転写基板に素子を転写する際に、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、素子を高精度に転写することが可能な素子転写装置および素子の転写方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この第1の局面による素子転写装置は、少なくとも1つの素子が支持された支持基板を保持する支持基板保持部と、支持基板に支持された素子が転写される被転写基板を保持する被転写基板保持部と、支持基板が素子を支持する面と反対側に配置され、支持基板に向かってレーザ光を照射して、支持基板と素子との支持状態を解除するレーザ光照射部と、少なくとも支持基板保持部と、被転写基板保持部との相対的な傾きを調整する位置調整機構と、支持基板または素子と、被転写基板との間の距離をギャップ長として取得するギャップ長取得部と、位置調整機構の調整方向および調整量を制御する制御部とを備え、制御部は、ギャップ長に基づいて、少なくとも支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように位置調整機構を制御する。
【0009】
この第1の局面による素子転写装置は、上記のように、支持基板または素子と、被転写基板との間の距離をギャップ長として取得するギャップ長取得部を備え、制御部は、ギャップ長に基づいて、少なくとも支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように位置調整機構を制御する。これにより、支持基板のたわみ量に基づいて支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な位置を調整する場合とは異なり、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らないギャップ長に基づいて、より正確に位置調整をすることができる。その結果、支持基板から被転写基板に素子を転写する際に、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、素子を高精度に転写することができる。
【0010】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、制御部は、予め設定されたギャップ許容範囲と、ギャップ長取得部によって取得されたギャップ長とに基づいて、支持基板の素子を支持する面のうちの、ギャップ長がギャップ許容範囲内に収まるような部分面領域と、部分面領域を形成するための支持基板および被転写基板の相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得し、複数の相対位置情報に基づいて、少なくとも支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように、位置調整機構を制御する。このように構成すれば、転写を行う全ての領域にわたって、ギャップ長がギャップ許容範囲内に収まるように調整されるため、転写を行う全ての領域にわたって、素子の被転写基板に対する傾きをより正確に調整できるようになり、素子をより高精度で転写することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、転写を行う全ての領域を複数の部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の分割パターンの中から、1つの部分面領域に含まれる素子の数が最大となる最大部分面領域を含む第1分割パターンを選択し、第1分割パターンに含まれるそれぞれの部分面領域を形成するための相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、1つの相対位置情報に基づいて転写させられるチップの数が最大となる最大部分面領域を含んだ第1分割パターンを用いて、相対位置情報に基づいて位置調整機構を制御することができるようになる。その結果、制御部が位置調整機構を制御する回数を少なくすることができ、転写に要する時間を短縮することができる。
【0012】
上記部分面領域と相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得する構成において、好ましくは、制御部は、転写を行う全ての領域を部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の分割パターンの中から、複数の相対位置情報の数が最も少ない数となる第2分割パターンを取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第2分割パターンを用いて、相対位置情報に基づいて位置調整機構を制御する回数を最も少なくすることができ、転写に要する時間を短縮することができる。
【0013】
上記複数の相対位置情報に基づいて、少なくとも支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように、位置調整機構を制御する構成において、好ましくは、制御部は、それぞれの部分面領域内における複数のギャップ長同士の値が均一に近づくような、相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、部分面領域内に含まれる複数のチップが同程度のギャップ長で保持されるため、素子をより高精度に転写することができる。
【0014】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、ギャップ長取得部は、少なくとも、任意に設定する基準位置から、支持基板の素子を支持する側の面までの第1距離と、基準位置から、被転写基板の素子が転写される側の面までの第2距離とを取得する。このように構成すれば、ギャップ長を直接測定することが難しい場合にも、同時に取得することが可能な第1距離および第2距離に基づいて正確なギャップ長を測定することができる。
