(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142232
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】溶解性マンガン含有水の処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20241003BHJP
【FI】
C02F1/461 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054317
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505119162
【氏名又は名称】学校法人 北海学園
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】村田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】美馬 智
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直哉
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA02
4D061DA08
4D061DB18
4D061DB19
4D061DC22
4D061EA03
4D061EB04
4D061EB19
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB35
4D061ED20
4D061FA06
(57)【要約】
【課題】溶解性マンガン含有水からマンガンを良好に除去し得る技術を提供する。
【解決手段】一対の電極および活性炭を含有する電解処理槽と、活性炭を電解処理槽内で流動させる流動化機構とを備える、溶解性マンガン含有水の処理装置。一対の電極を備える電解処理槽内で活性炭を流動させる工程と、流動する活性炭の存在下で一対の電極間に電圧を印加し、溶解性マンガン含有水を電解処理する工程とを含む、溶解性マンガン含有水の処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極および活性炭を含有する電解処理槽と、
前記活性炭を前記電解処理槽内で流動させる流動化機構と、
を備える、溶解性マンガン含有水の処理装置。
【請求項2】
前記流動化機構が撹拌翼を有する撹拌機である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記流動化機構が活性炭の流動層を形成する機構である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
一対の電極を備える電解処理槽内で活性炭を流動させる工程と、
流動する活性炭の存在下で前記一対の電極間に電圧を印加し、溶解性マンガン含有水を電解処理する工程と、
を含む、溶解性マンガン含有水の処理方法。
【請求項5】
撹拌翼を備える撹拌機を用いて前記活性炭を流動させる、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
流動する活性炭が前記電解処理槽内で流動層を形成する、請求項4に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性マンガン含有水の処理装置および処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水の着色障害を防止する観点から、浄水場において溶解性マンガンを含有する被処理水からマンガンを除去する技術が用いられている。
【0003】
具体的には、例えば特許文献1では、水中のマンガンを効率よく除去する技術として、粒状活性炭を成形してなる電極を陽極として用いて電解処理を行うことにより水中のマンガンを電極表面に析出させて除去する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、粒状活性炭を成形してなる陽極を用いて電解処理を行う上記従来の技術には、マンガンの除去率を更に向上させるという点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、溶解性マンガン含有水からマンガンを良好に除去し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の溶解性マンガン含有水の処理装置は、一対の電極および活性炭を含有する電解処理槽と、前記活性炭を前記電解処理槽内で流動させる流動化機構とを備えることを特徴とする。このように、活性炭を電解処理槽内で流動させる流動化機構を備えていれば、流動する活性炭の存在下で一対の電極間に電圧を印加して溶解性マンガン含有水を電解処理し、マンガンを良好に除去することができる。
