(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142250
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】温度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/24 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01K7/24 D
G01K7/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054360
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 敬
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056RA04
2F056RA09
2F056RA10
2F056RD01
2F056RD09
2F056RD10
(57)【要約】
【課題】低温領域から高温領域まで広い温度範囲にわたって、電源電圧の変動、及び、ADコンバータのゲイン誤差及びオフセット誤差の影響を抑え、高精度に温度を測定することが可能な温度測定装置を提供する。
【解決手段】サーミスタ及び抵抗値が既知の複数の抵抗を有する抵抗回路と、マイコンに内蔵されたADコンバータと、サーミスタの抵抗値に基づいて温度を算出する温度算出部と、を備え、マイコンは、設定された電圧を供給するための第1の電圧状態と、第1の電圧状態よりも電圧が低い第2の電圧状態とを切り替え可能な汎用入出力端子を複数備え、サーミスタ及び複数の抵抗の一端は夫々、マイコンの異なる汎用入出力端子に接続され、サーミスタ及び複数の抵抗の他端は、マイコンの共通の入力端子に接続され、温度算出部は、マイコンに内蔵された同一のADコンバータで測定された入力端子の電圧を用いて、サーミスタの抵抗値を算出する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーミスタ及び抵抗値が既知の複数の抵抗を有する抵抗回路と、
マイコンに内蔵されたADコンバータと、
前記サーミスタの抵抗値に基づいて温度を算出する温度算出部と、を備え、
前記マイコンは、設定された電圧を供給するための第1の電圧状態と、前記第1の電圧状態よりも電圧が低い第2の電圧状態とを切り替え可能な汎用入出力端子を複数備え、
前記サーミスタ及び前記複数の抵抗の一端は夫々、前記マイコンの異なる前記汎用入出力端子に接続され、
前記サーミスタ及び前記複数の抵抗の他端は、前記マイコンの共通の入力端子に接続され、
前記温度算出部は、前記ADコンバータで測定された前記入力端子の電圧を用いて、前記サーミスタの抵抗値を算出する
温度測定装置。
【請求項2】
前記温度算出部はさらに、前記ADコンバータで測定された前記汎用入出力端子の夫々の電圧を用いて、前記サーミスタの抵抗値を算出する
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記抵抗回路は、前記サーミスタと並列に接続された少なくとも1つ以上の補正用抵抗を備える
請求項1又は2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記補正用抵抗の抵抗値は、高精度に測定したい特定の温度に対応するサーミスタの抵抗値に設定されている
請求項3に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記汎用入出力端子の少なくともいずれか一方は固定電位であり、
前記温度算出部はさらに、前記固定電位の電圧を用いて、前記サーミスタの抵抗値を算出する
請求項1又は2に記載の温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコンを用いた温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び特許文献2に示すように、抵抗値が既知の基準抵抗と温度変化により抵抗値が変化するサーミスタとが直列に接続された抵抗回路と、マイコンに内蔵されたADコンバータと、サーミスタの抵抗値に基づいて温度を算出する温度算出部と、を備えた温度測定装置が提案されている。この温度測定装置では、抵抗回路の一端は、設定された電圧を供給する電源供給端子に接続され、抵抗回路の他端は、グランドに接続されている。
【0003】
この温度測定装置では、測定対象の温度が変化してサーミスタの抵抗値が変化すると、基準抵抗とサーミスタとの接続点の電圧が変化する。電源電圧と基準抵抗の抵抗値は既知であるため、基準抵抗とサーミスタとの接続点の電圧値をADコンバータにより取得することにより、測定対象の温度を測定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-274372号公報
【特許文献2】特開平05-026741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような温度測定装置では、既知の電源電圧と基準抵抗の抵抗値に基づいてサーミスタの抵抗値を算出するため、電源電圧が既知の値から変動した場合、サーミスタの抵抗値を正確に算出することはできない。
【0006】
また、接続点の電圧値を取得するためのADコンバータにおいては、ゲイン誤差及びオフセット誤差等の影響により、接続点の電圧値が正確に取得できないおそれがある。
【0007】
ここで、ゲイン誤差とは、入力電圧に対する変換値の特性の傾きが理論値と異なっていることにより生じる誤差である。また、オフセット誤差とは、入力電圧に対する変換値の特性に対して全体的に一様に生じている誤差である。
【0008】
特許文献1では、電源電圧の変動の問題を解消した温度測定装置が開示されているが、この温度測定装置では、ADコンバータにおける各種の誤差の問題を解消することはできない。
