(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142256
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】目地シール施工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/682 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04B1/682 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054373
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】世良 範幸
(72)【発明者】
【氏名】草川 公一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA51
2E001HD01
2E001HD11
2E001MA02
2E001MA11
(57)【要約】
【課題】簡易かつ短時間で、施工後の目地のシール部を成型接着できる目地シール施工法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含み、長手方向に沿って設けられた空隙部を有する目地シール材を、目地に設置する工程と、電磁誘導発熱体を含むスペーサーを介して、電磁誘導加熱装置を前記目地シール材に対面させた状態で、前記電磁誘導加熱装置により前記電磁誘導発熱体を発熱させることで、前記目地シール材を加熱溶融して、前記目地をシールする工程と、を有する目地シール施工法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含み、長手方向に沿って設けられた空隙部を有する目地シール材を目地に設置する工程と、
電磁誘導発熱体を含むスペーサーを介して、電磁誘導加熱装置を前記目地シール材に対面させた状態で、前記電磁誘導加熱装置により前記電磁誘導発熱体を発熱させることで、前記目地シール材を加熱溶融して、前記目地をシールする工程と、
を有する目地シール施工法。
【請求項2】
前記空隙部が、発泡体で構成されている請求項1に記載の目地シール施工法。
【請求項3】
前記発泡体が、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂を含み、連続通気構造を有する発泡体である請求項2に記載の目地シール施工法。
【請求項4】
前記スペーサーは、前記電磁誘導発熱体と、前記電磁誘導発熱体を支持する支持部材と、前記目地シール材と接触する外面に設けられる離型層と、を備える請求項1に記載の目地シール施工法。
【請求項5】
前記目地シール材は、長手方向に沿って設けられた補強部材を有する請求項1に記載の目地シール施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、目地シール施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来、建物を建築する際、複数の外壁パネル、内壁パネル等の、隣り合う建築部材の縁部間に形成された目地には、シーリングガンにより反応型又は湿式のシーリング材により、目地シール施工される。
反応型又は湿式のシーリング材は、施工後、硬化収縮で肉痩せし、目地のシール部の剥がれ又は凹みが生じてしまうことがある。目地のシール部の剥がれは、漏水や気密性低下などの性能面での不具合原因になる。また、剥がれ又は凹みは、外観が悪いだけでなく汚れの付着及びカビの発生の原因にもなる。
また、シーリング材の硬化に数日を要し、肉痩せした場合、手直しに追加で日数を要する。そのため、施工期間の長期化の一因をなっている。
また、目地のシーリング作業は、熟練を要し、最近の人材不足の解消から、熟練を要しない目地シール施工法の乾式化の要求が高い。
【0003】
このような、目地シール施工法の乾式化の要求に対し、電磁誘導加熱(以下「IH加熱」とも称する)を利用した技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「複数の建築用面材を隣接して配置すると共に、前記各建築用面材の互いに隣接する対向縁部を離間させて目地を形成し、該目地に硬化時の体積収縮の発生し難い接着材料を充填した後、該接着材料を電磁誘導加熱によって硬化させることを特徴とする建築用面材の目地処理工法」が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、「コンクリート舗装に設ける目地に於いて、加熱によって軟化溶融する性質を持つ目地シール材料をロープ状または棒状などに成形し、その中に芯材として鉄線もしくは鉄網等の電磁発熱体を入れた成形体とし、この目地シール材料の成形体を目地溝内に挿入し、電磁誘電装置によって該電磁発熱体を発熱させて、該成形体の目地シール材料を軟化溶融せしめて目地をシールすることを特徴とするコンクリート舗装の目地シール材の施工法」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-90215号公報
