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特開2024-142343信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142343
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20241003BHJP
   H04L 7/04 20060101ALI20241003BHJP
   H04L 27/227 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04L27/26 420
H04L7/04 200
H04L27/227 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054445
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】井倉 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松村 善洋
(72)【発明者】
【氏名】西山 武志
(72)【発明者】
【氏名】丹下 智之
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA13
5K047BB01
5K047HH15
(57)【要約】
【課題】フレーム同期精度の向上に寄与する正確性の高いフレームの識別情報を生成可能な信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラムを提供すること。
【解決手段】信号処理装置203は、自己相関シンボルを生成する自己相関処理部1200と、シンボルレプリカを生成するシンボルレプリカ生成部1300と、生成された自己相関シンボルと、生成されたシンボルレプリカとを用いて、複数の個別尤度値を算出する個別尤度値算出部1500と、算出された複数の個別尤度値のそれぞれについて、対象のフレームの個別尤度値と、対象のフレームに先行するフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、複数のパス尤度値を算出するパス尤度値算出部1600と、算出されたパス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力するパス尤度値選択部1700とを備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、前記対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対する、前記対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成する自己相関処理部と、
前記対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、前記対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、前記直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成するシンボルレプリカ生成部と、
前記自己相関処理部によって生成された前記1以上の自己相関シンボルと、前記シンボルレプリカ生成部によって生成された前記1以上のシンボルレプリカとを用いて、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出する個別尤度値算出部と、
前記個別尤度値算出部によって算出された前記複数の個別尤度値のそれぞれについて、前記対象のフレームの個別尤度値と、前記対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出するパス尤度値算出部と、
前記パス尤度値算出部によって算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力するパス尤度値選択部と
を備えた、信号処理装置。
【請求項2】
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記パス尤度値選択部は、
前記パス尤度値算出部によって算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択する最大値選択部と、
前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号と、前記直前のフレームのフレーム番号に相当するカウンタ値との誤差値を算出する誤差値算出部と、
前記カウンタ値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を算出するフレーム番号算出部と、
前記誤差値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正するための調整値を算出する調整値算出回路と、
前記調整値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正する補正部と、
補正された前記対象のフレームのフレーム番号を、前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号として出力する出力部と
を備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記調整値算出回路は、
前記先行する1以上のフレームの前記誤差値と、前記対象のフレームの誤差値とを用いて、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値の標準偏差を算出する標準偏差算出部と、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であるか判定する標準偏差判定部と、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であると判定された場合、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値を用いて、前記調整値を算出する調整値算出部と
を含む、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記パス尤度値算出部は、
前記対象のフレームのフレーム番号についての個別尤度値を対数変換する対数演算回路と、
前記対数演算回路によって対数変換された前記個別尤度値と、前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを加算して、前記対象のフレームのパス尤度値を算出する加算器と
を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記パス尤度値算出部は、前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値と既定値とを乗算して乗算値を出力する乗算器をさらに備えており、
前記加算器は、対数変換された前記個別尤度値と前記乗算値とを加算して、前記対象のフレームのパス尤度値を算出し、
前記既定値は、0より大きく、かつ、1未満の実数値である、請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記個別尤度値算出部は、
前記1以上のシンボルレプリカの共役複素数を算出する1以上の共役複素数変換回路と、
前記共役複素数変換回路によって算出された前記シンボルレプリカの共役複素数と、前記自己相関処理部によって生成された対応する前記自己相関シンボルとを乗算して乗算値を算出する1以上の複素乗算器と、
前記1以上の複素乗算器によって算出された1以上の乗算値を加算して加算値を算出する複素加算器と、
前記複素加算器によって算出された前記加算値の実数部を取得して、前記対象のフレームの個別尤度値として出力する実数値取得回路と
を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記自己相関処理部は、
前記対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値に対応する前記直前のフレームの同期信号に含まれるシンボル値の複数の共役複素数を算出する共役複素数変換回路と、
前記対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値と、前記共役複素数変換回路によって算出された複数の共役複素数との内積を算出して、複数の複素数列を算出する複素乗算器と、
前記複素乗算器によって算出された複数の複素数列を加算して、前記自己相関シンボルを生成する複素加算器と
を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記シンボルレプリカ生成部は、
前記直前のフレームのフレーム番号を変調して、前記直前のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成する第1のシンボル変調部と、
前記対象のフレームのフレーム番号を変調して、前記対象のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成する第2のシンボル変調部と、
前記直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数を算出する1以上の共役複素数変換回路と、
前記対象のフレームの変調されたシンボル値と、前記対象のフレームの変調されたシンボル値に対応する前記直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数とを乗算して、前記シンボルレプリカを生成する1以上の複素乗算器と
を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する信号処理方法であって、前記コンピュータが
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、前記対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対する、前記対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成し、
前記対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、前記対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、前記直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成し、
生成された前記1以上の自己相関シンボルと、生成された前記1以上のシンボルレプリカとを用いて、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出し、