【0008】
ここで、本発明の溶解性マンガン含有水の処理装置は、前記流動化機構が撹拌翼を有する撹拌機であることが好ましい。撹拌翼を有する撹拌機を用いれば、活性炭を良好に流動させてマンガンの除去効率を更に高めることができる。
【0009】
また、本発明の溶解性マンガン含有水の処理装置は、前記流動化機構が活性炭の流動層を形成する機構であることが好ましい。活性炭に流動層を形成させれば、マンガンの除去効率を更に高めることができる。
【0010】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の溶解性マンガン含有水の処理方法は、一対の電極を備える電解処理槽内で活性炭を流動させる工程と、流動する活性炭の存在下で前記一対の電極間に電圧を印加し、溶解性マンガン含有水を電解処理する工程とを含むことを特徴とする。このように、流動する活性炭の存在下で一対の電極間に電圧を印加して溶解性マンガン含有水を電解処理すれば、マンガンを良好に除去することができる。
【0011】
ここで、本発明の溶解性マンガン含有水の処理方法では、撹拌翼を備える撹拌機を用いて前記活性炭を流動させることが好ましい。撹拌翼を有する撹拌機を用いれば、活性炭を良好に流動させてマンガンの除去効率を更に高めることができる。
【0012】
また、本発明の溶解性マンガン含有水の処理方法では、流動する活性炭が前記電解処理槽内で流動層を形成することが好ましい。活性炭の流動層の存在下で溶解性マンガン含有水を電解処理すれば、マンガンの除去効率を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶解性マンガン含有水からマンガンを良好に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従う溶解性マンガン含有水の処理装置の第一実施形態の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明に従う溶解性マンガン含有水の処理装置の第二実施形態の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
ここで、本発明の溶解性マンガン含有水の処理装置および溶解性マンガン含有水の処理方法は、特に限定されることなく、例えば浄水場、下水処理場、排水処理施設などの水処理施設において溶解性マンガンを含有する被処理水(溶解性マンガン含有水)からマンガンを除去し、水道水の着色障害を防止する際などに好適に用いることができる。
【0016】
(溶解性マンガン含有水の処理方法)
本発明の溶解性マンガン含有水の処理方法は、電解処理を用いて溶解性マンガン含有水からマンガンを除去するものであり、一対の電極を備える電解処理槽内で活性炭を流動させる工程(A)と、流動する活性炭の存在下で一対の電極間に電圧を印加し、溶解性マンガン含有水を電解処理する工程(B)とを含み、任意に、溶解性マンガン含有水を電解処理して得られる処理水から活性炭を分離する工程や活性炭および/または電極を再生する工程などのその他の工程を更に含み得る。
【0017】
そして、本発明の処理方法では、流動する活性炭の存在下で一対の電極間に電圧を印加して溶解性マンガン含有水を電解処理しているので、溶解性マンガン含有水からマンガンを良好に除去することができる。
なお、活性炭の存在下で電解処理を行うことによりマンガンを良好に除去できる理由は、明らかではないが、電解処理により酸化された溶解性のマンガンが二酸化マンガンとして陽極上のみならず活性炭上にも析出するためであると推察される。
【0018】
ここで、溶解性マンガン含有水としては、特に限定されることなく、河川水、地下水、または、それらの水を任意の水処理技術を用いて処理して得られる水などが挙げられる。
そして、溶解性マンガン含有水中のマンガン濃度は、例えば、1μg/L以上20mg/L以下であり得る。
【0019】
また、電極としては、特に限定されることなく、白金製電極、炭素製電極、二酸化マンガン製電極、ステンレス鋼製電極などの任意の導電性材料からなる電極を用いることができる。中でも、工程(B)において電圧を印加した際に陽極となる電極は炭素製電極または二酸化マンガン製電極であることが好ましく、工程(B)において電圧を印加した際に陰極となる電極は白金製電極または炭素製電極であることが好ましい。なお、電極の形状は、特に限定されることなく、板状、棒状、網状、繊維状などの任意の形状とすることができる。
