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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142345
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/00 20060101AFI20241003BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20241003BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F26B21/00 B
F26B3/04
F26B13/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054448
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 興二
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅勅
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AB02
3L113AC01
3L113AC36
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC52
3L113AC67
3L113AC86
3L113BA26
3L113BA32
3L113DA02
(57)【要約】
【課題】従来よりも塗膜の乾燥効率を向上させることができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【解決手段】基材の所定面に形成された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、塗膜を加熱する加熱ガスを基材の前記所定面に向けて吹き出す第1の吹出部を有する乾燥ノズルと、前記第1の吹出部から吹き出された前記加熱ガスを回収する回収手段と、を備えており、前記回収手段は、基材の前記所定面側に設けられ前記加熱ガスを引き込む開口である回収部と、前記第1の吹出部から吹き出す前記加熱ガスの量と同等以上の量のガスを回収する吸引力を前記回収部に発生させる吸引手段と、を有していることを特徴とする構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の所定面に形成された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、
塗膜を加熱する加熱ガスを基材の前記所定面に向けて吹き出す第1の吹出部を有する乾燥ノズルと、
前記第1の吹出部から吹き出された前記加熱ガスを回収する回収手段と、を備えており、
前記回収手段は、基材の前記所定面側に設けられ前記加熱ガスを引き込む開口である回収部と、前記第1の吹出部から吹き出す前記加熱ガスの量と同等以上の量のガスを回収する吸引力を前記回収部に発生させる吸引手段と、を有していることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記回収部は、前記乾燥ノズルと隣接するよう設けられており、
前記回収部を挟んで前記乾燥ノズルの外周面の一部と対向して設けられ、前記乾燥ノズルの外周面の一部と、基材の前記所定面とで、前記回収部までの前記加熱ガスの流路を形成する第1のサポート部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
基材を挟んで前記乾燥ノズルと対向するよう設けられ、前記第1の吹出部により吹き出された前記加熱ガスが基材を通過した場合に、その前記加熱ガスを前記回収部に向けて跳ね返す第2のサポート部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記第1の吹出部により吹き出された前記加熱ガスを前記流路を介して前記回収部に向うように誘導する誘導ガスを吹き出す第2の吹出部を有する回収サポート手段をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第1の吹出部は、基材の搬送方向に所定の間隔を空けて複数設けられており、
前記回収サポート手段は、底面が基材の前記所定面と対向するよう各々の前記第1の吹出部の間に設けられた箱体であり、当該箱体の底面に第2の吹出部が形成されており、
前記回収サポート手段の底面は、基材の前記所定面との間隔が前記回収部に向かうほど大きくなるように傾斜するよう形成されていることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記第2の吹出部は、前記第1の吹出部よりも上方に位置するよう形成されていることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記回収部は、基材の前記搬送方向と直交する幅方向における前記乾燥ノズルの中央部に設けられ、
前記第1の吹出部は、前記幅方向において前記回収部を挟むように複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材を搬送しながら、基材に形成された塗膜を乾燥する乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池の電池用極板の製造工程の中には、ロールツーロール方式の搬送装置により搬送されるシート状の基材に対して、活物質、バインダー、導電助剤、および溶媒を含む電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥装置により乾燥する工程がある。
【0003】
一般的なロールツーロール方式の搬送装置は、図4に示すように基材900を巻き出す巻出ロール911と、基材900を巻き取る巻取ロール912と、巻出ロール911から巻き出された基材900が巻取ロール912に巻き取られるまでに経由する搬送ロール913と、を有している(たとえば、下記特許文献1)。そして、搬送装置910は、巻出ロール911、巻取ロール912、および搬送ロール913は、基材900に所定の張力を付与しながら搬送している。
【0004】