算出された前記複数の個別尤度値のそれぞれについて、前記対象のフレームの個別尤度値と、前記対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出し、
算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力する、
信号処理方法。
【請求項10】
コンピュータが実行する信号処理プログラムであって、前記コンピュータに対し、
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、前記対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対する、前記対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成させ、
前記対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、前記対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、前記直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成させ、
生成された前記1以上の自己相関シンボルと、生成された前記1以上のシンボルレプリカとを用いて、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出させ、
算出された前記複数の個別尤度値のそれぞれについて、前記対象のフレームの個別尤度値と、前記対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出させ、
算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択させ、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力させる、
信号処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信におけるフレーム同期手法に関し、特に、高雑音環境下において同期誤り確率が低いフレーム同期手法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル無線通信では、受信した無線信号を正しく処理するために、受信信号から正確な同期信号を生成することが非常に重要な要件となっている。そのため、ほとんどのデジタル無線方式では、無線フォーマットに専用の同期信号が含まれており、その同期信号を用いて、送受信機間の同期処理を行うように設計されている。
【0003】
特に、携帯電話向け通信規格のように、一定長のフレームが繰り返し送信されるような構造の物理層インタフェースを有する無線方式では、そのフレーム構造の相対的な位置を示すフレーム番号を用いて、送受信機間での無線制御を行うため、同期信号などにフレーム番号を埋め込んで、受信機側でその情報を取り出すことにより、送受信機間においてフレームの順序を整合させるフレーム同期を行う手法がよく用いられている。
【0004】
しかしながら、遮蔽物、反射波、雑音が多いなどの劣悪な通信環境やフェージングの発生などの要因により、フレーム同期が正しく行われなくなる場合がある。その場合、フレーム同期が回復するまでの一定時間、無線通信が困難になることが考えられる。
【0005】
そのため、従来、可能な限り高い精度でフレーム同期が行なわれるように様々な手法が提案されてきた。このような手法の一例として、送信する同期信号の構成を工夫することにより、同期精度を向上させる手法が考えられる。例えば、特許文献1では、送信側で、通信データを常時監視し、空きチャネルを検出するとフレーム番号を、この空きチャネルに挿入することによって、フレーム同期精度を高める手法を提案している。
【0006】
また、特許文献2では、パイロットシンボルパターンに特定の符号系列を用いることにより、周波数引き込み特性の改善とフレームタイミング検出の高速化を実現する手法を提案している。
【0007】
さらに、特許文献3では、既知の信号系列の繰り返しからなるフレーム検出用信号系列に続けて、既知の信号系列又はその反転系列からなるフレーム同期用信号系列を配置することにより、フレーム同期性能を向上する手法が提案されている。
【0008】
その他の手法として、非同期状態になったことの検出や、再同期時の同期の高速化により、同期外れの影響を低減する手法が考えられる。
【0009】
例えば、特許文献4では、受信したフレーム同期信号のフレーム番号の大小関係を照合して、フレーム同期が正常か否か判定することにより、速やかに再同期を行う手法を提案している。
【0010】
また、特許文献5では、フレーム同期に用いるフレーム番号のビット欠落や重複を許容して同期することにより、速やかなフレーム同期を実現する手法が提案されている。
【0011】
さらに、特許文献6では、既知の信号と受信信号間の近似マッチングによってフレーム同期を行う手法が提案されている。
【0012】
さらに、特許文献7では、複数の予想受信シーケンスとの比較を行い、一致数が所定の閾値を上回ったときに同期したと判定する手法が提案され、これらの手法を用いて、同期処理の高速化を実現する手法が提案されている。
【0013】
さらに、その他の手法として、受信側のアルゴリズムの工夫で同期精度を向上させる手法も提案されている。例えば、特許文献8では、チャネルカード毎に設けられた自走カウンタと、送信元から送られてくる送信フレーム番号との位相差を用いて自己同期を確立することにより、同期誤りを低減する手法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007-96567号公報
【特許文献2】特開2007-159040号公報
【特許文献3】国際公開第2016/027728号
【特許文献4】特開2009-44703号公報
【特許文献5】特開平10-51436号公報
【特許文献6】特開2011-182406号公報
【特許文献7】特表2007-521677号公報
【特許文献8】特開2009-77197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のフレーム同期手法では、同期精度向上のための様々な手法が提案されているものの、通常の無線通信環境より大幅に雑音が大きいような、さらなる劣悪な通信環境におけるフレーム同期性能が十分でないという課題がある。
【0016】
例えば、ミリ波のような高い周波数を用いる無線通信では、降雨減衰による受信レベルの低下が大きい。そのため、10年に1度のような豪雨が発生したときは、受信信号に含まれる相対的な雑音が非常に大きくなり、フレーム同期が困難になるという問題が生じる。
【0017】
このような問題を解決する手法の1つとして、1つのフレーム内に存在するフレーム同期信号のスペクトラム拡散における拡散率や繰り返し数を増加させるという手法が考えられる。この手法は、実質的に同期信号の受信電力の総和を増加させる効果があり、フレーム同期精度の向上に貢献する。
【0018】
しかしながら、同期信号の拡散率や繰り返し数を増加させると、相対的に、通常のデータを送るための信号数を削減する必要があり、データの伝送速度が低下するという問題が生じる。すなわち、従来の手法では、データの伝送速度の低下を許容して、滅多に発生しない劣悪な通信環境におけるフレーム同期精度を確保するか、または、滅多に発生しないような劣悪な通信環境における通信をあきらめて、データ伝送速度を確保するかのトレードオフとなる。
【0019】
本開示の目的の1つは、上述した課題を鑑み、フレーム同期精度の向上に寄与する正確性の高いフレームの識別情報を生成可能な信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
例示的な一実施形態に係る信号処理装置は、
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、直前のフレームのフレーム識別情報に対する、対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成する自己相関処理部と、
対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成するシンボルレプリカ生成部と、
自己相関処理部によって生成された1以上の自己相関シンボルと、シンボルレプリカ生成部によって生成された1以上のシンボルレプリカとを用いて、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出する個別尤度値算出部と、
個別尤度値算出部によって算出された複数の個別尤度値のそれぞれについて、対象のフレームの個別尤度値と、対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出するパス尤度値算出部と、
パス尤度値算出部によって算出されたパス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力するパス尤度値選択部とを備える。
【0021】
例示的な他の実施形態に係るコンピュータが実行する信号処理方法は、コンピュータが
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、直前のフレームのフレーム識別情報に対する、対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成し、
対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成し、
生成された1以上の自己相関シンボルと、生成された1以上のシンボルレプリカとを用いて、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出し、
算出された複数の個別尤度値のそれぞれについて、対象のフレームの個別尤度値と、対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出し、
算出されたパス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力する。
【0022】
例示的な他の実施形態に係るコンピュータが実行する信号処理プログラムは、コンピュータに対し、
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、直前のフレームのフレーム識別情報に対する、対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成させ、
対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成させ、
生成された1以上の自己相関シンボルと、生成された1以上のシンボルレプリカとを用いて、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出させ、