【特許文献2】特開2014-141860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の施工法では、余分の接着材料が目地からはみ出してしまうことがある。また、特許文献2の施工法では、シール材料を軟化溶融させるので、シール材料が目地からはみ出てしまうことがある。
さらに、特許文献1及び2の施工法では、平坦化させるためには、ヘラなどで目地シールを均す作業が必要で、その時にはみ出した接着材料で汚れるのを防ぐ為マスキングテープで保護を行ない、硬化後マスキングテープを剥がす作業が行われる。この様な作業は時間を要し、しかも熟練工でなければ平坦化作業は難しく、均す作業によって返って目地シール部の外観を悪化させることもある。
【0008】
このような背景から、従来の施工法に比べ、簡易かつ短時間で、施工後の目地のシール部を平坦化しつつパネルに溶融接着させる施工法が要望されている。一方、特許文献1及び特許文献2は、次に述べる課題もある、特許文献1では鉄粉を含有したシール材又は金属製パネル、特許文献2では鉄棒、鉄網等を含むシール材など、シール材の内部若しくは一部、又はパネルに電磁誘導で発熱する金属若しくは金属化合物が存在している。この金属又は金属化合物と熱可塑性樹脂など炭素からなる高分子化合物が直接に接していると、高分子化合物の劣化が促進されシール材の強度低下や接着性低下が早期に発生し易い。この所謂、金属害が発生しないシール工法が要望されている。また、磁気を応用する測定装置又は製造装置を設置する部屋の壁用シール材として、シール材の内部又は一部に、鉄、アルミニウム、フェライト、炭化ケイ素などの、特定周波数の電磁波に感応し易い成分を有しないことが望ましい。
【0009】
そこで、本開示の課題は、簡易かつ短時間で、目地シール材を成型及び接着して、目地のシールを実現できる目地シール施工法を提供することである。更には、本開示の課題は、電磁誘導により発熱する金属などを含まないシール材を使用でき、金属害及び磁気ノイズの無い目地のシールを実現できる目地シール施工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1>
熱可塑性樹脂を含み、長手方向に沿って設けられた空隙部を有する目地シール材を、目地に設置する工程と、
電磁誘導発熱体を含むスペーサーを介して、電磁誘導加熱装置を前記目地シール材に対面させた状態で、前記電磁誘導加熱装置により前記電磁誘導発熱体を発熱させることで、前記目地シール材を加熱溶融して、前記目地をシールする工程と、
を有する目地シール施工法。
<2>
前記空隙部が、発泡体で構成されている<1>に記載の目地シール施工法。
<3>
前記発泡体が、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂を含み、連続通気構造を有する発泡体である<2>に記載の目地シール施工法。
<4>
前記スペーサーは、前記電磁誘導発熱体と、前記電磁誘導発熱体を支持する支持部材と、前記目地シール材と接触する外面に設けられる離型層と、を備える<1>~<3>のいずれか1項に記載の目地シール施工法。
<5>
前記目地シール材は、長手方向に沿って設けられた補強部材を有する<1>~<4>のいずれか1項に記載の目地シール施工法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡易かつ短時間で、目地シール材を成型しつつ、目地を形成する隣り合う部材間を接着して、目地のシールを実現できる目地シール施工法を提供できる。更には、金属などを含まないシール材を使用しても電磁誘導によるシールができ、その結果として、金属害の無い目地シールを実現できる施工法を提供できる。また電磁誘導により発熱する物質を含まないシール材を使用しても電磁誘導によるシールができ、その結果として磁気ノイズの無い目地シールを実現できる施工法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、目地シール施工法における、目地に目地シール材を設置する工程を説明するための工程図である。
【
図2】
図2は、目地シール施工法における、目地をシールする工程を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例について説明する。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本開示の目地シール施工法は、
熱可塑性樹脂を含み、長手方向に沿って設けられた空隙部を有する目地シール材を、目地に設置する工程(以下「設置工程」とも称する。)と
電磁誘導発熱体を含むスペーサーを介して、電磁誘導加熱装置を目地シール材に対面させた状態で、電磁誘導加熱装置により電磁誘導発熱体を発熱させることで、目地シール材を溶融して、目地をシールする工程(以下「シール工程」とも称する。)と、
を有する。
【0016】
本開示の目地シール施工法では、熱可塑性樹脂を含み、長手方向に沿って設けられた空隙部を有する目地シール材を用いる。空隙部を有する目地シール材を用いることで、シール材が溶融したとき、熱可塑性樹脂が空隙部の空隙に、溶融した熱可塑性樹脂が流入する。または、空隙部が圧縮される。それにより、目地シール材の見掛け体積が減少し、溶融した目地シール材が目地からはみ出し難くなる。そのため、施工後の目地のシール部が平坦化され易い。
【0017】
