(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142266
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】逐次比較型A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
H03M 1/46 20060101AFI20241003BHJP
H03M 1/80 20060101ALI20241003BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20241003BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03M1/46
H03M1/80
H03M1/08 A
H03M1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054390
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橘 正人
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA02
5J022CA07
5J022CF01
5J022CF07
(57)【要約】
【課題】サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる逐次比較型A/Dコンバータを提供する。
【解決手段】逐次比較型A/Dコンバータ1は、アナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリング結果とデジタル入力とに応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータ12と、アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較する比較器14と、比較器14の比較結果に応じたデジタル入力を生成する制御回路16と、を備える。容量性D/Aコンバータ12は、入力ノード120と、複数のキャパシタC0~C3と、調整キャパシタCsとを有し、入力ノード120を介して複数のキャパシタC0~C3にアナログ信号を供給することによってアナログ信号をサンプリングする。調整キャパシタCsは、逐次比較のあとの次のサンプリングが行われる前に、調整電圧に応じた電圧を入力ノード120に供給する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較型A/Dコンバータであって、
前記アナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリング結果とデジタル入力とに応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較する比較器と、
前記比較器の比較結果に応じた前記デジタル入力を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、前記アナログ信号が入力されるべき入力ノードと、複数のキャパシタと、調整電圧でチャージされる調整キャパシタとを有し、前記入力ノードを介して前記複数のキャパシタに前記アナログ信号を供給することによって前記アナログ信号をサンプリングし、
前記比較器は、前記デジタルの出力信号の最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットについての前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次比較し、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較の結果に基づいて、前記デジタルの出力信号を生成し、
前記調整キャパシタは、前記逐次比較のあとの次のサンプリングが行われる前に、前記調整電圧に応じた電圧を前記入力ノードに供給する、
逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項2】
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続される、前記アナログの出力信号を出力すべき出力ノードをさらに有し、
前記調整キャパシタは、一端が前記入力ノードに接続され、他端に回路基準電圧が供給された前記出力ノードに接続されることによって、前記入力ノードに前記調整電圧に応じた電圧を供給する、
請求項1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項3】
前記アナログ信号を出力する回路と前記入力ノードとの間に配置されたスイッチとをさらに備え、
前記複数のキャパシタのそれぞれの他端は、前記スイッチがオフであり、前記調整キャパシタの一端が前記入力ノードに接続された状態で、前記入力ノードに接続される、
請求項2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項4】
前記容量性D/Aコンバータは、前記デジタル入力に応じて、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端に回路基準電圧またはリファレンス電圧を供給することによって、前記アナログの出力信号を生成し、
前記調整キャパシタは、前記アナログ信号のサンプリング時に、一端に前記リファレンス電圧が供給され、他端に前記比較基準電圧が供給されることによって、前記比較基準電圧および前記リファレンス電圧に応じた前記調整電圧でチャージされる、
請求項1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項5】
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続され、前記アナログの出力信号を出力すべき出力ノードをさらに有し、
