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特開2024-142344向社会的な価値行動によって社会的価値指向度を推定する推定装置、端末、プログラム及び方法
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  • 特開-向社会的な価値行動によって社会的価値指向度を推定する推定装置、端末、プログラム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142344
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】向社会的な価値行動によって社会的価値指向度を推定する推定装置、端末、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054446
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】柏本 幸俊
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】ユーザの社会的価値指向度を推定する推定装置等を提供する。
【解決手段】推定装置は、ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段とを有する。ユーザ位置蓄積手段は、当該ユーザにおける歩行又はランニングに基づくものであり、価値行動の時間帯及び地域範囲は、地域における防犯パトロールに基づくものである。価値行動毎に、行動難易度が対応付けられ、価値移動時間長を行動難易度で重み付ける。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの社会的価値指向度を推定する推定装置であって、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、
ユーザ位置蓄積手段及び予定行動登録手段を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段と
を有することを特徴とする推定装置。
【請求項2】
予定行動登録手段は、価値行動毎に、行動難易度を更に対応付けており、
価値移動時間スコア導出手段は、価値移動時間長を行動難易度で重み付けた価値移動時間スコアを出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
地域貢献に関するユーザの主観的な質問を含むアンケートを提示し、当該ユーザから回答を取得するアンケート取得手段と、
質問に対する回答から、主観的価値スコアを導出する主観的価値スコア導出手段と
を更に有し、
社会的価値指向度推定手段は、更に主観的価値スコアを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
予定行動登録手段は、日常行動を更に登録しており、
日常行動に日常規定時間長が対応付けられていると共に、価値行動に価値規定時間長が対応付けられており、
ユーザ位置蓄積手段を用いて、日常行動における日常移動時間長を導出する日常移動時間長導出手段と、
価値移動時間長から価値規定時間長を差し引いた第1の時間と、日常移動時間長から日常規定時間長を差し引いた第2の時間との差を、移動継続時間スコアとして出力する移動継続時間スコア導出手段と
を有し、
社会的価値指向度推定手段は、価値移動時間スコアと移動継続時間スコアとを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
予定行動登録手段は、価値行動毎に、行動難易度を更に対応付けており、
価値移動時間スコア導出手段は、価値移動時間長を行動難易度で重み付けた価値移動時間スコアを出力する
ことを特徴とする請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
予定行動登録手段は、日常行動毎に、行動難易度を更に対応付けており、
移動継続時間スコア導出手段は、価値移動時間長から価値規定時間長を差し引いた時間を価値行動の行動難易度で重み付けた第1の時間と、日常移動時間長から日常規定時間長を差し引いた時間を日常行動の行動難易度で重み付けた第2の時間との差を、移動継続時間スコアとして出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
予定行動登録手段は、複数の日常行動及び複数の価値行動を登録しており、
予定行動登録手段における日常行動及び価値行動それぞれをユーザに選択させる予定行動選択手段を
更に有する
ことを特徴とする請求項4に記載の推定装置。
【請求項8】
地域貢献に関するユーザの主観的な質問を含むアンケートを提示し、当該ユーザから回答を取得するアンケート取得手段と、
質問に対する回答から、主観的価値スコアを導出する主観的価値スコア導出手段と
を更に有し、
