(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014228
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】接合部の監視構造
(51)【国際特許分類】
F16B 11/00 20060101AFI20240125BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16B11/00 A
C09J5/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116902
(22)【出願日】2022-07-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219004
【氏名又は名称】島田理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北上 景一
【テーマコード(参考)】
3J023
4J040
【Fターム(参考)】
3J023AA01
3J023BA01
3J023BB01
3J023EA01
3J023GA03
4J040MA02
4J040MB04
4J040MB06
4J040MB16
(57)【要約】
【課題】柱状の第1の部材の一方の端面と、縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを、接着剤により接合して一体化した構造物を作製する際に、第1の部材の一方の端面と第2の部材の底部の一方の面との間における接着剤の塗布状態を、作業者が目視により視認して監視することができるようにする。
【解決手段】柱状の第1の部材の一方の端面と縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを接着剤により接合した接合部の監視構造であって、第2の部材の縁部における底部近傍に、第2の部材の縁部の外周面から底部に至る貫通穴を形成した。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の第1の部材の一方の端面と縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを接着剤により接合した接合部の監視構造であって、
前記第2の部材の前記縁部における前記底部近傍に、前記第2の部材の前記縁部の外周面から前記底部に至る貫通穴を形成した
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴は、前記縁部の外周面と内周面とを貫通するとともに、前記底部の一部の領域を切り欠いて形成された
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項3】
請求項2に記載の接合部の監視構造において、
前記一部の領域は、前記底部における前記内周面に隣接する領域であり、かつ、前記底部における内底面から下方に位置する領域である
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の監視構造において、
前記貫通穴は、前記縁部の周面に沿ってそれぞれ等間隔に複数個配置されている
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項5】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の監視構造において、
前記貫通穴は、前記内底面と平行する方向に延長する長穴形状である
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項6】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の監視構造において、
前記第1の部材は、磁石であり、
前記第2の部材は、ヨークである
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項7】
請求項6に記載の監視構造において、
前記貫通穴を等間隔に4個形成した
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部の監視構造に関する。さらに詳細には、本発明は、中実または中空の柱状の第1の部材と縁部が立ち上がり形成された中実または中空の皿状の第2の部材とを接着剤を用いて接合するときに、第1の部材と第2の部材との接合部の接合状態を監視する際に用いて好適な接合部の監視構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、中実または中空の柱状の第1の部材の一方の端面と、縁部が立ち上がり形成された中実または中空の皿状の第2の部材の底部の一方の面とを、接着剤により接合して一体化した構造物を作製することが行われている。
【0003】
こうした構造物としては、例えば、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいて、磁気回路を安定させる際に用いる磁石とヨークとを接合して形成された構造物などが知られている。
【0004】
ここで、