前記調整キャパシタの他端は、前記アナログ信号のサンプリング時に、前記比較基準電圧が供給された前記出力ノードに接続されることによって、前記調整電圧でチャージされる、
請求項4に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項6】
前記容量性D/Aコンバータは、前記デジタル入力に応じて、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端に回路基準電圧またはリファレンス電圧を供給することによって、前記アナログの出力信号を生成し、
前記調整電圧は、前記リファレンス電圧の1/2の電圧である、
請求項1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項7】
前記調整キャパシタの容量は、前記複数のキャパシタの合成容量である、
請求項1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逐次比較型A/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するA/Dコンバータの一種として、逐次比較型A/Dコンバータ(以下、「逐次比較型ADC」とも称する。)が知られている。容量性D/Aコンバータ(以下、「容量性DAC」とも称する。)を有する逐次比較型ADCの場合、容量性DACでアナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリングした信号と基準となる信号とを比較器で逐次比較し、その逐次比較の結果に応じたデジタルの出力信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サンプリングしたアナログ信号についてデジタルの出力信号を生成したあと、次のアナログ信号をサンプリングするとき、容量性DACのキャパシタに蓄えられた電荷の流れとアナログ信号に基づく電荷の流れとがぶつかり、キックバックノイズが生じる。このキックバックノイズによってアナログ信号のサンプリングに時間がかかってしまうと、逐次比較型ADCにおけるA/D変換の精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる逐次比較型A/Dコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の逐次比較型A/Dコンバータは、アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する。この逐次比較型A/Dコンバータは、アナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリング結果とデジタル入力とに応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較する比較器と、比較器の比較結果に応じたデジタル入力を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、アナログ信号が入力されるべき入力ノードと、複数のキャパシタと、調整電圧でチャージされる調整キャパシタとを有する。容量性D/Aコンバータは、入力ノードを介して複数のキャパシタにアナログ信号を供給することによってアナログ信号をサンプリングする。比較器は、デジタルの出力信号の最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットについてのアナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次比較する。制御回路は、比較器による逐次比較の結果に基づいて、デジタルの出力信号を生成する。調整キャパシタは、逐次比較のあとの次のサンプリングが行われる前に、調整電圧に応じた電圧を入力ノードに供給する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる逐次比較型A/Dコンバータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、従来技術に係る逐次比較型ADCの模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、逐次比較のフェーズからサンプリングのフェーズに切り替わる際における、従来技術に係る逐次比較型ADCの動作を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る逐次比較型ADCを示す回路図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る容量性DACの回路図である。
【
図5】
図5は、サンプリング時における容量性DACを示す図である。
【
図6】
図6は、逐次比較が開始されるときの容量性DACを示す図である。
【
図7】
図7は、逐次比較が終わったときの容量性DACを示す図である。
【
図8】
図8は、入力経路の電圧を調整するときの容量性DACを示す図である。
【
図9】
図9は、複数のキャパシタのそれぞれの一端が入力経路に接続されるときの容量性DACを示す図である。
【
図10】
図10は、比較技術に係る容量性DACの回路図である。
【
図11】
図11は、アナログ電圧をサンプリングするときの容量性DACを示す図である。
【
図12】
図12は、逐次比較を開始するときの容量性DACを示す図である。
【
図13】