【0009】
特許文献2では、電源電圧の変動の問題と、ADコンバータのゲイン誤差及びオフセット誤差の問題を解消した温度測定装置が開示されているが、この温度測定装置では、サーミスタに電流が流れ続ける構成となっているため、サーミスタの自己発熱効果の影響により、高精度に温度を測定することができない。さらに、同一値である基準抵抗を複数用いるため、結果に含まれる誤差が大きいという問題が有る。
【0010】
また、特許文献1と特許文献2では、基準抵抗の抵抗値が一定であるため、低温領域から高温領域まで高精度に温度を測定することは困難である。
【0011】
本発明は、上記の事情を踏まえ、1つの温度測定装置によって低温領域から高温領域まで広い温度範囲にわたって、電源電圧の変動、及び、ADコンバータのゲイン誤差及びオフセット誤差の影響を抑え、高精度に温度を測定することが可能な温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の温度測定装置は、サーミスタ及び抵抗値が既知の複数の抵抗を有する抵抗回路と、マイコンに内蔵されたADコンバータと、前記サーミスタの抵抗値に基づいて温度を算出する温度算出部と、を備え、前記マイコンは、設定された電圧を供給するための第1の電圧状態と、前記第1の電圧状態よりも電圧が低い第2の電圧状態とを切り替え可能な汎用入出力端子を複数備え、前記サーミスタ及び前記複数の抵抗の一端は夫々、前記マイコンの異なる前記汎用入出力端子に接続され、前記サーミスタ及び前記複数の抵抗の他端は、前記マイコンの共通の入力端子に接続され、前記温度算出部は、前記ADコンバータで測定された前記入力端子の電圧を用いて、前記サーミスタの抵抗値を算出する。
【0013】
前記温度算出部はさらに、前記ADコンバータで測定された前記汎用入出力端子の夫々の電圧を用いて、前記サーミスタの抵抗値を算出してもよい。
【0014】
前記抵抗回路は、前記サーミスタと並列に接続された少なくとも1つ以上の補正用抵抗を備えてもよい。
【0015】
前記補正用抵抗の抵抗値は、高精度に測定したい特定の温度に対応するサーミスタの抵抗値に設定されていてもよい。
【0016】
前記汎用入出力端子の少なくともいずれか一方は固定電位であり、前記温度算出部はさらに、前記固定電位の電圧を用いて、前記サーミスタの抵抗値を算出してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の温度測定装置によれば、1つの温度測定装置によって低温領域から高温領域まで広い温度範囲にわたって、電源電圧の変動、及び、ADコンバータのゲイン誤差及びオフセット誤差の影響を抑え、高精度に温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図2】サーミスタにおける温度と抵抗値との関係を示すグラフである。
【
図3】温度と、基準抵抗とサーミスタとの接続点の電圧との関係を示すグラフである。
【
図4】ADコンバータにおけるゲイン誤差を説明するための図である。
【
図5】ADコンバータにおけるオフセット誤差を説明するための図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図7】第2の実施形態の温度測定装置において、補正用抵抗の数を2個とした場合の回路構成を示す図である。
【
図8】ADコンバータの入出力特性を示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態の変形例の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図10】第2の実施形態の変形例の温度測定装置において、補正用抵抗の数を2個とした場合の回路構成を示す図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態の適用例1の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態の適用例2の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態の適用例3の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態の適用例3の別の温度測定装置の回路構成を示す図である。
【
図16】温度と、抵抗値が異なる複数の基準抵抗とサーミスタとの接続点の電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
最初に第1の実施形態の温度測定装置1について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の温度測定装置1の回路構成を示す図である。
【0021】
図1に示すように、温度測定装置1は、抵抗値が既知の基準抵抗11とサーミスタ12とが直列に接続された抵抗回路10と、マイコン20に内蔵されたADコンバータ21と、サーミスタ12の抵抗値Rthに基づいて温度を算出する温度算出部22と、を備える。
【0022】
抵抗回路10の一端は、マイコン20の汎用入出力端子GPIOに接続されている。抵抗回路10の他端は、グランドに接続されている。
【0023】
マイコン20の汎用入出力端子GPIOは、電源電圧と同じ電位となる「ハイ・レベル」、グランドと同じ電位となる「ロー・レベル」、及び、電気的に開放状態となる「ハイ・インピーダンス」の3つの状態に切り替えられる。
【0024】
マイコン20の汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とした場合、汎用入出力端子GPIOは抵抗回路10に対して設定された電圧を供給する電源供給端子として機能する。温度測定の期間中は、マイコン20の汎用入出力端子GPIOは、「ハイ・レベル」状態とする。