図1(a)(b)には、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいて、磁気回路を安定させる構造物を形成する際に用いる磁石とヨークとを示す斜視構成説明図があらわされている。なお、
図1(a)には、磁石を示す斜視構成説明図があらわされている。また、
図1(b)には、ヨークを示す斜視構成説明図があらわされている。
【0005】
また、
図2には、
図1(a)(b)に示す磁石とヨークと接合して形成された磁気回路を安定させる構造物を示す斜視構成説明図があらわされている。
【0006】
これら
図1(a)(b)ならびに
図2を参照しながら具体的に説明すると、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいては、中実の柱状の第1の部材としての円柱形状の磁石100と、縁部が立ち上がり形成された中実の皿状の第2の部材としての縁部200aが立ち上がり形成された円板形状の底部200bを備えた皿状のヨーク200とを接合して(
図1(a)(b)を参照する。)、当該接合した磁石100とヨーク200とにより形成された磁気回路を安定させる構造物300を備えている(
図2を参照する。)。
【0007】
なお、説明の便宜上、
図1(a)(b)および
図2ならびに後述する各図において、紙面の上部側を「上方側」とし、紙面の下部側を「下方側」として説明する。
【0008】
より詳細には、構造物300を作製するには、磁石100の一方の端面である下方側に位置する円形状の下方底面100aと、ヨーク200の底部200bにおける一方の面である上方側に位置する内底面200bbとを接着剤(図示せず。)により接着して固定することにより(
図1(a)(b)を参照する。)、構造物300が形成される(
図2を参照する。)。
【0009】
上記のようにして、磁石100とヨーク200とを接着剤により接合することにより磁気回路を安定させる構造物300が形成され、当該構造物300がサーキュレーターやアイソレーターなどにおいて用いられる。
【0010】
ところで、従来の技術においては、上記した手法により磁石100とヨーク200とを接着剤により接合することにより構造物300が形成するものであるが、形成された構造物300において、磁石100の下方底面100aとヨーク200の内底面200bbとの間に、必要かつ十分な量の接着剤、即ち、適量の接着剤が塗布されているか否かを、作業者が視認して監視することにより確認する手段がないという問題点があった。
【0011】
また、従来の技術においては、磁石100の下方底面100aとヨーク200の内底面200bbとの間への接着剤の塗布作業の作業漏れや作業忘れがあった場合に、工程間検査で発見することができないという問題点があった。
【0012】
ここで、
図3には、
図2のA-A線による縦断面説明図であって、磁石の下方底面とヨークの内底面との間に必要かつ十分な量の接着剤、即ち、適量の接着剤が塗布されている状態の構造物を示す縦断面説明図があらわされている。
【0013】
また、
図4には、
図2のA-A線による縦断面説明図であって、磁石の下方底面とヨークの内底面との間に必要かつ十分な量の接着剤、即ち、適量の接着剤が塗布されていない状態の構造物を示す縦断面説明図があらわされている。
【0014】
これら
図3ならびに
図4を参照しながら具体的に説明すると、
図3に示すように磁石100の下方底面100aとヨーク200の内底面200bbとの間に必要かつ十分な量の接着剤400、即ち、適量の接着剤400が塗布された構造物300においては、構造物300が衝撃や振動などを受けた際にも、磁石100とヨーク200との接着位置の位置ずれの発生を抑止することができ、磁気回路を安定させる機能を発揮することができるものであった。
【0015】
一方、
図4に示すように、磁石100の下方底面100aとヨーク200の内底面200bbとの間に必要かつ十分な量の接着剤400、即ち、適量の接着剤400が塗布されていない構造物300においては、構造物300が衝撃や振動などを受けた際には、磁石100とヨーク200との接着位置の位置ずれが発生し、磁気回路を安定させる機能を十分には発揮することができない恐れがあった。
【0016】
このため、磁石100の下方底面100aとヨーク200の内底面200bbとを接着剤400で接着する際に、磁石100の下方底面100aとヨーク200の内底面200bbとの間における接着剤400の塗布状態を、作業者(例えば、工程間検査者やその他の第三者である。)が視認して監視することができる手法の提案が強く要望されていた。
【0017】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記したような従来の技術における種々の問題点や要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、柱状の第1の部材の一方の端面と、縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを、接着剤により接合して一体化した構造物を作製する際に、第1の部材の一方の端面と第2の部材の底部の一方の面との間における接着剤の塗布状態を、作業者が目視により視認して監視することができるようにした接合部の監視構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明による接合部の監視構造は、柱状の第1の部材の一方の端面と縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを接着剤により接合するに際し、第2の部材の縁部における底部近傍に、第2の部材の縁部の外周面から底部に至る貫通穴を形成するようにしたものである。