図13は、逐次比較が終わったときの容量性DACを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態に係る逐次比較型A/Dコンバータは、アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する。この逐次比較型A/Dコンバータは、アナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリング結果とデジタル入力とに応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較する比較器と、比較器の比較結果に応じたデジタル入力を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、アナログ信号が入力されるべき入力ノードと、複数のキャパシタと、調整電圧でチャージされる調整キャパシタとを有する。容量性D/Aコンバータは、入力ノードを介して複数のキャパシタにアナログ信号を供給することによってアナログ信号をサンプリングする。比較器は、デジタルの出力信号の最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットについてのアナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次比較する。制御回路は、比較器による逐次比較の結果に基づいて、デジタルの出力信号を生成する。調整キャパシタは、逐次比較のあとの次のサンプリングが行われる前に、調整電圧に応じた電圧を入力ノードに供給する。
【0012】
この構成によれば、逐次比較が行われたあとで容量性DACにおいて次のサンプリングが行われる前に、入力ノードの電圧を調整キャパシタで調整できる。これにより、次のサンプリングの際に、入力ノードに複数のキャパシタが接続されたりアナログ信号が入力されたりする際に、複数のキャパシタの一端における電圧の変化を抑えることができる。この結果、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる。
【0013】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続される、アナログの出力信号を出力すべき出力ノードをさらに有してよい。調整キャパシタは、一端が入力ノードに接続され、他端に回路基準電圧が供給された出力ノードに接続されることによって、入力ノードに調整電圧に応じた電圧を供給してよい。
【0014】
一実施形態において、逐次比較型A/Dコンバータは、アナログ信号を出力する回路と入力ノードとの間に配置されたスイッチとをさらに備えてよい。複数のキャパシタのそれぞれの他端は、スイッチがオフであり、調整キャパシタの一端が入力ノードに接続された状態で、入力ノードに接続されてよい。
【0015】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、デジタル入力に応じて、複数のキャパシタのそれぞれの一端に回路基準電圧またはリファレンス電圧を供給することによって、アナログの出力信号を生成してよい。調整キャパシタは、アナログ信号のサンプリング時に、一端にリファレンス電圧が供給され、他端に比較基準電圧が供給されることによって、比較基準電圧およびリファレンス電圧に応じた調整電圧でチャージされてよい。
【0016】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続され、アナログの出力信号を出力すべき出力ノードをさらに有してよい。調整キャパシタの他端は、アナログ信号のサンプリング時に、比較基準電圧が供給された出力ノードに接続されることによって、調整電圧でチャージされてよい。
【0017】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、デジタル入力に応じて、複数のキャパシタのそれぞれの一端に回路基準電圧またはリファレンス電圧を供給することによって、アナログの出力信号を生成してよい。調整電圧は、リファレンス電圧の1/2の電圧であってよい。
【0018】
一実施形態において、調整キャパシタの容量は、複数のキャパシタの合成容量であってよい。
【0019】
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
(従来技術およびその課題)
図1は、従来技術に係る逐次比較型ADC90の模式的なブロック図である。逐次比較型ADC90は、アナログの入力信号Ain9に応じたアナログ電圧Vin9のサンプリングおよび容量性DAC920の出力電圧DACout9と比較基準電圧との逐次比較を行い、デジタルの出力信号Dout9を生成する。従来技術に係る逐次比較型ADC90は、主として、入力回路900、バッファ回路910、容量性DAC920、入力スイッチ930、サンプリングキャパシタ940、比較器950およびロジック回路960を備える。
【0021】
入力回路900は、アナログの入力信号Ain9に応じたアナログ電圧Vin9を生成する。入力回路900は、バッファ回路902、抵抗素子904およびキャパシタ906を有する。抵抗素子904およびキャパシタ906は、1次のRCフィルタを構成する。抵抗素子904の抵抗値は、RFILTであり、キャパシタ906の容量値はCFILTである。アナログの入力信号Ain9は、バッファ回路902に入力され、抵抗素子904およびキャパシタ906で構成されたRCフィルタを通じて、アナログ電圧Vin9が生成される。
【0022】
バッファ回路910は、リファレンス電圧Vref8が入力され、そのリファレンス電圧Vref8に応じた電圧Vref9を容量性DAC920に出力する。
【0023】
容量性DAC920は、デジタル入力Din9に応じたアナログの出力電圧DACout9を生成する。容量性DAC920は、スイッチ922、電圧Vref9が供給されるリファレンス端子924、グランド端子926およびキャパシタ928を有する。スイッチ922は、デジタル入力Dinに応じてキャパシタ928の一端をリファレンス端子924またはグランド端子926に接続させる。キャパシタ928の他端には、スイッチ922の接続先に応じた出力電圧DACout9が生成される。
【0024】
