(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142236
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】テープ貼付装置、及びテープ貼付方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20241003BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054338
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
(72)【発明者】
【氏名】喜多 由起
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ08
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF23
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK23
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】被貼付面に対する押圧部の倣い性を向上させることができるテープ貼付装置を提供すること。
【解決手段】被貼付面2a上にテープ1を所定の貼付方向に貼り付けるATL装置10であって、押圧部30と、エンド部40と、パラレルリンク機構50と、ベース部60とを有する貼付ヘッド20を備え、パラレルリンク機構50および回動機構70は、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作するものであり、押圧部30とエンド部40との間に、押圧部30を被貼付面2aの形状に応じて所定の回動軸周りに回動可能とする回動機構70、及び回動角検出部90を介装する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付装置であって、
押圧部と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部と、を有する貼付ヘッドを備え、
前記押圧部は、前記テープを前記被貼付面に押圧しつつ前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記エンド部は、前記押圧部を保持するものであり、
前記パラレルリンク機構および回動機構は、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作するものであり、
前記ベース部は、前記パラレルリンク機構の前記エンド部側とは反対側を保持するものであり、
前記押圧部と前記エンド部との間に、前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動可能とする前記回動機構、及び前記押圧部の前記回動軸周りの回動角を検出する回動角検出部が介装されていることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
前記回動機構が、円弧ガイド部と摺動部とを備え、
前記円弧ガイド部は、逆凹状円弧面部を有し、
前記摺動部は、凸状円弧面部を有し、
前記回動角検出部は、ワイヤーエンコーダを含んで構成され、
該ワイヤーエンコーダから引出されたワイヤー端が、前記摺動部の前記凸状円弧面部における回動基準点に取付けられ、
前記回動角の検出が、前記回動基準点の前記凸状円弧面部上の円周方向移動距離に基づいて行われるものであることを特徴とする請求項1記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記回動機構が、円弧ガイド部と摺動部を備え、
前記円弧ガイド部は、逆凹状円弧面部を有し、
前記摺動部は、凸状円弧面部を有し、
前記摺動部には、アールガイドが添設され、
該アールガイドは、凸状円弧面部を有し、
前記回動角検出部が、前記アールガイド及びワイヤーエンコーダを含んで構成され、
該ワイヤーエンコーダから引出されたワイヤー端が、前記アールガイドの前記凸状円弧面部の回動基準点に取付けられ、
前記回動角の検出が、前記回動基準点の前記凸状円弧面部上の円周方向移動距離に基づいて行われるものであることを特徴とする請求項1記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記回動機構は、前記被貼付面の形状に応じて前記押圧部を従動させるものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のテープ貼付装置。
【請求項5】
前記押圧部は、前記被貼付面への押圧時に線状押圧領域を形成するものであり、
前記回動機構は、前記線状押圧領域内又はその延長上の任意の1点を通り、前記貼付方向に平行な軸を回動中心として前記押圧部を回動可能とするものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のテープ貼付装置。
【請求項6】
前記任意の1点が、前記線状押圧領域を長手方向に二分する点であることを特徴とする請求項5記載のテープ貼付装置。
【請求項7】
前記押圧部が、ローラを備えたものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のテープ貼付装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかの項に記載のテープ貼付装置を用いて、前記被貼付面上に前記テープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付方法であって、
前記パラレルリンク機構および回動機構により、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させつつ、