【0020】
更に、活性炭としては、特に限定されることなく、JIS Z8825に従うレーザー回折散乱法で測定した体積基準の平均粒子径が0.1μm以上3mm以下の活性炭を用いることができる。活性炭の平均粒子径が上記下限値以上であれば、処理水から活性炭を容易に分離することができる。また、活性炭の平均粒子径が上記上限値以下であれば、比表面積を十分に大きくしてマンガンの除去率を更に高めることができると共に、流動化させるのが容易である。
【0021】
また、電解処理槽としては、内部に電極が設置可能であり、且つ、溶解性マンガン含有水を貯留または流通させることができるものであれば、任意の水槽を用いることができる。
【0022】
そして、工程(A)における電解処理槽内での活性炭の流動化は、特に限定されることなく、例えば、水流や撹拌機などの活性炭を溶解性マンガン含有水中で流動させ得る任意の流動化機構を用いて行うことができる。中でも、マンガンの除去効率を更に高める観点からは、活性炭の流動化は、上向流での溶解性マンガン含有水の通水等の活性炭に流動層を形成させ得る機構、または、撹拌翼を有する撹拌機を用いて行うことが好ましい。
【0023】
工程(B)では、流動する活性炭の存在下、溶解性マンガン含有水中に浸漬された一対の電極間に電圧を印加して溶解性マンガン含有水を電解処理する。
【0024】
ここで、電圧の印加は、特に限定されることなく、任意の直流電源を用いて行うことができる。また、印加する電圧は、特に限定されるものではないが、マンガンの除去率を向上させる観点からは、0.9V以上10.0V以下とすることが好ましい。
【0025】
そして、溶解性マンガン含有水の電解処理を行う際、活性炭上に二酸化マンガンを析出させる反応を良好に進行させてマンガンの除去率を向上させる観点からは、活性炭は、電解処理槽内で、少なくとも陽極と接触し得るように流動していることが好ましい。
そして、マンガンの除去効率を更に高める観点からは、電解処理槽内で活性炭が流動している部分における活性炭の濃度は、1mg/L以上0.6kg/L以下であることが好ましい。
【0026】
(溶解性マンガン含有水の処理装置)
また、本発明の溶解性マンガン含有水の処理装置は、上述した本発明の溶解性マンガン含有水の処理方法を実施する際に用いることができ、一対の電極および活性炭を含有する電解処理槽と、活性炭を電解処理槽内で流動させる流動化機構とを備える。
【0027】
ここで、溶解性マンガン含有水、電極、活性炭、電解処理槽および流動化機構としては、本発明の溶解性マンガン含有水の処理方法に関して上述したものと同様のものを用いることができる。
【0028】
そして、本発明の処理装置および処理方法を用いた溶解性マンガン含有水処理の具体的な態様としては、特に限定されることなく、例えば以下の第一実施形態および第二実施形態が挙げられる。
【0029】
<第一実施形態>
図1に示すように、第一実施形態の処理装置10は、電解処理槽1と、電解処理槽1の下部に接続されて被処理水としての溶解性マンガン含有水を電解処理槽1内に流入させる流入配管2と、電解処理槽1の上部に接続されて処理水が流出する流出配管3とを備えている。また、電解処理槽1内には、一対の電極(陽極4および陰極5)、並びに、流動化機構としての、撹拌翼71を有する撹拌機7が設置されている。そして、陽極4および陰極5は、直流電源6に接続されている。
なお、処理装置10は、溶解性マンガン含有水に活性炭を添加するホッパーなどの活性炭供給機構(図示せず)を更に備えている。
【0030】
そして、
図1に示す処理装置10では、撹拌機7を用いて電解処理槽1内で溶解性マンガン含有水および活性炭を混合して活性炭を流動化させると共に、流動する活性炭の存在下で直流電源6を用いて陽極4および陰極5の間に電圧を印加することにより、溶解性マンガン含有水を電解処理する。
【0031】
この際、活性炭は、電解処理槽1内の溶解性マンガン含有水と全体的に混合され、陽極4および陰極5の双方に接触するように流動することとなる。そして、処理装置10では、電解処理により酸化された溶解性のマンガンが二酸化マンガンとして陽極4上のみならず活性炭上にも析出し、マンガンが良好に除去される。
【0032】
なお、処理水と共に電解処理槽1内から流出した活性炭は、特に限定されることなく、任意の固液分離装置を用いて処理水から分離・回収した後、必要に応じて再生処理を施してから電解処理槽1内に返送することができる。