【0015】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、ギャップ長取得部は、被転写基板の素子が転写される側の面とは反対側において任意に設定される第1基準位置から支持基板の素子を支持する側の面までの第1基準距離と、支持基板が素子を支持する側の面と反対側において任意に設定される第2基準位置から被転写基板の素子が転写される側の面までの第2基準距離と、第1基準位置および第2基準位置の基準位置間距離とを取得する。このように構成すれば、ギャップ長を直接測定することが難しい場合にも、第1基準距離と第2基準距離と基準位置間距離に基づいて正確なギャップ長を測定することができる。
【0016】
この第2の局面による素子の転写方法は、素子または素子を支持する支持基板と、素子が転写される被転写基板との間の距離をギャップ長として複数点取得するギャップ長取得工程と、少なくとも支持基板と被転写基板との相対的な傾きを調整する位置調整工程と、支持基板に向かってレーザ光を照射して、支持基板と素子との支持状態を解除するレーザ光照射工程とを備え、位置調整工程は、ギャップ長取得工程によって取得されたギャップ長に基づいて、少なくとも支持基板と被転写基板との相対的な傾きを調整する。
【0017】
上記第2の局面による素子の転写方法は、上記のように、位置調整工程は、ギャップ長取得工程によって取得されたギャップ長に基づいて、少なくとも支持基板と被転写基板との相対的な傾きを調整する。これにより、支持基板のたわみ量に基づいて支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な位置を調整する場合とは異なり、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らないギャップ長に基づいて位置調整をすることができるようになる。その結果、支持基板から被転写基板に素子を転写する際に、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、素子を高精度に転写することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0018】
上記第2の局面による素子の転写方法において、好ましくは、予め設定されたギャップ許容範囲と、ギャップ長取得工程によって取得されたギャップ長とに基づいて、支持基板の素子を支持する面のうち、ギャップ長がギャップ許容範囲内に収まるような部分面領域と、部分面領域を形成するための支持基板および被転写基板の相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得する情報取得工程をさらに備え、位置調整工程は、複数の相対位置情報に基づいて、少なくとも支持基板と被転写基板との相対的な傾きを調整する。このように構成すれば、転写を行う全ての領域にわたって、ギャップ長がギャップ許容範囲内に収まるように調整されるため、転写を行う全ての領域にわたって、素子の被転写基板に対する傾きをより正確に調整できるようになり、素子をより高精度で転写することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、情報取得工程は、転写を行う全ての領域を複数の部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の分割パターンの中から、1つの部分面領域に含まれる素子の数が最大となる最大部分面領域を含む第1分割パターンを選択し、第1分割パターンに含まれるそれぞれの部分面領域を形成するための相対位置情報を取得する。このように構成すれば、1つの相対位置情報に基づいて転写させられるチップの数が最大となる、最大部分面領域を含んだ相対位置情報に基づいて位置調整機構を制御することができるようになるため、位置調整工程における位置調整回数を少なくすることができ、転写に要する時間を短縮することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0020】
上記部分面領域と相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得する方法において、好ましくは、情報取得工程は、転写を行う全ての領域を部分面領域として分割する際に、複数の分割パターンを取得し、複数の分割パターンの中から、複数の相対位置情報の数を最も少なくできるような分割パターンを取得する。このように構成すれば、相対位置情報に基づいて位置調整機構を制御する回数を最も少なくすることができ、転写に要する時間を短縮することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0021】
上記複数の相対位置情報に基づいて、少なくとも支持基板保持部と被転写基板保持部との相対的な傾きを調整するように、位置調整機構を制御する方法において、好ましくは、情報取得工程は、それぞれの部分面領域内において、複数のギャップ長同士の値が均一に近づけられるような、相対位置情報を取得する。このように構成すれば、部分面領域内に含まれる複数のチップが同程度のギャップ長で保持されるため、素子をより高精度に転写することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、支持基板から被転写基板に素子を転写する際に、素子転写装置の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、素子を高精度に転写することが可能な素子転写装置および素子の転写方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態による半導体チップ転写装置の全体構成を示した模式図である。