【0025】
マイコン20の汎用入出力端子GPIOを「ロー・レベル」状態とした場合、汎用入出力端子GPIOはグランド電位として機能する。
【0026】
本実施形態においては、抵抗回路10のサーミスタ12側が汎用入出力端子GPIOに接続されており、基準抵抗11側がグランドに接続されている。
【0027】
汎用入出力端子GPIOは、ADコンバータ21の入力端子Ainに接続されている。基準抵抗11とサーミスタ12との接続点13は、ADコンバータ21の入力端子Binに接続されている。グランドは、ADコンバータ21の入力端子Cinに接続されている。
【0028】
スイッチ23により、ADコンバータ21に接続する入力端子を切り替えることにより、ADコンバータ21において、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpio、接続点13の電圧Vraw、及び、グランドの電圧Vgndを測定することができる。
【0029】
温度算出部22は、マイコン20に内蔵されている。また、温度算出部22は、同じくマイコン20に内蔵された同一のADコンバータ21で測定された電源供給端子としての汎用入出力端子GPIOの電圧、基準抵抗11とサーミスタ12との接続点13の電圧、及び、グランドの電圧を用いて、サーミスタ12の抵抗値を算出する。
【0030】
以下、本実施形態の温度測定装置1における温度測定の方法について詳細に説明する。
図2Aおよび
図2Bは、サーミスタ12における温度と抵抗値との関係を示すグラフである。
図3は、温度と、基準抵抗11とサーミスタ12との接続点13の電圧Vrawとの関係を示すグラフである。
図4は、ADコンバータ21におけるゲイン誤差を説明するための図である。
図5は、ADコンバータ21におけるオフセット誤差を説明するための図である。
【0031】
温度測定装置1において、測定対象の温度はサーミスタ12により測定される。本実施形態の温度測定装置1が備えるサーミスタ12は、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタであり、
図2Aおよび
図2Bに示すように、温度が高くなるにつれて抵抗値が下がる特性を有する。
【0032】
測定対象の温度が変化し、サーミスタ12の抵抗値Rthが
図2Bのように変化すると、基準抵抗11とサーミスタ12との接続点13の電圧Vrawの値が
図3のように変化する。すなわち、サーミスタ12の温度が高くなるにつれて、接続点13の電圧Vrawの値が高くなる。
【0033】
接続点13の電圧VrawをADコンバータ21に入力することにより、電圧Vrawの値を測定することができる。
【0034】
電圧Vrawは、下記の式(1)で表すことができる。ここで、Vgpioは汎用入出力端子GPIOの電圧、Vgndは抵抗回路10のグランドの電圧、Rrefは基準抵抗11の既知の抵抗値である。
Vraw=(Vgpio-Vgnd)/(1+Rth/Rref)+Vgnd …(1)
【0035】
ADコンバータ21により接続点13の電圧Vrawを測定することにより、温度算出部22は、式(1)からサーミスタ12の抵抗値Rthを算出することができ、これにより測定対象の温度を求めることができる。
【0036】
しかしながら、式(1)から明らかなように、サーミスタ12の抵抗値Rthは、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpioと抵抗回路10のグランドの電圧Vgndに依存し、これらの値が正確に既知でなければ、サーミスタ12の抵抗値Rthを正確に算出することはできない。
【0037】
ADコンバータ21への入力電圧VinとADコンバータ21の出力コードDoutの関係は、ADコンバータ21の1ビット当たりの分解能電圧をa、ADコンバータ21のオフセット電圧をbとして、量子化誤差を無視すると、下記の式(2A)で表すことができる。ここで、ADコンバータ21のグランドの電圧の値はゼロとしている。以後、ADコンバータ21のグランドの電圧の値はゼロとする。また、式(2A)を変形すると、下記の式(2B)となる。
Vin=a×Dout+b …(2A)
Dout=(Vin-b)/a=Vin/a-b/a …(2B)
【0038】
ADコンバータ21では、1bit当たりの分解能電圧aにバラツキがあり、1/aのバラツキをゲイン誤差と呼ぶ。このようなゲイン誤差を
図4に示す。
【0039】
また、VinがゼロであってもDoutがゼロにならない場合があり、これをオフセット誤差と呼ぶ。式(2B)では、-b/aがオフセット誤差を表している。このようなオフセット誤差を
図5に示す。
【0040】
本実施形態の温度測定装置1では、電圧Vgpio、電圧Vraw、電圧Vgndを同一のADコンバータ21で測定する。この場合、式(2A)に基づいて、下記の式(3)、式(4)、及び、式(5)が成立する。
Vgpio=a×Dgpio+b …(3)
Vraw=a×Draw+b …(4)
Vgnd=a×Dgnd+b …(5)
【0041】
また、式(3)、式(4)、及び、式(5)に基づいて、下記の式(6)が成立する。
(Vraw-Vgnd)/(Vgpio-Vgnd)=(Draw-Dgnd)/(Dgpio-Dgnd) …(6)
【0042】
また、式(6)を式(1)に適用することにより、下記の式(7)が成立する。
(Draw-Dgnd)/(Dgpio-Dgnd)=1/(1+Rth/Rref) …(7)
【0043】
式(7)には、接続点13の電圧Vraw、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpio、及び、抵抗回路10のグランドの電圧Vgndは含まれておらず、かつ、ADコンバータ21のゲイン誤差1/a及びオフセット誤差-b/aも含まれていない
【0044】