社会的価値指向度推定手段は、更に主観的価値スコアを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことを特徴とする請求項4に記載の推定装置。
【請求項9】
移動継続時間スコアをx軸とし、価値移動時間スコアをy軸とし、主観的価値スコアをz軸とした3次元を想定し、ユーザ毎に、主観的価値スコアをz軸上に第1のプロットをすると共に、移動継続時間スコア及び価値移動時間スコアをxy軸平面上に第2のプロットをする3次元プロット手段と、
全てのユーザについて、最小二乗法を用いて、第1のプロットと第2のプロットとができる限り近くなるように、α・移動継続時間スコア+β・価値移動時間スコアにおけるα及びβを推定する機械学習エンジンと
を更に有し、
社会的価値指向度推定手段は、βで重み付けた価値移動時間スコアと、αで重み付けた移動継続時間スコアとを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことを特徴とする請求項8に記載の推定装置。
【請求項10】
ユーザ位置蓄積手段は、当該ユーザにおける歩行又はランニングに基づくものであり、
価値行動の時間帯及び地域範囲は、地域における防犯パトロールに基づくものである
ことを特徴とする請求項1又は4に記載の推定装置。
【請求項11】
社会的価値指向度を推定するユーザ所持の端末であって、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、
ユーザ位置蓄積手段及び予定行動登録手段を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段と
を有することを特徴とする端末。
【請求項12】
ユーザの社会的価値指向度を推定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、
ユーザ位置蓄積手段及び予定行動登録手段を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
ユーザの社会的価値指向度を推定する装置の推定方法であって、
装置は、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積部と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録部と
を有し、
ユーザ位置蓄積部及び予定行動登録部を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する第1のステップと、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する第2のステップと、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する第3のステップと
を実行することを特徴とする推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、社会的価値指向度(Social Value Orientation)を推定する技術に関する。特に、ユーザにおける行動変容の用途に適する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザにとって行動を変容しやすい情報を提示する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、変容対象の行動、原因及び結果を特定し、その行動、原因及び結果の組み合わせに適合する情報を、ユーザに提示することができる。
【0003】
また、ユーザの喫煙行動を予測し、禁煙への行動変容を支援する技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、個人の非生物学的な複数の行動データと、複数の生物学的データとを取得し、個人の喫煙曝露を定量化し、行動データ及び喫煙曝露と関連する行動概要情報を編集する。そして、その個人に、行動概要情報を観察することを許可し、自らの行動が喫煙行動にどのように影響するかについて通知する。
【0004】
尚、社会的価値指向度とは、自他の利得バランスに対する選好を表す志向性をいう(例えば非特許文献1参照)。これは、向社会的(prosocial)と向自己的(proself)との間でバランスする。向社会的な志向を持つ者は、向自己的な志向性を持つ者よりも、協力的であり、長時間のボランティアにも寄与する傾向が強い。社会的価値指向度は、一般的に、アンケートを用いて、ユーザの主観として計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-133638号公報
【特許文献2】特開2021-019230号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「社会的価値指向性研究の現在 : 測定法をめぐる問題」、[online]、[令和5年3月19日検索]、インターネット<URL:https://kwansei.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=17470&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、一般的なユーザの行動を表す説明図である。