【
図2】半導体チップが支持基板に支持されている構成を示した模式図である。
【
図3】支持基板のたわみに起因してギャップ長が被転写基板の位置によって異なる状態を示した模式図である。
【
図4】第1実施形態による転写方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第1実施形態による半導体チップ転写装置において、ギャップ長を取得する構成を示した図である。
【
図6】第1実施形態による半導体チップ転写装置において、ギャップ許容値を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態による半導体チップ転写装置において、支持基板の半導体チップを支持する側の面における部分面領域の設定について説明するための図である。
【
図8】第1実施形態による半導体チップ転写装置において、部分面領域を形成するときの相対位置情報を説明するための図である。
【
図9】第2および第3実施形態による半導体チップ転写装置において、分割パターンを複数取得することを説明するための図である。
【
図10】第2および第3実施形態による半導体チップ転写装置において、分割パターンを複数取得することを説明するための別の図である。
【
図11】第4実施形態による半導体チップ転写装置において、部分面領域の設定を説明するための図である。
【
図12】第4実施形態による半導体チップ転写装置において、部分面領域を形成するときの相対位置情報を説明するための図である。
【
図13】変形例による半導体チップ転写装置において、被転写基板および被転写基板保持部がない状態で、ギャップ長を取得する構成を示した図である。
【
図14】変形例による半導体チップ転写装置において、被転写基板および被転写基板保持部がある状態で、ギャップ長を取得する構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1および
図2を参照して、第1実施形態による半導体チップ転写装置100の構成について説明する。
【0026】
(半導体チップ転写装置)
図1に示すように、半導体チップ転写装置100は、支持基板保持部30と、被転写基板保持部40と、位置調整機構50と、制御部60と、レーザ光照射部70とを備える。なお、図面において、半導体チップ転写装置100の左右方向(水平面内の一方向)をX方向としている。また、半導体チップ転写装置100の上下方向(垂直方向)をZ方向としている。また、半導体チップ転写装置100のX方向およびZ方向と直交する方向(水平面内の他方向)をY方向としている。なお、半導体チップ転写装置100は、特許請求の範囲の「素子転写装置」の一例である。
【0027】
半導体チップ1として、例えば、マイクロ発光ダイオード(LED)と呼ばれる50um×50um以下のサイズの半導体チップ1などが用いられる。なお、半導体チップ1は、マイクロLEDに限定されず、種々の半導体素子を用いてもよい。なお、半導体チップ1は、特許請求の範囲の「素子」の一例である。
【0028】
支持基板10は、たとえば、SiO
2(二酸化ケイ素)基板やサファイヤ基板のようにレーザ光Lを透過する材料により形成されている。支持基板10は、支持基板10上に形成された図示しない粘着層を介して複数の半導体チップ1を支持している。
図2に示すように、複数の半導体チップ1は、支持基板10上において粘着層を介して所定の間隔でマトリクス状に配列されている。支持基板10は、円形状を有している。
【0029】
図1に示すように、支持基板保持部30は、半導体チップ1が支持された支持基板10を保持する。支持基板保持部30は、半導体チップ1を支持した支持基板10を、半導体チップ1を支持した面を下向きにして保持する。支持基板保持部30は、開口部31を有する。支持基板保持部30に保持された支持基板10には、開口部31を介してレーザ光照射部70から出射されたレーザ光Lが照射される。支持基板保持部30は、位置調整機構50により、少なくともX方向およびY方向において被転写基板保持部40に対して相対移動可能なように構成されている。
【0030】
支持基板10と半導体チップ1との間には、図示しない粘着層が形成されている。粘着層は、レーザ光照射部70からレーザ光Lが照射されることにより分解してガス成分を発生する材料により形成されている。粘着層は、たとえば、ポリイミドやシリコンにより形成されている。
【0031】
被転写基板20は、たとえば、支持基板10上のマイクロLEDが被転写基板20に多数転写されることによりマイクロLEDディスプレイパネルを製造するための基板である。この第1実施形態では、被転写基板20は、矩形形状を有している。
【0032】
被転写基板保持部40は、支持基板10に支持された半導体チップ1が転写される被転写基板20を下方から保持する。被転写基板保持部40は、位置調整機構50により、少なくともX方向およびY方向に関して支持基板保持部30に対して相対移動可能なように構成されている。
【0033】
制御部60は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより構成され、プログラム(ソフトウェア)を実行することにより各種制御を行う。制御部60は、転写領域内の半導体チップ1を任意に選択し、レーザ光照射部70にレーザ光Lを照射させることにより、転写領域内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する制御を行う。また、制御部60は、ギャップ長取得部80によって取得された支持基板10と被転写基板20との間の距離(ギャップ長D)に基づいて、少なくとも支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整するように位置調整機構50を制御するように構成されている。