従来の乾燥装置は、図4に示すように搬送装置910による基材900の搬送経路上に設けられ、基材900が通過する筐体部921と、筐体部921内に設けられ、高温のガスを吹き出すノズル922と、を有している(たとえば、下記特許文献2)。この乾燥装置920は、基材900上の塗膜930に対して乾燥ノズル922の吹出部923(図5を参照)から高温のガスを吹き付けることによって、塗膜930を加熱して乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-097917号公報
【特許文献2】特開2014-173803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような従来の乾燥装置920では、塗膜930の乾燥効率が悪い。具体的には、従来の乾燥装置920では、吹出部923から塗膜930に吹き付けたガスがノズル922と基材900との間で滞留してしまう(図5を参照)。すなわち、塗膜930を加熱したことによって熱量を奪われたガスがノズル922と基材900との間で滞留する。これにより、ノズル922から新しく吹き出した高温のガスを塗膜930に吹き付けることができないため、塗膜930を乾燥させるためにかかる時間が長くなる。すなわち、塗膜930の乾燥効率が悪くなっている。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、従来よりも塗膜の乾燥効率を向上させることができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の乾燥装置は、基材の所定面に形成された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、塗膜を加熱する加熱ガスを基材の前記所定面に向けて吹き出す第1の吹出部を有する乾燥ノズルと、前記第1の吹出部から吹き出された前記加熱ガスを回収する回収手段と、を備えており、前記回収手段は、基材の前記所定面側に設けられ前記加熱ガスを引き込む開口である回収部と、前記第1の吹出部から吹き出す前記加熱ガスの量と同等以上の量のガスを回収する吸引力を前記回収部に発生させる吸引手段と、を有していることを特徴としている。
【0009】
上記乾燥装置によれば、回収手段が有する回収部により第1の吹出部により吹き出されて加熱ガスを回収するため、一度基材に吹き付けた加熱ガスが乾燥ノズルと基材の所定面の間で滞留することを防ぐことができ、常に新しい加熱ガスを基材の所定面に吹き付けることができる。すなわち、常に高温の加熱ガスを塗膜に当てることができる。これにより、塗膜を効率よく加熱することができるため、従来よりも塗膜の乾燥効率を向上させることができる。
【0010】
また、前記回収部は、前記乾燥ノズルと隣接するよう設けられており、前記回収部を挟んで前記乾燥ノズルの外周面の一部と対向して設けられ、前記乾燥ノズルの外周面一部と、基材の前記所定面とで、前記回収部までの前記加熱ガスの流路を形成する第1のサポート部材をさらに備える構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1のサポート部材を備え、この第1のサポート部材、乾燥ノズルの外周面の一部、基材の所定面とで回収部までの加熱ガスの流路を形成することができるため、第1の吹出部から吹き出された加熱ガスが回収部に向かって流れやすくなるようにガスの行き場を制限することができる。これにより、回収部による加熱ガスの回収が容易になる。
【0012】
また、基材を挟んで前記乾燥ノズルと対向するよう設けられ、前記第1の吹出部により吹き出された前記加熱ガスが基材を通過した場合に、その前記加熱ガスを前記回収部に向けて跳ね返す第2のサポート部材をさらに備えている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、基材が破断した場合など、基材により加熱ガスを跳ね返すことができなかったとしても、第2のサポート部材が基材に代わって加熱ガスを跳ね返すことができる。
【0014】
また、前記第1の吹出部により吹き出された前記加熱ガスを前記流路を介して前記回収部に向うように誘導する誘導ガスを吹き出す第2の吹出部を有する回収サポート手段をさらに備える構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、第2の吹出部により吹き出した誘導ガスによって第1の吹出部により吹き出された加熱ガスを回収部に向かうように誘導することができるため、回収部による加熱ガスの回収が容易になる。
【0016】
また、前記第1の吹出部は、基材の搬送方向に所定の間隔を空けて複数設けられており、前記回収サポート手段は、底面が基材の前記所定面と対向するように各々の前記第1の吹出部の間に設けられた箱体であり、当該箱体の底面に第2の吹出部が形成されており、前記回収サポート手段の底面は、基材の前記所定面との間隔が前記回収部に向かうほど大きくなるように傾斜するよう形成されている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、乾燥ノズルの底面が、基材の所定面との間隔が回収部に向かうほど大きくなるように傾斜するよう形成されているため、第1のサポート部材、乾燥ノズルの外周面の一部、基材の所定面とで形成される回収部までの加熱ガスの流路における流路抵抗を回収部に近付くにつれて小さくすることができる。これにより、回収部による加熱ガスの回収がより容易になる。
【0018】
また、前記第2の吹出部は、前記第1の吹出部よりも上方に位置するよう形成されている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、第2の吹出部により吹き出す誘導ガスが、前記第1の吹出部により吹き出す加熱ガスによる塗膜の加熱を阻害しないようにすることができる。
【0020】
また、前記回収部は、基材の前記搬送方向と直交する幅方向における前記乾燥ノズルの中央部に設けられ、前記第1の吹出部が、前記幅方向において前記回収部を挟むように複数設けられる構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、基材の幅方向における乾燥ノズルの中央部から加熱ガスを回収しているため、基材の幅方向の端部側から加熱ガスを回収するよりも効率よく加熱ガスを回収することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の乾燥システムによれば、従来よりも塗膜の乾燥効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一実施形態における乾燥装置を備えた塗布装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の第一実施形態における乾燥装置を説明するための図である。