算出された複数の個別尤度値のそれぞれについて、対象のフレームの個別尤度値と、対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出させ、
算出されたパス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択させ、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力させる。
【発明の効果】
【0023】
本開示により、フレーム同期精度の向上に寄与する正確性の高いフレームの識別情報を生成可能な信号処理装置、信号処理方法及び信号処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的な一実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図である。
図2】例示的な一実施形態に係る無線フレームの構造を示す図である。
図3】例示的な一実施形態に係る送信部の構成を示すブロック図である。
図4】例示的な一実施形態に係る同期信号生成部の構成の詳細を示すブロック図である。
図5】例示的な一実施形態に係る受信部の構成を示すブロック図である。
図6】従来のフレーム識別情報生成部の構成を示すブロック図である。
図7】例示的な一実施形態に係るフレーム識別情報生成部が実行する処理を示すフローチャートである。
図8】例示的な一実施形態に係る自己相関処理の概要を示す図である。
図9】例示的な一実施形態に係る個別尤度値算出処理の概要を示す図である。
図10】例示的な一実施形態に係るパス尤度値算出処理の概要を示す図である。
図11】例示的な一実施形態に係るフレーム識別情報生成部の構成の一例を示すブロック図である。
図12】自己相関処理部の一例を示す図である。
図13】シンボルレプリカ生成部の一例を示すブロック図である。
図14】シンボルレプリカ生成部の他の一例を示すブロック図である。
図15】個別尤度値算出部の構成の一例を示す図である。
図16】パス尤度値算出部の構成の一例を示す図である。
図17】パス尤度値選択部の構成の一例を示す図である。
図18】例示的な他の実施形態に係るパス尤度値選択部の構成の一例を示す図である。
図19】調整値算出回路の構成の一例を示す図である。
図20】調整値算出回路が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図21図18に示すパス尤度値選択部がフレーム番号を出力する場合のフレーム番号の推定値、カウンタ値、カウンタ誤差値、及びオフセット調整値の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1は、例示的な一実施形態に係る無線通信装置1を示すブロック図である。無線通信装置1は、無線データ通信を行う装置であり、送信部10と、受信部20とを含む。送信部10は、送信対象のデータを無線によって送信する手段である。受信部20は、無線で送信されたデータを受信する手段である。
【0026】
図2は、例示的な一実施形態に係る無線フレームの構造を示す図である。無線通信装置1が、図2に示す無線フレーム構造のデータを送信する場合、同じ長さの複数のフレームであるフレーム#0~フレーム#N-1を連続して送信する。各フレームには、同期信号と、データ信号が含まれる。
【0027】
同期信号は、タイミング同期やフレーム同期に使用される信号である。データ信号は、同期信号以外の通信データである。同期信号には、その同期信号が属するフレームのフレーム識別情報を変調した信号である1以上のシンボル値Sが含まれる。本実施形態では、フレーム識別情報の一例としてフレーム番号を採用する。例えば、「♯0」で識別されるフレームの同期信号は、当該フレームのフレーム番号「0」を変調した1以上のシンボル値S0,0,S1,0,S2,0,S3,0が含まれる。例えば、4ビットの数値の場合、フレーム番号「0」は、「0」が4ビット連続した2進数の数値「0000」となる。図2に示す通り、フレーム番号は、0、1、2・・・N-1のように、後続のフレームのフレーム番号が先行のフレームよりも1つ大きくなり、最大のフレーム番号「N-1」の次のフレーム番号は0に戻る。なお、Nは、正の整数である。
【0028】
図3は、例示的な一実施形態に係る送信部10の構成を示すブロック図である。本明細書で説明する図では、発明の理解を容易にするために、データの流れを一方向矢印で示しているが、各機能手段の間のデータ通信は一方向に限られず、双方向のデータ通信が可能であることに留意すべきである。
【0029】
送信部10は、同期信号生成部101と、データ符号部102と、データ変調部103と、無線信号送信処理部104とを含む。
【0030】
同期信号生成部101は、入力されたフレーム番号を変調し、変調されたフレーム番号を含む同期信号を生成する。データ符号部102は、入力された送信対象のデータ(以下、「送信データ」とする。)を符号化する。データ変調部103は、データ符号部102によって符号化された送信データを変調する。無線信号送信処理部104は、同期信号生成部101が生成した同期信号と、データ変調部103が符号化した送信データを合成し、合成されたデータを無線信号に変換して出力する。
【0031】
図4は、例示的な一実施形態に係る同期信号生成部101の構成の詳細を示すブロック図である。同期信号生成部101は、同期信号変調部1010と、拡散処理部1011とを含む。
【0032】
同期信号変調部1010は、入力されたフレーム番号を変調する。同期信号変調部1010は、例えば、BPSK、QPSK、16QAM等の変調方式を採用することができる。同期信号変調部1010は、ビットデータを複素数のベースバンド信号に変換する。
【0033】
拡散処理部1011は、拡散符号を用いて、同期信号変調部1010によって変調されたフレーム番号に拡散処理を施し、同期信号を生成する。拡散処理部1011は、既定の拡散符号を固定的に使用することができる。既定の拡散符号は、任意の拡散符号の候補から選択することができる。
【0034】
図5は、例示的な一実施形態に係る受信部20の構成を示すブロック図である。受信部20は、無線信号受信処理部201と、タイミング同期部202と、フレーム識別情報生成部203と、データ復調部204と、データ復号部205とを含む。これらの機能手段は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の半導体装置によって実現することができる。なお、これらの機能手段は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサによって実現してもよい。これらの装置は、コンピュータに相当する。
【0035】
無線信号受信処理部201は、受信した無線信号をベースバンド信号に変換する。
【0036】
タイミング同期部202は、無線信号受信処理部201が出力したベースバンド信号を用いて同期信号を生成する。同期信号は、フレーム番号の生成及びベースバンド信号の復調に用いられる。
【0037】
フレーム識別情報生成部203は、タイミング同期部202が生成した同期信号を用いて、フレーム番号を生成する。フレーム識別情報生成部203の詳細については後述する。フレーム識別情報生成部203は、信号処理装置に相当する。
【0038】
データ復調部204は、タイミング同期部202が生成した同期信号を用いて、無線信号受信処理部201によって変換されたベースバンド信号を復調する。例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の無線機の場合、データ復調部204は、同期信号から抽出したフレーム境界を示すタイミングパルス信号を用いて、ベースバンド信号をOFDMシンボル毎にブロック状に切り出し、そのブロック単位に対してフーリエ変換を施す。次に、データ復調部204は、フーリエ変換されたベースバンド信号に対して、ベースバンド信号の中に埋め込まれている参照信号を用いて、チャネル推定を行う。そして、データ復調部204は、その推定結果を用いて、参照信号以外のデータ信号に対して等化処理を行うことで、ベースバンド信号を復調することができる。
【0039】
データ復号部205は、フレーム識別情報生成部203が生成したフレーム番号を用いて、データ復調部204で復調されたデータを復号する。データ復調部204によって復号されたデータは、受信データに相当する。例えば、偶数フレーム番号にユーザ0を割り当て、奇数フレーム番号にユーザ1を割り当てた場合、データ復号部205は、偶数フレーム番号で送られたデータを結合して、ユーザ0用の復号データを生成することができる。
【0040】
図6は、従来のフレーム識別情報生成部600の構成を示すブロック図である。フレーム識別情報生成部600は、逆拡散処理部601~603と、シンボル電力比較部604と、同期信号復調部605とを含む。
【0041】
逆拡散処理部601~603は、拡散符号を用いて、入力された同期信号に対して逆拡散処理を実行し、シンボルを生成する。逆拡散処理部601~603には、それぞれ任意の拡散符号が割り当てられる。逆拡散処理部601~603のいずれかに割り当てられる拡散符号は、送信部10の同期信号生成部101が使用した拡散符号と同一の拡散符号である。この場合、この拡散符号を用いる逆拡散処理部601~603が生成したシンボルの電力が最も大きくなる。
【0042】
シンボル電力比較部604は、逆拡散処理部601~603が生成したシンボルのうち、その電力が最大のシンボルを選択する。これにより、同期信号の生成に用いられた拡散符号を用いた逆拡散処理によって生成されたシンボルが選択される。同期信号復調部605は、シンボル電力比較部604が選択したシンボルを復調して、1つのフレーム番号を得る。
【0043】
このように、図6に示す従来のフレーム識別情報生成部600は、1つのフレームの同期信号に基づいて生成されたシンボルを選択し、当該シンボルを復調してフレーム番号を生成する。したがって、図6に示す従来のフレーム識別情報生成部600は、1つのフレーム番号を生成するために、1つのフレームの同期信号しか使用しない。
【0044】
図7は、例示的な一実施形態に係るフレーム識別情報生成部が実行する処理を示すフローチャートである。図7に示す処理は、同期信号の自己相関処理S1と、個別尤度値算出処理S2と、パス尤度値算出処理S3と、最大パス尤度値選択処理S4とを含む。これらの4つの処理を実行することにより、フレーム識別情報が生成される。
【0045】
図8は、同期信号の自己相関処理S1の概要を示す。自己相関処理S1の対象となる同期信号は、複数の複素数列で構成される。1つの複素数列の長さは、拡散処理における拡散率に一致する。
【0046】
まず、共役複素数変換回路(conj)801が、対象のフレームの同期信号Sの1フレーム前の同期信号S-1の共役複素数を算出する。次いで、複素乗算器802が、対象のフレームの同期信号Sと、同期信号S-1の共役複素数とを乗算して乗算値を得る。そして、複素加算器803が、拡散率分の乗算値を加算することにより、自己相関シンボルDが得られる。拡散率分とは、例えば、同期信号のスペクトラム拡散における拡散率が256の場合、256個の乗算値を加算することを意味する。