【0008】
人々は日常行動として、ランニングや散歩のように、自由に行動している。
これに対し、例えば小学校周辺では、小学生に声をかけるような不審者が出没することが、地域の社会的問題となっている。このような事象が発生した場合、メールやメッセージによって、小学校関係者から保護者及び近隣周辺住民へ通報するシステムもある。また、小学校の登下校時には、通学路にボランティアを配置し、小学生の安全を確保する取り組みもある。これは、社会的価値指向度が高いボランティアによって、小学生の安全を確保しようとするものである。
勿論、小学校周辺に限られず、夜間の公園のような公共施設のような場所であっても、一般に、地域住民の見回りによって、社会的価値が維持されている。
【0009】
これに対し、本願の発明者は、ユーザの行動によって社会的価値指向度を推定することができないか、と考えた。一般的に、アンケートによってユーザの主観的な社会的価値指向度を推定することができるが、客観的に推定することができないか、と考えた。
【0010】
また、本願の発明者は、ユーザの日常行動を、向社会的な価値行動に変容させることはできないか、と考えた。例えば小学校の登下校時に、日常行動としてランニングや散歩をしている人々に、向社会的な価値行動として小学校周辺をランニングしてもらうようにできないか、と考えた。社会的価値指向度が高いユーザであれば、向社会的な価値行動をとってくれる可能性も高くなると思われる。
【0011】
尚、当然ながら、前述した特許文献1及び2に記載の技術は、ユーザの社会的価値指向度を推定するようなものではない。
【0012】
そこで、本発明は、ユーザの向社会的な価値行動によって社会的価値指向度を推定する推定装置、端末、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、ユーザの社会的価値指向度を推定する推定装置であって、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、
ユーザ位置蓄積手段及び予定行動登録手段を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段と
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
予定行動登録手段は、価値行動毎に、行動難易度を更に対応付けており、
価値移動時間スコア導出手段は、価値移動時間長を行動難易度で重み付けた価値移動時間スコアを出力する
ことも好ましい。
【0015】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
地域貢献に関するユーザの主観的な質問を含むアンケートを提示し、当該ユーザから回答を取得するアンケート取得手段と、
質問に対する回答から、主観的価値スコアを導出する主観的価値スコア導出手段と
を更に有し、
社会的価値指向度推定手段は、更に主観的価値スコアを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことも好ましい。
【0016】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
予定行動登録手段は、日常行動を更に登録しており、
日常行動に日常規定時間長が対応付けられていると共に、価値行動に価値規定時間長が対応付けられており、
ユーザ位置蓄積手段を用いて、日常行動における日常移動時間長を導出する日常移動時間長導出手段と、
価値移動時間長から価値規定時間長を差し引いた第1の時間と、日常移動時間長から日常規定時間長を差し引いた第2の時間との差を、移動継続時間スコアとして出力する移動継続時間スコア導出手段と
を有し、
社会的価値指向度推定手段は、価値移動時間スコアと移動継続時間スコアとを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことも好ましい。
【0017】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
予定行動登録手段は、価値行動毎に、行動難易度を更に対応付けており、
価値移動時間スコア導出手段は、価値移動時間長を行動難易度で重み付けた価値移動時間スコアを出力する
ことも好ましい。
【0018】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
予定行動登録手段は、日常行動毎に、行動難易度を更に対応付けており、
移動継続時間スコア導出手段は、価値移動時間長から価値規定時間長を差し引いた時間を価値行動の行動難易度で重み付けた第1の時間と、日常移動時間長から日常規定時間長を差し引いた時間を日常行動の行動難易度で重み付けた第2の時間との差を、移動継続時間スコアとして出力する