そのため、温度算出部22においてサーミスタ12の抵抗値Rthを算出する際に、ADコンバータ21のゲイン誤差及びオフセット誤差の影響を受けない。
【0045】
また、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpioあるいは抵抗回路10のグランドの電圧Vgndが仮に変動したとしても、ADコンバータ21により測定した電圧Vgpio、電圧Vraw、電圧Vgndの測定値に基づいて、サーミスタ12の抵抗値Rthを算出することができる。
【0046】
以上のことから、電源電圧の変動、及び、ADコンバータのゲイン誤差及びオフセット誤差があったとしても、高精度に温度を測定することができる。
【0047】
さらに、温度測定の期間以外は、マイコン20の汎用入出力端子GPIOを「ロー・レベル」状態又は「ハイ・インピーダンス」状態として、サーミスタ12の自己発熱効果を抑えることができるため、より高精度に温度を測定することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の温度測定装置2について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態の温度測定装置2の回路構成を示す図である。
【0049】
上記の第1の実施形態では、電源電圧の変動、及び、ADコンバータ21のゲイン誤差及びオフセット誤差を克服することができる。しかしながら、ADコンバータ21に負のオフセットがある場合、又は、電圧VgpioがADコンバータ21の測定レンジを超えた場合に、対応することができない。第2の実施形態の温度測定装置2は、このような問題を解消した態様である。
【0050】
図6に示すように、温度測定装置2は、第1の実施形態の温度測定装置1と比較して、抵抗回路10において、サーミスタ12と並列に接続された複数の補正用抵抗14a、14b…14nを備える点が異なる。補正用抵抗14a、14b…14nの各々の抵抗値は既知である。これらの補正用抵抗14a、14b…14nは、ADコンバータ21の補正用の情報を取得するための抵抗である。
【0051】
本実施形態において、補正用抵抗14a、14b…14nの一端は、各々異なる汎用入出力端子GPIO1、GPIO2…GPIONに接続されている。補正用抵抗14a、14b…14nの他端は、基準抵抗11とサーミスタ12との接続点13に接続されている。
【0052】
汎用入出力端子GPIOは、ADコンバータ21の入力端子Ainに接続されている。汎用入出力端子GPIO1は、ADコンバータ21の入力端子Ain1に接続されている。汎用入出力端子GPIO2は、ADコンバータ21の入力端子Ain2に接続されている。汎用入出力端子GPIONは、ADコンバータ21の入力端子AinNに接続されている。基準抵抗11とサーミスタ12との接続点13は、ADコンバータ21の入力端子Binに接続されている。グランドは、ADコンバータ21の入力端子Cinに接続されている。
【0053】
なお、補正用抵抗14の数は、少なくとも1つ以上であれば何個でもよい。
【0054】
以下、本実施形態の温度測定装置2における温度測定の方法について詳細に説明する。ここでは、
図7に示すように、補正用抵抗14の数Nを2個とした場合を例に説明する。
【0055】
汎用入出力端子GPIO1及び汎用入出力端子GPIO2を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Ain、及び、Cinの間で切り替えて、電圧Vgpio、電圧Vgndを測定してもよい。この状態は、
図1と実質的に同じなので、式(1)、(3)、(4)、(5)が成立する。
【0056】
次に、汎用入出力端子GPIO及び汎用入出力端子GPIO2を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。このときの電圧Vrawを、電圧Vraw1とする。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子をAin1に切り替えて、電圧Vgpio1を測定してもよい。
【0057】
このときの電圧Vraw1は、下記の式(8)で表すことができる。
Vraw1=a×Draw1+b …(8)
【0058】
次に、汎用入出力端子GPIO及び汎用入出力端子GPIO1を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO2を「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。このときの電圧Vrawを、電圧Vraw2とする。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子をAin2に切り替えて、電圧Vgpio2を測定してもよい。
【0059】
このときの電圧Vraw2は、下記の式(9)で表すことができる。
Vraw2=a×Draw2+b …(9)
【0060】
また、式(8)及び式(9)により、下記の式(10)及び式(11)が成立する。
a=(Vraw1-Vraw2)/(Draw1-Draw2) …(10)
b=(Draw1×Vraw2-Draw2×Vraw1)/(Draw1-Draw2) …(11)
【0061】
また、下記の式(12)及び式(13)が成立する。
Vraw1=kraw1×(Vgpio1-Vgnd)+Vgnd …(12)
Vraw2=kraw2×(Vgpio2-Vgnd)+Vgnd …(13)
【0062】
ここで、Vgndは、抵抗回路10のグランドの電圧である。また、式(14)で表される通り、kraw1は、基準抵抗11と補正用抵抗14aとの接続点13における電圧Vraw1の、電圧Vgpio1に対する比率である。また、式(15)で表される通り、kraw2は、基準抵抗11と補正用抵抗14bとの接続点13における電圧Vraw2の、電圧Vgpio2に対する比率である。