【0047】
自己相関処理S1で使用される同期信号は、フレーム毎に異なるフレーム番号と、各フレームで共通の拡散符号を乗算した値である。拡散符号は、スペクトラム拡散における拡散符号である。そのため、同期信号について自己相関処理S1を実行することにより、複素乗算器802によって同期信号の拡散符号成分がキャンセルされ、対象のフレーム番号と、1つ前のフレーム番号の変化成分のみが得られる。これが、自己相関シンボルDに相当する。換言すると、自己相関シンボルDは、直前のフレームのフレーム識別情報に対する、対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す。この変化成分は、直前のフレームのフレーム番号のシンボル値に対する、対象のフレームのフレーム番号のシンボル値の変化を意味する。
【0048】
図9は、個別尤度値算出処理S2の概要を示す。ここで、フレーム番号iで識別されるフレームのシンボルレプリカRは、フレーム番号i-1で識別されるフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、フレーム番号iで識別されるフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を示すものとする。換言すると、シンボルレプリカは、直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す。
【0049】
まず、共役複素数変換回路(conj)901~904が、シンボルレプリカRの共役複素数を算出する。次いで、複素乗算器905~908が、シンボルレプリカRの共役複素数と、自己相関処理S1で生成された自己相関シンボルDとを乗算して乗算値を算出する。そして、実数値取得回路(Re)909~912それぞれが、複素乗算器905~908が算出した乗算値の実数成分を算出する。算出された実数成分が、フレーム番号iの個別尤度値Bに相当する。個別尤度値Bは、個別尤度値Bの算出に用いられた自己相関シンボルDの算出に使用された同期信号が、フレーム番号iで識別されるフレームの同期信号である確からしさを示す。例えば、Bは、個別尤度値Bの算出に用いられた自己相関シンボルDの算出に使用された受信した同期信号が、フレーム番号0で識別されるフレームの同期信号である確からしさを示す。換言すると、個別尤度値Bは、個別尤度値Bに関連する自己相関シンボルDの算出に使用された同期信号に含まれているフレーム番号成分が、フレーム番号iである確からしさを示す。
【0050】
このように全ての候補フレーム番号(0~N-1)のシンボルレプリカR~RN-1に対して個別尤度値算出処理S2を実行することにより、全ての候補フレーム番号の個別尤度値B~BN-1を算出することができる。
【0051】
図10は、パス尤度値算出処理S3の概要を示す。パス尤度値算出処理S3は、一定の期間に受信した複数のフレームの個別尤度値を用いてパス尤度値を算出する。パス尤度値とは、一定の期間に受信した複数のフレームの個別尤度値を乗算した値である。具体的には、現在のフレームのフレーム番号iのパス尤度値は、現在のフレームのフレーム番号iの個別尤度値と、当該個別尤度値に対応する先行の複数のフレームの個別尤度値との乗算値である。
【0052】
例えば、図10に示すように、現在のフレームのフレーム番号iで識別される個別尤度値に対応する先行の2つのフレームの個別尤度値は、現在のフレームの1つ前のフレームの個別尤度値のうちフレーム番号iよりも1つ小さいフレーム番号i-1で識別される個別尤度値と、現在のフレームの2つ前のフレームの個別尤度値のうちフレーム番号iよりも2つ小さいフレーム番号i-2で識別される個別尤度値である。この場合、現在のフレームのフレーム番号iのパス尤度値は、現在のフレームのフレーム番号iの個別尤度値と、1つ前のフレームのフレーム番号i-1で識別される個別尤度値と、2つ前のフレームのフレーム番号i-2で識別される個別尤度値との乗算値である。なお、フレーム番号0よりも1つ小さいフレーム番号は、N-1である。
【0053】
このようにして求めたフレーム番号iのパス尤度値は、過去の一定の期間のフレームにおける同期信号の確からしさを反映した、現時点のフレーム番号iの相対的な確からしさを表すことができる。例えば、フレーム番号が0→1→2→3のように、順番に変化したと仮定する。この場合、最新の同期信号から3フレーム前の同期信号のフレーム番号が0である確からしさと、2フレーム前の同期信号のフレーム番号が1である確からしさと、1フレーム前の同期信号のフレーム番号が2である確からしさと、最新の同期信号のフレーム番号が3である確からしさを乗算した値が、現時点のフレーム番号が3である確からしさに相当する。この確からしさは、他のフレーム番号である確からしさとの相対的な値である。
【0054】
最大パス尤度値選択処理S4では、パス尤度値算出処理S3で算出された全てのパス尤度値を比較し、値が最大であるパス尤度値のフレーム番号を選択する。選択されたパス尤度値のフレーム番号は、最も確からしいフレーム番号に相当する。このような手法を用いることにより、Lフレーム分の同期信号を用いて、フレーム番号を算出することができる。Lフレーム分とは、過去の一定の期間のフレームを意味する。そのため、1つの同期信号を用いてフレーム番号を算出する手法と比べて、高い精度でフレーム番号を算出することができる。換言すると、劣悪な通信環境のような回線品質が大幅に劣化したときにも無線通信に十分なフレーム同期精度を実現することができる。
【0055】
図11は、例示的な一実施形態に係るフレーム識別情報生成部203の構成の一例を示すブロック図である。フレーム識別情報生成部203は、自己相関処理部1200と、シンボルレプリカ生成部1300と、個別尤度値算出部1500と、パス尤度値算出部1600と、パス尤度値選択部1700とを含む。フレーム識別情報生成部203は、回路によって実現することができる。
【0056】
自己相関処理部1200は、入力された同期信号を用いて、自己相関シンボルDを生成する。シンボルレプリカ生成部1300は、シンボルレプリカ信号を生成する。
【0057】
個別尤度値算出部1500は、自己相関処理部1200が生成した自己相関シンボルDと、シンボルレプリカ生成部1300が生成したシンボルレプリカ信号を用いて、個別尤度値を算出する。個別尤度値は、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す。
【0058】
パス尤度値算出部1600は、個別尤度値算出部1500が算出した1以上の個別尤度値を積算して、パス尤度値を算出する。パス尤度値は、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す。パス尤度値は、フレーム番号の変化について定められた所定の拘束条件に従って、対象となる個別尤度値を積算して算出される。拘束条件とは、フレーム番号が連続及び循環する条件である。例えば、連続する複数のフレームに「0」から「N-1」までのフレーム番号を割り当て、かつ、フレーム番号を1つずつインクリメントさせる場合、フレーム番号「0」で識別されるフレームの次のフレーム番号は「1」であり、フレーム番号「1」で識別されるフレームの次のフレーム番号は「2」であり、フレーム番号「N-1」で識別されるフレームの次のフレームのフレーム番号は「0」に戻るといった条件が、拘束条件の一例として挙げられる。
【0059】
パス尤度値選択部1700は、パス尤度値算出部1600が算出した複数のパス尤度値を用いて、値が最大となるパス尤度値に対応するフレーム番号、換言すると、最も確からしいフレーム番号を選択する。
【0060】
図12は、自己相関処理部1200の一例である自己相関処理部1201~1204を示す図である。自己相関処理部1200は、対象のフレームの同期信号の1以上のシンボル値と、対象のフレームの直前のフレームの同期信号の対応する1以上のシンボル値とを用いて、直前のフレームのフレーム番号に対する対象のフレームのフレーム番号の変化を示す自己相関シンボルDを生成する。図12に示す例では、フレームkの同期信号は、S0,k,S1,k,S2,k,S3,kの4つのシンボルで構成されているものとする。kは、2以上の整数である。同期信号の各シンボルは、拡散符号M個分の複素数列で構成される。Mは、任意の自然数である。自己相関処理部1201,1202,1203,1204は、それぞれ同期信号S0,k,S1,k,S2,k,S3,kを処理する。
【0061】
自己相関処理部1201は、対象のフレームの同期信号S0,kのシンボルと、当該フレームの直前のフレームの同期信号S0,kの対応するシンボルとを用いて、自己相関シンボルD0,kを算出する。
【0062】
例えば、図12に示すように、フレームkの自己相関シンボルD0,kを算出する場合、まず、共役複素数変換回路1205~1207が、フレームkの直前のフレームであるフレームk-1の同期信号シンボルS0,k-1のそれぞれの共役複素数を算出する。これにより、拡散符号M個分の共役複素数が算出される。次いで、複素乗算器1208~1210が、フレームkの同期信号シンボルS0,kのそれぞれと、フレームk-1の対応する同期信号シンボルS0,k-1の共役複素数との内積を算出して、M個分の複素数列を算出する。そして、複素加算器1211が、複素乗算器1208~1210の算出したM個分の複素数列を加算して、自己相関シンボルD0,kを算出する。
【0063】
自己相関処理部1202,1203,1204は、自己相関処理部1201と同様に、それぞれ同期信号S1,k,S2,k,S3,kと、対応する同期信号S1,k-1,S2,k-1,S3,k-1を用いて、自己相関シンボルD1,k,D2,k,D3,kを算出する。
【0064】
したがって、自己相関処理部1201~1204はそれぞれ、共役複素数変換回路と、複素乗算器と、複素加算器とを備える。共役複素数変換回路は、対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値に対応する直前のフレームの同期信号に含まれるシンボル値の複数の共役複素数を算出する。複素乗算器は、対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値と、共役複素数変換回路によって算出された複数の共役複素数との内積を算出して、複数の複素数列を算出する。複素加算器は、複素乗算器によって算出された複数の複素数列を加算して、自己相関シンボルを生成する。
【0065】
図13は、シンボルレプリカ生成部1300の一例を示す。シンボルレプリカ生成部1300は、フレームカウンタ部1301と、2つのシンボル変調部1302,1303と、相関処理部1304とを含む。
【0066】
フレームカウンタ部1301は、フレーム番号に相当するカウンタ値i及びカウンタ値i-1を生成する。換言すると、フレームカウンタ部1301は、対象のフレームのフレーム番号と、当該対象のフレームの直前のフレーム番号を生成する。カウンタ値i及びカウンタ値i-1は、それぞれシンボル変調部1302及びシンボル変調部1303に入力される。
【0067】