ことも好ましい。
【0019】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
予定行動登録手段は、複数の日常行動及び複数の価値行動を登録しており、
予定行動登録手段における日常行動及び価値行動それぞれをユーザに選択させる予定行動選択手段を
更に有することも好ましい。
【0020】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
地域貢献に関するユーザの主観的な質問を含むアンケートを提示し、当該ユーザから回答を取得するアンケート取得手段と、
質問に対する回答から、主観的価値スコアを導出する主観的価値スコア導出手段と
を更に有し、
社会的価値指向度推定手段は、更に主観的価値スコアを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことも好ましい。
【0021】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
移動継続時間スコアをx軸とし、価値移動時間スコアをy軸とし、主観的価値スコアをz軸とした3次元を想定し、ユーザ毎に、主観的価値スコアをz軸上に第1のプロットをすると共に、移動継続時間スコア及び価値移動時間スコアをxy軸平面上に第2のプロットをする3次元プロット手段と、
全てのユーザについて、最小二乗法を用いて、第1のプロットと第2のプロットとができる限り近くなるように、α・移動継続時間スコア+β・価値移動時間スコアにおけるα及びβを推定する機械学習エンジンと
を更に有し、
社会的価値指向度推定手段は、βで重み付けた価値移動時間スコアと、αで重み付けた移動継続時間スコアとを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする
ことも好ましい。
【0022】
本発明の推定装置における他の実施形態によれば、
ユーザ位置蓄積手段は、当該ユーザにおける歩行又はランニングに基づくものであり、
価値行動の時間帯及び地域範囲は、地域における防犯パトロールに基づくものである
ことも好ましい。
【0023】
本発明によれば、社会的価値指向度を推定するユーザ所持の端末であって、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、
ユーザ位置蓄積手段及び予定行動登録手段を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段と
を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、ユーザの社会的価値指向度を推定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積手段と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録手段と、
ユーザ位置蓄積手段及び予定行動登録手段を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する価値移動時間長導出手段と、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する価値移動時間スコア導出手段と、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する社会的価値指向度推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、ユーザの社会的価値指向度を推定する装置の推定方法であって、
装置は、
ユーザ所持の端末における時刻毎の位置情報を蓄積するユーザ位置蓄積部と、
時間帯及び地域範囲が指定された価値行動を登録する予定行動登録部と
を有し、
ユーザ位置蓄積部及び予定行動登録部を用いて、ユーザが価値行動における当該時間帯に当該地域範囲に位置した価値移動時間長を導出する第1のステップと、
価値移動時間長を、価値移動時間スコアとして出力する第2のステップと、
価値移動時間スコアを、当該ユーザの社会的価値指向度として推定する第3のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の推定装置、端末、プログラム及び方法によれば、ユーザの向社会的な価値行動によって社会的価値指向度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一般的なユーザの行動を表す説明図である。
図2】本発明におけるユーザの移動を表す説明図である。
図3】本発明における推定装置の基本的な機能構成図である。
図4】本発明における推定装置の拡張的な機能構成図である。
図5】本発明におけるアンケートの主観的価値スコアを用いた説明図である。
図6】本発明にける価値移動時間スコア導出部のパラメータを推定する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明におけるユーザの移動を表す説明図である。