kraw1=1/(1+R1/Rref) …(14)
kraw2=1/(1+R2/Rref) …(15)
【0063】
基準抵抗が共通なので、電圧Vraw1と電圧Vraw2の測定値に含まれる誤差は、特許文献2より小さくできる。
【0064】
異なるマイコン間では、電圧Vgpio、Vgpio1、Vgpio2…VgpioNの値はバラついており同一の値ではないが、同一のマイコン20内の電圧Vgpio、Vgpio1、Vgpio2…VgpioNの値はほぼ同一の値である。電圧Vgpio1、及び、電圧Vgpio2が、電圧Vgpioにほぼ等しい場合に、式(12)及び式(13)を、式(10)及び式(11)に適用すると、下記の式(16)及び式(17)が成立する。
a=(Vgpio-Vgnd)×(kraw1-kraw2)/(Draw1-Draw2) …(16)
b=(Vgpio-Vgnd)×(Draw1×kraw2-Draw2×kraw1)/(Draw1-Draw2)+Vgnd …(17)
【0065】
この式(16)及び式(17)を、式(3)、式(4)、及び、式(5)に適用すると、下記の式(18)が成立する。
(Vraw-Vgnd)/(Vgpio-Vgnd)={(kraw1-kraw2)×Draw+(Draw1×kraw2-Draw2×kraw1)}/(Draw1-Draw2) …(18)
【0066】
この式(18)を、式(1)に適用すると、下記の式(19)が成立する。
{(kraw1-kraw2)×Draw+(Draw1×kraw2-Draw2×kraw1)}/(Draw1-Draw2)=1/(1+Rth/Rref) …(19)
【0067】
ここで、R1/Rref→0であれば、kraw1→1、Vraw1→Vgpio、Draw1→Dgpioとなり、R2/Rref→∞であれば、kraw2→0、Vraw2→Vgnd、Draw2→Dgndとなる。
【0068】
従って、R1/Rref→0かつR2/Rref→∞であれば、式(19)は、式(7)に一致することからも、第2の実施形態の温度測定装置2は、第1の実施形態の温度測定装置1の発展形になっていることが理解できる。
【0069】
ここで、基準抵抗11、補正用抵抗14a、及び、補正用抵抗14bの抵抗値は既知であるため、kraw1及びkraw2も既知である。例えば、R1=2×Rrefとすると、Vraw1=Vgpio/3となり、その結果、kraw1=1/3となる。また、R2=Rref/2とすると、Vraw2=2×Vgpio/3となり、その結果、kraw2=2/3となる。
【0070】
既知のkraw1及びkraw2と、式(19)に基づいて、サーミスタ12の抵抗値Rthを算出することができる。
【0071】
式(19)には、接続点13の電圧Vraw、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpio、汎用入出力端子GPIO1の電圧Vgpio1、汎用入出力端子GPIO2の電圧Vgpio2、及び、抵抗回路10のグランドの電圧Vgndは含まれておらず、かつ、ADコンバータ21のゲイン誤差1/a及びオフセット誤差-b/aも含まれていない
【0072】
そのため、温度算出部22においてサーミスタ12の抵抗値Rthを算出する際に、ADコンバータ21のゲイン誤差及びオフセット誤差の影響を受けない。
【0073】
また、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpio、汎用入出力端子GPIO1の電圧Vgpio1、汎用入出力端子GPIO2の電圧Vgpio2、及び、抵抗回路10のグランドの電圧Vgndが仮に変動したとしても、電圧Vraw1及び電圧Vraw2の測定値に基づいて、サーミスタ12の抵抗値Rthを算出することができる。
【0074】
このように、第2の実施形態の温度測定装置2によれば、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpio、汎用入出力端子GPIO1の電圧Vgpio1、汎用入出力端子GPIO2の電圧Vgpio2、及び、抵抗回路10のグランドの電圧Vgndの測定値が含まれていないので、ADコンバータ21に負のオフセットがある場合、又は、汎用入出力端子GPIOの電圧Vgpio、汎用入出力端子GPIO1の電圧Vgpio1、及び、汎用入出力端子GPIO2の電圧Vgpio2がADコンバータ21の測定レンジを超えた場合でも、高精度に温度を測定することができる。
【0075】
また、ADコンバータ21の入出力特性は、
図8に示すように直線ではない。この非直線性は、非直線性誤差と呼ばれる。第2の実施形態の温度測定装置2によれば、ADコンバータ21の入出力特性を入力の区分に分けて、近似直線を求めることができるので、非直線性を区分に分けた折れ線で近似することができる。
【0076】
また、ADコンバータ21が負のオフセットを有さず、電圧VgpioがADコンバータ21の計測範囲内に収まっている場合は、第1の実施形態の温度測定装置1と同様に、電圧Vgpioと電圧Vgndから、ADコンバータ21の入出力の近似直線を求めることができ、その近似直線からの部分補正で対処することもできる。
【0077】
区分に分けた折れ線で近似する場合や、電圧Vgpioと電圧Vgndから求めた直線から求めた直線からの部分補正をする場合、ADコンバータ21のゲイン誤差1/a及びオフセット誤差-b/aは一定ではなく、区分毎に異なることになる。そのため、ADコンバータ21の計測範囲内に細かく計測点が分布するように、補正用抵抗14の数を2個より増やすことで、ゲイン誤差1/a及びオフセット誤差-b/aをより細かく補正することができるため、ADコンバータ21の非直線性誤差の補正をより正確に行うことができ、上記第1の実施形態よりも正確に温度を求めることができる。
【0078】
また、第2の実施形態は、
