(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142244
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20241003BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20241003BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L29/80 U
H01L29/80 H
H01L29/44 L
H01L21/76 L
H01L29/50 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054353
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】四方 啓太
【テーマコード(参考)】
4M104
5F032
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB14
4M104BB36
4M104CC01
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4M104DD08
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4M104FF02
4M104HH20
5F032AA35
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5F102GB02
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5F102GS01
5F102GS09
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5F102GV05
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC10
5F102HC15
(57)【要約】
【課題】導電性基板上に窒化物半導体層を形成したデバイス構造を有し、電極と導電性基板の間に形成される寄生容量を低減できる窒化物半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された導電性基板101と、導電性基板101の第1面2aに設けられ、半導体素子が形成された窒化物半導体層12を含む基体10と、基体10に設けられ、半導体素子と電気的に接続された埋込電極と、埋込電極と対向する領域において導電性基板101に形成された溝の内部に配置された絶縁体180とを備える。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面と第2面で両面を定義された導電性基板と、
前記導電性基板の前記第1面に設けられ、半導体素子が形成された窒化物半導体層を含む基体と、
前記基体に設けられ、前記半導体素子と電気的に接続された電極と、
前記電極と対向する領域において前記導電性基板に形成された溝の内部に配置された絶縁体と
を備える窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記基体が、
前記第1面に配置された半絶縁層と、
前記半絶縁層に積層された前記窒化物半導体層と
を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁体が、前記半絶縁層を貫通して形成されて前記溝に連通する開口部の内部を埋め込んでいる、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記導電性基板の抵抗率が1Ω・cm以下であり、前記半絶縁層の抵抗率が1×103Ω・cm以上である、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記半絶縁層の抵抗率が1×105Ω・cm以上である、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記半絶縁層は、5μm以上の厚みを有する、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記半絶縁層は、4H-SiC結晶構造を備える、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記半絶縁層は、6H-SiC結晶構造を備える、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記半絶縁層は、3C-SiC結晶構造を備える、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記窒化物半導体層が、
電子走行層と、
前記電子走行層とヘテロ接合を形成する電子供給層と
を備える、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記半導体素子に設けられたドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極を備え、
前記ドレイン電極の一部若しくは前記ゲート電極の一部のいずれか、又は前記ドレイン電極の一部と前記ゲート電極の両方に対向して、前記絶縁体が配置されている、
請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記ソース電極は、前記導電性基板を貫通する導電性部材を介して、前記導電性基板の前記第2面に形成したグランド電極に接続されている、請求項11に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁体は、ペースト剤を含む絶縁体材料を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記絶縁体は、ダイヤモンドライクカーボンを含む絶縁体材料を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
互いに対向する第1面と第2面で両面を定義された導電性基板の前記第1面に、半導体素子が形成された窒化物半導体層を含む基体を形成し、
前記基体をエッチングして開口領域を形成し、
前記開口領域を埋込電極で埋め込み、
前記第2面から前記導電性基板の一部を選択的にエッチングして、前記埋込電極に到達する溝を形成し、
前記溝の内部に絶縁体を形成する
