(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142346
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】スタジアムにおける販売員のルート最適化
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054453
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀内 遥
(72)【発明者】
【氏名】田中 紗季
(72)【発明者】
【氏名】高見 啓佑
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC18
5L050CC18
(57)【要約】
【課題】 商品購入及び商品販売の機会損失を抑制すること。
【解決手段】 ルート決定装置は、1又は複数のプロセッサを有し、前記1又は複数のプロセッサは、施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することとを含む処理を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサを有し、
前記1又は複数のプロセッサは、
施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、
収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、
座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、
決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することと
を含む処理を実行するルート決定装置。
【請求項2】
前記収集することは、
前記施設において販売される商品のうち観客が選択する商品の銘柄の情報を収集すること
を含む請求項1に記載のルート決定装置。
【請求項3】
前記収集することは、
前記施設において商品を販売する販売員のうち観客が選択する販売員の情報を収集すること
を含む請求項1に記載のルート決定装置。
【請求項4】
前記算出することは、
座席ブロックごとの観客の前記嗜好情報と、座席ブロックごとの観客による商品の購入履歴とに基づいて、前記需要度を算出すること
を含む請求項1に記載のルート決定装置。
【請求項5】
前記決定することは、
座席ブロックごとに算出される需要度の分布を示す需要度マップを生成することと、
生成される需要度マップにおいて、需要度が所定の基準を満たす座席ブロックの近傍を通過するルートを決定することと
を含む請求項1に記載のルート決定装置。
【請求項6】
前記調整することは、
前記施設に配置される基地局が形成する同一のセル内に同時に在圏する販売員の人数が所定人数未満になるように各販売員のルートを調整すること
を含む請求項1に記載のルート決定装置。
【請求項7】
施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、
収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、
座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、
決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することと
を有するルート決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スタジアムにおける販売員のルート最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツの試合などのイベントが行われるスタジアムのような大型施設では、イベントを観覧する観客に対して飲食物などの商品を販売する移動販売が行われることがある。移動販売の販売員は、例えば飲料サーバを携帯しながら観客席の間を移動し、観客からの要求に応じて飲料を販売する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-144704号公報
【特許文献2】特開2018-142080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、販売員が商品販売時に移動するルートは、各個人の経験などに基づいて決定されているのが実情であり、ルートによっては、観客による商品購入の機会及び販売員による商品販売の機会が損なわれることがある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、商品購入及び商品販売の機会損失を抑制することができる、スタジアムにおける販売員のルート最適化を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ルート決定装置は、1又は複数のプロセッサを有し、前記1又は複数のプロセッサは、施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することとを含む処理を実行する。
【0007】