図9に示す温度測定装置3のような構成でも実現できる。この温度測定装置3は、上記の温度測定装置2と比較して、基準抵抗11側が電源供給端子Vddに接続され、抵抗回路10のサーミスタ12及び補正用抵抗14側が汎用入出力端子GPIOに接続されている点が異なる。
図9において、汎用入出力端子GPIOは、「ハイ・インピーダンス」状態と「ロー・レベル」状態の2状態を切り替える。
【0079】
なお、
図10に示す温度測定装置3Aは、温度測定装置3において補正用抵抗14の数を2つとして構成した場合である。
【0080】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の温度測定装置は、上記第2の実施形態の温度測定装置2において、補正用抵抗14の抵抗値を、高精度に測定したい特定の温度に対応するサーミスタ12の抵抗値に設定したものである。
【0081】
図6又は
図9において、補正用抵抗14aの抵抗値R1及び補正用抵抗14bの抵抗値R2は、例えば、25℃及び0℃のように、特に高精度が必要とされる温度近傍に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい値に選定される。
図2に示す特性を有するサーミスタ12の場合、それぞれ、100kΩと400kΩである。
【0082】
本実施形態では、特定の温度近傍に対応する入力点でADコンバータ21の補正が行えるので、特定の温度近傍でより正確に温度を求めることができる。
【0083】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態の温度測定装置4について説明する。
図11は、本発明の第4の実施形態の温度測定装置4の回路構成を示す図である。
【0084】
図11に示すように、温度測定装置4の抵抗回路10は、サーミスタ12及び抵抗値が既知の複数の抵抗15a、15b…15mを有する。サーミスタ12及び複数の抵抗15a、15b…15mの一端は夫々、マイコン20の異なる汎用入出力端子GPIO、GPIO1…GPIOMに接続され、サーミスタ12及び複数の抵抗15a、15b…15mの他端は、共通の入力端子Binに接続されている。
【0085】
また、汎用入出力端子GPIOは、ADコンバータ21の入力端子Ainに接続されている。汎用入出力端子GPIO1は、ADコンバータ21の入力端子Cin1に接続されている。汎用入出力端子GPIO2は、ADコンバータ21の入力端子Cin2に接続されている。汎用入出力端子GPIOMは、ADコンバータ21の入力端子CinMに接続されている。抵抗15a、15b…15mとサーミスタ12との接続点13は、ADコンバータ21の入力端子Binに接続されている。
【0086】
温度算出部22は、マイコン20に内蔵された同一のADコンバータ21で測定された入力端子Binの電圧を用いて、サーミスタ12の抵抗値を算出する。この時、汎用入出力端子GPIO、GPIO1…GPIOMの夫々の電圧をさらに用いてサーミスタ12の抵抗値を算出してもよい。
【0087】
本実施形態の温度測定装置4は、汎用入出力端子GPIO、GPIO1…GPIOMの電圧の状態を適宜設定することにより、抵抗値が既知の複数の抵抗15a、15b…15mの機能を異なるものとすることができる。
【0088】
サーミスタ12の抵抗値は、温度によって、
図2A及び
図2Bのように大きく変化する。
図1において、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗の値を、0℃に対応するサーミスタ12の抵抗値に設定した場合と、25℃に対応するサーミスタ12の抵抗値に設定した場合と、60℃に対応するサーミスタ12の抵抗値に設定した場合の電圧Vrawを、
図16に示す。
【0089】
図16からわかるように、基準抵抗Rrefが、25℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい100kΩに設定された場合、25℃近傍では、電圧Vrawは温度に対する出力電圧の変化が大きいため、ADコンバータによる検出感度は十分大きくなるのに対し、例えば60℃を超える場合や0℃以下となる場合においては、電圧Vrawは温度に対する出力電圧の変化が小さくなるため、ADコンバータによる検出感度は低くなる。このように、基準抵抗Rrefが一定の場合、低温領域から高温領域まで高精度に温度を測定することは困難である。
【0090】
第4の実施形態の温度測定装置4では、複数の抵抗15a、15b…15mの夫々は、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗として使用することもできるし、ADコンバータ21の補正用の情報を取得するための補正用抵抗として使用することもできる。
【0091】
<第4の実施形態の適用例1>
以下、抵抗値が既知の複数の抵抗15a、15b…15mの夫々を、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗として用いた場合の温度測定の方法について詳細に説明する。ここでは、
図12に示すように、抵抗値が既知の抵抗15の数Mを2個とした場合を例に説明する。
【0092】
2つの抵抗15a、15bの抵抗値は、各々、例えば、25℃及び0℃のように、特に高精度が必要とされる温度近傍に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい値に選定される。
図2に示す特性を有するサーミスタ12の場合、それぞれ、100kΩと400kΩである。
【0093】
ここでは、抵抗15aの抵抗値R1は、25℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい100kΩに設定される。また、抵抗15bの抵抗値R2は、0℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい400kΩに設定される。
