(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142283
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】塗装システム及びそれを用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 13/02 20060101AFI20241003BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20241003BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20241003BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20241003BHJP
B05B 16/20 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
B05B13/02
B05D1/02 Z
B05D3/02 A
B05D3/06 102Z
B05B16/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054418
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 栄治
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA04
4D073CA16
4D073CB03
4D073DD02
4D073DD31
4D073DD36
4D073DD40
4D075AA01
4D075AA37
4D075AA54
4D075AA62
4D075AA67
4D075AA76
4D075AA78
4D075BB22X
4D075BB23X
4D075BB24Z
4D075BB25Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB56Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075EA06
4D075EA21
4F035AA03
4F035BC02
4F035CA02
4F035CA05
4F035CB04
4F035CB16
4F035CD06
4F035CD13
(57)【要約】
【課題】水系UV塗料を用いたワークの塗装において、乾燥時間を短くすることで、短時間でワークの塗料を完了させる。
【解決手段】塗装エリアと、ワークに向けて塗料を噴射するスプレーガンと、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させるセッティングエリアと、ワークに紫外線照射してワークに塗布された塗料を硬化させるUV照射エリアと、スプレーガンに塗料を供給する塗料供給手段と、スプレーガンに塗料噴霧用エアーを供給するエアー供給手段と、スプレーガンに供給する塗料を所定温度に加熱する塗料加熱手段と、スプレーガンに供給するエアーを所定温度に加熱するエアー加熱手段を具備し、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度に加熱した後に塗料及びエアーをスプレーガンに供給することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げることを特徴とする
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系UV塗料を用いてワークを塗装するための塗装システムであって、
ワークが配置される塗装エリアと、
該塗装エリアにおいてワークに向けて塗料を噴射するスプレーガン(41)を備えた塗装ロボットと、
ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させるためのセッティングエリアと、
ワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させるためのUV照射エリアと、
前記スプレーガン(41)に塗料を供給するための塗料供給手段(42)と、
前記スプレーガン(41)に塗料噴霧用のエアーを供給するためのエアー供給手段(47)と、
前記塗料供給手段(42)からスプレーガン(41)に供給する塗料を所定温度にまで加熱するための塗料加熱手段(43)と、
前記エアー供給手段(47)からスプレーガン(41)に供給するエアーを所定温度にまで加熱するためのエアー加熱手段(48)と、を具備し、
塗装エリア内にワークを配置した状態で、スプレーガン(41)に供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度にまで加熱した後に、塗料及びエアーをスプレーガン(41)に供給することで、スプレーガン(41)から噴霧される塗料の温度を上げ、温度を上げた塗料をスプレーガン(41)からワークに向けて噴霧してワークに塗布し、その後に、セッティングエリアにおいてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、UV照射エリアにおいてワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させる、ことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1に記載された塗装システムを用いた塗装方法であって、
塗装エリア内にワークを配置し、
スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを加熱した後に、スプレーガン(41)に塗料及びエアーを供給することで、スプレーガン(41)から噴霧される塗料の温度を上げ、
塗装エリア内において、温度を上げた塗料をスプレーガン(41)からワークに向けて噴霧してワークに塗布し、
塗装エリアにおいて塗料を塗布したワークをセッティングエリアに移動して、セッティングエリアにおいて、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、
セッティングエリアにおいて塗料に含まれる揮発成分を蒸発させたワークをUV照射エリアに移動して、UV照射エリアにおいてワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させる、ことを特徴とする塗装方法。
【請求項3】
水系UV塗料を用いてワークを塗装するための塗装システムであって、
中央エリア(2)と、該中央エリア(2)の周囲に中央エリア(2)と連通した状態で設置された、ワークに塗料を塗布するための塗装エリア(3)と、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させるためのセッティングエリア(4)と、ワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させるためのUV照射エリア(5)と、塗装が完了したワークを搬出するとともに塗装前のワークを搬入するための搬出入エリア(6)と、を具備するとともに、
前記中央エリア(2)又は塗装エリア(3)に設置された、前記塗装エリア(3)内においてワークに向けて塗料を噴射するためのスプレーガン(41)を備えた塗装ロボット(8)と、
前記スプレーガン(41)に塗料を供給するための塗料供給手段(42)と、
前記スプレーガン(41)に塗料噴霧用のエアーを供給するためのエアー供給手段(47)と、
前記塗料供給手段(42)からスプレーガン(41)に供給する塗料を所定温度に加熱するための塗料加熱手段(43)と、
前記エアー供給手段(47)からスプレーガン(41)に供給するエアーを所定温度に加熱するためのエアー加熱手段(48)と、
前記中央エリア(3)に回動自在に設置され、回動することで、搬出入エリア(6)に搬入された塗装前のワークを塗装エリア(3)内へ搬送し、塗装エリア(3)内において塗料が塗布されたワークをセッティングエリア(4)の正面側へ搬送し、セッティングエリア(4)内で揮発成分が蒸発されたワークをUV照射エリア(5)の正面側へ搬送し、及び、UV照射エリア(5)で紫外線が照射されたワークを搬出入エリア(6)の正面側へ搬送するワーク搬送手段(7)と、