を備える、窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)は高速スイッチングデバイスや高周波増幅デバイスとして広く実用化されている。大きなバンドギャップを有する窒化物半導体をHEMT構造に使用することで、高速動作と高耐圧化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化物半導体のHEMTの電子供給層に例えばAlGaN、InAlGaNなどの材料が用いられる。窒化物半導体用の基板として一般に半絶縁性SiC基板や高抵抗Si基板などの抵抗率が高い基板が使用されているが、一般にこれらの基板は販売価格が高く高コストになる。一方で、導電性基板上に高抵抗層を形成し、その上に窒化物半導体層を形成することで、比較的低コストの導電性基板を使用しながら導電性基板の容量カップリングによる損失を低減する方法も提案されている。しかしながら、上記構造だけでは窒化物半導体層に形成した電極と導電性基板の間に生じる寄生容量を十分に低減することができず、所望の高周波特性が得られていない。
【0005】
本開示の目的は、導電性基板上に窒化物半導体層を形成したデバイス構造を有し、電極と導電性基板の間に形成される寄生容量を低減できる窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様は、互いに対向する第1面と第2面で両面を定義された導電性基板と、導電性基板の第1面に設けられ、半導体素子が形成された窒化物半導体層を含む基体と、基体に設けられ、半導体素子と電気的に接続された電極と、電極と対向する領域において導電性基板に形成された溝の内部に配置された絶縁体とを備える、窒化物半導体装置である。
【0007】
本開示の他の一態様は、互いに対向する第1面と第2面で両面を定義された導電性基板の第1面に半絶縁層を形成し、半絶縁層の上に窒化物半導体層を形成し、窒化物半導体層をエッチングして開口領域を形成し、開口領域を埋込電極で埋め込み、第2面から導電性基板の一部を選択的にエッチングして埋込電極に到達する溝を形成し、溝の内部に絶縁体を形成する、を備える窒化物半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様および他の一態様によれば、導電性基板上に窒化物半導体層を形成したデバイス構造を有し、電極と導電性基板の間に形成される寄生容量を低減できる窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る窒化物半導体装置の平面図である。
【
図2D】
図2Dは、導電性基板と窒化物半導体層を含む基体の積層構造の断面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態の変形例に係る窒化物半導体装置の
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態の変形例に係る窒化物半導体装置の
図1のII-II線沿う断面図である。
【
図3C】
図3Cは、比較例に係る窒化物半導体装置の
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図3D】
図3Dは、比較例に係る窒化物半導体装置の
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図7A】
図7Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図7B】
図7Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図8B】
図8Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図9A】
図9Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図9B】
図9Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図10A】
図10Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図10B】
図10Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図11A】
図11Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図11B】
図11Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図12A】
図12Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
【
図12B】
図12Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の窒化物半導体装置の実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0011】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態又はこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0012】
以下の説明においては、XY平面に広がる基板に垂直な方向をZ方向、Z方向に直交し、電極の延伸する方向をY方向、Z方向およびY方向に垂直な電極の配列する方向をX方向とする。
【0013】
(実施形態)
(窒化物半導体装置の平面レイアウト)
図1は、実施形態に係る窒化物半導体装置の平面図である。窒化物半導体装置1は、絶縁層14と、絶縁層14上に形成されたソース電極18およびドレイン電極20とを含んでいてよい。なお、
図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸向は、後述する導電性基板101の第1面2a(
図2A~
図2C参照)と直交する方向である。本明細書において使用される「平面視」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、Z方向に沿って上方から窒化物半導体装置1を視ることをいう。
【0014】
絶縁層14は、ソース電極18とドレイン電極20とを絶縁することができる任意の絶縁体材料から構成することができる。例えば、絶縁層14は、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiON、AlON、又はそれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0015】
ソース電極18およびドレイン電極20は、1つ又は複数の導電材料から構成することができる。例えば、ソース電極18およびドレイン電極20の各々は、Au、Ti、TiN、Pt、Cu、Al、AlSiCu、AlCu、又はそれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0016】