【0094】
汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO2を「ハイ・インピーダンス」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をAinとし、電圧Vgpioを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Bin、及び、Cin1の間で切り替えて、電圧Vraw、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)を測定してもよい。
【0095】
図16からわかるように、このときの電圧Vrawは、25℃近傍において、ADコンバータ21の計測範囲の中心付近となり、かつ、温度に対する変化が大きくなるため、25℃近傍でより正確に温度を求めることができる。
【0096】
次に、汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO2を「ロー・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をAinとし、電圧Vgpioを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Bin、及び、Cin1の間で切り替えて、電圧Vraw、電圧Vgpio2(電圧Vgndに相当)を測定してもよい。
【0097】
図16からわかるように、このときの電圧Vrawは、0℃近傍において、ADコンバータ21の計測範囲の中心付近となり、かつ、温度に対する変化が大きくなるため、0℃近傍でより正確に温度を求めることができる。
【0098】
同様に、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗を、60℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい20kΩに設定すると、電圧Vrawは、60℃近傍において、ADコンバータ21の計測範囲の中心付近となり、かつ、温度に対する変化が大きくなるため、60℃近傍でより正確に温度を求めることができる。
【0099】
このように、第4の実施形態の温度測定装置4では、測定温度領域に応じて、基準抵抗Rrefを複数切り替えることが可能なので、低温領域から高温領域まで高精度に温度を測定することが可能となる。
【0100】
<第4の実施形態の適用例2>
次に、抵抗値が既知の複数の抵抗15a、15b…15mの夫々について、1つの基準抵抗と複数の補正用抵抗とが混在した構成とした場合の温度測定の方法について詳細に説明する。ここでは、
図13に示すように、抵抗値が既知の抵抗15の数Mを3個とした場合を例に説明する。
【0101】
ここでは、抵抗15aの抵抗値R1は、25℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい100kΩに設定される。抵抗15aは、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗として使用される。
【0102】
また、抵抗15bの抵抗値R2は、R2=2×R1の値に設定される。また、抵抗15cの抵抗値R3は、R3=R1/2の値に設定される。抵抗15b、15cは、ADコンバータ21の補正用の情報を取得するための補正用抵抗として使用される。
【0103】
汎用入出力端子GPIO2及び汎用入出力端子GPIO3を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Ain、及び、Cin1の間で切り替えて、電圧Vgpio、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)を測定してもよい。
【0104】
次に、汎用入出力端子GPIO及び汎用入出力端子GPIO3を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO2を「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Cin1、及び、Cin2の間で切り替えて、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)、電圧Vgpio2を測定してもよい。
【0105】
次に、汎用入出力端子GPIO及び汎用入出力端子GPIO2を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO3を「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Cin1、及び、Cin3の間で切り替えて、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)、電圧Vgpio3を測定してもよい。
【0106】
このような態様とすることにより、上記第2の実施形態の温度測定装置2と同様に、ADコンバータ21の補正を行うことができる。
【0107】
<第4の実施形態の適用例3>
次に、抵抗値が既知の複数の抵抗15a、15b…15mの夫々について、複数の基準抵抗と複数の補正用抵抗とが混在した構成とした場合の温度測定の方法について詳細に説明する。ここでは、
図14に示すように、抵抗値が既知の抵抗15の数Mを4個とした場合を例に説明する。
【0108】
ここで、抵抗15a、15bは、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗として使用される。また、抵抗15c、15dは、ADコンバータ21の補正用の情報を取得するための補正用抵抗として使用される。
【0109】
2つの抵抗15a、15bの抵抗値は、各々、例えば、25℃及び0℃のように、特に高精度が必要とされる温度近傍に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい値に選定される。