セッティングエリア(4)の正前側に搬送されたワークのセッティングエリア(4)内への移送、UV照射エリア(5)の正前側に搬送されたワークのUV照射エリア(5)内への移送、搬出入エリア(6)の正前側に搬送されたワークの搬出入エリア(6)内への移送をそれぞれ行い、又は、セッティングエリア(4)内、UV照射エリア(5)内、搬出入エリア(6)内のワークをそれぞれ、セッティングエリア(4)の正前側、UV照射エリア(5)の正前側、搬出入エリア(6)の正前側に戻すためのワーク移送手段(29)と、
前記セッティングエリア(4)、UV照射エリア(5)、搬出入エリア(6)をそれぞれ密閉するための開閉扉(28)と、を具備し、
前記ワーク搬送手段(7)は、
中央エリア(3)に回動自在に設置された回動部(10)と、回動部(10)の外周側に等角度で連設された複数本のメインアーム(11)と、それぞれのメインアーム(11)の先端側に回動自在に備えられたワーク連結部(13)と、該ワーク連結部(13)を回動するための駆動部と、を具備し、
塗装エリア(3)内にワークを配置した状態で、スプレーガン(41)に供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度に加熱した後に、スプレーガン(41)に塗料及びエアーを供給することで、スプレーガン(41)から噴霧される塗料の温度を上げ、温度を上げた塗料をスプレーガン(41)からワークに向けて噴霧してワークに塗料を塗布し、
塗装エリア(3)内で塗料が塗布されたワークをセッティングエリア(4)、UV照射エリア(5)、及び搬出入エリア(6)に順次移動して、セッティングエリア(4)においてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、UV照射エリア(5)においてワークへ紫外線照射を行なうことでワークに塗布した塗料を硬化させ、その後にワークを搬出入エリア(6)から搬出する、ことを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
前記メインアーム(11)のそれぞれの先端部分に一対の第2旋回アーム(12)を連設し、該一対の第2旋回アーム(12)のそれぞれの先端側に前記ワーク連結部(13)を備えたことを特徴とする請求項3に記載の塗装システム。
【請求項5】
前記セッティングエリア用の開閉扉(28)及び搬出入エリア用の開閉扉(28)は、セッティングエリア(4)と中央エリア(2)との連通、及び搬出入エリア(6)と中央エリア(2)との連通を遮断した際に中央エリア(2)内に供給された空気を整流するための整流板(30)を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装システム及びそれを用いた塗装方法に係り、より詳しくは、塗装時間を短縮可能であるとともに環境への悪影響を防止可能とした塗装システム及びそれを用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの塗装では、熱を加えることで硬化してワークに焼き付けることが可能な熱硬化塗料を用いることが一般的であった。しかし、熱硬化塗料を用いた塗装では、塗料を塗布したワークに熱風を与えて焼き付けを行う工程に時間がかかるため、塗装ラインに大きなスペースが必要となり塗装システムの全体が大型化してしまうとともに塗装時間も長くなるという問題点が指摘されていた。
【0003】
即ち、熱硬化塗料を用いた塗装においては、ワークに塗料を塗布した後は、まずセッティングエリアにおいて4~5分程度の乾燥を行って揮発成分を蒸発させる。そしてその後に、乾燥炉等の加熱エリアにおいて、80度前後以上の高温の熱風をワークに加え、それにより塗料を硬化してワークへの焼き付けを行う必要がある。そしてそのとき、乾燥炉内で塗料の焼き付けを行う際には、乾燥炉内の昇温に30~40分程度を要し、更に熱風を加える時間も30~40分程度必要である。そのため従来は、塗装が終了したワークをコンベアによりワークを搬送しつつ、搬送の途中で、乾燥、加熱の工程を行っていたので、コンベアのラインが長くなり、塗装システムの全体が大型化してしまい、大きなスペースを必要としており、更に消費電力も大きかった。
【0004】
そこで本出願人は過去において、紫外線を照射することで硬化して塗膜になるUV塗料を用いることで、塗料を硬化するための加熱工程を不要にし、塗装に要する時間を短くするとともに、塗装装置全体を小さくすることを可能にした塗装システムを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-045712号公報
【特許文献2】特開2015-024395号公報
【特許文献3】特開2012-045513号公報
【特許文献4】特開2012-040450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来、塗料は揮発成分としてシンナー等の有機溶剤を使用しているが、有機溶剤を使用した塗料では、常に爆発や火災等の危険をはらんでいるために、塗装ブース内では防爆モーター等の防爆仕様の装置を用いる必要があり、それによりコストが高くなってしまっている。
【0007】
また、有機溶剤は公害などの環境被害を引き起こすために使用を差し控えるのが好ましいといわれているため、近年、溶剤系塗料に代わり、揮発成分として水を用いた水系塗料の使用が増えており、これにより、塗装コストを抑えるとともに環境にも優しい塗装を行うことを可能にしている。
【0008】
しかし、水系塗料では、揮発成分を蒸発させるためのセッティングに時間がかかるとい問題点が指摘されている。即ち、シンナーを揮発成分として用いた溶剤系塗料では、夏は蒸発速度の遅い夏用シンナー、冬は蒸発速度が速い冬用のシンナーを用いることでセッティング時間を調整することができるが、揮発成分として水を用いた場合は、水の沸点が決まっているために、セッティング時間を調整することができず、その結果、溶剤系UV塗料では1分程度で済むセッティング時間が、水系UV塗料では、60度で10分間程度の乾燥が必要となってしまっている。そのため、水系UV塗料を用いた塗装では、塗装時間が長くなってしまうという問題点が指摘されている。
【0009】
そこで本発明は、水系UV塗料を用いたワークの塗装において、乾燥時間を短くすることで、短時間でワークの塗料を完了することを可能とした塗装システム及びそれを用いた塗装方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の塗装システムは、
水系UV塗料を用いてワークを塗装するための塗装システムであって、
ワークが配置される塗装エリアと、
該塗装エリアにおいてワークに向けて塗料を噴射するスプレーガンを備えた塗装ロボットと、
ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させるためのセッティングエリアと、
ワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させるためのUV照射エリアと、
前記スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給手段と、
前記スプレーガンに塗料噴霧用のエアーを供給するためのエアー供給手段と、
前記塗料供給手段からスプレーガンに供給する塗料を所定温度にまで加熱するための塗料加熱手段と、
前記エアー供給手段からスプレーガンに供給するエアーを所定温度にまで加熱するためのエアー加熱手段と、を具備し、
