(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142335
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電子計算機、電子計算機の制御方法、プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06F 15/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G06F15/02 315H
G06F15/02 315K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054433
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岩附 弘靖
(72)【発明者】
【氏名】小湊 和則
【テーマコード(参考)】
5B019
【Fターム(参考)】
5B019HD11
(57)【要約】
【課題】演算結果の値が表示可能な桁数を超えた際にこの演算結果の概算値を表示する場合において、概算値の桁数を容易に把握することができる電子計算機を提供する。
【解決手段】
電子計算機は、表示部と、入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、演算の結果を示す値の表示を制御する制御部と、を備え、制御部は、値が表示部において表示可能な桁数を超える場合、表示部において表示される値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、数字の単位とともに概算値を表示部で表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
入力された値に基づき演算を行うとともに、前記表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる、電子計算機。
【請求項2】
ユーザからの入力を受け付ける入力部を備え、
前記制御部は、前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記演算を停止させるようにエラー制御を行い、エラー制御後に、前記入力部により概算を算出する指示が入力されたとき、エラー制御を解除させるとともに、前記概算値を前記表示部に表示させる請求項1に記載の電子計算機。
【請求項3】
前記制御部は、前記エラー制御を実行する際に、前記表示部においてエラーの種類を示すシンボルを表示させるように制御する、請求項2に記載の電子計算機。
【請求項4】
前記入力部は、前記表示部において表示される前記値の単位の変更を指示する単位変更指示キーを含み、
前記制御部は、
前記単位変更指示キーが押下される度に、前記単位を変更させて前記値を前記表示部に表示させるように制御する請求項2または3に記載の電子計算機。
【請求項5】
前記単位は、物理単位である請求項4に記載の電子計算機。
【請求項6】
前記単位は、前記位取りを示す数字の単位である請求項4に記載の電子計算機。
【請求項7】
前記入力部は、前記表示部において表示される前記値の小数点以下の桁数を指定する桁数指定キーを含み、
前記制御部は、
前記桁数指定キーにより小数点以下の桁数が指定されている場合、所定の位取りを示す数字の単位にあわせて、前記桁数指定キーにより指定された小数点以下の桁数までの前記概算値を前記表示部に表示させる、請求項2または3に記載の電子計算機。
【請求項8】
入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップにおいて、
前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる、電子計算機の制御方法。
【請求項9】
コンピュータに
入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップにおいて、
前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる制御を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップにおいて、
前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる制御を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子計算機、電子計算機の制御方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子計算機において演算結果の値が表示可能な桁数を超える、いわゆるオーバーフローが生じたためキー入力がロックされた状態となったとき、クリアキーを入力することで演算結果の概算値を表示するとともにキーのロックを解除するエラー解除方式が開示されている。特許文献1では、概算値における小数点位置によりオーバーフローした桁数を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエラー解除方式では、小数点位置により示される概算値の桁の単位を、電子計算機が表示可能な桁数に応じて、電子計算機ごとにユーザ自身が覚えておく必要があった。このため、演算結果が表示可能な桁数を超えた際にこの演算結果の概算値を表示する場合において、概算値の桁数をユーザが容易に把握することが困難であった。