前記回動機構により前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動させると共に、この回動角を前記回動角検出部により検出し、検出した前記回動角を前記貼付ヘッドの制御部にフィードバックし、前記貼付ヘッドをフィードバック制御しながら前記テープを前記被貼付面上に貼り付けていくことを特徴とするテープ貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープ貼付装置、及びテープ貼付方法に関し、より詳細には、テープを被貼付面に貼り付けることにより、繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造する際に用いられるテープ貼付装置、及びテープ貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め樹脂が含浸された炭素繊維等の繊維束をテープ状に成形したもの(プリプレグテープ、UDテープなどとも呼ぶ)を被貼付面に貼付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品を製造する方法が知られている。
【0003】
これらの製法は、ATL(Auto Tape Layup)、AFP(Auto
Fiber Placement)など種々の称呼があるが、これらは厳密に区別されているものでない。本明細書に於いては、テープを押圧しながら被貼付面に貼付けていく製法を総称してATLと呼び、その装置(テープ貼付装置)をATL装置と呼ぶこととする。
【0004】
従来のATL装置の一例が下記の特許文献1に開示されている。
特許文献1記載のATL装置は、多関節ロボットのアーム先端にATLヘッドが取り付けられている。このATLヘッドは、テープを保持搬送するフィーダー、テープ及び/又はワークの被貼付面を加熱するヒータ、及びテープを被貼付面に押圧して貼り付ける押圧ローラを含んで構成されている。
【0005】
前記ワークは、例えば、熱可塑性樹脂の射出成型品であって、様々な形状(3次元形状)を有しており、設計上の形状、寸法に対して誤差を有していることが多い。
そのため、特許文献1に開示されたような前記多関節ロボットによる前記ATLヘッドの姿勢制御では、前記押圧ローラによる前記ワークの被貼付面への押圧が不十分な箇所が生じたり、押圧状態にばらつきが生じることがあり、前記被貼付面に対する押圧ローラの押圧状態を一定に保つことが難しいという課題があった。
【0006】
係る課題を解決するために本出願人らは、下記の特許文献2に開示されたATL装置を提案した。特許文献2記載のATL装置は、ATLヘッドが、押圧部と、パラレルリンク機構とを備えた構成となっている。
【0007】
特許文献2記載のATL装置によれば、前記パラレルリンク機構の動作制御により、ワークの被貼付面にテープを押し付ける前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させることが可能となり、前記ワークが幾らかの形状・寸法誤差を有している場合であっても、前記被貼付面に対する前記押圧部の押圧状態を一定に保つことが可能となり、前記テープの貼付性能を高めることが可能となった。
【0008】
[発明が解決しようとする課題]
図4(a)、(b)は、パラレルリンク機構を備えた従来のATL装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図である。なお、
図4では、テープ1の貼付方向をY軸方向、これと水平面で直交する方向をX軸方向、X軸及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明する。
【0009】
図4(a)、(b)において、ワーク2は、テープ1の貼付方向(Y軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)に傾斜(右傾斜)した被貼付面2aを有している。
図4(a)では、被貼付面2aが、破線で示す設計形状面に対して形状誤差αを有し、
図4(b)では、被貼付面2aが、破線で示す設計形状面に対して形状誤差β(β>α)を有している。
【0010】
貼付ヘッド200は、押圧部3と、エンド部4と、パラレルリンク機構5と、ベース部6とを含んで構成されている。押圧部3は、一点破線で示す回転軸3aa周りに回転可能なローラ3aを有している。
【0011】
図4(a)に示すように、ワーク2の被貼付面2aの形状が幾らかの誤差(形状誤差α)を有している場合であっても、パラレルリンク機構5の制御(インピーダンス制御)によって、形状誤差αが吸収されて、ローラ3aの押圧位置や押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させることが可能となっている。
【0012】
しかしながら、
図4(b)に示すように、被貼付面2aの形状誤差βがパラレルリンク機構5の制御で吸収しきれない程度以上に大きくなると、パラレルリンク機構5の制御だけでは、その誤差を吸収しきれずに、ローラ3aが被貼付面2aに片当たりする状態となり、テープ1を被貼付面2aに押圧できない部分が生じることもあった。
【0013】
パラレルリンク機構5の制御では、前記インピーダンス制御のパラメータ(慣性、粘性等)を調整することにより、形状誤差の吸収代を変えることが可能である。しかしながら、前記吸収代が大きくなるように前記パラメータの調整を行うと、被貼付面2aに対するローラ3aの押圧位置や押圧姿勢の制御精度が低下し、被貼付面2aに対するローラ3aの押圧荷重がばらつきやすくなるという課題があった。
【0014】
そのため、特許文献2記載のATL装置であっても、被貼付面に対するローラの押圧位置及び/又は押圧姿勢の制御精度を低下させることなく、被貼付面の形状誤差に対する誤差吸収性を高めて、被貼付面2aに対するローラ3aの倣い性を向上させることは容易ではないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2018-149730号公報
【特許文献2】特開2020-147035号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0016】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、被貼付面に対する押圧部の倣い性を向上させることができるテープ貼付装置、及びテープ貼付方法を提供することを目的としている。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係るテープ貼付装置(1)は、被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付装置であって、