【0020】
従って、本発明による接合部の監視構造によれば、第1の部材の一方の端面と第2の部材の底部の一方の面とを接着剤により接合した際に、作業者は貫通穴を目視して視認することにより、第1の部材の一方の端面と第2の部材の底部の一方の面との間における接着剤の塗布状態を、作業者の目視により視認して監視することができるようになる。
【0021】
即ち、本発明による接合部の監視構造は、柱状の第1の部材の一方の端面と縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを接着剤により接合した接合部の監視構造であって、上記第2の部材の上記縁部における上記底部近傍に、上記第2の部材の上記縁部の外周面から上記底部に至る貫通穴を形成するようにしたものである。
【0022】
また、本発明による接合部の監視構造は、上記した本発明による接合部の監視構造において、上記貫通穴は、上記縁部の外周面と内周面とを貫通するとともに、上記底部の一部の領域を切り欠いて形成されるようにしたものである。
【0023】
また、本発明による接合部の監視構造は、上記した本発明による接合部の監視構造において、上記一部の領域は、上記底部における上記内周面に隣接する領域であり、かつ、上記底部における内底面から下方に位置する領域であるようにしたものである。
【0024】
また、本発明による接合部の監視構造は、上記した本発明による接合部の監視構造において、上記貫通穴は、上記縁部の周面に沿ってそれぞれ等間隔に複数個配置されるようにしたものである。
【0025】
また、本発明による接合部の監視構造は、上記した本発明による接合部の監視構造において、上記貫通穴は、上記内底面と平行する方向に延長する長穴形状であるようにしたものである。
【0026】
また、本発明による接合部の監視構造は、上記した本発明による接合部の監視構造において、上記第1の部材は、磁石であり、上記第2の部材は、ヨークであるようにしたものである。
【0027】
また、本発明による接合部の監視構造は、上記した本発明による接合部の監視構造において、上記貫通穴を等間隔に4個形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以上説明したように構成されているので、柱状の第1の部材の一方の端面と、縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部の一方の面とを、接着剤により接合して一体化した構造物を作製する際に、第1の部材の一方の端面と第2の部材の底部の一方の面との間における接着剤の塗布状態を、作業者が目視により視認して監視することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1(a)(b)は、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいて、磁気回路を安定させる構造物を形成する際に用いる磁石とヨークとを示す斜視構成説明図である。なお、
図1(a)は、磁石を示す斜視構成説明図である。また、
図1(b)は、ヨークを示す斜視構成説明図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)(b)に示す磁石とヨークと接合して形成された磁気回路を安定させる構造物を示す斜視構成説明図である。
【
図3】
図3は、
図2のA-A線による縦断面説明図であって、磁石の下方底面とヨークの内底面との間に必要かつ十分な量の接着剤、即ち、適量の接着剤が塗布されている状態の構造物を示す縦断面説明図である。
【
図4】
図4は、
図2のA-A線による縦断面説明図であって、磁石の下方底面とヨークの内底面との間に必要かつ十分な量の接着剤、即ち、適量の接着剤が塗布されていない状態の構造物を示す縦断面説明図である。
【
図5】
図5(a)(b)は、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造を示し、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいて、磁気回路を安定させる構造物を形成する際に用いる磁石とヨークとを示す斜視構成説明図である。なお、
図5(a)は、磁石を示す斜視構成説明図である。また、
図5(b)は、ヨークを示す斜視構成説明図である。
【
図6】
図6(a)(b)(c)は、
図5(b)に示す本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造に用いるヨークを示す説明図である。なお、
図6(a)は、
図5(b)のB矢視を正面視とした場合の正面説明図である。また、
図6(b)は、
図5のB矢視を正面視とした場合の平面説明図である。また、
図6(c)は、
図6(a)のC-C線による断面説明図である。
【
図7】
図7(a)(b)(c)は、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用した磁石およびヨークの寸法のならびにそれらを接合して構造物を形成した際の組み合わせの例を示す図表である。なお、