図1に示すように、ソース電極18は、複数本配置されていてもよい。図示の例では、ソース電極18は、Y方向に延び、かつ複数のソース電極18は、X方向に配列されている。同様に、ドレイン電極20は、ベース部20Aと、ベース部20Aに接続された複数のドレインフィンガー20Bとを含んでいてよい。図示の例では、ベース部20Aは、X方向に延び、かつ複数のドレインフィンガー20Bは、Y方向に延びている。なお、本開示において、X方向およびY方向を、それぞれ「第1方向」および「第2方向」とも呼ぶ。複数のソース電極18と、複数のドレインフィンガー20Bとは、互いに離隔され、交互に配置されていてよい。図示の例では、複数のソース電極18と、複数のドレインフィンガー20Bとは、X方向に交互に並んで配列されている。
【0017】
窒化物半導体装置1は、ゲート配線19Aと、ゲート配線19Aに接続された複数のゲート電極19とを更に含んでいてよい。図示の例では、ゲート配線19Aは、X方向に延び、かつ複数のゲート電極19は、Y方向に延びている。各ゲート電極19は、平面視で複数のソース電極18のうちの1つと、複数のドレインフィンガー20Bのうちの1つとの間に配置されていてよい。図示の例では、各ゲート電極19は、平面視で、X方向に互いに対向するソース電極18とドレインフィンガー20Bとの間に配置されている。ゲート配線19Aは、平面視で、複数のソース電極18と、複数のドレインフィンガー20Bとの間に延びていてよい。ゲート電極19のさらなる詳細については、
図2Aを参照して後述する。
【0018】
窒化物半導体装置1は、平面視で2次元電子ガス層を含む活性領域300と2次元電子ガス層を含まない不活性領域200を含む。
図1において、活性領域300を破線で囲んで示している。
【0019】
(窒化物半導体装置の断面構造)
図2Aは、
図1のI-I線に沿う断面図である。
図2Bは、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図2Cは、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
図2Dは、導電性基板101と、窒化物半導体層12を含む基体10の積層構造の断面図である。
【0020】
窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bとで両面を定義された導電性基板101と、導電性基板101の第1面2aに形成された基体10を含む。導電性基板101は、例えば六方晶系の炭化珪素基板(SiC基板)である。第1面2aおよび第2面2bは、導電性基板101の主面であり、第1面2aを導電性基板101の表面、第2面2bを導電性基板101の裏面とも称する。第1面2aは、第1方向(X方向)および平面視で第1方向と直交する第2方向(Y方向)と平行である。
【0021】
導電性基板101は、例えばオフ角θoffを有するSiC基板である。第1面2aは、c面に対して特定の結晶方向にオフ角θoffで傾斜している。オフ角θoffは、2°以上6°以下であってよい。より好ましくは、オフ角θoffは、3°以上5°以下であってよく、更に好ましくは、3.5°以上4.5°以下であってもよい。なお、本開示において、「c面」という用語は、六方晶系のSiC結晶の(0001)面を指すものとして用いられている。
【0022】
本実施形態では、特定の結晶方向は、[11-20]方向であってよい。すなわち、第1面2aは、c面に対して[11-20]方向に2°以上6°以下のオフ角θoffで傾斜していてよい。なお、本開示の結晶方向や面を表す指数において、マイナス符号が前に付されている数字(例えば、[11-20]方向の場合の「2」)は、バーが上に付された当該数字を意味するものとする。
【0023】
導電性基板101は、4H-SiC結晶構造の4H-SiC基板であってよい。ここで、「4H」とは、SiC結晶のポリタイプを表している。以下では、導電性基板101が4H-SiC基板である場合を例示的に説明する。導電性基板101の抵抗率は、例えば0.01Ω・cm以上0.03Ω・cm以下であってよい。本実施形態では、導電性基板101の抵抗率は、約0.02Ω・cmであってよい。また、導電性基板101の厚さは、例えば30μm以上300μm以下であってよい。本実施形態では、導電性基板101は、150μmの厚さを有していてよい。導電性基板101は、4H-SiC基板の他に、6H-SiC結晶構造のSiC基板であってもよい。また、導電性基板101として、炭化珪素(SiC)の他にシリコン(Si)、サファイア(Al2O3)などの半導体材料を用いてもよい。
【0024】
本実施形態では、
図2Dに示すように、基体10は、導電性基板101の第1面2aに形成された半絶縁層102と、半絶縁層102に積層された窒化物半導体層12を含む。半絶縁層102は、不純物がドーピングされたGaN層であってよい。半絶縁層102にドーピングする不純物は、例えば炭素(C)若しくは鉄(Fe)であってよい。あるいは、不純物は、CおよびFeの両方であってもよい。不純物は、アクセプタ濃度Naとドナー濃度Ndとの差(Na-Nd)が1×10
17cm
-3程度となるようにGaN層にドーピングされていてよい。半絶縁層102の厚さは、1μm以上10μm以下であってよい。本実施形態では、半絶縁層102は、2μmの厚さを有していてよい。導電性基板101と窒化物半導体層12の間に半絶縁層102を配置することにより、導電性基板101と窒化物半導体層12に形成される半導体素子とを電気的に絶縁することができる。例えば、半絶縁層102により、リーク電流を抑制することができる。なお、導電性基板101の第1面2aに窒化物半導体層12を直接に配置できる場合には、導電性基板101と窒化物半導体層12の間に半絶縁層102を配置しなくてもよい。
【0025】
本実施形態では、導電性基板101の抵抗率が1Ω・cm以下であり、半絶縁層102の抵抗率が1×103Ω・cm以上であってよい。本実施形態では、半絶縁層102の抵抗率が1×105Ω・cm以上であってよい。本実施形態では、半絶縁層102は、5μm以上の厚みを有していてもよい。本実施形態では、半絶縁層102は、4H-SiC結晶構造であってもよい。また、半絶縁層102は、6H-SiC結晶構造、若しくは、3C-SiC結晶構造であってもよい。
【0026】
窒化物半導体層12は、電子走行層120と、電子走行層120に積層された電子供給層122を含む。電子走行層120は、半絶縁層102上に形成されていてよい。電子走行層120は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層120は、GaNによって構成することができる。本実施形態では、電子走行層120は、ドナー型不純物がドーピングされたn型GaN層であってよい。別の例では、電子走行層120は、アンドープのGaN層であってもよい。電子走行層120の厚さは、0.05μm以上1μm以下であってよい。本実施形態では、電子走行層120は、約0.2μmの厚さを有していてよい。