図3】本発明の第二実施形態における乾燥装置を説明するための図である。
図4】従来の乾燥装置を備えた塗布装置を概略的に説明するための図である。
図5】従来の乾燥装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第一実施形態〕
本発明の一実施形態における乾燥装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0025】
図1は、一実施形態における乾燥装置2を備えた塗布装置1を概略的に説明するための図である。図2は、本実施形態における乾燥装置2を説明するための図であり、図2(a)は乾燥ノズル21を側面から見た図であり、図2(b)は図2(a)のA-A矢視の断面図である。
【0026】
本発明の乾燥装置2を備えた塗布装置1は、図1に示すようにシート状の基材Wを搬送する搬送機構11と、基材Wの所定面に塗布液を塗布して塗膜M(図2(b)を参照)を形成する塗布機構12と、を有している。また、乾燥装置2は、搬送機構11による基材Wの搬送経路上に配置されている。
【0027】
なお、本実施形態における基材Wの所定面とは基材Wの表面のことである。ここでいう、基材Wの表面とは後述する塗布機構12により塗膜Mが形成される面である。以下、基材Wの所定面を基材Wの表面と呼ぶ。
【0028】
本実施形態における塗布装置1は、搬送機構11により搬送される基材Wの表面に塗布機構12により塗膜Mを形成し、この塗膜Mを乾燥装置2により乾燥させる。
【0029】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構11により塗布装置1を構成する各部を経由するよう搬送される。
【0030】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、および導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)溶剤などの溶媒により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を基材Wに塗布することで、塗膜Mが形成される。
【0031】
本実施形態における搬送機構11は、基材Wを搬送するためのものである。搬送機構11は、図1に示すように基材Wを巻き出す巻出ロール11aと、基材Wを巻き取る巻取ロール11bと、巻出ロール11aから巻き出された基材Wが巻取ロール11bに巻き取られるまでに経由する搬送ロール11cと、後述する第1の塗布機構12により塗布液を塗布する位置に基材Wを案内する塗布ロール11dと、後述する乾燥ノズル21と基材Wを挟んで対向するよう設けられて基材Wを裏面から支持するサポートロール11eと、を有している。この搬送機構11が有する各々のロールは、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。
【0032】
巻出ロール11aは、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材Wを巻き出す。制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されている。また、巻取ロール11bは、巻出ロール11aと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを巻き取る。なお、ここでいう張力は、基材Wの搬送方向(図1におけるX軸方向)の張力のことである。
【0033】
搬送ロール11cは、図1に示すように複数設けられ、基材Wが塗工装置1を構成する各部を経由するよう配置されている。この複数の搬送ロール11cのうち一部、またはすべての搬送ロール11cは、巻出ロール11aおよび巻取ロール11bと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを搬送する。
【0034】
塗布ロール11dは、図1に示すように後述する塗布機構12と対向するよう配置されている。そのため、塗布機構12と一定間隔を保ちながら基材Wを搬送することができる。
【0035】
サポートロール11eは、図1に示すように複数設けられ、基材Wを挟んで後述する乾燥ノズル21と対向するよう配置されている。複数のサポートロール11eのうち一部、またはすべてのサポートロール11eは、巻出ロール11aおよび巻取ロール11bと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wを裏面から支持しながら搬送している。
【0036】
また、サポートロール11eの外周面には、耐熱性と低摩擦性の特性を有するテフロン(登録商標)がコーティングされている。そのため、後述する乾燥ノズル21から吹き出される高温のガスの熱によりサポートロール11eが変形することを防ぐことができるとともに、搬送される基材Wとサポートロール11eとの摩擦により基材Wに皺が生じることを防ぐことができる。これにより、サポートロール11eは、基材Wを安定して搬送することができる。
【0037】
これら構成により、搬送機構11は、所定の張力を基材Wに付与しながら基材Wを所定の速度で搬送することができる。
【0038】
本実施形態における塗布機構12は、搬送される基材Wの表面に塗布液を塗布して塗膜M(図2(b)を参照)を形成するためのものである。なお、本実施形態では塗布機構12が、スリットダイであるものを例に説明するが、塗布機構12はスリットダイに限らず、たとえば、インクジェット塗布用やグラビア塗布用の塗布方式に対応するものであってもよい。
【0039】
塗布機構12は、基材Wの幅方向(図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール11dが、第1の塗布機構12に対して、塗布ロール11dの回転軸方向と第1の塗布機構12の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置されている。
【0040】