図7(a)は、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用した磁石の寸法を示す図表であり、径L3と高さL4とのついてそれぞれA~Jの10個の例を示す図表である。また、
図7(b)は、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用したヨークの寸法を示す図表であり、外径L5、内径L6、深さL7ならびに厚みL8についてそれぞれa~eの5個の例を示す図表である。また、
図7(c)は、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用した構造物を形成した際における、
図7(a)に示す磁石と
図7(b)に示すヨークとの組み合わせを示す図表である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造に用いるヨークの底部の内底面に接着剤を塗布する作業の一例を示す概念説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造に用いるヨークの内底面に接着剤を塗布した状態を示す平面説明図である。
【
図10】
図10(a)(b)は、本願出願人よる実験結果に関して、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造について、磁石の下方底面とヨークの内底面との概ね界面全体にわたって接着剤が塗布されている状態の構造物を示す説明図である。なお、
図10(a)は、
図3ならびに
図4に相当する縦断面説明図である。また、
図10(b)は、
図10(a)に示す構造物について、貫通穴から接着剤を視認した状態を示す説明図である。
【
図11】
図11(a)(b)は、本願出願人よる実験結果に関して、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造について、磁石の下方底面とヨークの内底面との界面の一部の小領域にのみ接着剤が塗布されている状態の構造物を示す説明図である。なお、
図11(a)は、
図3ならびに
図4に相当する縦断面説明図である。また、
図11(b)は、
図11(a)に示す構造物について、貫通穴から接着剤を視認した状態を示す説明図である。
【
図12】
図12(a)(b)は、本願出願人よる実験結果に関して、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造について、ヨークに形成された貫通穴にまで接着剤が塗布されている状態の構造物を示す説明図である。なお、
図12(a)は、
図3ならびに
図4に相当する縦断面説明図である。また、
図12(b)は、
図12(a)に示す構造物について、貫通穴から接着剤を視認した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による接合部の監視構造の実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
【0031】
なお、以下の「発明を実施するための形態」の項の説明においては、
図1乃至
図4の各図を参照しながら説明した構成ならびに作用と同一あるいは相当する構成ならびに作用については、
図1乃至
図4の各図において用いた符号と同一の符号をそれぞれ付して示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は適宜に省略する。
【0032】
(I) 本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造の構成の説明
【0033】
図5(a)(b)には、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造を示し、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいて、磁気回路を安定させる構造物を形成する際に用いる磁石とヨークとを示す斜視構成説明図があらわされている。なお、
図5(a)には、磁石を示す斜視構成説明図があらわされている。また、
図5(b)には、ヨークを示す斜視構成説明図があらわされている。
【0034】
また、
図6(a)(b)(c)には、
図5(b)に示す本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造に用いるヨークを示す説明図があらわされている。なお、
図6(a)には、
図5(b)のB矢視を正面視とした場合の正面説明図があらわされている。また、
図6(b)には、
図5のB矢視を正面視とした場合の平面説明図があらわされている。また、
図6(c)には、
図6(a)のC-C線による断面説明図があらわされている。
【0035】
これら、
図5(a)(b)ならびに
図6(a)(b)(c)を参照しながら説明すると、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造と従来の技術とを比較すると、縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材としてのヨークの構成が異なる。