押圧部と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部と、を有する貼付ヘッドを備え、
前記押圧部は、前記テープを前記被貼付面に押圧しつつ前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記エンド部は、前記押圧部を保持するものであり、
前記パラレルリンク機構および回動機構は、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作するものであり、
前記ベース部は、前記パラレルリンク機構の前記エンド部側とは反対側を保持するものであり、
前記押圧部と前記エンド部との間に、前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動可能とする前記回動機構、及び前記押圧部の前記回動軸周りの回動角を検出する回動角検出部が介装されていることを特徴としている。
【0018】
上記テープ貼付装置(1)によれば、前記パラレルリンク機構および前記回動機構により、前記被貼付面に対する前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢の制御精度を高く維持することができる。
また、前記パラレルリンク機構により前記エンド部の制御を行いつつ、前記回動機構により前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動させることにより、前記被貼付面の形状誤差に対する誤差吸収性を高め、前記被貼付面に対する前記押圧部の倣い性を向上させることができる。
【0019】
さらに、前記押圧部の前記回動軸周りの回動角を検出する回動角検出部を備えているので、該回動角検出部で検出された前記押圧部の姿勢を、前記パラレルリンク機構による前記エンド部の制御に反映させることができる。そのため、前記押圧部による前記被貼付面の法線方向からの前記被貼付面に対する押圧動作をより正確に行えるものとすることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係るテープ貼付装置(2)は、上記テープ貼付装置(1)において、
前記回動機構が、円弧ガイド部と摺動部とを備え、
前記円弧ガイド部は、逆凹状円弧面部を有し、
前記摺動部は、凸状円弧面部を有し、
前記回動角検出部は、ワイヤーエンコーダを含んで構成され、
該ワイヤーエンコーダから引出されたワイヤー端が、前記摺動部の前記凸状円弧面部における回動基準点に取付けられ、
前記回動角の検出が、前記回動基準点の前記凸状円弧面部上の円周方向移動距離に基づいて行われるものであることを特徴としている。
【0021】
前記摺動部の回転半径は設計値であるため、前記回動基準点からの前記凸状円弧面部上の円周方向移動距離(変位量)を測定することにより、前記押圧部の前記回動軸周りの回動角を検出(換算)することが可能となる。
上記テープ貼付装置(2)によれば、前記回動角検出部が、前記ワイヤーエンコーダを含んで構成されているため、リニアスケールを用いた場合などに比べて前記回動角検出部を安価に構成することが可能となる。
しかも、ラック&ピニオン機構を用いた場合に生じ易いバックラッシュによる測定誤差も生じさせることもなく、前記回動角の検出を正確に行うことができ、そのため、前記押圧部による前記被貼付面の法線方向からの前記被貼付面に対する押圧動作をより正確に行えるものとすることができる。
【0022】
また、本発明に係るテープ貼付装置(3)は、上記テープ貼付装置(1)において、
前記回動機構が、円弧ガイド部と摺動部を備え、
前記円弧ガイド部は、逆凹状円弧面部を有し、
前記摺動部は、凸状円弧面部を有し、
前記摺動部には、アールガイドが添設され、
該アールガイドは、凸状円弧面部を有し、
前記回動角検出部が、前記アールガイド及びワイヤーエンコーダを含んで構成され、
該ワイヤーエンコーダから引出されたワイヤー端が、前記アールガイドの前記凸状円弧面部の回動基準点に取付けられ、
前記回動角の検出が、前記回動基準点の前記凸状円弧面部上の円周方向移動距離に基づいて行われるものであることを特徴としている。
【0023】
上記テープ貼付装置(3)によれば、前記摺動部への前記アールガイドの添設により、前記アールガイドの前記凸状円弧面部に前記回動基準点を設けることが可能となり、前記摺動部に前記回動基準点を設ける場合に比べて前記回動角検出部の形成が容易となる。
【0024】
また、本発明に係るテープ貼付装置(4)は、上記テープ貼付装置(1)~(3)のいずれかにおいて、
前記回動機構は、前記被貼付面の形状に応じて前記押圧部を従動させるものであることを特徴としている。
【0025】
上記テープ貼付装置(4)によれば、前記回動機構が、前記被貼付面の形状に応じて前記押圧部を従動させるものであるので、前記被貼付面の形状誤差に対する即応性が高く、また、前記押圧部を前記被貼付面に低押付荷重で倣わせることが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るテープ貼付装置(5)は、上記テープ貼付装置(1)~(4)のいずれかにおいて、
前記押圧部は、前記被貼付面への押圧時に線状押圧領域を形成するものであり、
前記回動機構は、前記線状押圧領域内又はその延長上の任意の1点を通り、前記貼付方向に平行な軸を回動中心として前記押圧部を回動可能とするものであることを特徴としている。
【0027】
上記テープ貼付装置(5)によれば、前記回動機構によって、前記任意の1点を通り、前記貼付方向に平行な軸の周りに前記押圧部を回動させることが可能となる。したがって、前記パラレルリンク機構の制御動作で吸収しきれない形状誤差を被貼付面が有している場合であっても、前記押圧部を前記被貼付面に精度良く倣わせることが可能となり、前記被貼付面に対する前記押圧部の倣い性能を高めることができる。
【0028】
また、本発明に係るテープ貼付装置(6)は、上記テープ貼付装置(5)において、
前記任意の1点が、前記線状押圧領域を長手方向に二分する点であることを特徴と
している。
【0029】
上記テープ貼付装置(6)によれば、前記任意の1点が、前記線状押圧領域を長手方向に二分する点であるので、前記二分する点を通り、前記貼付方向に平行な軸の周りに前記押圧部を回動させることができる。そのため、前記被貼付面に対して前記押圧部を一定の押圧状態で精度良く倣わせることができ、前記被貼付面に対する前記テープの貼付性能を高めることができる。