シンボル変調部1302は、カウンタ値i-1を用いて、変調後シンボルS0,i-1,S1,i-1,S2,i-1,S3,i-1を生成する。シンボル変調部1303は、カウンタ値iを用いて、変調後シンボルS0,i,S1,i,S2,i,S3,iを生成する。具体的には、シンボル変調部1302,1303は、フレームカウンタ部1301が生成した対象のフレームのフレーム番号と、当該対象のフレームの直前のフレーム番号を変調することにより、変調後シンボルS0,i-1,S1,i-1,S2,i-1,S3,i-1と、変調後シンボルS0,i,S1,i,S2,i,S3,iとを生成する。シンボル変調部1302,1303は、例えば、BPSK、QPSK、16QAM等の変調方式を採用することができる。シンボル変調部1302,1303は、ビットデータを複素数のベースバンド信号に変換する。
【0068】
相関処理部1304は、共役複素数変換回路1305~1308と、複素乗算器1309~1312とを含む。共役複素数変換回路1305~1308は、カウンタ値i-1に基づいて生成されたシンボル値S0,i-1,S1,i-1,S2,i-1,S3,i-1の共役複素数を算出する。換言すると、共役複素数変換回路1305~1308は、対象のフレームの直前のフレーム番号に基づいて生成されたシンボル値S0,i-1,S1,i-1,S2,i-1,S3,i-1の共役複素数を算出する。
【0069】
複素乗算器1309~1312は、カウンタ値i-1に基づいて生成されたシンボル値S0,i-1,S1,i-1,S2,i-1,S3,i-1の共役複素数と、カウンタ値iに基づいて生成されたシンボル値S0,i,S1,i,S2,i,S3,iをそれぞれ乗算することにより、シンボルレプリカR0,i,R1,i,R2,i,R3,iを生成する。換言すると、複素乗算器1309~1312は、対象のフレームの直前のフレーム番号に基づいて生成されたシンボル値S0,i-1,S1,i-1,S2,i-1,S3,i-1の共役複素数と、対象のフレームのフレーム番号に基づいて生成されたシンボル値S0,i,S1,i,S2,i,S3,iをそれぞれ乗算することにより、シンボルレプリカR0,i,R1,i,R2,i,R3,iを生成する。
【0070】
上述した通り、シンボルレプリカ生成部1300は、第1のシンボル変調部1302と、第2のシンボル変調部1303と、1以上の共役複素数変換回路1305~1308と、1以上の複素乗算器1309~1312とを備える。第1のシンボル変調部1302は、直前のフレームのフレーム番号を変調して、直前のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成する。第2のシンボル変調部1303は、対象のフレームのフレーム番号を変調して、対象のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成する。1以上の共役複素数変換回路1305~1308は、第1のシンボル変調部によって生成された直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数を算出する。1以上の複素乗算器1309~1312は、第2のシンボル変調部によって生成された対象のフレームの変調されたシンボル値と、共役複素数変換回路によって生成された、対象のフレームの変調されたシンボル値に対応する直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数とを乗算して、シンボルレプリカを生成する。
【0071】
図14は、他の実施形態に係るシンボルレプリカ生成部1400を示す。シンボルレプリカ生成部1400は、フレームカウンタ部1401と、メモリ1402とを含む。フレームカウンタ部1401は、シンボルレプリカR0,i,R1,i,R2,i,R3,iが格納されたメモリ領域を示すアドレスの値を生成する。メモリ1402には、図13に示すシンボルレプリカ生成部1300が生成するシンボルレプリカR0,i,R1,i,R2,i,R3,iと同一の値を予め計算して格納しておく。これらのシンボルレプリカは、図15の個別尤度値算出部1500が、同期信号が入力されたタイミングで生成する。個別尤度値算出部1500は、フレームカウンタ部1401が生成したアドレスの値を用いて、メモリ1402に格納されたシンボルレプリカを読み出すことができる。これにより、図13で示した演算が毎回実施されることがないため、シンボルレプリカ生成部1400における演算量を削減することが可能である。
【0072】
図15は、個別尤度値算出部1500の一例である個別尤度値算出部1501~1503を示す。以下、個別尤度値算出部1501の構成及び処理について説明する。個別尤度値算出部1502,1503は、個別尤度値算出部1501と同様の構成を有し、同様の処理を実行する。
【0073】
個別尤度値算出部1501は、共役複素数変換回路(conj)1504~1507と、複素乗算器1508~1511と、複素加算器1512と、実数値取得回路1513(Re)とを含む。
【0074】
まず、共役複素数変換回路1504~1507は、候補フレーム番号iのシンボルレプリカR0,i,R1,i,R2,i,R3,iの共役複素数を算出する。複素乗算器1508~1511は、共役複素数変換回路1504~1507が算出した共役複素数と、自己相関処理部1200が生成した自己相関シンボルD0,k,D1,k,D2,k,D3,kとを、それぞれ乗算して乗算値を算出する。複素加算器1512は、複素乗算器1508~1511が算出した各乗算値を加算して、加算値を算出する。実数値取得回路1513は、複素加算器1512が算出した加算値の実数部を取得する。実数値取得回路1513が取得した当該実数部が、個別尤度値B0,kに相当する。
【0075】
個別尤度値算出部1501~1503は、全ての候補フレーム番号に対し、上記の処理を実行することにより、全ての候補フレーム番号の個別尤度値B0,k~BN-1,kを算出することができる。
【0076】
したがって、本実施形態では、1以上の共役複素数変換回路1504~1507,1524~1527,1544~1547がそれぞれ、1以上のシンボルレプリカの共役複素数を算出する。次いで、1以上の複素乗算器1508~1511,1528~1531,1548~1551がそれぞれ、上記共役複素数変換回路によって算出されたシンボルレプリカの共役複素数と、自己相関処理部1200によって生成された対応する自己相関シンボルとを乗算して乗算値を算出する。そして、複素加算器1512,1532,1552がそれぞれ、上記1以上の複素乗算器によって算出された1以上の乗算値を加算して加算値を算出する。そして、実数値取得回路1513,1533、1553がそれぞれ、上記複素加算器によって算出された加算値の実数部を取得して、対象のフレームの個別尤度値として出力する。
【0077】
図16は、パス尤度値算出部1600の構成の一例を示す。パス尤度値算出部1600は、対数演算回路(log)1601~1604と、パス尤度値累積回路1605~1608とを含む。
【0078】
対数演算回路1601~1604は、個別尤度値算出部1500が算出したフレーム番号iの個別尤度値Bi,k(i=0~N-1)を対数変換する。
【0079】
パス尤度値累積回路1605は、レジスタ1609と、乗算器1610と、加算器1611とを含む。パス尤度値累積回路1606~1608は、パス尤度値累積回路1605と同様の構成を有する。
【0080】
レジスタ1609には、パス尤度値累積回路1608によって算出されたパス尤度値PN-1,kが格納される。
【0081】
乗算器1610は、レジスタ1609に格納されたパス尤度値PN-1,kと定数αを乗算して乗算値を算出する。定数αは、0より大きく、かつ、1未満の忘却係数の実数値である。定数αは、既に算出された個別尤度値の影響を徐々に減らすために用いられる。忘却係数は、移動平均等に用いられるパラメータである。忘却係数は、古いデータの重みを徐々に減らすことにより、後続のフレームに対する受信誤りの影響を低減するために用いられる。例えば、パス尤度値Yは、数式1のように個別尤度値X及び定数αを用いて定義することができる。
【数1】
ここで、iは0以上の整数である。X0は、現在のフレームの個別尤度値を示す。X1は、1つ前のフレームの個別尤度値を示す。換言すると、iが小さい個別尤度値Xほど、最近の値であることを示す。数式1の場合、現在のフレームの個別尤度値の重み付けが最大となり、古いフレームの個別尤度値ほど重み付けが小さくなる。
【0082】
加算器1611は、対数演算回路1601によって対数変換された個別尤度値B0,kと、乗算器1610が算出した乗算値を加算してパス尤度値P0,kを算出し、パス尤度値P0,kを出力する。パス尤度値P0,kは、パス尤度値累積回路1606のレジスタ1612に格納され、パス尤度値累積回路1605が処理したフレームの次のフレームに関するパス尤度値の算出に用いられる。一般的に表現すると、パス尤度値累積回路1605~1608が算出したパス尤度値Pi,kは、フレーム番号i+1で識別されるフレームを処理すべきパス尤度値累積回路が備えたレジスタに格納される。ただし、パス尤度値PN-1,kは、フレーム番号i+1で識別されるフレームを処理すべきパス尤度値累積回路が備えたレジスタ、すなわち、レジスタ1609に格納される。
【0083】
図17は、例示的な一実施形態に係るパス尤度値選択部1700の構成を示す。パス尤度値選択部1700は、最大値選択回路1701を有する。最大値選択回路1701は、パス尤度値算出部1600が算出したパス尤度値Pi,kのうち、値が最も大きいパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号iを、フレーム番号の推定値(以下、「フレーム番号推定値」とする。)として出力する。
【0084】
上述した実施形態では、自己相関処理部1200が、対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、直前のフレームのフレーム識別情報に対する、対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成する。
【0085】
一方、シンボルレプリカ生成部1300は、対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成する。
【0086】
個別尤度値算出部1500は、自己相関処理部1200によって生成された1以上の自己相関シンボルと、シンボルレプリカ生成部1300によって生成された1以上のシンボルレプリカとを用いて、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出する。
【0087】
次いで、パス尤度値算出部1600は、個別尤度値算出部1500によって算出された複数の個別尤度値のそれぞれについて、対象のフレームの個別尤度値と、対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出する。そして、パス尤度値選択部1700は、パス尤度値算出部1600によって算出されたパス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力する。