【0005】
本開示の目的は、演算結果の値が表示可能な桁数を超えた際にこの演算結果の概算値を表示する場合において、概算値の桁数を容易に把握することができる電子計算機、プログラム、および記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電子計算機は、表示部と、入力された値に基づき演算を行うとともに、前記表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る電子計算機の制御方法は、入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御ステップを含み、前記制御ステップにおいて、前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる。
【0008】
また、本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御ステップを含み、前記制御ステップにおいて、前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる制御を実行させる。
【0009】
また、本開示の一態様に係る記録媒体は、コンピュータに、入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部における、前記演算の結果を示す値の表示を制御する制御ステップを含み、前記制御ステップにおいて、前記値が前記表示部において表示可能な桁数を超える場合、前記表示部において表示される前記値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求め、前記数字の単位とともに前記概算値を前記表示部で表示させる制御を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電子計算機の外観の構成の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す電子計算機の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す電子計算機が備える表示部におけるエラー制御時の表示例を示す図である。
【
図4】
図1に示す電子計算機における演算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す電子計算機が備える表示部における概算値の表示の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示す電子計算機が備える表示部における、概算値に対するさらなる計算を実施する場合の表示の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示す電子計算機が備える表示部における概算値の表示状態の遷移の一例を示す図である。
【
図8】
図1に示す電子計算機が備える表示部における概算値の表示状態の遷移の一例を示す図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る電子計算機(スマートフォン)のホーム画面の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示す電子計算機(スマートフォン)において実行される計算機アプリの表示例を示す図である。
【
図11】
図9に示す電子計算機において計算機アプリの実行により表示させる値の表示状態の遷移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態及び変形例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する部材には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
本開示の第1実施形態に係る電子計算機100について
図1および
図2を参照して説明する。
図1は本開示の第1実施形態に係る電子計算機100の外観の構成の一例を示す平面図である。
図2は
図1に示す電子計算機100の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
(外観構成)
図1に示されるように、電子計算機100は、各種のキースイッチが配列されたキースイッチ群1、TABスイッチ2、および表示部3を備えてなる構成である。なお、キースイッチ群1およびTABスイッチ2はユーザからの入力を受け付けることができるようになっており、キースイッチ群1とTABスイッチ2とによって本開示の入力部4を実現する。
【0014】
キースイッチ群1は、ユーザからの入力を受け付ける複数のキーボタンにより構成される。キースイッチ群1は、数字キー10、四則演算キー11、イコールキー12、クリアキー13、百分率キー14、メモリキー15、および概算・換算キー16を含む。
【0015】