そして、塗布機構12は、図1に示すように塗布液を貯留する塗布液タンク13に供給路14を介して接続され、塗布液を供給されることによって、基材Wの表面に塗布液を塗布する。これにより、基材Wの表面に塗膜Mを形成することができる。
【0041】
本実施形態における乾燥装置2は、塗布機構12により基材Wの表面に形成された塗膜Mを乾燥させるためのものである。乾燥装置2は、図1に示すように搬送機構11による基材Wの搬送経路上において塗布機構12よりも下流側に設けられ、乾燥ノズル21と、供給源3と、回収手段4(図2(b)を参照)と、サポート部材5と、回収サポート手段6(図2(a)および図2(b)を参照)と、を有している。
【0042】
乾燥ノズル21は、基材Wの表面に高温のガス(以下、加熱ガスと呼ぶ)を吹き付けることにより塗膜Mを加熱するためのものである。この乾燥ノズル21は、図1に示すように長手方向が基材Wの搬送方向となるよう形成され、本実施形態では基材Wを挟んで複数のサポートロール11eと対向するように基材Wの上方に配置されている。ここで、乾燥ノズル21は、少なくとも乾燥ノズル21と対向する基材Wの側面側に外壁を有さない図示しないフレームにより支持されている。また、乾燥ノズル21は、加熱ガスを吹き出す第1の吹出部22を有している。
【0043】
本実施形態における加熱ガスとはたとえば、空気であってもよいし、NガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。このガスは、後述する供給源3が有する加熱部32により加熱されてから乾燥ノズル21に供給され、第1の吹出部22から吹き出される。
【0044】
第1の吹出部22は、加熱ガスを吹き出すための開口であり、本実施形態では基材Wの幅方向に長く基材Wの搬送方向に短いスリット状に形成されている。そして、乾燥ノズル21は、図2(a)の点線で示す第1の吹出部22と連通する空洞である空洞部23を有し、この空洞部23に供給源3から加熱ガスが供給される。これにより、供給源3から供給された加熱ガスが空洞部23を経由して第1の吹出部22から略均一な風圧で吹き出される。また、第1の吹出部22は、基材Wの搬送方向に所定の間隔を空けて配列するよう複数設けられている。
【0045】
供給源3は、加熱ガスを乾燥ノズル21に供給するためのものであり、図1に示すように空洞部23に接続される供給路31と、供給路31の途中に設けられ、塗膜Mを乾燥させるための所定の温度になるように加熱ガスを加熱する加熱部32と、加熱ガスを送るための図示しないファンと、を有している。これにより、供給源3は、高温の加熱ガスを乾燥ノズル21に供給している。
【0046】
この構成により、乾燥ノズル21は、基材Wの搬送方向にわたって基材Wの表面に高温の加熱ガスを吹き付ける。この高温の加熱ガスが塗膜Mに当たって塗膜Mを加熱することで、溶剤が気化して塗膜Mが乾燥する。そして、第1の吹出部22より吹き付けて塗膜Mを加熱した加熱ガスが、基材Wから跳ね返って後述する回収手段4により回収される。
【0047】
回収手段4は、加熱ガスを吸引して回収するためのものである。本実施形態における回収手段4は、図2(b)に示すように加熱ガスを回収する回収路41と、加熱ガスを引き込むための開口である回収部42と、回収部41に吸引力を付与する図示しない吸引手段と、を有している。ここで、回収部42は、図2(b)に示すように基材Wの所定面側に設けられ、本実施形態では基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の外周面の片側側面と隣接するよう設けられている。
【0048】
本実施形態における吸引手段は、回収部42から回収路41内に引き込んだガスを回収路41内から排気するための図示しない排気部と、回収路41内に設けられ、回収路41内のガスを排気部へと送る図示しないファンと、を有している。そして、回収部42付近の回収路41内の圧力が、回収路41外の回収部42付近の圧力よりも負圧になるように、ファンにより排気部へ送るガスの量を調節して回収路41内で滞留するガスを排気部から排気する。これにより、回収部42に吸引力が生じるため、回収部42の周囲に存在する加熱ガスが回収部42から引き込まれて回収路41内に回収されるようになっている。
【0049】
ここで、吸引手段は、第1の吹出部22から吹き出す加熱ガスの量と同等以上のガスの量を回収できるように回収部42に付与する吸引力を調節する。これにより、回収手段4は、少なくとも第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを回収しきることができる。
【0050】
これら構成により、回収手段4は、第1の吹出部22により吹き出されて塗膜Mを加熱した後に基材Wから跳ね返って、回収部42付近に流された加熱ガスを回収することができる。なお、回収部42に回収される加熱ガスには、塗膜Mから気化した溶剤が含まれている。すなわち、回収手段4は、第1の吹出部22により吹き出された加熱ガスを回収すると同時に塗膜Mから気化した溶剤も回収する。
【0051】
また、図1に示すように回収路41と供給路31を接続してもよい。回収手段4により回収した加熱ガスは、回収路41を介して供給路31に送られ、加熱部32により前述した所定の温度まで加熱されて再び乾燥ノズル21に供給される。すなわち、第1の吹出部22から一度吹き出した加熱ガスを再利用することができる。
【0052】
また、本実施形態における乾燥装置2は、図1に示すように塗膜Mから気化した溶剤を回収する溶剤回収手段7を備えていてもよい。この溶剤回収手段7は、回収路41と接続され、溶剤を含む加熱ガスを冷却する冷却部71と、冷却部71により冷却されて液化した溶剤を貯留する溶剤タンク72と、冷却部71と溶剤タンク72を接続する溶剤回収路73と、を有している。この溶剤回収手段7は、回収手段4により回収し、回収路41を介して冷却部71に流入した溶剤を含む加熱ガスを冷却部71により冷却し、液化した溶剤を溶剤回収路73を介して溶剤タンク72に回収する。これにより、回収手段4により回収した加熱ガスに含まれる溶剤を回収することができるため、回収路41を介して供給路31に送る加熱ガスに含まれる溶剤の濃度を低くすることができる。
【0053】