また、本開示の目地シール施工法では、電磁誘導発熱体を含むスペーサーを介して、電磁誘導加熱装置を目地シール材に対面させた状態で、電磁誘導加熱装置により電磁誘導発熱体を発熱させる。そして、スペーサーの電磁誘導発熱体から発生する熱により、目地シール材を加熱溶融させる。目地シール材の樹脂が溶融した状態でスペーサーにて加圧し、スペーサーに接触した状態で目地シール材の樹脂が冷却固化することにより、スペーサー表面の形状をシール部表面に転写することができる。こうして、平坦面など目的とする形状にシール部表面を成型することができる。また、スペーサー表面をシボ形状又は特定の模様を施しておけば、当該模様をシール部表面に転写できる。この電磁誘導加熱装置による電磁誘導発熱体の発熱は、目的とする温度までの時間が短時間で、待ち時間が少ない。
また、施工するとき、目地シール材と電磁誘導加熱装置との間に、電磁誘導発熱体を含むスペーサーを介在させて、目地シール材を加熱溶融するので、隣り合う部材(建築部材等)の材質を問わず、簡易に目地シール施工できる。
【0018】
以上から、本開示の目地シール施工法では、簡易かつ短時間で、目地シール材を成型しつつ、目地を形成する隣り合う部材間を接着して、目地のシールを実現できる。
【0019】
なお、本開示の目地シール施工法では、上述のように、木製、セメント製、セラミックス(一部を除く)製等、電磁誘導加熱しない材質製の建築部材間の目地でも目地シール施工できる。また、目地シール材として、金属粉等を混合したシール材、金属線又は金属網等を内包したシール材等、特殊な目地シール材を用いなくてもよい。
この点からも、本開示の目地シール施工法は、簡易に目地シールできる施工法である。
また、本開示の施工法では、金属を含まないシール材を選定すれば、施工後のシール部は金属成分を含有していないので、金属害の発生が無い。また、特定周波数の電磁波に感応しないシール材を選定すれば、磁気ノイズの発生が無い。
【0020】
以下、本実施形態に係る目地シール施工法の詳細について説明する。
【0021】
(設置工程)
設置工程では、長尺状の目地シール材を目地に設置する。
具体的には、例えば、隣り合う部材(建築部材等)の一例として、2つのパネル間の目地に、目地シール材を設置する(
図1参照)。目地シール材は、2つのパネルと接着状態ではなく、密着状態又は僅かに隙間がある状態で、目地に設置する。
目地シール材を目地に設置する方法としては、シール材を2つのパネルで挟み込む、又は、2つのパネル間に後からシール材を挿入する等がある。尚、目地シール材を目地に設置した後の状態は、パネル平坦面より目地シール材の一部が飛び出している。
ここで、
図1中、10は目地シール材、12は目地、14はパネルを示す。
【0022】
-目地シール材-
目地シール材は、熱可塑性樹脂を含み、目地シール材の長手方向に沿って設けられた空隙部を有する目地シール材が適用される。
具体的には、例えば、目地シール材は、目地シール材の長手方向に沿って設けられた空隙部からなる芯部と、熱可塑性樹脂を含む鞘部と、目地シール材の長手方向に沿って設けられた補強部材と、を有する(
図1参照)。
ここで、
図1中、10Aは芯部(空隙部)、10Bは鞘部、10Cは補強部材を示す。
【0023】
なお、芯部を構成する空隙部は、発泡体で構成されていてもよい。また、芯部を構成する空隙部は、中空部のみで構成(つまり、貫通孔で構成)されていてもよい。
【0024】
--芯部(空隙部)--
芯部を構成する空隙部は、例えば、発泡体で構成されている。
発泡体は、例えば、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂を含む。発泡体は、連続通気構造を有する発泡体であることが望ましい。連続通気構造を有する発泡体を適用することで、目地シール材に含む熱可塑性樹脂が溶融したとき、発泡体の細孔に、溶融した熱可塑性樹脂が流入し易くなる。その結果、施工後の目地のシール部が容易に平坦化しつつ、溶融した目地シール材の樹脂がパネルと接着し、しかもはみ出すことがないので綺麗な仕上がりになる。
また、発泡体は、スペーサーで加圧した際容易に変形する軟らかい可撓性であることが望ましい。発泡体が変形することにより、熱可塑性樹脂が目地内部に押し込まれるので目地シール部が平坦化され易くなる。また、押された発泡体がパネルに熱可塑性樹脂を含む鞘部を押し付けるので、パネルとの接着性を向上させる。これら観点から、発泡体は、連続通気構造を有する可撓性発泡体であることが更に望ましい。
【0025】
なお、連続通気構造を有する発泡体とは、独泡率が5%以下の発泡体である。独泡率は、より好ましくは、1%以下である。
独泡率は、レミングトン法(ASTM D 1940-62T準拠)によって測定される。具体的には、水銀マノメーターを使い、サンプル室容積R1を測定する。次に、容積Vと重量Wを測定したサンプルをサンプル室に投入し密閉する。この状態で水銀マノメーターを使い、サンプル室容量R2を測定する。独泡率(%)は、下記の式で計算して求める。
(R1-R2-W/d)/(V-W/d)×100
R1;サンプル室容量(ブランク)(ml)
R2;サンプル室容量(サンプル入り)(ml)
W;サンプル重量(g)
d;真比重(g/cm3)
V;サンプル容量(見かけ体積)(cm3)
【0026】
--鞘部--