【0088】
これにより、対象のフレームの個別尤度値だけでなく、対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値に基づき、対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報の中から、最も確からしいフレーム識別情報を選択することができる。そのため、正確性の高いフレーム識別情報を算出することができる。このように正確性の高いフレーム識別情報を用いてフレーム同期を行うことにより、豪雨時等の劣悪な通信環境のような回線品質が大幅に劣化した場合でも、無線通信に十分なフレーム同期精度を得ることができる。また、上述したフレーム識別情報の算出方法は、回線品質が良好なときの伝送速度に影響を与えることがない。
【0089】
また、パス尤度値算出部1600は、対数演算回路1601~1604と、加算器1611、1614,1617,1620とを備える。対数演算回路1601~1604は、対象のフレームのフレーム番号についての個別尤度値を対数変換する。加算器1611、1614,1617,1620は、対数演算回路1601~1604によって対数変換された個別尤度値と、先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを加算して、対象のフレームのパス尤度値を算出する。これにより、個別尤度値の乗算演算を加算演算で実現でき、かつ、ダイナミックレンジを低減することができる。
【0090】
さらに、パス尤度値算出部1600は、先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値と既定の定数αとを乗算して乗算値を出力する乗算器1610,1613、1616,1619をさらに備える。加算器1611、1614,1617,1620は、対数変換された個別尤度値と乗算値とを加算して、対象のフレームのパス尤度値を算出する。定数αは、0より大きく、かつ、1未満の実数値とし得る。これにより、先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値の値を小さくすることができ、先行する1以上のフレームの個別尤度値が、対象のフレームのパス尤度値に与える影響を低減することができる。換言すると、古いデータの重みを徐々に減らすことにより、後続のフレームに対する受信誤りの影響を低減することができる。
【0091】
図18は、他の実施形態に係るカウンタ同期を行うパス尤度値選択部1800の構成を示す。本実施形態のパス尤度値選択部1800は、最大のパス尤度値に対応するフレーム番号を選択するだけでなく、選択されたフレーム番号が正しいか否か判定し、正しいと判断されたフレーム番号を出力する。これにより、フレーム番号の誤り率を低減することができる。
【0092】
パス尤度値選択部1800は、最大値選択回路1801と、減算器1802と、調整値算出回路1803と、インクリメント演算回路1804と、加算器1805と、フレームカウンタ1806とを含む。
【0093】
最大値選択回路1801は、入力されたパス尤度値P0,k,P1,k,P2,k,PN-1,kのうち、最大のパス尤度値に対応するフレーム番号を選択し、選択されたフレーム番号を、フレーム番号推定値として出力する。最大値選択回路1801は、最大値選択部に相当する。
【0094】
減算器1802は、最大値選択回路1801が出力したフレーム番号推定値と、フレームカウンタ1806に格納されている値(以下、「カウンタ値」とする。)を用いて、カウンタ誤差値を算出する。減算器1802は、誤差値算出部に相当する。フレームカウンタ1806には、フレーム毎にカウントアップされるフレーム番号と、後述する調整値算出回路1803によって算出されたオフセット調整値との加算値が格納される。カウンタ値は、フレーム番号に相当する。
【0095】
減算器1802は、フレーム番号推定値から、フレームカウンタ1806に格納されている現在のフレーム番号を減算することにより、カウンタ誤差値を算出することができる。なお、減算器1802は、現在のフレーム番号からフレーム番号推定値を減算することにより、カウンタ誤差値を算出してもよい。
【0096】
調整値算出回路1803は、フレームカウンタ1806に格納されるフレーム番号を補正するためのオフセット調整値を算出する。調整値算出回路1803の構成及び調整値算出回路1803が実行する処理の詳細については、図19及び図20を参照して後述する。
【0097】
インクリメント演算回路1804は、フレームカウンタ1806から出力されたカウンタ値に1を加算して出力する。インクリメント演算回路1804は、フレーム番号を算出するフレーム番号算出部に相当する。
【0098】
加算器1805は、調整値算出回路1803が出力したオフセット調整値と、インクリメント演算回路1804の出力値を加算する。この加算値がフレームカウンタ1806に格納される。したがって、フレームカウンタ1806には、対象のフレームの直前のフレームのフレーム番号に基づいて算出された値が格納される。加算器1805は、フレーム番号を補正する補正部に相当する。他の実施形態では、オフセット調整値に応じて加算器1805の代わりに減算器を用いてもよい。
【0099】
フレームカウンタ1806は、格納されたフレーム番号を、フレーム同期回路の出力値として出力すると共に、インクリメント演算回路1804に入力する。フレームカウンタ1806は、フレーム番号を出力する出力部に相当する。
【0100】
したがって、図18に示す実施形態では、パス尤度値選択部1800は、最大値選択部1801と、誤差値算出部1802と、調整値算出回路1803と、フレーム番号算出部1804と、補正部1805と、出力部1806とを含む。最大値選択部1801は、パス尤度値算出部によって算出されたパス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択する。誤差値算出部1802は、選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号と、直前のフレームのフレーム番号に相当するカウンタ値との誤差値を算出する。フレーム番号算出部1804は、カウンタ値を用いて、対象のフレームのフレーム番号を算出する。調整値算出回路1803は、誤差値を用いて、対象のフレームのフレーム番号を補正するための調整値を算出する。補正部1805は、調整値を用いて、対象のフレームのフレーム番号を補正する。出力部1806は、補正された対象のフレームのフレーム番号を、選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号として出力する。
【0101】
図19は、調整値算出回路1803の構成の一例を示す図である。調整値算出回路1803は、誤差値配列格納部1900と、標準偏差算出部1910と、標準偏差判定部1920と、調整値算出部1930とを含む。
【0102】
誤差値配列格納部1900は、減算器1802が出力したカウンタ誤差値が入力される誤差値配列が格納される。誤差値配列には、対象のフレームに関連するカウンタ誤差値と、先行する1以上のフレームに関連するカウンタ誤差値が格納され得る。換言すると、誤差値配列には、現在のカウンタ誤差値と、過去に算出された1以上のカウンタ誤差値が格納され得る。
【0103】
標準偏差算出部1910は、誤差値配列から先行する1以上のフレームの誤差値と、対象のフレームの誤差値を取得し、これらの誤差値の標準偏差を算出する。
【0104】
標準偏差判定部1920は、標準偏差算出部1910によって算出された誤差値の標準偏差が閾値以下であるか判定する。閾値が大きい場合、正しいフレーム番号への追従が早い一方、間違った値に追従する可能性が高くなる。反対に、閾値が小さい場合、間違った値に追従する可能性は低くなるが、追従が遅くなり、すなわち、正しいフレーム番号になるまでに時間がかかり、又は、ノイズが大きな環境において追従ができなくなる可能性がある。閾値は、これらを考慮して設定することが好ましい。
【0105】
調整値算出部1930は、対象のフレームの誤差値及び先行する1以上のフレームの誤差値に基づいて調整値を算出する。本実施形態では、調整値は、誤差値の平均値の整数部とすることができる。他の実施形態では、調整値として、誤差値の中央値を採用してもよい。
【0106】
したがって、図19を参照して説明したように、調整値算出回路1803は、標準偏差算出部1910と、標準偏差判定部1920と、調整値算出部1930とを含む。標準偏差算出部1910は、先行する1以上のフレームの誤差値と、対象のフレームの誤差値とを用いて、対象のフレームの誤差値及び先行する1以上のフレームの誤差値の標準偏差を算出する。標準偏差判定部1920は、誤差値の標準偏差が閾値以下であるか判定する。調整値算出部1930は、誤差値の標準偏差が閾値以下であると判定された場合、対象のフレームの誤差値及び先行する1以上のフレームの誤差値に基づいて調整値を算出する。
【0107】
図20は、調整値算出回路1803が実行する処理を示すフローチャートである。ステップS10では、調整値算出回路1803の誤差値配列格納部1900に格納されている誤差値配列をクリアされる。ステップS11では、減算器1802が出力したカウンタ誤差値が、誤差値配列格納部1900の誤差値配列に格納される。
【0108】
ステップS12では、標準偏差算出部1910が、誤差値配列に格納されているカウンタ誤差値の標準偏差を算出する。ステップS13では、標準偏差判定部1920が、カウンタ誤差値の標準偏差が閾値以下であるか否か判定する。カウンタ誤差値の標準偏差が閾値を超える場合(NO)、ステップS14で調整値算出部1930が、オフセット調整値として「0」を出力し、ステップS11に処理が戻る。
【0109】
一方、カウンタ誤差値の標準偏差が以下である場合(YES)、ステップS15で調整値算出部1930は、誤差値配列に格納されているカウンタ誤差値の平均値を算出し、当該平均値を四捨五入した整数値を算出する。ステップS16では、調整値算出部1930は、カウンタ誤差値の平均値の整数値を、オフセット調整値として出力する。ステップS17では、調整値算出部1930は、誤差値配列をクリアし、ステップS11に処理が戻る。
【0110】
図20に示す処理により、カウンタ誤差値の変動が一定以下になったことを検知して、カウンタ誤差値の平均値の整数値を、オフセット調整値として出力することができる。このオフセット調整値を用いて、フレームカウンタに格納される値を補正することにより、フレーム番号推定値の誤りに起因するフレーム番号の出力値の誤りを低減できる。
【0111】
図21は、図18に示すパス尤度値選択部がフレーム番号を出力する場合のフレーム番号の推定値、カウンタ値、カウンタ誤差値、及びオフセット調整値の一例を示す。図21に示す例では、フレームカウンタ1806のカウンタ値は、0~19の値となる。また、図21に示す例では、最大値選択回路1801が選択したパス尤度値に対応するフレーム番号推定値が間違った期間が存在する。
【0112】