塗装エリア内にワークを配置した状態で、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度にまで加熱した後に、スプレーガンに塗料及びエアーを供給することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げ、温度を上げた塗料をスプレーガンからワークに向けて噴霧してワークに塗布し、その後に、セッティングエリアにおいてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、UV照射エリアにおいてワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させる、ことを特徴としている。
【0011】
そしてこの塗装システムを用いた本発明の塗装方法は、
塗装エリア内にワークを配置し、
スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを加熱した後に、スプレーガンに塗料及びエアーを供給することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げ、
塗装エリア内において、温度を上げた塗料をスプレーガンからワークに向けて噴霧してワークに塗布し、
塗装エリアにおいて塗料を塗布したワークをセッティングエリアに移動して、セッティングエリアにおいて、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、
セッティングエリアにおいて塗料に含まれる揮発成分を蒸発させたワークをUV照射エリアに移動して、UV照射エリアにおいてワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗装システムでは、水系UV塗料を用いてワークの塗装を行う塗装システムにおいて、塗料供給手段からスプレーガンに供給する塗料を所定温度に加熱するための塗料加熱手段と、エアー供給手段からスプレーガンに供給するエアーを所定温度に加熱するためのエアー加熱手段を具備し、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを加熱した後に、スプレーガンに塗料及びエアーを供給することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げ、温度を上げた塗料をワークに塗布することとしている。即ち、本発明では、塗料を通常の温度よりも高い温度の状態にしてワークに塗布することとしている。そのため、塗料にふくまれる揮発成分である水の温度を常温よりも高くした状態でワークに塗布することができる。従って、それにより、常温の塗料を用いた場合と比較し、塗料に含まれる水を蒸発させるためのセッティング時間を短くすることが可能であり、乾燥時間を短くして短時間でワークの塗料を完了することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の塗装システムの実施例の外観を示す図である。
【
図2】本発明の塗装システムの実施例の内部を説明するための図である。
【
図3】本発明の塗装システムの実施例の内部を説明するための図である。
【
図4】本発明の塗装システムの実施例における塗装ロボットとワーク搬送手段を説明するための図である。
【
図5】本発明の塗装システムの実施例における塗装ロボットとワーク搬送手段を説明するための図である。
【
図6】本発明の塗装システムの実施例における塗装ロボットとワーク搬送手段を説明するための図である。
【
図7】本発明の塗装システムの実施例における塗装ロボットとワーク搬送手段を説明するための図である。
【
図8】本発明の塗装システムの実施例におけるワーク取付治具を説明するための図である。
【
図9】本発明の塗装システムの実施例におけるワーク移送手段を説明するための図である。
【
図10】本発明の塗装システムの実施例におけるワーク移送手段を説明するための図である。
【
図11】本発明の塗装システムの実施例における塗料を加熱するための手段を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求項1に記載の本発明の塗装システムは、水系UV塗料を用いてワークを塗装するためのシステムとしており、ワークが配置される塗装エリアを有するとともに、この塗装エリアにおいてワークに向けて塗料を噴射するスプレーガンを備えた塗装ロボットを備えている。
【0015】
また、請求項1に記載の本発明の塗装システムでは、塗装エリアにおいてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させるためのセッティングエリアと、このセッティングエリアにおいて揮発成分が蒸発されたワークに紫外線を照射することでワークに塗布された塗料を硬化させるためのUV照射エリアを有している。
【0016】
更に、スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給手段と、スプレーガンに塗料噴霧用のエアーを供給するためのエアー供給手段を有しているとともに、塗料供給手段からスプレーガンに供給する塗料を所定温度にまで加熱するための塗料加熱手段と、エアー供給手段からスプレーガンに供給するエアーを所定温度にまで加熱するためのエアー加熱手段を具備している。
【0017】
そして、このように構成される塗装システムを用いた請求項2に記載の本発明の塗装方法では、塗装エリア内にワークを配置した状態で、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度に加熱した後に、塗料供給手段及びエアー供給手段によりスプレーガンに塗料及びエアーを供給し、それにより、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げながら、塗装エリア内において、温度を上げた塗料をスプレーガンからワークに向けて噴霧してワークに塗布する。
【0018】
そして、塗装エリアにおいて塗料を塗布したワークを、セッティングエリアに移動して、セッティングエリアにおいて、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させる。
【0019】
そして次に、セッティングエリアにおいて塗料に含まれる揮発成分を蒸発させたワークをUV照射エリアに移動して、UV照射エリアにおいて、ワークに紫外線を照射して、ワークに塗布された塗料を硬化させることとしている。
【0020】
次に請求項3に記載の本発明の塗装システムは、請求項1に記載の塗装システムと同様に、水系UV塗料を用いてワークを塗装するためのシステムとしており、ワークを搬送するワーク搬送手段が回動自在に設置される中央エリアを有しており、この中央エリアの周囲には、塗装エリアと、セッティングエリアと、UV照射エリアと、搬出入エリアが配置されている。
【0021】
塗装エリアは、ワークに塗料を塗布するためのエリアとしており、セッティングエリアは、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させるためのエリアとし、UV照射エリアは、ワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させるためのエリアとし、搬出入エリアは、塗装が完了したワークを搬出するとともに塗装前のワークを搬入するためのエリアとしている。
【0022】
そして中央エリア又は塗装エリアには、ワークに向けて塗料を噴射してワークに塗料を塗布するためのスプレーガンを備えた塗装ロボットが備えられている。
【0023】
また、請求項3に記載の塗装システムにおいても、スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給手段と、スプレーガンに塗料噴霧用のエアーを供給するためのエアー供給手段を有しているとともに、塗料供給手段からスプレーガンに供給する塗料を所定温度にまで加熱するための塗料加熱手段と、エアー供給手段からスプレーガンに供給するエアーを所定温度にまで加熱するためのエアー加熱手段を具備しており、これにより塗料を加熱した状態で噴霧可能としている。
【0024】
中央エリアにはワーク搬送手段が回動自在に設置されており、このワーク搬送手段は、回動することで、搬出入エリアに搬入された塗装前のワークを塗装エリア内へ搬送し、塗装エリア内において塗料が塗布されたワークをセッティングエリアの正面側へ搬送し、セッティングエリア内で揮発成分が蒸発されたワークをUV照射エリアの正面側へ搬送し、及び、UV照射エリアで紫外線が照射されて塗料が硬化したワークを搬出入エリアの正面側へ搬送することとしている。