サポート部材5は、第1の吹出部22により吹き出された加熱ガスを所定の領域から流出させないよう、加熱ガスの行き場を制限するためのものである。ここでいう、所定の領域とは、吸引手段により回収部42に生じた吸引力が作用する領域のことをいう。本実施形態におけるサポート部材5は、図2(b)に示すように回収部42までの加熱ガスの流路を形成する第1のサポート部材5aと、第1の吹出部22により吹き出された加熱ガスが基材Wを通過した場合に基材Wに代わって加熱ガスを回収部42に向けて跳ね返す第2のサポート部材5bと、を有している。
【0054】
第1のサポート部材5aは、図2(b)に示すように回収部42を挟んで乾燥ノズル21の外周面の一部(本実施形態では、回収部42と隣接する面である流路形成面24)と対向して設けられており、乾燥ノズル21の流路形成面24と基材Wの表面とで回収部42までの加熱ガスの流路を形成するよう形成された流路形成面51を有している。
【0055】
この第1のサポート部材5aは、流路形成面51が乾燥ノズル21の長手方向における寸法と同程度の大きさ、鉛直方向における回収部42と基材Wの間隔と同程度の大きさになるよう形成されている。なお、第1のサポート部材5aの形状は、流路形成面51と流路形成面24と基材Wの表面とで加熱ガスの流路(以下、流路と呼ぶ)を形成し、加熱ガスが所定の領域から流出しないように加熱ガスの行き場を制限することができれば、特に限定しない。たとえば、流路形成面51が平面になるよう形成してもよく、流路形成面51が乾燥ノズル21の外周の一部を覆うような湾曲した形状になるよう形成してもよい。
【0056】
第2のサポート部材5bは、図2(b)に示すように基材Wを挟んで乾燥ノズル21の底面と対向し、基材Wの搬送方向において各々のサポートロール11eの間に位置するよう設けられている。この第2のサポート部材5bは、第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスが基材Wを通過した場合に、その加熱ガスを跳ね返す基材サポート面52を有している。
【0057】
また、第2のサポート部材5bは、基材サポート面52が少なくとも基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の寸法と基材Wの寸法よりも大きくなるよう形成されている。なお、第2のサポート部材5bの形状は、基材Wが破断するなどしてガスを跳ね返すことができない場合に、基材Wに代わって基材サポート面52と流路形成面51、乾燥ノズル21の流路形成面24とで、前述した流路を形成することが可能であれば、特に限定しない。たとえば、基材サポート面52が平面になるよう形成してもよく、基材サポート面52が乾燥ノズル21と基材Wを下方から覆うような湾曲した形状になるよう形成してもよい。
【0058】
これら構成により、サポート部材5は、第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスを跳ね返し、ガスの行き場を制限することができる。このように、加熱ガスの行き場を制限することで、加熱ガスが前述した所定の領域から流出することを抑制することができ、加熱ガスが流路を介して回収部42に回収されやすくなる。
【0059】
また、第1のサポート部材5aと第2のサポート部材5bは、鉛直方向において所定の間隔が空くよう形成するとよい。具体的には、基材Wの通紙や搬送位置の調節などを行う際に基材Wの幅方向から手または治具を入れることができる程度の隙間を形成することができるように、第1のサポート部材5aと第2のサポート部材5bを形成するとよい。
【0060】
回収サポート手段6は、回収手段4による加熱ガスの回収をサポートするためのものである。本実施形態における回収サポート手段6は、図2(a)および図2(b)に示すように基材Wの幅方向に長く形成された箱体であり、この箱体の底面が基材Wの表面と対向し、基材Wの搬送方向に所定の間隔を空けて複数配列するように空洞部23に設けられている。そして、前述したスリット状の第1の吹出部22が、各回収サポート手段6の間、および回収サポート手段6と基材Wの搬送方向における乾燥ノズル21の側壁の間に形成される。このように、形成された第1の吹出部22により吹き出される加熱ガスは、基材Wの表面と直交する方向に吹き出される。
【0061】
また、基材Wの表面と対向する回収サポート手段6の底面は、基材Wの幅方向において回収サポート手段6の底面と基材Wの表面との間隔が回収部42に向かうほど大きくなるよう傾斜している。この乾燥ノズル21の底面の傾斜する方向に配列するように第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスを回収部42に向かうよう誘導するための誘導ガスを吹き出す第2の吹出部61が複数形成されている。そのため、各々の第2の吹出部61は、第1の吹出部22よりも高い位置に位置する。
【0062】
そして、各々の第2の吹出部61は、回収サポート手段6の底面と直交する方向に誘導ガスを吹き出すよう形成される。そのため、第2の吹出部61により誘導ガスを吹き出す方向は、第1の吹出部22により加熱ガスを吹き出す方向よりも回収部42へと向かう方向の成分を有している。これにより、第2の吹出部61から吹き出された誘導ガスに、第1の吹出部22から基材Wに吹き出され、乾燥ノズル21と基材Wの表面との間に滞留する加熱ガスを流路を介して回収部42に向かうよう随伴させることができる。すなわち、加熱ガスを回収部42まで誘導することができる。
【0063】
また、各々の第2の吹出部61は、回収サポート手段6の内部に形成される空洞部62と連通している。この空洞部62に誘導ガスを供給することで、各々の第2の吹出部61から誘導ガスが吹き出される。なお、誘導ガスは、第1の吹出部22から吹き出す加熱ガスと同種のガスでもよく、前述した供給源3を空洞部62に接続して、空洞部62を経由して第2の吹出部61から吹き出されるようにしてもよい。なお、誘導ガスの温度は、少なくとも第1の吹出部22から吹き出す加熱ガスによる塗膜Mの加熱を阻害しない程度の温度であるとよい。
【0064】
これら構成により、回収サポート手段6は、第2の吹出部63により吹き出した誘導ガスに第1の吹出部22から吹き出されて乾燥ノズル21と基材Wとの間に滞留する加熱ガスを随伴させて、前述した流路を介して回収部42に向かって流れるようにガスを誘導することができる。
【0065】