【0030】
また、本発明に係るテープ貼付装置(7)は、上記テープ貼付装置(1)~(6)のいずれかにおいて、
前記押圧部が、ローラを備えたものであることを特徴としている。
【0031】
上記テープ貼付装置(7)によれば、前記押圧部が、前記ローラを備えているので、該ローラにより前記テープが前記被貼付面に押圧されつつ、前記テープが前記被貼付面に貼り付けられる。したがって、前記ローラによる前記被貼付面への前記テープの貼付動作において、上記テープ貼付装置(1)~(6)の所定の効果を得ることができる。
【0032】
また、本発明に係るテープ貼付方法は、上記テープ貼付装置(1)~(7)のいずれかを用いて、前記被貼付面上に前記テープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付方法であって、
前記パラレルリンク機構及び前記回動機構により、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させつつ、
前記回動機構により前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動させると共に、この回動角を前記回動角検出部により検出し、検出した前記回動角を前記貼付ヘッドの制御部にフィードバックし、前記貼付ヘッドをフィードバック制御しながら前記テープを前記被貼付面上に貼り付けていくことを特徴としている。
【0033】
上記テープ貼付方法によれば、前記パラレルリンク機構及び前記回動機構により、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させることにより、前記被貼付面に対する前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢の制御精度を高く維持することができる。
また、前記パラレルリンク機構により前記エンド部の制御を行いつつ、前記回動機構により前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動させることにより、前記被貼付面の形状誤差に対する誤差吸収性を高め、前記被貼付面に対する前記押圧部の倣い性を向上させることができる。
【0034】
しかも、前記回動角を前記回動角検出部により検出し、検出した前記回動角を前記貼付ヘッドの制御部にフィードバックし、前記貼付ヘッドをフィードバック制御しながら前記テープを前記被貼付面上に貼り付けていくので、前記回動角検出部で検出された前記押圧部の姿勢を、前記パラレルリンク機構による前記エンド部の制御に反映させることができる。そのため、前記押圧部による前記被貼付面の法線方向からの前記被貼付面に対する押圧動作をより正確に行わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施の形態(1)に係るATL装置におけるATLヘッドの構成例を示す模式図である。
【
図2】(a)、(b)は、実施の形態(1)に係るATL装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態(2)に係るATL装置におけるATLヘッドの構成例を示す模式図である。
【
図4】(a)、(b)は、従来のATL装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るテープ貼付装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態(1)に係るATL装置におけるATLヘッドの構成例を示す模式図である。
ATL装置10は、本発明に係るテープ貼付装置の一例であり、ATLヘッド20は、貼付ヘッドの一例である。
なお、以下の説明では、テープ1の貼付方向をY軸方向、これと水平面で直交する方向をX軸方向、X軸及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明する。
【0037】
ATL装置10は、ワーク2の被貼付面2a上にテープ1を所定の貼付方向(Y軸方向)に貼り付けることにより、テープ1で補強された成型品を製造するための装置であり、ATLヘッド20を含んで構成されている。
【0038】
テープ1は、例えば、繊維束の少なくとも一部に予め樹脂を含浸させてテープ状にしたもので構成され、熱可塑性の樹脂が含浸されたもの(UDテープとも呼ばれる)や、熱硬化性の樹脂が含浸されたもの(プリプレグテープとも呼ばれる)などが適用され得る。
テープ1は、炭素繊維を含むものでもよいし、樹脂テープに多数の短い繊維が混ぜ込まれたものでもよい。
テープ1は、ワーク2の材質などに応じて、その種類が適宜選択され得る。また、テープ1は、複数のテープが並列に配置された形態のものであってもよい。
ワーク2は、例えば、3次元形状を有する成型品であり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂製の成型品であってもよいし、アルミニウムなどの金属製の成型品であってもよい。
【0039】
ATLヘッド20は、ハンドリングロボット80に取り付けられている。ハンドリングロボット80は、汎用産業用ロボット、例えば、ガントリ構造体(直交座標形機構ともいう)で構成されていてもよいし、多関節ロボット(シリアル多関節機構ともいう)で構成されていてもよい。
ハンドリングロボット80は、ATLヘッド20を少なくともXYZ軸方向に並進運動可能な機構(3自由度)を備えているものが好ましい。ハンドリングロボット80の動作制御は、ロボット制御部80aにより実行される。
【0040】
ATLヘッド20は、押圧部30と、エンド部40と、パラレルリンク機構50と、ベース部60とを含んで構成され、さらに押圧部30とエンド部40との間に回動機構70と回動角検出部90が介装されて構成されている。
【0041】
押圧部30は、テープ1をワーク2の被貼付面2aに押圧しつつテープ1を被貼付面2aに貼り付けていくものである。
エンド部40は、押圧部30を保持するものであり、エンド部40のパラレルリンク機構50が取り付けられた面とは反対側の面に回動機構70が取り付けられ、この回動機構70を介して押圧部30が取り付けられている。
【0042】