数字キー10は、「0~9」、および「00」の数字それぞれに対応する複数のキーボタン、ならびに小数点に対応するキーボタンが含まれる。
【0016】
四則演算キー11は、加算(+)、減算(-)、乗算(×)、および除算(÷)を行う命令を入力するキーボタンである。
【0017】
イコールキー12は、各種の演算結果を表示するためのキーボタンである。
【0018】
クリアキー13は、置数ミスをしたときに、その置数ミスした値だけをクリアしたり、入力された値または演算結果を示す値を全てクリアしたりするためのキーボタンである。クリアキー13は、オールクリアキー(CA)、クリアキー(C)、およびクリアエントリーキー(CE)を含む。オールクリアキー(CA)は、数値記憶部55(
図2参照)に記憶されている値を含む全ての値をクリアするためのキーボタンである。クリアキー(C)は、数値記憶部55に記憶されている値以外の値をクリアするためのキーボタンである。クリアエントリーキー(CE)は、最後に入力された値のみを消去するためのキーボタンである。すなわち、表示部3において現在、表示されている値を消去するためのキーであり、途中でユーザが入力を間違えたときに、このクリアエントリーキー(CE)を押下することで値の入力をやり直すことができる。
【0019】
百分率キー14は、パーセント計算を行うためのキーボタンである。
【0020】
メモリキー15は、入力された数字または演算結果を示す値を数値記憶部55に記憶させるためのキーボタンである。メモリキー15は、メモリクリアキー(CM)、メモリリコールキー(RM)、メモリマイナスキー(M-)、およびメモリプラスキー(M+)を含む。
【0021】
メモリクリアキー(CM)は、数値記憶部55に記憶されている値をクリアするためのキーボタンである。メモリリコールキー(RM)は、数値記憶部55に記憶されている値を呼び出すためのキーボタンである。メモリマイナスキー(M-)は、表示部3に表示されている値を数値記憶部55に記憶されている値から減算するためのキーボタンである。メモリプラスキー(M+)は、表示部3に表示されている値を数値記憶部55に記憶されている値に加算するためのキーボタンである。
【0022】
概算・換算キー16は、演算結果を示す値にオーバーフローが生じたときに、演算結果を示す値の概算値を表示させたり、表示部3において現在表示されている値の単位を、別の単位に変更したりするためのキーボタンである。概算・換算キー16の詳細については後述する。
【0023】
キースイッチ群1が含む上記したキーボタンは例示であって、これらに限定されるものではない。例えば、キースイッチ群1は、表示部3において表示されている値の符号を正から負、あるいは負から正に変えるための符号変換キーボタンをさらに含んでいてもよい。あるいは、表示部3に表示されている値の平方根を求めるルートキーボタンをさらに含んでいてもよい。
【0024】
TABスイッチ2は、小数点以下の値に関する設定を行うスライド式のスイッチである。TABスイッチ2は、ユーザがつまみをスライドさせることで小数点以下の求める桁数を指定することができる。
図1に示す例では、小数点以下の求める桁数を0~4の間で指定できる。また、ユーザがつまみをスライドさせてFの位置にあわせた場合、小数部の桁数を固定しない、いわゆるフリーな状態とすることができる。
【0025】
TABスイッチ2は上記したような小数点以下の求める桁数の指定だけでなく、小数点以下をどのように丸めるかを設定することができるように構成されていてもよい。例えば、ユーザがつまみをスライドさせて小数点以下の指定桁より下の桁を切り捨てるように設定したり、小数点以下の指定桁までを四捨五入により求めるように設定したりすることができる構成としてもよい。
【0026】
表示部3は、キースイッチ群1を介してユーザより入力された値および演算結果を示す値を表示する。また、表示部3は、値とともに、電子計算機100がどのような状態にあるのかを示すシンボルを表示することができる。シンボルには、例えば、「Over」、「E」、「M」、および「-」などが例示できる。
【0027】
「Over」は、演算結果を示す値が表示部3において表示可能な桁数を超え、オーバーフローしていることを示す。
【0028】
「E」は、オーバーフローした状態を除くエラー状態であることを示す。「E」で示すエラー状態としては、例えば、値がゼロで除算されるゼロ除算によるエラーなどが例示できる。
【0029】
「M」は、数値記憶部55に値がすでに記憶されていることを示す。
【0030】
「-」は、表示部3で表示されている値が負の数であることを示す。
【0031】
図2に示されるように、電子計算機100は、上記した表示部3および入力部4に加えて制御部5および記憶装置6をさらに備える。
図2に示されるように、制御部5は、表示部3、入力部4、および記憶装置6に接続されている。
【0032】
制御部5は、入力された値に基づき演算を行うとともに、表示部3における、演算の結果を示す値の表示を制御するものであり、例えば、CPUにより実現することができる。制御部5は、機能ブロックとして演算部51、表示制御部52、オーバーフロー判定部53、およびエラー制御部54を含む。これら機能ブロックは、制御部5がCPUにより実現される場合、CPUは、例えばROMなどの不揮発性メモリである記憶装置6に記憶されたプログラムを、例えばRAMなどの不図示のメインメモリに読み出して実行することで実現できる。また、制御部5は、演算結果として得られる値などを記憶するレジスタとして数値記憶部55を含む。