ここで、吸引手段は、第1の吹出部22から吹き出す加熱ガスおよび第2の吹出部61から吹き出す誘導ガスの総量と同等以上のガスの量を回収できるように回収部42に付与する吸引力を調節する。これにより、回収手段4は、少なくとも第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスおよび第2の吹出部61から吹き出した誘導ガスを回収しきることができる。
【0066】
このように上記実施形態における乾燥装置2によれば、従来よりも塗膜Mの乾燥効率を向上させることができる。
【0067】
具体的に説明する。図4に示すように従来の乾燥装置920は、搬送装置910による基材900の搬送経路上に設けられ、基材900が通過する筐体部921と、筐体部921内の基材900の上方と下方のそれぞれに位置するよう設けられた複数のノズル922と、を有している。この乾燥装置920は、基材900上の塗膜930に対して基材900の上方に位置するノズル922の吹出部923(図5を参照)から高温のガスを吹き付けることによって、塗膜930を加熱して乾燥させている。
【0068】
しかし、従来の乾燥装置920では、ノズル922と基材900との間には高温のガスの逃げ道が少なくなっているため、吹出部923から塗膜930に吹き付けた高温のガスがノズル922と基材900との間で滞留してしまう(図5を参照)。すなわち、塗膜930を加熱したことによって熱量を奪われたガスがノズル922と基材900との間で滞留する。
【0069】
これにより、ノズル922から新しく吹き出した高温のガスの行き場がなくなるため、新しい高温のガスを塗膜930に吹き付けることができなくなり、塗膜930を乾燥させるためにかかる時間が長くなる。すなわち、塗膜930の乾燥効率が悪くなっている。なお、基材Wの下方に設けられたノズル922は、基材Wを浮揚させる役割を担っているが、塗膜Mに直接高温のガスを当てることができないため、基材Wの上方に設けられたノズル922と比べて塗膜Mの乾燥にはあまり寄与していない。
【0070】
これに対して、本実施形態における乾燥装置2は、回収手段4を有し、この回収手段4が第1の吹出部22により吹き出されて基材Wの所定面から跳ね返った加熱ガスを回収するため、一度基材Wに吹き付けた加熱ガスが乾燥ノズル21と基材Wの表面の間で滞留することを防ぐことができ、常に新しい加熱ガスを基材Wの表面に吹き付けることができる。すなわち、常に高温の加熱ガスを塗膜Mに当てることができる。これにより、塗膜Mを効率よく加熱することができるため、従来よりも塗膜Mの乾燥効率を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、乾燥ノズル21が、基材Wの搬送方向が長手方向になるよう形成され、この長手方向に配列して複数の第1の吹出部22が形成されているため、第1の吹出部22から基材Wの搬送方向にわたって基材Wの表面に加熱ガスを吹き付けることができる。そのため、少なくとも乾燥ノズル21の長手方向が基材Wの幅方向である場合よりも搬送される基材Wに対して加熱ガスを吹き付けることができるゾーンが広くなる。すなわち、塗膜Mを加熱するためのゾーンを広くすることができるため、より塗膜Mの乾燥効率を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、回収部42が乾燥ノズル21と隣接するよう設けられ、第1のサポート部材5aの流路形成面51、乾燥ノズル21の流路形成面24、および基材Wの表面により回収部42までの加熱ガスの流路を形成している。そのため、第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスが所定の領域から流出しないように加熱ガスの行き場を制限することができる。これにより、第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを回収手段4により回収しやすくなる。
【0073】
また、本実施形態では、乾燥装置2が回収サポート手段6を備えていることによって、回収サポート手段6が有する第2の吹出部61から吹き出された誘導ガスに、乾燥ノズル21と基材Wの表面の間に滞留する加熱ガスを流路を介して回収部42に向かうように誘導することができる。これにより、第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスが所定の領域から流出することを抑制しやすくなるとともに回収手段4による加熱ガスの回収が容易になる。
【0074】
また、本実施形態では、回収サポート手段6の底面が基材Wの幅方向において回収サポート手段6の底面と基材Wの表面との間隔が回収部42に向かうほど大きくなるよう傾斜している。そのため、流路における流路抵抗を回収部42に近づくにつれて小さくすることができる。これにより、加熱ガスが回収部42に向かって流れやすくなるため、回収手段4による加熱ガスの回収が容易になる。
【0075】
また、本実施形態では、第2の吹出部61が第1の吹出部22よりも上方に位置している。これにより、第2の吹出部61により吹き出す誘導ガスよりも第1の吹出部22により吹き出す加熱ガスの方が早く基材Wに到達するため、たとえば加熱ガスの流れる方向や温度など、加熱ガスが基材Wに到達するまでの間に誘導ガスにより受けうる影響を抑制することができる。すなわち、誘導ガスが、加熱ガスによる塗膜Mの加熱を阻害しないようにすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、乾燥装置2が第2のサポート部材5bを備えているため、第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスが基材Wを通過した場合であっても回収手段4により加熱ガスを回収させることができる。具体的には、基材Wが破断するなどして、基材Wが第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを跳ね返すことができない場合であっても、第2のサポート部材5bが基材Wに代わって第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスを跳ね返すことができるとともに、流路形成面51、乾燥ノズル21の流路形成面24、および基材サポート面52によって回収部42までの加熱ガスの流路を形成することができる。これにより、第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスが、所定の領域から流出しないよう加熱ガスの行き場を制限することができるため、回収手段4による加熱ガスの回収が容易になる。