減算器1802は、図21に示すフレーム番号推定値とカウンタ値を用いて、カウンタ誤差値を算出する。カウンタ誤差値の標準偏差が閾値を超える場合、調整値算出回路1803が、オフセット調整値として「0」を出力する。カウンタ誤差値の標準偏差が閾値以下となった場合、調整値算出回路1803は、オフセット調整値として「5」を出力する。
【0113】
加算器1805は、調整値算出回路1803が算出したオフセット調整値を用いて、カウンタ値を補正する。例えば、加算器1805は、オフセット調整値「5」を用いて、カウンタ値「13」を算出する。より詳細には、加算器1805は、インクリメントされたカウンタ値「8」とオフセット調整値「5」を加算して、カウンタ値「13」を算出する。
【0114】
このように、最大値選択回路1801が正しいフレーム番号推定値継続して出力し、カウンタ誤差値の標準偏差が閾値以下となると、フレームカウンタ1806のカウンタ値が補正される。そのため、パス尤度値選択部1800が、正しいフレーム番号の出力値を出力することができる。この後、最大値選択回路1801が、何等かの要因で誤ったフレーム番号推定値を出力した場合でも、カウンタ誤差値の標準偏差が閾値を超えている限り、パス尤度値選択部1800は、正しいフレーム番号を継続して出力することができる。
【0115】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0116】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0117】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、前記対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対する、前記対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成する自己相関処理部と、
前記対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、前記対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、前記直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成するシンボルレプリカ生成部と、
前記自己相関処理部によって生成された前記1以上の自己相関シンボルと、前記シンボルレプリカ生成部によって生成された前記1以上のシンボルレプリカとを用いて、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出する個別尤度値算出部と、
前記個別尤度値算出部によって算出された前記複数の個別尤度値のそれぞれについて、前記対象のフレームの個別尤度値と、前記対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出するパス尤度値算出部と、
前記パス尤度値算出部によって算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力するパス尤度値選択部と
を備えた、信号処理装置。
(付記2)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記パス尤度値選択部は、
前記パス尤度値算出部によって算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択する最大値選択部と、
前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号と、前記直前のフレームのフレーム番号に相当するカウンタ値との誤差値を算出する誤差値算出部と、
前記カウンタ値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を算出するフレーム番号算出部と、
前記誤差値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正するための調整値を算出する調整値算出回路と、
前記調整値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正する補正部と、
補正された前記対象のフレームのフレーム番号を、前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号として出力する出力部と
を備える、付記1に記載の信号処理装置。
(付記3)
前記調整値算出回路は、
前記先行する1以上のフレームの前記誤差値と、前記対象のフレームの誤差値とを用いて、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値の標準偏差を算出する標準偏差算出部と、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であるか判定する標準偏差判定部と、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であると判定された場合、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値を用いて、前記調整値を算出する調整値算出部と
を含む、付記2に記載の信号処理装置。
(付記4)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記パス尤度値算出部は、
前記対象のフレームのフレーム番号についての個別尤度値を対数変換する対数演算回路と、
前記対数演算回路によって対数変換された前記個別尤度値と、前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを加算して、前記対象のフレームのパス尤度値を算出する加算器と
を備えた、付記1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
(付記5)
前記パス尤度値算出部は、前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値と既定値とを乗算して乗算値を出力する乗算器をさらに備えており、
前記加算器は、対数変換された前記個別尤度値と前記乗算値とを加算して、前記対象のフレームのパス尤度値を算出し、
前記既定値は、0より大きく、かつ、1未満の実数値である、付記4に記載の信号処理装置。
(付記6)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記個別尤度値算出部は、
前記1以上のシンボルレプリカの共役複素数を算出する1以上の共役複素数変換回路と、
前記共役複素数変換回路によって算出された前記シンボルレプリカの共役複素数と、前記自己相関処理部によって生成された対応する前記自己相関シンボルとを乗算して乗算値を算出する1以上の複素乗算器と、
前記1以上の複素乗算器によって算出された1以上の乗算値を加算して加算値を算出する複素加算器と、
前記複素加算器によって算出された前記加算値の実数部を取得して、前記対象のフレームの個別尤度値として出力する実数値取得回路と
を備えた、付記1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
(付記7)
前記自己相関処理部は、
前記対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値に対応する前記直前のフレームの同期信号に含まれるシンボル値の複数の共役複素数を算出する共役複素数変換回路と、
前記対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値と、前記共役複素数変換回路によって算出された複数の共役複素数との内積を算出して、複数の複素数列を算出する複素乗算器と、
前記複素乗算器によって算出された複数の複素数列を加算して、前記自己相関シンボルを生成する複素加算器と
を備えた、付記1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
(付記8)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記シンボルレプリカ生成部は、
前記直前のフレームのフレーム番号を変調して、前記直前のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成する第1のシンボル変調部と、
前記対象のフレームのフレーム番号を変調して、前記対象のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成する第2のシンボル変調部と、
前記直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数を算出する1以上の共役複素数変換回路と、
前記対象のフレームの変調されたシンボル値と、前記対象のフレームの変調されたシンボル値に対応する前記直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数とを乗算して、前記シンボルレプリカを生成する1以上の複素乗算器と
を備えた、付記1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
(付記9)
コンピュータが実行する信号処理方法であって、前記コンピュータが
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、前記対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対する、前記対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成し、
前記対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、前記対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、前記直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成し、
生成された前記1以上の自己相関シンボルと、生成された前記1以上のシンボルレプリカとを用いて、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出し、
算出された前記複数の個別尤度値のそれぞれについて、前記対象のフレームの個別尤度値と、前記対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出し、
算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力する、
信号処理方法。
(付記10)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記コンピュータが
算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択し、