【0025】
また、本発明の塗装システムでは、セッティングエリア用のワーク移送手段と、UV照射エリア用のワーク移送手段と、搬出入エリア用のワーク移送手段を有している。そして、セッティングエリア用のワーク移送手段は、ワーク搬送手段によりセッティングエリアの正前側に搬送されたワークをセッティングエリア内へ移送し、又はセッティングエリア内に移送されたワークをワーク搬送手段に戻すために用いられる。また、UV照射エリア用のワーク移送手段は、ワーク搬送手段によりUV照射エリアの正前側に搬送されたワークをUV照射エリア内へ移送し、又はUV照射エリア内に移送されたワークをワーク搬送手段に戻すために用いられる。更に、搬出入エリア用のワーク移送手段は、ワーク搬送手段により搬出入エリアの正前側に搬送されたワークを搬出入エリア内へ移送し、又は搬出入エリア内に搬入された塗装前のワークを搬出入エリアの正前に移送するために用いられる。
【0026】
また、本発明の塗装システムでは、セッティングエリアを密閉するためのセッティングエリア用の開閉扉と、UV照射エリアを密閉するためのUV照射エリア用の開閉扉と、搬出入エリアを密閉するための搬出入エリア用の開閉扉を具備している。
【0027】
更に、ワーク搬送手段は、中央エリアに回動自在に設置された回動部と、回動部の外周側に等角度で連設された複数本のメインアームと、それぞれのメインアームの先端側に回動自在に備えられたワーク連結部と、ワーク連結部を回動するための駆動部を具備しており、塗装エリア内で塗料が塗布されたワークを、セッティングエリア、UV照射エリア、及び搬出入エリアに順次移動して、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分の蒸発、ワークへの紫外線照射を行った後に、搬出入エリアから搬出することとしている。
【0028】
そしてこの構成において、塗装エリア内にワークを配置した状態で、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度にまで加熱した後に、スプレーガンに塗料及びエアーを供給することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げながら、温度を上げた塗料をスプレーガンからワークに向けて噴霧して、ワークに塗料を塗布する。
【0029】
そして、塗装エリア内で塗料が塗布されたワークをセッティングエリア、UV照射エリア、及び搬出入エリアに順次移動して、セッティングエリアにおいてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、UV照射エリアにおいてワークへ紫外線照射を行なうことでワークに塗布した塗料を硬化させ、その後にワークを搬出入エリアから搬出することとしている。
【0030】
ここで、ワーク搬送手段におけるメインアームのそれぞれの先端部分に一対の第2旋回アームを連設し、この一対の第2旋回アームのそれぞれの先端側にワーク連結部を備えるとよい。
【0031】
また、セッティングエリア用の開閉扉と搬出入エリア用の開閉扉に、セッティングエリアと中央エリアとの連通、及び搬出入エリアと中央エリアとの連通を遮断した際に、中央エリア内に供給された空気を整流する整流板を備えるとよい。
【実施例0032】
請求項1に記載の本発明の塗装システムの実施例について説明すると、本実施例の塗装システムは、加熱した水系UV塗料をワークに塗布して塗装することを特徴とした塗装システムとしている。
【0033】
本実施例の塗装システムでは、塗装エリアと、この塗装エリアにおいて、ワークに向けて塗料を噴霧するための塗装ロボットを有しており、塗装ロボットは、塗料を噴霧するためのスプレーガンを有している。そして、塗装エリアにワークを配置した状態で、スプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧することで、ワークに塗料を塗布することとしている。
【0034】
また、本実施例の塗装システムでは、セッティングエリアを有しており、このセッティングエリアでは、塗装エリアにおいてワークに塗布した塗料に含まれる揮発成分としての水を蒸発させることとしている。
【0035】
更に、本実施例の塗装システムでは、UV照射エリアを有しており、UV照射エリアでは、セッティングエリアにおいて水を蒸発させたワークに紫外線を照射して、ワークに塗布された塗料を硬化させるエリアとしている。
【0036】
そして、このような構成において、塗装エリアにワークを配置した状態で、スプレーガンに塗料及びエアーを供給し、それにより、スプレーガンに供給された塗料を霧状にするとともに所定のパターンにし、ワークに向けて塗料を噴霧して、ワークに塗料を塗布する。その後は、ワークをセッティングエリアに移動し、セッティングエリアにおいて、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させる。更にその後は、ワークをUV照射エリアに移動し、UV照射エリアにおいてワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させ、それにより塗装を完了することとしている。
【0037】
ここで、本実施例においては、前述したように、スプレーガンより塗料を噴霧するに際して、加熱した水系UV塗料を噴霧してワークに塗布することとしており、噴霧する水系UV塗料を加熱する方法として、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを所定温度にまで加熱することとしている。即ち、スプレーガンから塗料を噴霧するためには、スプレーガンの吐出口から塗料を吐出させ、吐出させた塗料に霧化エアーを衝突させて塗料を霧化しながら前方に噴射するとともに、噴霧する塗料のパターンをパターンエアーによって所定のパターンにする。そこで本実施例では、スプレーガンに供給する塗料、又はエアーの少なくともいずれかを加熱し、それにより、スプレーガンから噴霧する塗料の温度を所定温度にすることとしている。
【0038】
ここで、スプレーガンに供給する塗料、又はエアーの少なくともいずれかを加熱する方法について説明すると、
図11は、スプレーガンに供給する塗料又はエアーを加熱するための構成を示した図であり、図において41がスプレーガンである。
【0039】
また、図において42は塗料供給手段であり、本実施例においては、シリンジポンプを用いている。シリンジポンプ42は、充填用塗料ホース51によって基端側が塗料タンク45に連結され、充填用塗料ホース51は、塗料タンク45内の塗料をシリンジポンプ42に充填するためのポンプ46を備え、ポンプ46を駆動することで、塗料タンク45内の塗料をシリンジポンプ42内に充填可能としている。
【0040】
一方、シリンジポンプ42の先端の吐出口には供給用塗料ホース50の基端が連結され、供給用塗料ホース50の先端はスプレーガン41に連結され、シリンジポンプ42によって、シリンジポンプ42内に充填した塗料をスプレーガンに供給可能としている。なお、シリンジポンプ42は周知のとおり、先端に吐出口を有する筒状のシリンジ本体内にピストンが進退自在に挿入された構成であり、前記充填用塗料ホース51は、シリンジ本体内に連通するようにしてシリンジに連結されている。そしてこの構成により、シリンジ本体内に塗料を充填した状態でピストンを前進させることで、シリンジポンプ42内に充填した塗料をスプレーガンに供給可能としている。
【0041】
また、供給用塗料ホース50は塗料加熱手段43と温度センサー44を備えており、シリンジポンプ42からスプレーガン41に供給される塗料を、所定の温度に加熱可能としている。なお、塗料加熱手段43の種類は特に限定されず、熱交換器、ヒーター等、いずれを用いても良く、またその他、塗料ホースとしてホットホースを用いても良い。更に塗料加熱手段43の配置箇所はシリンジポンプ42の手前でもよい。