【0077】
また、本実施形態では、回収手段4により回収された加熱ガスを供給源3に送り、加熱部32で再加熱した後に乾燥ノズル21に供給した加熱ガスを再び第1の吹出部22から基材Wに吹き付けている。回収部42から回収された加熱ガスは比較的に高温であるため、回収された加熱ガスではないガスを加熱部32により一から所定の温度まで加熱するよりも、加熱に必要なエネルギーが減る。すなわち、消費するエネルギーを削減することができる。
【0078】
また、本実施形態では、回収手段4により第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを回収すると同時に塗膜Mから気化した溶剤を回収することができる。そのため、従来のような筐体部921(図4を参照)を設けなくてもよい。すなわち、筐体部921を必要としない乾燥装置2を提供することが可能になる。
【0079】
具体的に説明する。塗膜Mは、加熱されて塗布液に含まれるNMP溶剤等が気化することで、乾燥する。この気化したNMP溶剤(以下、溶剤と呼ぶ)は、大気に放出されて大気中に拡散すると環境を汚染してしまう。そのため、従来の乾燥装置920では、図5に示すように筐体部921を設けることで、気化したNMP溶剤が大気中に拡散することを防いでいた。
【0080】
しかし、筐体部921は、基材900の出入り口以外が密閉された空間となっているため、基材900のセットや乾燥装置920のメンテナンスを行うことが困難であった。
【0081】
これに対して、本実施形態の乾燥装置2では、回収手段4により第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを回収すると同時に塗膜Mから気化した溶剤を回収することができるため、溶剤が大気中に拡散することを防ぐことができる。これにより、従来のような筐体部921を必要としない乾燥装置2を提供することが可能となる。また、本実施形態では回収部42が乾燥ノズル21と隣接するよう設けられている、すなわち、回収部42が基材Wよりも上方に位置しているため、塗膜Mから気化した溶剤を回収しやすくなっている。
【0082】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態における乾燥装置2について図3を用いて説明する。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0083】
図3は、本実施形態における乾燥装置2を説明するための図であり、図3(a)は、基材W側から見た乾燥ノズル21を示す図であり、図3(b)は図3(a)のB-B矢視断面図である。
【0084】
本実施形態における第1の吹出部22は、図3(a)に示すように基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の両端部のそれぞれの近傍に、基材Wの幅方向に短く、基材Wの搬送方向に長いスリット状に形成されている。そして、図3(b)に示すように第1の吹出部22と連通する空洞部23に供給源3から高温のガスが供給されることにより、供給源3から供給された加熱ガスが空洞部23を経由して第1の吹出部22から略均一な風圧で吹き出される。
【0085】
本実施形態における回収手段4は、図3(b)に示すように乾燥ノズル21の長手方向に長く形成された箱体であり、箱体の所定面が基材Wの表面と対向するように空洞部23に設けられている。この回収手段4の所定面に加熱ガスを吸引するための開口である回収部42を有しているそして、前述したスリット状の第1の吹出部22が、回収手段4と基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の側壁の間に形成されている。
【0086】
回収部42は、図3(a)および図3(b)に示すように基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の中央部に位置するよう、回収手段4の底面に基材Wの幅方向に短く乾燥ノズル21の長手方向に長く形成されている。すなわち、回収部42は、基材Wの幅方向において第1の吹出部22に挟まれるよう形成されている。
【0087】
そして、回収手段4は、図3(b)に示すように回収部42と連通する空洞である空洞部43と、回収部42から回収された加熱ガスを空洞部43から排気するための図示しない排気口と、を有している。この排気口は、図1に示す回収路41により前述した供給路31と接続され、図示しないファンにより回収路41を介して排気口から供給路31に回収した加熱ガスを送っている。
【0088】
そして、回収部42付近の空洞部43内の圧力が、空洞部43外の回収部42の近傍の圧力よりも負圧になるように、ファンにより排気部へ送る加熱ガスの量を調節して空洞部43内で滞留する加熱ガスを排気部から排気する。ここで、吸引手段は、第1の吹出部22から吹き出す加熱ガスの量と同等以上のガスの量を回収できるように回収部42に付与する吸引力を調節する。これにより、回収部42に吸引力が生じ、ガスが回収部42から引き込まれて空洞部43に回収されるようになっている。ここで、回収部42から第1の吹出部22から吹き出したガスを回収すると同時に塗膜Mから気化した溶剤も回収している。
【0089】
また、本実施形態における第1の吹出部22は、基材Wの幅方向における中央部寄りに加熱ガスを吹き出すように形成されるとよい。具体的には、基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の外壁のそれぞれが、乾燥ノズル21の底面に向かうにつれて基材Wの幅方向における中央部に向かって傾くよう形成されるとよい。これにより、第1の吹出部22は、基材Wの幅方向における中央部寄りに加熱ガスを吹き出すことができるため、基材Wの幅方向における中央部に位置する回収部42に加熱ガスを回収させやすくなる。
【0090】
また、本実施形態におけるサポート部材5は、少なくとも前述した第2のサポート部材5bを有している。なお、本実施形態における第2のサポート部材5bは、第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスが基材Wを通過した場合に回収部42の回収範囲に向けて加熱ガスを跳ね返すことができるように基材サポート面52が形成されるよう形成されるとよい。なお、ここでいう回収部42の回収範囲とは、回収部42に生じた吸引力が働く範囲のことである。なお、回収部42により加熱ガスを回収しきれなかった場合に、加熱ガスの行き場を制限するために、基材サポート面52を基材Wの下方から乾燥ノズル21の外周面の一部を覆うように形成してもよい。