鞘部は、熱可塑性樹脂を含む。鞘部は、熱可塑性樹脂の非発泡体で構成されていてもよいし、熱可塑性樹脂の発泡体で構成されていてもよい。
【0027】
--補強部材--
補強部材は、目地シール材を補強する部材である。具体的には、例えば、目地シール材の長手方向の伸びを防止する部材である。
補強部材を設けることで、目地シール材の自己支持性が向上し、施工の作業性が高まる。
なお、補強部材は、必要に応じて、目地シール材に設けられる部材である。
【0028】
補強部材は、目地シール材の長手方向に沿って設けられている。
具体的には、例えば、補強部材は、芯部の内部に、目地シール材の長手方向の一端から他端に向けて延在して設けられている。
補強部材は、芯部に限られず、鞘部に設けられていてもよいし、鞘部の外面に設けられていてもよい。つまり、補強部材は、目地シール材の内部及び外面に、目地シール材の長手方向の一端から他端に向けて延在して設けられていればよい。
【0029】
補強部材としては、線材、シート材、又は発泡体の自己スキン層が例示できる。
線材としては、樹脂線材(ポリエステル、ポリオレフィン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン等の線材、これらの繊維を撚った線材(糸))、金属線材(ステンレス、銅、タングステン、ニッケル、その他各種合金等の線材)、これらの集合体(線材を撚った集合体、線材を束ねた集合体、線材を並列した集合体等)が例示できる。
シート材としては、樹脂シート材(ポリエステル、ポリオレフィン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン等のシート材)、金属シート材(ステンレス、銅、タングステン、ニッケル、その他各種合金等のシート材)、織物、編物、不織布、寒冷紗等が例示できる。
他のシート材としては、粘着テープ(両面テープ等)も例示できる。粘着テープの剥離紙が伸び防止機能を発揮できるためである。なお、シート材には、幅が狭い、いわゆるリボン状の材料も含む。
自己スキン層とは、例えば、発泡体を発泡させたときに発泡体の表面に生成する被膜(スキン)のことである。
【0030】
補強部材は、可撓性を有することがよい。つまり、補強部材は、屈曲性、且つ復元性がる部材であることがよい。補強部材が可撓性を有すると、目地シール材を変形(曲げ、捻じれ等)させ、その後変形を戻したとき、形状が維持され易くなる。
補強部材の存在は、シール材全体の機械的強度アップに寄与し、また、変形時の伸びを抑え形状維持にも寄与する。したがって、シール材の梱包、運送、保管時に有利なだけでなく、設置工程での脱着作業性が向上する。更には、シール工程完了後にシール材を剥離する場合の作業性も向上する。
尚、金属非含有補強部材を選定すれば、出来たシール部は金属成分を含有していないので、金属害の発生が無い。また、特定周波数の電磁波に感応しない補強部材を選定すれば、磁気ノイズの発生が無い。
【0031】
補強部材の大きさは、例えば、線材の場合、直径0.5~3mm、シート材の場合、厚さ0.1~3mm、自己スキン層の場合、厚さ0.1~500μmで、軟らかさの為には0.1~100μmが望ましい
【0032】
-目地シール材の他の態様-
目地シール材は、上記態様に限られず、下記態様のいずれであってもよい。
1)芯部が非発泡体で構成され、鞘部が発泡体で構成(つまり鞘部が空隙部で構成)される態様
2)芯部及び鞘部のいずれも発泡体で構成(つまり、芯部及び鞘部がいずれも空隙部で構成)される態様
【0033】
-目地シール材の材料-
以下、目地シール材に適用する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂について説明する。
【0034】
--熱可塑性樹脂--
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン系共重合体、軟質ポリ塩化ビニル、各種の熱可塑性エラストマー、軟質エステル系樹脂、軟質ポリアミド系樹脂、軟質ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合により得られるABS樹脂、アクリロニトリルとスチレンとの共重合により得られるAS樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂として、オレフィン系、ナイロン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン-ブタジエンゴム系、スチレン-イソプレン系などのホットメルト型樹脂も挙げられる。
【0035】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエチレン系エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性
エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーが例示できる。
【0036】
ポリエチレン系エラストマーは、エチレンとα―オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0037】