また、本開示の他の一態様によれば、ルート決定方法は、施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る通信システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係るルート決定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態に係るルート決定方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、需要度マップの具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、ルート決定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は例示であり、この記載によって限定解釈されるものではない。
【0010】
図1は、一実施の形態に係る通信システムの一例を示す図である。
図1に示す通信システムは、例えばスポーツ競技などのイベントが行われるスタジアム10に形成され、スタジアム10内に設置される複数の基地局20を有する。複数の基地局20には、ルート決定装置100が接続されている。
【0011】
スタジアム10は、観客が観覧するスポーツ競技などのイベントを開催することが可能な施設である。スタジアム10は、例えばサッカーの試合や陸上競技など(以下まとめて「競技」という)が行われるフィールドと、観客が競技を観覧するための観客席とを有する。観客席においては、販売員が飲食物などの商品を販売する移動販売が行われる。すなわち、販売員は、例えば飲料サーバなどを携帯して観客席内の通路を移動しながら、購入を希望する観客に対して飲料を販売する。このとき、販売員は、後述するように、ルート決定装置100から通知されるルートに従って観客席内の通路を移動する。
【0012】
基地局20は、スタジアム10内に設置され、スタジアム10内の端末装置との間で無線通信を実行する。具体的には、基地局20は、例えば観客及び販売員が所持するスマートフォンなどの端末装置や、販売員が装着するスマートグラスなどのウェアラブル端末との間で無線通信を実行する。また、基地局20は、スタジアム10内の端末装置から無線受信するデータをルート決定装置100へ転送するとともに、ルート決定装置100から受信するデータをスタジアム10内の端末装置へ無線送信する。
【0013】
ルート決定装置100は、移動販売の販売員が商品を販売する際に移動するルートを決定する。このとき、ルート決定装置100は、観客席の座席のブロックごとの各販売員に対する需要度を算出し、需要度が高いブロックを販売員が優先的に移動するように各販売員のルートを決定する。また、ルート決定装置100は、基地局20が形成するセルにおいて通信の輻輳が発生することを抑制するために、販売員が特定のセルに集中しないようにルートを調整する。ルート決定装置100の具体的な構成及び動作については、後に詳述する。
【0014】
図2は、一実施の形態に係るルート決定装置100の構成を示すブロック図である。
図2に示すルート決定装置100は、通信インタフェース部(以下「通信I/F部」と略記する)110、観客情報収集部120、観客情報記憶部130、販売情報管理部140、競技情報取得部150、需要度算出部160、マップ生成部170、ルート決定部180及びルート調整部190を有する。
【0015】
通信I/F部110は、スタジアム10内の基地局20との間で通信するインタフェースである。通信I/F部110は、各座席の観客に関する観客情報を観客が所持する端末装置から基地局20を介して受信したり、販売員のルートに関するルート情報を販売員が所持する端末装置へ基地局20を介して送信したりする。通信I/F部110は、スタジアム10内の基地局20のみではなく、スタジアム10の外部のネットワークと通信してもよい。
【0016】
観客情報収集部120は、観客に関する観客情報を観客が所持する端末装置から収集する。具体的には、観客情報収集部120は、観客が観客自身の嗜好に関する情報を端末装置に入力すると、入力された情報を収集する。すなわち、観客が、例えば端末装置において動作するアプリケーションを通じて、好みの飲料の銘柄や好みの販売員などの嗜好情報を入力すると、観客情報収集部120は、観客が入力した嗜好情報を収集する。観客情報収集部120は、銘柄や販売員の他にも、例えば観客が応援する選手やチームなどの嗜好情報を収集してもよい。なお、観客情報収集部120は、必ずしもスタジアム10内の観客から観客情報を収集しなくても良く、観客がスタジアム10へ到着する前にスタジアム10の外部のネットワークを通じて観客情報を収集してもよい。
【0017】
観客情報記憶部130は、観客情報収集部120によって観客から収集される観客情報を記憶する。このとき、観客情報記憶部130は、スタジアム10の観客席の各座席に対応付けて、座席が割り当てられた観客に関する観客情報を記憶する。また、観客情報記憶部130は、観客がスタジアム10内で購入した商品及び購入時刻を含む購入履歴をそれぞれの座席の観客に対応付けて記憶する。
【0018】
観客情報記憶部130が記憶する観客情報の具体例を
図3に示す。
図3に示すように、観客情報記憶部130は、スタジアム10の座席に対応付けて、座席が割り当てられた観客の識別情報(観客ID)、観客の嗜好情報及び購入履歴を記憶している。
【0019】
スタジアム10の観客席は、通路によって区画される複数のブロックを有しており、各ブロックには列及び番号によって特定される複数の座席が含まれる。例えばチケットにより各座席が割り当てられた観客には、観客を一意に識別する観客IDが割り当てられており、観客情報記憶部130は、ブロック、列及び番号によって特定される座席と、この座席が割り当てられた観客の観客IDとを対応付けている。また、観客情報記憶部130は、観客から収集された嗜好情報を各座席の観客に対応付けて記憶するとともに、観客による商品の購入履歴を販売情報管理部140から取得して各座席の観客に対応付けて記憶する。