【0036】
即ち、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造における第2の部材としてのヨーク10は、従来の技術におけるヨーク200とは異なり、円板形状の底部14から立ち上がり形成された縁部12の周面に、同一の寸法かつ同一の形状に形成された4箇所の貫通穴20が穿設されている。
【0037】
ここで、ヨーク10は、縁部12が立ち上がり形成された円板形状の底部14を備えた中実の皿状の形状を備えている。
【0038】
縁部12の周面に形成された4個の貫通穴20は、縁部12の周面に沿ってそれぞれ等間隔に配置されている。
【0039】
そして、4個の貫通穴20のそれぞれは、ヨーク10の縁部12における底部14近傍において、ヨーク10の縁部12の外周面12aからヨーク10の底部14に至るように形成されている。
【0040】
より詳細には、4個の貫通穴20のそれぞれは、縁部12の外周面12aと内周面12bとを貫通するとともに、底部14の一部の領域を切り欠いて形成された切り欠き部16を設けるようにして構成されている。
【0041】
ここで、底部14の一部を切り欠いた領域である切り欠き部16は、底部14における縁部12の内周面12bに隣接する領域であり、かつ、底部14における内底面14aaから下方に掘り下げるようにして設けられた領域である。
【0042】
換言すれば、貫通穴20は、縁部12の外周面12aと内周面12bとを貫通するとともに、底部14の一部の領域を切り欠いて形成された切り欠き部16、即ち、底部14における縁部12の内周面12bに隣接する領域であり、かつ、底部14における内底面14aaから下方に掘り下げるようにして設けられた領域である切り欠き部16を形成するようにして、内底面14aと平行する方向に延長して穿設されている。
【0043】
本実施の形態においては、4個の貫通穴20のそれぞれは、短径L1が上下方向、即ち、内底面14aの延長方向と直交する方向に延長し、かつ、長径L2が短径L1と直交する方向、即ち、内底面14aと平行する方向に延長した長穴形状に形成されている。
【0044】
このように、貫通穴20を内底面14aと平行する方向に延長する長穴形状とすることにより、貫通穴20を円形の開口とする場合に比べて、
図6(a)に示す正面説明図において、作業者が貫通穴20を外周面12a側から内周面12b側方向に向かって覗いて内底面14aを視認した際に、円形の開口面積に比して少ない開口面積により円形の場合と同じ領域を視認することが可能となる。
【0045】
このため、貫通穴20を円形の開口とするよりも、貫通穴20を内底面14aと平行する方向に延長する長穴形状の開口とした方が、縁部12を穿設する際の切削面積を小さくすることが可能なため、縁部12の強度をより確保することができるようになる。
【0046】
また、上記したように、貫通穴20においては、ヨーク10の底部14に切り欠き部16が形成されているため、作業者が貫通穴20を外周面12a側から内周面12b側方向に向かって覗いて内底面14aを視認した際に、内底面14aの位置をおり一層明瞭に視認することができるようになる。
【0047】
ここで、
図7(a)(b)(c)には、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用した磁石およびヨークの寸法のならびにそれらを接合して構造物を形成した際の組み合わせの例を示す図表があらわされている。
【0048】
即ち、
図7(a)には、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用した磁石の寸法を示す図表があらわされており、径L3と高さL4とのついてそれぞれA~Jの10個の例を示す図表があらわされている。
【0049】
また、
図7(b)には、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用したヨークの寸法を示す図表があらわされており、外径L5、内径L6、深さL7ならびに厚みL8についてそれぞれa~eの5個の例を示す図表があらわされている。
【0050】
さらに、
図7(c)には、本願出願人が本願発明にかかる実験に際して使用した構造物を形成した際における、
図7(a)に示す磁石と
図7(b)に示すヨークとの組み合わせを示す図表があらわされている。
【0051】
これら
図7(a)(b)(c)に示す例により形成された構造物(
図10(a)、
図10(a)ならびに
図12(a)を参照する。)においては、貫通穴20の寸法は、例えば、L1が0.5mm程度、L2が1.00mm程度あればよい。
【0052】
(II) 本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造の作製方法ならびに監視方法の説明
【0053】
以上の構成において、本願出願人による実験においては、
図7(c)の組み合わせによる構造物(
図10(a)、
図11(a)ならびに
図12(a)を参照する。)を作製するにあたっては、まず、
図8に示すように、作業者が手指500により接着剤を塗布するためのハンディタイプの電動ディスペンサー600を把持して、作業者が電動ディスペンサー600を作動することによって、ヨーク10の底部14の内底面14a上に接着剤400を塗布する(
図9を参照する。)。
【0054】