入力スイッチ930は、サンプリングキャパシタ940の一端を、入力端子932またはDAC端子934に接続させる。入力スイッチ930の接続先が入力端子932のとき、サンプリングキャパシタ940は、アナログ電圧Vin9をサンプリングする。一方、入力スイッチ930の接続先がDAC端子934のとき、比較器950は、容量性DAC920の出力電圧DACout9およびアナログ電圧Vin9に応じた電圧と比較基準電圧とを逐次比較する。
【0025】
ロジック回路960は、比較器950の比較結果に応じて、デジタル入力Din9を生成する。また、ロジック回路960は、比較器950による逐次比較の結果に応じて、デジタルの出力信号Dout9を生成する。
【0026】
図2は、逐次比較のフェーズからサンプリングのフェーズに切り替わる際における、従来技術に係る逐次比較型ADC90の動作を説明するための図である。逐次比較のフェーズからサンプリングのフェーズに切り替わる際、入力スイッチ930の接続先は、DAC端子934から入力端子932に切り替わる。このとき、容量性DAC920から電荷の流れ936が生じ、入力端子932においてアナログ電圧Vin9が揺らされ、キックバックノイズ938が発生する。キックバックノイズ938によるアナログ電圧Vin9の振動が所定の時間内で収束しない場合、逐次比較型ADC90の変換精度が低下する。
【0027】
キックバックノイズ938による逐次比較型ADC90の変換精度の低下を防ぐために、フィルタおよびバッファ回路を入力側に挿入することが一般的に行われる。フィルタには、抵抗素子904およびキャパシタ906で構成される1次のRCフィルタが用いられる。しかしながら、キックバックノイズ938による急峻なアナログ電圧Vin9の振動を抑えるためには、大容量のキャパシタ906が必要となり、入力信号Ain9の帯域が制限される。またバッファ回路902自体でアナログ電圧Vin9の振動を抑えるためには、十分なスルーレートが必要となり、消費電流が大きくなる。このため、入力信号Ain9の帯域を制限せず、また消費電流を大きくせずにキックバックノイズ938の影響を低減することが課題となる。
【0028】
(実施形態)
図3は、本開示の一実施形態に係る逐次比較型ADC1を示す回路図である。本実施形態に係る逐次比較型ADC1は、アナログの入力信号Ainに応じたデジタルの出力信号Doutを生成する。逐次比較型ADC1は、バッファ回路10、容量性D/Aコンバータ12、比較器14およびロジック回路16(制御回路)を備える。
【0029】
バッファ回路10は、アナログの入力信号Ainが入力され、アナログの入力信号Ainに応じたアナログ電圧Vin(アナログ信号)を生成する。アナログ電圧Vinは、容量性DAC12に入力される。
【0030】
容量性DAC12は、アナログの入力信号Ainに応じたアナログ信号DACinをサンプリングし、デジタル入力Dinに応じたアナログの出力電圧DACout(アナログの出力信号)を生成する。具体的には、容量性DAC12は、デジタル入力Dinに応じて、デジタルの出力信号Doutの最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットについての出力電圧DACoutを順次生成する。アナログの出力電圧DACoutは、比較器14に入力される。
【0031】
比較器14は、容量性DAC12が生成した出力電圧DACoutと比較基準電圧Vref2とを比較し、比較結果に応じた信号Scomを生成する。以下、比較基準電圧Vref2の電圧値をVref2と称する。また、比較器14は、デジタルの出力信号Doutの最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットについての出力電圧DACoutと比較基準電圧Vref2とを逐次比較し、それぞれの比較結果に応じた信号Scomを生成する。
【0032】
ロジック回路16は、比較器14の比較結果(具体的には、信号Scom)に応じたデジタル入力Dinを生成する。ロジック回路16は、比較器14による逐次比較の結果に基づいて、デジタルの出力信号Doutを生成する。具体的には、ロジック回路16は、比較器14の比較結果に基づいて、最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットの0,1を判定し、出力信号Doutを生成する。本実施形態では、ロジック回路16が4ビットの出力信号Doutを生成する例を説明するが、出力信号Doutのビット数は、3ビット以下であってよいし、5ビット以上であってよい。
【0033】
図4は、本開示の一実施形態に係る容量性DAC12の回路図である。本実施形態に係る容量性DAC12は、主として、複数のキャパシタC0~C3、調整キャパシタCs、スイッチSW0~SW3,SWs1~SWs3,SWt、入力経路120(入力ノード)、基準経路122および出力経路124(出力ノード)を有する。
【0034】
入力経路120は、スイッチSWs3を介してアナログ電圧Vinが入力されるべきノードである。スイッチSWs3は、アナログ電圧Vinを出力するバッファ回路10と入力経路120との間に配置される。スイッチSWs3がオンのとき、入力経路120にアナログ電圧Vinが入力され、スイッチSWs3がオフのとき、入力経路120にアナログ電圧Vinが入力されない。基準経路122は、リファレンス電圧Vref1が入力される。以下、リファレンス電圧Vref1の電圧値をVref1と称する。
【0035】
複数のキャパシタC0~C3は、デジタルの出力信号Doutの4ビット分に対応する。具体的には、キャパシタC3は、最上位ビットに対応し、キャパシタC2は、最上位から2ビット目に対応し、キャパシタC1は、最上位から3ビット目に対応し、キャパシタC0は、最下位ビットに対応する。キャパシタC0、キャパシタC1、キャパシタC2およびキャパシタC3の容量値は、「C」を基準容量値とすると、それぞれ[1C]、[2C]、[4C]および[8C]である。すなわち、キャパシタC0~C3は、それぞれ、所定の比率で重み付けされた容量値(=2xC(ただし、x=0~3の整数))をもつ。以下、キャパシタの一端とは、そのキャパシタの入力経路120側の端部を指し、キャパシタの他端とは、そのキャパシタの出力経路124側の端部を指すものとする。