【0027】
電子供給層122は、電子走行層120よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。電子供給層122には、例えばAlGaN、InAlGaNなどの材料が用いられる。本実施形態では、電子供給層122は、AlxGa1-xNによって構成されていてよく、ここで、0<X≦1であり、より好ましくは、0.1<X<0.3である。なお、Al組成比が大きくなるほど、AlGaNのバンドギャップは大きくなる。本実施形態では、X=0.2であってよい。電子供給層122の厚さは、1nm以上100nm以下であってよい。本実施形態では、電子供給層122は、約20nmの厚さを有していてよい。
【0028】
電子走行層120と電子供給層122とは、互いに異なる格子定数を有する窒化物半導体によって構成されている。したがって、電子走行層120を構成する窒化物半導体(例えば、GaN)と電子供給層122を構成する窒化物半導体(例えば、AlGaN)とは、格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層120および電子供給層122の自発分極と、ヘテロ接合界面付近の結晶歪みに起因するピエゾ分極とによって、ヘテロ接合界面付近における電子走行層120の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層120と電子供給層122とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の範囲内)において、電子走行層120内に2次元電子ガス層121が形成される。2次元電子ガス層121を、「2DEG」(Two Dimensional Electron Gas)とも表記する。電子走行層120内の2次元電子ガス層121は、窒化物半導体装置1のチャネルとして機能する。電子走行層120に生成される2次元電子ガス層121のシートキャリア密度は、電子供給層122のAl組成比および厚さのうちの少なくとも一方を増加させることにより増加させることができる。
【0029】
上記のように、窒化物半導体層12の活性領域300には、半導体素子としてHEMTが形成されている。後述するように、例えば、窒化物半導体層12の一部に選択的にイオン注入することによりイオン注入層13が形成され、イオン注入層13が形成された領域が不活性領域200として画定される。
【0030】
窒化物半導体装置1は、電子供給層122上に形成された絶縁層14を更に含んでいてよい。絶縁層14に、電子供給層122の表面を露出させるソースコンタクト開口14S、ドレインコンタクト開口14D、およびゲートコンタクト開口14Gが形成されている。ソースコンタクト開口14Sとドレインコンタクト開口14Dとは、X方向に離隔されている。ゲートコンタクト開口14Gは、X方向に離隔されたソースコンタクト開口14Sとドレインコンタクト開口14Dとの間に位置している。本実施形態では、絶縁層14は、SiNであってよい。絶縁層14の厚さは、例えば10nm以上200nm以下であってよい。本実施形態では、絶縁層14は、約100nmの厚さを有していてよい。
【0031】
窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層12上に配置されたゲート電極19、ソース電極18、およびドレイン電極20を含む。ソース電極18とドレイン電極20とは、第1方向(X方向)に離隔されている。ゲート電極19は、第1方向に離隔されたソース電極18とドレイン電極20との間に配置されている。ソース電極18、ドレイン電極20、およびゲート電極19は、2次元電子ガス層121を介した第1方向の電子の走行を可能にするように配置されている。ソース電極18は、ソースコンタクト開口14Sを介して電子供給層122に接している。ドレイン電極20は、ドレインコンタクト開口14Dを介して電子供給層122に接している。ゲート電極19は、ゲートコンタクト開口14Gを介して電子供給層122に接している。
【0032】
ソース電極18およびドレイン電極20は、窒化物半導体層12とオーミックコンタクトを形成することができる任意の材料から構成することができる。本実施形態では、ソース電極18およびドレイン電極20は、Ti層およびAl層を含んでいてよい。その場合、Ti層は、窒化物半導体層12とAl層との間に位置していてよい。一例では、Ti層は、約20nmの厚さを有すると共に、Al層は、約300nmの厚さを有していてよい。別の例では、ソース電極18およびドレイン電極20は、Ta層およびAl層を含んでいてもよい。更に別の例では、ソース電極18およびドレイン電極20は、Ti層、Al層、Ni層、およびAu層を、下からこの順に含んでいてもよい。
【0033】
ゲート電極19は、窒化物半導体層12とショットキー接触する任意の材料から構成することができる。本実施形態では、ゲート電極19は、Ni層およびAu層を含んでいてよい。その場合、Ni層は、窒化物半導体層12とAu層との間に位置していてよい。一例では、Ni層は、10nmの厚さを有すると共に、Au層は、600nmの厚さを有していてよい。
【0034】
ゲート電極19は、第1方向(X方向)に離隔されたソース電極18とドレイン電極20との間に配置されると共に、第2方向(Y方向)に延びている(
図1参照)。また、ソース電極18およびドレイン電極20も、第2方向(Y方向)に延びている。すなわち、第2方向(Y方向)に延びるソース電極18、ゲート電極19、およびドレイン電極20は、この順に、第1方向(X方向)に並んでいる。したがって、ソース電極18とドレイン電極20との間において、電子走行層120の2次元電子ガス層121を介して第1方向(X方向)に電子が走行することができる。ソース電極18、ゲート電極19、およびドレイン電極20は、第1方向(X方向)(すなわち電子走行方向)が、導電性基板101の特定の結晶方向(例えば、[11-20])と所定の関係を満たすように配置されている。
【0035】
図2A~
図2Cを参照した上記の説明では、1つのソース電極18、1つのドレイン電極20、およびこれらの間に配置されたゲート電極19に焦点を当てているが、窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層12上に配置された複数のゲート電極19、複数のソース電極18、および複数のドレイン電極20を含んでいてよい。複数のソース電極18の各々は、共通に接続することができる。同様に、複数のドレイン電極20の各々は、複数のドレインフィンガー20B(