【0020】
図3に示す例では、例えばブロックN1の列A番号1の座席が割り当てられた観客には観客ID「xx-00001」が割り当てられ、この観客の好みの銘柄は「ビールA」であり、好みの販売員の識別情報は「S0056」であることが記憶されている。また、この観客は、まだスタジアム10内で商品を購入していないため、購入履歴は空欄である。同様に、例えばブロックN1の列B番号1の座席が割り当てられた観客には観客ID「xx-00021」が割り当てられ、この観客の好みの銘柄は「ビールA」であり、好みの販売員の識別情報は「S0194」であることが記憶されている。また、この観客は、既にスタジアム10内で商品を購入しているため、「19時07分にビールAを購入」という購入商品及び購入時刻を含む購入履歴が記憶されている。
【0021】
図2に戻って、販売情報管理部140は、スタジアム10内で販売される商品の販売状況を管理する。すなわち、販売情報管理部140は、観客によって商品が購入された場合に、この観客に割り当てられた座席と、購入商品とを対応付けて記憶する。このとき、販売情報管理部140は、例えば販売員が携帯する決済用の端末装置から、観客の座席及び購入商品を含む販売情報を取得してもよい。販売情報管理部140は、各座席の観客による購入履歴を観客情報記憶部130に記憶させる。
【0022】
競技情報取得部150は、スタジアム10のフィールドにおいて行われている競技の情報を取得する。具体的には、競技情報取得部150は、例えばサッカーの試合における得点や陸上競技における順位などの情報や、選手又はチームの優勢及び劣勢に関する情報などを取得する。
【0023】
需要度算出部160は、観客情報記憶部130によって記憶された観客情報と、競技情報取得部150によって取得された競技情報とに基づいて、観客席のブロックごとの販売員に対する需要の大きさを示す需要度を算出する。
【0024】
具体的には、需要度算出部160は、観客の嗜好情報及び購入履歴を観客席のブロック単位で集計することにより、それぞれの販売員に対する需要の大きさを数値化する。すなわち、例えばブロック内の観客の好みの銘柄を販売する販売員やブロック内の観客の好みの販売員に対しては、このブロックにおいて需要が大きいことを示す数値が割り当てられる。また、例えばブロック内の観客の前回の購入時刻からの経過時間が長いほど、このブロックにおいて需要が大きいことを示す数値が割り当てられる。
【0025】
さらに、需要度算出部160は、競技情報に基づいて、観客席のブロックごとの需要の大きさに重みづけをしてもよい。すなわち、例えば応援するチームに応じて割り当てられる座席が異なる場合に、優勢であるチームを応援する観客席のブロックにおいて需要が大きくなるように重みづけされてもよい。
【0026】
このようにして、需要度算出部160は、観客席のブロックごとに、それぞれの販売員に対する需要の大きさを示す需要度を算出する。換言すれば、需要度算出部160は、販売員ごと及び観客席のブロックごとに、需要度として1つの値を算出する。
【0027】
マップ生成部170は、需要度算出部160によって算出された需要度の分布を示す需要度マップを生成する。具体的には、マップ生成部170は、観客席のブロックごとの需要度を示す需要度マップを、それぞれの販売員について生成する。需要度マップによれば、スタジアム10内において販売員に対する需要が大きいブロックの分布が容易に特定可能である。
【0028】
ルート決定部180は、マップ生成部170によって生成される需要度マップに基づいて、移動販売時の販売員のルートを決定する。具体的には、ルート決定部180は、需要度マップにおいて需要が大きい観客席のブロックを優先的に販売員が移動するルートを決定する。すなわち、ルート決定部180は、販売員に対する需要が大きいブロックに隣接する通路を移動するように、この販売員のルートを決定する。したがって、ルート決定部180は、販売員ごとの需要度マップに基づいて、販売員ごとのルートを決定する。
【0029】
ルート調整部190は、各販売員について決定されるルートを調整する。すなわち、ルート調整部190は、各販売員がルートに従って移動する場合に複数の販売員が同一のセルに集中することが無いように各販売員のルートを調整する。ルート調整部190は、基地局20が形成するセルの位置情報から、例えば販売員ごとのルートが通過するセルを特定し、所定人数以上の販売員が同時に在圏するセルの有無を判定する。そして、ルート調整部190は、所定人数以上の販売員が同時に在圏するセルがある場合に、これらの販売員のルートを変更して、同一セル内に同時に在圏する販売員の人数が所定人数未満となるようにする。
【0030】
このようにルート調整部190がルートを調整することにより、販売員による通信によって基地局20での輻輳の発生を防止することができる。なお、販売員による通信には、専用のネットワークスライスが割り当てられていてもよい。この場合には、複数の販売員が同一セルに集中することが無いように各販売員のルートを調整することにより、専用のネットワークスライスにおけるリソース不足を防止することができる。
【0031】