その後に、作業者は、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとを接着剤400を介して接着して固定する作業を行う。
【0055】
これにより、磁石100とヨーク10とによって、
図2に示すと同様な構造物30が形成される。
【0056】
ここで、
図10(a)(b)、
図11(a)(b)ならびに
図12(a)(b)には、ヨーク10として「a(
図7(b)を参照する。)」を用い、かつ、磁石100として「A(
図7(a)を参照する。)」を用いた組み合わせ(
図7(c)を参照する。)による構造物30を用いるとともに、貫通穴20の寸法を「L1=0.5mm」かつ「L2=1.00mm」とした場合の実験結果を示している。
【0057】
なお、
図10(a)(b)には、本願出願人よる実験結果に関して、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造について、磁石の下方底面とヨークの内底面との概ね界面全体にわたって接着剤が塗布されている状態の構造物を示す説明図があらわされている。なお、
図10(a)には、
図3ならびに
図4に相当する縦断面説明図があらわされている。また、
図10(b)には、
図10(a)に示す構造物について、貫通穴から接着剤を視認した状態を示す説明図があらわされている。
【0058】
また、
図11(a)(b)には、本願出願人よる実験結果に関して、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造について、磁石の下方底面とヨークの内底面との界面の一部の小領域にのみ接着剤が塗布されている状態の構造物を示す説明図があらわされている。なお、
図11(a)には、
図3ならびに
図4に相当する縦断面説明図があらわされている。また、
図11(b)には、
図11(a)に示す構造物について、貫通穴から接着剤を視認した状態を示す説明図があらわされている。
【0059】
さらに、
図12(a)(b)には、本願出願人よる実験結果に関して、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造について、ヨークに形成された貫通穴にまで接着剤が塗布されている状態の構造物を示す説明図があらわされている。なお、
図12(a)には、
図3ならびに
図4に相当する縦断面説明図があらわされている。また、
図12(b)には、
図12(a)に示す構造物について、貫通穴から接着剤を視認した状態を示す説明図があらわされている。
【0060】
まず、
図10(a)に示すように、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとの概ね界面全体にわたって、接着剤400が塗布されている状態の場合について説明する。
【0061】
この場合には、
図10(b)に示すように、作業者が4個の貫通穴20のそれぞれからヨーク10の内部を視認した場合においては、少なくとも1個の貫通穴20については、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとが接着剤400により接着されている状態を視認して監視するすることができた。
【0062】
次に、
図11(a)に示すように、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとの界面の一部の小領域についてのみ、接着剤400が塗布されている状態の場合について説明する。
【0063】
この場合には、
図11(b)に示すように、作業者が4個の貫通穴20のそれぞれからヨーク10の内部を視認した場合においては、少なくとも1個の貫通穴20については、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとが接着剤400により接着されていない状態を視認して監視することができた。
【0064】
さらに、
図12(a)に示すように、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとを接着剤400により接着する際に、ヨーク10に形成された貫通穴20のいずれかにまで接着剤400が溢れ出てしまった場合について説明する。
【0065】
この場合には、
図12(b)に示すように、作業者が4個の貫通穴20のそれぞれからヨーク10の内部を視認した場合においては、少なくとも1個の貫通穴20については、貫通穴20の内部にまで接着剤400が溢れ出てしまった状態を視認して監視することができた。
【0066】
なお、本願出願人の実験結果によれば、ヨーク10として「a(
図7(b)を参照する。)」を用い、かつ、磁石100として「A(
図7(a)を参照する。)」を用いた組み合わせ(
図7(c)を参照する。)以外の構造物30を用いた場合や、「L1=0.5mm」かつ「L2=1.00mm」以外の貫通穴20の寸法の場合においても、上記した
図10(a)(b)、
図11(a)(b)ならびに
図12(a)(b)に示す実験結果と同様な実験結果であったので、ヨーク10と磁石100の他の組み合わせや貫通穴20の他の寸法に関する実験結果の説明は省略する。
【0067】
ここで、例えば、検査時の指標として、「4箇所ある貫通穴20をそれぞれ視認した際に、2箇所以上の貫通穴20において