【0033】
演算部51は、四則演算キー11を介して入力された演算指示に基づき、数字キー10により入力された値に対する演算を実行する。演算部51は演算結果を示す値を数値記憶部55に記憶させる。
【0034】
表示制御部52は、表示部3の表示を制御する。例えば、表示制御部52は、数字キー10により入力された値、演算部51による演算結果を示す値などを表示部3に表示させるように制御する。
【0035】
オーバーフロー判定部53は、演算部51による演算結果を示す値がオーバーフローするか否か判定する。
【0036】
エラー制御部54は、オーバーフロー判定部53によって演算結果を示す値がオーバーフローすると判定された場合、電子計算機100においてエラー制御を実施する。すなわちエラー制御部54は、オーバーフロー判定部53によりオーバーフローすると判定されると、新たに数字キー10のいずれかのキーが押下されたとしても、数字入力が不可となるようにするとともに、演算部51による演算の実行を停止させるように制御する。
【0037】
また、エラー制御部54によってエラー制御が実行されているとき、
図3に示されるように、表示制御部52は表示部3においてエラーの種類を示すシンボルを表示させるように制御する。
図3は
図1に示す電子計算機100が備える表示部3におけるエラー制御時の表示例を示す図である。
【0038】
すなわち、表示制御部52は、電子計算機100においてオーバーフローのエラーが発生していることを示すシンボル「Over」を表示させるとともに、演算結果を示す値に対してオーバーフローした桁数が分かる位置に小数点を配置し、演算結果を示す値の下1桁を切り捨てて表示させる。なお、表示制御部52によるこのエラー制御時の表示をエラー表示と称する場合がある。また、ここでは表示制御部52は下1桁を切り捨てた値を表示させる構成であるが、下1桁を四捨五入した値を表示させる構成としてもよい。
【0039】
(演算処理)
以下、演算結果を示す値が表示部3において表示可能な桁数を超える場合における電子計算機100の演算処理の一例を、
図4、
図5を参照して説明する。
図4は
図1に示す電子計算機100における演算処理の一例を示すフローチャートである。
図5は
図1に示す電子計算機100が備える表示部3における概算値の表示の一例を示す図である。
【0040】
なお、本開示の第1実施形態に係る電子計算機100では、表示部3において10桁までの数字を表示させることができる構成を例に挙げて説明する。
【0041】
まず、電子計算機100において、演算部51が数字キー10により入力された値に対して四則演算キー11により入力された演算指示に基づき、演算を実行する(ステップS11)。例えば、電子計算機100において「1230007000」に「9000500000」を加算する計算を行うものとする。
【0042】
次にオーバーフロー判定部53は、演算部51による演算結果を示す値がオーバーフローしているか否か判定する(ステップS12)。ここでステップS11の演算により得られた演算結果を示す値は「10230507000」となる。この演算結果を示す値は11桁の数字であり表示部3において表示可能な桁数を越えている。すなわち、演算結果を示す値はオーバーフローしている。そこで、表示部3に表示させる値がオーバーフローしているとオーバーフロー判定部53が判定すると(ステップS12において「Yes」)、ステップS13に進む。ステップS13では、エラー制御部54がエラー制御を行う。
【0043】
なお、ステップS12において「No」の場合は、表示制御部52は演算結果を示す値を表示部3に表示させて演算処理を終了する。
【0044】
ところで、電子計算機100では、表示部3に表示される値の情報を「仮数×基数(=10)指数」の形式で数値記憶部55に保持している。つまり、制御部5は指数によって桁数を管理することができるように構成されている。そして、オーバーフロー判定部53は、この桁数の情報から演算結果を示す値がオーバーフローしたか否か判定することができる。なお、オーバーフロー判定部53によって、オーバーフロー判定を行うために実施される演算は公知の演算方法を用いることができるためここでは詳細な説明は省略する。
【0045】
ステップS13で、表示部3でエラー表示されている状態において、ユーザにより概算・換算キー16が押下されると、演算部51は、演算結果の値の概算値を求め、表示制御部52が
図5に示されるように、表示部3に概算値を表示させるように制御する(ステップS14)。
【0046】
すなわち、演算部51は表示部3において表示される値の桁数が小さくなるように所定の位取りを示す数字の単位に合わせた概算値を求める。例えば、
図3のオーバーフローが発生した例では100億の桁の位置に小数点が位置しているが、この場合、小数点の位置を右へ2桁ずらして億を単位とした概算値を求める。さらに、概算値を見やすく表示するために、
図5に示すように小数点以下の末尾の0を取り除いて8桁表示としてもよい。
【0047】