ルート調整部190は、調整した販売員ごとのルートに関するルート情報をそれぞれの販売員が所持する端末装置へ通信I/F部110から送信させる。ルート情報は、販売員が所持するスマートフォンなどの端末装置へ送信されてもよいし、販売員が装着するスマートグラスなどのウェアラブル端末へ送信されてもよい。これにより、販売員は自身のルート情報を視認して、効率的なルートを移動しながら商品を販売することができる。
【0032】
次いで、上記のように構成されたルート決定装置100によるルート決定方法について、
図4に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0033】
スタジアム10において競技を観覧する観客は、例えば観客自身が所持する端末装置において動作するアプリケーションを通じて、好みの飲料の銘柄や好みの販売員などの嗜好情報を入力する。すなわち、例えばスタジアム10において販売される商品の銘柄や商品を販売する販売員の一覧が端末装置に表示されると、観客は、表示された一覧の中から好みの銘柄や販売員を選択する。観客によって端末装置に入力される嗜好情報を含む観客情報は、ルート決定装置100の観客情報収集部120によって収集される(ステップS101)。
【0034】
収集される観客情報は、観客情報記憶部130によって記憶される。具体的には、スタジアム10の観客席の各座席に対応付けて、座席が割り当てられた観客に関する観客情報が記憶される。また、観客がスタジアム10内で商品を購入した場合には、販売情報管理部140から販売情報が取得されることにより、購入した商品及び購入時刻を含む購入履歴がそれぞれの座席の観客に対応付けて記憶される。
【0035】
そして、販売員のルートを決定する所定のタイミングが到来すると、需要度算出部160によって、観客情報記憶部130によって記憶される観客情報と、競技情報取得部150によって取得される競技情報とに基づいて、それぞれの販売員に対する観客席のブロックごとの需要度が算出される(ステップS102)。
【0036】
具体的には、観客の嗜好情報及び購入履歴が観客席のブロック単位で集計され、各ブロックでの販売員に対する需要の大きさが数値化される。すなわち、例えば販売員が販売する商品の銘柄を好む観客がブロック内に多いほど、この販売員に対する当該ブロックでの需要度は大きくなり、例えば販売員を好む観客がブロック内に多いほど、この販売員に対する当該ブロックでの需要度は大きくなる。また、例えばブロック内の観客の前回の購入時刻からの経過時間が長いほど、すべての販売員に対する当該ブロックでの需要度は一律に大きくなる。さらに、競技情報に基づいて、例えば優勢であるチームを応援する観客席のブロックにおいて、すべての販売員に対する需要度が一律に大きくなるように重みづけされてもよい。
【0037】
このように、それぞれの販売員に対する需要度がブロックごとに算出されると、マップ生成部170によって、販売員に対する需要度の分布を示す需要度マップが生成される(ステップS103)。具体的には、例えば
図5に示すように、観客席のブロックごとに販売員に対する需要度が示された需要度マップが生成される。
図5に示す需要度マップにおいては、スタジアム10内の一部の観客席について、各ブロックにおける需要度の大きさが色の濃淡によって示されている。ここでは、色が濃く黒色に近いブロックほど販売員に対する需要度が大きいものとする。このような需要度マップは販売員ごとに生成され、各販売員の需要度マップにより、販売員に対する需要が大きいブロックの分布が容易に特定可能となる。
【0038】
各販売員の需要度マップが生成されると、ルート決定部180によって、それぞれの販売員の需要度マップから当該販売員が移動するルートが決定される(ステップS104)。具体的には、例えば
図6において白抜き矢印によって示すように、販売員に対する需要度が大きいブロックに隣接する通路を優先的に移動するルートが決定される。すなわち、それぞれの販売員の需要度マップにおいて、当該販売員が、色が濃いブロックの近傍を通過するように販売員ごとのルートが決定される。
【0039】
販売員ごとの需要度マップからすべての販売員のルートが決定されると、ルート調整部190によって、販売員ごとのルートとスタジアム10内の基地局20が形成するセルの位置情報とが参照され、所定人数以上の販売員が同時に在圏するセルがあるか否かが判定される(ステップS105)。すなわち、各販売員がルートを移動中に、所定人数以上の販売員が同一のセル内に入ることがあるか否かが判定される。この判定の結果、所定人数以上の販売員が同時に在圏するセルがある場合には(ステップS105Yes)、ルート調整部190によって、同一セル内に同時に在圏する販売員の人数が所定人数未満となるように販売員のルートが調整される(ステップS106)。これにより、各販売員がルートを移動する場合、セル内に在圏する販売員の人数が所定人数未満となり、基地局20において通信の輻輳が発生することを防止することができる。
【0040】
そして、所定人数以上の販売員が同時に在圏するセルがなくなると(ステップS105No)、販売員ごとのルートに関するルート情報が各販売員が所持する端末装置へ送信される(ステップS107)。ルート情報は、販売員が所持するスマートフォンやスマートグラスなどの端末装置に表示され、販売員は、ルート情報を確認することにより、効率的なルートを移動しながら商品を販売することができる。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、観客席のブロックごとの販売員に対する需要度を算出し、需要度が大きいブロックを販売員が優先的に移動するルートを決定し、所定人数以上の販売員が同一セル内に同時に在圏しないように各販売員のルートを調整する。このため、販売員は、商品に対する需要が大きく通信の輻輳が発生しないルートを移動しながら商品を販売することができ、商品購入及び商品販売の機会損失を抑制することができる。