図1参照)のうちの1つに接続することができる。複数のソース電極18と、複数のドレイン電極20とは、第1方向(X方向)に交互に配置することができる。また、複数のゲート電極19の各々は、複数のソース電極18のうちの1つと複数のドレイン電極20のうちの1つとの間に配置することができる。
【0036】
以下において、導電性基板101の第1面2a側に配置された電極を「表面電極」又は単に「電極」とも称する。例えば、ソース電極18、ベース部20Aとドレインフィンガー20Bを含むドレイン電極20、ゲート電極19とゲート配線19Aは、表面電極である。
【0037】
窒化物半導体装置1の活性領域300では、窒化物半導体層12は、
図2Aに示すように、電子走行層120と、電子走行層120とヘテロ接合を形成する電子供給層122を備える。つまり、活性領域300では、電子走行層120は、電子供給層122との界面に2次元電子ガス層121を備える。言い換えると、活性領域300は、平面視で2次元電子ガス層121を含む領域である。一方、不活性領域200は、平面視で2次元電子ガス層121を含まない領域である。言い換えると、不活性領域200は、窒化物半導体装置1の主電流が流れない領域である。
【0038】
上記のように、実施形態に係る窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された導電性基板101と、導電性基板101の第1面2aに設けられ、半導体素子が形成された窒化物半導体層12を含む基体10を備える。更に、窒化物半導体装置1は、基体10に設けられ、窒化物半導体層12に形成された半導体素子と電気的に接続された表面電極を備える。更に、窒化物半導体装置1は、
図2Aに示す第1埋込電極22A、
図2Bに示す第2埋込電極22B、および
図2Cに示す第3埋込電極22Cを備える。
【0039】
図2Aに示すように、ソース電極18は、絶縁層14と窒化物半導体層12に形成された開口部に配置された第1埋込電極22Aを介して、ソース電極18と対向する領域において導電性基板101を貫通する貫通電極24Eと電気的に接続されている。第1埋込電極22Aは、貫通電極24Eを介して、導電性基板101の第2面2bに配置された裏面電極24Bと電気的に接続されている。裏面電極24Bは、例えば窒化物半導体装置1のグランド電極である。ソース電極18は、導電性基板101を貫通する導電性部材である第1埋込電極22Aを介して、導電性基板101の第2面2bに形成したグランド電極に接続されている。
【0040】
図2Bに示すように、ドレイン電極20のベース部20Aは、第2埋込電極22Bの上に配置されている。第2埋込電極22Bは、絶縁層14と窒化物半導体層12に形成された開口部に配置されている。第2埋込電極22Bは、ドレイン電極20と電気的に接続された表面電極である。ベース部20Aとドレインフィンガー20Bを含むドレイン電極20および第2埋込電極22Bにより、ドレイン電極が構成されている。
【0041】
図2Cに示すように、ゲート電極19と接続されたゲート配線19Aは、第3埋込電極22Cの上に配置されている。第3埋込電極22Cは、絶縁層14と窒化物半導体層12に形成された開口部に配置されている。第3埋込電極22Cは、ゲート電極19と電気的に接続された表面電極である。ゲート電極19とゲート配線19Aおよび第3埋込電極22Cにより、ゲート電極が構成されている。
【0042】
図2Bおよび
図2Cに示すように、窒化物半導体装置1は、第2埋込電極22Bおよび第3埋込電極22Cと対向する領域において導電性基板101に形成された溝の内部に配置された絶縁体180を備える。言い換えると、窒化物半導体装置1は、表面電極と対向する領域において導電性基板101に形成された溝の内部に配置された絶縁体180を備える。
図2Bおよび
図2Cに示すように、絶縁体180が、導電性基板101を貫通する溝の内部を完全に埋め込んでもよい。本実施形態では、
図2Bおよび
図2Cに示すように、導電性基板101に形成された溝に連通し、半絶縁層102を貫通して形成された開口部の内部を、絶縁体180が埋め込んでいる。
【0043】
上記のように、窒化物半導体装置1では、不活性領域200において、ドレイン電極20と電気的に接続する第2埋込電極22Bと裏面電極24Bとの間に絶縁体180が設けられている。また、ゲート電極19と電気的に接続する第3埋込電極22Cと裏面電極24Bとの間に絶縁体180が設けられている。つまり、窒化物半導体装置1では、表面電極の一部の直下の導電性基板101が除去されて、絶縁体180が設けられている。表面電極の直下の導電性基板101が除去されているため、表面電極と導電性基板101の間に形成される寄生容量が低減される。更に、絶縁体180により、表面電極と裏面電極24Bの間の寄生容量が低減される。
【0044】
なお、上記では第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cの両方に対向して絶縁体180が配置されている例を示した。しかし、第2埋込電極22Bと対向するように絶縁体180を配置し、第3埋込電極22Cと対向する絶縁体180を配置しなくてもよい。若しくは、第2埋込電極22Bと対向する絶縁体180を配置せず、第3埋込電極22Cと対向するように絶縁体180を配置してもよい。第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cのいずれか一方と対向するように絶縁体180を配置した場合にも、表面電極と導電性基板101の間の寄生容量を低減することができる。
【0045】
以上に説明したように、窒化物半導体装置1は、基体10に設けられたドレイン電極の一部若しくはゲート電極の一部のいずれか、又はドレイン電極の一部とゲート電極の両方に対向して、導電性基板101に形成された溝の内部に絶縁体180が配置される。このため、表面電極と導電性基板101の間に形成される寄生容量が低減される。その結果、例えば、窒化物半導体装置1の高周波特性の低下が抑制される。
【0046】
なお、活性領域300においては、表面電極と導電性基板101の間に2次元電子ガス層121が形成されているため、表面電極と導電性基板101の間の寄生容量による窒化物半導体装置1に対する影響は小さい。一方、不活性領域200では、ゲート配線19Aおよびベース部20Aと導電性基板101の間の寄生容量による窒化物半導体装置1に対する影響が大きい。このため、不活性領域200に第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cを配置することにより、窒化物半導体装置1に対する寄生容量の影響を低減させる効果が大きい。
【0047】