【0030】
図2によれば、ユーザの向社会的な価値行動として、地域の防犯パトロールの例が表されている。例えば小学校の下校時間帯に、日常行動としてランニングや散歩(歩行)をしているユーザを、価値行動として小学校を中心とした所定範囲内でランニングや散歩をするように行動変容させる。このように、ユーザには、小学校のような地域的価値が高い場所をランニングしてもらうことによって、防犯パトロールも兼ねて行動してもらう。ユーザとしても、社会的価値指向度が高いほど、向社会的な価値行動への行動変容に従う傾向がある。
【0031】
本発明によれば、第1の作用効果として、ユーザの日常行動を、向社会的な価値行動へ変容させるようとする。また、第2の作用効果として、ユーザの日常行動と価値行動とを比較することによって、主観的なアンケート回答のみに頼ることなく、そのユーザの社会的価値指向度を推定することができる。
【0032】
図3は、本発明における推定装置の基本的な機能構成図である。
【0033】
推定装置1は、ユーザの社会的価値指向度を推定するものである。また、推定装置1の運用によって、ユーザにおける日常行動を、向社会的な価値行動へ変容させることが期待される。
また、推定装置1は、スマートフォンのようなユーザ所持の端末2と通信する。端末2は、ユーザインタフェースとして機能する。
【0034】
図3によれば、推定装置1は、ユーザ位置蓄積部101と、予定行動登録部102と、価値移動時間長導出部111と、価値移動時間スコア導出部121と、社会的価値指向度推定部13と、メッセージ送信部14とを有する。これら機能構成部は、推定装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、装置の推定方法としても理解できる。
【0035】
また、推定装置1のこれら機能構成部は、ユーザ所持の端末自体に、アプリケーションとしてインストールされたものであってもよい。ユーザは、スマートフォンのような端末のディスプレイを介して価値行動を認識し、自らの社会的価値指向度を知ることもできる。
【0036】
[ユーザ位置蓄積部101]
ユーザ位置蓄積部101は、ユーザ所持の端末2における時刻毎の位置情報を蓄積する。位置情報は、例えばGPS(Global Positioning System)の位置座標であってもよい。端末2から、例えば1分単位で位置情報受信して記録したものであってもよい。
【0037】
[予定行動登録部102]
予定行動登録部102は、1つ以上の予定行動(クエスト)が登録される。この予定行動として、向社会的な地域貢献であって、時間帯及び地域範囲が指定された「価値行動」を登録する。価値行動として、「予定行動」と、「時間帯」と、「地域範囲」と、「行動難易度」とが登録される。
【0038】
図3によれば、例えば、向社会的な価値行動として、パトロールとしてのランニングが登録されている。時間帯は、小学校の下校時間帯15:00~16:00であり、地域範囲としては、〇〇小学校から500m以内である。ユーザには、小学生の防犯パトロールを兼ねて、価値行動としてのランニングをすることが期待されている。
地域範囲は、価値対象となるPOI(Point Of Interest)座標を中心とした半径距離で表された地理範囲(POI接近時間)であってもよいし、2つの以上の座標点によって確定する地理範囲であってもよい。
【0039】
また、行動難易度は、ユーザにとって、その価値行動をとろうとする難易度を0~1.0で表す。図3によれば、価値行動の行動難易度は1.0と最も高い。これは、ユーザにとって非常に難しい価値行動となることを意味する。
【0040】
[価値移動時間長導出部111]
価値移動時間長導出部111は、ユーザ位置蓄積部101及び予定行動登録部102を用いて、ユーザが価値行動におけるその時間帯にその地域範囲に位置した「価値移動時間長」を導出する。
図3によれば、ユーザ001は、15:00~15:40まで、〇〇小学校から500m以内に位置していたことを意味する。
価値移動時間長=40分間
導出された価値移動時間長trは、価値移動時間スコア導出部121へ出力される。
【0041】
[価値移動時間スコア導出部121]
価値移動時間スコア導出部121は、価値移動時間長を、「価値移動時間スコア」として、社会的価値指向度推定部13へ出力する。
価値移動時間スコア=価値移動時間長
ここで、価値移動時間スコアは、所定範囲内の値に正規化(例えば0~1.0の範囲へのスケーリング)することが好ましい。
価値移動時間スコア=正規化(価値移動時間長)
【0042】
また、価値移動時間スコア導出部121は、価値移動時間長を行動難易度で重み付けた価値移動時間スコアを出力するものであってもよい。
価値移動時間スコア=行動難易度qd×価値移動時間長
【0043】
[社会的価値指向度推定部13]
社会的価値指向度推定部13は、価値移動時間スコアを、当該ユーザの「社会的価値指向度」として推定する。
社会的価値指向度=価値移動時間スコア
【0044】
[メッセージ送信部14]