【0036】
スイッチSW0~SW3のそれぞれは、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端を入力経路120、基準経路122またはグランド端子に接続する。スイッチSW0~SW3の動作は、ロジック回路16のデジタル入力Dinに基づき制御される。
【0037】
出力経路124は、アナログの出力電圧DACoutを出力すべきノードである。出力経路124は、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの他端に接続される。スイッチSWtは、出力経路124を比較基準端子130またはグランド端子132に接続できる。また、スイッチSWtは、出力経路124を比較基準端子130およびグランド端子132のいずれにも接続しない(オフ)こともできる。比較基準端子130には、比較基準電圧Vref2が供給される。比較基準電圧Vref2は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る比較基準電圧Vref2は、リファレンス電圧Vref1の1/2の電圧(=1/2×Vref1)であるものとする。グランド端子には、回路基準電圧(以下、「GND」とも称する。)が供給される。
【0038】
調整キャパシタCsは、調整電圧でチャージされ、調整電圧に応じた電圧を入力経路120に供給する。具体的には、調整キャパシタCsは、比較器14における逐次比較のあとの次のサンプリングが容量性DAC12において行われる前に、調整電圧に応じた電圧を入力経路120に供給する。本実施形態では、調整キャパシタCsは、スイッチSWs3がオフの状態で、調整キャパシタCsの一端が入力経路120に接続されることにより、入力経路120に調整電圧を供給する。
【0039】
入力経路120には、サンプリング時にアナログ電圧Vinが入力される。本実施形態では、入力経路120にアナログ信号Vinが入力される前に、調整電圧に応じた電圧を入力経路120に供給しておく。これにより、サンプリング時におけるスイッチSW0~SW3,SWs3の切り替わりに際して、キャパシタC0~C3の一端における電圧の変化を抑えることができる。この結果、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる。
【0040】
調整キャパシタCsは、特に限定されるものではないが、たとえば複数のキャパシタC0~C3の合成容量またはその合成容量を超える容量値を有してよい。調整キャパシタCsがその合成容量以上の容量値を有することにより、サンプリング時において、より確実に、キャパシタC0~C3の一端における電圧の変化を抑え、キックバックノイズの発生を抑制できる。
【0041】
スイッチSWs1は、調整キャパシタCsの一端を入力経路120または基準経路122に接続する。スイッチSWs2は、調整キャパシタCsの他端と出力経路124との間に配置される。スイッチSWs2がオンのとき、調整キャパシタCsの他端が出力経路124に接続され、スイッチSWs2がオフのとき、調整キャパシタCsの他端が出力経路124から切断される。
【0042】
以下、
図5~
図9を参照して、本実施形態に係る容量性DAC12の動作の一例を説明する。
図5は、サンプリング時における容量性DAC12を示す図である。
図6は、逐次比較が開始されるときの容量性DAC12を示す図である。
図7は、逐次比較が終わったときの容量性DAC12を示す図である。
図8は、入力経路120の電圧を調整するときの容量性DAC12を示す図である。
図9は、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端が入力経路120に接続されるときの容量性DAC12を示す図である。
【0043】
まず、
図5を参照しながら、容量性DAC12におけるアナログ電圧Vinのサンプリングおよび調整キャパシタCsのチャージを説明する。本実施形態に係る容量性DAC12は、入力経路120を介して複数のキャパシタC0~C3にアナログ電圧Vinを供給することによって、アナログ電圧Vinをサンプリングする。
【0044】
具体的には、
図5に示すように、スイッチSW0~SW3は、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端を入力経路120に接続させる。スイッチSWs3はオンであり、入力経路120にアナログ電圧Vinが入力される。スイッチSWtは、出力経路124を比較基準端子130に接続し、出力経路124に比較基準電圧Vref2が供給される。これにより、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれは、アナログ電圧Vinおよび比較基準電圧Vref2に応じた電荷を蓄積し、アナログ電圧Vinがサンプリングされる。このとき、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれには、キャパシタC0~C3のそれぞれの他端を基準としたとき、それぞれの一端にVs(=Vin-1/2×Vref1)の電圧がかかる。複数のキャパシタC0~C3は、この電圧Vsに応じた電荷を蓄積する。
【0045】
本実施形態では、アナログ信号Vinのサンプリング時に、調整キャパシタCsが調整電圧Vcでチャージされる。具体的には、
図5に示すように、スイッチSWs1が、調整キャパシタCsの一端を基準経路122に接続させる。これにより、調整キャパシタCsの一端には、リファレンス電圧Vref1が供給される。スイッチSWs2はオンであり、調整キャパシタCsの他端が出力経路124に接続される。これにより、調整キャパシタCsの他端が、出力経路124を介して、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの他端に接続されるとともに、調整キャパシタCsの他端に比較基準電圧Vref2が供給される。これにより、調整キャパシタCsは、比較基準電圧Vref2およびリファレンス電圧Vref1に応じた調整電圧Vcでチャージされる。具体的には、調整キャパシタCsは、その他端を基準としたとき、Vc=1/2×Vref1(=Vref1-Vref2)の調整電圧Vcでチャージされる。