【0091】
また、本実施形態における回収サポート手段6は、基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の両側側方の近傍に設けられ、第2の吹出部61が基材Wの幅方向における両側側方のそれぞれから基材Wの幅方向における基材Wの中央部に向けて誘導ガスを吹き出すよう形成されているとよい。これにより、第2の吹出部22から吹き出された誘導ガスに、乾燥ノズル21と基材Wの間に滞留する加熱ガスを回収部42に向かうように誘導することができる。
【0092】
ここで、吸引手段は、第1の吹出部22から吹き出す加熱ガスおよび第2の吹出部61から吹き出す誘導ガスの総量と同等以上のガスの量を回収できるように回収部42に付与する吸引力を調節する。これにより、回収手段4は、少なくとも第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスおよび第2の吹出部61から吹き出した誘導ガスを回収しきることができる。
【0093】
このように上記実施形態における乾燥装置2によれば、回収手段4により第1の吹出部22から吹き出して塗膜Mを加熱した後に基材Wから跳ね返った加熱ガスを回収することができる。そのため、一度基材Wに吹き付けた加熱ガスが乾燥ノズル21と基材Wの表面の間で滞留することを防ぐことができ、常に新しい加熱ガスを基材Wの表面に吹き付けることができる。すなわち、常に高温の加熱ガスを塗膜Mに当てることができる。これにより、塗膜Mを効率よく加熱することができるため、従来よりも塗膜Mの乾燥効率を向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、乾燥ノズル21が、基材Wの搬送方向が長手方向になるよう形成され、第1の吹出部22が基材Wの搬送方向に長く形成されているため、第1の吹出部22から基材Wの搬送方向にわたって基材Wの表面に加熱ガスを吹き付けることができる。そのため、少なくとも乾燥ノズル21の長手方向が基材Wの幅方向である場合よりも搬送される基材Wに対して加熱ガスを吹き付けることができるゾーンが広くなる。すなわち、塗膜Mを加熱するためのゾーンを広くすることができるため、より塗膜Mの乾燥効率を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態では、回収部42が、基材Wの幅方向における乾燥ノズル21の中央部に設けられ、この回収部42を挟むように第1の吹出部22が複数設けられているため、基材Wの幅方向の端部側から加熱ガスを回収するよりも効率よく加熱ガスを回収することができる。そして、第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスが回収部42に引き寄せられるため、基材Wの幅方向における中央部にも加熱ガスを当てやすくなる。
【0096】
また、本実施形態では、乾燥装置2が第2のサポート部材5bを有しているため、第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスが基材Wを通過した場合であっても基材Wに代わって加熱ガスを跳ね返すことができる。これにより、基材Wが破断するなどして、第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを跳ね返すことができない場合であっても、基材Wに代わって第1の吹出部22から吹き出された加熱ガスを回収部42の回収範囲に跳ね返すことができる。
【0097】
また、本実施形態では、回収手段4により第1の吹出部22から吹き出した加熱ガスを回収すると同時に塗膜Mから気化した溶剤を回収することができるため、従来のような筐体部921(図4を参照)を設けなくてもよい。すなわち、筐体部921がない乾燥装置2を提供することが可能になる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、乾燥ノズル21の長手方向が、基材Wの搬送方向となるよう乾燥ノズル21を形成する例について説明したが、乾燥ノズル21の長手方向が基材Wの幅方向となるよう乾燥ノズル21を形成してもよい。
【0099】
また、上記第一実施形態では、回収サポート手段6が、基材Wの幅方向において回収サポート手段6の底面と基材Wの表面との間隔が回収部42に向かうほど大きくなるよう傾斜している例について説明したが、傾斜していなくてもよい。また、第2の吹出部61は、誘導ガスを吹き出す方向が、少なくとも第1の吹出部22により加熱ガスを吹き出す方向よりも回収部42へと向かう方向の成分を有するように形成されていればよい。
【0100】
また、上記実施形態では、乾燥装置2が乾燥ノズル21を一つ備えている例について説明したが、複数備えていてもよい。その場合、基材Wの搬送方向に配列するよう配置してもよいし、基材Wの幅方向に配列するように配置してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、第2のサポート部材5bは、基材Wの搬送方向において各サポートロール11e間に位置するよう配置される例について説明したが、基材Wを挟んで乾燥ノズル21の底面と対向し、サポートロール11eの下方に位置するよう配置させてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 塗布装置
11 搬送機構
11a 巻出ロール
11b 巻取ロール
11c 搬送ロール
11d 塗布ロール
11e サポートロール
12 塗布機構
13 塗布液タンク
14 供給路
2 乾燥装置
21 乾燥ノズル
22 第1の吹出部22
23 空洞部
24 流路形成面
3 供給源
31 供給路
32 加熱部
4 回収手段
41 回収路
42 回収部
43 空洞部
5 サポート部材
5a 第1のサポート部材
5b 第2のサポート部材
51 流路形成面
52 基材サポート面
6 回収サポート手段
61 第2の吹出部
62 空洞部
7 溶剤回収手段
71 冷却部
72 溶剤タンク
73 溶剤回収路
図1
図2
図3
図4
図5