図10(b)に示す状態を視認することができた場合には、接着剤400の量が必要かつ十分な量、即ち、接着剤400の量が適量であるとして検査合格とする。」などのような、外観検査基準を予め設けるようにしておくと、作業者は検査合格か検査不合格かを容易に判定することができるようになる。
【0068】
(III) 本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造の作用効果
【0069】
従って、本発明の実施の形態の一例による接合部の監視構造によれば、第1の部材たる磁石100の一方の端面たる下方底面100aと、第2の部材たるヨーク10の底部14の一方の面たる内底面14aとを接着剤400により接合するときに、作業者は、貫通穴20を目視して視認することにより、磁石100の下方底面100aとヨーク10の内底面14aとの界面における接着剤400の塗布状態を、目視により視認して監視することができるようになる。
【0070】
(IV) その他の実施の形態について
【0071】
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができるものである。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換えあるいは変更などを適宜に行うことができる。
【0072】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(IV-1)乃至(IV-8)に説明するように変形してもよい。
【0073】
(IV-1) 上記した実施の形態においては、第1の部材として磁石100を用い、また、第2の部材としてヨーク10を用いた場合について説明したが、第1の部材や第2の部材は、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、磁石100やヨーク10は、第1の部材や第2の部材の一例に過ぎないものであり、第1の部材として磁石以外の任意の部材を用いてもよいし、また、第2の部材としてヨーク以外の任意の部材を用いてもよい。
【0074】
(IV-2) 上記した実施の形態においては、第1の部材としての円柱形状の磁石100を用い、また、第2の部材として縁部200aが立ち上がり形成された円板形状の底部200bを備えた皿状のヨーク200を用いた場合について説明したが、第1の部材の形状や第2の部材の形状は、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、これらは第1の部材や第2の部材の形状の一例に過ぎないものであり、第1の部材として三角柱形状、四角柱形状あるいは五角柱形状以上の多角柱形状のような角柱形状のものを用いてよいし、第2の部材として縁部が立ち上がり形成された三角板形状、四角板形状あるいは五角板形状以上の多角板形状の角板形状の底部を備えた皿状のものを用いてもよい。
【0075】
(IV-3) 上記した実施の形態においては、第2の部材としてのヨーク10に長長穴形状の貫通穴20を形成した場合について説明したが、貫通穴20の形状は、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、第2の部材に形成する貫通穴の形状は、円形穴形状でもよいし、楕円穴形状でもよいし、三角穴形状、四角穴形状あるいは五角穴形状以上の多角穴形状の角穴形状でもよい。
【0076】
(IV-4) 上記した実施の形態においては、第2の部材としてのヨーク10に4個の貫通穴20を形成した場合について説明したが、貫通穴20を形成する数は、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、第2の部材に形成する貫通穴の数は、第2の部材の寸法などの設計条件などに応じて、1個、2個、3個あるいは5個以上の任意の複数個としてもよい。なお、貫通穴の数が多くなれば、作業者より正確に接着剤の塗布状況を視認することができるようになる。
【0077】
(IV-5) 上記した実施の形態においては、第2の部材としてのヨーク10に形成された4個の貫通穴20が、全て同一の寸法かつ同一の形状を備えた場合について説明したが、貫通穴20は全て同一の寸法かつ同一の形状のものに限られるものではないことは勿論である。即ち、第2の部材に複数の貫通穴を形成する場合には、第2の部材の寸法などの設計条件などに応じて、異なる寸法や異なる形状のものが混在していてもよい。
【0078】
(IV-6) 上記した実施の形態においては、第1の部材としての中実の円柱形状の磁石100を用い、また、第2の部材として縁部200aが立ち上がり形成された円板形状の底部200bを備えた中実の皿状のヨーク200を用いた場合について説明したが、第1の部材や第2の部材は中実のものに限られるものではないことは勿論である。即ち、第1の部材と第2の部材とのいずれか一方が中実で他方が中空の場合でもよいし、あるいは、第1の部材と第2の部材との双方が中空の場合でもよい。
【0079】
(IV-7) 上記した実施の形態においては、ヨーク10の縁部12の周面に沿って4個の貫通穴20を等間隔に配置したが、貫通穴20を配置する間隔は、等間隔に限られるものではないことは勿論である。即ち、第2の部材の縁部に貫通穴を形成するに際して、当該縁部の周面に沿って互いに異なる間隔を開けて貫通穴を形成するようにしてもよい。
【0080】