【0046】
回路構成などによって決まるサンプリング時間が経過すると、スイッチSWs2およびスイッチSWtがそれぞれオフとなり、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれに蓄積された電荷がホールドされる。その後、スイッチSWs3をオフとすることにより、アナログ電圧Vinのサンプリングが完了する。
【0047】
次いで、容量性D/Aコンバータ12は、デジタル入力Dinに応じて、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端にGNDまたはリファレンス電圧Vref1を供給することによって、アナログの出力電圧DACoutを生成する。具体的には、デジタル入力Dinに応じて、スイッチSW0~SW3が動作する。より具体的には、
図6に示すように、スイッチSW0~SW3は、キャパシタC0~C2のそれぞれの一端をグランド端子に接続し、キャパシタC3の一端を基準経路122に接続する。これにより、デジタル入力Dinに応じた出力電圧DACoutが生成される。出力電圧DACoutは、次の式(1)で表される。
【数1】
・・・(1)
【0048】
式(1)において、bit(n)(nは、0~3の整数)は、対応するキャパシタの一端に供給される電圧に応じた値(0または1)である。bit0はキャパシタC0に対応し、bit1はキャパシタC1に対応し、bit2はキャパシタC2に対応し、bit3はキャパシタC3に対応する。対応するキャパシタの一端にGNDが供給される場合、bit(n)は0となり、対応するキャパシタの一端にリファレンス電圧Vref1が供給される場合、bit(n)は1となる。
【0049】
比較器14は、出力電圧DACoutと比較基準電圧Vref2とを比較する。ロジック回路16は、比較器14の比較結果に基づきbit3(最上位ビット)を判定する。具体的には、ロジック回路16は、出力電圧DACoutが比較基準電圧Vref2よりも小さい場合には、bit3を1と判定し、出力電圧DACoutが比較基準電圧Vref2以上である場合には、bit3を0と判定してよい。ロジック回路16は、比較器14の比較結果に応じてデジタル入力Dinを容量性DAC12に入力する。
【0050】
以降、容量性DAC12におけるデジタル入力Dinに応じたスイッチSW0~SW3と、比較器14における出力電圧DACoutと比較基準電圧Vref2との比較が繰り返される。ロジック回路16は、比較器14による逐次比較の結果に基づいて、残りのビット(bit0~bit2)を判定し、デジタルの出力信号Doutを生成する。
【0051】
図7には、比較器14による逐次比較が終わり、ロジック回路16によってデジタルの出力信号Doutが生成されたあとの容量性DAC20が示される。このとき、本例では、スイッチSW0~SW3は、キャパシタC0,C2のそれぞれの一端を基準経路122に接続し、キャパシタC1,C3のそれぞれの一端をグランド端子に接続させる。したがって、デジタルの出力信号Doutは、(0101)となる。
【0052】
調整キャパシタCsは、比較器14による逐次比較のあとの次のサンプリングが行われる前に、調整電圧Vcに応じた電圧を入力経路120に供給する。本実施形態では、
図8に示すように、スイッチSWs2がオフからオンとなり、調整キャパシタCsの他端に出力経路124が接続される。このとき、スイッチSWtは、出力経路124をグランド端子に接続させるため、調整キャパシタCsの他端には、出力経路124を介して、GNDが供給される。スイッチSWs1は、スイッチSWs3がオフの状態で、調整キャパシタCsの一端を入力経路120に接続させる。調整キャパシタCsには、調整電圧Vc(=1/2×Vref1)で事前にチャージされているため、入力経路120は、1/2×Vref1の電圧が供給される。
【0053】
次いで、
図9に示すように、スイッチSW0~SW3のそれぞれは、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端を入力経路120に接続させる。このとき、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端の電圧は、Vref1から1/2×Vref1またはGNDから1/2×Vref1に変化し、その変化量は、±1/2×Vref1である。
【0054】
調整キャパシタCsを用いて入力経路120の電圧を調整せずに、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端を入力経路120に接続した場合、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端の電圧は、Vref1からアナログ電圧VinまたはGNDからアナログ電圧Vinに変化する。アナログ電圧Vinは、通常、GNDからVref1までの値となる。このため、調整キャパシタCsを用いて入力経路120の電圧を調整しない場合、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端を入力経路120に接続したとき、その一端における電圧の変化量は、最大でVref1となる。したがって、その最大でVref1の変動量に応じたキックバックノイズが発生する。これに対し、本実施形態では、電圧の変化量を±1/2×Vref1に抑えることができるため、電圧の変動に基づくキックバックノイズの発生を抑制できる。
【0055】