絶縁体180は、ペースト剤を含む絶縁体材料を含んでもよい。また、絶縁体180は、ダイヤモンドライクカーボンを含む絶縁体材料を含んでもよい。ペースト剤およびダイヤモンドライクカーボンを含む絶縁体180によれば、例えば酸化シリコン膜などを成長させて絶縁体180を形成するよりも、溝25Eを埋めるために必要な厚みの絶縁体180を容易に形成できる。
【0048】
(変形例)
図3Aは、実施形態の変形例に係る窒化物半導体装置の
図1のI-I線に沿う断面図である。
図3Bは、実施形態の変形例に係る窒化物半導体装置の
図1のII-II線に沿う断面図である。変形例に係る窒化物半導体装置は、
図3Bに示すように、ドレイン電極20に接続されたベース部20Aの下方に配置された絶縁体180が、導電性基板101に形成された溝の内部を完全には埋め込まずに、溝の壁面を被覆するように形成されている。その他の構成は上記の実施形態と同様である。
【0049】
実施形態の変形例に係る窒化物半導体装置1においても、表面電極の下方の一部の導電性基板101を除去して絶縁体180を配置することにより、窒化物半導体装置1の寄生容量を低減することができる。
【0050】
(比較例)
図3Cは、比較例に係る窒化物半導体装置の
図1のI-I線に沿う断面図である。
図3Dは、比較例に係る窒化物半導体装置の
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0051】
比較例に係る窒化物半導体装置では、
図3Dに示すように、ベース部20Aと裏面電極24Bの間に、導電性基板101と、半絶縁層102と、窒化物半導体層12と、イオン注入層13と、絶縁層14とが配置されている。比較例に係る窒化物半導体装置では、不活性領域200においてドレイン電極20と導電性基板101の間に寄生容量が形成され、高周波動作を劣化させる要因となる。図示は省略するが、ゲート電極19と導電性基板101の間にも寄生容量が形成されるため、高周波動作を劣化させる要因となる。
【0052】
(実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法)
図4A~
図12Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のI-I線に沿う断面図である。
図4B~
図12Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0053】
実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法は、以下の製造工程を含む。導電性基板101の第1面2aに半絶縁層102を形成する。半絶縁層102の上に窒化物半導体層12を形成し、窒化物半導体層12をエッチングして開口領域を形成する。導電性基板101に対してエッチングの選択比の高い材料の第2埋込電極22Bおよび第3埋込電極22Cで開口領域を埋め込む。窒化物半導体層12の上に絶縁層14を形成する。絶縁層14をエッチングで開口して、窒化物半導体層12とオーミック接触するドレイン電極20およびソース電極18を形成し、窒化物半導体層12とショットキー接触するゲート電極19を形成する。導電性基板101の第2面2bから導電性基板101の一部を選択的にエッチングして、第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cに到達する溝を形成し、溝の内部に絶縁体180を形成する。以下、図面を参照して、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を詳述する。
【0054】
(A)まず、
図4Aおよび
図4Bに示すように、互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された導電性基板101を準備する。導電性基板101としては、例えば抵抗率約0.02Ω・cmの導電性SiC基板を使用する。
【0055】
(B)次に、
図5Aおよび
図5Bに示すように、導電性基板101の第1面2aに半絶縁層102を形成する。半絶縁層102は、例えば化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によって、キャリア濃度を2×10
15cm
-3に調整したSiC層を形成した後、加速エネルギー約500keV程度に加速された電子線を照射することによって形成する。電子線の照射フルエンス量は、例えば1×10
17cm
-2程度である。電子線の加速エネルギーは約300~800keV程度であることが望ましい。
【0056】
(C)次に、
図6Aおよび
図6Bに示すように、半絶縁層102上に窒化物半導体層12を形成する。例えば、電子走行層120と電子供給層122を積層したHEMT構造の半導体素子を窒化物半導体層12に形成する。
【0057】
(D)次に、
図7Aおよび
図7Bに示すように、イオン注入技術を用いて、窒化物半導体層12の一部に、不活性領域200を形成する。例えば、窒化物半導体層12の表面の一部に選択的にアルゴン(Ar)をイオン注入し、イオン注入層13を改質層として形成することにより、不活性領域200を画定してもよい。アルゴン(Ar)の他には、例えば、窒素、酸素のイオン注入を実施してもよい。或いは、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などのドライエッチングによって窒化物半導体層12の一部を除去して、活性領域300としてメサ構造を形成してもよい。すなわち、ドライエッチングなどの方法によって2次元電子ガス層121が形成された領域を除去することにより不活性領域200を形成し、不活性領域200と活性領域300を分離形成することができる。
【0058】
(E)次に、
図8Aおよび
図8Bに示すように、窒化物半導体層12の一部を誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング技術を用いてエッチング除去し、半絶縁層102の表面2cが露出する開口領域を形成する。エッチングガスとしては、例えばCl
2やBCl
3などの塩素系ガスを適用可能である。
【0059】
(F)更に、不活性領域200および活性領域300に露出した半絶縁層102の表面2cに、第1埋込電極22A、第2埋込電極22Bおよび第3埋込電極22Cを形成する。第1埋込電極22Aと、第2埋込電極22Bおよび第3埋込電極22Cを同時に形成してもよい。以下において、第1埋込電極22A、第2埋込電極22Bおよび第3埋込電極22Cのそれぞれを限定しない場合は「埋込電極」とも表記する。埋込電極の材料は、導電性基板101に対してエッチングの選択比の高いものであればよい。例えば、Ni、Al、Cu、ITOなどが埋込電極の材料に使用可能である。埋込電極の厚さは、例えば約0.3μm~3μm程度である。埋込電極の形成では、スパッタリング法、真空蒸着法、めっき形成法のような技術が適用可能である。導電性基板101に対してエッチングの選択比の高い材料を使用する理由は、後述する工程において窒化物半導体層12を保護するエッチングストップ層とするためである。