【0034】
レーザ光照射部70は、支持基板10にレーザ光Lを照射するように構成されている。レーザ光照射部70は、レーザ光源71と、ガルバノミラー72と、fθレンズ73とを含む。レーザ光源71は、レーザ光Lを出射する光源である。ガルバノミラー72は、交差する二軸を回転軸として回転可能であり、レーザ光Lを任意の角度で反射する。fθレンズ73はガルバノミラー72からのレーザ光Lを支持基板10の転写領域上に集光する。したがって、ガルバノミラー72の回転可能範囲内において反射されるレーザ光Lの照射範囲内に、支持基板10内に配置された転写領域の大きさが納まる。
【0035】
レーザ光照射部70は、ガルバノミラー72およびfθレンズ73を介して、支持基板保持部30に保持された支持基板10の半導体チップ1を支持した面と反対側の面にレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、ガルバノミラー72およびfθレンズ73により、転写領域における、選択した半導体チップ1に照射される。レーザ光Lが支持基板10を介して粘着層に照射されることにより、支持基板10から半導体チップ1が剥離され、支持基板10から被転写基板20へ半導体チップ1が転写される。すなわち、レーザリフトオフ法による転写が行われる。
【0036】
ギャップ長取得部80は、支持基板10または半導体チップ1と、被転写基板20との間の距離をギャップ長Dとして取得する。たとえば、ギャップ長取得部80は、支持基板10の上方(Z1方向)に取り付けられたレーザ変位計81を備えるように構成されている。
【0037】
(半導体チップの転写方法)
次に、
図3~
図8を参照して、第1実施形態における半導体チップ1の転写方法の処理について説明する。なお、以下に説明する半導体チップ1の転写方法の処理は、制御部60により実行される。
【0038】
図3は、
図1の半導体チップ転写装置100をY2方向から見た側面図(XZ断面図)である。第1実施形態では、
図3に示すように、支持基板10が自重によって下方(Z2方向)にたわむ。これにより、支持基板10の中央における位置Cと位置Cの垂直下方(Z2方向)に位置する位置C2との間の距離であるギャップ長dcと、支持基板10の端部における位置Eと位置Eの垂直下方(Z2方向)に位置する位置E2との間の距離であるギャップ長deが異なる値となる場合について説明する。
【0039】
図4のステップS1において、第1実施形態では、
図5に示すように、ギャップ長取得部80は、少なくとも、支持基板10より上方(Z1方向)に位置する基準位置Tから、支持基板10の半導体チップ1を支持する側の面までの第1距離D1を取得する。また、ギャップ長取得部80は、基準位置Tから、被転写基板20の半導体チップ1が転写される側の面までの第2距離D2を取得する。この場合、ギャップ長取得部80が取得する任意の位置におけるギャップ長Dは、D=D2-D1で表される。
【0040】
第1実施形態におけるギャップ長Dの具体的な取得方法について、
図5を用いて説明する。第1実施形態では、ギャップ長取得部80は、支持基板10の上方(Z1方向)に取り付けられたレーザ変位計81を用いて測定したデータをもとに、ギャップ長Dを取得する。レーザ変位計81は、たとえば白色干渉法式の測定方法により、基準位置Tと、支持基板10の半導体チップ1を支持する側の面における任意の位置S1との間の距離を、第1距離D1として測定する。また、レーザ変位計81は、基準位置Tと、位置S1の垂直下方(Z2方向)に位置する被転写基板20の半導体チップ1が転写される側の面の位置S2との間の距離を、第2距離D2として取得する。そして、ギャップ長取得部80は、レーザ変位計81が測定した第1距離D1および第2距離D2の差分をギャップ長Dとして取得するように構成されている。その後、ステップS2の処理に進む。
【0041】
ステップS2において、第1実施形態では、
図6および
図7に示すように、予め設定されたギャップ許容範囲gと、ギャップ長取得部80によって取得されたギャップ長Dとに基づいて、支持基板10の半導体チップ1を支持する面のうちの、ギャップ長Dがギャップ許容範囲g内に収まるような部分面領域Aと、部分面領域Aを形成するための支持基板10および被転写基板20の相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得する。
【0042】
具体的には、
図6に示すように、制御部60は、支持基板10と被転写基板20との間の距離として任意に設定するギャップ長Dgを取得する。この第1実施形態では、ギャップ長Dgは、転写を行う全ての領域にわたって、半導体チップ1と被転写基板20が接触しないような距離に設定される。また、制御部60は、所定のギャップ長Dgに対して、Z方向にずれた値の範囲として設定されたギャップ許容範囲gを取得する。この第1実施形態では、ギャップ許容範囲gは、支持基板10と被転写基板20との相対的な位置を調整しても、半導体チップ1が被転写基板20に接触しないような範囲に設定される。
【0043】
次に、制御部60は、予め設定されたギャップ許容範囲gと、ギャップ長取得部80によって転写を行う全ての領域にわたって取得されたギャップ長Dとに基づいて、ギャップ長Dの所定のギャップ長Dgに対する誤差がギャップ許容範囲g内に収まるような、
図7に示す部分面領域Aを取得する。ここで、
図7に示すように、部分面領域Aは、破線で囲まれた領域のように、転写を行う全ての領域にわたって、半導体チップ1を1つまたは2つ以上に分けたそれぞれの領域のことである。この部分面領域Aは、支持基板10と被転写基板20との相対的な位置が所定の条件になった場合において、部分面領域A内の全ての位置におけるギャップ長Dの所定のギャップ長Dgに対する誤差がギャップ許容範囲g内に収まるように取得される。また、制御部60は、部分面領域Aを形成するための支持基板10と被転写基板20の所定の位置を、相対位置情報として各部分面領域Aごとにそれぞれ取得する。その後、ステップS3の処理に進む。