塩化ビニル系熱可塑性エラストマーは、少なくとも塩化ビニルを重合した重合体を有するエラストマーである。塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリ塩化ビニルとニトリルゴム(NBR)とを混合したブレンド型エラストマー、ポリ塩化ビニル又はニトリルゴムを部分架橋したブレンド型エラストマー等が挙げられる。
【0038】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともオレフィンを重合した重合体を有するエラストマーである。オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂とのブレンド型エラストマー、オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂とを部分架橋させた部分架橋ブレンド型エラストマー、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)とポリプロピレンとの完全架橋ブレンド型エラストマー等が挙げられる。
【0039】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともスチレンを重合した重合体を有するエラストマーである。ポリスチレン-イソプレン-ポリスチレン(SIS)ブロック構造のエラストマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)ブロック構造のエラストマー、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)ブロック構造のエラストマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)ブロック構造のエラストマー等が挙げられる。
【0040】
ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともウレタン構造を持つ重合体を有するエラストマーである。ポリエステルとポリウレタンとのブロック構造のエラストマー、ポリエーテルとポリウレタンとのブロック構造のエラストマー等が挙げられる。
【0041】
アクリル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルのブロック共重合体が例示できる。
【0042】
熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、目地シール材を容易に施工する観点から、熱可塑性樹脂の融点は、65℃~270℃であることが好ましく、80℃~230℃であることがより好ましく、160℃~200℃であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合は、目地シール材を容易に施工する観点から、熱可塑性樹脂のガラス転移点は、-35~200℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましい。
なお、融点及びガラス転移点は、示差走査熱量計を用いて測定される。
【0043】
熱可塑性樹脂の発泡体は、公知の方法により、熱可塑性樹脂を発泡させたものを用いることができる。
【0044】
熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてよく、2種以上併用してもよい。
【0045】
--熱硬化性樹脂--
熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。平坦性をより容易に高める観点から、熱硬化性樹脂は、軟質であることが好ましい。
熱硬化性樹脂発泡体としては、公知の方法により発泡させた熱硬化性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂は、1種単独で用いてよく、2種以上併用してもよい。
【0046】
--添加剤--
目地シール材には、樹脂以外の添加剤を含んでもよい。
添加剤としては、難燃剤、酸化防止剤、着色剤(顔料等)、紫外線吸収剤、炭酸カルシウム等の無機フィラー等の周知の添加剤を含有してよい。
添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0047】
(シール工程)
シール工程では、スペーサーを介して、電磁誘導加熱装置を目地シール材に対面させた状態で、電磁誘導加熱装置により電磁誘導発熱体を発熱させることで、目地シール材を溶融加圧して成型および接着し、目地をシールする(
図2参照)。
シール工程を経た後は、シール材の上部はパネル平坦面に対して成型され、目地のパネルとシール材の両横部は接着状態になる。
ここで、
図2中、10は目地シール材、10Aは芯部(空隙部)、10Bは鞘部、10Cは補強部材、12は目地、14はパネル、16はスペーサー、18は電磁誘導加熱装置を示す。
【0048】
シール工程では、例えば、目地に挿入した目地シール材にスペーサーを介在させつつ、スペーサー及び電磁誘導加熱装置を共に目地シール材の長手方向に移動させながら、スペーサーの目地シール材を溶融加圧して、目地をシールする。
【0049】
シール工程では、例えば、予め溶融する領域の目地シール材に、スペーサーを配置し、電磁誘導加熱装置のみを目地シール材の長手方向に移動させながら、スペーサーの目地シール材を溶融加圧して、目地をシールしてもよい。