さらに表示制御部52は、表示部3で表示される値の整数部の単位「億」とともに概算値を表示させる。なお、このとき表示部3において表示されている値が概算値であることが分かるように、表示制御部52は、「概算」というシンボルも併せて表示させ、演算処理を終了する。
【0048】
このように、制御部5は、表示部3において表示される値の桁数を小さくするとともに、表示される値の整数部の単位を「億」の単位に合わせた概算値を求め、表示部3に表示させることができる。
【0049】
このため、ユーザは、演算結果の値が表示可能な桁数を超えた際(オーバーフローした際)に、この演算結果の概算値を表示する場合において、概算値の桁数を容易に把握することができる。
【0050】
また、
図5に示した例では概算値は8桁の数字になるため、さらなる値を、数字キー10を介して受け付けて新たな演算を続行することができる。例えば、表示部3において
図5に示される概算値が表示された状態で、新たな値の加算が指示される場合、表示制御部52は、
図6に示すように表示部3における表示を制御する。
図6は、
図1に示す電子計算機100が備える表示部3における、概算値に対するさらなる計算を実施する場合の表示の一例を示す図である。
図6では、概算値にさらに60億を加えるときの、表示部3における表示状態の遷移を示す。
【0051】
すなわち、小数点位置の桁は「億」を示しているので、表示部3に「億」が表示されている。ユーザが四則演算キー11の「+」を入力後、数字キー10により「60」という値を入力すると、表示制御部52は、概算値の表示様式にあわせて表示部3において「億」の単位で数字を表現する(A)。さらにユーザがイコールキー12を押下することで、演算部51は、仮数「102.305070」に「60.」を加算した値を算出する(B)。このようにして演算部51により求められた値は、表示制御部52によって
図6に示されるように「億」の単位で表示部3に表示される。
【0052】
なお、上記したように電子計算機100では、ステップS12においてオーバーフロー判定部53が、演算部51による演算結果を示す値がオーバーフローしていると判定した場合、続くステップS13においてエラー制御部54がエラー制御する構成であった。しかしながら、ステップS13に示されるエラー制御部54によるエラー制御を省略して、演算部51が、演算結果の値の概算値を求め、表示制御部52が
図3に示されるように、表示部3に概算値を表示させる構成としてもよい。
【0053】
このように構成されている場合、電子計算機100におけるエラー制御を解除して概算値を表示させるために、ユーザが概算・換算キー16を押下するという操作を省略することができる。また、電子計算機100では、概算・換算キー16を省略するとともに、制御部5がエラー制御部54を含まない構成とすることができる。
【0054】
また、
図7に示されるように、表示部3において概算値が表示されている状態において、ユーザにより概算・換算キー16が押下されるたびに、表示制御部52が小数点の位置により表す整数部の単位の表示を変更するように構成されていてもよい。
図7は、
図1に示す電子計算機100が備える表示部3における概算値の表示状態の遷移の一例を示す図である。
【0055】
すなわち、
図7に示す例では、概算・換算キー16がユーザにより押下されるたびに、表示制御部52が表示部3で表示させる整数部の位取りを示す数字の単位を「億」から「兆」、「兆」から「千」、「千」から「万」、「万」から「百万」、「百万」から「億」と変更させるように構成されている。また、この単位の変更に伴い、表示制御部52は表示されている単位に応じて、小数点の表示位置を変更させるように制御する。
【0056】
つまり、概算値「102.30507(億)」の表示(C)を「兆」の単位の表示(D)に変更させる場合、表示制御部52は、小数点の位置を左に4つ移動させる。このとき、いつでも当初の概算値に戻すことができるように、表示制御部52は、当初の概算値と小数点位置とを数値記憶部55に記憶させておく構成としてもよい。そして、ユーザにより概算・換算キー16が押下されると、数値記憶部55に記憶されている当初の概算値と小数点位置とを読み出し、表示させる単位に合わせて小数点位置を移動させて表示させる。例えば、「億」から「兆」に単位を変更させる場合、つまり、
図7に示される(C)の表示状態から(D)の表示状態に遷移する場合、「億」と「兆」とでは「兆」の方が「億」よりも桁数が4つ多いため、小数点の位置を変更前の位置から左に4つ移動させる。また、例えば「兆」から「千」に単位を変更させる場合、つまり、
図7に示される(D)の表示状態から(E)の表示状態に遷移する場合、「千」は「兆」よりも桁数が9つ少ないため、小数点の位置を変更前の位置から右に9つ移動させる。これ以降、(E)の表示状態から(F)の表示状態に遷移する場合、および(F)の表示状態から(G)の表示状態に遷移する場合についても同様であるため説明は省略する。
【0057】
このように電子計算機100が位取りを示す数字の単位を変更することができるように構成することで、ユーザの所望する単位に合わせて表示部3に値を表示させることができる。なお、このように電子計算機100において整数部の位取りを示す数字の単位が変更可能となるように構成されている場合、概算・換算キー16は、本開示の単位変更指示キーとして機能する。
【0058】