【0044】
ステップS3において、第1実施形態では、制御部60は、複数の相対位置情報に基づいて、少なくとも支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整するように、位置調整機構50を制御する。
【0045】
図8は、第1実施形態において、
図7の部分面領域Aを形成する場合の相対位置情報に基づいて、支持基板10の傾きを調整するように、支持基板保持部30を位置調整機構50によって調整したときの半導体チップ転写装置100の側面図である。このとき、
図7における部分面領域A内の任意の位置A1およびA2がギャップ許容範囲g内に収まるように配置される。その後、ステップS4の処理に進む。
【0046】
ステップS4において、第1実施形態では、支持基板10が半導体チップ1を支持する面と反対側(Z1方向側)に配置され、支持基板10に向かってレーザ光Lを照射して、支持基板10と半導体チップ1との支持状態を解除する。これによって、支持基板10に支持された半導体チップ1が剥離されて、被転写基板20に転写される。
【0047】
具体的には、制御部60は、ガルバノミラー72を調整するとともに、レーザ光照射部70からレーザ光Lを照射させる。
図8に示すように、支持基板10の半導体チップ1を支持した面と反対側の面から半導体チップ1にレーザ光Lが照射されることにより、支持基板10に形成された図示しない粘着層が、レーザ光Lが照射されることによって分解されるため、半導体チップ1が剥離される。
【0048】
ここで、ステップS4においては、第1実施形態では、制御部60は、部分面領域A内に含まれる転写すべき半導体チップ1に対して、レーザ光Lを照射して、支持基板10と半導体チップ1との支持状態を解除するようにレーザ光照射部70を制御する。その後、ステップS5の処理に進む。
【0049】
ステップS5において、制御部60は、複数の部分面領域Aの全てにおいて、転写すべき半導体チップ1の被転写基板20へ転写が終了したか否かを判定する。制御部60は、複数の部分面領域Aの全てにおいて、転写すべき半導体チップ1の被転写基板20に対しての転写が終了したと判定した場合(ステップS5においてYesの場合)、処理を終了する。また、配置した複数の転写領域の全てにおいて、転写すべき半導体チップ1の被転写基板20に対しての転写が終了していないと判定した場合(ステップS5においてNoの場合)は、ステップS3の処理に戻り、別の相対位置情報において半導体チップ1の転写を行う。第1実施形態では、この一連の処理を繰り返すことによって、被転写基板20の全面に対して半導体チップ1の転写が行われる。
【0050】
(第1実施形態の効果)
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0051】
第1実施形態の半導体チップ転写装置100および半導体チップ1の転写方法は、少なくとも1つの半導体チップ1が支持された支持基板10を保持する支持基板保持部30と、支持基板10に支持された半導体チップ1が転写される被転写基板20を保持する被転写基板保持部40とを備える。また、第1実施形態の半導体チップ転写装置100および半導体チップ1の転写方法は、支持基板10が半導体チップ1を支持する面と反対側(Z1方向側)に配置され、支持基板10に向かってレーザ光Lを照射して、支持基板10と半導体チップ1との支持状態を解除するレーザ光照射部70と、少なくとも支持基板保持部30と、被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整する位置調整機構50と、支持基板10または半導体チップ1と、被転写基板20との間の距離をギャップ長Dとして取得するギャップ長取得部80と、位置調整機構50の調整方向および調整量を制御する制御部60とを備える。そして、制御部60は、ギャップ長Dに基づいて、少なくとも支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整するように位置調整機構50を制御する。これにより、支持基板10のたわみ量に基づいて支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な位置を調整する場合とは異なり、半導体チップ転写装置100の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らないギャップ長Dに基づいて位置調整をすることができるようになる。その結果、支持基板10から被転写基板20に半導体チップ1を転写する際に、半導体チップ転写装置100の組付け精度や、種々の構成部材の加工精度に依らず、半導体チップ1を高精度に転写することができる。
【0052】
なお、制御部60は、予め設定されたギャップ許容範囲gと、ギャップ長取得部80によって取得されたギャップ長Dとに基づいて、支持基板10の半導体チップ1を支持する面のうちの、ギャップ長Dの所定のギャップ長Dgに対する誤差がギャップ許容範囲g内に収まるような部分面領域Aと部分面領域Aを形成するための支持基板10および被転写基板20の相対位置情報とを、転写を行う全ての領域にわたって複数取得する。また、制御部60は、複数の相対位置情報に基づいて、少なくとも支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整するように、位置調整機構50を制御する。このように構成すれば、転写を行う全ての領域にわたって、ギャップ長Dの所定のギャップ長Dgに対する誤差がギャップ許容範囲g内に収まるようにして転写をすることができるようになる。