容量性DAC12において次のサンプリングが行われる際、スイッチSWs1は、調整キャパシタCsの一端を基準経路122に接続させ、スイッチSWs3は、オフからオンになる。これにより、入力経路120にはアナログ電圧Vinが供給される。このとき、スイッチSWs3がオンになる直前では、入力経路120の電圧は、1/2×Vref1である。このため、スイッチSWs3の切り替わりによる入力経路120における電圧の変動量は、最大で1/2×Vref1となる。調整キャパシタCsを用いない場合には最大でVref1の電圧の変化が生じるのに対し、本実施形態では、その変化量を最大で1/2×Vref1に抑えることができる。この結果、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、上記従来技術のように大容量のキャパシタを含むRCフィルタを用いなくともキックバックノイズの発生を抑制できる。また、本実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、バッファ回路10でキックバックノイズの発生を抑制する必要性を抑えられるため、高いスルーレートが求められず、その結果、消費電力の増加を抑制できる。このように、本実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、アナログ電圧Vinの帯域を制限せずに、また消費電力の増加を抑えつつ、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、調整キャパシタCsの一端に基準経路122を接続し、調整キャパシタCsの他端に出力経路124を接続することによって、調整キャパシタCsを調整電圧でチャージする例を説明した。これに限らず、基準経路122および出力経路124とは別の経路を用いて調整キャパシタCsを調整電圧でチャージしてよい。
【0058】
また、本実施形態では、比較器14による逐次比較が行われたあとに、調整キャパシタCsが入力経路120に調整電圧に応じた電圧を供給する例を説明した。これに限らず、調整キャパシタCsは、逐次比較中に入力経路120に調整電圧に応じた電圧を供給してよい。この場合、たとえば、スイッチSWs3がオフの状態で、調整キャパシタCsの一端に入力経路120を接続し、調整キャパシタCsの他端に、出力経路124とは別の経路を用いてGNDを供給することによって、入力経路120に調整電圧に応じた電圧を供給してよい。
【0059】
(比較技術)
比較技術に係る逐次比較型ADCは、バッファ回路、容量性DAC、比較器およびロジック回路を備える。比較技術では、容量性DACの構成が上記実施形態に係る容量性DAC12と異なる。比較技術に係るバッファ回路、容量性DACおよびロジック回路のそれぞれは、上記実施形態に係るバッファ回路10、比較器14およびロジック回路16のそれぞれと実質的に同一の機能を有してよい。
【0060】
図10は、比較技術に係る容量性DAC30の回路図である。
図10では、
図4に示した上記実施形態に係る容量性DAC12と実質的に同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。比較技術に係る容量性DAC30は、主として、調整キャパシタCsおよびスイッチSWs3を備えない点で、上記実施形態に係る容量性DAC12と異なる。
【0061】
比較技術に係る容量性DAC30は、入力経路120、基準経路122、出力経路124、複数のキャパシタC0~C3、スイッチSW0~SW3およびスイッチSWt1を有する。スイッチSWt1は、上記実施形態に係るスイッチSWtと異なり、出力経路124に比較基準電圧Vref2を供給できるが、出力経路124にGNDを供給しない。
【0062】
以下、
図11~
図13を参照しながら、比較技術に係る容量性DAC30の動作を説明する。
図11は、アナログ電圧Vinをサンプリングするときの容量性DAC30を示す図である。
図12は、逐次比較を開始するときの容量性DAC30を示す図である。
図13は、逐次比較が終わったときの容量性DAC30を示す図である。
【0063】
サンプリング時には、
図11に示すように、スイッチSW0~SW3は、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端を入力経路120に接続する。これにより、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの一端にアナログ電圧Vinが供給される。スイッチSWt1はオンであり、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれの他端に比較基準電圧Vref2が供給される。これにより、複数のキャパシタC0~C3のそれぞれがVs(=Vin-Vref2=Vin-1/2×Vref1)の電圧でチャージされ、アナログ電圧Vinがサンプリングされる。
【0064】
次いで、
図12に示すように、スイッチSWt1がオンからオフになる。スイッチSW0~SW3は、キャパシタC0~C2のそれぞれの他端をグランド端子に接続し、キャパシタC3の他端を基準経路122に接続する。容量性DAC30の出力電圧DACout1と比較基準電圧Vref2とが比較器によって比較され、その結果に応じて最上位ビットが判定される。以降、上記実施形態と同様にして比較器による逐次比較が行われ、アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号が生成される。
【0065】
逐次比較が終わったとき、本例では、
図13に示すように、キャパシタC0,C2のそれぞれの一端が基準経路122に接続され、キャパシタC1,C3のそれぞれの一端がグランド端子に接続される。次のサンプリングが行われるとき、スイッチSW0~SW3は、キャパシタC0~C3のそれぞれの他端を入力経路120に接続する。このとき、入力経路120にはアナログ電圧Vinが入力されるため、キャパシタC0,C2のそれぞれの他端の電圧はVref1からアナログ電圧Vinに変化し、キャパシタC1,C3のそれぞれの他端の電圧はGNDからアナログ電圧Vinに変化する。したがって、キャパシタC0~C3のそれぞれの他端における電圧の変化量は、最大でVref1であり、その変化量に応じたキックバックノイズが発生する。