なお、TABスイッチ2によって表示部3において表示させる小数点以下の桁数が指定されている場合、表示制御部52は、上記した位取りを示す数字の単位の変更に伴う値の表示を、
図8に示されるように行うことができる。
図8は、
図1に示す電子計算機100が備える表示部3における概算値の表示状態の遷移の一例を示す図である。
【0059】
例えば、TABスイッチ2によって小数第2位まで値を表示させるように設定するものとする。このように設定された状態において、
図8に示されるように演算結果を示す値にオーバーフローが生じたことを知らせる表示(H)の後、概算値が表示されているとする。このとき、概算値の整数部の位取りを示す数字の単位が「千」に設定されているとすると、概算値は、「10230507.00(千)」として表示部3に表示される(I)。表示状態(I)では、概算値の小数点以下の数字は小数第2位となっているため端数処理は不要である。
【0060】
ここで、
図8に示す例では、概算・換算キー16がユーザにより押下されるたびに、表示制御部52が表示部3で表示させる整数部の位取りを示す数字の単位を「千」から「万」、「万」から「百万」、「百万」から「億」、「億」から「兆」と変更させるように構成されている。また、この単位の変更に伴い、表示制御部52は表示されている単位に応じて、小数点の表示位置を変更させるように制御する。
【0061】
つまり、概算値「10230507.00(千)」を「万」の単位の表示に変更させる場合、換言すると(I)の表示状態から(J)の表示状態に遷移する場合、表示制御部52は、小数点の位置を左に1つ移動させる。このとき、いつでも当初の概算値に戻すことができるように、表示制御部52は、当初の概算値と小数点位置とを数値記憶部55に記憶させておく構成としてもよい。そして、ユーザにより概算・換算キー16が押下されると、数値記憶部55に記憶されている当初の概算値と小数点位置とを読み出し、表示させる単位に合わせて小数点位置を移動させて表示させる。
【0062】
また、小数点の位置が左に1つ移動すると概算値の小数点以下の数字は3桁となってしまうため端数処理が必要となる。そこで、演算部51は、概算値「1023050.700(万)」において小数第3位の値(「0」)を四捨五入して小数点以下が2桁となるように概算値を求め、求めた概算値を表示制御部52が表示部3に表示させる。この結果、表示部3では、概算値「1023050.70(万)」が表示される。
【0063】
さらに概算・換算キー16がユーザにより押下されると、概算値「1023050.70(万)」を「百万」の単位の表示に変更させる。つまり、(J)の表示状態から(K)の表示状態に遷移させる。
【0064】
この場合、表示制御部52は、小数点の位置を左に2つ移動させる。また、小数点の位置が左に2つ移動すると概算値の小数点以下の数字は4桁となってしまうため端数処理が必要となる。そこで、演算部51は、概算値「10230.5070(万)」において小数第3位の値(「7」)を四捨五入して小数点以下が2桁となるように概算値を求め、求めた概算値を表示制御部52が表示部3に表示させる。この結果、表示部3では、概算値「10230.51(百万)」が表示される。
【0065】
さらに、概算・換算キー16がユーザにより押下されると、概算値「10230.51(百万)」を「億」の単位の表示に変更させる。つまり、(K)の表示状態から(L)の表示状態に遷移させる。
【0066】
この場合、表示制御部52は、小数点の位置を左に2つ移動させる。また、小数点の位置が左に2つ移動すると概算値の小数点以下の数字は4桁となってしまうため端数処理が必要となる。そこで、演算部51は、概算値「102.3051(億)」において小数第3位の値(「5」)を四捨五入して小数点以下が2桁となるように概算値を求め、求めた概算値を表示制御部52が表示部3に表示させる。この結果、表示部3では、概算値「102.31(億)」が表示される。
【0067】
さらに、概算・換算キー16がユーザにより押下されると、概算値「102.31(億)」を「兆」の単位の表示に変更させる。つまり、(L)の表示状態から(M)の表示状態に遷移させる。
【0068】
この場合、表示制御部52は、小数点の位置を左に4つ移動させる。また、小数点の位置が左に4つ移動すると概算値の小数点以下の数字は6桁となってしまうため端数処理が必要となる。そこで、演算部51は、概算値「0.010231(兆)」において小数第3位の値(「0」)を四捨五入して小数点以下が2桁となるように概算値を求め、求めた概算値を表示制御部52が表示部3に表示させる。この結果、表示部3では、概算値「0.01(兆)」が表示される。ここでは、端数処理を四捨五入としているが、小数第3位以下を切り捨ててもよい。
【0069】
なお、上記では加算において演算結果がオーバーフローする場合を例に挙げて説明したが、乗算により演算結果がオーバーフローする場合も同様である。
【0070】
(第2実施形態)
第1実施形態では電子計算機100で実施される演算処理について説明した。これに対して、第2実施形態では、電子計算機としてスマートフォン200などの多機能携帯端末を用い、電子計算機100で実施される演算処理を、スマートフォン200の有する計算機アプリで実行される演算処理に適用する構成となっている。
【0071】
以下において、
図9および