【0050】
シール工程では、例えば、スペーサーを目地シール材に接触させた状態で、目地をシールする。それにより、施工後の目地のシール部が平坦化する。また、スペーサーの表面(つまり、目地シール材との接触面)シボ形状又は特定の模様にしておけば、当該模様が転写された表面を有するシール部で目地がシールされる。
【0051】
-電磁誘導加熱装置-
電磁誘導加熱装置は、非磁性材料で構成される円筒状絶縁部材の外周に巻き回された電磁誘導コイルを備える周知の装置が適用できる。
電磁誘導加熱装置は、作業性の観点から、小型、かつ、軽量であるものが好ましい。
【0052】
-スペーサー-
スペーサーは、電磁誘導発熱体を有する部材で構成される。
具体的には、例えば、スペーサーは、電磁誘導発熱体と、電磁誘導発熱体を支持する支持部材と、目地シール材と接触する外面に設けられる離型層と、を備える(
図2参照)。
なお、
図2中、16はスペーサー、16Aは電磁誘導発熱体、16Bは支持部材、16Cは離型層を示す。
【0053】
スペーサーが離型層を有することで、スペーサーの外面に溶融した目地シール材が固着することが抑制される。但し、電磁誘導発熱体が離型性を有する耐熱樹脂に金属粉を含有した場合など、電磁誘導発熱体自体が離型性を持つ場合は、離型層を特別に有する必要は無い。
【0054】
--電磁誘導発熱体--
電磁誘導発熱体は、電磁誘導により加熱されて発熱する部材が挙げられる。
金属部材としては、例えば、ニッケル、鉄、鋼(例えば、炭素鋼)、磁性ステンレス、アルミニウム、銅、銀、亜鉛、コバルト-ニッケル合金、鉄-ニッケル合金等の金属が挙げられる。金属以外の部材としては、フェライト、酸化亜鉛、カーボン、炭化ケイ素などが挙げられる。
電磁誘導発熱体としては、電磁誘導時の発熱性が高く、尚且つ、その後の放熱性が高い、炭素鋼、磁性ステンレス、アルミニウム、炭化ケイ素などが特に好ましい。また、電磁誘導発熱体は、中空構造や複合素材からなる構造であってもよい。さらに、電磁誘導発熱体には、放熱性能を高めるために、冷却構造を含有してもよい。
【0055】
電磁誘導発熱体の形状は、例えば、線状(金属線等)、コイル状(金属コイル等)、パイプ状(金属パイプ等)、網状(金属網等)、板状(金属板等)、粉状(金属粉等)等のいずれでもよい。
【0056】
電磁誘導加熱発熱体は、粉状(金属粉等)等が分散された耐熱樹脂部材で構成されていてもよい。
電磁誘導発熱体は、支持体とは独立して配置されていてもよいし、支持部材に埋め込まれて配置されていてもよい。
【0057】
--支持部材--
支持部材は、例えば、耐熱性樹脂、セラミックス等で構成される。
耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリベンゾイミダゾールポリエステル樹脂、などが挙げられる。セラミックスとしては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、アルミナ、サファイア、サーメットなどが挙げられる。尚、フェライト、酸化亜鉛、カーボン、炭化ケイ素などは、電磁誘導にて発熱するので、電磁誘導装置と接する支持部材としては好ましくない。本願用途の支持部材としては、耐熱性が高く、尚且つ放熱性が高い、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナなどが好適である。また、支持部材は、中空構造又は複合素材からなる構造であってもよい。さらに、支持部材には、放熱性能を高めるために、冷却構造を含有してもよい。
【0058】
--離型層--
離型層は、例えば、耐熱性の離型材で構成される。
離型材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PPSU(ポリフェニルサルフォン)樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(特に、PVDFポリフッ化ビニリデン)等が挙げられる。
離型材は、セラミックス(アルミナ)、グラファイトカーボン等も挙げられる。
本願用途の離型材は、耐熱性が高く、放熱性が高い素材であること好ましい。
また、電磁誘導発熱体の熱は、離型材を介して熱可塑性樹脂に伝達するので、離型材の厚みは薄いことが好ましい。離型材の厚みは、0.05mm~20mmであることが好ましく、0.05mm~1mmであることがより好ましい。
【0059】
離型層の表面は、鏡面であってもよいし、目地シール材の外観向上の為、シボ形状あるいは特定の模様であってもよい。それにより、施工後の目地のシール部は、離型層面性状が転写され、艶消しなど意匠性が向上する。
【0060】
以上説明した本開示の目地シール施工法では、上記設置工程及び上記シール工程により、目地に設置された目地シール材が溶融加圧後、冷却されることで、目地がシール部でシールされる。つまり、隣り合う部材(建築部材等)間が、シール材の樹脂が溶融加圧されることでパネル間を接着しつつ部材面と平行な位置で平坦化される。
【符号の説明】
【0061】
10 目地シール材
10A 芯部(空隙部)
10B 鞘部
10C 補強部材
12 目地
14 パネル
16 スペーサー
16A 電磁誘導発熱体
16B 支持部材
16C 離型層
18 電磁誘導加熱装置