パラレルリンク機構50は、エンド部40を制御し、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aに倣うように動作させるものである。
ベース部60は、パラレルリンク機構50のエンド部40側とは反対側を保持するものであり、ベース部60にハンドリングロボット80が取り付けられている。
回動機構70は、押圧部30を被貼付面2aの形状に応じて所定の回転軸周り(
図1では、ロール(θy)方向)に回動可能とするものである。
回動角検出部90は、押圧部30の前記回動軸周りの回動角を検出するものである。
【0043】
押圧部30は、テープ1を押圧するローラ31を有し、さらにローラ31を回転軸31a周りに回転可能に支持するローラ支持部32を備えている。
ローラ支持部32は、ローラ31の長手(回転軸31a)方向両側に配設されている。
ローラ31は、被貼付面2aへの押圧時に線状押圧領域31bを形成する。
【0044】
ローラ31は、テープ1の特性、又はワーク2の材質などに応じて、樹脂製ローラ、弾性ローラ、又は金属性ローラなどで構成され得る。ローラ31のサイズ(直径、幅)は、使用するテープ1の種類やサイズ、ワーク2の種類や形状に応じて適宜選択され得る。
したがって、ローラ31が樹脂製ローラ又は金属製ローラなどの変形しない剛体で構成されている場合、押圧部30におけるテープ1の被貼付面2aへの押圧に寄与する部分となる線状押圧領域31bは線状となる。
【0045】
また、ローラ31が弾性ローラなどの若干変形する部材で構成されている場合、線状押圧領域31bは線幅を有する細長い面状となる。
なお、別の構成例では、ローラ31に代えて、押圧シュー等の押圧部材が用いられてもよく、この場合、線状押圧領域31bは、ある程度の幅を有する面状となる。このように線状押圧領域31bは、押圧部30におけるテープ1の被貼付面2aへの押圧に寄与する部分を示し、その部分の形状は線状の他、面状であってもよい。
【0046】
パラレルリンク機構50は、ベース部60とエンド部40との間に並列に設けられる複数のリンク部51を備えている。これら各リンク部51は、両端に自在継手52、53と、これら自在継手52、53の間に設けられるアクチュエータとしてのエアシリンダ54とを含んで構成されている。リンク部51の本数は特に限定されないが、例えば、リンク部51は4本で構成されてもよいし、3本~6本のいずれかの本数で構成されてもよい。
【0047】
エアシリンダ54は、例えば、シリンダ部54aと、シリンダ部54a内の圧力に応じてシリンダ部54aを進退するロッド部54bと、シリンダ部54a内の圧力を検出する圧力センサ54cと、ロッド部54bの変位を検出する変位センサ54dとを備えている。
【0048】
シリンダ部54aは、圧力センサ54cを介してサーボバルブ54eに接続されている。サーボバルブ54eは、シリンダ部54a内に対する空気の流入量や排気量を調整し、シリンダ部54aの両室の差圧を制御する。
サーボバルブ54eは、圧縮空気を出力するコンプレッサなどの空気圧供給部54fに接続されている。圧力センサ54cで検出された圧力信号と、変位センサ54dで検出された変位信号とは、それぞれATLヘッド制御部54gに出力される。
【0049】
ATLヘッド制御部54gには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データの他、これら3次元座標データ、圧力信号、変位信号などに基づいてATLヘッド20各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。
ATLヘッド制御部54gは、汎用のコンピューター装置で構成されていてもよい。また、ATLヘッド制御部54gとロボット制御部80aとが1つの制御部で構成されていてもよい。
【0050】
パラレルリンク機構50は、複数のリンク部51の各々の長さをエアシリンダ54でそれぞれ制御することにより、エンド部40の位置(並進)及び/又は姿勢(回転)を変化させて、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させる機能を備えている。
【0051】
パラレルリンク機構50には、エンド部40を変位させることにより、ローラ31を少なくともロール(θy)方向、及びピッチ(θx)方向に回動可能な自由度を有するものを採用することが好ましい。
また、パラレルリンク機構50の自由度は、ハンドリングロボット80の動作機能(自由度)を考慮して設定してもよい。あるいは、ハンドリングロボット80の動作機能に関わらず、パラレルリンク機構50が、6自由度機構、すなわち、6方向(並進3方向、回転3方向)に運動させる機構を備えていてもよい。
【0052】
ATLヘッド制御部54gは、各エアシリンダ54の圧力センサ54cや変位センサ54dから取り込んだ検出信号を用いて、各エアシリンダ54のサーボバルブ54eの動作(加圧動作又は減圧動作)を制御する。
そして、ATLヘッド制御部54gは、サーボバルブ54eの動作制御により、各エアシリンダ54のシリンダ部54a内の圧力及び/又はロッド部54bの変位を制御して、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面2aの形状に倣うようにエンド部40の変位を制御する処理を実行する。
【0053】
ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の変位制御において、望ましいコンプライアンス特性を得る観点からインピーダンス制御を行うように構成されていることが好ましい。
このインピーダンス制御では、エンド部40に慣性、粘性、剛性からなる機械的インピーダンスを仮想的に実現させるようアクチュエータ推力が制御される。
例えば、前記インピーダンス制御では、目標インピーダンスである慣性、粘性、剛性のパラメータが設定される。そして、エンド部40の位置及び姿勢の目標値に対するエンド部40の変位を計測し、エンド部40の変位とエンド部40が外部へ与える力との関係が所定の関係(インピーダンス制御則)を満たすようにパラレルリンク機構50の動作を制御する。
【0054】
また、ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の変位を制御する際に、目標とするエンド部40の位置及び姿勢を実現するための各エアシリンダ54のロッド部54bの突出長さ(変位)を計算する。そして、これら計算値が各エアシリンダ54のロッド部54bの突出長さの目標値として記憶される。