【0033】
<第二実施形態>
図2に示すように、第二実施形態の処理装置10Aは、電解処理槽1と、電解処理槽1の底部に接続されて被処理水としての溶解性マンガン含有水を電解処理槽1内に上向流で流入させる流入配管2と、電解処理槽1の上部に接続されて処理水が流出する流出配管3とを備えている。また、電解処理槽1内には、一対の電極(陽極4および陰極5)が設置されている。そして、陽極4および陰極5は、直流電源6に接続されている。
なお、処理装置10Aは、溶解性マンガン含有水に活性炭を添加するホッパーなどの活性炭供給機構(図示せず)を更に備えている。
【0034】
そして、
図2に示す処理装置10Aでは、流入配管2から上向流で流入させた溶解性マンガン含有水により活性炭を流動化させて流動層を形成すると共に、流動する活性炭の存在下で直流電源6を用いて陽極4および陰極5の間に電圧を印加することにより、溶解性マンガン含有水を電解処理する。
【0035】
この際、活性炭は、陰極5の設置位置と流出配管3の接続位置との間に上端が位置する流動層を形成して電解処理槽1内の溶解性マンガン含有水の一部と混合され、陽極4および陰極5の双方に接触するように流動することとなる。そして、処理装置10Aでは、電解処理により酸化された溶解性のマンガンが二酸化マンガンとして陽極4上のみならず活性炭上にも析出し、マンガンが良好に除去される。
【0036】
以上、第一実施形態および第二実施形態を用いて本発明の処理装置および処理方法について説明したが、本発明の処理装置および処理方法は上述した例に限定されるものではない。
具体的には、本発明の処理装置は、迂流板を電解処理槽内に設置して流動化機構として用いてもよい。また、本発明の処理装置は、流入配管2に静止型混合器(ラインミキサー)を設け、予め混合した溶解性マンガン含有水および活性炭を電解処理槽内に供給することにより活性炭を電解処理槽内で流動させてもよい。
更に、上述した第二実施形態では陽極および陰極の双方が流動層内に位置する場合について説明したが、本発明の処理装置では、陰極が流動層の上端よりも上方に位置するようにしてもよい。
【実施例0037】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
容量200mLの回分式のガラス製反応器に溶解性マンガン含有水としての塩化マンガン水溶液を投入し、そこに粉末活性炭(平均粒子径:10μm)を濃度が10mg/Lとなるように添加した。また、直流電源に接続した一対の炭素棒電極を反応器内の水中に浸漬した。
そして、撹拌子で反応器内を撹拌しつつ、直流電源から炭素棒電極間に1.65Vの電圧を印加して電解処理を2時間行った。
また、通電開始から0時間、1時間および2時間のタイミングで反応器内からサンプル液を採取し、孔径0.2μmの親水性PTFE膜でろ過した後、ろ液中のマンガン濃度を ホルムアルドキシム法で測定した。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
容量200mLの回分式のガラス製反応器に溶解性マンガン含有水としての塩化マンガン水溶液を投入し、そこに粉末活性炭(平均粒子径:10μm)を濃度が10mg/Lとなるように添加した。
そして、撹拌子で反応器内を2時間撹拌した。
また、撹拌開始から0時間、1時間および2時間のタイミングで反応器内からサンプル液を採取し、孔径0.2μmの親水性PTFE膜でろ過した後、ろ液中のマンガン濃度を ホルムアルドキシム法で測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例2)
容量200mLの回分式のガラス製反応器に溶解性マンガン含有水としての塩化マンガン水溶液を投入した。また、直流電源に接続した一対の炭素棒電極を反応器内の水中に浸漬した。
そして、撹拌子で反応器内を撹拌しつつ、直流電源から炭素棒電極間に1.65Vの電圧を印加して電解処理を2時間行った。
また、通電開始から0時間、1時間および2時間のタイミングで反応器内からサンプル液を採取し、孔径0.2μmの親水性PTFE膜でろ過した後、ろ液中のマンガン濃度を ホルムアルドキシム法で測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1より、活性炭の存在下で電解処理を行った実施例1では、電解処理を行わずに活性炭を懸濁しただけの比較例1および活性炭を用いずに電解処理を行った比較例2と比較し、マンガンを良好に除去できることが分かる。