【0066】
これに対し、上記実施形態に係る容量性DAC12によれば、サンプリング時において、スイッチSW0~SW3の切り替えによるキャパシタC0~C3のそれぞれの他端における電圧の変化量を1/2×Vref1に抑えることができる。その結果、サンプリング時におけるキックバックノイズの発生を抑制できる。
【0067】
(補足)
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものである。また、実施形態のみでなく、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【0068】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0069】
(項目1)
アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較型A/Dコンバータであって、
前記アナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリング結果とデジタル入力とに応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較する比較器と、
前記比較器の比較結果に応じた前記デジタル入力を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、前記アナログ信号が入力されるべき入力ノードと、複数のキャパシタと、調整電圧でチャージされる調整キャパシタとを有し、前記入力ノードを介して前記複数のキャパシタに前記アナログ信号を供給することによって前記アナログ信号をサンプリングし、
前記比較器は、前記デジタルの出力信号の最上位ビットから最下位ビットまでのそれぞれのビットについての前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次比較し、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較の結果に基づいて、前記デジタルの出力信号を生成し、
前記調整キャパシタは、前記逐次比較のあとの次のサンプリングが行われる前に、前記調整電圧に応じた電圧を前記入力ノードに供給する、
逐次比較型A/Dコンバータ。
【0070】
(項目2)
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続される、前記アナログの出力信号を出力すべき出力ノードをさらに有し、
前記調整キャパシタは、一端が前記入力ノードに接続され、他端に回路基準電圧が供給された前記出力ノードに接続されることによって、前記入力ノードに前記調整電圧に応じた電圧を供給する、
項目1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0071】
(項目3)
前記アナログ信号を出力する回路と前記入力ノードとの間に配置されたスイッチとをさらに備え、
前記複数のキャパシタのそれぞれの他端は、前記スイッチがオフであり、前記調整キャパシタの一端が前記入力ノードに接続された状態で、前記入力ノードに接続される、
項目2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0072】
(項目4)
前記容量性D/Aコンバータは、前記デジタル入力に応じて、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端に回路基準電圧またはリファレンス電圧を供給することによって、前記アナログの出力信号を生成し、
前記調整キャパシタは、前記アナログ信号のサンプリング時に、一端に前記リファレンス電圧が供給され、他端に前記比較基準電圧が供給されることによって、前記比較基準電圧および前記リファレンス電圧に応じた前記調整電圧でチャージされる、
項目1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0073】
(項目5)
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続され、前記アナログの出力信号を出力すべき出力ノードをさらに有し、
前記調整キャパシタの他端は、前記アナログ信号のサンプリング時に、前記比較基準電圧が供給された前記出力ノードに接続されることによって、前記調整電圧でチャージされる、
項目4に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0074】
(項目6)
前記容量性D/Aコンバータは、前記デジタル入力に応じて、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端に回路基準電圧またはリファレンス電圧を供給することによって、前記アナログの出力信号を生成し、
前記調整電圧は、前記リファレンス電圧の1/2の電圧である、
項目1~5のいずれか一項に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0075】
(項目7)
前記調整キャパシタの容量は、前記複数のキャパシタの合成容量である、
項目1~6のいずれか一項に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【符号の説明】
【0076】
1 逐次比較型A/Dコンバータ、10 バッファ回路、12 容量性D/Aコンバータ、14 比較器、16 ロジック回路、120 入力経路、122 基準経路、124 出力経路、SW0~SW3,SWs1~SWs3,SWt スイッチ、C0~C3 キャパシタ、Cs 調整キャパシタ、Ain アナログの入力信号、Vin アナログ電圧、DACout アナログの出力信号、Dout デジタルの出力信号、Din デジタル入力。