図2に示す特性を有するサーミスタ12の場合、それぞれ、100kΩと400kΩである。
【0110】
ここでは、抵抗15aの抵抗値R1は、25℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい100kΩに設定される。また、抵抗15bの抵抗値R2は、0℃に対応するサーミスタ12の抵抗値とほぼ等しい400kΩに設定される。
【0111】
汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO2、GPIO3、GPIO4を「ハイ・インピーダンス」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし、電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Ain、及び、Cin1の間で切り替えて、電圧Vgpio、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)を測定してもよい。
【0112】
このときの電圧Vrawは、25℃近傍において、ADコンバータ21の計測範囲の中心付近となり、かつ、温度に対する変化が大きくなるため、25℃近傍でより正確に温度を求めることができる。
【0113】
次に、汎用入出力端子GPIOを「ハイ・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO1、GPIO3、GPIO4を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO2を「ロー・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Ain、及び、Cin1の間で切り替えて、電圧Vgpio、電圧Vgpio2(電圧Vgndに相当)を測定してもよい。
【0114】
このときの電圧Vrawは、0℃近傍において、ADコンバータ21の計測範囲の中心付近となり、かつ、温度に対する変化が大きくなるため、0℃近傍でより正確に温度を求めることができる。
【0115】
また、抵抗15cの抵抗値R3は、R3=R1の値に設定される。また、抵抗15dの抵抗値R4は、R4=2×R1の値に設定される。
【0116】
汎用入出力端子GPIO、GPIO2、GPIO4を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO3を「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Cin1、及び、Cin3の間で切り替えて、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)、電圧Vgpio3を測定してもよい。
【0117】
次に、汎用入出力端子GPIO、GPIO2、GPIO3を「ハイ・インピーダンス」状態とし、汎用入出力端子GPIO1を「ロー・レベル」状態とし、汎用入出力端子GPIO4を「ハイ・レベル」状態とし、ADコンバータ21に接続する入力端子をBinとし電圧Vrawを測定する。この時さらに、ADコンバータ21に接続する入力端子を、Cin1、及び、Cin4の間で切り替えて、電圧Vgpio1(電圧Vgndに相当)、電圧Vgpio4を測定してもよい。
【0118】
このような態様とすることにより、特定の温度近傍でADコンバータ21の計測範囲の中心付近となり、かつ、温度に対する変化が大きくなるため、特定の温度近傍でより正確に温度を求めることができる。また、特定の温度近傍に対応する入力点でADコンバータ21の補正を行うことができ、特定の温度近傍でより正確に温度を求めることができるため、特定の温度近傍でさらに正確に温度を求めることができる。
【0119】
従って、低温領域から高温領域まで、電源電圧の変動、ADコンバータ21のオフセットの変動、利得の変動、積分非直線性等に影響されず、精度よく温度を検出することが可能になる。
【0120】
なお、抵抗値が既知の複数の抵抗15は、
図15に示すような接続関係であってもよい。ここで、抵抗15a、15b…15mは、サーミスタの温度動作点を決定するための基準抵抗として使用される。また、抵抗15c、15d…15nは、ADコンバータ21の補正用の情報を取得するための補正用抵抗として使用される。
【0121】
図15のような接続関係においても、汎用入出力端子GPIO、GPIOA1、GPIOA2、…GPIOANおよびGPIOC1、GPIOC2、…GPIOCMの状態を任意に変更することにより、複数の基準抵抗を使用したサーミスタの温度動作点の最適化と、ADコンバータ21の補正とを両立することができる。
【0122】
なお、本実施形態においては、汎用入出力端子GPIO、GPIO1、GPIO2、…GPIOMの「ロー・レベル」状態と「ハイ・レベル」状態とを逆にしてもよい。
【0123】
また、上記説明では、電圧Vgpio、電圧Vgpio1、電圧Vgpio2、電圧Vgpio3、電圧Vgpio4の測定を複数回行っているが、一度のみでも構わない。
【0124】
また、同一のマイコン内の電圧Vgpioの値(ハイおよびロー)を、ほぼ同一と見なせる場合には、ADコンバータ21によるVgpioの多点計測を省いても構わない。
【0125】
また、第2の実施形態の温度測定装置2で説明した式で、温度計測する場合は、ADコンバータ21によるVgpioの計測を省いても構わない。
【符号の説明】
【0126】
1、2、2A、3、3A、4、4A、4B、4C、4D 温度測定装置
10 抵抗回路
11 基準抵抗
12 サーミスタ
13 接続点
14a、14b、14n 補正用抵抗
15、15a、15b、15m 抵抗
20 マイコン
21 ADコンバータ
22 温度算出部
23 スイッチ