図10を参照して本開示の第2実施形態に係るスマートフォン200における計算機アプリによる演算処理について説明する。
図9は第2実施形態に係る電子計算機(スマートフォン200)のホーム画面の一例を示す図である。また、
図10は、
図9に示す電子計算機(スマートフォン200)において実行される計算機アプリの表示例を示す図である。
【0072】
図9に示されるようにスマートフォン200は、液晶パネル等から構成された表示パネルと、表示パネルに重ねて配置され、指がタッチされた位置を検出する静電容量方式等のタッチパネルとから構成された装置表示部203を備える。装置表示部203に表示された計算機アプリのアイコン205をユーザがタッチすると、計算機アプリが実行されて、
図10に示されるように装置表示部203に計算機が表示される。なお、装置表示部203に表示される計算機の外観構成および、計算機アプリの実行に関するスマートフォン200の要部構成は、
図1に示される電子計算機100の外観構成、ならびに
図2に示される電子計算機100の要部構成と同様となる。このため、同様な部材には同様な符号を付しその説明は省略する。ただし、スマートフォン200における入力部4は、スマートフォン200が備えるタッチパネル(不図示)であり、キースイッチ群1およりTABスイッチ2は、装置表示部203において表示されたキーボタンとなる点で電子計算機100とは異なる。また、スマートフォン200における表示部3は、装置表示部203において表示された表示窓の領域となる点でも電子計算機100と相違する。
【0073】
このように、スマートフォン200において実行される計算機アプリの演算処理において演算結果を示す値にオーバーフローが生じた場合、スマートフォン200の制御部5は電子計算機100と同様に概算値を求めて表示させる。つまり、演算結果を示す値にオーバーフローが生じた場合、スマートフォン200が備える制御部5は、装置表示部203において表示される表示部3において計算機アプリの実行により得られた演算結果を示す値の桁数が小さくなるように表示するとともに、表示された値の整数部の単位を、所定の位取りを示す数字の単位(例えば、億など)に合わせた概算値を求めるように構成されている。
【0074】
このため、ユーザは、演算結果の値が表示可能な桁数を超えた際(オーバーフローした際)に、この演算結果の概算値を表示する場合において、概算値の桁数を容易に把握することができる。
【0075】
また、計算機アプリで概算値を表示している状態において、ユーザにより概算・換算キー16が押下されると、スマートフォン200が備える表示制御部52が小数点の位置により表す整数部の単位の表示を変更するように構成されている。
【0076】
ただし、計算機アプリで表示する概算値の単位は、位取りを示す数字の単位だけではなく、円、銭など貨幣単位、またはm、mm、μm、nm、ピコ、フェムトなど物理量を示す単位とすることもできる。つまり、計算機アプリの概算・換算キー16は、概算値を表示させるキーボタンであるとともに、値の整数部の位取りを示す数字の単位を変更させるキーボタンとして機能する。さらには、値の物理単位を変更させるキーボタンとしても機能する。
【0077】
例えば、演算結果を示す値の概算値が0.09円である場合、ユーザにより概算・換算キー16が押下されると、貨幣単位を円から銭に変更し9銭と表示が変更される構成とすることができる。
【0078】
また、
図11に示されるように、概算・換算キー16がユーザにより押下されるたびに、表示制御部52が表示部3で表示させる単位を「mm」から「μm」、「μm」から「nm」、「nm」から「mm」と変更させるように構成されていてもよい。また、この単位の変更に伴い、表示制御部52は表示されている単位に応じて、小数点の表示位置を変更させるように制御する。
図11は、
図9に示す電子計算機(スマートフォン200)において計算機アプリの実行により表示させる値の表示状態の遷移の一例を示す図である。
【0079】
つまり、スマートフォン200において、「0.005333333(mm)」を「nm」の単位の表示に変更させる場合、換言すると(N)の表示状態から(O)の表示状態に遷移する場合、表示制御部52は、小数点の位置を右に3つ移動させ、「5.333333(μm)」が表示される。
【0080】
さらに概算・換算キー16がユーザにより押下されると、「5.333333(μm)」を「nm」の単位の表示に変更させる。つまり、(O)の表示状態から(P)の表示状態に遷移させる場合、表示制御部52は、小数点の位置を右に3つ移動させ、「5333.333(nm)」が表示される。
【0081】
このように、制御部5は、計算機アプリの実行により表示される値を異なる単位に容易に変更させることができる。このため、ユーザが所望する単位に合わせて値を表示させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 キースイッチ群
2 TABスイッチ
3 表示部
4 入力部
5 制御部
6 記憶装置
10 数字キー
11 四則演算キー
12 イコールキー
16 概算・換算キー
51 演算部
52 表示制御部
53 オーバーフロー判定部
54 エラー制御部
55 数値記憶部
100 電子計算機
200 スマートフォン
203 装置表示部
205 アイコン