その結果、転写を行う全ての領域にわたって、半導体チップ1の被転写基板20に対する傾きをより正確に調整できるようになり、半導体チップ1をより高精度で転写することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、ギャップ長取得部80は、少なくとも、任意に設定する基準位置Tから、支持基板10の半導体チップ1を支持する側の面までの第1距離D1と、基準位置Tから、被転写基板20の半導体チップ1が転写される側の面までの第2距離D2とを取得する。このように構成すれば、ギャップ長Dを直接測定することが難しい場合にも、同時に取得することが可能な第1距離D1および第2距離D2に基づいて正確なギャップ長Dを測定することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態による半導体チップ転写装置100aおよび半導体チップ1の転写方法について説明する。半導体チップ転写装置100aの装置構成は、制御部60a以外は、
図1に示した半導体チップ転写装置100と同様の装置構成である。第2実施形態においても、
図4の半導体チップ1の転写方法の処理のフローに基づいて処理が行われるが、後述するように、ステップS2の処理において、第1実施形態とは異なる。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0055】
第2実施形態では、
図4のステップS2において、制御部60aは、転写を行う全ての領域を複数の部分面領域Aとして分割する際に、複数の分割パターンを取得するように構成されている。たとえば、第2実施形態では、制御部60aは、複数の分割パターンとして、
図7、
図9および
図10に示される分割パターン101、102および103を取得する。
【0056】
さらに、制御部60aは、分割パターン101、102および103を比較して、1つの部分面領域Aに含まれる半導体チップ1の数が最大となる最大部分面領域Fを含む第1分割パターン102を選択する。最大部分面領域Fを含む分割パターンが複数ある場合は、制御部60aが自動でどれか1つを選択するように構成されていてもよいし、任意の分割パターンを手動で選択して制御部60aに取得させるようにしてもよい。たとえば、第2実施形態においては、制御部60aは
図9に示した分割パターンを第1分割パターン102として選択する。そして、制御部60aは、選択した第1分割パターン102に含まれるそれぞれの部分面領域Aを形成するための相対位置情報を取得する。
【0057】
(第2実施形態の効果)
次に、第2実施形態の効果について説明する。
【0058】
第2実施形態では、制御部60aは、転写を行う全ての領域を複数の部分面領域Aとして分割する際に、複数の分割パターン101、102および103を取得するとともに、複数の分割パターン101、102および103の中から、1つの部分面領域Aに含まれる半導体チップ1の数が最大となる最大部分面領域Fを含む第1分割パターン102を選択する。そして、制御部60aは、第1分割パターン102に含まれるそれぞれの部分面領域Aを形成するための相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている。これにより、1つの相対位置情報に基づいて転写させられる半導体チップ1の数が最大となる、最大部分面領域Fを含んだ第1分割パターン102を用いて、相対位置情報に基づいて位置調整機構50を制御することができるようになるため、制御部60aが位置調整機構50を制御する回数を少なくすることができ、転写に要する時間を短縮することができる。
【0059】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態による半導体チップ転写装置100bおよび半導体チップ1の転写方法について説明する。半導体チップ転写装置100bの装置構成は、制御部60b以外は、
図1に示した半導体チップ転写装置100と同様の装置構成である。第3実施形態においても、
図4の半導体チップ1の転写方法の処理のフローに基づいて処理が行われるが、後述するように、ステップS2の処理において、第1および第2実施形態とは異なる。なお、第3実施形態において、第1および第2実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0061】
第3実施形態では、
図4のステップS2において、制御部60bは、転写を行う全ての領域を部分面領域Aとして分割する際に、複数の分割パターンを取得する。この第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、制御部60bが、複数の分割パターンとして、
図7、
図9および
図10に示される分割パターン101、102および103を取得する場合について説明する。
【0062】
さらに、制御部60bは、分割パターン101、102および103の中から、複数の相対位置情報の数が最も少ない数となる第2分割パターン101を取得する制御を行うように構成されている。複数の相対位置情報の数が最も少ない数となる分割パターンが複数ある場合は、制御部60bが自動でどれか1つを選択するように構成されていてもよいし、任意の分割パターンを手動で選択して制御部60bに取得させるようにしてもよい。たとえば、第2実施形態においては、制御部60bは
図7に示した分割パターンを第2分割パターン101として選択する。そして、制御部60bは、選択した第2分割パターン101に含まれるそれぞれの部分面領域Aを形成するための相対位置情報を取得する。
【0063】
(第3実施形態の効果)
次に、第3実施形態の効果について説明する。
【0064】
第3実施形態では、制御部60bは、転写を行う全ての領域を部分面領域Aとして分割する際に、複数の分割パターン101、102および103を取得するとともに、複数の分割パターン101、102および103の中から、複数の相対位置情報の数が最も少ない数となる第2分割パターン101を取得する制御を行うように構成されている。これにより、相対位置情報に基づいて位置調整機構50を制御する回数を最も少なくすることができ、転写に要する時間を短縮することができる。