メッセージ送信部14は、ユーザの社会的価値指向度を、そのユーザへメッセージとして送信する。
また、例えば社会的価値指向度が高いユーザには、その価値行動に対する感謝メッセージを送信するものであってもよい。更に、その価値行動に対する謝礼としてのポイントを付与するものであってもよい。
これによって、ユーザにおける日常行動を、向社会的な価値行動へ変容させようとする。
【0045】
図4は、本発明における推定装置の拡張的な機能構成図である。
【0046】
図4によれば、図3と比較して、日常移動時間長導出部112と、移動継続時間スコア導出部122と、予定行動選択部15とを更に有する。
【0047】
予定行動登録部102は、向社会的な「価値行動」に加えて、向自己的な「日常行動」も登録する。向自己的な日常行動とは、例えばユーザ自らの健康増進や趣味として、好みの地域範囲をランニングするようなことを意味する。この場合、行動難易度も比較的低くなる。
【0048】
予定行動登録部102には、複数の日常行動と複数の価値行動とが登録されていてもよい。図4によれば、価値行動として、夜時間帯の公園周辺をパトロールするためのランニングや、小学校の下校時間帯の通学路周辺をパトロールするためのランニングなどが登録されている。
【0049】
また、予定行動登録部102は、以下のような規定時間長が対応付けられている。
日常行動: 日常規定時間長trd
価値行動: 価値規定時間長tvd
これは、ユーザに少なくともその行動の継続を期待する時間長を意味する。
特に、「価値規定時間長tvd」とは、例えば小学校の下校時間帯にその小学校周辺の防犯パトロールも兼ねて、少なくとも30分間は、そのユーザにランニングしてもらうことが期待されている。小学校周辺を短時間だけランニングしたとしても、防犯パトロールの価値行動にはならないためである。
【0050】
[予定行動選択部15]
予定行動選択部15は、予定行動登録部102における「日常行動」及び「価値行動」それぞれをユーザに選択させる。それぞれの行動を比較することによって、社会的価値指向度を推定することができる。
【0051】
[日常移動時間長導出部112]
日常移動時間長導出部112は、ユーザ位置蓄積部101を用いて、日常行動における日常移動時間長を導出する。
ユーザ001は、向自己的な日常行動として、18:00~18:15まで、自宅周辺を15分間、ランニングしたとする。ここでは、日常移動時間長は、15分間となる。
導出された日常移動時間長trは、移動継続時間スコア導出部122へ出力される。
【0052】
[移動継続時間スコア導出部122]
移動継続時間スコア導出部122は、価値移動時間長tvから価値規定時間長tvdを差し引いた第1の時間と、日常移動時間長trから日常規定時間長trdを差し引いた第2の時間との差を、移動継続時間スコアとして出力する。
移動継続時間スコア=(価値移動時間長tv-価値規定時間長tvd)
-(日常移動時間長tr-日常規定時間長trd)
【0053】
移動継続時間スコアとは、ユーザが、価値行動としてランニングした時間と、日常行動としてランニングした時間との差を表す。移動継続時間スコアが大きいほど、ユーザ自身、日常行動よりも、価値行動をするために頑張ってランニングしていることが理解できる。社会的価値指向度が高いユーザほど、日常行動よりも、価値行動に頑張って時間をかける傾向がある。
【0054】
図4によれば、以下のように算出される。
移動継続時間スコア=(40分間-30分間)-(15分間-20分間)
=10分間-(-5分間)
=15分間
【0055】
他の実施形態として、移動継続時間スコア導出部122は、価値移動時間長tvから価値規定時間長tvdを差し引いた時間を行動難易度で重み付けた第1の時間と、日常移動時間長trから日常規定時間長trdを差し引いた時間を行動難易度で重み付けた第2の時間との差を、移動継続時間スコアとして出力するものであってもよい。
移動継続時間スコア=
行動難易度qd・(価値移動時間長tv-価値規定時間長tvd)
-行動難易度qd・(日常移動時間長tr-日常規定時間長trd)
【0056】
勿論、移動継続時間スコアも、価値移動時間スコアと同様に、所定範囲内の値に正規化(スケーリング)することが好ましい。
そして、移動継続時間スコア導出部122は、移動継続時間スコアを、社会的価値指向度推定部13へ出力する。
【0057】
[社会的価値指向度推定部13]
社会的価値指向度推定部13は、価値移動時間スコアと移動継続時間スコアとを加算したスコアを、当該ユーザの「社会的価値指向度」とする。
社会的価値指向度=価値移動時間スコア+移動継続時間スコア
【0058】
図5は、本発明におけるアンケートの主観的価値スコアを用いた説明図である。
【0059】
図5によれば、推定装置1は、アンケート取得部16と、主観的価値スコア導出部123とを更に有する。
【0060】
[アンケート取得部16]
アンケート取得部16は、既存のものであって、社会的価値指向度に関するユーザの主観的な質問を含むアンケートを提示し、当該ユーザから回答を取得する(例えば非特許文献1参照)。
【0061】