ATLヘッド制御部54gは、これら記憶された目標値と、貼付動作時における各エアシリンダ54の変位センサ54dの出力値とを比較して、目標値になるようにフィードバック制御を行ってもよい。
【0055】
なお、前記目標値には、ワーク2の形状誤差が加味された、各エアシリンダ54のロッド部54bの突出長さが設定されてもよい。
また、目標とするエンド部40の位置及び姿勢は、ワーク2の3次元座標データに基づく動作軌跡に対し、直交する方向(法線方向)からローラ31で被貼付面2aを押圧するためのエンド部40の位置及び姿勢である。
【0056】
回動機構70は、ローラ31の線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを通り、テープ1の貼付方向(Y軸方向)に平行な軸の周り(すなわち、ロール(θy)方向)に押圧部30を回動させることが可能な構成となっている。
回動機構70は、被貼付面2aの形状に応じて押圧部30を従動させるもの、換言すれば、外部から動力供給を必要としない受動機構であることが好ましい。
【0057】
回動機構70は、ゴニオステージなどの傾斜ステージ機構などを利用して構成することができ、例えば、エンド部40に取り付けられた円弧ガイド部71と、円弧ガイド部71に摺動可能な態様で取り付けられた摺動部72とを含んで構成されている。摺動部72に押圧部30のローラ支持部32が取り付けられている。
【0058】
円弧ガイド部71は、下面に円弧形状をした逆凹状円弧面部71aを有し、摺動部72は、上面に円弧ガイド部71の逆凹状円弧面部71aと略同じ円弧形状をした凸状円弧面部72aを有している。
円弧ガイド部71の逆凹状円弧面部71aは、ローラ31に形成される線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを略中心とする円弧形状に形成されている。
【0059】
また、円弧ガイド部71の逆凹状円弧面部71aと摺動部72の凸状円弧面部72aとの摺動面には、円弧動作用のガイド機構73が設けられている。
ガイド機構73は、摺動部72を円弧ガイド部71の逆凹状円弧面部71aに沿って円弧動作可能にする機構であればよく、例えば、リニアボール機構、アリ溝機構、又はクロスローラ機構などが採用され得る。
【0060】
摺動部72の凸状円弧面部72aが円弧ガイド部71の逆凹状円弧面部71aに沿って所定方向(本例ではX軸方向)に受動的に摺動することにより、摺動部72は、線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを略中心とする円弧上を摺動可能な構成となっている。
【0061】
本実施の形態では、点Cが、被貼付面2aに対するローラ31の接触中心点であるTool Center Point(TCPともいう)にも対応しており、回動機構70は、点Cを通るY軸方向の軸を中心にしてローラ31を回動可能な構成となっている。
別の実施の形態では、回動機構70が、点Cとは異なる線状押圧領域31b内又はその延長上の任意の1点が回動中心となるように構成されていてもよい。
【0062】
本実施の形態では、押圧部30とエンド部40との間にさらに回動角検出部90が介装されている。回動角検出部90は、点Cを通るY軸方向の軸を中心にして回動する押圧部30(ローラ31)の回動角を検出するものであり、円弧ガイド部71に取り付けられるワイヤーエンコーダ91と、このワイヤーエンコーダ91から引出されたワイヤー端が、摺動部72の凸状円弧面部72aにおける回動基準点Rに取付けられ、前記回動角の検出が、回動基準点Rの凸状円弧面部72a上の円周方向移動距離(変位量)に基づいて行われるように構成されている。
【0063】
摺動部72の回転半径は設計値であるため、摺動部72の凸状円弧面部72aにおける回動基準点Rの円周方向の移動距離(変位量)を測定することにより、押圧部30(ローラ31)の回動角を検出(換算)することが可能となっている。
回動角検出部90で検出された押圧部30の回動角を、ATLヘッド制御部54gに送信し、パラレルリンク機構50によるエンド部40の制御に反映させることが可能となっている。
【0064】
回動角検出部90は、円弧ガイド部71に対する摺動部72の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出可能な装置となっており、回動角検出部90で円弧ガイド部71に対する摺動部72の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出することにより、エンド部40に対する押圧部30の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出することが可能となっている。
【0065】
そしてATLヘッド制御部54gは、回動角検出部90で検出された、円弧ガイド部71に対する摺動部72の姿勢を、パラレルリンク機構50によるエンド部40を変位させる制御に反映させる処理を行う。
すなわち、ATLヘッド制御部54gは、パラレルリンク機構50の制御動作時に回動角検出部90で検出された摺動部72の姿勢、換言すれば押圧部30の姿勢に関する検出信号を取り込み、各エアシリンダ54の圧力センサ54cや変位センサ54dから取り込んだ検出信号とともに、エンド部40を変位させる制御パラメータとして用いる。
【0066】
ATLヘッド制御部54gは、これら制御パラメータを用いて、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面2aの形状に倣うように各エアシリンダ54のサーボバルブ54eの動作(例えば、シリンダ部54a内の圧力、及び/又はロッド部54bの変位)を制御する処理を実行する。
例えば、パラレルリンク機構50による押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢の制御において、回動角検出部90で検出される摺動部72のロール(θy)方向の傾き、変位量が小さくなるようにフィードバック制御が行われてもよい。
【0067】
本実施の形態(1)に係るATL装置10によれば、パラレルリンク機構50によりエンド部40を変位させる制御で吸収しきれない形状誤差を被貼付面2aが有している場合であっても、回動機構70による押圧部30のロール(θy)方向の受動的な回動動作により、ローラ31が被貼付面2aに倣いやすい構造となっている。