【0042】
次に、図において47は、スプレーガンにエアーを供給するためのエアー供給装置である。即ち、塗料をワークに向けて噴霧して塗装を行うスプレーガンにおいては、供給された塗料を霧化エアーによって霧状にして噴射するとともに、その際に、霧状にした塗料をパターンエアーによって所定のパターンにすることが行われている。そのために本実施例の塗装システムにおいても、エアーホース52によってエアー供給手段47をスプレーガン41に連結し、このエアー供給手段47によってスプレーガン41に霧化エアーやパターンエアーを供給することとしている。なお本実施例において前記エアー供給手段47は、コンプレッサーを用いており、このコンプレッサー47において、外気を取り込むとともに取り込んだ外気を、圧縮してスプレーガン側へ供給することとしている。
【0043】
そして、エアーホース52は、エアー加熱手段48とエアー温度センサー49を備えており、エアー供給手段47からスプレーガン41に供給されるエアーを、所定の温度に加熱可能としている。なお、塗料加熱手段43の種類は特に限定されず、熱交換器、ヒーター等、いずれを用いても良く、またその他、エアーホースとしてホットホースを用いても良い。
【0044】
次に、このように構成される塗装システムを用いた請求項2に記載の塗装方法の実施例について説明すると、本実施例の塗装方法では、塗装エリア内にワークを配置した後に、塗料供給手段42及びエアー供給手段47によって、塗料及びエアーをスプレーガン41側へ供給しながら、供給する過程において、塗料加熱手段43又はエアー加熱手段47を用いて、温度センサー44、49により温度を監視しながら、スプレーガン41に供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを、所定温度まで加熱する。
【0045】
そうすると、温度が高くなった塗料を、スプレーガンからワークに向けて噴霧してワークに塗布することができる。即ち、前述したように、スプレーガンから塗料を噴霧するためには、スプレーガンの吐出口から塗料を吐出させるとともに、吐出させた塗料を霧化エアー及びパターンエアーで所定のパターンの霧状にして噴射するため、スプレーガンに供給する塗料、又はエアーの少なくともいずれかを加熱する本実施例の塗装方法では、スプレーガンから噴霧する噴霧塗料の温度を所定温度に上げることが可能となる。なお所定温度としては特に限定されず、季節や塗装ブース内の温度に応じて、揮発成分としての水を短時間で蒸発させるために必要な温度とする。また、塗料加熱手段43をシリンジポンプ42と塗料タンク45間に配置して、予め加熱した塗料をシリンジポンプ42に充填し、シリンジポンプ42の駆動により加熱された塗料をスプレーガン41に供給する構成としてもよい。
【0046】
次に、本実施例の塗装方法では、塗装エリアにおいて塗料を塗布したワークをセッティングエリアに移動して、セッティングエリアにおいて、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分を蒸発させ、更に、セッティングエリアにおいて塗料に含まれる揮発成分を蒸発させたワークをUV照射エリアに移動して、UV照射エリアにおいてワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化させ、これにより塗装が完了する。
【0047】
そしてこのとき、本実施例の塗装方法では、ワークに塗布した塗料の温度を常温よりも高くしており、それにより揮発成分として塗料に含まれる水の温度も高くなるために、水を蒸発させるためのセッティング時間を短くすることが可能であり、加熱していない塗料をワークに塗布する場合と比較し、乾燥時間を短くして短時間でワークの塗料を完了することが可能となる。
【0048】
次に、請求項3に記載の本発明の塗装システムの実施例について図を参照して説明すると、
図1乃至
図3は、本実施例の塗装システムを説明するための図であり、
図1は外観を示している。また、
図2及び
図3は内部構成を説明するための図であり、イメージ図としている。そして、図において1が本実施例の塗装システムであり、本実施例の塗装システム1は前述の請求項1に記載の塗装システムと同様に、加熱した水系UV塗料をワークに塗布して塗装するためのシステムとしている。なお、水系UV塗料を加熱する方法は、前述の請求項1に記載の塗装システムと同様であるので重複した説明は省略する。
【0049】
本実施例の塗装システム1の構成を説明すると、本実施例の塗装システム1は、中央エリアを有しており、この中央エリアの周囲に、ワークを塗装するための各工程を行うエリアを配置している。そして、中央エリアには、回動自在にしてワーク搬送手段が設置されており、このワーク搬送手段によって、ワークを各エリアに搬送し、各エリアで所定の工程を行うことで、ワークの塗装を完了する構成としている。
【0050】
図2、3において2が中央エリアであり、この中央エリア2の周囲には、塗装エリア3、セッティングエリア4、UV照射エリア5、及び搬出入エリア6が、時計回りに配置されており、塗装エリア3、セッティングエリア4、UV照射エリア5、及び搬出入エリア6はそれぞれ、中央エリア2と通じている。
【0051】
塗装エリア3は、ワークに向けて塗料を噴射してワークに塗料を塗布するためのエリアであり、セッティングエリア4は、ワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分としての水を蒸発させるためのエリアであり、UV照射エリア5は、ワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化するためのエリアであり、搬出入エリア6は、塗装が完了したワークをシステムから取り出して、塗装前のワークを新たにシステムに入れるためのエリアである。
【0052】
中央エリア2について説明すると、
図2及び3において、前記中央エリア2には、ワーク搬送手段7が回動自在に配置されており、このワーク搬送手段7の上方部分には、塗装装置としての塗装ロボット8が設置されている。そして、ワーク搬送手段7は、回動することで、搬出入エリア6に搬入されたワークを、前記塗装エリア3、セッティングエリア4、UV照射エリア5、及び搬出入エリア6に順次搬送するために用いられる。
【0053】
前記ワーク搬送手段7について説明すると、
図4乃至
図7はワーク搬送手段7を説明するための図であり、ワーク搬送手段7とこのワーク搬送手段7の上方部分に設置された、塗装装置としての塗装ロボット8を示しており、
図4は側面から示した図、
図5は底面から示した図、
図6及び
図7は下方部分から示した斜視図としている。
【0054】
そしてワーク搬送手段7は、前記中央エリア2に設置された基台9に回動自在に設置された回動部10を有しており、この回動部10には、外周側に向けてメインアームとしての4本の第1旋回アーム11が、等角度で連設されている。本実施例において前記回動部10は四角形状としており、四隅部分の4か所に前記第1旋回アーム11が連設されており、これにより、隣り合う第1旋回アーム11が形成する角度は約90度とし、1回の回転角度は90度としている。なお、回動部10は四角形状にする必要はなく、丸形状でもよい。また、回動部10は、図示しないモーターを介して回動することとしている。
【0055】
次に、それぞれの第1旋回アーム11の先端部分には、第1旋回アーム11の長手方向に直交する左右方向に向けて第2旋回アーム12が連設されている。そしてこの第2旋回アーム12は、わずかに湾曲した弓なり形状として、両端が外側に向く配置で、中央部分が前記第1旋回アーム11に連設されている。
【0056】
また、第2旋回アームの先端部分にはそれぞれ、ワーク連結部13が具備されている。そして、ワーク連結部13は、駆動部によって第2旋回アーム12に対して回動自在としており、軸心方向に挿入孔が形成され、ワークを取り付けたワーク取付治具(
図8参照)を連結可能としている。但し、第2旋回アーム12を用いることなく、第1旋回アーム11の先端にワーク連結部13を具備した構成にしてもよい。
【0057】