【0060】
(G)次に、
図9Aおよび
図9Bに示すように、窒化物半導体層12上に、例えばプラズマCVD(PECVD:plasma-enhanced chemical vapor deposition)法を用いて絶縁層14を形成する。絶縁層14としては、例えば、SiN層を用いる。SiN層の厚さは、約100nmである。絶縁層14の他の材料としては、例えば、SiON、SiO
2、Al
2O
3、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiONなどの材料であってもよい。絶縁層14の他の形成方法としては、LPCVD(Low pressure chemical vapor deposition)法、スパッタリング法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、分子線エピタキシャル成長(MBE:Molecular Beam Epitaxial Growth)法などを使用してもよい。なお、絶縁層14は、
図9Aに示すように、活性領域300では、第1埋込電極22A上にも形成されている。また、絶縁層14は、
図9Bに示すように、不活性領域200では、第2埋込電極22Bとイオン注入層13上に形成される。
【0061】
(H)次に、
図10Aおよび
図10Bに示すように、絶縁層14にRIEなどで窓開けを行い、絶縁層14の窓開けした領域で窒化物半導体層12とオーミック接触するドレイン電極20、ソース電極18を形成する。ソース電極18は、活性領域300に形成された第1埋込電極22A上にも延在し、第1埋込電極22Aと活性領域300に形成されたソース電極18は電気的に接続する。ドレイン電極20に接続されたベース部20Aは、
図10Bに示すように、不活性領域200に形成された第2埋込電極22B上にも延在し、第2埋込電極22Bと活性領域300に形成されたドレイン電極20は電気的に接続する。ドレイン電極20およびソース電極18のオーミック接触は、窒化物半導体層12上に電子線(EB:Electron Beam)蒸着法によりTi/Alを形成し、約500~550℃程度の温度で保持することにより実現することができる。本実施形態ではTi層の厚さは約20nm、Al層の厚さは300nm程度である。ドレイン電極20およびソース電極18は、例えばTa/Alなどにより構成されていてもよい。また成膜装置としてはスパッタリングやMBEなどの装置を使用してもよい。
【0062】
(I)次に、
図11Aおよび
図11Bに示すように、絶縁層14にRIEなどで窓開けを行い、絶縁層14の窓開けした領域でゲート電極19を形成する。ゲート電極19は、
図2Cに示すように、不活性領域200に形成された第3埋込電極22C上にも延在し、第3埋込電極22Cと活性領域300に形成されたゲート電極19は電気的に接続する。ゲート電極19は窒化物半導体層12に対しショットキー接触となるものを使用すればよく、ここではNi/Auの積層構造を使用している。Ni層の厚さは約10nm、Au層の厚さは約600nmである。
【0063】
(J)次に、
図12Aおよび
図12Bに示すように、導電性基板101を第2面2b側からRIEなどのドライエッチングによりエッチングして、不活性領域200に導電性基板101を貫通する溝25Eを形成する。同時に、活性領域300に導電性基板101を貫通する溝25Aを形成する。エッチングガスとしてはSF
6/O
2の混合ガスを用いる。SF
6の代わりにCF
4、CHF
3をエッチングガスに使用してもよい。導電性基板101を第2面2b側からエッチングする場合には、ドレイン電極20、ゲート電極19、およびソース電極18の側をダミー基板などに貼り付けて、第2面2bを上に向けた状態で行ってもよい。エッチングストップ層として埋込電極を形成しておくことにより、窒化物半導体層12が側面からエッチングされたり、ダミー基板がエッチングされたりすることを防止できる。埋込電極に、導電性基板101よりもエッチングレートの低い材料が選択される。
【0064】
(K)次に、
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示すように、不活性領域200の導電性基板101に形成した溝25Eを絶縁体180で埋め込む。絶縁体180の抵抗率は、例えば10Ω・cm以上である。また、絶縁体180に絶縁性ペーストを使用してもよい。また、不活性領域200の導電性基板101に形成した溝25Eを絶縁体180で埋め込む際は、
図3Bに示したように溝25Eを完全に埋め込む必要はなく、溝25Eの一部を被覆するように形成してもよい。
【0065】
(L)次に、
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示すように、活性領域300の導電性基板101に形成した溝25Aを貫通電極24Eで埋め込む。例えば、Ti/Cuの積層構造をスパッタリング法により形成した後、金メッキを形成することで、貫通電極24Eを形成する。溝25Aを貫通電極24Eにより完全に埋める必要はなく、エッチングストップ層となる第1埋込電極22Aと裏面電極24Bが接続されるように溝25Aの一部を貫通電極24Eで被覆するだけでもよい。
【0066】
(M)貫通電極24Eを形成後、導電性基板101の第2面2bに裏面電極24Bを形成する。例えば、第2面2bの全面に金属蒸着法を用いて裏面電極24Bを形成する。ソース電極18は、貫通電極24Eおよび第1埋込電極22Aを介して裏面電極24Bと同電位に設定される。
【0067】
(N)図示は省略するが、ソース電極18、ゲート電極19、およびドレイン電極20上に絶縁層を形成し、この絶縁層に窓開けを行い、ソース電極18、ゲート電極19、およびドレイン電極20上にパッド電極のための積層構造を形成してもよい。
【0068】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載しない様々な実施形態などを含む。
【0069】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0070】
(付記1)
窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された導電性基板101と、導電性基板101の第1面2aに設けられ、半導体素子が形成された窒化物半導体層12を含む基体10と、基体10に設けられ、半導体素子と電気的に接続された電極と、電極と対向する領域において導電性基板101に形成された溝の内部に配置された絶縁体180とを備える。付記1の窒化物半導体装置1によれば、電極と導電性基板101の間に形成される寄生容量を低減することができる。