【0065】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様である。
【0066】
[第4実施形態] 次に、
図11および
図12を用いて、第4実施形態による半導体チップ転写装置100cおよび半導体チップ1の転写方法について説明する。半導体チップ転写装置100cの装置構成は、制御部60c以外は、
図1に示した半導体チップ転写装置100と同様の装置構成である。第4実施形態においても、
図4の半導体チップ1の転写方法の処理のフローに基づいて処理が行われるが、後述するように、ステップS2の処理において、第1~第3実施形態とは異なる。なお、第4実施形態において、第1~第3実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0067】
第4実施形態では、それぞれの部分面領域A内における複数のギャップ長D同士の値が均一に近づくように、相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている。
【0068】
具体的には、
図4のステップS2において、
図11に示すように、制御部60cは、特定の部分面領域B内における、任意の位置かつ任意の数の複数のギャップ長取得位置を選択する。この第4実施形態では、制御部60cは、B1、B2およびB3を選択する。このとき、B1とB1の垂直下方(Z2方向)に位置する被転写基板20上の位置B4との間の距離をギャップ長d1とする。また、B2とB2の垂直下方(Z2方向)に位置する被転写基板20上の位置B5との間の距離をギャップ長d2とする。また、B3とB3の垂直下方(Z2方向)に位置する被転写基板20上の位置B6との間の距離をギャップ長d3とする。
【0069】
このとき、
図12に示すように、制御部60cは、部分面領域B内における複数のギャップ長取得位置B1、B2およびB3におけるギャップ長d1、d2およびd3が、ギャップ許容範囲g内に収まるように、相対位置情報として取得する。さらに、制御部60cは、ギャップ長d1と、d2と、d3との距離が均一に近づくような相対位置情報を取得するように構成される。
【0070】
(第4実施形態の効果)
次に、第4実施形態の効果について説明する。
【0071】
第4実施形態では、それぞれの部分面領域A内における複数のギャップ長D同士の値が均一に近づくような、相対位置情報を取得する制御を行うように構成されている。これにより、部分面領域A内に含まれる複数の半導体チップ1が同程度のギャップ長Dとして保持されるため、半導体チップ1をより高精度に転写することができる。
【0072】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1~第3実施形態と同様である。
【0073】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記第1~第4実施形態では、支持基板10の形状は円形であり、被転写基板20の形状は矩形である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、支持基板10および被転写基板20の形状は、いずれも、円形であってもよいし、多角形であってもよい。
【0075】
また、上記第1~第4実施形態では、被転写基板20がマイクロLEDディスプレイパネルを製造するための基板である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の被転写基板20は、マイクロLEDディスプレイパネル以外の用途であってもよい。また、被転写基板20には、転写された半導体チップ1を接着するための図示しない粘着層が形成されていてもよい。また、被転写基板20には、転写された半導体チップ1に対して接続可能な配線が形成されていてもよい。
【0076】
また、上記第1~第4実施形態では、レーザ光照射部70は、レーザ光源71と、ガルバノミラー72と、fθレンズ73とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ガルバノミラー72の代わりにポリゴンミラーを用いてもよいし、ガルバノミラー72とfθレンズ73との代わりにマスクを用いてもよい。
【0077】
また、上記第1~第4実施形態では、制御部60、60a~60cは、ギャップ長Dに基づいて、少なくとも支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整するように位置調整機構50を制御して、支持基板保持部30の傾きを調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60、60a~60cは、被転写基板保持部40の傾きを調整してもよいし、支持基板保持部30および被転写基板保持部40の両方の傾きを調整してもよい。また、制御部60、60a~60cは、支持基板保持部30および被転写基板保持部40を、傾きだけではなく、X方向、Y方向、Z方向に移動するように位置調整機構50を制御してもよい。また、位置調整機構50は、支持基板保持部30と被転写基板保持部40とに対して別々に設けられていてもよい。
【0078】
また、上記第1~第4実施形態では、予め設定されたギャップ許容範囲gと、ギャップ長取得部80によって取得されたギャップ長Dとに基づいて、支持基板10の半導体チップ1を支持する面のうちの、ギャップ長Dの所定のギャップ長Dgに対する誤差がギャップ許容範囲g内に収まるように支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ギャップ許容範囲gを設けずに、複数のギャップ長Dがそれぞれ均一に近づくように、支持基板保持部30と被転写基板保持部40との相対的な傾きを調整してもよい。