アンケートとしては、性格を表す特性因子(開放性、誠実性、外向性、協調性、・・・)とが混在したものである。勿論、属性を表すプロファイル(性別、年齢代、職業、職種、・・・)を含むものであってもよい。
ここで、特性因子モデルは、例えば社会的価値指向度に関連する形容詞を含むものである。特性因子モデルは、アンケートの質問毎に、数値を回答したものであってもよい。アンケートとしては、勿論、心理学に基づく心理尺度で計測したものであってもよい。
【0062】
図5のアンケートによれば、ユーザへ、8個の質問をし、1~5の数値で回答してもらう。これは、ユーザの主観的な回答であって、数値5に近いほど、社会的価値指向度が高く、数値1に近いほど、社会的価値指向度が低いと判定される。
【0063】
[主観的価値スコア導出部123]
主観的価値スコア導出部123は、質問に対する回答から、主観的価値スコアを導出する。
図5によれば、例えばアンケートの回答結果の平均値を、主観的価値スコアとするものであってもよい。ここでは、例えば主観的価値スコア3が導出されている。
【0064】
[社会的価値指向度推定部13]
社会的価値指向度推定部13は、更に主観的価値スコアを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする。
社会的価値指向度=主観的価値スコア+価値移動時間スコア+移動継続時間スコア
【0065】
図5によれば、社会的価値指向度は、例えば以下のように算出される。
社会的価値指向度=3+正規化(40分)+正規化(15分間)
=3+0.875+0.4
=4.275
【0066】
図6は、本発明にける価値移動時間スコア導出部のパラメータを推定する説明図である。
【0067】
図6によれば、推定装置1は、3次元プロット部17と、機械学習エンジン18とを更に有する。
【0068】
[3次元プロット部17]
3次元プロット部17は、移動継続時間スコアをx軸とし、価値移動時間スコアをy軸とし、主観的価値スコアをz軸とした3次元を想定する。図3によれば、3次元座標軸が表されている。
その上で、3次元プロット部17は、ユーザ毎に、主観的価値スコアをz軸上に第1のプロットをすると共に、移動継続時間スコア及び価値移動時間スコアをxy軸平面上に第2のプロットをする。
【0069】
[機械学習エンジン18]
機械学習エンジン18は、3次元座標について、全てのユーザについて、最小二乗法を用いて、第1のプロットと第2のプロットとができる限り近くなるように、α・移動継続時間スコア+β・価値移動時間スコアにおけるα及びβを推定する。
minα,β{Σn=1 N(dtn-dmn)2
α、β:係数
社会的価値指向度=β・価値移動時間スコア+α・移動継続時間スコア
dtn:z軸上の第1のプロット(主観的価値スコア)
dmn:xy軸上の第2のプロット(移動継続時間スコア及び価値移動時間スコア)
n=1~N:各ユーザ
機械学習エンジン18は、α、βを事前実験によって、最適値(最尤値)を推定しておく。
【0070】
ここで、時間経過に基づく概念ドリフト(Concept drift)によって、α、βが最適値で無くなる可能性もある。即ち、dtnとdmnとの距離が短くならず、ずれていく。そこで、機械学習エンジン18を用いて補正するべく、例えば最急降下法によって最尤推定を実行していく。
【0071】
そして、社会的価値指向度推定部13は、βで重み付けた価値移動時間スコアと、αで重み付けた移動継続時間スコアとを加算したスコアを、当該ユーザの社会的価値指向度とする。
社会的価値指向度=β・価値移動時間スコア+α・移動継続時間スコア
【0072】
以上、詳細に説明したように、本発明の推定装置、端末、プログラム及び方法によれば、ユーザの向社会的な価値行動によって社会的価値指向度を推定することができる。
従来技術によれば、ユーザに対するアンケートによって社会的価値指向度を推定していたのに対し、本発明によれば、ユーザの日常行動と価値行動とを比較することによって、客観的に社会的価値指向度を推定する精度を更に高めることがきる。
また、本発明によれば、ユーザの日常行動を、向社会的な価値行動に変容させることもできる。
【0073】
尚、これにより、例えば「ユーザの社会的価値指向度を推定することができる」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【0074】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0075】
1 推定装置
101 ユーザ位置蓄積部
102 予定行動登録部
111 価値移動時間長導出部
112 日常移動時間長導出部
121 価値移動時間スコア導出部
122 移動継続時間スコア導出部
123 主観的価値スコア導出部
13 社会的価値指向度推定部
14 メッセージ送信部
15 予定行動選択部
16 アンケート取得部
17 3次元プロット部
18 機械学習エンジン
2 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6