なお、図において21はカバーである。即ち、本実施例において前記ワーク搬送手段7は、上部及び側部をカバー21で覆っており、前記ワーク連結部13はカバー21を貫通して上方に突設している。
【0058】
次に、前記ワーク連結部13に連結されるワーク取付治具について
図8を参照して説明すると、
図8はワーク取付治具の一例を示した図であり、
図8において14がワーク取付治具であり、Wはワーク取付治具14に取り付けられたワークである。そして、
図8に示すワーク取付治具14は、ワーク連結部13の挿入孔に挿入されることでワーク連結部13に連結される主軸15と、この主軸15の上方部分に放射状に連設された複数のアーム16を有しており、アーム16の先端には板状の支持手段17が取り付けられている。そして、支持手段17にワークWを装着することとしており、
図8においてワークWはドアミラーとしている。但し、ワーク取付治具14の形態は特に限定されない。また、
図2及び
図3においては、理解を容易にするために、ワーク取付治具14を円形のテーブル状で示した。
【0059】
次に、前記ワーク連結部13を回動するための駆動部について説明すると、本実施例において前記駆動部は、マグネットモーターとしており、このマグネットモーターは、カップリングとこのカップリングを磁力により非接触の状態で回動するモーターベースを具備している。即ち、本実施例においては、第1旋回アーム11のそれぞれが連設される回動部10の四隅部分に、磁石製又は磁性体のカップリング19が回動自在に備えられている。そして、前記第1旋回アーム11の内部のそれぞれの先端部分、又は第2旋回アーム12の内部における第1旋回アーム11との連結部分近傍には、図示しない回転体が回動自在に備えられ、カップリング19と回転体は図示しないベルトで連結されている。また、回転体と前記ワーク連結部13とは図示しないベルトで連結され、これにより、カップリング19が回転するとワーク連結部13のみを回転することが可能となる。
【0060】
一方、回動部10の下方において前記基台9には、カップリング19を回動するためのモーターベース20が備えられており、このモーターベース20は、モーター本体とこのモーター本体の先端に備えられた磁石製の円盤を備えている。
【0061】
ここで、カップリング19は、第1旋回アーム11のそれぞれが連設される回動部10の四隅部分に備えられているため、ワーク搬送手段7が塗装エリア3内にワークを搬送したときに、それぞれの位置が確定する。
【0062】
そこで、本実施例では、回動部10における、塗装エリア3内にワークが搬送されることでカップリング19の位置が確定したときに、塗装エリア3内にワークを搬送した第1旋回アーム11が連設されている四隅部分に備えたカップリング19の下方に位置するようにして、前記基台9にモーターベース20を備えており、モーターベース20は、上方にカップリング19が移動してきた時にカップリング19との間に隙間が形成される配置としている。
【0063】
従って、これによって、ワーク搬送手段7が塗装エリア3内にワークを搬送すると、回動部10における、塗装エリア3内にワークを搬送した第1旋回アーム11が連設されている四隅部分に備えたカップリング19がモーターベース20の上方に移動してくる。そしてその状態で、モーター本体を駆動することでモーターベース20の円盤が回転すると、円盤の磁力により、上方に位置するカップリング19が円盤と非接触の状態で回転し、それにより、前述したように、ワーク連結部13のみを回転することが可能となる。
【0064】
一方、塗装エリア3における塗料の塗布が終了してワーク搬送手段7が回転すると、モーターベース20の上方に位置していたカップリング19は、モーターベース20と非接触であるため、モーターベース20から水平方向に引き離されてセッティングエリア4の正面側に搬送される。そしてそれとともに、搬出入エリア6で搬入された塗装前のワークが塗装エリア3内に搬送され、回動部10における、新たなワークを搬入した第1旋回アーム11が連設されている四隅部分に備えたカップリング19が、モーターベースの上方に移動する。そうすると、前述と同様に、モーター本体を駆動することで円盤が回転し、円盤の磁力により、モーターベースの上方に位置するカップリング19が円盤と非接触の状態で回転し、塗装エリア3内においてワーク連結部13のみを回転することが可能となる。
図7がワークが塗装エリア3内に搬送されてモーターベース20の上方にカップリング19がある状態を示している。また
図6は、
図7の状態でワーク搬送手段7が回転し、モーターベース20の上方に位置していたカップリング19がモーターベース20から水平方向に引き離された状態を示しており、この状態は、ワーク搬送手段7が回転を完了する前の状態である。
【0065】
なお、駆動部は、必ずしもマグネットモーターを用いる必要はなく、通常のモーターを用いてもよい。そしてそのとき、前記カップリング19の箇所のそれぞれにモーターを備えてもよく、前記モーターベース20の箇所に、カップリング19に連結可能なようにして、昇降自在に通常のモーターを備えてもよい。更に、カップリング19は必ずしも回動部10の四隅部分に備える必要は無く、第1旋回アーム11に備えても良い。
【0066】
次に、本実施例においてワーク搬送手段7は、4本の第1旋回アーム11の先端に備えたワーク連結部13がそれぞれ、塗装エリア3内,セッティングエリア4の正面側,UV照射エリア5の正面側,搬出入エリア6の正面側に配置可能としている。そしてこれにより、搬出入エリア6において、ワーク取付治具14によってワーク連結部13に新たに連結されたワークは、ワーク搬送手段7を回動することで、塗装エリア3の内部、セッティングエリア4の正面側、UV照射エリア5の正面側、及び搬出入エリア6の正面側へ搬送することとしている。なおワーク搬送手段7は、前記基台9内に備えたモーターにより回動することとしている。
【0067】
次に前記塗装ロボット8について説明すると、本実施例において塗装ロボット8は、据え置き型の塗装ロボットとしており、ワーク搬送手段7の回動部10を貫通して基台9に立設された本体ピラー22を有し、本体ピラー22には第1アーム23が上下方向へ回動自在に連結され、第1アーム23には第2アーム24が上下方向へ回動自在に連結されている。また、第2アーム24の先端部分には長尺のボールネジスプライン25が連結され、本実施例においてボールネジスプライン25は、第2アーム24の幅方向、即ち、左右方向へ移動自在であるとともに、円周方向に沿って回動自在としている。そして、ボールネジスプライン25の両端にスプレーガン26が装着されている。なお本発明において塗装ロボット8は、必ずしも中央エリア2に備えた据え置き型の塗装ロボットである必要はなく、塗装エリア3の上方に吊り下げた天吊型の塗装ロボットとしてもよく、この場合は、塗装ロボットのロボットアームにスプレーガンを取り付けることとする。
【0068】
次に、前記塗装エリア3について説明すると、本実施例において前記塗装エリア3は、ワークに向けて塗料を噴射してワークに塗料を塗布するためのエリアとしている。即ち前述したように、ワーク搬送手段7の第1旋回アーム11の先端に備えたワーク連結部13は、塗装エリア3に配置されることとしている。そして、塗装エリア3内に配置されたワーク連結部13に連結されたワークに向けて、塗装ロボット8のスプレーガン26から塗料が噴霧され、これにより、ワークの塗装が行われることとしている。
【0069】
なお、
図1において塗装エリア3の正面側は理解を容易にするために開放して示しているが、塗装エリア3の正面側には塗料ミストを回収するためのフィルターが配置されており、また、前記中央エリア2の後方側の天井には給気用の窓27が形成されている。そして、塗装が行われている過程では、給気窓27より中央エリア2内にエアーを供給し、このエアーをフィルター側に向けて流しながら、中央エリア2及び塗装エリア3内の塗料ミストをフィルターで回収しつつ、供給したエアーを室外に排気している。
【0070】