(IV-8) 上記した実施の形態ならびに上記した(IV-1)乃至(IV-7)に示す各実施の形態や変形例などは、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、サーキュレーターやアイソレーターなどにおいて、磁気回路を安定させる際に用いる磁石とヨークとを接合して形成する構造物を作製する際などに用いると極めて有用である。
【符号の説明】
【0082】
10 ヨーク
12 縁部
12a 外周面
12b 内周面
14 底部
14a 内底面
16 切り欠き部
20 貫通穴
30 構造物
100 磁石
100a 下方底面
200 ヨーク
200a 縁部
200b 底部
200bb 内底面
300 構造物
400 接着剤
500 作業者の手指
600 ハンディタイプの電動ディスペンサー
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の第1の部材の一方の端面と、縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部における前記縁部の内周面に囲まれた内底面とを、接着剤により接合した接合部の監視構造であって、
前記第2の部材の前記縁部における前記底部近傍に、前記第2の部材の前記縁部の外周面と前記内周面とを貫通するとともに、前記内底面の前記内周面に隣接する領域の表面を下方に掘り下げて前記外周面から前記内底面まで連通させた貫通穴を形成し、
前記貫通穴は、前記底部の前記内底面と対向する外底面にまで到達していない
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴は、前記縁部の周面に沿ってそれぞれ等間隔に複数個配置されている
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴は、前記内底面と平行する方向に延長する長穴形状である
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか1項に記載の接合部の監視構造において、
前記第1の部材は、磁石であり、
前記第2の部材は、ヨークである
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項5】
請求項3に記載の接合部の監視構造において、
前記第1の部材は、磁石であり、
前記第2の部材は、ヨークである
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項6】
請求項5に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴を等間隔に4個形成した
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項7】
請求項6に記載の接合部の監視構造において、
前記磁石の径が、3.0mm乃至3.5mmであり、
前記磁石の高さが、0.7mm乃至1.2mmであり、
前記ヨークにおける前記外底面の径である外径が、3.8mm乃至4.3mmであり、
前記ヨークにおける前記内底面の径である内径が3.2mm乃至3.7mmであり、
前記ヨークにおける前記内底面からの前記縁部の高さである深さが、0.5mmであり、
前記ヨークにおける前記縁部の厚みが、1.0mm乃至1.3mmであるとき、
前記貫通穴の前記長穴形状における前記内底面の延長方向と直交する方向に延長する寸法たる短径が、0.5mmであり、かつ、前記貫通穴の前記長穴形状における前記内底面と平行する方向に延長する寸法たる長径が、1.00mmである
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の第1の部材の一方の端面と、縁部が立ち上がり形成された皿状の第2の部材の底部における前記縁部の内周面に囲まれた内底面とを、接着剤により接合した接合部の監視構造であって、
前記第2の部材の前記縁部における前記底部近傍に、前記第2の部材の前記縁部の外周面と前記内周面とを貫通するとともに、前記内底面の前記内周面に隣接する領域の表面を下方に掘り下げて前記外周面から前記内底面まで連通させた貫通穴を形成し、
前記貫通穴は、前記底部の前記内底面と対向する外底面にまで到達していない
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴は、前記縁部の周面に沿ってそれぞれ等間隔に複数個配置されている
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴は、前記内底面と平行する方向に延長する長穴形状である
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか1項に記載の接合部の監視構造において、
前記第1の部材は、磁石であり、
前記第2の部材は、ヨークである
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項5】
請求項3に記載の接合部の監視構造において、
前記第1の部材は、磁石であり、
前記第2の部材は、ヨークである
ことを特徴とする接合部の監視構造。
【請求項6】
請求項5に記載の接合部の監視構造において、
前記貫通穴を等間隔に4個形成した
ことを特徴とする接合部の監視構造。