【0071】
(付記2)
付記1に記載の窒化物半導体装置において、基体10が、第1面2aに配置された半絶縁層102と、半絶縁層102に積層された窒化物半導体層12とを含む。付記1の窒化物半導体装置1によれば、導電性基板101と窒化物半導体層12の間に半絶縁層102を配置することにより、導電性基板101と窒化物半導体層12に形成された半導体素子とを電気的に絶縁することができる。
【0072】
(付記3)
付記2に記載の窒化物半導体装置において、絶縁体180が、半絶縁層102を貫通して形成されて溝に連通する開口部の内部を埋め込んでいる。
【0073】
(付記4)
付記2又は3に記載の窒化物半導体装置において、導電性基板101の抵抗率が1Ω・cm以下であり、半絶縁層102の抵抗率が1×103Ω・cm以上である。
【0074】
(付記5)
付記2又は3に記載の窒化物半導体装置において、半絶縁層102の抵抗率が1×105Ω・cm以上である。
【0075】
(付記6)
付記2又は3に記載の窒化物半導体装置において、半絶縁層102は、5μm以上の厚みを有する。
【0076】
(付記7)
付記2又は3に記載の窒化物半導体装置において、半絶縁層102は、4H-SiC結晶構造を備える。
【0077】
(付記8)
付記2又は3に記載の窒化物半導体装置において、半絶縁層102は、6H-SiC結晶構造を備える。
【0078】
(付記9)
付記2又は3に記載の窒化物半導体装置において、半絶縁層102は、3C-SiC結晶構造を備える。
【0079】
(付記10)
付記1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、窒化物半導体層12が、電子走行層120と、電子走行層120とヘテロ接合を形成する電子供給層122とを備える。付記10の窒化物半導体装置によれば、HEMT構造の半導体素子を有する窒化物半導体装置において、電極と導電性基板の間に形成される寄生容量を低減することができる。
【0080】
(付記11)
付記10に記載の窒化物半導体装置において、半導体素子に設けられたドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極を備え、ドレイン電極の一部若しくはゲート電極の一部のいずれか、又はドレイン電極の一部とゲート電極の両方に対向して、絶縁体180が配置されている。付記11に記載の窒化物半導体装置によれば、ドレイン電極若しくはゲート電極、又はドレイン電極とゲート電極の両方と、導電性基板との間に形成される寄生容量を低減することができる。
【0081】
(付記12)
付記10又は11に記載の窒化物半導体装置において、ソース電極は、導電性基板101を貫通する導電性部材を介して、導電性基板101の第2面2bに形成したグランド電極となる裏面電極24Bに接続されている。付記12に記載の窒化物半導体装置によれば、ソース電極を第2面2bからグランド電極と電気的に接続することができるため、チップ面積を小さくすることができる。
【0082】
(付記13)
付記1~11のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、絶縁体180は、ペースト剤を含む絶縁体材料を含む。付記13に記載の窒化物半導体装置によれば、絶縁体180を形成する時間を短縮することができる。
【0083】
(付記14)
付記1~11のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、絶縁体180は、ダイヤモンドライクカーボンを含む絶縁体材料を含む。付記14に記載の窒化物半導体装置によれば、絶縁体180を形成する時間を短縮することができる。特に、溝25Eを絶縁体180で完全に埋め込まない場合に、ダイヤモンドライクカーボンが溝25Eを部分的に埋めるために好適に使用される。
【0084】
(付記15)
窒化物半導体装置の製造方法は、以下の製造工程を含む。互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された導電性基板101の第1面2aに、半絶縁層102を形成する。半絶縁層102の上に、窒化物半導体層12を形成する。窒化物半導体層12をエッチングして開口領域を形成し、開口領域を第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cで埋め込む。第2面2bから導電性基板101の一部を選択的にエッチングして、第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cに到達する溝25Eを形成し、溝25Eの内部に絶縁体180を形成する。付記15の窒化物半導体装置の製造方法によれば、電極と導電性基板の間に形成される寄生容量を低減した窒化物半導体装置を製造できる。
【0085】
(付記16)
付記15に記載の窒化物半導体装置において、第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cが、導電性基板101に対してエッチングの選択比の高い材料である。付記16に記載の窒化物半導体装置の製造方法によれば、第2面2bから導電性基板101をエッチングする工程において、第2埋込電極22Bと第3埋込電極22Cをエッチングストップ層として使用できる。
【0086】
(付記17)
付記15又は付記16に記載の窒化物半導体装置において、窒化物半導体層12の上に絶縁層14を形成する。絶縁層14をエッチングで開口して、窒化物半導体層12とオーミック接触するドレイン電極20およびソース電極18を形成する。絶縁層14をエッチングで除去して、窒化物半導体層12とショットキー接触するゲート電極19を形成する。付記17に記載の窒化物半導体装置の製造方法によれば、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を有する窒化物半導体装置おいて導電性基板と電極の間に形成される寄生容量を低減することができる。
【0087】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1…窒化物半導体装置
2a…第1面
2b…第2面
10…基体
12…窒化物半導体層
13…イオン注入層
14…絶縁層
18…ソース電極
19…ゲート電極
19A…ゲート配線
20…ドレイン電極
20A…ベース部
20B…ドレインフィンガー
22A…第1埋込電極
22B…第2埋込電極
22C…第3埋込電極
24B…裏面電極
24E…貫通電極
25A、25E…溝
101…導電性基板
102…半絶縁層
120…電子走行層
121…2次元電子ガス層
122…電子供給層
180…絶縁体
200…不活性領域
300…活性領域