次に、前記セッティングエリア4について説明すると、本実施例においてセッティングエリア4は、前述したように、塗装エリア3においてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分としての水を蒸発させるためのエリアである。即ち、本実施例において前記セッティングエリア4には、ヒーター等の加熱手段が備えられており、この加熱手段によってワークを加熱することで、塗料に含まれる揮発成分を蒸発させることとしている。但し、揮発成分を蒸発させる方法はヒーターによる加熱に限定されるものではなく、その他の方法を用いてもよい。従って例えば、セッティングエリア4内においてワークを回転させることで揮発成分を蒸発させてもよい。
【0071】
次に、前記UV照射エリア5について説明すると、本実施例においてUV照射エリア5は前述したように、ワークに紫外線を照射してワークに塗布された塗料を硬化するためのエリアである。即ち、UV照射エリア5内には紫外線照射装置が備えられており、セッティングエリア4で揮発成分が蒸発されたワークに向けて、紫外線照射装置から紫外線を照射することで、ワークに塗布されたUV塗料を硬化させ、これにより塗装を完了することとしている。
【0072】
そして、前記搬出入エリア6は、前述したように、UV照射エリア5において塗料が硬化して塗装が完了したワークをシステムから取り出すとともに、塗装前のワークを新たにシステムに入れるためのエリアとしている。また搬出入エリア6では、新たに搬入されたワークについて除塵、除電を行うこととしている。従ってこれにより、本実施例の塗装システムでは、搬出入エリア6に搬入された塗装前のワークを、ワーク搬送手段7を回動することで順次、塗装エリア3、セッティングエリア4、UV照射エリア5に搬送して、各エリアで塗料の塗布、揮発成分の蒸発、UV照射を行うことで、塗装を完了することが可能である。
【0073】
次に、
図2、3において28は、セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6を密閉状態にするための開閉扉である。即ち、本実施例において前記セッティングエリア4では、ワークを加熱することで塗料に含まれる揮発成分を蒸発させることとしているが、効率を高めるために、ワークを加熱する際にはセッティングエリア4内を密閉状態にすることが必要である。また、UV照射エリア5においては、ワークに向けて紫外線を照射するために、紫外線が漏れることによる作業者への悪影響を防止して安全を確保のためにも、UV照射を行っている際には内部を密閉する必要がある。更に、搬出入エリア6では、新たに搬入されたワークの除塵、除電を行うために、新たなワークを搬入したときには内部を密閉状態にする必要がある。更にまた、中央エリアへの熱や紫外線の漏洩を防止する必要もある。
【0074】
一方、前述したように、ワーク搬送手段7は、セッティングエリア4の正面、UV照射エリア5の正面、及び搬出入エリア6の正面へワークを搬送するために、搬送されてきたワークをセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6に移送するためにはそれぞれのエリアは中央エリア2と通じていなければならない。
【0075】
そこで、本実施例では、セッティングエリア4と中央エリア2との連通を遮断し又は遮断を解除する開閉扉28、UV照射エリア5と中央エリア2との連通を遮断し又は遮断を解除する開閉扉28、及び搬出入エリア6と中央エリア2との連通を遮断し又は遮断を解除する開閉扉28をそれぞれ具備し、これにより、セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6を密閉状態にすることを可能としている。
【0076】
次に、図において29は、前記ワーク搬送手段7により搬送されてきたワークをセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6に移送し、又はセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6に移送されたワークをワーク搬送手段7に戻すための移送手段である。
【0077】
即ち、前述したように、ワーク搬送手段7は、回動することで、ワークを、塗装エリア3の内部、セッティングエリア4の正面側、UV照射エリア5の正面側、及び搬出入エリア6の正面側へ搬送することとしているため、搬送されてきたワークについて、セッティングエリア4で揮発成分の蒸発を行い、及びUV照射エリア5で紫外線の照射を行い、及び搬出入エリア6から搬出するためには、ワークをそれぞれ、セッティングエリア4、UV照射エリア5、及び搬出入エリア6へ移送する必要がある。そこで、本実施例では、ワーク搬送手段7によりセッティングエリア4の正面側に搬送されてきたワークをセッティングエリア4に移送し、又はセッティングエリア4に移送されたワークをワーク搬送手段7に戻すための移送手段29と、ワーク搬送手段7によりUV照射エリア5の正面側に搬送されてきたワークをUV照射エリア5に移送し、又はUV照射エリア5に移送されたワークをワーク搬送手段7に戻すための移送手段29と、ワーク搬送手段7により搬出入エリア6の正面側に搬送されてきたワークを搬出入エリア6に移送し、又は搬出入エリア6に移送されたワークをワーク搬送手段7に戻すための移送手段29をそれぞれ、備えている。
【0078】
次に、
図9、10は、前記開閉扉28及びワーク移送手段29を説明するための図である。即ち本実施例では、前記開閉扉28及びワーク移送手段29のそれぞれをドアユニットとして一体化しており、このドアユニットを前記セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6における中央エリア2との連結部分近傍に設置している。また、ドアユニットの幅は、セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6における中央エリア2との連結部分の幅とほぼ同じ幅としている。なお、
図2、3においては、理解を容易にするために、ユニットは省略し、開閉扉28とワーク移送手段29のみを示している。
【0079】
ここで、ドアユニットを説明すると、
図9、10において31がドアユニットである。そして、ドアユニット31は枠状のハウジング32を有しており、このハウジング32内には基台33が備えられるとともに、ハウジング32内において基台33には、開閉扉としての板状の回転扉28が、回動自在に設置されている。そして、回転扉28の正面を中央エリア2側に向けることで、ハウジング32の左右側の内壁と回転扉28の左右側の端部とは、ほぼ隙間がない状態で接触し、これにより、セッティングエリア4と中央エリア2との連通、UV照射エリア5と中央エリア2との連通、搬出入エリア6と中央エリア2との連通を、それぞれ遮断し、セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6を密閉状態にし、この状態で回転扉28を任意の角度だけ回動することで、遮断を解除することを可能にしている。
【0080】
次に図において29がワーク移送手段であり、本実施例においてこのワーク移送手段29は、前記回転扉28と同様に前記基台33に回動自在に設置されており、回転扉28の回転とともに回転することとしている。
【0081】
ここで、前記ワーク移送手段29について説明すると、
図9においてワーク移送手段29はアーム34を有し、このアーム34は昇降自在としている。また、アーム34の両端には可動部35が連結されており、この可動部35は前後方向へ可動自在としている。更に、可動部35の正面側には、ワーク取付治具14の主軸15の任意の箇所に周設した把持部18(
図8参照)を挟持して把持する挟持部36が備えられている。なお、挟持部36はそれぞれ、セッティングエリア4の正面側、UV照射エリア5の正面側、及び搬出入エリア6の正面側にワーク取付治具14が搬送された状態で可動部35が前進することで、それぞれのワーク取付治具14の把持部18を挟持可能な位置に設定されている。
【0082】
次に、ハウジング32内において回転扉28の背面側には、設置テーブル37が備えられており、この設置テーブル37は固定されており、ワーク取付治具14を連結するためのワーク連結具38が備えられている。なおワーク連結具38は、ワーク搬送手段7に備えたワーク連結部13とほぼ同様の構成としている。