【0079】
また、上記第1~第4実施形態では、転写を行う全ての領域を複数の部分面領域Aとして分割する際に、複数の部分面領域Aが構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、支持基板10のたわみが少なく、1つの相対位置情報において全ての半導体チップ1がギャップ許容範囲g内に収まる場合は、取得する部分面領域Aのみとなっていてもよい。
【0080】
また、上記第2実施形態では、転写を行う全ての領域を複数の部分面領域Aとして分割する際に、複数の分割パターンを取得するとともに、複数の分割パターンの中から、1つの部分面領域Aに含まれる半導体チップ1の数が最大となる最大部分面領域Fを含む第1分割パターン102を選択する。そして、制御部60aは、第1分割パターン102に含まれるそれぞれの部分面領域Aを形成するための相対位置情報を取得する、という例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60aに複数の分割パターンを表示させ、任意に選択したパターンを制御部60aが取得するように構成されていてもよい。
【0081】
また、上記第1~第4実施形態では、1枚の支持基板10と被転写基板20との相対位置情報に基づいて、被転写基板20の全面に半導体チップ1が転写される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、支持基板10を複数枚準備し、1つの支持基板10から被転写基板20に対して半導体チップ1の転写が終了した後に、支持基板10を交換して、別の支持基板10から被転写基板20に対して半導体チップ1の転写がされるようにして、被転写基板20の全面に半導体チップ1が転写されるように構成されていてもよい。
【0082】
また、上記第1~第4実施形態では、支持基板10に支持された半導体チップ1が、それぞれの部分面領域Aに含まれる複数の半導体チップ1ごとに被転写基板20へ転写される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、支持基板10に支持された半導体チップ1のピッチと、被転写基板20に配置すべき半導体チップ1のピッチに応じて、部分面領域Aに含まれる複数の半導体チップ1のうち、転写する半導体チップ1が任意に選択されるように構成されていてもよい。また、被転写基板20上において、転写された複数の半導体チップ1の集合領域が形成される場合、その集合領域内に含まれる複数の半導体チップ1は、別々の部分面領域Aから、それぞれ半導体チップ1が転写されることによって構成されていてもよい。
【0083】
また、上記第1~第4実施形態では、ギャップ長取得部80は、支持基板10の上方(Z1方向)に取り付けられたレーザ変位計81を用いて、第1距離D1および第2距離D2を測定して、ギャップ長Dを取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ギャップ長取得部80は、レーザ変位計81を複数設けて、支持基板10の上方(Z1方向)および、被転写基板20の下方(Z2方向)にそれぞれ配置して、ギャップ長Dを取得してもよい。この場合、ギャップ長取得部80は、
図13に示すように、被転写基板20の下方(Z2方向)に配置されたレーザ変位計81の第1基準位置P1から、基準位置P1の垂直上方(Z1方向)に位置する支持基板10の半導体チップ1を支持する側の面の位置Q1までの第1基準距離Daを取得する。また、ギャップ長取得部80は、第1基準位置P1から第2基準位置P2までの基準位置間距離Dcを取得する。また、ギャップ長取得部80は、
図14に示すように支持基板10の上方(Z1方向)に配置されたレーザ変位計81の第2基準位置P2から、基準位置P2の垂直下方(Z2方向)に位置する被転写基板20の半導体チップ1が転写される側の面の位置Q2までの第2基準距離Dbを取得する。これにより、ギャップ長取得部80は、ギャップ長Dを、D=Da―(Dc-Db)として取得する。
【0084】
また、上記第1~第4実施形態では、ギャップ長取得部80は、支持基板10の上方(Z1方向)に取り付けられたレーザ変位計81を用いてギャップ長Dを測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ギャップ長取得部80は、隙間ゲージなどを用いて事前に設定した支持基板10と被転写基板20との間の距離の値をギャップ長Dとして取得するように構成されていてもよい。
【0085】
また、上記第1~第4実施形態では、ギャップ長取得部80は、支持基板10と被転写基板20との間の距離をギャップ長Dとして取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ギャップ長取得部80は、半導体チップ1と被転写基板20との間の距離をギャップ長Dとして取得してもよい。
【0086】
また、上記第1~第4実施形態では、本発明の素子として半導体チップ1を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の素子として、半導体チップ1以外の素子を適用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 半導体チップ(素子)
10 支持基板
20 被転写基板
30 支持基板保持部
40 被転写基板保持部
50 位置調整機構
60、60a、60b、60c 制御部
70 レーザ光照射部
80 ギャップ長取得部
100、100a、100b、100c 半導体チップ転写装置(素子転写装置)
A 部分面領域
D ギャップ長
F 最大部分面領域
g ギャップ許容範囲
L レーザ光