【0042】
上記一実施の形態に係るルート決定装置100は、プロセッサ及びメモリを用いて構成することができる。
図7は、一実施の形態に係るルート決定装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、ルート決定装置100は、プロセッサ101、メモリ102、ストレージ103及び通信部104を有する。
【0043】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)などを有し、ルート決定装置100の全体を統括制御するとともに、各種の情報処理を実行する。
【0044】
メモリ102は、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などを有し、プロセッサ101が実行する情報処理に用いられる情報を記憶する。
【0045】
ストレージ103は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などを有し、各種のデータを保存する。
【0046】
通信部104は、有線通信又は無線通信を実行するインタフェースを有し、スタジアム10内の基地局20などと通信する。
【0047】
なお、ルート決定装置100は、例えばディスプレイや操作スイッチなど、図示しない他の構成を有していてもよい。
【0048】
上記一実施の形態において説明したルート決定装置100による処理を、コンピュータが実行可能なプログラムとして記述することも可能である。この場合、これらのプログラムをコンピュータが読み取り可能かつ非一時的(non-transitory)な記録媒体に格納し、コンピュータに導入することも可能である。このような記録媒体としては、例えばCD-ROM、DVDディスク、USBメモリなどの可搬型記録媒体、及び例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリが挙げられる。
【0049】
なお、本開示は、上記一実施の形態に限定されるものではなく、上述した構成に対して、構成要素の付加、削除又は転換を行った様々な変形例も含むものとする。
【0050】
以上説明した本開示には、下記[1]から[7]が含まれる。
【0051】
[1] 1又は複数のプロセッサを有し、
前記1又は複数のプロセッサは、
施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、
収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、
座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、
決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することと
を含む処理を実行するルート決定装置。
【0052】
[2] 前記収集することは、
前記施設において販売される商品のうち観客が選択する商品の銘柄の情報を収集すること
を含む上記[1]に記載のルート決定装置。
【0053】
[3] 前記収集することは、
前記施設において商品を販売する販売員のうち観客が選択する販売員の情報を収集すること
を含む上記[1]に記載のルート決定装置。
【0054】
[4] 前記算出することは、
座席ブロックごとの観客の前記嗜好情報と、座席ブロックごとの観客による商品の購入履歴とに基づいて、前記需要度を算出すること
を含む上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のルート決定装置。
【0055】
[5] 前記決定することは、
座席ブロックごとに算出される需要度の分布を示す需要度マップを生成することと、
生成される需要度マップにおいて、需要度が所定の基準を満たす座席ブロックの近傍を通過するルートを決定することと
を含む上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のルート決定装置。
【0056】
[6] 前記調整することは、
前記施設に配置される基地局が形成する同一のセル内に同時に在圏する販売員の人数が所定人数未満になるように各販売員のルートを調整すること
を含む上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のルート決定装置。
【0057】
[7] 施設において開催されるイベントの観客の嗜好に関する嗜好情報を収集することと、
収集される嗜好情報から、前記施設の座席ブロックごとに商品の販売員に対する需要度を算出することと、
座席ブロックごとの需要度に基づいて、前記販売員が移動するルートを決定することと、
決定されるルートを移動する販売員の位置が所定の条件を満たすようにルートを調整することと
を有するルート決定方法。
【符号の説明】
【0058】
100 ルート決定装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 ストレージ
104 通信部
110 通信I/F部
120 観客情報収集部
130 観客情報記憶部
140 販売情報管理部
150 競技情報取得部
160 需要度算出部
170 マップ生成部
180 ルート決定部
190 ルート調整部