【0068】
しかも、回動機構70、及び円弧ガイド部71に対する摺動部72の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出可能な回動角検出部90を備えているので、回動角検出部90で検出された押圧部30の姿勢を、パラレルリンク機構50によるエンド部40の制御に反映させることができる。
【0069】
したがって、パラレルリンク機構50の制御動作で吸収しきれない大きさの形状誤差を被貼付面2aが有している場合であっても、摺動部72のロール(θy)方向の傾き(
図2(b)に示す角度θy1)が小さくなるように、パラレルリンク機構50でエンド部40を制御することができる。そのため、被貼付面2aに対して押圧部30を法線方向(A方向)から押圧する動作をより正確に行わせることが可能となる。
【0070】
図2(a)、(b)は、本実施の形態(1)に係るATL装置10でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図であり、ATLヘッド20の貼付動作の一例を説明するための図である。
ワーク2は、テープ1の貼付方向(Y軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)に傾斜(右傾斜)した被貼付面2aを有している。
図2(a)では、被貼付面2aが、破線で示す設計形状面に対して形状誤差αを有し、
図2(b)では、被貼付面2aが、破線で示す設計形状面に対して形状誤差β(β>α)を有している。
【0071】
図2(a)に示すように、ワーク2の被貼付面2aの形状に幾らかの形状誤差αが生じている場合、ATLヘッド制御部54gによるパラレルリンク機構50の制御(インピーダンス制御)によって、形状誤差αが吸収されるようにエンド部40を変位させて、被貼付面2aの形状に倣うようにローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が制御される。そして、被貼付面2aに対し法線方向(A方向)からローラ31が押し当てられて、ローラ31に線状押圧領域31bが形成される。
【0072】
ワーク2の被貼付面2aの形状誤差βがパラレルリンク機構50による制御動作で吸収しきれない程度の大きさになると、従来のATL装置では、
図4(b)に示したように、例えば、ローラ3aが被貼付面2aに片当たりするような状態になった。
【0073】
一方、
図2(b)に示すように、ATLヘッド20では、上記形状誤差βを吸収しきれない状態、例えば、ローラ31が被貼付面2aに片当たりしそうな状態になると、被貼付面2aからローラ31に作用する押し当て反力によって、回動機構70の摺動部72が円弧ガイド部71上を受動的に摺動し始める。
すなわち、回動機構70の摺動部72が、押圧部30とともに、被貼付面2aの形状誤差βに応じて、ローラ31の線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを通り、貼付方向(Y軸方向)に平行な軸周り(ロール(θy)方向)に回動し始める。
【0074】
そして、摺動部72が、押圧部30とともに、エンド部40からの垂線に対して右方向に角度θy1だけ回動し、ローラ31が、形状誤差βを有する被貼付面2aの形状に倣った状態となり、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が、被貼付面2aに対して法線方向(A方向)から押し当てることができる状態に受動的に調整される。
【0075】
さらに、回動機構70、及び円弧ガイド部71に対する摺動部72の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出可能な回動角検出部90を備えているので、回動角検出部90で検出された押圧部30の姿勢を、パラレルリンク機構50によるエンド部40の制御に反映させることができる。
【0076】
したがって、パラレルリンク機構50の制御動作で吸収しきれない大きさの形状誤差を被貼付面2aが有している場合であっても、摺動部72のロール(θy)方向の傾き(
図2(b)に示す角度θy1)が小さくなるように、パラレルリンク機構50でエンド部40の制御が行われる。そのため、被貼付面2aに対して押圧部30を法線方向(A方向)から押圧する動作がより正確に行われることとなる。
【0077】
本実施の形態(1)に係るATL装置10によれば、パラレルリンク機構50によりエンド部40を変位させて、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させることにより、被貼付面2aに対する押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢の制御精度を高く維持することができる。
【0078】
また、パラレルリンク機構50によりエンド部40を変位させる制御を行いつつ、回動機構70により少なくとも押圧部30を被貼付面2aの形状に応じて所定の回動軸(点C(=TCP)を通り、Y軸に平行な軸)周りに回動させることにより、被貼付面2aの形状誤差に対する誤差吸収性を高め、被貼付面2aに対する押圧部30の倣い性を向上させることができる。
【0079】
さらに、回動機構70、及び円弧ガイド部71に対する摺動部72の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出可能な回動角検出部90を備えているので、回動角検出部90で検出された押圧部30の姿勢を、パラレルリンク機構50によるエンド部40の制御に反映させることができる。
【0080】
したがって、パラレルリンク機構50の制御動作で吸収しきれない大きさの形状誤差を被貼付面2aが有している場合であっても、摺動部72のロール(θy)方向の傾き(
図2(b)に示す角度θy1)が小さくなるように、パラレルリンク機構50でエンド部40の制御を行うことができる。そのため、被貼付面2aに対して押圧部30を法線方向(A方向)から押圧する動作をより正確に行わせることが可能となる。
【0081】
なお、本実施の形態(1)では、パラレルリンク機構50を構成するアクチュエータが、空気圧で駆動するエアシリンダ54で構成されているが、本発明に適用できるアクチュエータは、エアシリンダ54に限定されるものではない。例えば、油圧シリンダ、又は電動シリンダなどの直動式アクチュエータで構成することも可能である。