【0083】
このように構成されるドアユニット31の作用を説明すると、ワーク搬送手段7によって、セッティングエリア4の正面側、UV照射エリア5の正面側、及び搬出入エリア6の正面側にワーク取付治具14が搬送されてくると、それぞれの可動部35が前進し、それぞれの挟持部36が、ワーク取付治具14の把持部18を挟持する。
【0084】
次に、アーム34が上昇し、更に可動部35が後退して元の位置に戻り、それにより、ワーク取付治具14の主軸15がワーク連結部13の挿入孔から抜け出て、ワーク取付治具14はワーク連結部13との連結が解除される。
【0085】
そして次に、ワーク移送手段29がワーク取付治具14を挟持した状態で、回転扉28及びワーク移送手段29が回転する。そうすると、ワーク取付治具14がセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6内に移送され、更に、セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6は回転扉28によって密閉状態になる。
【0086】
更にその後、可動部35が前進し、アーム34が下降し、ワーク取付治具14は設置テーブル37に備えたワーク連結具38に連結され、その後可動部35が後退することで、ワーク取付治具14及びワークはセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6内にセットされる。そして、セッティングエリア4、UV照射エリア5内にセットされたワークはそれぞれエリア内において、揮発成分の蒸発、紫外線照射が行われ、搬出入エリア6内にセットされたワークは塗装前のワークと交換される。従って、回転扉29及びワーク移送手段29が回転し、可動部35が前進し、アーム34が下降したときに、ワーク取付治具14が設置テーブル37に備えたワーク連結具38に連結されるようにして、予めワーク連結具38を設置テーブル37に配置しておく。
【0087】
そして、各エリアにおける処理がおこなわれた後は、可動部35が前進し、挟持部36によって、設置テーブル37に備えたワーク連結具38に連結されているワーク取付治具14が挟持され、その後アーム34が上昇し、可動部35が後退することで、ワーク取付治具14が設置テーブル37に備えたワーク連結具38から外され、ワーク移送手段29がワーク取付治具14を支持する。
【0088】
そしてその状態で回転扉28が回転し、その後は前記と逆の動作により、ワーク取付治具14がワーク搬送手段7のワーク連結部13に連結される。ワークが搬送されてきた状態を示すイメージ図が
図2であり、ワーク取付治具14を挟持した状態で回転してワーク取付治具をセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6内に移送した状態を示したイメージ図が
図3である。
【0089】
なお、図において30は整流板である。即ち本実施例においては、セッティングエリア4と搬出入エリア6を密閉する回転扉28は、背面側に回転扉28の正面と直交する方向に向けて、メッシュ状の整流板30を連設している。また塗装ロボット8の後方側にも整流版が設置され、回転扉28を回転してワーク取付治具をセッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6内に移送した際に、中央エリア2の中央部分で中央エリア2を前後に遮断し、中央エリア2の後方側の天井の給気用窓27から供給されるが、均等にフィルター側に向けて流されるようにしている。但し、整流板は必ずしも必要なものではない。
【0090】
次に、このように構成される本実施例の塗装システムを用いたワークの塗装について説明すると、
図2は、ワーク搬送手段7によって、塗装エリア3の内部、セッティングエリア4の正面側、UV照射エリア5の正面側、搬出入エリア6の正面側に、ワークが取り付けられた状態でワーク取付治具14が搬送されてきた状態を示している。
【0091】
そしてこの状態で、セッティングエリア4の正面側、UV照射エリア5の正面側、搬出入エリア6の正面側に搬送されてきたワーク取付治具14はそれぞれ、前述の機構によりドアユニット31によって、セッティングエリア4、UV照射エリア5、搬出入エリア6に移送される。
【0092】
次に、ワーク搬送手段7によって塗装エリア3内に搬送されてきたワーク取付治具14が、前述の方法によりワーク連結部13を回動することで回動し、塗装ロボット8は、ワーク取付治具14に取り付けられているワークに向けて塗料を噴霧し、ワークへの塗料の塗布が行われる。即ち本実施例では、ワーク取付治具14を回転することで、ワークWを主軸15の周囲で公転させ、この公転しているワークに対して塗料を塗布する。そして本実施例では、ワークの公転速度を高速としている。
【0093】
一方、塗装エリア3で塗料の塗布が行われている間に、セッティングエリア4においては、塗装エリア3においてワークに塗布された塗料に含まれる揮発成分の蒸発が行われる。またUV照射エリア5においては、セッティングエリア4において塗料に含まれる揮発成分の蒸発が行われたワークにむけて紫外線が照射され、塗料の硬化が行われる。更に搬出入エリア6においては、UV照射エリア5において塗料が硬化して塗装が完了したワークが取り出されるとともに塗装前の新たなワークがワーク連結部13に連結されることでワークの入れ替えが行われ、更に、新たなワークがワーク連結部13に連結された後に、搬出入エリア6で除塵、除電処理が行われる。
【0094】
そしてこれらの処理は、それぞれ、1分前後の間に行われ、1分前後の間に、塗料の塗布、揮発成分の蒸発、紫外線照射による塗料の硬化、ワークの入れ替えが行われる。そしてその後は、ワーク搬送手段7が約90度回転して、搬出入エリア6に新たに搬入されたワークが塗装エリア3に搬送され、塗装エリア3において塗料の塗布が行われたワークがセッティングエリア4の正面側に搬送され、セッティングエリア4において揮発成分の蒸発が行われたワークがUV照射エリア5の正面側に搬送され、UV照射エリア5において紫外線照射により塗料が硬化して塗装が完了したワークが搬出入エリア6の正面側に搬送され、それぞれのエリアで前述の同じ処理が行われる。そして、その後はワーク搬送手段7が約90度回転し、以後は、予定数量のワークの塗装が完了するまで前述の処理が繰り返される。
【0095】
このとき、本実施例の塗装システムでは、スプレーガンからワークに向けて噴霧する塗料の温度を常温よりも高くしており、それにより、ワークに塗布した塗料に含まれる揮発成分として水の温度を高くしているため、水を蒸発させるためのセッティング時間を短くすることが可能である。従って、揮発成分を蒸発させるためのセッティングに時間がかかる水系UV塗料を用いた場合も、加熱していない塗料をワークに塗布する場合と比較し、乾燥時間を短くして短時間でワークの塗料を完了することが可能である。更にこのとき、本実施例では、ワークに塗料を噴霧する際には、ワークWを主軸15の周囲で高速で公転させているため、これによっても水の蒸発を早めることが可能である。
【0096】
このように、本実施例の塗装システムでは、水系UV塗料を用いてワークの塗装を行う塗装システムにおいて、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかを加熱した後に、スプレーガンに塗料及びエアーを供給することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を上げ、温度を上げた塗料をワークに塗布することとしているため、塗料にふくまれる揮発成分である水の温度を常温よりも高くした状態でワークに塗布することができ、更にワークを高速で回転させた状態で塗料を噴霧しているため、それにより、常温の水系UV塗料を用いた場合と比較し、塗料に含まれる水を蒸発させるためのセッティング時間を短くすることが可能であり、乾燥時間を短くして短時間でワークの塗料を完了することが可能である。