前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号と、前記直前のフレームのフレーム番号に相当するカウンタ値との誤差値を算出し、
前記カウンタ値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を算出し、
前記誤差値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正するための調整値を算出し、
前記調整値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正し、
補正された前記対象のフレームのフレーム番号を、前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号として出力する、付記9に記載の信号処理方法。
(付記11)
前記コンピュータが
前記先行する1以上のフレームの前記誤差値と、前記対象のフレームの誤差値とを用いて、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値の標準偏差を算出し、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であるか判定し、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であると判定された場合、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値を用いて、前記調整値を算出する、付記10に記載の信号処理方法。
(付記12)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記コンピュータが
前記対象のフレームのフレーム番号についての個別尤度値を対数変換し、
対数変換された前記個別尤度値と、前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを加算して、前記対象のフレームのパス尤度値を算出する、付記9~11のいずれか1項に記載の信号処理方法。
(付記13)
前記コンピュータが
前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値と既定値とを乗算して乗算値を出力し、
対数変換された前記個別尤度値と前記乗算値とを加算して、前記対象のフレームのパス尤度値を算出し、
前記既定値は、0より大きく、かつ、1未満の実数値である、付記12に記載の信号処理装置。
(付記14)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記コンピュータが
前記1以上のシンボルレプリカの共役複素数を算出し、
算出された前記シンボルレプリカの共役複素数と、生成された対応する前記自己相関シンボルとを乗算して乗算値を算出し、
算出された1以上の乗算値を加算して加算値を算出し
算出された前記加算値の実数部を取得して、前記対象のフレームの個別尤度値として出力する、付記9~11のいずれか1項に記載の信号処理方法。
(付記15)
前記コンピュータが
前記対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値に対応する前記直前のフレームの同期信号に含まれるシンボル値の複数の共役複素数を算出し、
前記対象のフレームの同期信号に含まれる複数のシンボル値と、算出された複数の共役複素数との内積を算出して、複数の複素数列を算出し、
算出された複数の複素数列を加算して、前記自己相関シンボルを生成する、付記9~11のいずれか1項に記載の信号処理方法。
(付記16)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記コンピュータが
前記直前のフレームのフレーム番号を変調して、前記直前のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成し、
前記対象のフレームのフレーム番号を変調して、前記対象のフレームの変調された1以上のシンボル値を生成し、
前記直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数を算出し、
前記対象のフレームの変調されたシンボル値と、前記対象のフレームの変調されたシンボル値に対応する前記直前のフレームの変調されたシンボル値の共役複素数とを乗算して、前記シンボルレプリカを生成する、付記9~11のいずれか1項に記載の信号処理方法。
(付記17)
コンピュータが実行する信号処理プログラムであって、前記コンピュータに対し、
対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値と、前記対象のフレームの直前のフレームの同期信号に含まれる対応する1以上のシンボル値とを用いて、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対する、前記対象のフレームのフレーム識別情報の変化成分を表す1以上の自己相関シンボルを生成させ、
前記対象のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値と、前記直前のフレームのフレーム識別情報に対応する1以上のシンボル値を用いて、前記対象のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値に対する、前記直前のフレームの同期信号に含まれる1以上のシンボル値の変化成分を表す1以上のシンボルレプリカを生成させ、
生成された前記1以上の自己相関シンボルと、生成された前記1以上のシンボルレプリカとを用いて、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数の個別尤度値を算出させ、
算出された前記複数の個別尤度値のそれぞれについて、前記対象のフレームの個別尤度値と、前記対象のフレームに先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを積算して、前記対象のフレームのフレーム識別情報の候補となる複数のフレーム識別情報のそれぞれの確からしさを示す複数のパス尤度値を算出させ、
算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択させ、選択されたパス尤度値に対応するフレーム識別情報を出力させる、
信号処理プログラム。
(付記18)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記コンピュータに対し、
算出された前記パス尤度値の中から値が最大のパス尤度値を選択させ、
前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号と、前記直前のフレームのフレーム番号に相当するカウンタ値との誤差値を算出させ、
前記カウンタ値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を算出させ、
前記誤差値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正するための調整値を算出させ、
前記調整値を用いて、前記対象のフレームのフレーム番号を補正させ、
補正された前記対象のフレームのフレーム番号を、前記選択されたパス尤度値に対応するフレーム番号として出力させる、付記17に記載の信号処理プログラム。
(付記19)
前記コンピュータに対し、
前記先行する1以上のフレームの前記誤差値と、前記対象のフレームの誤差値とを用いて、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値の標準偏差を算出させ、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であるか判定させ、
前記誤差値の標準偏差が閾値以下であると判定された場合、前記対象のフレームの前記誤差値及び前記先行する1以上のフレームの前記誤差値を用いて、前記調整値を算出させる、付記18に記載の信号処理プログラム。
(付記20)
前記フレーム識別情報は、フレーム番号であり、
前記コンピュータに対し、
前記対象のフレームのフレーム番号についての個別尤度値を対数変換させ、
対数変換された前記個別尤度値と、前記先行する1以上のフレームの個別尤度値の積算値とを加算させて、前記対象のフレームのパス尤度値を算出させる、付記17~19のいずれか1項に記載の信号処理プログラム。
【符号の説明】
【0118】
1 無線通信装置
10 送信部
20 受信部
101 同期信号生成部
102 データ符号部
103 データ変調部
104 無線信号送信処理部
201 無線信号受信処理部
202 タイミング同期部
203 フレーム識別情報生成部
204 データ復調部
205 データ復号部
600 フレーム識別情報生成部
601~603 逆拡散処理部
604 シンボル電力比較部
605 同期信号復調部
801 共役複素数変換回路
802 複素乗算器
803 複素加算器
901~904 共役複素数変換回路
905~908 複素乗算器
909~912 実数値取得回路
1010 同期信号変調部
1011 拡散処理部
1200~1204 自己相関処理部
1205~1207 共役複素数変換回路
1208~1210 複素乗算器
1211 複素加算器
1300 シンボルレプリカ生成部
1301 フレームカウンタ部
1302 シンボル変調部、第1のシンボル変調部
1303 シンボル変調部、第2のシンボル変調部
1304 相関処理部
1305~1308 共役複素数変換回路
1309~1312 複素乗算器
1400 シンボルレプリカ生成部
1401 フレームカウンタ部
1402 メモリ
1500~1503 個別尤度値算出部
1504~1507 共役複素数変換回路
1524~1527 共役複素数変換回路
1544~1547 共役複素数変換回路
1508~1511 複素乗算器
1528~1531 複素乗算器
1548~1551 複素乗算器
1512、1532,1552 複素加算器
1513、1533,1553 実数値取得回路
1600 パス尤度値算出部
1601~1604 対数演算回路
1605~1608 パス尤度値累積回路
1609、1612、1615、1618 レジスタ
1610、1613,1616,1619 乗算器
1611、1614,1617,1620 加算器
1700 パス尤度値選択部
1701 最大値選択回路
1800 パス尤度値選択部
1801 最大値選択回路
1802 減算器
1803 調整値算出回路
1804 インクリメント演算回路
1805 加算器
1806 フレームカウンタ
1900 誤差値配列格納部
1910 標準偏差算出部
1920 標準偏差判定部
1930 調整値算出部
図1
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図5
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図20
図21