【0082】
また、ATL装置10には、テープ1を搬送するフィーダー(搬送手段)、及び/又は該フィーダーからローラ31に送り出されるテープ1及び被貼付面2aの少なくともいずれかを加熱する加熱手段(いずれも図示せず)がさらに装備されていてもよい。前記フィーダーと前記加熱手段とは、例えば、ローラ支持部32に固定された取付ガイド(図示せず)などに取り付けることができる。
【0083】
図3は、実施の形態(2)に係るATL装置におけるATLヘッドの構成例を示す模式図である。なお、
図1に示したATL装置10の各構成部品と同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、その説明を省略することとする。
実施の形態(2)に係るATL装置10Aが、上記実施の形態(1)に係るATL装置10と相違する主な点は、ATLヘッド20Aに設けられた回動角検出部90Aの構成にある。
【0084】
実施の形態(2)に係るATL装置10Aでは、摺動部72に、アールガイド93が添設されており、このアールガイド93は、凸状円弧面部93aを備えており、この凸状円弧面部93a上の回動基準点Rに、ワイヤーエンコーダ91から引出されたワイヤー92端が取付けられている。前記回動角の検出が、回動基準点Rの凸状円弧面部93a上の円周方向移動距離(変位量)に基づいて行われるようになっている。
【0085】
そして回動角検出部90Aで検出された押圧部30の回動角を、ATLヘッド制御部54gaに送信し、パラレルリンク機構50によるエンド部40を変位させる制御に反映させることが可能に構成されている。
【0086】
実施の形態(2)に係るATL装置10Aによれば、上記した実施の形態(1)に係るATL装置10で得られる効果と同様の効果が得られる他、摺動部72へのアールガイド93の添設により、アールガイド93の凸状円弧面部93a上に回動基準点Rを設けることが可能となり、回動基準点Rを摺動部72に設けた実施の形態(1)に係るATL装置10に較べて、ワイヤー92、回動基準点Rを含んで構成される回動角検出部90Aの形成が容易となり、ATL装置全体としての製作が容易となる。
【0087】
上記実施の形態(1)(2)において、被貼付面2aへのテープ1の貼付形態は、テープ1がワーク2の被貼付面2aに順次並べて貼り付けられる形態の他、成型品の品質規格などに応じて、隣り合うテープ1の一部を重ねた状態に貼り付けるようにしてもよいし、隣り合うテープ1同士が重ならない状態(所定の隙間を設けた状態)に貼り付けてもよい。
【0088】
上記実施の形態(1)(2)に係るATL装置10、10Aによれば、ATLヘッド20のパラレルリンク機構50と回動機構70、70Aとにより実現される、被貼付面2aへの倣い貼付動作により、倣い性を向上させることができ、ローラ31を被貼付面2aの法線方向により確実に押圧することが可能となる。
【0089】
そのため、隣り合うテープ1の一部を重ねた状態で貼り付ける場合であっても、また、隣り合うテープ1同士が重ならないように、すなわち、一定の隙間を設けた状態となるように貼り付ける場合であっても、テープ1同士の重なり度合や隙間が一定の安定した貼り付けを行うことができ、テープ1が貼り付けられた成型品の品質を向上させることが可能となる。なお、押圧部30による押圧方向は、被貼付面2aの法線方向に限定されない。
【0090】
また、テープ1は、例えば、炭素繊維などの繊維の集合体である為、テープ1の断面形状が崩れると、成型品の品質に悪影響を与える虞がある。例えば、ローラ31を法線方向に押圧できない場合、ローラ31の軸方向の力が発生し、テープ1のローラ接触面近傍の繊維がずれ、テープ1の断面形状を崩す虞がある。
【0091】
しかしながら、ATL装置10、10Aによれば、ATLヘッド20、20Aのパラレルリンク機構50と回動機構70、70Aとによる、被貼付面2aへの倣い貼付制御により、ローラ31を被貼付面2aの法線方向により確実に押圧することが可能となるため、ローラ31によってテープ1の断面形状が崩れる虞がなく、成型品の品質を向上させることが可能となる。
【0092】
また、ATL装置10、10Aによれば、アクチュエータにエアシリンダ54を用いているので、他のシリンダ形式(例えば、油圧シリンダや電動シリンダなど)と比較して、押圧部30を被貼付面2aに押し付けるときの力が吸収又は緩和されやすい構成、いわゆるコンプライアンス特性(受動的な滑らかさ、柔らかさを有する押圧動作)を奏する構成になっている。したがって、回動機構70、70Aにより押圧部30を受動的に回動させる動作も滑らかに行うことができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく、種々の改良、変更、又は構成の組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、テープを被貼付面に貼り付けて3次元形状を有する成型品を製造する場合など、被貼付面に対するテープの貼付性能を高めることが要求されるあらゆる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 テープ
2 ワーク
2a 被貼付面
10、10A ATL装置(テープ貼付装置)
20、20A ATLヘッド(貼付ヘッド)
30 押圧部
31 ローラ
31a 回転軸
31b 線状押圧領域
32 ローラ支持部
40 エンド部
50 パラレルリンク機構
51 リンク部
52、53 自在継手
54 エアシリンダ(アクチュエータ)
54a シリンダ部
54b ロッド部
54c 圧力センサ(圧力検出部)
54d 変位センサ(変位検出部)
54e サーボバルブ
54f 空気圧供給部
54g、54ga ATLヘッド制御部
60 ベース部
70、70A 回動機構
71 円弧ガイド部
71a 逆凹状円弧面部
72 摺動部
72a 凸状円弧面部
73 ガイド機構
80 ハンドリングロボット
80a ロボット制御部
A 法線方向
C 回動中心点
90、90A 回動角検出部
91 ワイヤーエンコーダ
92 ワイヤー
93 アールガイド
93a 凸状円弧面部
200 貼付ヘッド
3 押圧部
3a ローラ
3aa 回転軸
4 エンド部
5 パラレルリンク機構
6 ベース部